尾てい骨骨折(尾骨骨折)の後遺症とは?骨折で後遺障害認定される?

尾てい骨骨折(尾骨骨折)は、脊椎の最下端にある尾てい骨(尾骨)の骨折で、骨盤骨折の一種です。
主に自転車やバイクから放り出されて尻もちをついた際に発生し、痛みや腫れ、しびれなどの症状が現れます。
また、尾てい骨骨折の後遺症として変形障害や神経症状が残った場合、後遺障害等級の認定を受けることで後遺障害慰謝料を請求することができます。
後遺症が残った場合、後遺障害等級の認定を受けることで後遺障害慰謝料を請求できるようになるため、後遺障害等級の認定が受けられるかがポイントになってくるでしょう。
今回は、尾てい骨骨折の症状や原因、治療法、後遺症の認定基準、慰謝料相場について解説します。
目次
尾てい骨骨折(尾骨骨折)の症状・治療
尾てい骨骨折(尾骨骨折)の症状

尾てい骨骨折は骨盤骨折の一種で、脊椎(背骨)の最下端の尾てい骨を骨折した状態を指します。
人間の尾てい骨は、他の動物と比べて退化して本来の機能を失った痕跡器官であり、現代では「尾骨」と呼ばれている骨です。
尾てい骨骨折の症状としては、痛み・腫れ・しびれや、直腸圧迫によって便が出にくくなる排便障害などが考えられます。
尾てい骨はお尻に位置するため、椅子に座った際に骨折部が椅子に押し付けられる形になって痛みを感じやすいです。
交通事故で腰を強打すると、尾骨のすぐ上にある仙骨を骨折することも考えられます。
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尾てい骨骨折(尾骨骨折)の原因
尾てい骨骨折(尾骨骨折)が交通事故で生じる原因としては、たとえば自転車やバイクから放り出された際に尻もちをついて尾てい骨を骨折するケースが考えられます。
尾てい骨骨折(尾骨骨折)の治療
尾てい骨骨折(尾骨骨折)の治療は、主に経過観察となり、安静にして骨が癒合するのを待つことになります。
椅子に長時間座ったり、立ち座りを繰り返したりすると、尾てい骨に負担をかけてしまいます。そのため、仕事で尾てい骨に負担をかけてしまうことが懸念される場合は、医師に指示をもらったり、職場と相談して、仕事を休んだり調整したりするようにしましょう。
尾てい骨骨折(尾骨骨折)の後遺症と後遺障害認定
尾てい骨の後遺症(1)神経症状|痛みやしびれ
尾てい骨骨折の後遺症としてはまず、神経症状が残る可能性があるでしょう。
神経症状とは、尾てい骨骨折(尾骨骨折)によって痛みやしびれが残っている状態を指します。
尾てい骨骨折(尾骨骨折)の後遺症として神経症状が残った場合、後遺障害12級13号、14級9号に認定される可能性があります。尾てい骨骨折での神経症状で後遺障害12級13号、14級9号に認定された場合の後遺障害慰謝料は110万円〜290万円です。
神経症状の後遺障害認定基準
等級 | 認定基準 | 慰謝料額 |
---|---|---|
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの | 290万円 |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの | 110万円 |
12級13号と14級9号の2つの等級の違いは、「頑固な」神経症状か、神経症状の存在が他覚的所見によって明らかであるかという点です。
具体的にはレントゲン、CT、MRIなどの画像所見で後遺症の存在が証明できるような場合、後遺障害12級13号に認定されます。
画像検査で神経症状の存在が明らかにならなかったとしても、神経学検査の結果から痛みやしびれがあるといえる場合には14級9号に認定されます。
尾てい骨の後遺症(2)変形障害|骨の突出
尾てい骨骨折の後遺症としてつぎに、変形障害が残る可能性があるでしょう。
変形障害とは、尾てい骨が折れたあと、正しい位置に治癒しなかった状態を指します。
尾てい骨骨折(尾骨骨折)の後遺症として変形障害が残った場合、後遺障害12級5号に認定される可能性があります。尾てい骨骨折での変形障害で後遺障害12級5号に認定された場合の後遺障害慰謝料は290万円です。
変形障害の後遺障害認定基準
等級 | 認定基準 | 慰謝料額 |
---|---|---|
12級5号 | 骨盤骨に著しい変形が残った | 290万円 |
後遺障害12級5号の「骨盤骨に著しい変形が残った」とは、具体的には骨盤骨に、裸体になったときに明らかに分かる、目で見てわかる程度の変形が残った状態を指します。
尾てい骨の場合、骨折の影響で本来の正しい位置とは別の位置で変形して癒合してしまったようなケースでは変形障害が認められることがあります。
ただ、尾てい骨はしっぽの名残とされる骨で、形態は個々に異なるため、事故による変形を証明しづらいとされています。
尾てい骨で後遺障害認定されるためのポイント
尾てい骨骨折で後遺障害を適切に認定してもらうには、「神経症状」や「痛みの継続」を適切に証明することが重要です。
そのためには、適切な通院・検査・後遺障害診断書の作成がポイントとなります。
①継続的な整形外科への通院
後遺障害認定を受けるためにはまず、医師から症状固定(これ以上治療しても回復が見込めない状態)と判断される必要があります。そのためには、一定期間、整形外科に継続して通院することが重要です。
整骨院は病院ではないので診察が行われないため、治療状況が診断書に記録されません。整骨院に通院する場合でも、必ず整形外科にも通院し、医師に治療経過を診てもらいましょう。
また、医師が治療経過を把握していないと「後遺障害診断書が書けない」と言われる可能性があります。後遺障害診断書は認定申請の必須書類なので、継続的な整形外科への通院は欠かせません。
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②事故直後のレントゲンやCTによる検査
尾てい骨骨折は、外見では判断しづらいため、レントゲンやCTといった検査で画像診断してもらう必要があります。
尾てい骨骨折は日常生活でも発生しうるため、事故から時間が経ってから診断を受けると「本当に交通事故による骨折か?」と疑われる可能性があります。
受傷から時間が経ってからの検査では、交通事故が原因と認められにくいので、事故でお尻を打った場合は、すぐに整形外科を受診し、レントゲンやCTを撮影してもらうようにしましょう。
早期に診断を受けることで、交通事故との因果関係を明確にすることができるようになります。
③後遺障害診断書への自覚症状の記載
後遺障害の申請には、「後遺障害診断書」を提出する必要があります。
特に、痛み(神経症状)で後遺障害等級の認定を受けるには、後遺障害診断書に「患者の自覚症状」が十分に記載されているかがポイントになります。
痛みの記載がなければ後遺障害が認定されにくくなってしまうので、尾てい骨骨折による痛みの継続がある場合は、必ず主治医に記載してもらいましょう。
なお、単純に「尾てい骨付近が痛い」と医師に主張するだけでは不十分です。どのくらいの痛みか、痛みはどのくらい続いているのか、日常生活での支障など、症状を具体的に医師に説明し、後遺障害診断書に記載してもらうようにしてください。
- 痛みの具体的な程度
例:「椅子に座った瞬間、激痛が走る」「立っているだけでも痛い」など - 痛みの頻度・継続性
例:「毎日続いている」「天候によって悪化する」など - 日常生活への影響
例:「長時間座り続けるのが辛い」「仕事でのデスクワークに支障がある」など
日々、痛みを日記につけておくことも、症状の継続性を証明しやすいのでおすすめです。
尾てい骨骨折(尾骨骨折)で請求できる慰謝料・費用
尾てい骨骨折(尾骨骨折)の後遺障害慰謝料
尾てい骨骨折(尾骨骨折)の後遺障害慰謝料は、110万円〜290万円です。
しかし、この金額はあくまで弁護士や裁判所が用いる慰謝料の算定基準である弁護士基準に基づいて算定されています。
実際に相手方の保険会社から提示される慰謝料額は、保険会社独自の基準である任意保険基準に基づいて算定されているため、弁護士基準での金額よりも低い傾向にあります。

保険会社が「提示した金額が被害者として受け取れる相当額である」と主張することもあります。
しかし、過去の判例にもとづいた法的正当性の高い基準である弁護士基準に基づいた算定額こそが法的根拠をもった適正な相場額です。
保険会社のいうことをそのまま鵜呑みにして示談するのではなく、まずは弁護士に慰謝料額の相場を確認してみましょう。
そのうえで提示額と相場額との差が埋められないか、増額交渉をしてもらうことができます。

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尾てい骨骨折(尾骨骨折)で請求できるその他費用
交通事故で尾てい骨骨折(尾骨骨折)を負って後遺障害等級に認定された場合、後遺障害慰謝料をはじめとして、以下のような損害を費用として請求することができます。

- 治療費:治療のために必要となった投薬代・手術代・入院費用など
- 休業損害:治療のために仕事を休んだことで生じる減収に対する補償
- 入通院慰謝料:入通院を必要とするケガによる精神的苦痛に対する賠償金
- その他:治療のために必要であった交通費、付添費用など
- 逸失利益※:後遺障害により減収することとなる将来の収入に対する補償
- 後遺障害慰謝料※:後遺障害を負ったことによる精神的苦痛に対する賠償金
- 物的損害:自動車や自転車の修理代、代車費用など
※ 後遺障害等級に認定された場合のみ請求可能
生身で車と接触し、尻もちをついた際に負傷するケースの多い尾てい骨骨折の場合、たとえば被害者が自転車で走行している状況で事故に遭ったことが想定されます。
事故の際、乗車していた自転車が損傷した際は修理費や買い替え費用などを請求することができます。
尾てい骨骨折(尾骨骨折)の後遺症を弁護士に相談
尾てい骨骨折(尾骨骨折)の後遺症の無料相談受付中!
尾てい骨骨折の後遺障害申請や示談交渉に不安な点がございましたら、弁護士に相談してみましょう。
アトム法律事務所では、交通事故の被害者の方向けに電話・LINEでの無料相談を受け付けております。

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尾てい骨骨折は比較的、骨盤骨折の中でも軽傷とされるため、後遺障害が認定されにくく、慰謝料額も低く算定されることもあります。
適正な慰謝料請求が難しい疾患であるからこそ、法的な専門家である弁護士に依頼をしてみるのもひとつの手段です。
交通事故での示談額は保険会社からの提示額が限界というわけではなく、示談交渉をすれば増額する余地があるケースは少なくありません。
弁護士に相談すれば、交通事故の被害状況、尾てい骨骨折の症状の程度、ご自身を取り巻く状況を考慮して慰謝料や示談金の相場金額を聞くこともできます。
後遺障害申請についても必要な書類の収集、受けるべき検査のアドバイス、認定されるための十分な対策、申請手続きまですべて専門家である弁護士に任せることができます。
相談料・依頼料なしで弁護士に依頼するには?
無料相談の段階から正式に依頼した場合の弁護士費用をご確認いただけます。
相談の際に無理に契約の締結を強いるようなこともありませんので、回収見込み額と費用を照らし合わせながら正式に依頼するかご検討ください。
また、弁護士費用特約を利用すれば、弁護士への相談料・依頼料を支払うことなく依頼することもできます。
弁護士費用特約とは?
弁護士費用特約とは、弁護士に支払う相談料や費用について、保険会社が代わりに負担してくれるという特約です。
負担額には上限が設定されていますが、多くのケースで生じる相談料や費用は上限の範囲内に収まるため、金銭的な負担なく弁護士への相談や依頼が可能となります。

弁護士費用特約は、ご自身だけでなく家族名義の特約も利用することができることもありますので、ご相談前に確認しておきましょう。


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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了