退職勧奨の相談窓口は?解決事例も紹介

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退職勧奨の相談窓口

退職勧奨とは、会社が労働者に対し「辞めて欲しい」と退職を勧めることです。

「辞めろ」「クビだ」と一方的に告げる解雇とは、最終的に退職を決めるのが労働者の自発的な意思による、という点が異なります。

ですが実際問題として、勧奨にあたり行き過ぎた行為がおこなわれたり、勧奨に応じなかったことを理由に配置転換や解雇など不利益な取り扱いをされることもあります。

この記事では、退職勧奨の相談窓口や、退職勧奨の相談事例、対処法などを解説していきます。

退職勧奨でお悩みの方は最後まで目を通し、労働問題で損をしないように知識を身に付けていきましょう。

退職勧奨の相談窓口3選

弁護士事務所

労働案件に注力している弁護士事務所であれば、違法な退職勧奨を受けた際の対処法などを相談できるでしょう。

全ての弁護士事務所が労働問題に注力しているわけではないため、事前に事務所の公式サイト等を調べ、取扱い分野に労働問題が含まれているかどうか確認することをおすすめします。

無料の法律相談を受け付けている事務所も珍しくないため、まずは相談をしてみるのも良いかもしれません。

なお、弁護士に交渉を依頼した場合、弁護士に労働審判や裁判を提起してもらって会社側と争うことも可能です。

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労働組合

違法な退職歓奨を受けた場合、労働組合に相談することもできますので、社内に労働組合がある場合は相談してみることも有効的です。

また、社内に労働組合がなかったり、あっても実質機能していない場合は、社外の労働組合に相談することもできます。

労働組合から団体交渉を申し入れられたら、会社は正当な理由のない限りは交渉を拒否できませんし、不誠実に応じることも不当労働行為として禁止されています(労働組合第7条2号

また、裁判と違い厳格な手続きを必要としないことから、迅速かつ柔軟な解決を目指せます。

ただし、団体交渉をするには組合に加入する必要がありますので、組合費の有無はしっかり確認しておきましょう。

各都道府県の労働局

各都道府県に設置されている労働局は労働問題全般の相談を受け付けています。

労働局は厚生労働省の出先機関の一つで、労働問題の相談対応、当事者に対する指導・助言、紛争解決のためのあっせんなどを行ってくれる機関です。

労働局は日本全国に存在しているためアクセスがしやすく、制度も無料で利用可能なので、労働者の方は気軽に相談することができます。

ただ、労働局の指導・助言に強制力は無く、紛争調整委員会によるあっせんも相手方が欠席してしまうと打ち切られてしまう点にご注意ください。

参考:各都道府県の労働局

相談すべき違法な退職勧奨に該当する例

退職勧奨それ自体は違法行為ではありません

ですが、勧奨の際に用いられる言動や、勧奨を拒否した後の会社の対応によっては、会社側に違法性が認められる場合があります。

会社内で当然におこなわれていたり、ご自身では当然と思うような行為であっても、外部から客観的に見れば違法行為であるということも考えられます。

まずはご自身がなされた退職勧奨と、勧奨に伴っておこなわれた行為について振り返ってみましょう。

相談すべき違法な退職勧奨とは?

具体的には、退職勧奨に伴う以下のような行為が違法となりえます。

違法となりえる行為

  • 無意味な仕事を押し付けるなどの嫌がらせがおこなわれた
  • 退職を強要するような威圧的、侮辱的な言動があった
  • 退職に誘導する目的での降格、配置転換がおこなわれた
  • 退職拒否の意思表示をしたのに繰り返し、長時間の執拗な勧奨がおこなわれた

以上のように、もしも退職勧奨されるにあたり、嫌がらせ行為や半ば退職を強要するような言葉、不利益な取り扱いが伴っていた場合にはその退職勧奨は違法である可能性があります。

そのような退職勧奨を受けた場合は特に、第三者に相談に乗ってもらうことが重要であると言えます。

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違法な退職勧奨をされたらどうなる?

仮に強要されて退職したとしても、「違法な退職勧奨であったため、まだ労働者としての地位にある」ということを労働判や裁判などを通して確認することができれば、退職は無効となります。

労働者としての地位が確認できた場合、労働者は使用者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなかった(就労できなかった)として、退職日から判決日までの給与(バックペイ)などを請求することができます(民法536条2項)。

さらに会社の退職勧奨に違法性があり、不法行為(民法709条・715条)が成立する場合は、会社に慰謝料を請求できる場合もあります。

退職勧奨されたときの対処法とは

退職勧奨には即答せずに冷静に検討する

退職勧奨はあくまで会社側からのお願いなので、退職に合意するかどうかの決定権は労働者側にあります。

そのため、退職勧奨をされたからといって安易に合意するようなことはせず、じっくりと検討してから答えを出すことをおすすめします。

時おり、面談の場で「今ここで退職届に署名・押印をしてほしい」と言われることもありますが、署名・押印を断っても問題ありません。

「今は考えがまとまっていないので、家に帰ってからよく考えます」などと答えて退職届の提出を保留にした後、後述する労働問題の専門家にその後の対応について相談することをおすすめします。

退職勧奨の録音や書面を残しておく

退職勧奨を受けた際の録音があれば違法性があるか否かを客観的に判断しやすくなるため、面談に呼ばれた際は極力録音をするように心がけましょう。

会社側の面談担当者に許可を取らずに面談内容を録音(秘密録音)したとしても法的に問題はありません。

民事訴訟においては証拠能力に制限は無いため、反社会的な手段で録音しない限り、録音したデータは証拠として認められます。

また、場合によっては会社側から退職勧奨時に書面を渡されることがあります。

通常、こちらの書面には退職勧奨を受ける理由や、退職に合意した際の条件などが記載されています。

こういった書面も退職勧奨に違法性があるかどうか、提示されている条件が妥当かどうか、ということなどを判断するための材料になりえます。

録音・書面といった客観的な証拠があれば、第三者に相談した際に話がスムーズに進みやすくなります。

特に録音があれば会社側との交渉を有利に進めることができるケースがあるため、極力証拠として残すようにしましょう。

退職勧奨の相談事例

(1)労働局から指導・助言をしてもらった事例

 倉庫で貨物取扱い業務に従事する労働者が、私病が悪化し診断書提出の上休業した後、経過良好のため復帰を申し出たところ、完治まで復帰が認められず、逆に退職勧奨を受けたことから、復職を求めた事案。

 作業内容が肉体的に負担が大きく、現状では復帰が認められないとする被申出人に対し、申出人の希望を考慮の上、作業の軽減など復職の方法を検討するよう助言をした結果、復職に向けて検討することとなった。

口頭助言・指導事例(大阪労働局)

(2)労働局のあっせんを利用した事例

 Aさんは外資系の会社に勤めていた30代の女性。

 入社後の10年間に、企業合併等で組織が再三変更され担当業務が外注されたことから、十分な知識のないサービス商品の営業を担当させられるようになった。

 何回かの試験的な営業活動の後で担当を外されると、毎日のように上司から商品知識やマナーについてのペーパーテスト等を課せられて厳しい評価を下される一方で、「自分の将来をよく考えるように。」との勧奨が繰り返された。

 Aさん自身も営業には向いていないと感じ、会社都合退職の扱いでの金銭補償、再就職支援等についての会社側の条件案の提示を求めたが、会社側はそれに応じないだけでなく、上司が、Aさんの学歴や吸収合併されてしまったAさんの出身会社を馬鹿にした発言をするなどしたので、自分のキャリアや人格をすっかり否定されたように感じてしまった。

 Aさんが横浜駅西口総合労働相談コーナーを訪れると、女性相談員が「退職勧奨に伴って陰湿ないじめが起きることがありますが、決して許されることではありません。
 あなた自身の気持ちを整理して、会社に対して声を上げたいということであれば、あっせん制度が利用できます。」と力付けた。

あっせんの結果、Aさんは合併時の早期退職者と同等の、特別な好条件による補償を受けて退職することが出来た。

総合労働相談(助言指導/あっせん事例)【指導課】(神奈川労働局)

まとめ

退職勧奨でお悩みの方は、上記でご紹介した相談窓口を利用してみましょう。

動かなければ、単なる自己都合退職として泣き寝入りしなければならない場合もあります。

退職勧奨が厳しいと感じた場合には、すぐにご紹介した窓口に相談し、解決の糸口にしてください。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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