有給トラブルの相談は労働基準監督署がおすすめ!相談の流れを弁護士が解説

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有給休暇トラブル

「有給トラブルについて相談したいが、どこに相談窓口があるかわからない」
「有給休暇についてのトラブルを労働基準監督署に相談したい」

有給休暇(年次有給休暇)は労働者の権利であり、原則として会社の承認や許可を得ずに取得できます。

したがって、有給を申請しても拒否されたり、有給を申請したのに欠勤扱いにされたりした場合には、労働基準監督署に相談してみることをおすすめします。

労働基準監督署は、労働基準法を会社が守っているのかチェックしたり、安全衛生法などに基づく検査や労災の支給業務をおこなったりする機関です。

有給の取得を拒否するのは、労働基準法に違反する行為である可能性があるため、労働基準監督署に相談できます。

今回は、労働基準監督署が対応できる有給トラブルや、相談する流れや準備について解説します。

労働基準監督署が対応する有給トラブル

労働基準監督署(労基署)では、労働基準法に違反している労働トラブルを相談することができます。

有給休暇に関するトラブルについても同じで、対応できるケースと対応が難しいケースとがあります。

労働基準監督署が対応できるケース

労働基準監督署が対応できる有給トラブルは、以下のようなケースが挙げられます。

労基署が対応できる有給トラブル

  • 合理的な理由がないのに有給申請や取得を拒否された
  • 有給を申請したのに欠勤扱いにされた
  • 有給取得について理由を執拗に聞かれた
  • 退職前の有給消化を拒否された
  • 年5日間の有給取得義務を無視している など

こういったケースは労働基準法に違反している可能性が高いため、労働基準監督署の対応が期待できます。

有給が取れない場合の対処法については、『有給休暇が自由に取れない!ポイントと対処法を弁護士が解説』の記事で詳しく解説しています。

労働基準監督署の対応が難しいケース

以下のようなケースでは、労働基準監督署の対応が難しい場合があります。

労基署の対応が難しい有給トラブル

  • 有給取得の条件を満たしていなかった
  • 企業が時季変更権を行使したことについての相談 など

こういったケースは労働基準法違反のおそれが小さく、相談しても対応が難しいといえるでしょう。

関連記事

労働基準監督署に相談できる内容とは?メリット・デメリットから徹底解説

有給トラブルを労働基準監督署に相談する流れ

ご自身の状況が労働基準監督署に相談できるケースであれば、相談することをおすすめします。

労働基準監督署への相談は、以下のような流れで進んでいきます。

有給トラブルを相談する流れ

  • 有給に関する資料や拒否された証拠を集める
  • 労働基準監督署に相談・申告をおこなう
  • 内容によっては是正勧告や行政指導がおこなわれる

有給に関する資料や拒否された証拠を集める

有給トラブルを相談する前に、勤務先の違法行為の証拠を集めておきましょう。

労働基準監督署は、実際に違法行為の証拠がなければ、動いてくれないことが多いです。

有効的な証拠としては、以下のようなものが挙げられます。

有給トラブルについて有効的な証拠

  • 有給の取得条件がわかるもの
    就業規則、雇用契約書 など
  • 有給の残りの日数がわかるもの
    給与明細書、勤怠管理表 など
  • 有給を拒否されたことがわかるもの
    有給申請したメール、音声 など

事前に証拠を収集しておけば、労働基準監督署が対応しやすくなります。

労働基準監督署に相談・申告をおこなう

証拠を集めることができたら、労働基準監督署に相談や申告(通報・報告)をおこないましょう。

参考:厚生労働省「全国労働基準監督署の所在案内」

相談方法としては、直接窓口に出向くか、電話での相談を受け付けています。

窓口での相談は、平日の9時から17時まで受け付けているところが多いです。

夜間や土日に相談をしたい場合は、「労働条件相談ほっとライン」の利用をおすすめします。

なお、申告(通報・報告)の形をとると、会社と対立して争うことになってしまうため、なるべく穏便に済ませたい場合はあくまで相談に留めておくといいでしょう。

是正勧告や行政指導がおこなわれる

労働基準監督署が労働基準法違反であると判断した場合は、実際に事業場に立ち入り検査をしたのち、会社に対して是正勧告や行政指導をおこなうケースがあります。

会社に対して行政指導をおこなうことで、労働環境の改善が見込めます。

労働基準監督署に相談するメリット・デメリット

労働基準監督署に有給トラブルを相談するメリットとしては、企業に是正勧告や行政指導をおこなうことで、企業側の対応が改まる可能性があることが挙げられます。

相談料が無料であることや、匿名で相談できることもポイントです。

デメリットとしては、労働者の代理人として直接トラブルを解決してくれるわけではない点です。

また、必ずしも問題解決のための対応をしてくれるわけではないところにも注意が必要です。

解決しない場合は弁護士に相談

労働基準監督署に相談してもトラブルが解決しなかった場合には、弁護士への相談をおすすめします。

弁護士に依頼すれば、以下のようなメリットがあります。

弁護士に相談するメリット

  • 法的なアドバイスをもらえる
  • 法的手続きにも対応できる
  • 退職代行などほかの労働問題も対応できる

法的なアドバイスをもらえる

弁護士に依頼すれば、相談内容について法的なアドバイスをもらうことができます。

会社側が違法行為をしているかどうかを判断してくれると同時に、どのように対応していけばいいかアドバイスを受けることができます。

法的手続きにも対応できる

会社との交渉が決裂してしまったときには、労働審判や訴訟などの法的な手続きに移行する場合があります。

弁護士に依頼すれば、こういった法的手続きを一任でき、スムーズな対応が望めます。

退職代行などほかの労働問題も対応できる

「有給トラブルだけでなく、未払い残業代がある」「そのまま退職代行をお願いしたい」という方もいるでしょう。

有給トラブルだけでなく、ほかの労働問題の対応を任せることができるのも弁護士のメリットの一つです。

まとめ

有給を申請しても拒否されたり、有給を申請したのに欠勤扱いにされたりした場合は、労働基準監督署に相談することがおすすめです。

相談する際には、しっかりと証拠を集めたうえで相談することがポイントです。

労働基準監督署に相談してもトラブルが解決しなかった場合には、弁護士への相談を検討してみましょう。

弁護士であれば、ほかの労働問題にも対応できるほか、依頼者の代理人として会社と交渉できるメリットがあります。

無料相談をしている弁護士・法律事務所もあるため、探してみてはいかがでしょうか。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

詳しくはこちら

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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