嗅覚脱失の後遺障害|認定基準と慰謝料相場の解説
嗅覚脱失は、嗅覚が完全に消失する嗅覚障害の症状です。
食べ物の味覚やガス漏れの察知ができなくなるなど、日常生活への影響が大きい疾患といえます。
嗅覚脱失は、後遺障害9級5号、12級相当、14級相当のいずれかに認定される可能性があります。
また、嗅覚脱失の後遺障害慰謝料の相場は110万円〜690万円です。
今回は、嗅覚脱失の症状や原因、後遺障害認定基準、慰謝料の相場、示談金の内訳、弁護士へ相談するメリットなどについて詳しく解説します。
目次
嗅覚脱失の症状と原因
嗅覚脱失の症状
嗅覚脱失とは、嗅覚が完全に消失してしまうような嗅覚障害の症状がみられる状態です。
また、嗅覚が弱くなるといった嗅覚減退の症状がみられることもあります。
嗅覚の機能が低下してしまうと、食べ物の味覚が分からなくなるほか、LPガスや都市ガスなどのガス漏れが分からなくなるなど、日常生活に与える影響は大きいです。
嗅覚脱失の原因
鼻を欠損、鼻腔内を損傷、あるいは嗅覚神経が切断されたことが原因で嗅覚脱失・嗅覚減退が生じることが考えられます。
交通事故の場合、鼻を直接損傷する鼻骨骨折や嗅覚神経を切断するような頭部外傷が嗅覚脱失の原因になることもあります。
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嗅覚脱失の種類
嗅覚脱失は、原因別に呼吸性嗅覚障害、末梢神経性嗅覚障害、混合性嗅覚障害、中枢神経性嗅覚障害の4種類に分類されます。
症状 | |
---|---|
呼吸性嗅覚障害 | 鼻骨骨折や鼻中隔骨折で鼻の一部が閉鎖 |
末梢神経性嗅覚障害 | 匂いの情報を伝達する細胞群が断裂 |
混合性嗅覚障害 | 呼吸性嗅覚障害と末梢神経性嗅覚障害の合併 |
中枢神経性嗅覚障害 | 頭部を打ち付けて前頭葉や側頭葉を損傷 |
嗅覚脱失の後遺障害
嗅覚脱失の後遺障害申請
嗅覚脱失で後遺障害等級の認定を受けられれば、後遺障害慰謝料を請求できるため、慰謝料を増額させることができます。
後遺障害認定を受けるには、後遺障害申請を行い、認定基準を満たしたとして審査を通過する必要があります。
後遺障害認定の手続きの流れ
- 入通院治療後、医師から症状固定と診断される
- 医師に依頼して後遺障害診断書を作成してもらう
- 保険会社を通じて、審査機関に申請書類を提出する
- 審査機関で審査が行われ、保険会社を通じて結果が通知される
審査を通過するためには、後遺障害診断書に適切な記載がされており、認定に必要な書類や検査結果を収集、提出する必要があります。
多くの交通事故案件を扱ってきた弁護士であれば、後遺障害申請の手続きから認定対策まで熟知しているので、後遺障害等級認定の可能性を高められます。
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嗅覚脱失の後遺障害認定基準
嗅覚脱失の後遺障害として、9級5号、12級相当、14級相当のいずれかに認定される可能性があります。
等級 | 認定基準 慰謝料額 |
---|---|
9級5号 | 鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの 690万円 |
12級相当 | 嗅覚脱失 290万円 |
14級相当 | 嗅覚減退 110万円 |
認定基準を満たすには、検査を受けて嗅覚が脱失・減退していることを確認する必要があります。
嗅覚脱失・嗅覚減退については、T&Tオルファクトメーター(基準嗅覚検査)と呼ばれる検査方法を用います。
具体的には、においがする5種類の液体を8段階の濃度ごとに、ろ紙に染み込ませ、どの段階までにおいを感じることが出来るのかを調べます。
認定基準 | T&Tオルファクトメーターの平均的な嗅覚損失値 |
---|---|
嗅覚脱失(12級相当) | 5.6以上 |
嗅覚減退(14級相当) | 2.6以上5.5以下 |
また、嗅覚脱失については、静脈性嗅覚検査(アリナミン静脈注射)の結果だけでも判断してもらえます。
具体的には、においの強い物質を注射して、そのにおいが肺から呼気と一緒に鼻腔を通過するまでの時間やにおいを感じる時間などを検査することになります。
嗅覚脱失の後遺障害慰謝料
嗅覚脱失の後遺障害等級に認定されたら、各等級に応じた後遺障害慰謝料を請求できます。
嗅覚脱失の後遺障害慰謝料の相場は、110万円〜690万円です。
ただし、各等級の後遺障害慰謝料の相場は、あくまで弁護士や裁判所が用いる弁護士基準での算定額であり、実際に保険会社が支払い予定金額として提示する金額とは異なります。
慰謝料算定の3基準
- 自賠責基準
加害者側の自賠責保険から支払われる慰謝料の算定基準。自賠責保険会社は最低限の補償をするので、最低限の金額となる。 - 任意保険基準
加害者側の任意保険会社が用いる慰謝料の算定基準。自賠責基準に少し上乗せした程度であることが多い。 - 弁護士基準(裁判基準)
弁護士や裁判所が用いる慰謝料の算定基準。過去の判例にもとづいた法的正当性の高い基準。
後遺障害等級が認定されたら、相手側の保険会社は自社の基準である任意保険基準に基づいて慰謝料を算定し、金額が記載された示談書(免責証書)を送って示談を成立させるよう同意を求めてきます。
この示談書に記載されている金額は、相場額である弁護士基準での算定額よりも低い傾向にあるので、提示額が妥当な金額か、しっかり確認したうえで必要に応じて増額交渉をすることになります。
弁護士に依頼すれば、後遺障害申請だけでなく、認定後の後遺障害慰謝料の増額交渉もしてもらえるので、示談書が届いたら弁護士に見せて妥当な金額がいくらか、確認してみましょう。
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嗅覚脱失の後遺障害で請求できる損害賠償金
嗅覚脱失の入通院慰謝料
交通事故で嗅覚脱失を負って入院・通院を経て治療した場合、後遺障害認定の有無に関係なく、入通院慰謝料を請求できます。
入通院慰謝料とは、入院・通院をしなければならないほどの交通事故でのケガで受けた精神的損害に対して賠償する金銭のことです。
入通院慰謝料は、症状の程度に応じて重傷用、軽症用の算定表を使い分けて算定します。
たとえば、交通事故で負った軽症のケガを1ヶ月の入院と5ヶ月の通院で治療した場合、入院1ヶ月の縦の列と通院5ヶ月の横の列が交差する105万円が入通院慰謝料の相場です。
また、入院はせず、6ヶ月の通院のみで軽症のケガを治療した場合、入院0ヶ月の縦の列と通院6ヶ月の横の列が交差する89万円が入通院慰謝料の相場です。
嗅覚脱失の示談金の内訳
交通事故で嗅覚脱失を負った場合、慰謝料のほかにも示談金として請求できる損害はあります。
嗅覚脱失によって請求できる示談金の内訳は、以下の通りです。
- 治療費:治療のために必要となった投薬代・手術代・入院費用など
- 休業損害:治療のために仕事を休んだことで生じる減収に対する補償
- その他:治療のために必要であった交通費、付添費用など
- 逸失利益:後遺障害により減収することとなる将来の収入に対する補償
- 物的損害:自動車や自転車の修理代、代車費用など
ただし、これらの損害として提示される金額についても弁護士が算定する相場と比べて低い傾向にあります。
適正な金額を請求するためには、各損害について算定根拠を明らかにしたうえで相場額と提示額との差額が埋められるよう増額交渉をしていくことになります。
法律の専門家である弁護士であれば、法的根拠に基づいて説得力のある主張をすることができるので、示談金増額の可能性を上げられます。
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嗅覚脱失の後遺障害申請、後遺障害慰謝料や示談金の増額をご検討されている方は、弁護士にご相談ください。
弁護士事務所によっては、無料相談を受け付けているので、弁護士に依頼してメリットが十分にあるか、ご確認いただけます。
交通事故の被害者が弁護士に相談するメリットは、以下の通りです。
- 加害者側の保険会社との連絡を一任できるので、治療や職場復帰に専念できる
- 後遺障害等級の認定に向けて必要な資料の収集や申請手続き、十分な対策を立ててもらえる
- 法的な根拠に基づく説得力のある主張ができるので、慰謝料・示談金の交渉を有利に進めてもらえる
アトム法律事務所では、LINE・電話での無料相談を受け付けております。
適正な相場額、増額の見込み、後遺障害申請のほか、正式に依頼した際にかかる弁護士費用についてもご確認いただけるので、費用倒れにならないか、正式に依頼すべきかご検討いただけます。
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弁護士費用を払わずに弁護士に依頼する方法
弁護士費用を支払わずに弁護士に依頼する方法もあります。
弁護士費用特約を利用すれば、弁護士費用を支払わずに弁護士に相談・依頼することができます。
弁護士費用特約とは?
弁護士費用特約とは、弁護士に支払う相談料や費用について、保険会社が代わりに負担してくれるという特約です。
負担額には上限が設定されていますが、多くのケースで生じる相談料や費用は上限の範囲内に収まるため、金銭的な負担なく弁護士への相談や依頼が可能となります。
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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了