交通事故の肩腱板損傷(肩腱板断裂)による後遺障害。示談金は増額できる?
交通事故により肩に強い衝撃が生じると、肩腱板損傷(肩腱板断裂)となることがあります。
交通事故により肩腱板損傷となることで生じる損害を示談金として支払うよう請求することが可能となり、後遺障害が生じている場合には示談金は高額になりやすいでしょう。
しかし、相場の示談金を請求するのは簡単ではありません。
本記事では、交通事故により肩腱板損傷となった場合に、示談金としてどのような損害を請求できるのか、相場の示談金を得るためにすべきこと、知っておくべきことについて解説を行っています。
目次
交通事故による肩腱板損傷(肩腱板断裂)とは?
交通事故による肩腱板損傷(肩腱板断裂)の症状や治療法などについてみていきます。
肩腱板損傷の症状について
肩腱板(かたけんばん)損傷とは、肩関節を支える4つの腱(小円筋、棘上筋、棘下筋、肩甲下筋)のうちの1本または複数本が断裂または損傷することです。
交通事故で肩腱板損傷を負う場合、肩を強くぶつけたり、手をついて転倒した際に肩をひねったりすると起こります。
肩腱板損傷の症状は、肩の痛みや腫れ、肩の動きの制限、脱臼しやすくなるといったものです。
肩腱板損傷の診断は、医師による問診と身体検査によって行われます。
また、必要に応じてレントゲン検査、エコー検査、MRI検査などが行われるでしょう。
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肩腱板損傷の治療方法
肩腱板損傷の治療は、損傷の程度によって異なります。
軽度な損傷の場合は、安静、アイシング、湿布、電気療法などの保存療法で治療します。重度の損傷の場合は、手術が必要となるでしょう。
肩腱板損傷の手術は、損傷した腱を修復する手術です。手術方法にはいくつかの種類がありますが、最も一般的なのは腱の縫合手術になります。
肩腱板損傷の手術後、リハビリテーションを行います。
リハビリテーションでは、肩の可動域を徐々に回復させ、筋肉を鍛えます。リハビリテーションの期間は、個人差がありますが、一般的に数か月から半年程度となるでしょう。
肩腱板損傷は、早期に治療することが大切です。早期に治療することで、痛みや機能障害を軽減することができます。
肩腱板損傷と肩腱板断裂の違い
肩腱板損傷も肩腱板断裂も、概ね同義ととらえて問題ないでしょう。
いずれも、腱板という組織が痛み、千切れている状態をさします。
もっとも、肩腱板断裂には、腱板が切り離される「完全断裂」と腱板の一部が切れる「腱板部分断裂(不全断裂)」に分けられます。
まとめ
- 肩腱板損傷
≒ - 肩腱板断裂
- 完全断裂
- 腱板部分断裂(不全断裂)
交通事故で肩腱板損傷(肩腱板断裂)になったら?
交通事故で肩腱板損傷(肩腱板断裂)になったら、後遺障害を申請して、症状に見合った適正な後遺障害等級の認定を受けましょう。
後遺症があるなら後遺障害等級の認定を受けよう
交通事故により肩腱板損傷となり、後遺症が残ったのであれば、後遺障害の認定を受けられる可能性があります。後遺障害の認定を受けることで、損害賠償金の増額が期待できます。
後遺障害の認定を受けるために、必要な手続きは次のとおりです。
- 医師の診断書を取得する
- 後遺障害診断書を作成して、他の必要書類とともに自賠責保険に提出する
- 自賠責保険から後遺障害等級の認定を受ける
まずは後遺障害診断書を作成
後遺障害等級の認定を受けるためには、医師の診断書や後遺障害診断書が重要です。
医師の診断書は、肩腱板損傷の程度や症状を客観的に証明するものであり、後遺障害診断書は、自賠責保険の調査機関が後遺障害等級を認定する際に参考にするものであるため、正確に作成する必要があります。
後遺障害診断書は、医師が作成するものですが、作成を依頼する際には、後遺障害等級の認定を希望していることを医師に伝えるようにしてください。
また、後遺障害診断書は、自賠責保険に提出する前に、必ず医師に確認してもらってください。
必要書類を揃えて申請を行う
後遺障害診断書や必要書類を自賠責保険に提出すると、後遺障害等級を認定すべきか、認定するとしてどの等級とするべきなのかについて審査が始まります。
後遺障害等級の認定には、数か月から半年程度かかることがあります。
後遺障害等級が認定された場合には、損害賠償金の増額が期待できます。損害賠償金の増額額は、認定される後遺障害等級によって異なります。
後遺障害等級の認定を受けるための手続きは、複雑で専門知識が必要となってくる場面もあるので、専門家である弁護士への相談すべきでしょう。
後遺障害等級に関する相談はアトムの弁護士へ
後遺障害等級の申請を検討している方や、後遺障害等級の認定通知が届いた方は、弁護士に状況を相談してみましょう。今後の流れや目指すべき道筋が見えてきます。
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肩腱板損傷により認められる後遺障害等級とは
交通事故により肩腱板損傷となった場合には、以下のような後遺障害が生じる可能性があります。
- 肩関節の可動域が以前よりも制限されるという機能障害
- 損傷部分に痛みが残るという神経障害
これらの後遺障害が具体的に何級の後遺障害等級となるのかについて解説します。
機能障害
機能障害では、肩関節の可動域制限の程度に応じて、以下のような等級に認定される可能性があるでしょう。
等級 | 症状 |
---|---|
10級10号 | 肩関節の可動域が怪我をしていない方と比べて2分の1以下 |
12級6号 | 肩関節の可動域が怪我をしていない方と比べて4分の3以下 |
神経障害
神経障害では、痛みが残っていることについてどの程度証明できるのかによって、以下のような等級に認定される可能性があります。
等級 | 症状 |
---|---|
12級13号 | 痛みが残っていることを画像などから客観的に証明できる |
14級9号 | 医学的に痛みが残っていることを説明することができる |
MRIやレントゲン検査結果から、痛みが残っていることを画像上から証明できれば12級13号が、客観的な証明ができなくても、事故の態様・治療内容などから痛みが残っていると説明できれば14級9号が認定される可能性があります。
後遺障害等級認定を受けるために事故後は速やかに検査を受けるべき
交通事故により肩付近に痛みがあるなら、事故直後にMRIやCTといった画像検査を受けてください。
治療を行ったが肩痛が引かず事故から期間を経過した後に検査を行った結果、肩腱板損傷であると判断された場合、事故以外に原因がある可能性があるとして、後遺障害等級認定を受けられないおそれがあるためです。
このような事態を避けるためにも、交通事故後に肩付近の痛みを感じた場合には、速やかに病院で検査を受けましょう。
肩腱板損傷(肩腱板断裂)で請求できる示談金の内容や相場額
交通事故の被害者となった場合には、加害者側と示談交渉を行い、交渉により決まった示談金を支払ってもらうことが多いでしょう。
交通事故により肩腱板損傷となった場合には、以下のような損害を示談金として請求することが可能です。
- 治療のために必要となった費用(治療関係費)
- 入院や通院期間に応じて請求できる慰謝料(入通院慰謝料)
- 治療のため仕事ができなかったことで生じる減収(休業損害)
- 後遺障害等級が認定された際に請求できる慰謝料(後遺障害慰謝料)
- 後遺障害により将来発生する減収分(後遺障害慰謝料)
- 自動車の修理代や代車費用などの物的損害
実際にどの費目が請求可能であるのかは、事故や怪我の内容により異なるので、専門家である弁護士に確認を取るべきでしょう。
ここからは、それぞれの費目についての相場額をみていきます。
治療に関する費用
交通事故の被害者は治療のために必要となった費用について請求することが可能です。
具体的には、以下のような費用を請求できるでしょう。
- 治療費用(投薬代・手術代・入院代など)
- 入院や通院時に生じた交通費
- 入院中における雑費
- 入通院において付添いが必要となった場合には付添費用
治療費用は実費を、交通費については基本的に公共交通機関の利用費用が請求可能です。
入院中の雑費は、1日1500円として計算されるでしょう。
入院中の付添費用は1日6500円、通院の付添費用は1日3300円となります。
職業付添人による場合は、実際に生じた費用となるでしょう。
治療したことで請求できる慰謝料(入通院慰謝料)
交通事故によるケガの治療のために入院や通院を余儀なくなされたことで生じる精神的苦痛に対して、入通院慰謝料を請求することが可能です。
入通院慰謝料の金額は、入通院の期間によって相場額が決まります。
具体的には、以下の表から算出されるでしょう。
仕事を休んだことで生じる損害(休業損害)
ケガの治療のために仕事を休んだために収入が減少した場合には、減収分について休業損害を請求することが可能です。
休業損害については、以下の計算式により算出されます。
休業損害の計算式
事故前の収入の日額×休業日数
事故前の収入については、事故前3カ月間の収入から判断されます。
休業日数とは、治療のために仕事を休まざるを得なかった日数です。
後遺障害が認められた場合に請求できる損害
交通事故により生じた後遺症の症状が後遺障害に該当するという認定を受けた場合には、「後遺障害慰謝料」「後遺障害逸失利益」を請求できる可能性があります。
後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料とは、後遺障害が生じたことによる精神的苦痛に対する金銭による補償をいいます。後遺障害の等級認定を受けることで請求が可能となります。
後遺障害慰謝料の金額は認定等級に応じて決まり、等級ごとの相場額は以下の通りです。
等級 | 慰謝料額 |
---|---|
10級 | 550万円 |
12級 | 290万円 |
14級 | 110万円 |
後遺障害逸失利益
後遺障害逸失利益とは、後遺障害が生じたことで事故以前のように仕事ができなくなるために生じる将来の減収に対する補償をいいます。
後遺障害逸失利益の計算式は、以下の通りです。
後遺障害逸失利益の計算式
基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に応じたライプニッツ係数
基礎収入は、事故が生じた年度の年収が基本となります。
労働能力喪失率は認定された等級に応じて、ライプニッツ係数は基本的に症状固定から67歳までの期間に応じて数値が決まるでしょう。
物的損害
物的損害については、実際に生じた修理費用や、代車費用を請求することとなります。
ただし、修理費用については交通事故時点における自動車の価格を超えることができず、代車費用は代車の必要性を証明しなくてはならない点などに注意してください。
肩腱板損傷(肩腱板断裂)の示談金増額なら弁護士に相談しよう
弁護士に相談・依頼することで示談金の増額が可能
交通事故で肩腱板損傷を負った場合、加害者側と示談交渉を行いますが、加害者側は相場の金額より低い金額で示談するよう交渉してくるでしょう。
そのため、示談交渉においては示談金の増額交渉が欠かせません。
しかし、示談金の増額交渉は簡単に行えないでしょう。
特に、加害者が任意保険に加入している場合には、示談交渉の相手が経験豊富な任意保険の担当者となるため、非常に困難となることが多いです。
示談金を相場額まで増額するには弁護士への相談が効果的です。
弁護士は、交通事故の損害賠償に関する知識と経験が豊富のため、根拠のある増額の交渉を行うことが可能です。
また、加害者側も、弁護士が付いたことで示談交渉がもつれると訴訟に発展する恐れがあることを警戒し、示談金額を増額しても示談で終わらせようとすることが多くなります。
そのため、示談金を相場額に近づくよう増額したいのであれば、弁護士への相談や依頼を行いましょう。
示談金の増額以外にもメリットあり
弁護士に相談・依頼を行うことで、示談金の増額以外にも以下のようなメリットが生じます。
- 示談交渉を含めた加害者側とのやり取りを弁護士に行ってもらえる
- 後遺障害等級認定を適切に行えるようサポートしてもらえる
- 示談交渉や後遺障害等級認定に必要な証拠の収集を手伝ってもらえる
弁護士に依頼すれば、加害者側との連絡や示談交渉を弁護士が行ってくれるため、被害者自身は加害者側と連絡を取る必要がなくなります。
加害者側と連絡を取ることで生じるストレスから解放され、治療や仕事の復帰に専念することができるのです。
また、相場の示談金を獲得するためには、適切な後遺障害等級認定を受けることが欠かせません。
後遺障害等級認定の申請には専門知識が必要となってくることからも、弁護士によるサポートを受けるべきでしょう。
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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了