手根管症候群で後遺症|後遺障害等級の認定を受けるポイントを解説

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岡野武志弁護士

監修者:アトム法律事務所 代表弁護士
岡野武志

交通事故で手のしびれが残った

手根管(しゅこんかん)症候群は正中神経麻痺の一種であり、正中神経が圧迫されることでしびれや痛みなどの症状がみられます。

手根管症候群によって神経症状などの後遺症が残った際には、後遺障害認定を受ければ後遺障害慰謝料を請求することが可能です。

後遺障害認定を受けることで請求できる慰謝料や賠償金は高額になりやすいため、適切な等級認定を受けられるようにすることが大切となります。

本記事では、手根管症候群の後遺症や症状、認定され得る等級や慰謝料の相場、相場価格を受け取るポイントについて解説していきます。

手根管症候群の症状、治療

手根管症候群とは?

手根管(しゅこんかん)症候群は、手首の手根管という狭いトンネルの中で正中神経が圧迫されて起こる、正中神経麻痺の一種です。

手の親指、人差し指、中指、薬指にまでしびれや痛みなどの症状がみられることがあります。

こうしたしびれや痛みは就寝後や明け方にあらわれる傾向にあり、しだいに細々とした作業ができなくなっていくのです。

正中神経麻痺の一種であり、同じように猿の手のような形に変形してしまいます。

手根管症候群の原因と診断方法

交通事故での手根管症候群の原因となる代表的なケガは以下の通りです。

  • 橈骨遠位端骨折
  • コーレス骨折
  • 月状骨脱臼
  • フォルクマン拘縮

手根管症候群の診断方法

手根管症候群の診断は以下のような方法によって行われます。

  • ティネルサイン
    手首をゴムハンマーなどで軽くたたき、指先のしびれや痛みが生じるかどうかを確認する
  • ファレンテスト
    手首を直角に曲げて手の甲をあわせた状態を保持し、指や手に痛みが出るかどうかを確認する
  • 神経伝導速度検査
    手根管を挟んだ正中神経の神経伝導スピードを図る
  • 画像検査
    レントゲンやMRIなどから

手根管症候群は仕事やスポーツで手を使いすぎた場合にも発症する可能性があります。

そのため、交通事故が原因であることを明らかにするためには、事故発生からなるべく早期に適切な検査を受ける必要があるでしょう。

手根管症候群の治療

消炎鎮痛剤やビタミンB12などの薬物治療によって、炎症やしびれを軽減させます。

また、安静にするためシーネ(副木)固定を行うなど保存的療法も行われます。

親指の付け根の手のひら側のふくらみの筋肉である母指球筋がやせるといった症状がみられる場合、手術を行うこともあります。

具体的には、内視鏡を用いた鏡視下手根管開放術、手掌を切開する直視下手根管開放術などで正中神経の除圧をします。

交通事故後の手根管症候群の後遺症と認定等級

手根管症候群で生じる可能性がある後遺症の症状

手根管症候群の後遺症は、手指の痛みやしびれが残る神経症状です。

また、正中神経が切断・挫滅している場合には、小指以外の4指や手関節が、しびれにより以前のように動かせなくなるという機能障害が生じる可能性があります。

後遺症が残った場合、後遺障害認定を受けましょう。

後遺障害認定を受けることで、後遺障害慰謝料や逸失利益を請求することができます。

手根管症候群で認められる可能性がある後遺障害等級

手根管症候群により生じる後遺症により認められる可能性がある後遺障害等級や認定基準について紹介します。

機能障害による後遺障害等級

手根管症候群による機能障害は、後遺障害等級8級4号または10級10号の認定を受けられる可能性があります。

等級症状
8級4号1手の親指を含み3の手指の用を廃したもの
10級10号1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの

小指以外の指の可動域が2分の1以下となったり、感覚が完全になくなった場合には、8級4号が認定されます。

手関節が全く動かない、または、可動域が10分の1以下となった場合には10級10号が認定されるでしょう。

可動域の判断は、ケガを負っていない側の指や手関節の可動域との比較により行われます。

神経症状による後遺障害等級

手根管症候群による手のしびれといった神経症状は、後遺障害12級13号または14級9号の認定を受けられる可能性があります。

神経症状の後遺障害等級

等級内容
12級13号局部に頑固な神経症状を残すもの
14級9号局部に神経症状を残すもの

神経症状の場合、認定されるとしても12級13号・14級9号のいずれかに認定されるか、認定等級の違いが問題になることも少なくありません。

12級13号と14級9号の違いは、神経症状が画像検査で明らかかどうかです。

本来、自分しか知覚できない痛みやしびれが、神経学的検査や画像検査の結果などでも客観的に明らかであるほど重症でなければ、12級には認定されません。

神経学検査や画像検査の結果で証明できないものの、交通事故の態様や規模、事故直後からこれまでの治療の経過、神経症状の一貫性などの事情から神経症状の発生を説明できる場合、14級9号の認定を受けられる可能性はあります。

交通事故での手根管症候群の慰謝料

手根管症候群で後遺障害が認められた場合の慰謝料相場額

手根管症候群により生じた後遺症が後遺障害認定を受けた場合、認定された等級に応じて後遺障害慰謝料を請求することができます。

等級ごとの後遺障害慰謝料の相場額は、以下の通りです。

手根管症候群の後遺障害慰謝料

後遺障害相場額
8級4号830万円
10級10号550万円
12級13号290万円
14級9号110万円

入通院慰謝料の請求も可能

交通事故で負った手根管症候群を治療した際には、後遺障害が認められない場合でも、入通院慰謝料を請求できます。

入通院慰謝料は、慰謝料算定表を用いて治療期間や入院の有無といった事情を考慮して金額を決定します。

手根管症候群の入通院慰謝料の金額は、以下の算定表から判断可能です。

重傷の慰謝料算定表

横列の入院月数、縦列の通院月数に自分の入通院月数を照らし合わせれば慰謝料相場を知ることができます。

入院していたり、治療期間が長ければ慰謝料額は高額になります。

適切な金額での示談金を受け取るためには

慰謝料を含めた損害賠償金の金額は、基本的に加害者側との示談交渉により決まり、示談金として支払われます。

適切な金額での示談金を受け取るために、弁護士に示談交渉を依頼してみましょう。

相場の慰謝料額とは、過去の判例をもとにした金額であり、任意保険会社から実際に支払われる金額というわけではありません。

任意保険会社が提示してくる示談金額は、相場の金額と比べて低く、適切な金額とはいえないのです。

適切な相場価格で慰謝料を支払ってもらうためには、相手側の保険会社の提示を鵜呑みにせず、増額交渉をしていくことになります。

ここでの交渉を弁護士に依頼すれば、相手側の保険会社が示談金を増額してくれる可能性を高めることができます。

法律の専門家である弁護士であれば法的な根拠をもって適切な主張をすることができます。

また、保険会社にとっては「増額しなければ弁護士を通じて裁判を起こされるかもしれない」と感じることから、増額交渉に応じてくれることが多いのです。

増額交渉(弁護士あり)

交通事故で手根管症候群を負ったら弁護士に相談

弁護士に相談・依頼することで生じるメリット

交通事故で手根管症候群を負ったら、弁護士に相談しましょう。

弁護士に相談・依頼を行うことで、以下のようなメリットを得らます。

  • 相手側との連絡を代わりに行ってくれる
  • 適切な等級で後遺障害認定を受けられるようサポートしてもらえる
  • 相場に近い金額で示談できるよう示談交渉を行ってもらえる

弁護士事務所によっては、交通事故の被害者に向けた無料法律相談を実施している場合があります。

相手側から提示された金額が相場金額といえるか、いくら請求できそうか、一度相談すると良いでしょう。

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代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。全国15拠点を構えるアトム法律グループの代表弁護士として、刑事事件・交通事故・離婚・相続の解決に注力している。
一方で「岡野タケシ弁護士」としてSNSでのニュースや法律問題解説を弁護士視点で配信している(YouTubeチャンネル登録者176万人、TikTokフォロワー数69万人、Xフォロワー数24万人)。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士、弁理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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