舟状骨骨折の後遺症は?認定される後遺障害等級や慰謝料請求を解説

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岡野武志弁護士

監修者:アトム法律事務所 代表弁護士
岡野武志

舟状骨骨折(しゅうじょうこつこっせつ)は、交通事故などで手をついたときに、強い衝撃で手首にある舟状骨が骨折することです。

舟状骨骨折は捻挫に間違われることもあるような骨折ですが、適切な治療が行われないと痛みやしびれといった後遺症が残るおそれがあります。

本記事では、舟状骨骨折の基本的な情報、治療方法、そして後遺症が残った場合に関係する後遺障害等級や慰謝料の考え方について、交通事故に強い弁護士がわかりやすく解説します。

交通事故で生じる舟状骨骨折とは?

交通事故の衝撃で手を強くついた場合に舟状骨骨折が生じる可能性があるでしょう。特に、バイクや自転車の事故では、手を地面についた際に舟状骨が折れるケースが多く見られます。

ここでは、舟状骨の基礎知識と舟状骨骨折の特徴、治療法について詳しく見ていきましょう。

舟状骨骨折とは?

舟状骨骨折とは、8つの骨で構成された手根骨のひとつで、手首の親指側にある舟状骨が折れた状態をいいます。手首の安定性を保ち、手の細かな動きに重要な役割を果たす小さな骨です。

交通事故などで転倒し、手を強くついたときに舟状骨に大きな圧力がかかり骨折することが多いでしょう。

親指の付け根付近を押して痛い場合には、舟状骨骨折が疑わしい可能性があります。

舟状骨骨折の症状

舟状骨骨折の症状としては、手首付近の痛みや腫れが生じます。

注意すべきは、人によっては激痛ではなく、耐えられる程度の痛みであるため、単なる手首の捻挫と勘違いされて放置されやすいです。もっとも、舟状骨は血流の流れが悪いため、骨折と骨周りの血行状態をMRI検査で確認しておく必要があるでしょう。

舟状骨骨折の治療法

一般的に、舟状骨骨折による骨のずれ(転位)がほとんどない場合、ギプスによる固定を行います。固定期間は大体6~8週間程度が多いです。

舟状骨骨折の後遺症で認定される後遺障害等級

舟状骨骨折を負った場合の後遺症として、痛みやしびれといった何らかの神経障害、動かしづらさが残る機能障害があげられます。

このような後遺症の症状が後遺障害等級に該当すると認定を受けることで、請求できる損害賠償金が増額するのです。

症状の内容や程度により、認定される後遺障害等級が異なるため、どのような症状がどのような等級に認定されるのかを紹介します。

神経障害|痛み・しびれ

舟状骨骨折で、骨折部位の周辺にある神経が損傷する場合があります。このとき痛みやしびれといった症状となってあらわれるでしょう。

神経障害は、後遺障害12級13号または後遺障害14級9号に認定される可能性があります。

等級認定基準
12級13号局部に頑固な神経症状を残すもの
14級9号局部に神経症状を残すもの

舟状骨骨折の後遺症としてしびれや痛みが残った場合、その症状が画像検査で医学的に証明できれば12級13号認定の可能性があります。

ただし、神経障害は「目に見えない後遺症」なので、画像検査で必ずしも明らかになるわけではありません。そういった場合には神経学的検査や事故の程度、治療の経過などから症状の存在を示すことで14級9号認定を目指すことになるでしょう。

そもそも後遺障害認定を受けることが難しい側面もあるので、神経症状でお悩みの方は早めに弁護士に相談してみてください。

機能障害|手が動きにくい

舟状骨骨折により、手首が曲がらなくなる機能障害が残る場合があります。後遺障害等級は手首がどの程度曲がらなくなったのかで判断されるものです。

こうした機能障害は、後遺障害8級6号、10級10号、12級6号に認定される可能性があります。

等級認定基準
8級6号1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの
10級10号1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
12級6号1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの

POINT

8級6号の「用を廃したもの」とは、障害の残った手関節が、健康な手関節の可動域の10%以下になった場合、または手首に人工関節を入れても可動域が半分以下に制限されている場合をいいます。

10級10号の「著しい障害を残すもの」とは、障害の残った手関節が、健康な手関節の可動域の半分以下になった場合、または手首に人工関節を入れても可動域が半分を超える場合をいいます。

12級6号「機能に障害を残すもの」とは、障害の残った手関節が、健康な手関節の可動域の4分の3以下に制限されていることをいいます。

可動域制限の後遺障害認定について詳しくは、『交通事故の可動域制限とは?後遺障害認定の要件と慰謝料相場』をお読みください。

後遺障害等級認定を受ける方法

後遺障害等級認定を受けることで、後遺症に関する賠償金を受け取ることができます。

いいかえればどんなにつらい後遺症が残っても「後遺障害」と認められなければ、後遺症に関する賠償金の獲得が困難となるのです。

後遺障害等級認定を受けるための流れは以下のようになります。

  • 医師に後遺障害診断書を書いてもらう
  • 後遺障害認定の申請書類を用意する
  • 相手方の保険会社を通して審査機関に審査に必要な書類を提出する
  • 審査がなされ、後遺障害等級認定の判断通知を受け取る

後遺障害認定を受けるには適切な通院が重要です。通院と後遺障害の関係については、関連記事『交通事故の通院と後遺障害の関係|認定されるには適切な通院が必要』をご確認ください。

ただし、後遺障害等級認定の申請をするための準備は、なかなか慣れていないと難しいでしょう。交通事故の解決実績が豊富な弁護士に依頼してサポートを受けることをおすすめします。

舟状骨骨折で請求できる慰謝料

舟状骨骨折で後遺症が残った場合の慰謝料

交通事故により舟状骨骨折を負い、後遺症が残った場合には、以下のような慰謝料を請求することが可能です。

  • 入通院慰謝料
    舟状骨骨折を治療するために入院・通院したことで生じる精神的苦痛に対する慰謝料
  • 後遺障害慰謝料
    舟状骨骨折により後遺障害が残ったことで生じる精神的苦痛に対する慰謝料

入通院慰謝料の相場|骨折治療にかかった期間で計算

交通事故の入通院慰謝料額は治療期間がベースになります。たとえば、舟状骨骨折による慰謝料は、通院4ヶ月かかったなら90万円、通院6ヶ月かかったなら116万円です。

下表に通院期間ごとの慰謝料相場を示します。

通院慰謝料の相場

通院月数慰謝料の金額
2ヶ月52万円
3ヶ月73万円
4ヶ月90万円
5ヶ月105万円
6ヶ月116万円

なお、ここでは例として入院なしを想定していますが、入院していた場合には表よりも慰謝料は高くなる見込みです。

後遺障害慰謝料の相場|後遺障害等級しだいで金額が決まる

後遺障害慰謝料は、後遺症の症状が後遺障害に該当するという認定を受けることで請求することが可能となります。

後遺障害慰謝料の相場額は認定される後遺障害等級に応じて異なり、具体的な金額は以下の通りです。

後遺障害慰謝料の相場

等級 相場額
8級830万円
10級550万円
12級290万円
14級110万円

ただし、この表に記載してある金額は、裁判で認められている相場です。相手の保険会社が提案してくる金額はもっと低く、法的には増額の余地がある金額にとどまっています。

たとえば、相手の任意保険会社から「後遺障害8級に認定されているので、慰謝料として600万円をお支払いします」と聞くと、なかには高額に感じる人もいるかもしれません。しかし、本来は830万円が金額相場なので、安易に示談に応じないようにしましょう。

他にも通院日数が短すぎる、過失割合が高く見積もられているなどの原因から、本来もらえる金額よりも慰謝料が減額されることがあります。

慰謝料が減額されるケースについては、『交通事故の慰謝料が減額されそう…減額される状況とポイントを紹介』の記事が参考になります。あわせてご覧ください。

慰謝料以外にも請求できる損害がある

交通事故により舟状骨骨折を負い、後遺症が残った場合には、慰謝料以外にも以下のような損害に対して損害賠償請求が可能です。

  • 治療関係費
    投薬代、手術費用、入院代など治療のために必要な費用
  • 休業損害
    治療のために仕事を休んだことで生じる損害に対する補償
  • 逸失利益
    後遺障害が生じたことで生じる将来の減収に対する補償
  • 物的損害
    自動車の修理代や代車費用など

どのような損害を請求できるのか、請求金額をどのように計算するのかといった点については、専門家である弁護士に相談すると良いでしょう。

交通事故により舟状骨骨折を負ったら弁護士に相談を

弁護士に相談するメリット

交通事故により舟状骨骨折を負い、後遺症が残った場合に弁護士に相談すると、以下のようなメリットを得られるでしょう。

  • 適切な後遺障害等級の認定を受けられるようサポートしてもらえる
  • 相手方との連絡を弁護士が行ってくれる
  • 相場の慰謝料や損害賠償金を得られる可能性が高まる

慰謝料や損害賠償金の金額は、相手の保険会社の金額から増額できる余地が多数あります。しかし、その増額は弁護士でないと難しいのが現実です。

増額交渉(弁護士あり)

保険会社は弁護士が出てくることで、「相手が裁判も考えているのかもしれない」と身構えます。そのため裁判の手前の段階である示談でも、裁判所が認める金額を受け入れやすいのです。

また、弁護士に示談交渉を任せると弁護士が連絡の窓口となり、相手と関わらなくてもよくなるため、治療に専念することかできます。

アトム法律事務所の無料相談を活用ください

舟状骨骨折で後遺症が残ることになったため弁護士に相談したい場合は、アトム法律事務所の無料相談をご活用ください。

交通事故の案件について経験豊富な弁護士に、無料で相談することが可能です。

無料相談の利用後に、無理に契約を迫ることはありません。

弁護士の話を聞いて、増額の可能性が具体的に見えたり、弁護士に依頼したらより納得した解決につながりそうだと感じたりしたらご契約の意向をお伝えください。

無料相談だけの利用はもちろん、他事務所の弁護士に相談した後のセカンドオピニオンとしての利用も大歓迎です。

法律相談の予約受付は24時間いつでも可能なため、お気軽にご連絡ください。

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代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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