交通事故で網膜剥離となったらすべきこと|後遺症が残った場合も
交通事故により網膜剥離になると、視力が大きく低下するなど、重篤な後遺症が残る可能性があります。
加害者側に請求できる金額も大きくなる可能性があるので、どのような請求ができるのか、相場の金額を請求するために何をすべきなのかをしっかりと確認しておくべきでしょう。
本記事では、交通事故により網膜剥離となった場合において知っておくべき点について解説を行っています。
交通事故の被害者としてどのようなことを行うべきか知りたい方は、是非ご覧ください。
目次
網膜剥離とは
交通事故で網膜剥離になる原因
網膜とは眼の奥にある薄い膜のことであり、網膜で感じ取られた光の刺激が脳に伝えられ、視界に入ったものを認識することができます。
この網膜が剝がれることを網膜剥離というのです。
交通事故で頭部に強い衝撃を受けると、網膜に裂け目や穴が開くことがあります。この裂け目や穴から硝子体が網膜に侵入し、網膜が剥離することがあります。
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交通事故による網膜剥離の症状
交通事故により網膜剥離となった場合には、以下のような症状が生じます。
- 飛蚊症
目の前を浮遊する黒い点や糸状の物が見えることです。 - 光視症
目に光が当たっていないのに、目の前で光が走るような感じがすることです。 - 視野の欠損
目の一部が見えなくなることです。
これらの症状が現れた場合は、すぐに眼科を受診してください。
交通事故で網膜剥離の治療
交通事故により網膜剥離となった場合には、多くのケースで手術が必要となります。
具体的な手術の方法は、以下の通りです。
- 光凝固術
レーザーで網膜を焼き固め、穴が広がるのを防ぎます。レーザー治療は、局部麻酔で行うため、手術の痛みはなく、短時間で完了します。 - 硝子体手術
硝子体手術は、網膜に裂け目ができて硝子体が出血している場合に、出血で濁っている硝子体を除去するというものです。およそ10日ほどの入院が必要となります。 - 網膜復位術
剥がれてしまった網膜を元の位置に戻す手術です。こちらも10日ほどの入院が必要となります。
網膜剥離により後遺症が残った場合にすべきこと
後遺障害等級の認定を受けよう
交通事故により網膜剝離となり、治療を受けたが後遺症が残った場合には、後遺障害が生じているとして、後遺障害等級認定の申請を行いましょう。
申請により後遺症の症状が後遺障害に該当すると認められると、後遺障害の程度に応じた後遺障害等級が認定されます。
後遺障害等級の認定を受けることで、後遺障害により生じる損害を加害者側に請求することが可能となるのです。
後遺障害等級の認定を受ける流れは、以下の通りとなります。
- 医師に後遺障害診断書を作成してもらう
- 後遺障害診断書以外の必要な書類を揃える
- 審査機関である損害保険料率算出機構に書類を提出する
- 審査結果の通知を受ける
後遺障害診断書以外の必要な書類の収集方法については、加害者側の任意保険会社に任せる事前認定と、被害者自身が行うという被害者請求という2つの方法があります。
事前認定による方が被害者自身の負担は小さくなるものの、適切な書類を揃えてもらえるかが不明確というリスクがあるのです。
そのため、適切な後遺障害等級の認定を受けるためには、被害者請求による申請を行うべきでしょう。
なお、書類収集の負担については、弁護士に依頼することで軽減することが可能です。
後遺障害等級認定について詳しく知りたい方は『交通事故の後遺障害等級が認定されなかった理由と防止法|結果は変えられる?』の記事をご覧ください。
網膜剥離で認められる後遺障害等級
交通事故により網膜剝離となった場合には、失明もしくは視力の低下や、視野が狭くなるという視野障害などの後遺症が残る場合があります。
これらの後遺症において認められる可能性のある後遺障害等級は、以下の通りです。
失明を含む視力低下により認められる後遺障害等級
失明や視力が低下することで認められる可能性のある後遺障害等級は、以下のようなものとなります。
後遺障害等級 | 症状 |
---|---|
1級1号 | 両眼が失明 |
2級1号 | 1眼が失明、他眼の視力が0.02以下になった |
2級2号 | 両眼の視力が0.02以下になった |
3級1号 | 1眼が失明、他眼の視力が0.06以下になった |
4級1号 | 両眼の視力が0.06以下になった |
5級1号 | 1眼が失明し、他眼の視力が0.1以下になった |
6級1号 | 両眼の視力が0.1以下になった |
7級1号 | 1眼が失明し、他眼の視力が0.6以下になった |
8級1号 | 1眼が失明した、または、 1眼の視力が0.02以下になった |
9級1号 | 両眼の視力が0.6以下になった |
9級2号 | 1眼の視力が0.06以下になった |
10級1号 | 1眼の視力が0.1以下になった |
13級1号 | 1眼の視力が0.6以下になった |
視力については、メガネやコンタクトレンズを付けたうえで図る矯正視力になります。
失明については、「眼球を摘出したもの」や「明暗を弁じ得ないもの」などが該当するでしょう。
視野障害により認められる後遺障害等級
視野障害により認められる後遺障害等級は、以下の通りです。
後遺障害等級 | 症状 |
---|---|
9級3号 | 両眼に半盲症、視野狭窄、または、視野変状を残すもの |
13級3号 | 片眼に半盲症、視野狭窄、または、視野変状を残すもの |
どのような視野障害が生じているのかについては、視野計における視野角度の合計や視野の欠損している分により決まります。
注意すべき他の後遺障害|外傷性白内障など
交通事故で網膜剥離が生じるようなケガを負った場合には、網膜剥離以外にも目に関するケガを負い、後遺障害が生じる恐れがあるといえるでしょう。
考えられる症状として、以下のようなものがあげられます。
- 外傷性白内障
- 眼窩底骨折
- 水晶体亜脱臼
- 硝子体出血
どのようなケガが生じ、どのような後遺症が生じているのかを医師に確認することで、適切な請求が可能となります。
交通事故による網膜剥離で請求できる賠償金
慰謝料|慰謝料には2種類あり
慰謝料とは、交通事故によって精神的苦痛を受けたことに対する賠償金です。
交通事故により網膜剥離となった場合には、以下の2種類の慰謝料を請求できる可能性があります。
- 入通院慰謝料
- 後遺障害慰謝料
それぞれの慰謝料の内容と、計算方法について解説を行います。
入通院慰謝料
入通院慰謝料とは、交通事故によるケガの治療のために入院や通院をすることになったことで生じる精神的苦痛に対する慰謝料です。
入通院慰謝料の金額は入通院の期間に応じて決まり、具体的には、以下の表を用いることになります。
後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料とは、交通事故により後遺障害となったことで生じる精神的苦痛に対する慰謝料です。
そのため、後遺障害等級の認定を受けることで請求が可能となります。
後遺障害慰謝料の金額は、認定された後遺障害等級に応じて決まります。
後遺障害等級ごとの慰謝料額は、以下の通りです。
等級 | 相場額 |
---|---|
1級・要介護 | 2,800 |
2級・要介護 | 2,370 |
1級 | 2,800 |
2級 | 2,370 |
3級 | 1,990 |
4級 | 1,670 |
5級 | 1,400 |
6級 | 1,180 |
7級 | 1,000 |
8級 | 830 |
9級 | 690 |
10級 | 550 |
11級 | 420 |
12級 | 290 |
13級 | 180 |
14級 | 110 |
治療関係費
治療関係費とは、網膜剥離の治療のために必要となった費用全般をいいます。
具体的には、以下のような費用について請求が可能です。
- 治療のために生じた投薬代・手術代・入院費用
- 入院や通院のための交通費
- 入院中の生活雑費
治療費のために生じた投薬代・手術代・入院費用に関しては、加害者側の任意保険会社が立て替えてくれることが多いでしょう。
保険会社による立て替えがなされない場合は、被害者自身が一旦負担したうえで、加害者側に請求を行います。
休業損害|仕事を休んだことで生じる損害
休業損害とは、交通事故によって生じたケガの治療のために仕事に休んだことで生じる減収に対する賠償です。
休業損害の金額は、交通事故発生前の被害者の収入や、治療のために休業した日数に応じて決まります。
逸失利益|後遺障害による将来の減収
逸失利益とは、交通事故により後遺障害となったために生じる、将来の減収に対する補償です。
逸失利益の金額は、交通事故前の被害者の収入、後遺障害の程度、被害者の年齢などから判断されます。
網膜剥離では、視力の低下によって事故前よりできる仕事が大きく制限され、逸失利益の金額が高額になり可能性があるでしょう。
そのため、専門家である弁護士に正確な相場額を確認してもらうことをおすすめします。
交通事故で網膜剥離となったのなら弁護士に相談を
弁護士に相談することで生じるメリット
交通事故で網膜剝離となった場合に弁護士へ相談や依頼をすることで、以下のようなメリットが生じます。
- 適切な後遺障害等級の認定を受けられる
- 加害者側との示談交渉を代わりに行ってくれる
- 相場の金額で示談をすることができる
それぞれのメリットの具体的な内容について、解説を行います。
適切な後遺障害等級の認定を受けられる
後遺障害等級の認定を受けるためには、どのような症状が生じているのかを適切に説明する必要があり、専門知識が必要となってきます。
弁護士であれば、過去の経験や知識から必要な資料の収集を行ってくれるため、適切な後遺障害等級の認定が受けられやすくなるのです。
加害者側との示談交渉を代わりに行ってくれる
弁護士に依頼すると、被害者本人の代わりに弁護士が加害者との交渉の窓口になってくれます。
加害者側からの連絡が弁護士に対してなされるようになるので、被害者としては加害者側からの連絡によるストレスから解放され、治療や仕事の復帰に専念することができるのです。
相場の金額で示談することができる
交通事故の損害賠償請求は、基本的に加害者側との示談交渉により金額が決まります。
示談交渉の相手方は、多くのケースで、加害者が加入している任意保険会社の担当者となるでしょう。
しかし、保険会社は相場の金額が算出される基準である裁判基準ではなく、低額な基準が算出される自賠責基準や任意保険基準によって算出された金額で示談しようとしてきます。
保険会社からの提案に対して、増額交渉が必要となってきますが、示談交渉の経験が豊富な保険会社に増額交渉を行っても、簡単には応じてくれないでしょう。
弁護士に依頼を行い示談交渉を代わりに行ってもらうと、増額交渉が成功しやすく、相場の金額で示談が可能となります。
弁護士からの法的根拠のある請求がなされ、示談交渉が不調に終わると裁判となるおそれがあるため、保険会社が増額の請求を認めやすくなるためです。
交通事故で網膜剥離のとなった場合の弁護士費用
弁護士に相談や依頼をする際には、弁護士に支払うこととなる費用が気になる方が多いでしょう。
弁護士に支払う必要がある費用としては、以下のようなものがあります。
- 相談料
- 着手金
- 報酬金
- 実費
費用ごとの内容や具体的な金額について、解説を行います。
相談料
弁護士に相談を行う際に生じる費用です。
具体的な金額は法律事務所ごとに異なりますが、30分で5500円(税込)程度とするところが多いでしょう。
中には、初回の法律相談が無料であったり、交通事故の被害者については無料相談を受け付けているケースもあります。
着手金
着手金とは、弁護士に依頼する際に支払う費用です。
具体的な金額としては、22万~33万円(税込)程度となることが多いでしょう。
しかし、弁護士によっては着手金を無料とするケースもあります。
報酬金
報酬金とは、弁護士が依頼に成功した場合に受け取る費用です。
具体的な金額としては、被害者が得ることとなる経済的利益の1~3割程度となるでしょう。
着手金が少ないケースであるほど、報酬金の割合が高くなることが多いです。
実費
弁護士が依頼を遂行する際に生じた費用になります。
例えば、裁判所に出廷する際の交通費や、訴状を提出する際の切手・印紙代などです。
依頼の際に数万円を実費として預かり、依頼が終了した際に清算することが多いでしょう。
弁護士費用特約を利用すると負担が大きく軽くなる
弁護士費用の金額が気になる方は、弁護士費用特約が利用できるかどうかを検討してください。
弁護士費用特約とは、弁護士に支払う必要がある費用について、保険会社が代わりに負担してくれる特約です。
保険会社が設定してる負担金額の上限内で弁護士に依頼できることは珍しくないので、弁護士費用特約を利用すると、多くのケースで、金銭的な負担なく相談や依頼が可能となるでしょう。
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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了