交通事故による醜状障害・外貌醜状の等級認定基準|線状痕や瘢痕の後遺障害等級は?

醜状障害(しゅうじょうしょうがい)とは、頭・首・顔、手足の露出面等に、人目につくほどの傷跡が残る後遺障害のことです。
なかでも、頭・首・顔などの「外貌」に人目に付く傷跡が残る場合は、外貌醜状(がいぼうしゅうじょう)と呼ばれます。
醜状障害・外貌醜状は、傷跡の大きさ、形、部位などで後遺障害の等級が決まります。
醜状障害・外貌醜状の後遺障害(一部抜粋)
等級 | 後遺障害の基準・内容 |
---|---|
7級12号 | 外貌に著しい醜状を残すもの ・頭部に手のひら大以上の瘢痕、又は頭蓋骨に手のひら大以上の欠損 ・顔面に鶏卵以上の瘢痕、又は10円玉大以上の組織陥没 ・頚部に手のひら大以上の瘢痕 |
9級16号 | 外貌に相当程度の醜状を残すもの ・顔面に長さ5㎝以上の線状痕 |
12級14号 | 外貌に醜状を残すもの ・頭部に鶏卵大以上の瘢痕、又は頭蓋骨に鶏卵大以上の欠損 ・顔面に10円玉大以上の瘢痕、又は長さ3㎝以上の線状痕 ・頚部に鶏卵大以上の瘢痕 |
14級4号 | 上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの |
14級5号 | 下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの |
たとえば、顔面の皮膚を切った際にできる線状痕(せんじょうこん)では、長さが3cm以上になると12級14号に該当しやすくなります。
後遺障害は認定される「等級」によって、慰謝料や逸失利益の金額に大きな差が出るため、適切な等級を認定してもらうことが非常に重要です。
本記事では、交通事故によって醜状障害・外貌醜状を負った方に向けて、後遺障害等級の認定基準、慰謝料相場、後遺障害認定の流れなどを詳しく解説します。
目次
交通事故による醜状障害・外貌醜状とは何か
交通事故で後遺症が残った被害者が、後遺症に関する賠償請求をするには、後遺障害認定を受ける必要があります。
後遺障害認定とは、後遺症の有無、等級を決める認定手続きのことです。
ここでは、醜状障害・外貌醜状とはどんな後遺障害なのか、後遺症に関する賠償請求とは何なのかについて、まずは簡単にまとめます。
醜状障害とはどんな後遺障害か
醜状障害とは、頭・顔・首、手足の露出面等に「人目に付く」ほどの目立つ傷跡が残る後遺障害のことです。
醜状障害となり得る傷後には、事故の傷跡や事故後の手術でできた傷痕、手術時の縫合痕、色素沈着、色素脱失による白斑などが含まれます。
醜状障害は、傷のある体の部位、大きさ、傷痕の種類(線状痕、瘢痕、組織欠損など)によって認定される後遺障害等級に違いがあり、損害賠償の請求の際、違いがでます。
外貌醜状とはどんな後遺障害か
外貌醜状とは、頭部・顔面・頸部などの外貌に「人目に付く」ほどの目立つ傷跡が残る後遺障害のことです。
外貌醜状も醜状障害の一種です。
醜状障害・外貌醜状と後遺障害慰謝料
醜状障害、外貌醜状について後遺障害等級が認定された場合、治療費、休業損害、入通院慰謝料など治療中の損害のほか、後遺症に関する賠償金も請求できるようになります。
具体的には、逸失利益、後遺障害慰謝料の賠償請求もできるようになります。

後遺障害慰謝料の相場
後遺障害慰謝料とは、後遺障害が残ったことによる精神的苦痛に対する賠償金のことです。
醜状障害、外貌醜状で認定される可能性のある後遺障害等級と、等級ごとの慰謝料相場は以下のとおりです。
後遺障害等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
7級 | 419万円 (409万円) | 1,000万円 |
9級 | 249万円 (245万円) | 690万円 |
12級 | 94万円 (93万円) | 290万円 |
14級 | 32万円 (32万円) | 110万円 |
*()内は2020年3月31日以前に発生した事故の場合
自賠責基準とは、自賠責保険の支払い基準のことです。
一方、弁護士基準とは、裁判になった場合に認められる法的正当性の高い慰謝料水準のことをいいます。これが適切な慰謝料相場です。
なお、加害者の任意保険会社から提示される示談金額は、自賠責基準か、それに近い任意保険会社独自の支払い基準になることが多いです。
後遺障害等級の認定手続きが終わった後は、適切な慰謝料相場を目指して示談交渉をおこなうことも必要になります。

交通事故による醜状障害の種類(線状痕・瘢痕など)
交通事故の傷痕は、その形状やで様々な種類に分かれています。
なお、傷跡が隆起したり、へこんだりした状態を瘢痕(はんこん)といい、傷痕と同じような意味合いで用いられることもあります。
ここからはいくつかの傷痕の種類について説明します。
治療の経過は個人差があるため、必ずこうした傷痕が残るというものでもありません。くわしい傷痕の状況や治療経過は主治医にたずねるようにしてください。
(1)線状痕
切創や擦過傷が治癒する過程で形成される直線的な傷跡を指します。ガラスなどによる切り傷や、路面との接触による擦過傷で生じる可能性があります。
あるいは創傷を縫合するときの手術痕も後遺障害の一つと考えられるものです。
交通事故の治療で手術が必要になり、手術時の切開痕や縫合痕なども、事故と因果関係のある損害ということです。
(2)ケロイド
傷の治癒過程で、過剰に肉芽組織が形成される状態です。
傷跡が盛り上がり、周囲の健常な皮膚まで広がっていく特徴があります。ケロイドになりやすい場所は、胸の中央部、耳たぶ、肩まわりや肩甲骨のあたりなどです。
またケロイドができやすい体質の方もおられます。
ケロイドは火傷でもなる場合がある
交通事故で火災が起こってしまい、火傷(やけど)によってケロイドが残ってしまう場合もあります。
関連記事『交通事故による火傷|火傷の部位で変わる後遺障害等級と慰謝料の相場』では、事故による火傷の後遺障害等級や慰謝料の解説をしているので、あわせてお読みください。
(3)瘢痕の引きつれ
ケロイドや盛り上がった状態の瘢痕に対して、治療がうまくいかない場合、引きつれを起こしてしまうことがあります。
瘢痕拘縮ともいわれ、手術が必要になる場合もあるとされているものです。
(4)組織欠損・組織陥没
交通事故で皮膚や組織が欠損・陥没してしまうことがあります。
欠損・陥没は、線状痕や瘢痕よりも重症な傷跡と考えられるでしょう。顔面における10円玉より大きい組織陥没や、より大きい頭蓋骨の欠損などは、醜状障害でも最も重い後遺障害7級認定を受けることとなります。

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醜状障害・外貌醜状の後遺障害等級
頭部・顔面部・頸部の醜状障害(外貌醜状)
頭部・顔面部・頸部の傷痕は、醜状障害のなかでも外貌醜状として扱われ、後遺障害7級、12級、14級認定の可能性があります。
顔面部とは、下あごの骨の稜線と、髪の毛の生え際とで囲まれた範囲とされています。
くわしい認定基準は以下のとおりです。
外貌醜状(頭・顔・首)の後遺障害等級
等級 | 内容 |
---|---|
7級12号 | 外貌に著しい醜状を残すもの |
9級16号 | 外貌に相当程度の醜状を残すもの |
12級14号 | 外貌に醜状を残すもの |
外貌醜状は「人目に付く程度以上のもの」という前提があるため、たとえ顔面であっても、眉毛や頭髪等で隠れる場合は外貌醜状の後遺障害認定の対象外となるのがポイントです。
なお、かつては外貌醜状の後遺障害等級認定基準が男性と女性で区別されていましたが、男女間の等級差が憲法14条に反して違憲だとする判決が平成22年に京都地裁で出されました。
そのため、現在は改正された男女差のない後遺障害等級認定基準を利用しています。
7級12号|外貌に著しい醜状を残すもの
外貌に著しい醜状を残すものとは、頭部・顔面部・頸部において次のような面積の傷痕が残ったもの、欠損したものをいいます。
7級12号|外貌に著しい醜状を残すもの基準
部位 | 基準 |
---|---|
頭部 | (以下のいずれか) 手のひら※より大きい傷跡 手のひら※より大きい頭蓋骨の欠損 |
顔面部 | (以下のいずれか) ニワトリの卵より大きい傷跡 10円硬貨より大きい組織陥没 |
頸部 | 手のひら※より大きい傷跡 |
※指の部分は含まない
手のひらは、被害者の手を基準とします。交通事故の被害者が子どものときには、子どもの手のひらが基準とされるのです。
9級16号|外貌に相当程度の醜状を残すもの
外貌に著しい醜状を残すものとは、顔面に5cm以上の人目に付く線状痕が残った場合に認定されます。
9級16号|外貌に相当程度の醜状を残すもの
部位 | 基準 |
---|---|
頭部 | ー |
顔面部 | 5cm以上の線状痕で、人目につく程度のもの |
頸部 | ー |
線状痕の測り方
線状痕は「W」や「L」のような形状のとき、傷痕全体の長さではなく、ひとつひとつの長さの合計で確認されます。
また、複数の線状痕が隣接して残ったときにはそれらを合算して等級認定を受けることが可能です。
たとえば、2cmと4cmの線状痕が隣接して残ったとき、一つずつでは認定要件を満たしませんが、合算した6cmとして評価されるため、9級16号認定を受けられます。
12級14号|外貌に醜状を残すもの
外貌に醜状を残すものとは、頭部・顔面部・頸部において次のような面積の傷痕が残ったもの、欠損したものをいいます。
12級14号|外貌に醜状を残すもの
部位 | 基準 |
---|---|
頭部 | (以下のいずれか) ニワトリの卵より大きい傷跡 ニワトリの卵より大きい頭蓋骨の欠損 |
顔面部 | (以下のいずれか) 10円硬貨より大きい傷跡 3cm以上の線状痕 |
頸部 | ニワトリの卵より大きい傷跡 |
たとえば顔面では、10円硬貨より大きいだけでなく、ニワトリの卵より大きい傷痕であるなら7級認定となります。
なお、永久的に残ると認められ、人目につく火傷治癒後の黒褐色変色又は色素脱失による白斑も、上記の基準を満たす場合には「外貌に醜状を残すもの」として扱われます。
上記のとおり、少しの差で扱いが大きく変わるため、後遺障害認定の申請時には、傷痕の面積を医師に正確に計測・記載してもらうことが大切であることも認識しておきましょう。
耳・鼻・口の醜状障害(外貌醜状)
耳・鼻・口の醜状障害も外貌醜状として扱われ、後遺障害7級、14級認定の可能性があります。
くわしい認定基準は以下のとおりです。
外貌醜状(耳・鼻・口)の後遺障害等級
等級 | 内容 |
---|---|
7級12号 | 外貌に著しい醜状を残すもの |
12級14号 | 外貌に醜状を残すもの |
7級12号|外貌に著しい醜状を残すもの
外貌に著しい醜状を残すものとは、耳・鼻を下記のように欠損したものをいいます。
7級12号|外貌に著しい醜状を残すもの基準
部位 | 基準 |
---|---|
耳 | 耳介軟骨部の1/2以上を欠損 |
鼻 | 鼻軟骨部の全部又は大部分を欠損 |
耳や鼻の欠損は、欠損障害としても後遺障害等級認定されるケースがあります。この場合、欠損障害の等級と、外貌醜状の等級のいずれか上位の等級が認定されます。等級が併合されるわけではありません。
12級14号|外貌に醜状を残すもの
外貌に醜状を残すものとは、耳・鼻・口を下記のように欠損したり、ゆがんだりしたものをいいます。
12級14号|外貌に醜状を残すもの
部位 | 基準 |
---|---|
耳 | 耳介軟骨部の一部を欠損 |
鼻 | 鼻軟骨部の一部又は鼻翼を欠損 |
口 | 顔面神経麻痺の結果として現われる口のゆがみ |
顔面神経麻痺は神経系統の機能障害ですが、その結果として口のゆがみが現われる場合には、12級14号の醜状障害としても扱われます。
耳や鼻の欠損は、欠損障害としても後遺障害等級が認定される可能性があります。こちらの場合も、先ほどの7級の場合と同様に、欠損障害の等級と、外貌醜状の等級のいずれか上位の等級が認定され、等級は併合されません。
手足(上肢または下肢)の醜状障害
腕や手に残る傷痕、火傷痕などは上肢や下肢の醜状障害として後遺障害認定される可能性があります。
手足の醜状障害等級
等級 | 内容 |
---|---|
12級準用 | 上肢又は下肢の露出面の手のひらの3倍程度以上の大きさの醜いあとを残すもの |
14級4号 | 上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの |
14級5号 | 下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの |
「上肢の露出面」とは、労災の基準では肘関節以下(手部を含む)のことをいいますが、自賠責保険の基準では肩関節以下(上腕)から指先までをいいます。
「下肢の露出面」とは、労災の基準では膝関節以下(足背部を含む)のことをいいますが、自賠責保険の基準では股関節以下(大腿部)から足の背までをいいます。
露出面以外の醜状障害
自動車損害賠償法施行令が準拠する「労働者災害補償保険法施行規則」(労災則)により、露出面以外の醜状についても、下記の認定基準を満たせば、後遺障害認定されます。
胸部や腹部の醜状障害
胸部や腹部に醜状が残った場合にも、後遺障害認定される可能性があります。
具体的には、胸部の全域や腹部の全域に醜状があれば12級が、胸部の2分の1程度や腹部の2分の1程度に醜状があれば14級が準用されます。
胸部や腹部の醜状障害
等級 | 内容 |
---|---|
12級準用 | 胸部の全域または腹部の全域に醜状 |
14級準用 | 胸部の2分の1程度または腹部の2分の1程度に醜状 |
背部や臀部の醜状障害
背部や臀部に醜状が残った場合にも、後遺障害認定される可能性があります。
具体的には、背部および臀部の全面積の2分の1程度をこえて醜状があれば12級が、背部および臀部の全面積の4分の1程度をこえて醜状があれば14級が準用されます。
背部や臀部の醜状障害
等級 | 内容 |
---|---|
12級準用 | 背部および臀部の全面積の2分の1程度をこえて醜状 |
14級準用 | 背部および臀部の全面積の4分の1程度をこえて醜状 |
なお、残存した傷痕が上記醜状障害・外貌醜状の後遺障害等級認定基準には該当しない場合でも、傷痕部分の痛みやしびれが神経症状として後遺障害認定される可能性もあります。
醜状障害・外貌醜状の後遺障害認定までの流れ
交通事故の損害賠償請求においては等級認定をベースに金額が決まることになるので、等級認定が大切です。
いいかえれば等級認定を受けていない障害については補償を受けられない可能性が極めて高いといえます。
醜状障害・外貌醜状の治療をしても、傷跡が残ってしまった場合には、しっかり準備をして後遺障害認定の申請をしましょう。
交通事故の後すぐに病院を受診
交通事故にあったらただちに病院を受診
入院・通院による治療の開始
医師の診断にもとづいて治療を開始
完治または症状固定の診断
治療が終わったら、完治(≒ちゆ)、又は症状固定の診断を受ける
後遺障害認定の申請手続き
症状固定の診断を受けた場合、後遺障害申請をおこなう。
後遺障害認定の結果を受け取る
後遺障害認定を受けられたら、等級に応じた賠償を請求。示談を開始する
以下では、各段階について、補足説明をします。
(1)交通事故の後すぐに病院を受診
交通事故で、醜状障害・外貌醜状のケガを負った場合、まずは病院を受診します。
救急搬送された場合は、救命救急センターなどで応急処置を受けることがありますが、その後は、整形外科や皮膚科で入通院治療を受けることになります。
交通事故によって傷痕ができたこと(事故と症状の因果関係)が問題になることも多いので、主治医に、体のどの部位に、どのような傷跡がついたのかきちんと伝え、カルテに記載しておいてもらう必要があります。
(2)入院・通院による治療の開始
傷痕の治癒過程は、傷の深さや部位などの様々な要因で、治療にかかる期間が大きく変わります。
比較的浅い傷であれば傷痕が残らずに完治することもありますが、深い傷であれば、傷口がふさがってもトラブルを繰り返し、何らかの傷痕が残ってしまうこともあるのです。
傷痕の治療方法
傷痕の治療法には、飲み薬、塗り薬、貼り薬(テープ)、注射、レーザー、そして手術といったものが考えられます。
医師の診察を受け、医師の指示のもとで治療に専念するようにしましょう。
治療に関する心配や不安については医師に相談をして、しっかりコミュニケーションをとっておくことが大切です。
傷痕の治療期間
傷痕の治療には半年から1年ほどの時間がかかると考えられています。
傷の程度や治療方法によってはもっと長くなり、手術をした場合にはその経過について当分の経過観察が必要です。
傷痕の治療は長期戦になりますが、医師の指示をよく守り、途中で治療をやめることは避けてください。
治療期間が長引いたら要注意
交通事故被害者が請求できる治療費、休業損害、入通院慰謝料は原則的に治療期間に対して支払われるため、「治療期間」は重要な意味を持ちます。
相手の保険会社は、ケガの程度からおおよその治療期間を推定し、目安の治療期間を超えそうになると治療の終了を打診してくることがあります。
これは「治療費の打ち切り」ともいわれ、交通事故の被害者の抱えやすいトラブルの一つです。
まだ治療の継続中であるときには、主治医にも見解を確認し、相手の保険会社に対してその旨を伝えるようにしましょう。
治療費の打ち切りについてどう対応すべきかという法的対処のアドバイスは、弁護士にお任せください。とくに、交通事故の被害者のサポートに注力する法律事務所であれば、相手の保険会社の出方を熟知しているので、効果的な助言が可能です。
(3)完治または症状固定の診断
傷痕が残らず、完治した場合は、「ちゆ」という診断となります。
傷跡が残った場合は、「これ以上治療を続けても、治療効果がない状態」(症状固定(しょうじょうこてい))の診断となります。
後遺症に関する賠償金を受けとるには、後遺障害の認定を受ける必要があります。症状固定の場合は、後遺障害の申請の準備に移行します。
(4)後遺障害認定の申請手続き
後遺障害認定の申請方法は2通り
後遺障害認定は、自賠責の損害保険料率算出機構がおこないます。
申請方法には「事前認定」と「被害者請求」という2つの方法があり、交通事故被害者は、好きな方法を選択できます。
被害者請求は、被害者みずから申請書類を集めて、自賠責保険に資料を提出する方法です。
その後、自賠責保険会社から「損害保険料率算出機構」に書類が送付され、いよいよ後遺障害の審査が開始となります。

事前認定は、事故相手の任意保険会社が、被害者の代わりに必要書類をそろえて、自賠責保険に申請を出す方法になります。
こちらも同様に、自賠責保険に資料到着後は、損害保険料率算出機構に引き継がれ、後遺障害の審査開始となります。

被害者請求と事前認定の違い
事前認定の場合、任意保険会社がどんな資料を提出したのか把握できません。そのため、任意保険会社の対応に不安がある場合には、「被害者請求」を選ぶ方が多いです。
被害者請求には、被害者側が関係各所から資料を取り寄せるため、手間がかかる・時間がかかるというデメリットはあります。一方で、申請書類を自身で検討できるメリットがあります。
被害者請求は、必要な検査結果は添付できているか、医師の意見書は必要かなどを検討した上で、認定に有利な資料を添付できるため、より効果的な申請書類を整えることが可能です。
なお、交通事故に強い弁護士であれば、被害者の申請準備のサポートができます。弁護士に任せることで、被害者の手間がかかるという被害者請求のデメリットも回避できます。
醜状障害・外貌醜状の後遺障害認定の必要書類
後遺障害の申請のためには、後遺障害診断書が必須です。医師に作成を依頼し、交通事故により醜状障害が残ったこと、醜状障害の状態、寛解の見通しがないこと等、後遺障害認定上、重要になる事項を明記してもらう必要があります。
また、醜状障害・外貌醜状の場合、「傷跡等の所見」といった書式があるので、こちらの作成も必要です。
このほか、事務的な手続きで必要となる本人確認書類等も揃えます。
補足
傷痕についての後遺障害認定では、書類審査だけでなく、自賠責損害調査事務所の調査員による面接調査で実際に測定が行われる可能性があります。しかし、書面で明らかに認定基準を満たしていない場合、面接調査が行われないこともあります。傷跡の状態(色、大きさ、長さなど)が明確にわかる写真を添付する等の工夫も必要でしょう。実務では、定規をあてる等して写真撮影をし、添付するケースも多いです。
(5)後遺障害認定の結果を受け取る
後遺障害の審査が終わったら、認定の結果は、相手の保険会社を経由して、被害者に通知されます。
自賠責調査事務所の認定基準に整合しない場合、「非該当」という結果もあり得ます。
後遺障害に関する自賠責保険金について
等級が認定された場合は、被害者請求のケースでは、自賠責から後遺障害に関する自賠責保険金が振り込まれます。
事前認定の場合、任意保険会社を通じてでなければ、後遺障害に関する自賠責保険金は受け取れません。
後遺障害に関する任意保険金について
後遺障害に関して、任意保険会社に対して賠償請求するには、後遺障害の認定結果を保険会社に知らせ、示談交渉等をおこなう必要があります。


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醜状障害・外貌醜状の後遺障害を弁護士相談するメリット
傷痕の治療頻度と症状固定の目安がわかる
弁護士相談するメリットは、醜状障害・外貌醜状の治療頻度、症状固定の時期について、目安がわかることです。
傷痕については、治療頻度について相手の保険会社とトラブルになったり、症状固定の時期においては被害者自身の判断が必要になる場合があります。
治療頻度について
主治医の指示をよく守っていても、治療頻度が極端に下がると、相手の保険会社から治療費を打ち切られたり、休業損害の支払いを渋られたりする可能性があります。
もし相手の保険会社から提案されたときには、主治医の指示を守っている経過観察の期間であることを強調して説明しましょう。
通院中には様々なトラブルが起こることがあります。詳細を知りたい方は、下記関連記事の解説を参考にして、困ったときに備えておきましょう。
症状固定の時期について
症状固定の時期は主治医の判断が尊重されます。
ただし傷痕の後遺障害申請の点においては、治療を続けて完治を目指し続けるのか、一定の時に後遺障害の申請をするのかを慎重に判断すべきといえます。
具体的には、治療を続けることで顔面部の線状痕が3㎝から2.9㎝まで縮んだ場合、それは喜ばしいことですが、後遺障害等級を獲得できずに非該当となり、受け取れる損害賠償金額が大きく減るのです。
そのため、主治医の見解と併せて、治療段階でも適切な症状固定の時期について弁護士に助言を受けておくことが有効といえます。
後遺障害認定の基準がわかる
弁護士相談するメリットには、後遺障害認定の基準が分かることもあげられます。
後遺障害認定を受けるためには、後遺障害認定の基準を熟知していることが大切です。
医師は医療の専門家ですが、傷が何センチあるとか、どういった形状の傷だとか、そうした後遺障害等級認定基準までは知らないことも多いのです。
「認定基準を満たすことが伝わりづらい診断書」になっていることで、後遺障害認定を受けられないという事態も十分起こり得ます。
治療については医師に、そして後遺障害認定については弁護士という味方をつけることをおすすめします。
後遺障害認定後の慰謝料増額も弁護士が交渉
後遺障害認定を受けたなら、治療中の精神的苦痛に対して支払われる入通院慰謝料とは別に、後遺障害慰謝料の請求が可能です。
後遺障害等級ごとにおおよその相場があり、弁護士基準(裁判基準)の後遺障害慰謝料は110万円から2,800万円となっています。
醜状障害以外にも、後遺障害が認定されるケースでは、先ほど紹介した相場よりも後遺障害慰謝料が高額になる可能性もあります。
各基準における後遺障害慰謝料の相場
等級 | 自賠責基準* | 弁護士基準 (裁判基準) |
---|---|---|
1級・要介護 | 1650万円 (1600万円) | 2800万円 |
2級・要介護 | 1203万円 (1163万円) | 2370万円 |
1級 | 1150万円 (1100万円) | 2800万円 |
2級 | 998万円 (958万円) | 2370万円 |
3級 | 861万円 (829万円) | 1990万円 |
4級 | 737万円 (712万円) | 1670万円 |
5級 | 618万円 (599万円) | 1400万円 |
6級 | 512万円 (498万円) | 1180万円 |
7級 | 419万円 (409万円) | 1000万円 |
8級 | 331万円 (324万円) | 830万円 |
9級 | 249万円 (245万円) | 690万円 |
10級 | 190万円 (187万円) | 550万円 |
11級 | 136万円 (135万円) | 420万円 |
12級 | 94万円 (93万円) | 290万円 |
13級 | 57万円 (57万円) | 180万円 |
14級 | 32万円 (32万円) | 110万円 |
*()内は2020年3月31日以前に発生した事故の場合

ただし、相手の保険会社は自賠責保険の基準に近い金額提示をしてくる可能性があります。
弁護士基準の慰謝料(裁判所や弁護士といった法律の専門家が適正と認めた相場)で、慰謝料を請求するには、粘り強い増額交渉が必要です。
相手の保険会社の言うままに示談をしてしまうと、本来もらえるはずの補償が受けられないことになってしまいます。
弁護士に示談交渉を任せることで、相手の保険会社のペースにのまれることなく、毅然とした態度で適正な金額の交渉を目指すことができます。
醜状障害は後遺障害逸失利益が争点になりやすい
醜状障害・外貌醜状は、後遺障害逸失利益も争点になりやすいため、弁護士をつけると心強いというメリットもあります。
後遺障害認定を受けた場合には、後遺障害慰謝料請求だけでなく、後遺障害逸失利益請求もできます。逸失利益は交通事故の損害賠償請求においても高額になりやすい費目です。

後遺障害逸失利益
- 後遺障害逸失利益とは「後遺障害により労働能力が下がったことで、将来の収入が減ることへの補償」のこと。
- 年収×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数で算出。
- 醜状障害、外貌醜状の場合、「傷があっても働けるから、労働能力は喪失しない」と反論されてもめることが多い。
基本的には、後遺障害認定されれば一定の逸失利益の請求が可能です。
しかし、醜状障害・外貌醜状においては、「そうした傷痕があるからと言って働くことができないわけではないから、労働能力が低下したり、収入が減少したりはしない」として、相手の保険会社が逸失利益の発生を否定する反論をしてくることがあります。

逸失利益の支払い可否に性別の差はありませんが、被害者の職業や仕事内容、年齢を考慮し、逸失利益の有無の判断や計算方法、算定額が裁判でも分かれる部分があります。
具体的には、モデルや接客業は、見た目が仕事に影響すると判断され、逸失利益が認められやすい傾向にあります。
こうした場合には、将来の職業選択の機会喪失、昇進・昇格・昇給への影響、対人関係への影響、類似事案の裁判例などを広く検討して、適切に主張立証していく必要があります。
被害者おひとりで立ち向かうのではなく、交通事故の損害賠償請求にくわしい弁護士に相談し、専門的なアドバイスを受け、場合によっては対応を任せることも検討していきましょう。
弁護士費用特約が使えれば、弁護士費用を負担することなく、弁護士に依頼できるケースも多いです。
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まとめの一言
交通事故による醜状障害とは、交通事故によって生じた傷跡が顔や手足などの露出部位に残り、人目につく程度以上のものを指します。
大きくは外貌醜状(頭・顔・首)と露出面(上肢・下肢)の醜状障害に分けられ、その他にもケースによって、それぞれ7級12号、9級16号、12級14号、14級4号、14級5号、12級相当、14級相当といった後遺障害等級が認定される可能性があります。
後遺障害等級が認定されると、慰謝料や逸失利益などを請求できる可能性がありますが、任意保険会社の提示してくる賠償金は、弁護士基準に比べると非常に低額のことが多いです。
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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。全国15拠点を構えるアトム法律グループの代表弁護士として、刑事事件・交通事故・離婚・相続の解決に注力している。
一方で「岡野タケシ弁護士」としてSNSでのニュースや法律問題解説を弁護士視点で配信している(YouTubeチャンネル登録者176万人、TikTokフォロワー数69万人、Xフォロワー数24万人)。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士、弁理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了