開放骨折の後遺症|交通事故での複雑骨折の慰謝料の相場

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岡野武志弁護士

監修者:アトム法律事務所 代表弁護士
岡野武志

開放骨折(複雑骨折)とは、骨折した骨の端が皮膚を突き破って露出し、骨折部分とつながる傷が皮膚にある状態のことをいいます。

開放骨折の後遺症として欠損障害、変形障害、短縮障害、機能障害、醜状障害、神経障害を負った場合、後遺障害等級の認定を受けられる可能性があります。

後遺障害等級の認定を受ければ、後遺障害慰謝料や逸失利益を請求することができるため、慰謝料や示談金の増額も見込めます。

今回は、交通事故での複雑骨折の症状、治療、後遺症と認定等級、慰謝料相場など適正な金額を受け取るために知っておくべき知識を解説いたします。

交通事故による開放骨折(複雑骨折)の症状、治療

開放骨折(複雑骨折)とは?

開放骨折とは、骨折した骨の端が皮膚を突き破って露出し、骨折部分とつながる傷が皮膚にある状態のことをいいます。複雑骨折と呼ばれることもある骨折です。

複雑骨折の治療では、多くの場合手術が必要です。手術では、骨を洗浄したうえで整復し、固定するためにプレートやネジなどの金属を使用します。
感染の予防のために抗生物質の投与が行われることもあるでしょう。

開放骨折(複雑骨折)の症状と後遺症

開放骨折(複雑骨折)の症状は、骨折部分の痛み、腫れ、出血による意識の低下などです。また、骨折した骨の一部が皮膚から露出しているため、感染のリスクにも注意しなければなりません。

後遺症としては、感染症や血行障害による切断(欠損障害)、骨がずれて癒合する変形障害、脚が短くなる短縮障害、骨折部分や周辺関節の可動域制限(機能障害)などが挙げられます。

傷跡が残る醜状障害や痛みやしびれが残る神経障害が生じることもあります。

開放骨折(複雑骨折)の治療

開放骨折(複雑骨折)の治療には、以下のような方法があります。

  • デブリードマン
  • 骨折部の固定
  • 感染症の予防
  • 切断

開放骨折(複雑骨折)を負った際には、骨折した創部の徹底的な洗浄と壊死した部位や異物、骨片の除去(デブリードマン)を行います。

その後、骨折部を強固に固定した上で感染症の予防のための薬物療法も行うことになります。

症状によっては、治療の選択肢として切断されるケースもあります。

開放骨折(複雑骨折)による後遺症と慰謝料相場

開放骨折(複雑骨折)で残りうる以下の後遺症の後遺障害等級・慰謝料を見ていきましょう。

  • 感染症や血行障害により体の一部を切断(欠損障害)
  • 折れた骨が元の形に戻らない、偽関節が残る(変形障害)
  • 治療の結果、足が短くなる(短縮障害)
  • 骨折部分や周辺の関節の可動域が制限される(機能障害)
  • 傷跡が残る(醜状障害)
  • 痛みや痺れが残る(神経障害)

開放骨折(複雑骨折)による後遺症①欠損障害

開放骨折(複雑骨折)により生じた感染症や血行障害が原因で体の一部が欠損することがあります。
このような欠損障害によって認定される可能性がある後遺障害は、以下の通りです。

開放骨折(複雑骨折)による欠損障害の後遺障害等級

等級症状
1級3号両方の腕を肘関節以上で失った慰謝料相場:2,800万円
1級5号両脚を膝関節以上で失った慰謝料相場:2,800万円
2級3号両方の腕を手首の関節以上で失った慰謝料相場:2,370万円
2級5号両脚を足首の関節以上で失った慰謝料相場:2,370万円
3級5号両方の手の指の全部を失った慰謝料相場:1,990万円
4級4号片方の腕を肘関節以上で失った慰謝料相場:1,670万円
4級5号片脚を膝関節以上で失った慰謝料相場:1,670万円
4級7号両脚をリスフラン関節以上で失った慰謝料相場:1,670万円
5級4号片方の腕を手首の関節以上で失った慰謝料相場:1,400万円
5級5号片脚を膝関節以上で失った慰謝料相場:1,400万円
5級8号両脚の指を全部失った慰謝料相場:1,400万円
6級8号片手の親指を含む3本以上の指を失った、または、親指以外の3本の指を失った慰謝料相場:1,180万円
7級6号片手の親指を含む2本以上の指を失った、または、親指以外の4本の指を失った慰謝料相場:1,000万円
7級8号片脚をリスフラン関節以上で失った慰謝料相場:1,000万円
8級3号片手の親指を含む2本以上の指を失った、または、親指以外の3本の指を失った慰謝料相場:830万円
9級12号片手の親指を失った、もしくは、親指以外の2本の指を失った慰謝料相場:690万円
9級14号片脚の親指を含む2本以上の足指を失った慰謝料相場:690万円
10級9号片脚の親指を失った、または、親指以外の4本の指を失った慰謝料相場:550万円
11級8号片手の親指、小指以外の1本の指を失った慰謝料相場:420万円
12級9号片手の小指を失った慰謝料相場:290万円
12級11号片脚の人差し指を失った、片脚の人差し指を含む2本の指を失ったもしくは、片脚の親指、人差し指以外の3本の指を失った慰謝料相場:290万円
13級7号片手の親指の指骨の一部を失った慰謝料相場:180万円
14級6号片手の親御指以外の指骨の一部を失った慰謝料相場:110万円

交通事故で身体の一部が圧迫を受けたり、相当な外力が加わってしまうと、筋組織や神経が大きなダメージを受けます。損傷部位を切断することで生命を守るという選択肢も選ばざるを得ないこともあるでしょう。

開放骨折(複雑骨折)による後遺症②変形障害

開放骨折(複雑骨折)により折れた骨がうまくくっつかずに変形してしまうことがあります。
変形障害が残った場合に認定される可能性がある後遺障害等級は、以下の通りです。

開放骨折(複雑骨折)による変形障害の後遺障害等級

等級症状
7級9号片腕に偽関節があり、かつ、著しい運動障害がある慰謝料相場:1,000万円
7級10号片脚に偽関節があり、かつ、著しい運動障害がある慰謝料相場:1,000万円
8級8号片腕に偽関節がある場合慰謝料相場:830万円
8級9号片脚に偽関節がある場合慰謝料相場:830万円
12級8号長管骨に変形を残した慰謝料相場:290万円

開放骨折(複雑骨折)による後遺症③短縮障害

足の骨が開放骨折(複雑骨折)した場合に、開放骨折(複雑骨折)した脚が、片方の足に比べて短くなることがあります。
短縮障害が残った場合に認められる可能性がある後遺障害等級は、以下の通りです。

開放骨折(複雑骨折)による短縮障害の後遺障害等級

等級症状
8級5号片脚が5センチメートル以上短縮した慰謝料相場:830万円
10級8号片脚が3センチメートル以上短縮した慰謝料相場:550万円
13級8号片脚が1センチメートル以上短縮した慰謝料相場:180万円

骨盤骨折、大腿骨骨折、脛骨骨折などは、足の短縮という後遺障害が残ることもあります。

開放骨折(複雑骨折)による後遺症④機能障害

開放骨折(複雑骨折)した腕や脚が以前よりも動かせなくなってしまうことがあります。
このような機能障害が生じた場合には、以下のような後遺障害等級が認定される可能性があるのです。

開放骨折(複雑骨折)による機能障害の後遺障害等級

等級症状
1級4号両腕の機能全てを失った慰謝料相場:2,800万円
1級6号両脚の機能全てを失った慰謝料相場:2,800万円
4級6号両手の指の機能全てを失った慰謝料相場:1,670万円
5級6号片腕の機能全てを失った慰謝料相場:1,400万円
5級7号片脚の機能全てを失った慰謝料相場:1,400万円
6級6号片腕の手首、肘、肩関節のうち2つの関節の機能を失った慰謝料相場:1,180万円
6級7号片脚の足首、膝、股関節のうち2つの関節の機能を失った慰謝料相場:1,180万円
8級4号片手の親指を含む3本位所の指の機能を失った、または、親指以外の4本の指の機能を失った慰謝料相場:830万円
8級6号片腕の手首、肘、肩関節のうち1つの関節の機能を失った慰謝料相場:830万円
8級7号片脚の足首、膝、股関節のうち1つの関節の機能を失った慰謝料相場:830万円
9級13号片手の親指を含む2本以上の指の機能を失った、または、親指以外の3本の指の機能を失った慰謝料相場:690万円
9級15号片脚の足指の機能全てを失った慰謝料相場:690万円
10級7号片手の親指の機能を失った、もしくは、親指以外の2本の指の機能を失った慰謝料相場:550万円
10級10号片腕の手首、肘、肩関節のうち、1つの関節の機能に著しい障害が残った慰謝料相場:550万円
10級11号片脚の足首、膝、股関節のうち、1つの関節の機能に著しい障害が残った慰謝料相場:550万円
11級9号片脚の親指を含む2本以上の指の機能を失った慰謝料相場:420万円
12級6号片腕の手首、肘、肩関節のうち、1つの関節の機能に障害が残った慰謝料相場:290万円
12級7号片脚の足首、膝、股関節のうち、1つの関節の機能に障害が残った慰謝料相場:290万円
12級10号片手の親指、小指以外の指のうち1本の機能を失った慰謝料相場:290万円
12級12号片脚の親指、または、親指以外の4本の指の機能を失った慰謝料相場:290万円
13級6号片手の小指の機能を失った慰謝料相場:180万円
13級10号片脚の人差し指の機能を失った、または、中指、薬指、小指の3本の機能を失った慰謝料相場:180万円
14級7号片手の親指以外の指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなった慰謝料相場:110万円
14級8号片脚の中指、薬指、小指のうち2本の機能を失った慰謝料相場:110万円

開放骨折(複雑骨折)による後遺症⑤醜状障害

開放骨折(複雑骨折)により生じた傷跡が残った場合には、以下のような後遺障害等級が認定される可能性があります。

開放骨折(複雑骨折)による醜状障害の後遺障害等級

等級症状
12級相当腕や脚の露出面にてのひらの3倍の大きさの醜い跡が残っている慰謝料相場:290万円
14級4号腕の露出面にてのひらの大きさの醜い跡が残っている慰謝料相場:110万円
14級5号脚の露出面にてのひらの大きさの醜い跡が残っている慰謝料相場:110万円

開放骨折(複雑骨折)による後遺症⑥神経障害

開放骨折(複雑骨折)となった部分に痛みが残ることがあり、このような神経障害が残った場合には、以下のような後遺障害等級が認定される可能性があります。

開放骨折(複雑骨折)による神経障害の後遺障害等級 

等級症状
12級13号局部に頑固な神経症状が残った慰謝料相場:290万円
14級9号局部に神経症状が残った慰謝料相場:110万円

開放骨折(複雑骨折)での後遺症が残った場合の補償

開放骨折(複雑骨折)による後遺障害等級の認定を受けた場合、後遺障害慰謝料や逸失利益を請求できます。

開放骨折(複雑骨折)の後遺障害慰謝料

開放骨折(複雑骨折)による後遺障害等級の認定を受ければ、後遺障害慰謝料を請求できます。

後遺障害慰謝料は、各等級ごとに相場が決まっています。

等級と慰謝料額については、以下の通りに定められています。

ただし、ここに示されている慰謝料額はあくまで弁護士基準に基づいた金額であり、弁護士が介入しない状況で実際に任意保険会社から提示される慰謝料額は表の金額よりも低くなる傾向にあります。

等級慰謝料額
1級・要介護2,800万円
2級・要介護2,370万円
1級2,800万円
2級2,370万円
3級1,990万円
4級1,670万円
5級1,400万円
6級1,180万円
7級1,000万円
8級830万円
9級690万円
10級550万円
11級420万円
12級290万円
13級180万円
14級110万円

後遺障害慰謝料は、自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準といった算定基準のうち、どの基準を用いるかで算定額が大きく変わります。

自賠責基準は、自賠責保険会社から支払われる慰謝料の基準で、被害者が受け取れる最低限の金額に設定されています。

対して、任意保険基準は自賠責基準よりも高い金額設定にはなりますが、弁護士や裁判所で用いられる弁護士基準での算定額よりも低い傾向にあり、妥当な金額とはいえません。

適正な金額で慰謝料をもらうためには、相手側の保険会社との増額交渉を行う必要があります。

開放骨折(複雑骨折)の逸失利益

交通事故による後遺障害の認定を受けた場合、逸失利益を請求できます。

逸失利益とは、不法行為がなければ得ていたはずの利益のことを指します。

今回の場合は、不法行為である交通事故によって後遺症を負わなければ働いて得られていた将来の収入を逸失利益として請求できます。

逸失利益は、後遺障害によって喪失した労働能力、年齢や職業、1年に得ていた基礎年収などの事情を考慮して金額を算定します。

その他に請求できる損害|治療費や入通院慰謝料など

交通事故により開放骨折(複雑骨折)した場合には、後遺障害認定の有無に関係なく治療費や休業損害などの費用や損害も請求することができます。

  • 治療費、入院費用、入通院交通費などの治療関係費用
  • 休業損害(治療のために仕事ができずに減収したことへの補てん)
  • 入通院慰謝料(入通院期間に負った精神的苦痛への金銭補償)
  • 自動車の修理費用や代車費用などの物的損害

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監修者


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代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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