未払いの給料を請求する方法は?流れと注意点を弁護士が解説

更新日:
未払い賃金 請求方法は?

「未払いの給料を請求する方法は?」
「未払いの給料を会社に請求したいが、流れがよくわからない」

給料が未払いになっていても、どのように請求すればいいのかわからないといった悩みを抱えている方は多いと思います。

給料の未払いは労働基準法によって違法と定められており、労働者には未払いになっている給料を会社に請求する権利があります(労働基準法第120条1号)。

この記事では、未払いになっている給料を会社に請求する方法・流れや、請求する上でのポイントについて詳しく解説します。

給料未払いとは|請求の対象となる賃金

給料未払いは違法

給料未払いは、法律上では「未払賃金」と言われています。

労働基準法24条において、「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない」と規定されています。

給料が全額支払われていない、給料の一部が未払いになっている状態は、全額払いの原則が守られていないため、違法となります。

給料未払いの対象となる賃金は?

給料未払いの対象となる賃金は、毎月の給料のほかにも下記があげられます。

未払い賃金の対象となるもの

  • 毎月の給料
  • 退職金
  • 賞与やボーナスなどの一時金
  • 休業手当
  • 割増賃金
  • 有給休暇の賃金

給料という名目ではなくても、雇用契約や就業規則で支払われることが決まっている賃金が対象となります。

給料未払いの原因を問わず請求できる

未払い給料を請求することは労働者の権利です。労働者は給料未払いの原因を問わず、未払い給料を会社に請求できます

実際に、給料が未払いになっている原因は、企業の経営不振や、企業と労働者間のトラブルなどが考えられます。

しかし、どのような原因があったとしても、企業には労働の対価として労働者に給料を支払うことが義務付けられています。

引継ぎをせずに退職したことや業績の悪化を理由に給料を支払わないことは違法です。

未払い給料を請求する方法|一般的な流れ

未払い給料の請求は、以下のような手順を踏むことが一般的です。

未払い給料を請求する一般的な流れ

  • 未払い給料の証拠を集める
  • 会社に内容証明郵便で請求書を送る
  • 労働審判・訴訟などの法的手続きをとる

なお、会社に内容証明郵便で請求書を送らずに、労働審判・訴訟などの法的手続きを行うことも可能です。

未払い給料の請求方法や手順について詳しく知りたい方は、弁護士に相談しましょう。

(1)給料が未払いである証拠を収集する

未払い給料を請求するためには、証拠が重要です。給料が未払いになっていることを証明する有効的な証拠には以下のようなものがあります。

給料未払いを証明する証拠

  • 給与明細書
  • タイムカード
  • 就業規則や退職金規定
  • シフト表
  • 雇用契約書 など

有効的な証拠を、多くの種類かつ長期間集めておくことで、労働基準監督署が動きやすくなったり、法的手続きを有利にすすめたりすることができます。

給料未払いの証拠が手元にない・収集が難しい方は、『給料未払いの証拠がない!対処法や請求をする際の手順を解説!』の記事もご覧ください。

(2)会社に内容証明郵便で請求書を送る

未払い給料の証拠が収集出来たら、給与未払いの請求書を会社に送りましょう

会社が給料未払いを認識していなかったケースでは、この時点で支払ってもらえる可能性が高いといえます。

また、期日までに支払わなければ法的手続きに移行することを記載することで、支払ってもらえることもあります。

請求書を送る際には、内容証明郵便(いつ、誰が誰に、どのような内容を伝えたのかを郵便局が証明してくれるサービス)を利用することをおすすめします。

もっとも、内容証明書を送ったとしても、会社が必ず支払いに応じてくれるという保証はありません。

しかし、内容証明郵便を送ることで「未払い給料を支払ってほしい」という労働者の意思を示すことができ、その後、労働審判や訴訟を起こすときの証拠にもなります。

参考:内容証明郵便

(3)労働審判・訴訟などの法的手続きをとる

未払い給料の請求書を送ったものの、会社との交渉がうまくいかなかったり、そもそも会社が対応してくれないケースもあります。その場合には、労働審判・訴訟などの法的手続きをとる方法があります。

労働審判とは、労働者個人と会社との間に生じたトラブルを、原則として3回以内の期日で審理する制度です。

労働審判がどのような制度が詳しく知りたい方は、『労働審判とは?制度の内容や手続きの流れを弁護士がわかりやすく解説』の記事をご覧ください。

訴訟とは、紛争を解決するために公開で行われる裁判手続きです。労働審判よりも長期化する傾向にあるものの、裁判所の判決によりトラブルの解決が見込めます。

また、請求する金額が60万円以下の場合は、少額訴訟も一つの選択肢となります。

少額訴訟とは、60万円以下の未払い給料を請求するために利用できる訴訟です。簡易裁判所において、原則として1回の審理で結果が出ます。

通常の裁判と比較して給料未払い請求を早く解決できるのがメリットとなります。迅速に未払い給料の問題を解決することができる可能性が高まります。

参考:少額訴訟|裁判所

【コラム】労働基準監督署に申告する方法もある

会社から給料が支払われない場合には、労働基準監督署に申告する手段も考えられます。

労働基準監督署は、会社が労働に関する法令を守っているかどうかを監督する機関です。給料未払いの事実が確認されれば、会社に対して是正や改善の指導をおこなう場合があります。

ただし、労働基準監督署の指導や勧告には法的な強制力がないため、未払い給料などの問題の解決が必ず期待できるというわけではないことに注意が必要です。

関連記事

労働基準監督署に相談できる内容とは?メリット・デメリットから徹底解説

未払い給料を請求する際の注意点

未払い給料を請求する際の注意点として、以下の2点が挙げられます。

未払い給料を請求する際の注意点

  • 未払い給料の時効が3年であることに注意
  • 会社が倒産したときは「未払賃金立替払制度」を利用する

未払い給料を請求する時効が3年であることに注意

未払いになっている給料を請求するとき、時効が3年であることに注意が必要です。

すでに時効が完成している場合には、会社に請求しても支払ってもらえない可能性が高いでしょう。

時効を完成させない方法として、会社に対して「未払いになっている給料の支払いを求める」という旨の請求書を内容証明郵便で送ること(催告)が挙げられます。

催告が成立すれば、時効の完成を6か月間止める(猶予)させることができます。

なお、退職金の請求権は5年です。

会社が倒産したときは未払賃金立替払制度を利用する

会社が倒産してしまい、未払い給料が回収できない場合には、未払賃金立替払制度を利用しましょう。

未払賃金立替払制度とは、倒産してしまった企業の代わりに、国が未払いになっている賃金の一部を労働者に支給する制度です。

「退職日が倒産日の6か月前から2年の間であること」などの要件を満たせば、未払いになっている給料の一部を受け取ることができます。

関連記事

未払賃金立替制度はいつもらえる?利用条件や手続きの流れを解説

給料未払いを弁護士に相談するメリット

未払いになっている給料は個人で請求することもできますが、弁護士に相談することでさまざまなメリットがあります。

弁護士に相談するメリットは、以下のようなものがあげられます。

給料未払いを弁護士に相談するメリット

  • 未払い給料の請求を代理でおこなってもらえる
  • 未払いになっている給料の計算を代理でおこなってもらえる
  • 有効的な証拠を代理で集めてもらえる

弁護士に相談するメリットについては、『給料の未払いは弁護士に相談!依頼するメリットと費用を徹底解説』の記事でさらに詳しく解説しています。

未払い給料の請求を代理でおこなってもらえる

現在自分が働いている職場に対して未払い給料を請求することについて、ハードルが高いという人も多いでしょう。

弁護士に相談や依頼をおこなうことで、未払い給料の請求を一任することができます。

また、未払い給料の支払いが遅れている場合、遅延した日数分の「遅延損害金」も併せて請求することができるところもポイントです。

未払いになっている給料を正確に計算してもらえる

未払いになっている給料を会社に請求するとき、労働者側が未払いになっている給料を正しく計算する必要があります。

弁護士に相談や依頼をおこなうことで、未払いになっている賃金を正確に計算してもらうことができます。

有効的な証拠を代理で集めてもらえる

未払いになっている給料を請求するときには、有効的な証拠が必要です。

しかし、賃金に関わる書類といった証拠を会社側が保管していたり、既に退職していたりする場合には、証拠を集めることが難しいこともあります。

弁護士に依頼すれば、会社が保管している証拠についての開示請求を弁護士から行ってもらえます。

弁護士からの請求となると、本人による請求より会社側も協力的になることが多いので、有効的な証拠を集めやすいでしょう。

まとめ

給料の未払いは違法であり、労働者には、未払いになっている給料を請求する権利があります。

未払いになっている給料を請求したいとお悩みの方は、できるだけ証拠を集め、速やかに会社に請求することが重要です。

弁護士に依頼すれば、未払いになっている給料の計算や、会社への請求について代理でおこなってもらえるメリットがあります。

無料相談を受け付けている弁護士事務所もありますので、まずは弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

詳しくはこちら

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

残業代・不当解雇など

全国/24時間/無料

弁護士に労働問題を共有する