懲戒解雇されると給料はどうなる?解雇予告手当はもらえる?

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懲戒解雇されたら

懲戒解雇になると、職を失うことはもちろんですが、それまでに働いた分の給料が支払われるかどうか心配になる方もいるでしょう。

たとえ懲戒解雇されたとしても、それまでに働いた分の給料は支払われます。労働基準法は、懲戒解雇と給料をまったく別の制度として考えているからです。

とはいえ、懲戒解雇となった以上、会社から損害賠償請求を受ける可能性もあるため、労働者は適切に対応することが必要です。

今回の記事では、懲戒解雇と給料の支払いを中心に、懲戒解雇と解雇予告手当の関係、会社から損害賠償請求を受けた場合の注意点についても解説します。

懲戒解雇と給料の関係

「懲戒解雇」とは、労働者が会社の規律に違反した場合や犯罪を犯した場合などに、会社がその労働者を解雇することをいいます。

懲戒解雇処分を受けると、自身に非があるとはいえ、大変ショックな出来事でしょう。

また、懲戒解雇されたということは、勤めていた企業からの収入がなくなることを意味するので、給料・解雇予告手当の支払いについて気になる部分も多いと思います。

ここでは、懲戒解雇と給料の関係を解説していきます。

懲戒解雇されても働いた分の給料はもらえる

懲戒解雇されても、それまでに働いた分の給料はもらうことができます。

懲戒解雇処分は、労働者に非があることを理由としてなされる制裁的な意味合いの強い処分です。

しかし、「給料」というものは、労働の対価として会社から支払われるものです。

会社はその全額を労働者に支払う義務を負っています(労働基準法24条1項)。これを「賃金全額払いの原則」と言います。

そのため、懲戒解雇処分を受けたとしても、それまでに働いた分に相当する給料はもらうことができます。

不当な懲戒解雇の場合は解雇後も給料が発生する

不当な懲戒解雇の場合は、解雇後も給料が発生します。

使用者(会社)が労働者を解雇するためには、①客観的に合理的な理由と②社会通念上の相当性が必要であると規定されています(労働契約法16条)。

使用者の懲戒権の行使は、対象となる労働者の行為の性質・態様その他の事情に照らして、それが客観的に合理的理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、懲戒権の濫用として無効となります(労働契約法15条)。

不当解雇された方の多くは、解雇無効を主張し、その和解や合意がなされる日までの賃金を請求することになります。

たとえば、解雇された日から一年後に、「実はその解雇は不当であり無効だった」と合意がなされたとします。

解雇が無効となると、解雇されたことになっている日から合意の日まで実際は従業員としての地位が継続していたことになり、その期間の給料は未払いということになります。

そのため、不当解雇されてから合意がなされるまでの期間の賃金を請求することができるのです。

解雇の要件について詳しく知りたい方は、『会社から突然解雇されたらどうする?違法な解雇への対処法や相談先は?』の記事をご覧ください。

懲戒解雇と損害賠償請求|給料との相殺は原則禁止

懲戒解雇処分を受けても、その時点で発生している給料については、労働の対価として受け取ることができます。

しかし、懲戒解雇となった理由次第では、会社側から損害賠償請求を受ける可能性があるため注意が必要です。

会社から損害賠償を請求されるケース

懲戒解雇処分を受ける理由としては、度重なる規律違反や犯罪などが代表例ですが、その行為が原因となって会社に損害を与えてしまうことがあります。

具体的には、業務上横領罪が典型例です。

業務上横領罪は、使い込んだお金がそのまま会社の損害となるため、会社はその損害を回復するために、お金を使い込んだ社員に対して、損害賠償を請求することがあります。

このように、懲戒解雇処分の理由となる行為によって、会社に損害が生じた場合には、会社から損害賠償請求を受ける可能性があります。

損害賠償請求をされた場合の注意点

会社から損害賠償請求をされた場合、自身の行為によって本当に会社に損害が生じているのか、請求額は妥当なのかを注意する必要があります。

会社が懲戒解雇した労働者に対して損害賠償を請求するためには、少なくとも会社に「損害」が発生していることが必要です。

「会社を裏切った」「許せない」などと感情的になって、会社に損害が発生していないにもかかわらず、労働者を苦しめる目的で損害賠償を請求するケースもあります。

また、会社に損害が発生していることは確かであるものの、その損害を高く見積もって請求してくるケースもあります。

損害賠償請求は金額が高額になることも多いです。請求に応じる前に、請求金額の妥当性について専門家に相談することをおすすめします。

損害賠償金と給料との相殺は原則として禁止されている

先に見たように、懲戒解雇にしたからといって、その時点で労働者に発生している給料については、会社は支払う義務を負っています。

そのため、労働者の給料を損害賠償金と相殺することは原則として禁止されています。損害賠償を請求されたとしても、給料は支払ってもらえるのです。

もっとも、例外的に給料との相殺が許される場合もあります。

それは、労働者が給料との相殺に同意している場合です。

判例上は、労働者の合意があり、その合意が労働者の自由意思に基づいてなされたものである合理的な理由が客観的に存在する場合には、賃金全額払いの原則に反しないとされています。

懲戒解雇と解雇予告手当の関係

解雇予告手当とは、雇用主が30日以上前に解雇予告を行わなかった場合に、労働者に対して支払われる手当金のことです。

ここでは懲戒解雇された場合でも、解雇予告手当はもらえるのか解説していきます。

懲戒解雇されても解雇予告手当がもらえる場合がある

懲戒解雇されてしまっても、場合によって解雇予告手当がもらえることがあります。

労働者を解雇する場合、雇用主はどんなに正当な理由があっても、30日以上前に解雇予告をしなければならないと定められているからです。

懲戒解雇の場合も、原則30日以上前の解雇予告が必要とされています。

そのため、30日以上前の解雇予告がなかった場合や即日解雇された場合には、解雇予告手当をもらうことができます。

労働者側に明らかな過失がある場合はもらえない

労働基準法20条の「労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合」に該当すれば、解雇予告の手当の支払いは不要であるとされています。

「労働者の責に帰すべき理由」には、以下のようなものが挙げられます。

労働者の責に帰すべき理由の例

  • 会社の名誉にかかわる重大な犯罪行為(殺人など)
  • 業務上の立場を利用した犯罪行為(経理担当の横領など)
  • 重大な経歴の詐称(高卒の人が大卒と詐称して入社するなど)
  • 重大、もしくは執拗なハラスメント など

必ずしも「懲戒解雇=労働者の責に帰すべき事由」となるわけではありません。

もし懲戒解雇を受けて解雇予告手当がもらえないという場合は、まずは上記のパターンに当てはまっていないかを確認する必要があります。

ただし、労働者に明らかな過失がある場合も、会社は労働基準監督署長に「解雇予告除外認定」を申請して認定を受ける必要があります。

解雇予告を行わなくていい例外に当たるかどうかは、労働者の勤務状況や地位などを考慮に入れて判断されます。

解雇予告手当の支払いがない場合でも、実際に会社が解雇予告除外認定を申請しているケースは意外と少ないです。

また、解雇予告除外認定が認められる条件は厳しく、申請しても認められないこともあります。

実際は、解雇予告除外認定にはある程度の調査・期間がかかるため、あえて手当を支払う会社もあるようです。

労働者側に明らかな過失があること以外にも、法的に解雇予告手当がもらえないケースがあります。詳しく知りたい方は、『解雇予告手当がもらえない!法的にもらえないケースや請求方法を解説!』の記事もご覧ください。

懲戒解雇の相談窓口は?

最後に懲戒解雇された場合の相談窓口をご紹介します。

弁護士

懲戒解雇されて給料・解雇予告手当が支払われない場合の相談窓口として弁護士が挙げられます。

弁護士に相談することで、懲戒解雇の正当性の判断から、給料・解雇予告手当が支払われない場合の対処法についてアドバイスをもらうことができるでしょう。

また、そもそも懲戒解雇が不当である場合には、不当解雇されてから合意がなされるまでの期間の賃金を請求することができます。

弁護士に正式に依頼する場合には弁護士費用がかかりますが、代理人として会社と直接の交渉や法的な手続きを行ってくれます。

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懲戒解雇されたら弁護士に相談!弁護士に相談すべき理由を解説

労働基準監督署

労働基準監督署は、事業所が労働基準法を守っているかどうかを監督する機関です。

懲戒解雇処分を受けたとはいえ、それまでに給料が発生している場合には、会社は労働者に対して給料を支払わなければなりません。

懲戒解雇を理由に給料を支払ってくれない場合には、労働基準法違反となります。

タイムカードや勤怠状況など給料が発生していることがわかる証拠を持参することにより、労働基準監督署から会社に指導・勧告を行ってくれることがあります。

指導・勧告により、給料や解雇予告手当を支払ってもらえる可能性はあるでしょう。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

詳しくはこちら

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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