交通事故の後遺症で走れない・歩けない。歩行障害で車椅子生活になったら?

更新日:
岡野武志弁護士

監修者:アトム法律事務所 代表弁護士
岡野武志

交通事故の後遺症で走れない・歩けない

交通事故で走れない、歩けないといった歩行障害が残った場合、車椅子生活を余儀なくされることがあります。車椅子生活には様々な困難が伴うことが予想されるため、適切な補償を受けられるように対応していく必要があるでしょう。

交通事故で歩行障害を負った場合、後遺障害等級認定の申請を行い、適切な補償を受ける必要があります。後遺障害等級は後遺症が残った部位や程度によって決められ、重い等級が認定されれば慰謝料や賠償金も高くなります。

交通事故で歩行障害を負った方は、後遺障害等級認定の申請を行い、適切な補償を受けましょう。

事故による後遺症で走れない・歩けなくなったらどうなる?

歩行障害で後遺障害認定を受ける

交通事故で歩行障害を負った場合、後遺障害の申請を行い、後遺障害等級認定を受けましょう。

後遺障害等級は、後遺症の部位や程度によって決められます。重い後遺障害等級が認められればその分、慰謝料や賠償金も高くなります。

歩行障害の後遺障害等級

歩行障害で認定される可能性のある後遺障害等級は、以下のとおりです。

歩行障害の主な後遺障害等級と認定基準

等級認定の基準
1級5号両下肢をひざ関節以上で失つたもの
1級6号両下肢の用を全廃したもの
2級4号両下肢を足関節以上で失つたもの
4級5号一下肢をひざ関節以上で失つたもの
4級7号両足をリスフラン関節以上で失つたもの
5級5号一下肢を足関節以上で失つたもの
5級7号一下肢の用を全廃したもの
5級8号両足の足指の全部を失つたもの
6級7号一下肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの
7級8号一足をリスフラン関節以上で失つたもの
7級10号一下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの
7級11号両足の足指の全部の用を廃したもの
8級5号一下肢を五センチメートル以上短縮したもの
8級7号一下肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの
8級9号一下肢に偽関節を残すもの
8級10号一足の足指の全部を失つたもの
9級14号一足の第一の足指を含み二以上の足指を失つたもの
9級15号一足の足指の全部の用を廃したもの
10級8号一下肢を三センチメートル以上短縮したもの
10級9号一足の第一の足指又は他の四の足指を失つたもの
10級11号一下肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの
11級9号一足の第一の足指を含み二以上の足指の用を廃したもの
12級7号一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの
12級11号一足の第二の足指を失つたもの、第二の足指を含み二の足指を失つたもの又は第三の足指以下の三の足指を失つたもの
12級12号一足の第一の足指又は他の四の足指の用を廃したもの
13級8号一下肢を一センチメートル以上短縮したもの
13級9号一足の第三の足指以下の一又は二の足指を失つたもの
13級10号一足の第二の足指の用を廃したもの、第二の足指を含み二の足指の用を廃したもの又は第三の足指以下の三の足指の用を廃したもの
14級8号一足の第三の足指以下の一又は二の足指の用を廃したもの

後遺障害等級は、医師の診断書や病院のカルテなどに基づいて決定されます。

交通事故で歩行障害を負った方は、後遺障害等級認定の申請を行い、適切な補償を受けましょう。弁護士に依頼すれば、後遺障害等級認定の申請手続きの補助が受けられます。

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歩行障害で後遺障害等級認定を受ける流れ

後遺障害等級認定の申請の大まかな流れは、以下の通りです。

  1. 医師に後遺障害診断書を書いてもらう
  2. 後遺障害等級認定の必要書類を相手の保険会社に提出する
  3. 相手の保険会社から「損害保険料率算出機構」へ書類が移される
  4. 「損害保険料率算出機構」で等級審査が行われる
  5. 後遺障害等級認定の通知がなされる

大まかな流れは以上のとおりですが、事前認定と被害者請求の2つの方法があります。両者の違いを表にまとめると以下の通りです。

事前認定と被害者請求

事前認定被害者請求
主な申請準備者相手の任意保険被害者自身
申請書の提出先相手の任意保険相手の自賠責保険
結果の通知相手の任意保険を経由被害者に直接

事前認定は、被害者は「後遺障害診断書」を医師に作成依頼するのみで、その他に必要な書類は、基本的に相手の任意保険会社が用意します。被害者は「後遺障害診断書」を提出すると、あとは後遺障害等級認定の結果通知を待つのみとなるのです。

被害者請求は「後遺障害診断書」をはじめ、後遺障害等級認定を受けるために必要なほとんどの書類を被害者自身で用意します。そして相手の自賠責保険会社に提出し、自賠責保険会社から損害保険料率算出機構へと書類が移るのです。相手の任意保険会社を介しておらず、等級認定結果も直接届きます。

被害者請求の流れ

歩行障害は後遺障害等級の幅も広いため、適切な等級で認定を受けるためには、後遺障害等級認定の申請書類も十分検討することをおすすめします。必要な検査結果を添付できているか、どういった書類を添付するべきかなど、後遺障害認定の確率を上げるためにはチェックが大切です。そのため被害者請求によって、被害者自身が主体的に申請をおこなう方法がおすすめといえます。

もっとも、足の切断のように外見上で「後遺障害」の残存が明らかな場合は、後遺障害認定される可能性も高いですし、後遺障害等級が何級になるのかは見当がつきやすいでしょう。そのため事前認定で被害者の負担を減らすメリットも大きいです。

このように、後遺障害等級認定については2つの方法があり、それぞれにメリットとデメリットがあります。

事故による歩行障害で慰謝料等はいくらもらえる?

後遺障害に関する賠償(慰謝料と逸失利益)

交通事故で歩行障害を負った場合、後遺障害に関する賠償として後遺障害慰謝料・後遺障害逸失利益を受けることができます。

後遺障害慰謝料は、後遺障害等級によって金額が決まっており、等級が高い方が金額も高くなります。後遺障害慰謝料の金額は、以下のとおりです。

後遺障害慰謝料の金額

等級 自賠責*弁護士
1級・要介護1,650(1,600)2,800
2級・要介護1,203(1,163)2,370
1級1,150(1,100)2,800
2級998(958)2,370
3級861(829)1,990
4級737(712)1,670
5級618(599)1,400
6級512(498)1,180
7級419(409)1,000
8級331(324)830
9級249(245)690
10級190(187)550
11級136(135)420
12級94(93)290
13級57(57)180
14級32(32)110

()内は2020年3月31日以前に発生した事故の場合

後遺障害逸失利益について

後遺障害逸失利益は、後遺障害等級と事故前年の収入から計算されます。計算式は以下の通りです。

逸失利益の計算式

後遺障害逸失利益=1年あたりの基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数

基礎収入は、原則として事故前年の収入が元になります。労働能力喪失率は後遺障害等級に応じて目安が決められており、重い後遺障害等級ほど労働能力喪失率が高く、逸失利益の金額が高額になるのです。

労働能力喪失期間とは、症状固定から67歳までの年齢分、働けないものとみなします。その期間に該当する「ライプニッツ係数」というものを用いることになっています。

治療関係費(治療費や入通院の交通費)

交通事故で歩行障害を負った場合、治療に関する賠償を受けることができます。

治療に関する賠償は、治療費、入院費、通院費、看護費などです。治療に関する賠償は、実際にかかった費用を請求することができます。

また歩行障害が一生治らない場合、将来の通院交通費を請求できる可能性もあるでしょう。

休業損害(ケガで働けない場合の賃金補てん)

交通事故で歩行障害を負った場合、休業に関する賠償を受けることができます。休業に関する賠償は休業損害と呼ばれ、休業期間中の賃金相当額です。

休業損害は、相手の任意保険会社が積極的に金額を提示してくれるわけではなく、被害者側から書類をそろえて請求しなくてはなりません。

車椅子生活に関する賠償|車椅子費用認定の裁判例も紹介

交通事故で歩行障害を負って車椅子生活が余儀なくされた場合、車椅子生活に関する賠償を受けることができます。車椅子生活に関する賠償は、車椅子本体代、修理費、車椅子用タイヤ代、車椅子用バッテリー代、車椅子用介助費などです。

車椅子の費用が認められた判例

これまでの裁判で車椅子の購入費用や買い替え費用、歩行補助具が認められた裁判例を紹介します。

車椅子の買い替え費用

第4胸髄以下完全麻痺等で後遺障害1級1号(要介護)となった会社員に対して、室内用および屋外用の計2台の車椅子の購入費用134万円、さらに5年ごとの買い替え費用として432万円、適宜の修理費用として合計145万円を認めました。(東京地判平21.10.2)

車椅子と介護ベッド

両下肢不全麻痺等(併合4級)の被害者につき、介護ベッド(1台60万円)を10年ごとに、車椅子(1台31万円ほど)を7年ごとにそれぞれ買い替えるものとして、合計228万円余を認めました。(横浜地判平26.1.30)

歩行補助具と車椅子

脳挫傷により随時介護を要するとされて後遺障害2級認定を受けた被害者は、平均余命70年間にわたる歩行補助具(身体成長に合わせて年1回買換え、その後4年ごとの交換)と、車椅子(5年に1回の交換)の購入費を認めました。(大阪地判平12.10.30)

歩行障害が残った被害者にとって、歩行補助具や車椅子は必要不可欠な費用といえます。しかし、それらがいつまで必要か、どの程度の金額のもので、どのくらいの頻度で買い替えるかなどについては、相手の保険会社との交渉が必要です。ときに、相手方から「それは必要ではない」などと心無い言葉を掛けられることもあるでしょう。

交通事故の解決実績を多数もつ弁護士は、被害者の代わりに、相手の保険会社と粘り強い交渉をおこないます。アトム法律事務所では、交通事故でケガをした方に向けた無料法律相談を実施中なので、お気軽にお問い合わせください。

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交通事故で車椅子生活になったら弁護士に相談するメリット

弁護士ができること

交通事故で車椅子生活になった場合、弁護士に依頼することで以下のことが期待できます。

  • 後遺障害等級認定の申請手続きのサポートが受けられる
  • 加害者または加害者の保険会社と示談交渉してもらえる
  • 適切な慰謝料や賠償金の請求を行ってもらえる
  • 示談から裁判への移行もスムーズ

このように、交通事故によって車椅子生活を余儀なくされた被害者にとって弁護士に依頼するメリットは大いにあります。

弁護士に相談するタイミング

交通事故で車椅子生活になったら、できるだけ早く弁護士に相談することをお勧めします。

弁護士に早めに相談することで、後遺障害等級認定の申請を早期に行い、適切な慰謝料や賠償金の請求を行うことができます。

交通事故で車椅子生活になった方は、適切な補償を受けるためにも、弁護士に相談しましょう。

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弁護士に相談する費用

弁護士費用は、法律事務所や弁護士ごとに異なります。交通事故の被害者向けには無料の相談窓口を設けている場合も多いので活用してみましょう。

弁護士費用特約とは

また弁護士費用は、弁護士費用特約を利用することで最小限におさえることができます。多くの場合は弁護士費用特約の補償範囲に収まるため、被害者自身が費用を負担する必要はありません。

もっとも、弁護士費用特約の補償範囲を超えてしまう場合や、弁護士費用特約が適用されない場合は、弁護士費用を負担する必要があります。

事故で歩けなくなった・走れない|歩行障害の無料相談窓口

アトム法律事務所では、交通事故によって歩けなくなったり、走れなくなるなどの歩行障害を負った人に向けた無料法律相談を実施しています。

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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