就業規則を見たことがない!就業規則のない会社は違法?
「就業規則をもらっていない」
「会社に就業規則がないと言われた」
就業規則には、会社内の労働時間、休憩時間、給与、休暇など、労働条件に関する重要なルールが記載されています。
会社に勤める以上、就業規則に目を通しておくべきと言えますが、自身が勤める会社の就業規則を見たことがない方は多いのではないでしょうか。
就業規則を見ようと思っても見れない場合、会社の規模によっては違法となる場合があります。
この記事では、就業規則のない会社は許されるのか、就業規則を見ることができない場合はどうすれば良いのかについて詳しく解説します。
目次
就業規則とは何か
就業規則とは?
就業規則は、会社と従業員の間の労働条件や職場における規律などを定めたものです。
就業規則には、労働時間や給与、休暇や退職・解雇についての一般的なルールが記載されています。
就業規則を定めることによって、会社と従業員双方のルールを明確にできます。労使間のトラブル防止やスムーズな職場運営に役立ちます。
就業規則には必ず記載しないといけない内容がある
就業規則に記載される内容は、「絶対的必要記載事項」「相対的必要記載事項」「任意記載事項」の3種類に分類できます。
絶対的必要記載事項
就業規則を作成する際には、必ず記載しなければならない「絶対的必要記載事項」というものが法律で定められています。(労働基準法89条各1~3号)
代表的な必要記載事項は以下のとおりです。
就業規則の絶対的必要記載事項
- 始業・終業の時刻、休日・休暇制度
- 賃金の決定、計算・支払いの方法、賃金の締切り・支払の時期、昇格に関する事項
- 退職に関する事項・解雇事由
絶対的必要記載事項を欠く就業規則は無効となります。
相対的必要記載事項
相対的必要記載事項とは、会社が一定の制度を設ける場合には、必ず記載しなければならない事項です。(労働基準法第89条各3号の2~10号)
たとえば、退職金制度やボーナスや災害補償に関する記載などがあげられます。
制度を設けていない場合には、記載されていなくても就業規則としては効力を有することになります。
任意記載事項
任意記載事項は、雇用主が任意に記載できる事項のことです。
法律で定められている記載事項以外のものを任意記載事項と言います。
一般的には、身だしなみやハラスメントなどの服務規律、就業規則の制定趣旨に関する規定が任意的記載事項に該当します。
就業規則のない会社は違法?
就業規則がなかったり、労働者に周知されていなかったりした場合は、労働基準法に違反していている可能性が高いです。
労働者が10人以上いれば就業規則の作成が必要
労働者が常時10人以上いる事業所には、就業規則の作成と届出が義務づけられています(労働基準法89条)。
そのため、労働者が10人以上いる事業所であるにもかかわらず、就業規則がない場合は違法となります。
「常時10人以上の労働者」とは、正社員の頭数だけを指しているわけではありません。パートや契約社員として働いている労働者も含まれます。
なお、労働者の計算は事業所単位で行います。会社全体では10人以上の労働者を雇用していても、事業所単位で10人未満であれば就業規則の作成・届出義務はありません。
一方、複数の事業場それぞれで10人以上の労働者が働いている場合には、各事業所ごとに就業規則を作成することが必要です。
就業規則の作成だけでなく労働者への周知が必要
就業規則を作成した場合には、就業規則を労働者へ周知することも義務づけられています(労働基準法106条1項)。
周知方法に関しては、労働基準法施行規則52条で以下のように定められています。
法第百六条第一項の厚生労働省令で定める方法は、次に掲げる方法とする。
一 常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること。
二 書面を労働者に交付すること。
三 磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること。
労働基準法施行規則第52条の2
分かりやすく言うと、確認できる場所への掲示や書面での配布、社内のネットワークで共有することが求められます。
周知されていなければ就業規則は拘束力をもたない
労働契約法7条では労働契約において就業規則が拘束力をもつためには、「周知」されることが効力要件としても定められています。
労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。
労働契約法第7条(労働契約の成立)
労働契約法における周知の方法は、必ずしも労基法上の周知義務の履行と同じ方法による必要はなく、「実質的に、労働者に就業規則の内容を知りうる状況が存在していればよい」と解釈されています。
したがって、労働者が就業規則を見たいと思っても見ることができない場合や使用者が拒否するような場合には就業規則の内容に労働者は拘束されないということになります。
違反した場合には刑事罰の対象
就業規則の作成と届出が義務付けられているにもかかわらず、その義務に違反した使用者には30万円以下の罰金が科せられます(労働基準法120条1号)。
周知義務を怠った場合でも、違反した使用者には30万円以下の罰金が科せられます(労働基準法120条1号)。
就業規則がない・見ることができないときはどうする?
会社に就業規則がない・あっても見ることができない場合はどう対処すればいいのでしょうか。
人事部・労務部の担当者に相談する
まずは社内で対応してくれる部署の担当者に相談することをおすすめします。
人事・労務関係の部署であれば、会社の就業規則を知っているはずであり、就業規則の場所を教えてくれるでしょう。
ただし、会社側が何らかの理由で就業規則を見せることを拒否したり、会社の規模によっては相談できそうな部署がなかったりするケースもあります。
この場合は社外の相談先を探しましょう。
労働基準監督署に相談・申告する
社外の相談先としては、労働基準監督署があります。
労働基準監督署は労働基準法をもとに会社を監視・指導する機関で、会社の体制について疑問や不満があれば誰でも無料で相談可能です。
会社に就業規則がない、就業規則を見せてくれないなどの就業規則の違反について相談・申告すれば、対処法についてアドバイスをもらうことができます。
また、労働基準監督署には就業規則に関する決まりを守らない会社に対して是正勧告や強制捜査、逮捕を行う権限があります。
労働基準監督署からの是正勧告により、就業規則が周知され、閲覧できるようになる可能性はあるでしょう。
ただし、労働基準監督署は労働災害などの様々な問題に対応した機関であるため、緊急性が高いと判断されなければなかなか対応してもらえません。
また、是正勧告はあくまでも行政指導であり、法的拘束力を持つものではないということにも留意しておきましょう。
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まとめ
労働者が常時10人以上いる事業所には、就業規則の作成と届出が義務づけられています。そのため、就業規則が会社にない場合には違法である可能性があります。
就業規則は、解雇の有効性や労働時間を算定するうえで非常に重要なものです。就業規則が会社にあっても、従業員に周知されていないケースでは違法となります。
これを機会に会社の就業規則を確認してみてはいかがでしょうか。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了