アトム法律事務所弁護士法人グループ

webマガジン「B-plus」のビジネスコラムに掲載-3  8月号

8月1


webマガジン「B-plus」2009年8月号ビジネスコラムに
裁判員制度~みんなが本当に知りたいことPart3~
という内容で掲載されました。




裁判員制度~みんなが本当に知りたいことPart3~


 前回は裁判員制度に関し、「違憲論その他の批判はあるが、制度は既に始まっている」という観点から、少し踏み込んだ話をお届けしました。今回はみなさんが裁判員になった場合、どんな刑を裁くことになるのか。実例を交えてご紹介します。



1 刑罰の種類
 検察官によって起訴され、裁判所によって犯罪を行ったと認定された人は、その罪に応じた刑罰を受けることになります。日本の刑罰は、重い順に、死刑・懲役・禁錮・罰金・拘留・科料の6つがあります(附加刑は除く)。
この中で、みなさんがもっともよく耳にするのは罰金刑と懲役刑ではないでしょうか。以下、その内容を見てみましょう。

2 懲役と罰金
 刑罰の定義や範囲は、すべて刑法に定められています。
懲役刑
 懲役刑は、有期懲役と無期懲役に分けられます。
・有期懲役
有期懲役とは、一定の期間刑務所にて身柄を拘禁し所定の作業を行うことを内容とした刑で、一月以上二十年以下の間で指定されます。
・無期懲役
対して無期懲役とはその名のとおり、刑期の定めの無い懲役です。これは主に殺人罪や強盗致死罪などの甚大な罪に科せられるもので、日本の刑罰の中では死刑に次いで重いものです。
罰金刑
 罰金刑とは、強制的に金銭を取り立てる刑罰で、その金額は1万円以上と定められています。刑法では、罰金刑の金額には下限を設けていますが、上限については制限していません。そのため、個々の法律の条文に上限額が定められています。例えば傷害罪の条文では刑罰が「十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する」と定められていますが、その場合の罰金は、1万円以上50万円以下の範囲内で量刑されることとなります。



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~~ 雑学其の一:日本で最も高額となる罰金刑の額 ~~
 日本で最も高額となる罰金刑の上限額は、金融商品取引法207条1項1号の7億円になります。ただし、これは個人ではなく、法人、いわゆる会社などに対してのものです。法人が罪を犯した場合、懲役刑を科すことが事実上できませんし、法人は一般的に自然人と比べて支払い能力が高く、低額な財産の剥奪では犯罪の抑止に繋がらないため、このような高額の罰金が規定されているのです。

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3 法定刑の問題点~新潟少女監禁事件をもとに~
 このように、法律は、その時の国民の処罰感情や裁判官の恣意によって過度に重い刑罰が下されることがないよう、法定刑という枠組み内でしか刑罰を下すことができないように規定されています。しかし、実際に起きる事件の中には法の想定を超えるものが稀に存在します。記憶に新しいところでは、新潟少女監禁事件などがその一例です。


新潟少女監禁事件 ~少女が失った時間の代償~

《事件の概要》
 この事件は、男が少女を誘拐、脅して実に9年2ヶ月の長きに渡って監禁し、傷害を負わせたというものです。当時、未成年者略取誘拐・逮捕監禁致傷罪の最高刑は懲役10年。思春期や青春時代という、少女の成長にとって最も重要な時期を被告に奪い取られた結果はあまりにも重大で、犯行はこの法が想定した懲役10年という刑期ではとうてい償い切れない最悪のものと言われました。

《妥当な刑期の模索》
 被告は過去に窃盗の罪も犯していました。窃盗罪の最高刑もまた懲役10年です。刑法には、併合罪といって、2個以上の罪について有期の懲役または禁錮に処するときは、その最も重い罪について定めた刑の最高刑にその2分の1を加えたものを最高刑とするという定めがあります。そうするとこの事件は、窃盗罪も合わせて追起訴した場合、形式的には懲役15年の枠内で自由に量刑ができることとなるのです。

《浮き彫りとなった問題》
 しかしながら、被告の犯した窃盗は、2,464円相当という小額の万引き行為で、且つ弁償もされており、通常ならば不起訴になる軽微な犯罪です。それで今度は、法定刑の範囲内では適正妥当な量刑ができないからといって、不起訴になるような軽微な犯罪を併合罪として起訴することでメインとなる犯罪の最高刑を簡単に超えさせてしまうような脱法的判断は許されるのか?という問題がそこに生じました。

《大きく割れた一審と二審》
 この問題に、一審は科刑の上限の枠内で判断すれば問題ないとして懲役14年を、その後高裁は「法の予想を超える著しく重大で深刻なものであるが、法的刑が軽すぎるとすれば、将来に向けて法改正をするほかない」とし、小額の窃盗罪の懲役はせいぜい1年として、2つの犯罪を個々に判断して併せて懲役11年を言い渡しました。しかし最高裁は、高裁判決を軽すぎるとして破棄。一審を全面的に支持する判決を言い渡しています。

《最高裁判決への疑問》
 この事件に最高裁が下した判決について、法律家の間では疑問を呈する声が多くあがっています。私一刑事弁護人としましても、一審判決は大変脱法的なものであり、メインである罪を最大に考慮してのぞみ、軽微な窃盗罪を個別に量刑して併合した高裁判決のほうが、法の適用として妥当と言わざるをえないと考えています。




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~~ 雑学其の二:最も重い罪「絶対的法定刑」とは ~死刑しかない犯罪 ~~
 閑話休題として最後に1つ。みなさんは、日本の刑法上で最も重い罪が何かご存知でしょうか?
 答えは外患誘致罪です。なんとこの罪の法定刑には死刑しか用意されていないのです。
 外患誘致とは、外国政府と通謀して武力攻撃をもって日本国の安全を侵害することです。その結果として死亡者が発生しなくてもこの罪は成立し、死刑となってしまいます。このように非常に強権的な法規で、且つ外交問題とも直結するため、検察・裁判所共に適用には非常に慎重でなければなりません。そのため、同罪状で審判した例はもちろんのこと、訴追した例すら未だ皆無なのです。


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