給料未払いの証拠がない!対処法や請求をする際の手順を解説!

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給料未払い証拠がない!

未払いの給料を会社から支払ってもらえず、お困りではないでしょうか。

未払いの給料を請求をしたくても、給料未払いの証拠が手元にない場合は、どうすればいいのか分からない方も多いと思います。

労働者には働いた分の給料を受け取る権利があります。証拠が手元になくても泣き寝入りする必要はありません。

証拠がない場合には、弁護士に依頼して開示請求を行うなどの手段を取ることができます。

この記事では、給料未払いの証拠がない場合の対処法や請求をする際の手順について詳しく解説します。

給料未払いを請求するには証拠が重要

給料未払いの請求を行うにあたって、証拠は重要です。

給料の未払いを証明できる証拠がない限り、未払い給料の金額を確定することができないからです。

会社が給料未払いを黙認しているケースは、証拠を基に請求しなければ効果がない可能性があります。

また、話し合いをしても会社が支払いに応じない場合は、裁判などの法的措置をとる必要が出てきますが、その際に証拠がなければ労働者側にとって不利な状況となるでしょう。

そのため、給料未払いの請求をする場合、できる限りの証拠を集めておく必要があります。

給料未払いの証拠となるもの

給料未払いを請求するためには、給料が未払いであることを証明するもの、支払われる賃金を証明するものである2種類の証拠が必要です。

未払いであることを証明する証拠

  • 給与明細書
  • 源泉徴収票
  • 給与口座の履歴 など

支払われる賃金を証明する証拠

  • 雇用契約書
  • 労働条件通知書

「本来の給料の金額」、「実際の支払い金額」、「労働していた事実」などがわかるものであれば、証拠として認められます。

未払いの給料を請求する場合、最終的には法的措置を取ることも考えられるため、証拠は多ければ多いほどいいでしょう。

また、給料の未払いに加えて残業代も支払われていない場合は、残業代も請求可能です。給料の未払いが生じているケースでは、残業代も支払われていないケースがあります。

残業代を請求するための具体的な証拠としては、タイムカードや業務用PCの使用時間の記録・ログイン時間の記録などがあげられます。

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給料未払いの証拠がない場合

書面や直接的な証拠がない場合、証拠能力としては低くなりますが、以下のようなものを集めておくとよいでしょう。

  • 勤怠表
  • 手書きの勤務時間や業務内容の記録
  • 会社とやりとりしたメールやLINEの送信記録

また、これらのような履歴や記録もないといった場合には、「証拠保全」や「文書提出命令」といった強制的な開示手続きをすることによって、未払い給料の証拠を会社から入手することができます。

証拠保全とは、裁判官が直接会社に出向いて、証拠を提示させるという強力な手続きです。

文書提出命令は、証拠文書の提出を命じることです。文書の提出を命じることで、裁判における証拠の収集を円滑するために行われます。

いずれの場合も申立書の作成や手続きが面倒なことから、証拠が手元にない場合は弁護士に相談した方がスムーズです。

給料未払いを請求する手順

労働基準法24条において、賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を、毎月1回以上、一定期日を定めて支払わなければならないとされています。

そのため、給料の未払いは違法です。会社は当然労働者に対して賃金を支払う義務がありますが、なかにはきちんと支払いを行わない会社もいます。

では、給料未払いが起こった場合は、どのように対処すればよいのでしょうか。

未払いの給料を請求する手順とポイントを解説します。

給料未払いを会社と協議する

まずは、会社と未払いの給料の支払いについて話し合うことから始めましょう。

会社に給料の支払いがないことを伝え、支払いがない理由についての説明を求めます。

もし、一時的な支払いの遅れや、支払いの見込みが立つようであれば、様子を見る期間を設けてもよいでしょう。

会社と協議することであっさり解決するケースもあるため、まずは会社と話し合うことが大切です。

給料未払いを内容証明郵便で請求する

会社と協議しても給料が支払われない場合は、内容証明郵便で請求を行いましょう。

内容証明郵便とは、書面を送付した事実と送付した内容を郵便局に記録される郵便方法を指します。

そのため、会社がそのような書面は受け取っていないというリスクを排除でき、後々まで送付した事実の証拠として用いることが可能です。

また、内容証明郵便での請求は、会社側へ心理的圧迫を加えることになるため、回収を実現しやすくなるという効力があります。

内容証明郵便を使って未払い給料の支払いを請求する際は、以下の内容を記載します。

内容証明に記載するべき内容

  • 未払いの期間
  • 未払い賃金を計算した総額
  • 支払いの期限(本書到着から◯日以内と書くのが一般的)
  • 支払い方法(金融機関の口座番号など)
  • 支払いに応じない場合の措置(労働基準監督署への申告を含む法的措置を講ずるなど)

内容証明郵便で指定した期日までに支払いがない場合、労働基準監督署へ申告しましょう。

申告をすると、労働基準監督署から会社へ給料支払いを勧告し、給料が支払われる場合があります。

ただし、公的機関である労働基準監督署は、給料未払いの「証拠」がないとただちに是正に動いてくれない傾向があります。

そのため、給料未払いの「証拠がない」という理由で動いてもらえない場合、法的請求を検討する必要も出てくるでしょう。

給料未払いを弁護士に相談する

労働基準監督署からの勧告にも会社が応じない場合、弁護士に相談をして適切なアドバイスを受けることが得策です。

相談だけであれば無料で行ってくれる弁護士も増えており、有料の場合でも30分5000円が相場です。

また、弁護士に一任すれば請求や交渉などを適切に行ってもらうことができ、必要であれば裁判の手続きも代理してくれます。

ご自身の力のみで解決することが難しい場合は、弁護士に相談をすることでスムーズな解決を目指すことができます。

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給料未払いが発生した時の注意点

給料の未払いの時効は3年

給料未払いの時効は3年です。3年が経過すると時効が完成し、請求が困難になります。

給料の未払いは生活への影響も大きく、長期間放置するケースは少ないかもしれませんが、退職後に未払い給料を請求したいとお考えの方は注意してください。

会社が倒産したら未払賃金立替払制度を利用できる

未払いの給料があるまま勤めている会社が倒産してしまった場合、未払賃金立替払制度を利用できます。

未払賃金立替払制度とは、会社の倒産で賃金が支払われないまま退職した労働者に対し、支払われていない賃金の一部を国が会社に代わって労働者に支払う制度です。

未払賃金立替払制度では、未払い給料の8割を支払ってもらうことができます。

会社が倒産してお困りの方は、労働基準監督署に相談することをおすすめします。

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遅延損害金を併せた金額を請求できる

給料が未払いで給料の支払いが遅れた場合には、遅延損害金が発生します。未払い給料が発生していた場合には、遅延損害金も併せて請求することができます。

遅延損害金の利率は年3%です。ただし、退職後の遅延損害金の利率は、年14.6%と高額になります(賃金の支払の確保等に関する法律6条)。

ご自身の給料の未払いがいくら請求できるのかどうかは、弁護士に相談しましょう。弁護士であれば証拠や退職後の年数などから請求できる給料未払いの金額を計算することができます。

給料未払いに対する法的措置

給料未払いに対して少額訴訟を起こす

少額訴訟とは、60万円以下の請求額の場合、簡易裁判所で行うことができる訴訟のことです。

請求額が60万円の場合、申立手数料が6,000円(別途郵便切手代や弁護士費用が必要)と安いうえに、通常訴訟よりは手続きが簡単で、弁護士を雇わず個人で申請することも可能です。

1回の審理で結論が出るため、請求額がそこまで高額でなく、早く解決したいという場合に使われることが多いです。

しかし、1回の審理という短い期日であることから、給料未払いを証明する効果的な証拠を多く提出できなければ、請求が棄却される可能性があります。

また、会社が少額訴訟に反対した場合、通常訴訟に移行して争うことになります。

給料未払いに対して労働審判を起こす

労働審判は原則として3回以内の期日で、話し合いによって解決を図る手続きです。

裁判官と労働審判員で構成される労働審判委員会が解決にあたります。

労働審判も個人での手続きも可能ですが、証拠などを準備し、的確な主張を行う必要があるため、弁護士に依頼することが望ましいでしょう。

また、会社が労働裁判に対し、異議申し立てをした場合、通常訴訟に移行して争うことになります。

請求額が100万円の場合、新たに支払う申立手数料は5,000円(別途郵便切手代や弁護士費用が必要)となっています。

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給料未払いに対して通常訴訟を起こす

労働裁判で解決できなかった場合、通常訴訟を起こします。

訴訟は審理の回数に制限がなく、納得がいくまで徹底的に争うことが可能です。

ただし、決着がつくまで半年から1年、場合によっては数年の長期戦になることがあります。

また、訴訟になる問題は事実関係が複雑であることが多く、弁護士に依頼する必要があるため、費用が高額になってしまいます。

請求額が100万円の場合、申立手数料は10,000円(別途郵便切手代や弁護士費用が必要)となっています。

まとめ

この記事では、給料未払いの証拠がない場合に、収集すべき証拠や証拠がない場合の対策をご紹介しました。

給料の未払いは違法です。労働に対する賃金の請求は正当な権利であるため、3年の時効が完成する前に請求しましょう。

無料相談を受け付けている弁護士事務所もあるため、お悩みの方は弁護士事務所に相談してください。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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