セクハラ被害の相談ができる無料窓口7選!抱え込まずに相談しよう
セクシュアルハラスメント(セクハラ)被害は社会問題化しており、企業運営においてもその防止が求められています。
しかし、現状として、令和4年(2022年)のセクハラの相談件数は、6,849件と非常に多い数値となっています(参考:令和4年度雇用環境・均等部(室)における法施行状況について)。
セクハラ被害を受けている状況で働き続けることは大変な苦痛ですが、相談しづらい内容であり、被害を相談することへの不安などから1人で抱え込んでしまうこともあるでしょう。
この記事では、セクハラ被害でお悩みの方に向けて、できるだけ早く誰かに相談できるよう、無料相談窓口を紹介します。
目次
無料でセクハラ相談ができる相談先7選
セクハラの無料相談窓口
- 社内の相談窓口
- 総合労働相談コーナー
- 弁護士
- 法テラス
- 労働組合
- 女性の人権ホットライン
- 労働局の雇用環境・均等部(室)
セクハラ被害について誰かに相談したいと考えたとき、どこに相談すべきか迷ってしまうと思います。
下記では、相談窓口の特徴などを解説していきます。
社内の相談窓口
社内の相談窓口がある場合は、社内の窓口に相談するのも選択肢の一つになります。
社内の相談窓口であるため、費用は発生しないでしょう。
社内の相談窓口は、セクハラ・パワハラなどのハラスメントの対策に設置していることも多く、相談することで会社が対応し、問題を解決できる可能性もあります。
ただし、社内のセクハラ相談窓口に実際に相談したものの、納得のいく対応をしてくれない場合もあります。
また、設置されているだけで、窓口が適切に機能していない可能性も考えられます。
相談しても対応が不十分な場合や通報したことによる不利益を心配されている方は、外部の窓口に相談することを検討すべきでしょう。
総合労働相談コーナー
厚生労働省が管轄する「総合労働相談センター」は、さまざまな労働トラブルについての相談を受け付けています。
セクハラに関しても相談可能です。
総合労働相談コーナーは、全国の労働基準監督署や都道府県労働局の中に設置されているため、お住まいの地域にかかわらず、対面での相談が受けやすいのがメリットです。
また、無料で相談できるのはもちろん、予約も必要ありません。相談者のプライバシーの保護にも配慮してくれるので、安心して相談できるでしょう。
弁護士
セクハラに関するお悩みは、法律の専門家である弁護士に相談可能です。無料で相談できる弁護士事務所もあります。
総合労働相談コーナーなどへの相談は、あくまで相談がメインであり、法的に強制力をもったトラブル解決に向かない面があります。
一方で、弁護士に相談すれば、労働者の立場から法的に強制力をもったトラブル解決法や、法的な手続きに関してアドバイスをもらうことができます。
なお、相談費用がかかる弁護士事務所もあるので注意が必要です。弁護士への相談料の相場は、1時間1万円(30分5,000円)です。
弁護士に相談するメリット・デメリットについて詳しく知りたい方は『パワハラなどのハラスメントは弁護士に相談!メリットとデメリットを解説』の記事もご覧ください。
法テラス
法テラスは国が設立した機関であり、セクハラを含めたあらゆる法的トラブルの無料相談を実施しています。
法テラスへの相談方法は、電話・メール・対面の3つです。電話は無料で利用でき、法テラスの仕組みに関する話や、弁護士の無料相談受付などの対応をしてもらえます。
また全国各地の法テラス事務所では、面談による問い合わせにも対応しています。メールは24時間365日無料で、問い合わせ可能です。
参考:法テラス
労働組合
労働組合は、労働者の地位向上や就労環境の改善のため、会社に対して働きかけをする団体です。
働きかけの主な方法は「団体交渉」と呼ばれ、労働組合が会社に対し、法的効力のある交渉を求めるものです。
団体交渉では、セクハラ被害そのものについての賠償はもちろん、会社としてどのような対応を取るのか(加害者の配置換えや指導など)、再発防止策の内容といったことも含めて話し合いができます。
団体交渉を申し込まれた会社側は、基本的に拒否することができません。また、最終的に交渉がまとまれば、その内容を法的効力のある書面にまとめることができます。
ただし、無料で相談できる労働組合もありますが、相談費用がかかる労働組合もあるので注意してください。相談後に労働組合への加入を求められるケースもあります。
女性の人権ホットライン
法務省が管轄する相談窓口に「女性の人権ホットライン」があります。
セクハラは人権侵害の1つに位置付けられているため、セクハラ被害も相談することができます。
無料相談を受け付けてくれるのは、各地の法務局職員や人権擁護委員といわれる人たちです。相談の結果に基づき、必要に応じて関係機関の紹介やアドバイスが得られます。
参考:女性の人権ホットライン
労働局の雇用環境・均等部(室)
労働局が管轄する雇用環境・均等部(室)は、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法などに基づき、男女がともに働きやすい雇用環境の整備を推進する部署です。
相談窓口も設置されており、職場内で発生したセクハラに関しても無料で相談することができます。
参考:雇用環境・均等部(室)所在地一覧(令和5年9月19日時点)
セクハラの相談は弁護士がおすすめ
ご紹介した無料相談窓口の中から、自分にあった窓口に相談してみましょう。
それでも、どの相談窓口がいいのか迷った方は、弁護士に相談するのがおすすめです。
弁護士に相談する一番のメリットは、労働審判や訴訟などの法的手続きを視野に入れた回答がもらえる点です。
ご自身の置かれている状況を踏まえて、今後どうすればいいのかアドバイスをもらうことができるでしょう。
「弁護士は敷居が高くて相談しにくい…」とお考えの方は、『セクハラを弁護士に相談する|費用・準備するもの・注意点を確認!』の記事を参考にしてください。
また、セクハラの内容によっては、慰謝料の請求が可能なケースもあります。訴訟の手続きは証拠が重要になるため、証拠の集め方なども知ることができます。
さらに相談後、弁護士に依頼すれば、代理人として会社との交渉などを行ってくれるため、面倒な手続きを一任できます。
関連記事
・セクハラで裁判を起こしたい!セクハラ訴訟の流れと訴えるときのポイント
セクハラ被害は抱え込まず相談しよう|セクハラの定義
セクハラは違法であり、かつ、重大な人権侵害です。
しかし、自分がセクハラだと不快に思った事柄が、法的にセクハラに該当するのか分からない方も多いと思います。
ここではセクハラの定義や要件について改めて確認しておきましょう。
どこからがセクハラになるのか詳しく知りたい方は『どこからがセクハラになる?結局セクハラの基準は?職場のセクハラ発言一覧』の記事もあわせてご覧ください。
セクハラの定義は?|対価型と環境型
セクハラは、男女雇用機会均等法11条1項において、下記の通り定められています。
法律上のセクハラの定義
- 職場において行われる行為で、
- 労働者の意に反する性的な言動について、それを受けた人が何らかの対応をすることで、労働条件について不利益を受けたりすること
- または性的な言動により就業環境が害されること
1を前提として、2か3のどちらかに該当すれば、法的にはセクハラということになります。
一般的には2を「対価型」と呼び、3を「環境型」と呼んで区別しています。
対価型のセクハラは、性的な事柄、言動等に対して拒絶するなど何らかの対応をしたことを原因として、解雇、降格などの客観的な不利益を受けることを指します。
環境型のセクハラは、性的な言動などによって働く環境が不快となり、就労に支障が出ることを意味します。
セクハラの具体例
対価型セクハラ
対価型セクハラは、たとえば「上司からデートに誘われ、それを断ったら異動になった」といった場合のセクハラを指します。
この場合、上司のデートの誘いが「労働者の意に反する性的な言動」に該当します。
誘いを断ることが「性的な言動に対する労働者の対応」であり、異動が「不利益を受ける」ことです。
デートの誘いの他にも、性的な関係の要求、身体に触れる、性的な事柄を公然と言うなどの行為も、「労働者の意に反する性的な言動」に該当し得ます。
これらを拒絶したり抵抗したりすることをきっかけとして、解雇、降格、異動など、労働条件について不利益が生じたら、対価型セクハラに該当します。
環境型セクハラ
環境型セクハラとは、たとえば「身体に触られる、執拗に交際を迫られる」といった直接的な行為のセクハラを指します。
また、性的なポスターをデスクに貼っていて、それを見たことによって不快・苦痛を感じ、仕事に集中できなくなることも環境型セクハラに該当します。
目に見える不利益がなくてもセクハラにあたりうるという点で、対価型セクハラのみならず環境型のセクハラについても知っておくことが重要です。
セクハラ被害は抱え込まず相談しよう
直接的な不利益がなくても環境型セクハラには該当するため、セクハラの可能性がある言動は非常に広いです。
ここまで挙げてきたもののほか、「男だから・女だから営業成績がいい」「〇〇さんと〇〇さんは付き合っている」といった発言もセクハラになり得ます。
セクハラは女性が受けるものだと考えがちですが、男性がセクハラ被害を受けるケースもあります。
このようにセクハラとなり得る言動や状況が広がってくると、どこまでがセクハラに該当し得るのか判断が難しくなるかと思います。
セクハラの判断において重要なポイントは、セクハラの定義にあった「労働者の意に反するものかどうか」「就業環境が害されたかどうか」です。
どちらも被害者側の感じ方に関わるもので、同じ性的な言動でも全く意に介さない人もいれば、非常に不快に感じる人もいます。
そのため、セクハラと感じた場合は、被害者の方がSOSを発信するというのが非常に大事になるのです。
裁判や行政機関からの指導の段階になれば、被害者の感じ方だけではなく、「一般的にどうか」という観点も含まれます。
しかし、やはりきっかけは「被害者自身が不快・苦痛に思っている」という発信です。それがないまま加害者や会社がセクハラに自発的に気付いて改善に向けて行動するということは、あまり期待できません。
「これはセクハラじゃないのかも」「周りの人も我慢している」などの理由で自身でセクハラ被害を抱え込む必要はありません。
セクハラ被害でお悩みの方は、ご紹介した無料相談窓口に相談してください。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了