【テンプレートあり】解雇予告手当請求書の書き方・送付方法を解説!
会社から突然解雇されたときに、労働者は解雇予告手当を受け取る権利があります。
解雇予告手当とは、雇用主が30日以上前に解雇予告を行わなかった場合に、労働者に対して支払われる手当金のことです。
会社から解雇通知されたにもかかわらず、解雇予告手当を支払ってもらえないときには「解雇予告手当の請求書」を送りましょう。
この記事では、解雇予告手当の請求書の書式・書き方や正しい請求の手順を解説します。
解雇予告手当請求書のテンプレートがダウンロード可能となっていますので、解雇予告手当の請求書を作成することをお考えの方は、ぜひご活用ください。
目次
解雇予告手当請求書の文例・テンプレート
解雇予告手当請求書
〇〇年〇月〇日
〇〇県〇〇市〇〇区〇丁目〇番〇号
〇〇株式会社
代表取締役 〇〇 〇〇殿
〇〇県〇〇市〇〇区〇丁目〇番〇号
鈴木 太郎 印
前略 私は貴社において〇〇年〇月〇日から○○年〇月〇日まで勤務していましたが、去る○○年〇月〇日、貴社都合により解雇されました。
貴社による解雇通知は解雇日の10日前であったところ、労働基準法20条により、貴社は私に対し20日分の解雇予告手当支払い義務を負います。解雇予告手当は法律上、解雇通知と同時に支払わなければならないことになっております。
ところが貴社は現在に至るまで、上記20日分の解雇予告手当を支給していません。
よって、私は貴社に対し、本書面をもって上記解雇予告手当の支払いを請求します。本書面到着後10日以内に以下に記載する金融機関口座へ振り込む方法にてお支払いください。
万一上記期間内にお支払いを確認できない場合、労働基準監督署へ報告するとともに労働審判、訴訟等の手段により不払いの解雇予告手当及び遅延損害金を請求せざるを得ませんので、お含み頂けますと幸いです。
【振込先の口座】
〇〇銀行〇〇支店 普通預金 口座番号〇〇〇〇〇〇〇
口座名義人 〇〇〇〇〇〇〇
草々
解雇予告手当請求書の書き方
上記で文例を紹介しましたが、解雇予告手当請求書の書き方について詳しく解説します。
解雇予告手当請求書の書き方
- タイトル、宛名、請求者名、押印、日付を入れる
- 不足日数分の解雇予告手当を請求する
- 相当期間内に支払うよう求める
- 支払いがない場合の対応を明確にする
- 振込先口座を記入する
タイトル、宛名、請求者名、押印、日付を入れる
まずは「解雇予告手当請求書」というタイトルを書きましょう。
次に宛先を書きます。会社の住所、会社名、代表取締役の名称を書きましょう。
その下に、差出人の情報を書きます。住所と氏名、必要に応じて電話番号やメールアドレスも記入しましょう。
差出人名の横には「押印」が必要です。認印でかまいません。
忘れずに「文書の作成日付(発送日付)」も書き入れましょう。
不足日数分の解雇予告手当を請求する
内容としては、「不足日数分の解雇予告手当を請求する」ことが重要です。
いつ解雇予告を受けたのか、何日分解雇予告手当が必要になるのかを明らかにした上で、不足日数分の解雇予告手当を請求しましょう。
労働基準法上、解雇予告手当の支給は会社の義務であることも明示しておくと効果的です。
計算方法については、『解雇予告手当の計算方法を徹底解説!【過去3か月分の給与が基準】』の記事をご覧ください。
相当期間内に支払うよう求める
解雇予告手当は、請求書到着後速やかに(相当期間内に)払うよう求めます。相当期間にルールはありませんが、1週間から10日くらいに設定すると良いでしょう。
支払いがない場合の対応を明確にする
末尾に、相当期間内に支払いがない場合の対処も付言しておくようおすすめします。会社へのプレッシャーとなるからです。
たとえば、労働基準監督署への通報や、労働審判や労働訴訟などの法的手続きへの移行の旨を記載することが挙げられます。
振込先口座を記入する
解雇予告手当は、通常振込送金してもらいます。振込先の口座も忘れずに記入しましょう。金融機関名、支店名、預金の種別(ほとんどのケースでは普通預金)、口座番号、口座名義人の名称(カタカナ)を書いてください。
支店名が抜けたり口座番号が間違っていたりすると支払いを受けられないので、銀行通帳などをみて慎重に書き写しましょう。
なお、解雇予告手当を請求するときには、書面で通知すべきです。
労働者と会社の立場上、口頭では無視される可能性が高く、「言った言わない」のトラブルに発展する可能性もあります。
後々のリスクを避けるため、内容証明郵便を利用して、会社宛に送付しましょう。
内容証明郵便とは?送り方・利用方法
内容証明とは?
内容証明郵便は、郵便局と差出人の手元に、相手に送ったものと同じ控えが残る郵便です。書留式になっていて、ポスト投函ではなく相手への手渡しとなります。
内容証明郵便を使うメリットは「いつ相手に送ったのか」「どういった内容の書類を送ったのか」を後々にまではっきり証明できることです。
相手から「請求されていない」などと誤魔化されるリスクがなくなりますし、後に労働基準監督署へ通報するときや労働審判、訴訟を行うときの証拠にも使えます。
配達証明をつける
内容証明郵便で解雇予告手当の請求書を送るときには「配達証明」をつけるようおすすめします。
配達証明とは、相手に郵便が配達された日を通知してもらえるサービスです。配達証明書があれば、相手に確実に郵便が届いたことを証明できます。会社が「受け取っていない」と弁解することはできません。
内容証明郵便発送の際に「配達証明をつけてください」と申し出てみてください。
内容証明郵便の送り方・利用方法
内容証明郵便には、以下の2種類の利用方法があります。
電子内容証明郵便を利用する
1つ目の方法は電子内容証明郵便です。これは、郵便局が提供している「ネットから内容証明郵便を発送できる」サービスです。
わざわざ郵便局に出向く必要はありませんし、内容証明の特殊な書式に従う必要もありません。
日頃忙しくしている方、パソコンを日常的に使っている方などは、電子内容証明郵便を利用すると便利でしょう。
なお電子内容証明郵便の場合「押印」は不要です。
郵便局から差し出す
内容証明郵便を取り扱っている郵便局へ文書を持参し、発送する方法です。
このとき、まったく同じ内容の文書を3通用意しなければなりません。
また内容証明郵便用の特殊な書式に従う必要もあります。書式を無視すると受け付けてもらえないので注意しましょう。
内容証明に用いる謄本は、下記の条件をクリアするように作成しなければなりません。
書き方 | 条件 |
---|---|
縦書き | 1行20字以内、1枚26行以内 |
横書き | ・1行20字以内、1枚26行以内 ・1行13字以内、1枚40行以内 ・1行26字以内、1枚20行以内(3つのうちいずれでも可) |
どれにするか迷われる方は、「1行20字以内、1枚26行以内」「1行26字以内、1枚20行以内」のいずれかを選ぶといいでしょう。
用紙に決まりはないため、この形式を守っていれば、手書きでもパソコンで作成してプリントアウトしたものでも構いません。
すべての郵便局で内容証明郵便を受け付けているわけではないので、事前に発送できる郵便局を調べてから持ち込んでください。
また、残業代を請求する会社への郵送方法は、一般書留とする必要があります。
そのため、通常の郵便料金に加え、一般書留分を追加で支払う必要があります。
なお、内容証明は謄本1枚だと440円の加算料金がかかります。以後は、1枚増えるごとに260円が追加されていきます。
解雇予告手当を請求する手順
以上、請求書についてお伝えしましたが、最後に解雇予告手当を請求する流れ・手順を確認しましょう。
請求書の送付はあくまで初期段階です。解決の目途が立たない場合は、弁護士に依頼するなど次のステップになるべく早く進む必要があります。
①解雇予告手当請求書を送付する
まずは上記に従って解雇予告手当の請求書を作成し、会社へ送付しましょう。
②会社と交渉する
内容証明郵便が会社へ送達されたら、期間内に入金されるかどうか様子を見ましょう。相当期間が経過しても入金がない場合は、連絡して「支払うつもりがあるのか」確認してみてください。
会社に払う意思があるなら、期限を確認します。証拠化のためにも、口頭で終わらせるのではなく、書面での返信を求めることが大切です。
この段階で合意ができれば、合意書を作成し、支払いを受けることが一般的です。
③労働基準監督署へ通報する
会社がどうしても支払いに応じないなら、労働基準監督署へ通報しましょう。
解雇予告手当の支払いは、労働基準法によって定められた会社の義務です。
労働基準監督署は、会社が労働基準法に違反している場合には、指導や是正調査を行い会社にプレッシャーをかけてくれることもあります。
労働基準監督署からの指摘によって、すぐに支払ってもらえる場合もあります。解雇通知や解雇予告手当請求書控えなどの資料を持って相談してみてください。
労働審判・労働訴訟を弁護士に依頼する
労働基準監督署は上記のように是正勧告などをしてくれますが、支払いを強制することはありません。そのため、会社が突っぱねてしまえば、何もできなくなる可能性があります。
そのような場合には、弁護士に相談し、労働審判や民事訴訟といった法的な手続きに移行することも検討しましょう。
民事訴訟により判決が出れば、会社に支払いを義務付けることができ、会社財産の差押えすら可能となります。
しかし、労働審判や民事訴訟では、法的な主張や立証をすることになるため、高度な法律の知識が必要となるだけではなく、煩雑な手続きをしなければなりません。
ご自身でも行うことができますが、煩雑な手続きや、会社とのやり取りは非常にストレスになるでしょう。
弁護士に依頼すれば、証拠集めや支払われていない金額の計算、法的な手続きなど、複雑で専門的なやり取りを弁護士に一任できます。
少しでも気になった場合は、まず無料相談をしている弁護士に相談してみることをおすすめします。
まとめ
解雇予告手当を請求するときには請求書の書き方や正しい請求手順を知り、効率よく請求手続きを進めましょう。
自分1人で対応するのが難しければ、弁護士などの専門家の力を借りることが大切です。迅速にご自分の権利を守っていきましょう。
また、不当な解雇をされた場合や、解雇が不当かどうか知りたい方は弁護士に相談することがおすすめです。
無料相談を実施している弁護士事務所もあるので、一度相談してみてはいかがでしょうか。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了