
賃貸物件を退去する際に行われる「退去立会い」は、単なる形式的な手続きではありません。この場で、敷金の返還額や原状回復費用の負担範囲が事実上確定することも多く、準備不足のまま臨むと、本来負担しなくてもよい費用まで請求されてしまう可能性があります。
退去立会いは短時間で終わることが多いため、その場の雰囲気や説明に流されてしまい、後から「本当に必要な請求だったのか」と疑問を感じるケースも少なくありません。
この記事では、特定の立場に偏らず、一般的なルールと実務上の注意点を整理しながら、退去立会いで不利にならないために知っておきたい知識と準備をまとめます。
はじめに:退去立会いは「敷金返還」の最重要ポイント

退去立会いは、鍵を返却して終わりという単純なものではありません。室内の状態を確認し、「どこまでが原状回復の対象か」を整理する重要な場面です。
この確認内容次第では、数万円、場合によっては数十万円単位で費用負担が変わることもあります。とくに、事前にルールを把握していないと、指摘された内容をそのまま受け入れてしまい、結果として想定外の負担につながるおそれがあります。
知っておきたい「原状回復」の法的ルール

原状回復については、国土交通省が公表しているガイドラインが一つの基準として広く参照されています。この考え方では、負担の目安は次のように整理されています。
- 貸主負担とされやすいもの
経年劣化や通常の使用による損耗
(日焼けによる壁紙の変色、家具設置による床のへこみ など) - 借主負担とされやすいもの
故意・過失による損傷
掃除を怠ったことによる汚れ
(カビの放置、タバコのヤニ、キッチンの油汚れ など)
特に注意したいのは、「掃除をしていれば防げた汚れ」です。これらは一般論として、借主側の管理不足(善管注意義務違反)と判断されやすい傾向があります。
退去立会いで「不利にならない」ための3つの防衛策

退去立会いは、その場で即座に判断を求められる場面が多く、事前に整理しておくべきポイントを把握しているかどうかで対応に大きな差が出ます。
ここでは、退去立会いを落ち着いて進めるために、事前に意識しておきたい基本的な防衛策を3つに分けて整理します。
①契約書と入居時の記録を再確認する
退去前に、賃貸借契約書の原状回復に関する条項や特約を改めて確認しておきましょう。
また、入居時に撮影した室内写真や、傷・汚れを記録したメモが残っていれば、有効な参考資料になります。
②「掃除」によって誠実な姿勢を示す
管理会社や大家さんも人である以上、室内の状態から受ける印象は小さくありません。
丁寧に使われていることが伝わる状態であれば、細かな部分まで厳しく指摘されにくくなるケースも見られます。事前の清掃は、原状回復トラブルを避けるうえで、最も現実的で効果的な防衛策といえます。
③その場で即断しない
立会い中に提示された内容に納得がいかない場合、無理にその場でサインをする必要はありません。
一度持ち帰って確認するという選択肢があることを覚えておくことも大切です。
【実務編】どこを掃除すべきか?プロの視点を活用する

退去立会いで「手入れ不足」と指摘されやすいのは、日常生活では見落としがちな場所です。プロの視点を参考にすることで、準備の精度を高めることができます。
ハウスクリーニングの専門家の知恵を借りる
水回りの水垢やカビ、換気扇の油汚れ、エアコン内部の汚れなどは、入居者自身では判断が難しい部分です。
こうした箇所は、専門業者が公開しているチェック項目を見ることで、「どこまで対応しておくべきか」の目安が明確になります。
アールクリーニングの「退去掃除チェックリスト」を活用
ハウスクリーニングの専門家である『アールクリーニング』が公開している「賃貸退去掃除はどこまで必要?やらないと損するチェックリスト」は、退去時に確認されやすいポイントが整理されています。
どこまで掃除が必要なのかを把握するための参考情報として活用すると、準備の抜け漏れを防ぎやすくなります。
まとめ:円満な退去は「正しい知識」と「徹底した準備」から

退去立会いでのトラブルは、感情的な対立よりも、知識不足や準備不足から生じることが少なくありません。
原状回復の考え方を理解し、可能な範囲で清掃を整えておくことで、不要な誤解や行き違いを避けやすくなります。自分での対応が難しい場合には、ハウスクリーニング業者の情報を参考にしながら、無理のない方法で準備を進めることも一つの選択肢です。
落ち着いた状態で退去日を迎えるためにも、早めの確認と準備を心がけておきましょう。