頬骨骨折の後遺症|醜状障害の後遺障害認定基準の解説

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岡野武志弁護士

監修者:アトム法律事務所 代表弁護士
岡野武志

頬骨骨折の後遺症

頬骨骨折の後遺症として、顔の変形による醜状(しゅうじょう)障害、痛みやしびれといった神経症状、ものが重複して見える複視、口が開きにくくなる開口障害が残る可能性があります。

頬骨骨折は、特に顔の歪みといった整容面上の問題も生じやすいため、醜状障害の後遺障害等級によっては後遺障害慰謝料が1000万円近くになることもあります。

今回は、頬骨骨折の症状や治療、通院先、後遺症の内容、後遺障害の認定基準、慰謝料の相場を中心に解説いたします。

頬骨骨折の症状・治療

頬骨骨折の症状

顔面骨折の症状:痛みや腫れ。また場合によっては顔の歪みなど整容面上の問題も生じ得る。

頬骨(きょうこつ)は、眼球が収まる眼窩(がんか)を構成する骨のひとつで、ものを咀嚼する役割をもっているほか、顔の見た目や表情に大きく関わる部位のひとつでもあります。

頬骨は、前方に突出した骨で眼球を保護する体部、顎に近い顔面側面の弓部という2つの部位に分かれます。

頬骨骨折によって体部が折れると、頬がへこんで顔面が変形する、頬や口周辺のしびれ、ものが重複して見える、眼球がへこむといった症状が生じます。

また、弓部骨折によって口が開きにくくなる、顔側面がへこむといった症状がみられます。

頬骨骨折は、複数の箇所が同時に骨折する粉砕骨折が多いことも特徴です。

頬骨骨折の原因

頬骨は体部・弓部ともに突出しているので、頬骨骨折の原因として、歩行者や自転車・バイクの転倒時に頬の高い所周辺を打ち付けることが考えられます。

頬骨骨折の治療

体部骨折の場合、下瞼の皮膚や上の歯肉の付け根を切開して頬骨を整復し、吸収性のプレートやチタン製のプレートで固定する手術を行います。

吸収性のプレートは加水分解されて体内に吸収されるため、手術後に取り出す必要はありません。

チタン製のプレートも体内に残っても問題ないので、手術後に取り出すことはありません。

弓部骨折の場合、側頭部毛髪内を切開して頬骨の整復を行います。体部骨折と違って局所麻酔で済む場合も多く、入院することなく治療を行えます。

頬骨骨折の通院先|整形外科と形成外科

骨折というと整形外科での治療になることをイメージされることが多いですが、頬骨骨折や鼻骨骨折などの顔面骨折の場合、形成外科で治療が行われます。

顔は咀嚼や会話、ものの観察など様々な機能を担っていますが、その人の見た目や容姿に大きく関わる部位でもあるため、見た目をきれいに改善させる形成外科で治療することになります。

整形外科と形成外科は異なる分野ではありますが、治療対象が重なることも多く、整形外科と形成外科をいっしょに専門とする病院もあるので、どちらに行くべきか迷う場面も多いと思います。

総合病院であれば整形外科以外の診療科も受診できるので、まずは整形外科のある専門病院を受診しましょう。

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頬骨骨折の等級認定基準と後遺障害慰謝料の相場

頬骨骨折の後遺障害

頬骨骨折の後遺症として、醜状(しゅうじょう)障害、神経症状、複視、開口障害が残る可能性があります。

頬骨骨折の後遺症が残ったとして後遺障害等級の認定を受けた場合、後遺障害慰謝料を請求することができます。

後遺障害等級の認定を受けるには、後遺障害申請を行い、各等級の認定基準を満たすとして審査機関による審査を通る必要があります。

後遺障害認定の手続きの流れ

後遺障害等級認定の手続きの流れ
  1. 入通院治療後、医師から症状固定と診断される
  2. 医師に依頼して後遺障害診断書を作成してもらう
  3. 保険会社を通じて、審査機関に申請書類を提出する
  4. 審査機関で審査が行われ、保険会社を通じて結果が通知される

後遺障害申請に向けて各後遺症の内容、認定基準、認定されるためにどのような資料や検査が必要か、認定されるための対策を把握しておく必要があります。

頬骨骨折の後遺症①醜状障害の後遺障害認定基準

醜状(しゅうじょう)障害とは、交通事故による怪我の傷跡が残ってしまった状態を指します。

頬骨骨折の後遺症として醜状障害が残った場合、後遺障害7級12号〜12級14号のいずれかに認定される可能性があります。

頬骨骨折による醜状障害の後遺障害慰謝料の相場は、290万円〜1,000万円です。

等級認定基準
慰謝料額
7級12号外貌に著しい醜状を残すもの
1,000万円
9級16号外貌に相当程度の醜状を残すもの
690万円
12級14号外貌に醜状を残すもの
290万円

瘢痕(はんこん)とは傷跡のことであり、線状痕は手術痕といった切り付けられた傷跡を指します。

後遺障害7級12号の認定基準

後遺障害7級12号の認定基準の「外貌に著しい醜状を残すもの」とは、「顔面部に鶏卵大以上の瘢痕(はんこん)が残ったもの、もしくは10円硬貨大以上の組織陥没が残ったもの」を指します。

後遺障害7級12号の慰謝料相場は、1,000万円です。

後遺障害9級16号の認定基準

後遺障害9級16号の認定基準の「外貌に相当程度の醜状を残すもの」とは、「顔面部に長さ5センチメートル以上の線状痕が残ったもの」を指します。

後遺障害9級16号の慰謝料相場は、690万円です。

後遺障害12級14号の認定基準

後遺障害12級14号の認定基準の「外貌に醜状を残すもの」とは、「顔面部に10円硬貨以上の瘢痕が残ったもの、もしくは長さ3センチメートル以上の線状痕が残ったもの」を指します。

後遺障害12級14号の慰謝料相場は、290万円です。

頬骨骨折の後遺症②神経症状

神経症状とは、頬骨骨折による頬や口周辺のしびれや痛みといった症状です。

頬骨骨折の後遺症として神経症状が残る場合、後遺障害12級13号または14級9号に認定される可能性があります。

頬骨骨折による神経症状の後遺障害慰謝料の相場は、110万円〜290万円です。

等級認定基準
慰謝料額
12級13号局部に頑固な神経症状を残すもの
290万円
14級9号局部に神経症状を残すもの
110万円

2つの等級の違いは、後遺症が存在していることが画像診断から明らかであると医学的に証明されるか、という点です。

CTやMRIでの画像所見で異常が認められる場合は12級13号に認定されます。

そうでなくても事故状況・治療の経過・神経学的検査の結果などから考えて後遺症の存在を説明できるような場合は、14級9号に認定されます。

頬骨骨折の後遺症③複視

複視とは、目の周りの筋肉の麻痺などが原因で、ものが二重に見える状態を指します。

頬骨骨折の後遺症として複視が残った場合、後遺障害10級2号または13級2号に認定される可能性があります。

頬骨骨折による複視の後遺障害慰謝料は、180万円〜550万円です。

等級認定基準
慰謝料額
10級2号正面を見た場合に複視の症状を残すもの
550万円
13級2号正面以外を見た場合に複視の症状を残すもの
180万円

「複視の症状を残すもの」とは、以下の条件のすべてにあてはまる場合を指します。

  • 本人が複視のあることを自覚していること
  • 眼筋の麻痺等複視を残す明らかな原因が認められること
  • ヘススクリーンテストにより患側の像が水平方向又は垂直方向の目盛りで5度以上離れた位置にあることが確認されること

ヘススクリーンテストとは、片目に赤、片目に緑のガラスをつけてものの見え方のズレを確認する検査です。

後遺障害10級2号の「正面視で複視を残すもの」とは、ヘススクリーンテストにより正面視で複視が中心の位置にあることが確認されたものを指します。

ヘススクリーンテストにより、正面視で複視が中心の位置にはこない形で複視の症状が出ている場合は、後遺障害13級2号に認定されます。

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頬骨骨折の後遺症④開口障害

開口障害とは、口、顎が開きにくくなる症状です。

頬骨骨折の後遺症として開口障害が残った場合、後遺障害12級相当に認定される可能性があります。

頬骨骨折での開口障害の後遺障害慰謝料は、290万円です。

等級認定基準
慰謝料額
12級相当開口障害等を原因として咀嚼に相当時間を要するもの
290万円

頬骨骨折の後遺障害慰謝料

頬骨骨折の後遺障害慰謝料の相場は、110万円〜1,000万円です。

ただし、各等級での慰謝料の相場の金額がそのまま相手側の保険会社から提示されるわけではありません。

これは、相手側の保険会社が支払い予定の提示額を計算する際に用いる基準が、相場額を算定する弁護士基準ではなく、保険会社独自の基準である任意保険基準だからです。

慰謝料算定の3基準

  • 自賠責基準
    加害者側の自賠責保険から支払われる慰謝料の算定基準。自賠責保険会社は最低限の補償をするので、最低限の金額となる。
  • 任意保険基準
    加害者側の任意保険会社が用いる慰謝料の算定基準。自賠責基準に少し上乗せした程度であることが多い。
  • 弁護士基準(裁判基準)
    弁護士や裁判所が用いる慰謝料の算定基準。過去の判例にもとづいた法的正当性の高い基準。
慰謝料金額相場の3基準比較

任意保険基準で算定された提示額は、弁護士基準での算定額と比べて低い傾向にあります。

しかし、法的根拠に基づいて、過去の判例、裁判例を参考にする弁護士基準での算定額は、被害者が受け取るべき適正な相場といえます。

相場での慰謝料を受け取るためには、保険会社からの提示をそのまま鵜呑みにするのではなく、増額交渉をする必要があります。

弁護士であれば、症状の程度や事故の状況に合わせて適正な金額を算定し直したうえで、保険会社相手にも臆することなく増額交渉を進めてくれます。

交通事故慰謝料
無料相談

交通事故での頬骨骨折はいくら示談金をもらえる?

頬骨骨折の入通院慰謝料

交通事故で頬骨骨折を負った場合、後遺障害認定の有無にかかわらず入通院慰謝料を請求できます。

入通院慰謝料とは、入院・通院をしなければならないほどの交通事故でのケガで負った精神的苦痛に対する賠償金です。

入通院慰謝料は、慰謝料算定表を用いて金額を決定します。

重傷の慰謝料算定表
重傷の慰謝料算定表

たとえば、入院1ヶ月、通院5ヶ月で治療を終えた場合、入院1ヶ月の縦の行と通院5ヶ月の横の列が交差する141万円が入通院慰謝料の相場です。

頬骨骨折の場合、入院期間が2泊3日あるいは日帰りの場合もあるので、通院中心の治療になることが考えられます。

たとえば、3ヶ月の通院のみで治療した場合、入院0ヶ月の縦の行と通院3ヶ月の横の行が交差する73万円が入通院慰謝料の相場となります。

頬骨骨折で請求できる示談金の内訳

頬骨骨折で請求できる損害は、慰謝料だけではありません。

慰謝料以外で、示談金として請求できる損害は、以下の通りです。

  • 治療費:治療のために必要となった投薬代・手術代・入院費用など
  • 休業損害:治療のために仕事を休んだことで生じる減収に対する補償
  • その他:治療のために必要であった交通費、付添費用など
  • 逸失利益:後遺障害により減収することとなる将来の収入に対する補償
  • 物的損害:自動車や自転車の修理代、代車費用など
交通事故示談金の内訳

後遺障害慰謝料だけでなく、入通院慰謝料やこれら損害についても相手側の保険会社からの提示額が相場よりも低いことは少なくありません。

保険会社から届く示談書を弁護士に見せれば、適正な示談金額を算定し直してくれるうえに示談交渉も依頼することができます。

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頬骨骨折の後遺症は弁護士に相談!

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頬は顔の大部分を占める部位なので、頬骨骨折による顔面の変形が残ってしまうと事故前と比べてかなり顔の印象、見た目が変わってしまうため、後遺症の影響は大きいです。

その分、後遺症の程度によっては高額な慰謝料をもらえそうですが、慰謝料が高額になる分、保険会社の負担が増えるため、なかなか相場通りの金額を支払ってはくれません。

後遺障害申請をスムーズに進めて、認定等級に応じた相場の慰謝料を受け取るためにも弁護士相談を検討してみましょう。

弁護士に依頼・相談することには、以下のようなメリットがあります。

  • 加害者側の保険会社との連絡を一任できるので、治療や職場復帰に専念できる
  • 後遺障害等級の認定に向けて必要な資料の収集や申請手続き、十分な対策を立ててもらえる
  • 法的な根拠に基づく説得力のある主張ができるので、慰謝料・示談金の交渉を有利に進めてもらえる

アトム法律事務所では、交通事故の被害者向けに電話・LINEでの無料相談を受け付けております。

無料相談では、正式な依頼をした際の弁護士費用や受けられる法的サービスについてもご確認いただけるため、費用面も考慮しながら依頼するべきかご検討いただけます。

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費用を払わずに弁護士に依頼する方法|弁護士費用特約

弁護士相談をするうえでいちばん不安に思われやすいこととしては、費用面、弁護士費用によって費用倒れにならないか、という点です。

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弁護士費用特約とは?

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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