交通事故で複合性局所疼痛症候群を発症したら?後遺障害認定と賠償金請求
複合性局所疼痛症候群(カウザルギー、RSD)は、激しい痛みを感じる神経症状で、痛みだけでなく灼熱感やしびれ、むくみ等の症状も現れます。
複合性局所疼痛症候群が生じると後遺症が残ることがあるでしょう。
後遺症が残った場合には、適切な行動をとらないと、本来得られるはずの損害賠償金を得られないという恐れが生じるので、何をすべきかを正確に知っておくことが大切です。
本記事では、交通事故で複合性局所疼痛症候群となり後遺症が残った場合に、何をすべきなのか、弁護士に相談する必要性も含めて解説を行っています。
目次
複合性局所疼痛症候群(カウザルギー、RSD)とは?
複合性局所疼痛症候群の症状と判断基準
複合性局所疼痛(とうつう)症候群とはCRPSともいい、カウザルギーとRSD(反射性交換神経ジストロフィー)の2つの疾患の総称のことです。
交通事故などの外傷によって痛みが引き起こされる神経症状を指します。
具体的には、以下のような症状が生じるでしょう。
- 激しい痛み
- ジリジリした痛み
- 灼熱感
- しびれ
- むくみ
複合性局所疼痛症候群といっても症状はさまざまで、日常生活にも支障をきたすことがあります。
複合性局所疼痛症候群の判断基準
複合性局所疼痛症候群かどうかの判断については、厚生労働省が作成した、以下のような判断基準が用いられます。
病気かいずれかの時期に、以下の自覚症状のうち2項目以上に該当すること。
- 皮膚・爪・毛のうちいずれかに萎縮性変化
- 関節可動域制限
- 持続性ないしは不釣り合いな痛み、しびれたような針で刺す痛み、知覚過敏
- 発汗の亢進ないしは低下
- 浮腫
診察時において、以下の他覚所見の項目を2項目以上該当すること。
- 皮膚・爪・毛のうちいずれかに萎縮性変化
- 可動域制限
- アロディニアないしは感覚過敏
- 発汗の亢進ないしは低下
- 浮腫
複合性局所疼痛症候群の治療法
複合性局所疼痛症候群の治療法は、薬物療法や理学療法、交感神経ブロックといった処置などが用いられることになるでしょう。
複合性局所疼痛症候群の後遺障害として、痛み、しびれ、むくみ、運動障害、関節のこわばり、皮膚の変化などが残ることがあります。
複合性局所疼痛症候群で後遺症が残った場合にすべきこと
後遺障害等級の認定を受けよう
交通事故により複合性局所疼痛症候群(カウザルギー、RSD)となった場合には、治療により症状が完治せず、後遺症が残ることがあります。
後遺症が残った場合には、後遺症の症状が後遺障害に該当するとして後遺障害等級認定の申請を行いましょう。
申請の結果、後遺症の症状が後遺障害に該当すると判断されれば、後遺障害の程度に応じた等級の認定受けることができ、後遺障害慰謝料や逸失利益を請求することが可能となります。
後遺障害等級認定を受ける方法
後遺障害等級認定を受けるためには、後遺障害診断書が必要です。治療を行ってくれた医師に作成を依頼しましょう。
そのうえで、その他の必要書類とともに申請を行う必要があります。
申請の方法としては、後遺障害診断書以外の書類を加害者側の任意保険会社に用意してもらう事前認定と、被害者自身ですべての書類を要して申請を行う被害者請求の2種類があります。
事前認定の方が申請にかかる負担が少ないものの、被害者請求では後遺障害等級認定を受けやすいよう、適切な書類を作成・用意できるというメリットもあります。
複合性局所疼痛症候群を原因とした後遺障害の発生の証明は困難なことが多いため、被害者請求により、しっかりと書類をそろえるべきでしょう。
関連記事
・交通事故の後遺障害等級が認定されなかった理由と防止法|結果は変えられる?
複合性局所疼痛症候群で認められる可能性がある後遺障害等級
複合性局所疼痛症候群で認められる可能性のある後遺障害の等級は、以下のとおりです。
等級 | 内容 |
---|---|
7級4号 | 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの |
9級10号 | 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの |
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
複合性局所疼痛症候群が等級認定を受けるには、以下の3徴候全てを客観的に証明することが必要です。
- 関節拘縮
- 皮膚の変化(皮膚温の変化、皮膚の萎縮)
- 骨委縮
検査結果から、3徴候の証明ができたのであれば、残存している痛みの程度や、痛みによりどのような行動が制限されているのかによって後遺障害等級が決まることとなるでしょう。
複合性局所疼痛症候群の賠償金請求額はいくら?
損害賠償請求できる費目を紹介
交通事故により複合性局所疼痛症候群(カウザルギー、RSD)となった場合には、以下のような損害を請求することが可能です。
- 治療費用
- 休業損害
- 入通院慰謝料
- 入通院交通費
- 入通院付添費
- 入院雑費
- 逸失利益
- 後遺障害慰謝料
- 物的損害
費目ごとの具体的な計算方法
治療費用
治療のために必要となった、投薬費・手術代・入院代などをいいます。
実際に生じた費用を支払う必要があるでしょう。
加害者が任意保険会社に加入している場合は、任意保険会社が立て替えてくれることが多いので、実際に負担する機会は少ないといえます。
任意保険会社による立て替えがない場合には、被害者が一旦負担したうえで、加害者へ請求を行うこととなるでしょう。
被害者が負担する際には、健康保険の利用が可能です。
休業損害
休業損害とは、治療のために仕事ができなくなったことで生じる損害をいいます。
具体的な金額は、以下のように算出されるでしょう。
休業損害の計算方法
「事故前の基礎収入」×「休業日数」
事故前の基礎収入とは、基本的に事故前3か月間の収入の平均値となります。
休業日数とは、治療のために実際に仕事を休んだ日数です。
休業損害については、収入のない専業主婦であっても請求することができます。
入通院慰謝料
入通院慰謝料とは、治療のために入院や通院したことで生じる精神的苦痛に対する慰謝料です。
具体的な金額は、入通院の期間に応じて決まり、計算のために以下の表が用いられます。
1か月を30日として計算を行います。
端数が生じた場合には、日割り計算を行って下さい。
入通院交通費
入院や通院のために必要となった交通費についても請求が可能です。
基本的には、公共交通機関の利用料金となるでしょう。
ケガの程度や、病院の立地からタクシーの利用が必要であったといえる場合には、タクシー料金の請求が可能となります。請求の際には、タクシー代の証明のために領収書が必要です。
入通院付添費
入院や通院の際に付添が必要であった場合に請求が可能です。
付き添いの必要性は、医師の判断が重要となるでしょう。
具体的な金額は、入院については1日6500円、通院については1日3300円となります。
職業付添人が必要であったといえる場合には、実際に生じた費用を請求できるでしょう。
入院雑費
入院雑費とは、入院中に必要となる日用雑貨や通信費用などをいいます。
対象範囲が広く、個別に計算することが困難であるため、入院1日1500円として計算がなされるでしょう。
逸失利益
逸失利益とは、後遺障害により事故前のように仕事ができなくなったことで生じる将来の減収分に対する補償をいいます。
逸失利益の金額は、以下のような計算式から算出されます。
基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
- 基礎収入
基本的に交通事故の前年の収入となります。収入のない学生や専業主婦は賃金センサスから算出されるでしょう。 - 労働能力喪失率
後遺障害等級に応じて喪失率が決まっています。 - 労働能力喪失期間
症状固定から、67歳までの期間となります。学生の場合は、原則として18歳からの期間です。 - 労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
逸失利益が認められると、本来は将来得られるはずの利益が先に得られてしまうため、利益を運用することで生じる中間利息を控除するために必要となります。
具体的な数値は、期間に応じて決まっています。
後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料とは、後遺障害となったことで生じる精神的苦痛に対する慰謝料です。
具体的な金額は、後遺障害の等級ごとに定められており、以下の通りとなります。
等級 | 相場額 |
---|---|
7級4号 | 1,000万円 |
9級10号 | 690万円 |
12級13号 | 290万円 |
14級9号 | 110万円 |
※ ()内の金額は2020年3月31日以前の事故に適用
物的損害
交通事故の際に生じた物的損害についても請求が可能です。
具体的には、以下のような損害となるでしょう。
- 自動車や自転車の修理代
- 修理のため代車が必要となった場合の代車費用
- 自動車に積んでいたため破損した荷物の代金
複合性局所疼痛症候群の賠償金請求を弁護士に依頼するメリット
複合性局所疼痛症候群(カウザルギー、RSD)の賠償金請求を弁護士に依頼するメリットは、以下のとおりです。
- 後遺障害等級の認定手続きを行い、適切な後遺障害等級の認定を受けられる
- 加害者側との連絡窓口になってくれる
- 適切な損害賠償金を請求してくれる
後遺障害等級の認定手続きを行ってくれる
弁護士に依頼すると、後遺障害等級認定の申請を行ってもらえます。
弁護士は、法律の知識や過去の経験などから適切な後遺障害等級認定が受けられるよう、書類の作成や収集を行ってくれるでしょう。
後遺障害慰謝料や逸失利益は、認定される後遺障害等級に応じて、請求できる金額が大きく異なってきます。
そのため、弁護士に依頼して適切な後遺障害等級の認定を得ることが非常に大切といえるのです。
加害者側との連絡の窓口になってくれる
弁護士に依頼すると、加害者からの連絡は弁護士が対応することになります。
加害者の多くは、任意保険に加入しているので、加害者側の連絡は任意保険会社からとなるでしょう。
任意保険会社は基本的に営業時間中に連絡を行ってくるので、平日に仕事や家事をしている時間帯に連絡を取る必要が生じます。
ケガの治療や仕事の復帰のための準備を行う最中に連絡を受けるのは、精神的なストレスとなってしまうでしょう。
弁護士に依頼することで任意保険会社とのやり取りを行ってもらうと、精神的なストレスを緩和し、治療に専念することができます。
適切な損害賠償金を得られる
加害者側は相場よりも低い金額で示談しようとしてくる
交通事故における慰謝料の計算基準は複数存在しており、具体的には以下の通りです。
慰謝料の計算基準
- 自賠責基準
自賠責保険に請求を行うと、自賠責保険が慰謝料額を算出するために利用する基準 - 任意保険基準
任意保険会社が慰謝料を支払う際に金額を算出するために利用する基準 - 裁判基準
裁判において慰謝料額を算出するために利用する基準
裁判によって決められる金額が最も正当性があるといえることからも、裁判基準で算出される金額が相場の金額といえ、自賠責基準や任意保険基準で算出された金額よりも高額となります。
しかし、加害者側である任意保険会社は、自賠責基準や任意保険基準で算出された金額で示談するよう交渉してくるため、被害者側からの増額交渉が必要となるのです。
弁護士による示談交渉が必要
相場の金額で示談するためには、増額の交渉が必要となりますが、任意保険会社は簡単には増額を認めてくれません。
特に、被害者本人からの増額交渉を行っても、示談交渉の経験豊富な任意保険会社の担当者には通じず、相場に近い金額までの増額は困難であることが多いでしょう。
しかし、弁護士に増額交渉を行ってもらうと、弁護士から法的根拠のある主張がなされることや、示談交渉でもめると裁判となる可能性があることを任意保険会社が警戒し、増額交渉が認められやすくなるのです。
まずは無料の法律相談を受けよう
以上のようなメリットを受けるために、まずは、弁護士の法律相談を受けましょう。
実際に法律相談を受けることで、自身がどのようなメリット受けることができるのかを具体的に知ることができます。
法律相談や依頼の際に生じる弁護士費用が気になっている方は、自身の加入している保険の弁護士費用特約が利用できないかを確認してください。
弁護士費用特約を利用できれば、相談料や依頼に生じる費用の多くを保険会社に負担してもらえるので、弁護士費用を気にせず弁護士への相談や依頼が可能となります。
アトム法律事務所では、交通事故の被害者を対象に、無料の法律相談を行っています。
また、原則として着手金が無料のため、依頼する際に費用がかからず、加害者から回収した損害賠償金から費用をいただいております。
そのため、弁護士費用特約を利用できない方でも、安心して相談や依頼が可能です。
法律相談の受付は24時間年中無休で対応しているので、一度ご気軽にご連絡ください。
無料相談
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了