残業代請求における和解金の相場は?和解金は何で決まる?

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残業代請求と和解金

「残業代請求における解決金の相場はどのくらい?」
「和解したら本来の残業代よりも少ない額しか回収できない?」

残業代の未払いは違法であり、本来であれば使用者(会社)が全額支払うべきものです。しかし、実際には残業代請求をしてもその全額ではなく、いくらか譲歩した和解金で和解することが多くあります。

残業代請求の和解金に確固たる相場はありません。労働者の給料や残業時間によっても、和解金額が異なるからです。

この記事では、残業代請求の和解金相場の推定や、和解金は何で決まるのかを解説していきます。

残業代請求の和解金の相場がない理由

そもそも残業代請求における和解とは?

和解金は文字通り、和解に際して支払われる金額です。

和解というのは、トラブルの当事者がお互いに譲歩してトラブルを終結させる約束(契約)のことです。

残業代請求でいえば、「請求している残業代の金額のうちいくらかを使用者が支払うことで、残業代請求におけるトラブルを解決済みとする」ということになるでしょう。

使用者が支払う金銭は本来残業代ですが、和解の際には「トラブルを解決するための金銭」という意味で、和解金や解決金といった別の名称になることが一般的です。

和解金が支払われることで、残業代請求におけるトラブルが解決することとなります。

和解金相場の確定が難しい理由は事案の違い

和解金の相場の確定が難しい理由は、「和解がお互いの譲歩によってなされる以上、そもそもいくら残業代を請求していたかによって和解金の額も変わる」からです。

当然、請求する残業代は、給料や残業時間、勤めている年数などの事案によって異なります。

一般的には、請求金額が高ければ和解金の額も高くなると言えるでしょう。

もっとも、これは請求金額に一定の法的な根拠があることが前提です。

残業代請求における和解金の相場の推定

残業代請求の和解金相場はありませんが、実際にどの程度の金額が動いているかは気になるところだと思います。

そこで、残業代請求だけの資料ではありませんが、和解金の相場に近いと思われる報告書の内容をご紹介します。

和解金の相場を知るには労働審判の調査結果が有効

労働審判は、会社との労働トラブルを「労働審判委員会」という第三者を交えて解決する制度です。

参考:労働審判手続

対象となるトラブルは幅広く、残業代請求はもちろんのこと、解雇や配置転換、ハラスメントなど、会社と労働者個人とのトラブルであればほとんど対象となります。

また、労働審判委員会は、労働審判官(裁判官)1名と労働審判員2名から構成されます。2名の労働審判員は裁判官ではありませんが、労働関係についての専門的知識・経験を持っている人が選ばれます。

労働審判では、この労働審判委員会が当事者(会社と労働者)間の労働トラブルについて、和解による解決を促します。

このような仕組みは「調停」と呼ばれており、労働審判が利用される事件のうち、70%以上が調停によって終了しています。つまり、和解がまとまったということです。

労働審判で調停が成立した際に支払われる金銭は、「解決金」という名目になることが一般的ですが、意味は和解金とほぼ同じです。

したがって、労働審判における解決金額を確認すれば和解金の相場に近い情報が得られると思われます。

残業代請求以外も含んだ和解金の相場に関係する資料

東京大学社会学研究所が発表している「第2回 労働審判制度についての意識調査 基本報告書」という資料では、労働審判を利用した労働者・使用者にアンケート調査を行った結果が報告されています。

調査では、残業代請求以外のトラブル解決に労働審判を利用した人の回答も含まれており、賃金関係のトラブルで利用した人は半分程度となっています。

特に、解雇に関するトラブルでの利用も相当数含まれているため、残業代請求における和解金の相場資料とは言えませんが、解決金など支払われた金銭に関する労働者側の回答は以下の通りです。

解決金の金額労働者の割合
50万円未満19%
50万円〜100万円未満20.8%
100万円〜150万円未満18.5%
150万円〜200万円未満11.9%
200万円〜300万円未満7.7%
300万円〜500万円未満12.5%
500万円〜1000万円未満7.7%
1000万円以上1.8%

※第2回 労働審判制度についての意識調査基本報告書より

中央値は120万円、平均値は195.3万円です。

一応、50万円から200万円程度となることが多いとは言えそうですが、解決金額はかなりばらついています。

この結果からも、残業代請求の和解金に確固たる相場はないことがわかるでしょう。

残業代請求の和解金は何で決まるのか

和解金に影響を与える要素①|残業代請求額の計算

和解金に大きな影響を与える要素の1つ目は、「請求金額の大きさ」が挙げられます。

残業代請求を考えている方は、請求金額がどのように決まるのかを知っておく必要があるでしょう。

残業代請求では、まず、未払いの残業代額を計算しなければなりません。

残業代の額は、大まかには以下のように計算されます。

残業代の計算方法

残業代=残業1時間あたりの賃金額(単価)×残業時間数

ここからすでに支払われている残業代を差し引いた金額が、未払いの残業代額となります。

さらに、基本的に未払いの残業代額に対して年3%分の遅延損害金を追加して請求することができる(民法404条)ため、これが会社に対する請求額ということになります。

計算に関する要素のうち、残業代請求の事案の多くは、残業時間数が請求額の重要なポイントとなります。

残業時間数が長ければ長いほど請求金額も高くなるわけですが、会社側も争ってきますので、しっかりと根拠を持っておくことが重要です。

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和解金に影響を与える要素②|残業代請求の証拠

和解金に大きな影響を与える要素の2つ目は、「残業した時間数を示す証拠があるか」です。

残業代請求をする際には、証拠をもとに金額を算定し、会社に残業代を請求していくことになるでしょう。証拠がなければ労働審判や裁判に訴えても認められる可能性が低くなります。

つまり、証拠の有無で請求できる金額も変わるため、和解金額には証拠がどの程度揃っているかという点も大きな影響を与えるということです。

もっとも、残業した時間数についての証拠としては、タイムカード等の公式な勤怠記録以外にも以下のものが有効です。

残業時間を示す証拠として有効なもの

  • タイムカード等の公式な勤怠記録
  • 業務用PCの使用時間の記録・ログイン時間の記録
  • ビジネスチャットやメールの送信履歴
  • 顧客を管理している社内システムへの書き込み記録やアクセス記録
  • 会議の議事録(開始時刻や終了時刻が記載されているもの)

可能な限り、証拠を揃えておくことが和解金の面でも有利に働くでしょう。

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和解金に影響を与える要素③|残業代請求についての弁護士の有無

和解金の額に影響する要素の3つ目は、「残業代請求を弁護士に依頼しているかどうか」です。

なぜなら、労働審判や労働裁判のほとんどは弁護士が代理人として遂行しているため、弁護士を立てていないと会社側の主張(反論)にうまく対応できず、和解金額が低くなってしまうからです。

弁護士は根拠をもって請求可能な金額を見極めることができ、証拠の収集と活用にも長けています。

適切な和解金を得るためには弁護士に相談・依頼することが効果的と言えるでしょう。

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まとめ

この記事では、残業代請求の和解金の相場について解説をしました。

残業代請求の和解金に確固たる相場はありません。

しかし、残業をしている証拠を収集のうえ、弁護士に依頼し適切なアドバイスを受けることで、根拠をもって残業代を請求することが可能です。

弁護士は残業代未払いの問題解決に向けて、労働者のサポートを行います。残業代に関してお悩みの方は、弁護士に相談してみましょう。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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