給料の未払いを請求したい!給料未払いが生じる原因と6つの対処法

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給料未払い

「給料日なのに、給料を支払ってもらえない!」
「未払い給料を請求するには?」

一生懸命働いたのに、その賃金が支払われないのは理不尽ですよね。給料が出ないと、安定した生活が送れるか不安になると思います。

給料未払いは違法であり、労働者は未払い賃金を請求する権利があります。

この記事では、給料未払いでお困りの方に向けて、給料未払いが発生する原因や未払いの請求に必要な証拠を詳しく解説します。

給料未払いとは?生じる原因は?

給料未払いの法的な意味

給料未払いは、法律上では「未払賃金」と言われています。

労働基準法では「あらかじめ労働契約や就業規則で定められた賃金を、所定の支払日に支払わなかった場合は、その使用者は、労働基準法に違反する」と定められています。

この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。

労働基準法第11条

賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。(後略)
②賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。ただし、臨時に支払われる賃金、賞与その他これに準ずるもので厚生労働省令で定める賃金(第八十九条において「臨時の賃金等」という。)については、この限りでない。

労働基準法第24条

未払賃金の対象となる賃金には、毎月の給料をはじめとして次のようなものが該当します。

未払い賃金の対象となる賃金

  • 毎月の給料
  • 退職金
  • 賞与やボーナスなどの一時金
  • 休業手当
  • 割増賃金
  • 有給休暇の賃金

給料未払いの原因その①経営不振

給料未払いが発生する原因のひとつに、企業側の経営不振が挙げられます。従業員に給料を支払いたくても、支払うお金がないという状況です。

しかし、どのような理由があったとしても、企業には労働者に給料を支払うことが義務付けられています。

ですから、たとえ経営不振や業績悪化で給料を支払うことができないとしても、労働者には給料を請求する権利があります。

給料未払いの原因その②企業側と労働者間のトラブル

「会社の備品を壊したから」「会社に迷惑をかけたから」「急に退職をしたから」などの理由で、企業側が故意に給料を支払わないこともあります。

すべての事情は当事者同士しか分かりませんが、たとえ労働者が会社に損害を与えるなど不備な点があったとしても、「労働の対価」を支払うことは雇用主に義務付けられています。

つまり損害賠償と賃金は全く別物であり、たとえ労働者と会社間にトラブルが生じていたのだとしても会社は労働者に賃金を支払わなければならないのです。

雇用主が賃金で一方的に相殺することは認められていません。

給料未払いの原因その③契約どおりに給料を支払わない

「基本給などの賃金が雇用時の約束よりも低い」といったトラブルもあります。

あらかじめ労働契約や就業規則で定められた賃金を支払わないのは、労働基準法に違反しています。

このような状況を回避するためには、雇用時には、必ず「雇用契約書」を書面で交わす必要があります。

雇用契約書には、賃金、計算、支払方法、賃金の締切、賃金の支払時期などを記載するよう義務付けられています。

使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。

労働基準法15条1項

給料未払い請求の時効は3年

給料未払いの時効は3年です。そのため、請求権が消滅する前に給料未払いの請求をすべきと言えます。

給料未払いの請求権は、「権利を行使することができる」ときから進行します(民法166条)。

給料未払いの請求権を行使できるタイミングは、各月ごとに更新されます。

給料未払いが何か月続いている場合、消滅時効の起算点は各月ごとに判断されます。

また、給料未払いが発生する状態の職場は、経営不振や経営管理に不備があるなどの問題を多く抱えていることが考えられます。

給料未払いの請求は、会社を辞めたあとでも請求することができるため、問題があると思えば、まずは離職することも選択肢のひとつとなります。

給料未払い請求に必要となる証拠は3つ

給料が未払いであることを証明する書類

給料未払いの請求をするのは、労働者本人です。この場合、労働者本人が給料未払いの証拠を集める必要があります。

給料が未払いであることを証明する証拠には、給与明細書、源泉徴収票、給与口座の履歴などがあります。

これらの証拠と下記の証拠を照らし合わせることで、未払い給料の金額まで確認することができます。

支払われるはずの賃金を証明する書類

支払われるはずの賃金を証明する証拠として、雇用契約書、就業規則、退職金規程、労働条件通知書などがあります。

雇用主はこれらに記載されてる賃金を支払う義務があるため、立派な証拠となります。

勤務したことを証明できる書類

労働の対価である賃金を請求するためには、勤務したことを証明しなければいけません。

タイムカード、勤怠表、業務日誌(控え)などが働いたことを裏付ける証拠となります。

給料未払いの証拠がない場合

書面や直接的な証拠がない場合、証明力は低くなりますが、以下のようなものを集めておくとよいでしょう。

証拠として考えられるもの

  • 会社のパソコンの利用履歴
  • 手書きの勤務時間や業務内容の記録
  • 会社とやりとりしたメールやLINEの送信記録

これらのような履歴や記録もないといった場合、証拠保全という手続きを利用することで、会社が持っている証拠を提出させることもできます。

証拠保全とは、裁判官が直接会社に出向いて、証拠を提示させるという強力な手続きです。

ただし、証拠保全は裁判所を介する手続きのため、申立書や手続きが面倒なことから、証拠が手元にない場合は弁護士に相談した方がスムーズです。

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未払い給料を請求する6つの方法

(1)雇用主に直接相談する機会を設ける

給料未払いに限らず、トラブルが発生したときは、たいてい直属の上司に相談します。

給料未払いについて直属の上司に相談しても解決しない場合は、雇用主、つまり社長に直接相談してください。

直属の上司のみが給料未払いのトラブルに絡んでおり、会社全体として給料未払いについて把握していないケースもあります。

一度社長などと直接交渉できる機会を設けることができればベストです。

(2)内容証明郵便を会社に送る

「配達証明付き内容証明郵便」とは、差し出した日付、差出人の住所、氏名、宛先の住所、氏名、文書に書かれた内容を、日本郵便が証明するサービスのことです。

参考:日本郵便「内容証明」

「未払い給料を会社に催促した」という事実を証拠化できるというのが内容証明郵便の最大の強みです。

配達証明付きなので、会社側の「書類を受領していない」等の反論を封じることができます。

内容証明書を送ったとしても、必ず支払いに応じてくれるという保証はありませんが、内容証明郵便を送ることで「未払い給料を支払ってほしい」という労働者の意思を示すことができ、その後、訴訟を起こすときの証拠にもなります。

(3)労働基準監督署に申告する

給料未払いは、労働基準法に違反しています。

雇用主に未払い給料を請求しても応じない場合は、管轄地区の労働基準監督署に申告してください。

その際に、給料未払いの証拠を併せて提出できればベストです。

労働基準監督署の所在地一覧

労働基準監督署は、対象の企業を調査し、未払い給料を支払うよう厳重勧告します。

(4)少額訴訟で未払い給料を請求する

少額訴訟とは、60万円以下の未払い給料を請求するために利用できる訴訟です。

簡易裁判所において、原則として1回の審理で結果が出ます。通常の裁判と比較して給料未払い請求を早く解決できるのがメリットとなります。

少額訴訟は、弁護士に依頼しなくても、自分で手続きしやすいという点も特徴です。

ただし、会社側が異議を唱えた場合は、通常の訴訟に移行することになります。

(5)労働審判を起こす

労働審判は原則として3回以内の期日で、話し合いによって解決を図る手続きです。

裁判官と労働審判員で構成される労働審判委員会が解決にあたります。

参考:労働審判手続

個人での手続きも可能ですが、証拠などを準備し、的確な主張を行う必要があるため、弁護士に依頼することが望ましいでしょう。

また、会社が労働裁判に対し、異議申し立てをした場合、通常訴訟に移行して争うことになります。

請求額が100万円の場合、新たに支払う申立手数料は5,000円(別途郵便切手代や弁護士費用が必要)となっています。

(6)通常訴訟を起こす

労働裁判で解決できなかった場合、通常訴訟を起こします。
審理の回数に制限がなく、納得がいくまで徹底的に争うことが可能です。

ただし、決着がつくまで半年から1年、場合によっては数年の長期戦になることがあります。

また、訴訟になる問題は事実関係が複雑であることが多く、弁護士に依頼する必要があるため、費用が高額になってしまいます。

請求額が100万円の場合、申立手数料は10,000円(別途郵便切手代や弁護士費用が必要)となっています。

給料未払いの問題はまず弁護士に相談を

先述の通り、未払い給料の請求をする際には会社に内容証明を送る、労働基準監督署を利用する等の方法があります。

会社が交渉を拒絶したり、労働基準監督署からの勧告にも会社が応じない場合、弁護士に相談をして適切なアドバイスを受けたほうが良いでしょう。

相談だけであれば無料で行ってくれる弁護士も増えており、有料の場合でも30分5000円ほどで相談をすることが可能です。

また、弁護士に一任すれば請求や交渉などを適切に行ってもらうことができ、必要であれば裁判の手続きも代理してくれます。

ご自身の力のみで解決することが難しい場合は、弁護士に相談をすることでスムーズな解決を目指すことができるでしょう。

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岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

詳しくはこちら

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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