自己都合退職と会社都合退職の違いは?知らないと損する両者の違い

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自己都合退職

会社を退職する理由はさまざまですが、自身の都合で退職するのか、会社の都合で退職するのかでは失業保険などの待遇に大きな差が生じます。

そのため、会社を退職する際に損をしないためにも、自己都合退職と会社都合退職の待遇の差はしっかりと理解しておくことが重要です。

この記事では、自己都合と会社都合退職の違いや、懲戒解雇・退職勧奨に応じた退職はどのような扱いになるのかなどを詳しく解説します。

自己都合退職と会社都合退職でよく寄せられる疑問について徹底解説しているので、お悩みの方はぜひ最後までご覧ください。

自己都合退職と会社都合退職の定義

自己都合退職とは

自己都合退職とは、転職や結婚、出産などを理由に、従業員自らの意思や都合で退職することをいいます。

また、会社で悪質な規律違反、犯罪行為をしたことにより「懲戒解雇」された場合には、解雇であっても自己都合退職と同様の扱いになります。

もっとも、「特定理由離職者」と呼ばれる正当な理由による自己都合退職であれば、失業保険給付において「会社都合退職」の場合と同様の扱いとなります。

「特定理由離職者」とは、有期契約が更新されない雇い止めを理由に離職したケースで、再就職の準備をする時間の余裕なしに会社を辞めることを余儀なくされた人を言います。

会社都合退職とは

会社都合退職とは、会社側の経営不振やリストラ、倒産などを理由に、一方的に労働契約を解除して従業員を退職させることをいいます。

また、詳しくは後述しますが、長時間の残業やパワハラなどにより退職に追い込まれた従業員は、自己都合退職ではなく「会社都合退職」となります。

自己都合退職と会社都合退職の違い①|失業保険(雇用保険)

自己都合退職と会社都合退職は、失業保険の受給の待遇面で最も大きな違いを生じます。

一般に、「会社都合退職」「自己都合退職」と分類されますが、実際の雇用保険法では離職理由ごとに細かく分類されているので詳しく確認しましょう。

会社都合退職が優遇されている

自己都合退職と会社都合退職を比較すると、失業保険の受給資格、給付制限期間の有無、給付日数などに違いがあり会社都合退職者の方が手厚い保護が受けられるようになっています。

自己都合退職会社都合退職
受給資格離職以前2年間で被保険者期間が12か月以上離職以前1年間で被保険者期間が6か月以上
最短支給開始日2か月と7日以降7日以降
給付日数90日~150日90日~330日

※離職理由による失業保険の差

そもそも、失業保険を受給するためには、原則として離職以前の2年間で通算12か月以上雇用保険に加入している必要があります(雇用保険法13条)。

ただし、例外的に「会社都合退職や特定受給資格者、特定理由離職者」の場合は、必要な加入期間が離職以前の1年間で通算6か月以上の加入に条件が緩和されます

例外的に失業保険が優遇される者

  • 特定受給資格者:倒産、解雇等により離職したもの
  • 特定理由離職者:希望に反する雇い止めにより離職したもの

それぞれの対象者を具体的に解説します。

特定受給資格者

特定受給資格者(倒産・解雇などによる離職)とは、厳密な倒産や解雇に限らず、会社が原因で離職せざるをえなかった者を広く含みます

特定受給資格者にあたる者の例

  • 従業員の1/3以上が退職したことによる離職
  • 明示された労働条件が事実と著しく違ったことによる離職
  • 賃金の1/3を超える額が給料日までに支払われなかったことによる離職
  • 予期しえず固定給が85%以上減額されたことによる離職
  • 過大な時間外労働や休日労働が行われたことによる離職
  • パワハラ・セクハラなどによる離職
  • 会社の業務が法令に違反したことによる離職
  • 退職勧奨を受けたことによる離職

特定理由離職者

特定理由離職者とは、主に雇い止めを理由に離職した人のことです。

雇い止めは、「契約を更新する場合がある」とされていて、契約期間満了までに有期契約の更新の希望を申し出たにもかかわらず、更新がされなかったケースを言います。

なお、当初から更新がないことが明示されている場合や、契約満了までに更新の希望を申し出ていなかった場合には特定理由離職者に該当しないため注意が必要です。

また、下記のやむを得ない理由により離職した者も、退職に正当な理由があることから、特定理由離職者と判断されます。

やむを得ない理由の例

  • 体力の不足、心身の障害、疾病、負傷など
  • 妊娠、出産、育児など(ハローワークで受給期間延長措置を受けた人)
  • 父母の死や看護等の家庭の事情
  • 事情により通勤が不可能又は困難になったこと
  • 人員整理による希望退職に応じての離職

自己都合退職であっても、やむを得ない理由によって離職した者は、会社都合退職者と同様の受給資格の例外が適用されます。

離職理由による給付制限

会社都合退職者及び例外に適用する場合は、離職から7日間の給付制限期間(待期期間)を経過すれば失業保険を受給することができます。

実際に現金が振り込まれるのは、受給資格決定日から約1か月後になるので、注意して下さい。

一方で、自己都合退職の場合、原則として7日間の給付制限期間経過後、さらに2か月~3か月間は失業保険の給付を受けることができません。

自己都合退職者の給付制限期間は、原則2か月です。ただし、「自己の責めに帰すべき重大な理由によって解雇」された場合や「直近5年間で2回以上自己都合退職している人」の給付制限期間は3か月になります。

自己都合退職の振込みは、最短でも2か月以上後になるということです。

所定給付日数の違い

失業保険の所定給付日数は、離職理由、年齢、雇用保険の加入期間で変わります。

会社都合退職(受給資格で述べた特定受給資格者)の場合、自己都合退職者などの一般の受給資格者より所定給付数が長くなります。

なお、雇止めを理由とする特定理由離職者についても、離職日が平成21年3月31日からまでのものは、特定資格受給者とみなされて所定給付日数の規定が適用されます。

「自己都合退職」(一般の受給資格者)の所定給付日数

雇用保険加入期間10年未満10年以上20年未満20年以上
全年齢90日120日150日

「会社都合退職」(特定受給資格者)の所定給付日数

雇用保険加入期間1年未満1年以上5年未満5年以上10年未満10年以上20年未満20年以上
30歳未満90日90日120日180日
30歳以上35歳未満120日180日210日240日
35歳以上45歳未満150日240日270日
45歳以上60歳未満180日240日270日330日
60歳以上150日180日210日240日

このように、最低支給日数は変わりませんが、最大支給日数は離職理由によって2倍以上異なります。

また、最大支給日数が長い分、失業給付金の最大支給額も会社都合退職は約260万円に対して、自己都合退職は約118万円と2倍以上の差があります。

自己都合退職と会社都合退職の違い②保険料・退職金

国民健康保険の軽減

お住まいの市区町村にもよりますが、会社都合退職者の場合、国民健康保険料の減額を「最長2年間」認めている市区町村も多いです。

国民健康保険の減額を認めている場合、一般的に前年中の給与所得を100分の30として保険料を計算します。

仮に前年度の年収額が400万円であった場合、年収額120万円として保険料が計算されますので大幅な保険料の減額が期待できます。

一方、自己都合退職は、国民健康保険の納付は優遇されず通常通りの納付額です。

自己都合退職者の退職金

離職理由は退職金についても違いが生じるケースが多いです。自己都合退職では、退職金が満額支給されないことが多いです。

会社の退職金規程などをチェックすると、勤続年数などに応じて「自己都合退職時の減額率」の表が記載されていることがあります。

自己都合退職の際には、この表に従って退職金が減額されてしまうのです。通常、勤続年数が短ければ短いほど減額率は高めに設定されています。

一方で、会社都合退職の一つであるリストラの場合、退職金が上乗せされることもあります。

退職金はそもそも制度自体がない会社もありますが、制度がある会社であれば労働契約書や就業規則に退職金の規定が必ずありますので確認をしましょう。

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自己都合と会社都合|退職理由はどう見極める?

自己都合退職と会社都合退職の違いを見てきました。

労働者にとって退職理由の違いは大きなものです。一方で会社を退職する際にそもそも退職理由が食い違ったりトラブル化してしまうケースもあります。

どのようなときに自己都合・会社都合になるのか、離職理由でトラブルになった際にはどうすれば良いのか確認しておきましょう。

懲戒解雇は自己都合?会社都合?

会社が労働者に対して行う解雇には、「整理解雇」、「普通解雇」、「懲戒解雇」の3つがあります。

整理解雇・普通解雇が会社都合になるのに対し、懲戒解雇は自己都合退職と同じように扱われます。

懲戒解雇とは、企業秩序違反行為に対する制裁罰である懲戒処分として行われる解雇です。

たとえば、労働者が業務上横領などの犯罪をしたり、業務上必要な資格や学歴を詐称したり、理由なく長期間無断欠勤をしたりしたときに行われます。

失業保険の給付制限期間(待期期間)は3か月間であり、受給期間も会社都合の解雇より短くなります。

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退職勧奨は自己都合?会社都合?

退職勧奨とは、会社から労働者に対して、自主退職を促す行為のことです。

会社からの働きかけによる退職ですが、一方的に通告が行われる解雇と違い、きちんと労働者の了解を得た上で、退職してもらうという方法になります。

退職勧奨を受けて退職した場合には、原則として会社都合退職となります。

しかし、会社によっては、退職勧奨で退職した場合に自己都合退職として処理を行ってしまうところもあります。

退職勧奨を受けて退職する場合には、自己都合退職として処理されるのか会社都合退職として処理されるのかよく確認した方がいいでしょう。

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派遣切りは自己都合?会社都合?

派遣切りとは、派遣先の会社が派遣元の会社との契約を終わらせることを言います。

労働者はその後、派遣元の会社から再度別の会社を紹介されるのを待たされることになります。

派遣切りというのはあくまで派遣先の会社と派遣元の会社の契約の話となるので、退職とはまた別の話です。

なお、派遣切りにあったあと、結果的に派遣元の会社を退職するという流れになることもしばしばあります。

派遣社員側が更新を希望していたのに派遣先の紹介などがなく更新されなかったような場合は会社都合退職となります。いわゆる雇い止めと呼ばれるものです。

一方、更新を提案されていたものの派遣社員側が更新を断ったような場合には自己都合退職となります。

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会社都合退職なのに自己都合にされる?

従業員が会社都合退職をした場合、会社としては、国からの各種助成金が一定期間申請できないことがあるなどの不都合があります。

そのため、従業員の退職を本来は会社都合で処理すべき場合でも、自己都合で処理しようとする会社があるのです。

自己都合退職から会社都合退職に退職理由を変更したいときには、まずは会社に離職理由を訂正してもらうよう要請してください。

会社が応じなかった場合には、ハローワークに相談することで変更が叶う場合があります。

退職理由に争いがあるときは、雇用保険被保険者離職票の提出前にハローワークの職員に相談するべきです。

離職票の異議欄に記入をした上で、自己都合ではなく会社都合であったという事実の裏付けが取れたときには、ハローワークが離職理由の変更をしてくれます。

会社都合退職・自己都合退職のどちらが転職に不利?

退職理由が次の就職に響くのではないかと心配される方は多くいらっしゃいます。

会社都合退職・自己都合退職では、どちらが転職に不利と一概に言うことはできません。

ただし、会社都合退職が会社の都合による倒産やリストラではなく、自身の行為にある場合には、不利にはたらいてしまう可能性があります。

もっとも、自己都合退職であっても、短期間に何度も転職を繰り返している場合などは、すぐに辞めるイメージを持たれてしまい、不利にはたらいてしまうこともあるでしょう。

いずれにせよ、採否は離職理由が会社都合か自己都合かだけで決まるわけではありません。

有利不利も気になると思いますが、しっかりと自身の魅力を伝えた上で離職理由を理解してもらえるよう、伝えられるだけの入念な準備を練っておくことが大切です。

まとめ

労働者にとって、自己都合退職と会社都合退職では、会社都合退職の方が失業手当などの面でメリットがあります。

退職勧奨に従う形での退職は、原則として会社都合退職扱いです。

しかし、場合によっては、本来会社都合になるべきところ、使用者の判断で自己都合退職扱いとされてしまうケースがあります。

そのような場合には、早急に弁護士や公的機関に相談しましょう。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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