不当解雇の解決金(和解金)相場は?実例もご紹介!

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不当解雇の解決金

不当解雇をされると、精神的なショックや明日からの生活の不安が押し寄せ、暗く重たい気持ちになりますよね。

金銭解決における不当解雇の解決金は、働くひとのその後の生活に関わる重要な事項です。不当解雇の解決金相場は、事案によっても異なりますが、賃金の数か月分になることが多いです。

この記事では、不当解雇の解決金相場に関して、実例を交えながら詳しく解説します。

不当解雇の解決金(和解金)の内訳

不当解雇の解決金(和解金)の内訳は?

不当解雇の解決金(和解金)は、解雇前・解雇後のすべてのトラブルを終局的に解決するためのお金です。

会社から一方的に解雇されても、解雇が無効な場合は、従業員の地位が継続していると判断されます。

不当解雇された従業員は、解雇からトラブル解決までの賃金を民法の規定に基づいて請求することができます。

不当解雇の解決金の大きな部分を占めるのは、この不当解雇後の賃金です。

不当解雇の解決金は、解雇前や解雇通告に伴うパワハラ・セクハラ・執拗な退職勧奨の慰謝料、早期退職手当などが含まれることがあります。

もっとも、不当解雇後の賃金のみの場合もあります。

不当解雇の慰謝料の相場と金額は?

慰謝料とは、精神的苦痛に対する賠償金のことを言います。

不当解雇の金銭解決にあたっては、在職中は泣き寝入りしていたパワハラや、違法解雇で追い詰められてうつ病になった事実を主張し、慰謝料を請求していくことがあります。

実際の交渉で問題になることが多いのは、この慰謝料の相場や金額です。

慰謝料の金額は事案によって異なります。

しかし、基本的には、過去の労働審判や裁判で決められた事例や相場を参考にしつつ、労働者側と経営者側の話し合いで決めていくことになります。

実際に刑法の強制わいせつ罪に該当するセクハラがあった場合などは、性犯罪に準じて、慰謝料の金額が数百万円程度になることがあります。

逸失利益の相場と金額は?

逸失利益とは、不法行為がなければ得られたであろう利益のことを言います。

不当解雇の場合は、違法解雇・不当な解雇がなければ得られた利益のことです。

たとえば、ヘッドハンティングされて転職したものの、転職先で直ちに違法な解雇をされた場合は、元の職場に在職し続けた場合に得られた利益がこれに当たります。

不当解雇の逸失利益の金額についても、基本的には、過去の裁判で決められた事例や相場を参考にしつつ、労使双方の話し合いで決めていくことになります。

不当解雇の違法性が高いほど、この逸失利益の主張が認められやすくなります。メールなどの証拠が残っていれば、積極的に活用しましょう。

不当解雇の解決金相場

不当解雇の解決金相場は、解雇理由に正当性があるかどうかによって異なります。

解雇理由に正当性がある:賃金の1か月~2か月分

解雇理由に正当性がある場合は、解雇は有効と判断される可能性が高いでしょう。

しかし、労働者側が労働審判や裁判などの手続きを取ると、会社としてもトラブルの長期化が懸念されるため、賃金の1か月~2か月分がもらえるケースもあります。

解雇理由の正当性に争いがある:賃金の3か月~6か月分

解雇理由に正当性の争いがあるようなどっちつかずのケースでは、解雇理由に正当性がある場合と比較して解決金の相場が高くなる傾向があります。

正当性があるかどうかは証拠の有無によって判断されますが、証拠が多ければ多いほど労働者有利に進む可能性が高いです。

解雇理由の正当性に争いがある場合の解決金の相場は、賃金の3か月~6か月分です。

また、会社側が不当解雇の可能性が高いケースでは、6か月分以上の賃金がもらえるケースもあります。

正当性がなく不当解雇である場合:賃金の1年分以上

解雇理由に正当性がなく、明らかに不当解雇である場合の解決金相場は、賃金の1年分以上です。

会社側に違法性があると判断され、解決金の相場も高額になります。

不当解雇の解決金のデータと慰謝料が認められた例

不当解雇であることを主張し、労働審判や裁判などで解雇が無効と判断された場合、解決金が支払われます。

実際の解決金がいくらもらえるのか、生活がかかっている以上、とても気になる点ですよね。ここではデータと実際の事例を併せてご紹介します。

解決金の中央値は労働審判で150万円

独立行政法人労働政策研究研修機構(JILPT)の調査によると、令和2年~3年の解決金の中央値は裁判による和解が300万円、労働審判は150万円でした。

労働審判よりも裁判の方が金額が高額になっていますが、裁判でも100万円未満で和解したケースは15%以上あります。

参考:労働審判及び裁判上の和解における雇用終了事案の比較分析

不当解雇で慰謝料が認められた実例

不当解雇で100万円以上の慰謝料が認められた実例を3つご紹介します。解決金は慰謝料も含めたお金であるため、慰謝料が高額になるほど、解決金も高くなります。

100万円以上の慰謝料が認められたケース

  • 【120万円】報復の意図で、理由なく、著しく相当性を欠く手続きで懲戒解雇された(東京地裁H28.2.19)
  • 【180万円】長期の性的いやがらせや強姦未遂を受けたうえ不当に解雇され、PTSDを発症した(東京地判H12.3.10)
  • 【200万円】未払い賃金の支払いを求める組合活動を行っていたところ、賃金支払いを免れる目的で解雇された(名古屋地判H26.4.11)

不当解雇で高額な慰謝料が認められるケースとしては、①在職中にセクハラやパワハラがあった場合や、②解雇の違法性が高い場合(労働組合に加入した事実を理由に解雇するなど)が挙げられます。

慰謝料は、違法行為に対する損害賠償のため、損害の程度と行為の違法性が大きいほど高額になります。

在職中に受けたわいせつ被害は、不当解雇された時の金銭交渉の場面で、合わせて慰謝料を請求することができます。わいせつ行為は、性犯罪です。

わいせつ被害を受けた場合は、数百万円程度の慰謝料が認められるケースも少なくありません。上司ではなく、会社に対して使用者責任を問うことも可能です。

不当解雇されたら泣き寝入りせずに行動する

会社に不当解雇されたら「理由」を知ろう

まず、会社から不当に解雇された場合は、解雇理由証明書を受け取り、解雇理由を確認してください。

解雇理由証明書は、その名の通り解雇の理由が記された書面であり、労働者が請求すれば、使用者には交付の義務があります(労働基準法22条1項)。

口頭で解雇理由を聞かされていた場合でも、解雇理由証明書を請求し、解雇理由を明らかにしましょう。

解雇理由証明書を受け取ったら、解雇理由が違法かどうか検討しましょう。

なお、使用者から解雇理由証明書の交付を受けたとしても、詳細な理由が記載されているとは限りません。

「就業規則の第○条に該当したため」といったように、就業規則の該当条文が書かれているだけということもあります。

その場合は就業規則のコピーを証拠として収集し、違法かどうか検討する必要があります。

内容証明郵便を使って会社に通知する

不当解雇は違法かつ無効なものです。何よりも大切なのは、解雇されてからなるべく早くに、会社に対して、解雇に対して異議があることと、引き続き会社で就労する意思があることを通知することです。

これを怠れば、後の交渉で不利になります。

この異議と就労の意思については、内容証明郵便を使って会社に通知しましょう。

内容証明郵便であれば、郵便局に書面が保管され、後日、言った・言わないの争いを避けることができるからです。また、仮に将来的に労働審判や裁判になった場合も、証拠として使えるので安心です。

弁護士に相談する

不当解雇について少しでも納得のいかない点があれば、弁護士へ相談してください。

労働問題を扱っている弁護士であれば、解雇理由証明書の理由や解雇に至った経緯などから解雇の違法性を判断できます。

また、会社から促されて退職届を記載してしまうと、自ら退職したことになってしまうので、不当解雇を争うことが難しくなります。

早めに弁護士に相談したことで、退職届を書くことを免れたケースもあります。不当解雇された場合は、弁護士に解雇の違法性と今後の対応について相談しましょう。

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まとめ

不当解雇でお悩みの方は、弁護士に相談しましょう。不当解雇は事案を細かく分析し、証拠化を進め、会社と交渉をしながら、労働審判・裁判といった法的手続きも検討していく必要があります。

能力不足が理由の場合などは、判例上も解雇の有効・無効の判断が分かれる場合があります。

まずは無料相談を受け付けている弁護士事務所に相談してみてください。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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