内定取り消しに対して損害賠償請求はできるのか?弁護士が解説
「内定取り消しで損害賠償請求はできるのか」
「内定取り消しの相談は、いくらかかるのか」
内定通知を受けた会社から急に内定を取り消されてしまうと、不安になってしまいますよね。
内定取り消しが違法となるケースでは、会社に対して損害賠償を請求できます。
なお、内定取り消しを言い渡された理由にもよりますが、損害賠償や慰謝料の相場は、約50~100万円程度といわれています。
今回は、内定取り消しが違法となるケースや、損害賠償をするときのポイント、弁護士に相談するメリットについて解説します。
目次
違法な内定取り消しには損害賠償請求できる!
内定とは
法律上、内定とは「始期付解約権留保付労働契約」と呼ばれます。
始期付解約権留保付労働契約
実際に入社して就労するまで一定の期間があるという条件(始期付)で、かつ入社までにやむを得ない事由が発生したときには労働契約を取り消すという条件(解雇権留保付)における、労働契約のこと
内定取り消しが違法となるケース
法律上、雇用契約に留保された解約権(入社までにやむを得ない事由が発生したときに労働契約を取り消すことができるという権利)は、無制限に行使できるわけではありません。
合法的に行使されたかどうかというのは、解雇に準じて非常に厳しく審査されます。
内定取り消しが法律上有効になるためには、内定取り消しに至った過程において、合理的な理由と社会的な相当性があることが必要になります。安易な内定取り消しは、不当解雇と同様、無効になります。
こういったケースに該当する場合は、会社に対して損害賠償や慰謝料を請求することができます。
内定取り消しが認められるケース
内定取り消しは、必ずしも違法になるとは限りません。
内定取り消しについて客観的かつ合理的な理由があり、社会通念上相当であると判断された場合には、内定取り消しが認められます。
具体的には以下のようなケースが挙げられます。
内定取り消しが認められるケース
- 内定者が大学を卒業できなかった場合
- 健康上の問題がわかった場合
- 履歴書の内容に虚偽があった場合
- 内定後に刑事事件を起こした場合
- 経営不振でリストラ・整理解雇が必要な場合
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内定取り消しの損害賠償に関する判例
内定を取り消されてしまった採用者が、内定取り消しの無効と、前の職場を退職してから再就職するまでの未払い賃金や、慰謝料の支払いを求めて会社を提訴した事件です(『オプトエレクトロニクス事件』東京地判平16.6.23)。
転職活動をおこなっていたXさんは、Y社から採用内定の通知を受けました。それを受けて、最終面接待ちであったほかの企業を断り、元の職場も退職しました。
しかし、Y社はXさんに関する勤務態度などの悪い噂を聞き、最終的にXさんの採用内定を取り消しました。
Xさんは、これについて内定取り消しの無効と、前の職場を退職してから再就職するまでの未払い賃金や、慰謝料の支払いを求めてY社を提訴しました。
裁判所は、「噂は伝聞の域を出ないもので、証拠も存在しない」として、採用内定取り消しを違法であると判断しました。
結果として、裁判所はY社に対して2か月分の賃金と、慰謝料100万円の支払いを命じました。
内定取り消しで損害賠償請求をするときのポイント
「損害賠償や慰謝料をできるだけ多く勝ち取りたい」という方も多いのではないでしょうか。
内定取り消しで損害賠償請求をおこなううえで、重要なポイントを解説します。
損害賠償請求をするときのポイント
- 証拠を集めておく
- 内定取り消しの撤回を求める
- 弁護士に相談する
証拠を集めておく
慰謝料を増額したいという場合には、証拠を集めておくことが重要です。
有効的な証拠の例
- 内定通知書や内定取り消し通知書
- 自分が他社の内定を辞退したメール
- 就職活動の状況がわかる記録やメール
- 内定取り消しによるショックでり患した病気の診断書 など
証拠を集めておけば、弁護士などに相談する際に役立つうえ、いざ裁判になったときに主張が通りやすくなるといったメリットがあります。
内定取り消しの撤回を求める
内定取り消しを受けてしまったときには、すぐに内定取り消しの撤回を求め、就労の意思を明確にしておきましょう。
内定取り消しを撤回してもらうことで、社員としての地位を確認することができれば、本来であれば入社していた日以降の賃金を請求することができます。
また、内定取り消しについて争っているときに転職や就職をした場合、状況によっては「内定取り消しを承諾した」とみなされてしまうこともあるので注意が必要です。
弁護士に相談する
内定取り消しについて損害賠償請求をする際には、弁護士への相談をおすすめします。
会社に対して労働審判や訴訟を起こすといった場合では、法律の知識や高い専門性が要求されます。
個人からの訴えでは会社も話を聞いてくれないということも考えられるため、弁護士への依頼を検討してみてはいかがでしょうか。
損害賠償請求は弁護士に依頼しよう
先ほども言ったように、内定取り消しで損害賠償請求をする場合には、弁護士に依頼することをおすすめします。
やり取りや手続きを任せられる
弁護士に損害賠償請求を依頼するメリットとして、面倒なやり取りや手続きを一任できるということが挙げられます。
もし会社側が応じず裁判に発展してしまったという場合でも、弁護士であれば法的な対応を任せることができ、スムーズに問題に対処することができます。
適切な金額を計算・請求してもらえる
内定取り消しの慰謝料は、50~100万円がおおよその相場となっています。相談内容によっては、相場よりも高くなったり低くなったりします。
弁護士であれば、損害賠償や慰謝料、和解金について適切に計算してくれるというメリットがあります。
「実際にはより多く損害賠償を請求できたのに、個人で請求をおこなったことで言いくるめられてしまった」といったトラブルを防ぐことができます。
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弁護士費用相場と内訳
内定取り消しについて損害賠償請求を弁護士に依頼する際、一般的には以下のような料金体系になっていることが多いです。
項目 | 費用相場 |
---|---|
相談料(弁護士との相談時に発生する費用) | 1万円前後/1時間(無料のケースもある) |
着手金(弁護士に事件解決を依頼した際に発生する費用) | 10~30万円前後 |
成功報酬(依頼が成功した際に支払いが発生する費用) | 経済的利益(実際に依頼人が獲得した慰謝料や未払い賃金)の10%〜15%前後 |
実費(手続き上の費用) | 実際にかかった交通費・印紙代等 |
日当(裁判所まで弁護士に赴いてもらった際に発生する費用) | 1〜3万円前後 |
まとめ
違法な内定取り消しに対しては、会社に対して損害賠償や慰謝料を請求することができます。
内定取り消しで損害賠償請求をおこなう場合には、弁護士への相談をおすすめします。
弁護士に依頼すれば、やりとりや手続きを代理でおこなってもらえるほか、慰謝料などについて適切な金額を計算・請求してもらえるというメリットがあります。
弁護士に相談する際には、証拠を集めたり、内定取り消しの撤回を求めて働く意思を示したりしておくことが重要です。
無料相談をおこなっている弁護士事務所もありますので、探してみてはいかがでしょうか。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了