パワハラを弁護士に相談するメリット・デメリット、費用を解説!
職場における暴力や暴言などのパワーハラスメント(パワハラ)でお悩みの方は、弁護士に相談すると、どのようなメリットがあるのか気になっている方は多いのではないでしょうか。
パワハラを弁護士に相談すると実際にパワハラに該当するのか、パワハラへの今後の対処法のアドバイスをもらうことができます。
また、自分で対処が難しい場合には代理人として会社との交渉、損害賠償の請求などを依頼することも可能です。
この記事では、パワハラを弁護士に相談するメリット・デメリットや弁護士費用、相談する間に準備しておくことについて詳しく解説します。
目次
パワハラを弁護士に相談するメリット
パワハラの相談は、弁護士だけでなく社内の相談窓口や厚生労働省の総合労働相談コーナーなどでも行えます。
しかし、弁護士に依頼することで、パワハラの差し止め要求や代理人として会社との交渉、損害賠償の請求が可能です。
パワハラを弁護士に相談するメリットは、以下が挙げられます。
パワハラを弁護士に相談するメリット
- 専門家のアドバイスを受けられる
- パワハラの差し止め要求書を作成する
- 損害賠償の請求ができる
- 労働審判や裁判の負担が軽減される
- 暴行などの悪質なパワハラの場合は刑事告訴も視野に
専門家のアドバイスを受けられる
労働問題を専門的に扱っている弁護士に相談すれば、パワハラの法律や事例に精通しているため、最適な解決策をアドバイスしてもらえます。
パワハラの差止め請求書を作成する
在職中にパワハラ被害を受け続けている場合、加害者や会社に対して差止め請求書を送付することで、パワハラの行為の停止を求めることができます。
弁護士にパワハラの差止め請求書を作成してもらい、会社にパワハラの中止を要求しましょう。
損害賠償の請求ができる
直接的な暴力により身体的な障害を受けたり、精神的な苦痛によりうつ病になったりした場合には、損害賠償の請求が可能です。
パワハラでは一般的にパワハラの加害者と会社の双方に損害賠償を請求します。
「会社にも損害賠償を請求できるの?」と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれませんが、会社は雇い主として使用者責任を負っています(民法715条)。
使用者責任は、被用者(会社が雇っている人)が仕事に関して不法行為による損害を生じさせた場合に、雇主である会社も責任を負うという規定です。
そのため、職場におけるパワハラで被害を受けた場合には、使用者責任により会社にも損害賠償を請求することができるのです。
また、パワハラを会社側が適切に対応しなかった場合、安全配慮義務違反・環境配慮義務違反として、会社に責任を問うことができます(債務不履行責任、民法415条)。
労働審判や裁判の負担が軽減される
会社と話し合いの場をもうけても会社がパワハラを認めない場合には、労働審判や裁判を行うのも選択肢となります。
事前に弁護士に相談しておくことで、証拠の集め方や法的なアドバイス、裁判所への申し立て手続きなどの協力が得られます。
関連記事
・労働審判とは?制度の内容や手続きの流れを弁護士がわかりやすく解説
悪質なパワハラの場合は刑事告訴も検討できる
侮辱罪や暴行罪に該当するような悪質なパワハラの場合は、刑事告訴することも可能です。
刑事告訴する場合は被害届の提出が必要ですが、弁護士に相談することで、手続きをスムーズに行えます。
なお、刑事告訴したいとお考えの場合は、刑事分野を扱う弁護士に相談したほうがいい場合もあります。
パワハラを弁護士に相談するデメリット
弁護士に相談することは、メリットばかりではありません。
受け取る慰謝料より弁護士費用の方が高額になる可能性や会社にはいられなくなる可能性があることも理解しておきましょう。
パワハラを弁護士に相談するデメリットは以下が挙げられます。
パワハラを弁護士に相談するデメリット
- 相談費用が発生する
- 受け取る慰謝料より弁護士費用の方が高額になる可能性
- 会社にはいられなくなる可能性が高い
費用が発生する
相談する弁護士事務所によっては、相談費用が発生します。
社内の相談窓口や厚生労働省の総合労働相談コーナーなどは、無料で相談できるため、相談から費用が発生してしまう可能性がある点はデメリットといえるでしょう。
しかし、最近では、初回の相談料を無料に設定している弁護士事務所も多く見受けられます。相談してから対処法を考えたいという方は、無料相談を行っている弁護士事務所を探してみましょう。
パワハラの無料相談窓口について知りたい方は、『パワハラの相談ができる無料窓口5選!相談前に準備すべき事も紹介』の記事もご覧ください。
受け取る慰謝料より弁護士費用の方が高額になる可能性
パワハラで受け取れる慰謝料は、被害内容により異なります。精神的な苦痛で損賠賠償請求した場合に受け取れる慰謝料の相場は50~100万円です。
パワハラに対する訴訟を起こした場合の弁護士費用の相場は50万円を超えることも珍しくないため、場合によっては、受け取れる慰謝料より弁護士費用の方が高額になる可能性もあります。
会社にはいられなくなる可能性が高い
従業員が会社に対して弁護士を伴ったパワハラの交渉を行うことは、滅多にあることではないでしょう。
パワハラを弁護士に相談し、差し止め請求や交渉で解決せずに労働審判や訴訟にまで発展することになれば、会社と長期的に争うことになります。
正当な要求だとしても、会社に外部の弁護士が介入することをこころよく思わない従業員もいるかもしれません。
弁護士にパワハラの相談をすることで、会社に居づらくなる可能性も考慮しておきましょう。
もっとも、弁護士に相談する段階では、会社に居づらくなることは心配する必要はありません。弁護士は守秘義務を負っているので、弁護士事務所に相談した事実が外部に漏らされることはないでしょう。
パワハラの相談を弁護士にする場合の費用
パワハラを弁護士に相談する場合の費用の内訳は、相談料、着手金、報酬金、実費になります。
相談料や着手金が無料の弁護士事務所もありますが、トータルの費用を確認することが重要です。
費用 | 内訳 |
---|---|
相談料 | 無料もしくは有料 1時間あたり1万円程度が相場 |
着手金 | 弁護活動の着手時に発生する弁護士費用 無料、数十万円程度の定額、または経済的利益*の10~20%と設定されることが多い |
報酬金 | 弁護活動の成果に応じて支払われる弁護士費用 経済的利益の10~20%+〇万円、と設定されることが多い |
実費 | 弁護活動で実際に支払われた費用 郵便代、交通費、書類作成代など |
※弁護士の活動により回収できた金額
相談料
相談料は、弁護士に相談する際にかかる費用です。相談料の相場は30分5,000~10,000円が一般的ですが、相談料無料や初回無料、30分までは無料としている弁護士事務所もあります。
相談する前には、弁護士に何を望むのかを明確にし、関係する書類を準備しておきましょう。相談がスムーズに進むので、相談料の節約になります。
着手金
着手金は、弁護士にパワハラの解決を依頼するための費用です。問題が解決できなかった場合でも支払う必要があります。
着手金は弁護士事務所によって異なり、数十万円程度の定額、または経済的利益の10~20%と設定されることが多いです。着手金を無料にしている事務所もあります。
報酬金
報酬金(成功報酬)は、裁判で勝訴した場合や損害賠償の請求ができた場合に支払う費用です。
一般的には、請求金額に対する割合で決めていることが多いです。弁護士費用の中では最も大きな割合を占める費用なので、しっかり確認しておきましょう。
実費
実費とは、弁護士が裁判所まで行く場合の交通費や、書類のコピー代、収入印紙代などです。
実費は着手金に含まれない場合が多いので、弁護士費用を計算をする場合には事前に確認しておきましょう。
パワハラの相談を弁護士にする前に準備しておくこと
弁護士にパワハラの相談をして、実際にパワハラ問題の解決を依頼するかどうかを判断するためには、パワハラの証拠が必要になります。
また、パワハラ以外に、他の労働問題が発生していないかも確認しておきましょう。
パワハラの事実を客観的に証明できる証拠を集めておく
パワハラは、本人の証言だけでは立証することが難しいです。パワハラを立証するためには、客観的に証明できる証拠が求められます。
具体的には、以下のような証拠をそろえるといいでしょう。
パワハラの証拠となり得るもの
- 暴言の内容を記録した音声メモ
- 高圧的な文章が記載されたメール
- 病院の診断書
- 被害者が作成した日記
音声データやメールなどがない場合でも、パワハラを受けた日時や内容を詳細に書いたメモがあれば、有効な証拠になりやすいです。
うつ病と言った診断が出た場合には、医者からの診断書も証拠になります。
パワハラの証拠については『上司をパワハラで訴える方法は?訴える際に必要な証拠を解説』の記事もご覧ください。
パワハラ以外に問題がないかを確認しておく
パワハラが発生しているような会社は、極端な長時間労働やノルマを課している、いわゆるブラック企業である可能性も高いです。
パワハラといった精神的な苦痛だけでなく、残業代・給料などの賃金未払いや不当解雇、違法な退職勧奨などの労務問題も発生していないか確認しましょう。
パワハラの訴訟では、証拠不足などでパワハラが認められなかったり、損害賠償の請求が認められない場合があります。
しかし、同時に賃金の未払いを請求をしている場合は、賃金の未払いが認められるケースがあります。
パワハラで損害賠償請求するかどうかを判断する際には、他の労務問題に対する請求も行えるかが重要です。パワハラ以外に他の労働問題が発生していないかを確認しておきましょう。
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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了