未払い給料を会社に請求する!流れとポイントについて弁護士が解説
「未払い給与を会社に請求したいが、流れがよくわからない」
「未払い給料を請求するのに、裁判を起こすしかないのか」
給料が未払いになっていても、会社に請求しづらかったり、そもそもどのように請求すればわからなかったりといった悩みを抱えている方もいると思います。
給与の未払いは労働基準法によって違法であると定められており、労働者には未払いになっている給与を会社に請求する権利があります(労働基準法第120条1号)。
今回は、未払いになっている給料を会社に請求する流れや、請求する上での注意点について解説します。
目次
未払い給料を請求する方法
未払いになっている給料を請求する方法は、以下のようなものがあります。
未払い給料を請求する方法
- 会社に内容証明郵便で請求書を送る
- 労働基準監督署に申告する
- 法的手続きをとる
(1)会社に内容証明郵便で請求書を送る
未払い給料を会社に請求するための最初の手段は、「未払いになっている給与の支払いを会社に求める」といった旨の請求書を会社に送ることです。
請求書を送る際には、内容証明郵便(いつ、誰が誰に、どのような内容を伝えたのかを郵便局が証明してくれるサービス)を利用することをおすすめします。
内容証明郵便を利用すれば、仮に裁判に発展した際に、労働者が未払い給料を請求したという証拠として活用できます。
参考:内容証明郵便
(2)労働基準監督署に申告する
請求書を送っても会社側からの対応が見受けられないという場合には、労働基準監督署に申告するという手段が考えられます。
労働基準監督署は、会社が労働に関する法令を守っているかどうかを監督する機関です。給料未払いの事実が確認されれば、会社に対して是正や改善の指導をおこなう場合があります。
ただし、労働基準監督署の指導や勧告には法的な強制力がないため、未払い給料などの問題の解決が必ず期待できるというわけではないことに注意が必要です。
(3)法的手続きをとる
会社との交渉がうまくいかなかったり、労働基準監督署の指導があっても会社が未払い給料を支払わなかったりした場合には、労働審判などの法的な手続きをとることになります。
労働審判とは、労働者個人と会社との間に生じたトラブルを、原則として3回以内の期日で審理する制度です。
こういった法的手段を利用することで、迅速に未払い給料の問題を解決することができるかもしれません。
未払い給料を請求するときのポイント
未払い給料を請求する際に気を付けておきたいポイントとして、以下の3点が挙げられます。
未払い給料を請求するときのポイント3つ
- 未払いの証拠を集めておく
- 未払い給与を請求する時効が3年であることに注意
- 会社が倒産したときは「未払賃金立替払制度」を利用する
給料が未払いである証拠を集めておく
未払い賃金を請求するときのポイントとして、給料が未払いになっていることを証明する証拠を集めておくことが挙げられます。有効的な証拠には以下のようなものがあります。
給料未払いを証明する証拠
- 給与明細書
- タイムカードなど、給与の計算や労働時間の測定ができる資料
- 就業規則や退職金規定
- シフト表
- 雇用契約書 など
有効的な証拠を、多くの種類かつ長期間集めておくことで、労働基準監督署が動きやすくなったり、法的手続きを有利にすすめたりすることができます。
関連記事
・給料未払いの証拠がない!対処法や請求をする際の手順を解説!
未払い給与を請求する時効が3年であることに注意
未払いになっている給料を請求するとき、時効が3年であることに注意が必要です(参考:厚生労働省「労働者の皆さま 未払賃金が請求できる期間などが延長されます」)。
時効を完成させない方法として、会社に対して「未払いになっている給料の支払いを求める」という旨の請求書を内容証明郵便で送ること(催告)が挙げられます。
催告が成立すれば、時効の完成を6か月間止める(猶予)させることができます。
会社が倒産したときは未払賃金立替払制度を利用する
給料が未払いのまま会社が倒産してしまったという場合には、未払賃金立替払制度の利用を検討することをおすすめします。
未払賃金立替払制度とは、倒産してしまった企業の代わりに、国が未払いになっている賃金の一部を労働者に支給する制度です。
「退職日が倒産日の6か月前から2年の間であること」などの要件を満たせば、未払いになっている給料の一部を受け取ることができます。
関連記事
・未払賃金立替制度はいつもらえる?利用条件や手続きの流れを解説
給料未払いを弁護士に相談するメリット
未払いになっている給料を個人で請求することもできますが、弁護士に相談することでさまざまなメリットがあります。弁護士に相談することによるメリットとして、以下のようなものがあります。
給料未払いを弁護士に相談するメリット
- 未払い給料の請求を代理でおこなってもらえる
- 未払いになっている給与の計算を代理でおこなってもらえる
- 有効的な証拠を代理で集めてもらえる
弁護士に相談するメリットについて詳しく知りたい方は、『給料の未払いは弁護士に相談!依頼するメリットと費用を徹底解説』の記事もご覧ください。
未払い給料の請求を代理でおこなってもらえる
現在自分が働いている職場に対して未払い給料を請求することについて、ハードルが高いという人も多いでしょう。
弁護士に相談や依頼をおこなうことで、未払い給料の請求を一任することができます。
また、未払い給料の支払いが遅れている場合、遅延した日数分の「遅延損害金」も併せて請求することができるところもポイントです。
未払いになっている給与を正確に計算してもらえる
未払いになっている給与を会社に請求するとき、労働者側が未払いになっている給与を正しく計算する必要があります。
弁護士に相談や依頼をおこなうことで、未払いになっている賃金を正確に計算してもらうことができます。
有効的な証拠を代理で集めてもらえる
未払いになっている給料を請求するときには、有効的な証拠が必要です。
しかし、賃金に関わる書類といった証拠を会社側が保管していたり、既に退職していたりする場合には、証拠を集めることが難しいこともあります。
弁護士に依頼すれば、会社が保管している証拠についての開示請求を弁護士から行ってもらえます。
弁護士からの請求となると、本人による請求より会社側も協力的になることが多いので、有効的な証拠を集めやすいでしょう。
まとめ
給料の未払いは違法であり、労働者には、未払いになっている給料を請求する権利があります。
未払いになっている給料を請求したいとお悩みの方は、できるだけ証拠を集め、速やかに会社に請求することが重要です。
弁護士に依頼すれば、未払いになっている給料の計算や、会社への請求について代理でおこなってもらえるメリットがあります。
無料相談を受け付けている弁護士事務所もありますので、まずは弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了