大腿骨骨折の後遺症とは?交通事故での大腿骨頸部骨折の慰謝料相場

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岡野武志弁護士

監修者:アトム法律事務所 代表弁護士
岡野武志

大腿骨骨折の後遺症と認定等級

大腿骨骨折は外科手術を要するケースも多く、治療期間が長引く傾向にあります。

また、大腿骨骨折の後遺症として、左右の足の長さが変わる短縮障害、可動域が制限される機能障害、痛みやしびれといった神経障害を負うことがあります。

大腿骨骨折の後遺症を負った際、後遺障害等級の認定を受ければ後遺障害慰謝料、逸失利益を請求することができます。

この記事は大腿骨骨折の症状や治療、後遺症や認定される後遺障害等級、慰謝料の相場などを解説します。

大腿骨骨折の症状と治療

大腿骨骨折の症状

大腿骨は太ももの骨のことで、上半身を支え、歩行するのに使う重要な部位といえます。

交通事故では、バイクに乗っていて自動車と接触して地面に打ちつけられたり、歩行中や自転車走行中の事故で転倒したことで大腿骨骨折を負ってしまうことも多いです。

ここからは大腿骨骨折の症状と治療、懸念される後遺症について解説します。

大腿骨骨折の症状

大腿骨骨折の症状は、痛み、腫れ、関節の可動域制限などがあげられます。受傷直後には歩行できない場合もありますが、骨折の態様しだいでは痛みも比較的軽く、受傷直後に歩行できる場合もあるでしょう。

大腿骨骨折の治療方法

骨折の部位や状態によって、固定して安静にするのか、手術をするのかが判断されます。

骨折の態様によっては、ベッド上で安静にすることや牽引などの保存治療も可能です。ただし、かなりの時間がかかることが予想されます。

そのため、外科手術による固定術がとられることも多いでしょう。骨折部によっては血流が悪いことで壊死につながりかねず、人工骨頭置換術が選択されることも多いです。

大腿骨骨折の後遺症

骨折の程度や部位によりますが、歩きづらさや麻痺、痛みやしびれ、変形などの後遺症が残る場合があります。

たとえば大腿骨の上部は、大腿骨頭、大腿骨頸部、大腿骨転子部の3つで構成されています。この3つの部位の中で最も多いと言われているのが、大腿骨頸部骨折です。

交通事故による大腿骨頸部骨折は後遺症のリスクが高い

とくに大腿骨頸部は、骨折面が斜めになっていて正常にくっつきにくく変形や偽関節を伴う可能性が高いこと、血行障害により骨がくっつきにくいといった特徴があり、後遺症が残りやすいとされています。

大腿骨頸部骨折の主な後遺症は、股関節の動かしづらさ(機能障害)、股関節の痛み(神経障害)です。

大腿骨骨折で認定される後遺障害等級

大腿骨骨折では、左右の足の長さが変わる短縮障害、可動域が制限される機能障害、痛みやしびれといった神経障害について、後遺障害認定を受けられる可能性があります。

大腿骨骨折の後遺症(1)短縮障害

骨折後の癒着で大腿骨が短縮してしまい、下肢が短くなったことは後遺障害8級5号、10級8号、13級8号に該当する可能性があります。

等級認定基準
8級5号1下肢を5センチメートル以上短縮したもの
10級8号1下肢を3センチメートル以上短縮したもの
13級8号1下肢を1センチメートル以上短縮したもの

大腿骨骨折の後遺症(2)機能障害(人工骨頭や関節を含む)

大腿骨骨折により股関節が動かしづらくなった場合、骨折していない方と比べた可動域の制限の程度によって、後遺障害等級が決まります。機能障害については、後遺障害8級7号または10級11号に認定される可能性があるでしょう。

等級認定基準
8級7号1下肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの
10級11号1下肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの
12級7号1下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの

人工骨頭や人工関節を入れた場合、とくに制限なく後遺障害10級8号に該当します。

8級7号については、骨折をした側の股関節が、骨折をしていない側の股関節と比べて2分の1以下しか動かせなくなった場合に該当する見込みです。

12級7号は人工骨頭や人工関節は挿入していないものの、骨折をしたことで、骨折していない側と比べて4分の3以下に可動域が制限されたものをいいます。

大腿骨骨折の後遺症(3)痛みやしびれなどの神経症状

骨折後の神経症状については12級13号または14級9号の認定を受けられる可能性があります。神経症状とは痛みやしびれなどと考えてください。

等級認定基準
12級13号局部に頑固な神経症状を残すもの
14級9号局部に神経症状を残すもの

痛みやしびれはあくまで自覚症状になるため、客観的に認めてもらう必要があります。

痛みやしびれなどの神経症状について、画像検査でその症状の存在が証明できれば12級13号認定が受けられる可能性があるでしょう。一方で、治療経過や事故状況から医学的に説明できるならば14級9号認定を受けられる可能性があります。

交通事故による大腿骨骨折の慰謝料相場

交通事故による大腿骨骨折の入通院慰謝料

交通事故による大腿骨骨折を治療した場合、入通院慰謝料を請求できます。

入通院慰謝料は、治療期間の長さに基づいて算定されます。

重傷の慰謝料算定表
重傷の慰謝料算定表

たとえば、入院2ヶ月・通院6ヶ月の治療期間を要した場合、入通院慰謝料の相場は181万円です。

入通院慰謝料は、治療期間が長いほど増額されます。

また、入院していないケースに比べて入院もして治療したケースの方が入通院慰謝料は高額になります。

交通事故による大腿骨骨折の後遺障害慰謝料

大腿骨骨折による後遺障害認定を受けた場合、後遺障害慰謝料を請求することができます。

後遺障害慰謝料の相場

等級自賠責*弁護士
1級・要介護1,6502,800
2級・要介護1,2032,370
1級1,1502,800
2級9982,370
3級8611,990
4級7371,670
5級6181,400
6級5121,180
7級4191,000
8級331830
9級249690
10級190550
11級136420
12級94290
13級57180
14級32110

※慰謝料の単位:万円/自賠責の金額は2020年4月以降に発生した事故に適用

後遺障害慰謝料は、用いる算定基準によって金額が変わります。

事故被害者に対する最低限の補償を目的とする、自賠責保険の支払基準で算定した後遺障害慰謝料はかなり低い傾向にあります。

一方で、いわゆる相場額である、弁護士や裁判所が用いる弁護士基準で算定した価格は、自賠責基準の算定額と比べて高額になる傾向にあります。

たとえば、後遺障害10級8号の認定を受けた場合、自賠責基準の後遺障害慰謝料は190万円ですが、弁護士基準で算定した慰謝料額は550万円です。

慰謝料金額相場の3基準比較

相手側の任意保険会社が慰謝料金額を提示する際も、自賠責基準をやや上回る程度の金額にとどまる傾向にあります。

適正な金額を受け取るために、示談交渉を弁護士に依頼して、弁護士基準での慰謝料獲得を目指していきましょう。

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弁護士費用特約があれば、ご負担なく弁護士に依頼することもできます。

法律相談で、依頼した際の弁護士費用について確認したい場合は、あらかじめ利用可能な弁護士費用特約の有無も確認しておきましょう。

弁護士費用特約とは

保険会社が弁護士費用の全部または一部を負担するというもの。事故の損害賠償請求においては弁護士による交渉で、慰謝料が増額することが多いため特約に加入している場合は利用した方がよい。

特約の補償上限としては、法律相談料10万円、弁護士費用300万円としているケースが多いです。そのためほとんどの交通事故の弁護士費用は、弁護士費用特約で全額支払うことができ、被害者の自己負担は0円になることが多いでしょう。

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代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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