バイク事故・自転車事故で脊髄損傷に。下半身不随などの慰謝料や等級認定を解説

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岡野武志弁護士

監修者:アトム法律事務所 代表弁護士
岡野武志

バイク事故で脊髄損傷や麻痺

バイク事故で脊髄を損傷し、後遺障害の認定や賠償金について悩んでいる方へ。

バイク事故は身体がむき出しの状態で外傷を受けるため、重大なケガとなるリスクが高いです。とくに脊髄を損傷すると、運動機能や感覚機能に障害が出てしまい、深刻な後遺障害が残ってしまう可能性があります。

この記事では、脊髄損傷の症状(例:半身不随)、後遺障害の等級、慰謝料や賠償金の相場、弁護士相談のメリットなど、賠償金請求に必要な情報を解説します。

目次

バイク事故による脊髄損傷の症状

脊髄損傷の症状と部位の図解

脊髄損傷とは、背骨を通る脊髄(せきずい)という神経の束が傷つくことをいいます。

脊髄は、脳からつながる中枢神経で、脳からの命令や信号を各末梢器官に伝達したり、末梢器官からの情報・信号を脳に伝えたりと重要な役割をもちます。

バイク事故で脊髄が損傷すると、その損傷部位以下に麻痺や感覚障害、排泄障害、呼吸障害、言語障害などの後遺障害が残ってしまう場合があります。

脊髄の損傷箇所別に、主な症状を見ていきましょう。

首の脊髄を損傷|四肢麻痺や呼吸障害

首の部分の脊髄は、頸髄といわれます。この頸髄を損傷すると、両上肢・両下肢に麻痺が残る四肢麻痺や、呼吸障害などの重篤な後遺障害が残ることがあります。

麻痺の種類

首の脊髄損傷で重篤な後遺障害が残った場合、自力での生活が困難になり、常時介護が必要になるケースもあります。

被害者の精神的苦痛も大きいため、慰謝料は高額になることが多いです。

胸の脊髄を損傷|下半身不随

胸の部分にあたる胸髄を損傷した場合は、両下肢に麻痺が残る対麻痺や、骨盤臓器の感覚障害・運動障害が残り、下半身不随になる場合があります。

骨盤臓器の感覚障害・運動障害とは、具体的には膀胱や直腸、性器などの障害を指し、排せつ・排便や性機能に支障が出ることがあるのです。

下半身不随になると介護が必要になる可能性があり、その場合は慰謝料が高額になることが予想されます。

腰の脊髄を損傷|下肢麻痺や排泄障害

腰の部分の脊髄は腰髄といわれます。

腰髄を損傷すると、下肢麻痺や、排せつ障害などの後遺障害が残る場合があります。

腰髄損傷による下肢麻痺は、両足の関節の背屈や親指を伸ばす筋力の低下が低下するなど、部分的であることもあります。

脊髄損傷は回復する?後遺症が残る?

バイク事故など交通事故で脊髄損傷を負った場合、後遺症が残るケースが多いです。ただし、どの程度の後遺症が残るかは、完全損傷か不完全損傷かによっても変わってきます。

  • 完全損傷
    損傷部位以下の運動・感覚機能が完全に失われる状態を指す
    重度の後遺障害として認定されることが多い
  • 不完全損傷(非完全損傷)
    損傷部位以下に一部の運動や感覚が残存している状態を指す
    症状の重さや回復の過程には個人差がある

まずは、治療・リハビリを十分におこない、神経回路の回復を目指すことが最優先です。

バイク事故による脊髄損傷の検査・治療法

続いて、バイク事故による脊髄損傷の検査・治療法を解説します。

どのような検査・治療を受けるかは、のちの後遺障害認定や賠償請求でも重要であることが多いです。適切な検査・治療を受けて記録を残しておくことがポイントです。

詳しく確認していきましょう。

脊髄損傷の検査方法

脊髄損傷の有無や程度を確認するためには、以下のような検査が行われます。

検査方法

  • MRI検査
  • CT検査
  • 神経学的検査
    腱反射、筋力低下、筋萎縮、知覚・巧緻運動の異常 など

脊椎の過伸展が原因となる脊髄損傷(例:非骨傷性脊髄損傷、中心性脊髄損傷)の場合、脊椎の骨折・脱臼を伴わないため、レントゲン検査では異常所見が見つかりません。

したがって、脊髄損傷の画像検査としては、MRI検査やCT検査が望ましいでしょう。

また、客観的所見に裏付けられた自覚症状があることも重要です。主訴のほか、神経学的検査も実施する等して、医師に脊髄損傷の診断をもらうことがポイントです。

さらに、事故直後からの症状の一貫性も重視されるため、症状がある場合は、早期に専門医の診察を受けることが不可欠です。

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脊髄損傷の治療法|リハビリが重要

脊髄損傷の治療は、損傷の程度や部位ごとに異なります。軽度の脊髄損傷の場合は、薬物療法やリハビリテーションで症状の改善を図ることになります。一方で重度の場合は手術が必要になる場合もあるでしょう。

脊髄損傷の治療は医師の判断のもとで一人ひとりの容体に合わせて選択されるものです。代表的な治療方法として、手術、薬物療法、リハビリテーションの例を以下に示します。

  • 手術:脊髄の圧迫物を取り除く手術
  • 薬物療法:痛みや炎症を抑える、筋肉の痙攣を抑える、排尿障害を改善するなどの目的に合わせた薬物療法
  • リハビリテーション:筋力や運動機能の回復を目的とした、理学療法、作業療法、言語療法などのリハビリテーション

脊髄損傷は、完治がむずかしいとされていますが、早期かつ適切な治療とリハビリテーションをおこなうことで、日常生活を送れるレベルへの回復を図ります。

バイク事故における脊髄損傷で請求できる慰謝料・賠償金

バイク事故による脊髄損傷の主な慰謝料・賠償金は、以下の通りです。

費目概要
治療費脊髄損傷の治療にかかる費用
※必要かつ相当な実費
休業損害脊髄損傷の治療にともなう休業での収入減への補償
※事故前の1日当たりの収入×休業日数
入通院慰謝料脊髄損傷の治療中に負った精神的苦痛への補償
※入通院慰謝料算定表による(弁護士基準)
後遺障害慰謝料後遺障害が残ったという精神的苦痛への補償
※110万円~2,800万円(弁護士基準)
逸失利益これから先に想定される収入減に対する補償
※事故前の年収×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
介護費用生命や生活維持のために必要かつ相当な介護費用

主な費目の相場・計算方法を見ていきましょう。

なお、慰謝料に関しては「弁護士基準」と呼ばれる過去の判例に沿った基準にもとづく計算方法を紹介します。

入通院慰謝料|慰謝料算定表を紹介

入通院慰謝料は、基本的に治療期間に応じて金額が決まります。脊髄損傷の場合、弁護士基準では以下の表を用います。

重傷の慰謝料算定表

後遺障害慰謝料|脊髄損傷の等級と認定基準も解説

バイク事故による脊髄損傷の結果、重い後遺障害が残る可能性があります。後遺障害が重いほど、後遺障害慰謝料、逸失利益が高額になる傾向があります。

脊髄損傷の場合、別表1級1号、別表2級1号、3級3号、5級2号、7級4号、9級10号、12級13号認定を受けられる可能性があります。

これらの等級の後遺障害慰謝料の金額相場は、以下の通りです。

等級後遺障害慰謝料
別表第1級1号2,800万円
別表第2級1号2,370万円
3級3号1,990万円
5級2号1,400万円
7級4号1,000万円
9級10号690万円
12級13号290万円

合わせて、各等級の認定基準も見ておきましょう。

等級認定基準
1級
1号
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
①高度*²の四肢麻痺が認められるもの、高度の対麻痺が認められるもの
②中等度の四肢麻痺で食事・入浴・用便・更衣等について常時介護を要するもの
③中等度の対麻痺で食事・入浴・用便・更衣等について常時介護を要するもの
1級
2号
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
①中等度*³の四肢麻痺が認められるもの
②軽度*⁴の四肢麻痺で食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を要するもの
③中等度の対麻痺で食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を要するもの
3級
3号
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
①軽度の四肢麻痺が認められるもの(別表第1第2級に該当するものを除く)
②中等度の対麻痺が認められるもの(別表第1第1級又は別表第1第2級に該当するものを除く)
5級
2号
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
①軽度の対麻痺が認められるもの
②1下肢に高度の単麻痺が認められるもの
7級
4号
神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
→1下肢に中等度の単麻痺が認められるもの
9級
10号
神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
→1下肢に軽度の単麻痺が認められるもの
12級
13号 
局部に頑固な神経症状を残すもの
①運動性、支持性、巧緻性及び速度の支障がほとんど認められない程度の軽微な麻痺を残すもの
②運動障害は認められないが、感覚障害が広範囲にわたるもの

*¹ 上記表中、1級1号、1級2号は、別表第一による。
*² 高度とは、歩行や立位ができない状態や、腕で物を持ち上げて移動できない状態等を指す。
*³ 中等度とは、杖・コルセットなしには歩行や階段を上ることができない状態や、片腕ではおおむね500gの物を持ち上げられない状態等を指す。
*⁴ 軽度とは、一人で歩けるが不安定で転倒しやすい状態や、杖やコルセットなしでは階段をのぼれない状態、片手では文字を書けない状態等を指す。

その他の賠償金

バイク事故などで脊髄損傷を負った場合に請求できるその他の賠償金には、治療費・休業損害・逸失利益・介護費用などがあります。

治療費

治療費については、加害者側の任意保険会社が直接病院に支払ってくれる「任意一括サービス」を受けられることがあります。この場合、示談交渉時に改めて加害者側に治療費を請求する必要はありません。

任意一括サービスがない場合は、一時的に被害者側で治療費を立て替えておき、示談交渉時に請求しましょう。

休業損害

休業損害は、基本的に1日あたりの収入に休業日数をかけて算出されます。

遷延性意識障害の場合は事故以降、毎日休業という状態になり、一切の収入が途絶えてしまうケースもあります。被害者が会社員や自営業などの場合は、毎月その月分の休業損害を加害者側に請求できる場合もあるので、経済的負担の軽減につながるでしょう。

休業損害は主婦でも請求できますが、主婦の場合は示談交渉時にまとめて請求するのが一般的です。

休業損害いつもらえる?

逸失利益

逸失利益は、後遺障害認定された場合に請求できるもので、後遺障害による労働能力の低下のために減ってしまう、生涯収入を補償します。

たとえば高度な四肢麻痺で後遺障害1級1号に認定された場合、労働能力が100%失われたとして、症状固定から67歳までの減収分が補償されます。

ただし、労働能力がどの程度低下したかや、何歳までを逸失利益の対象とするかは、被害者の職業や後遺障害の状態などによって変動することがあります。

介護費用

後遺障害により介護が必要になった場合は、介護用品の購入費や介護のためのリフォーム代などを介護費用として請求できます。

また、職業人を雇う場合でも家族が介護する場合でも、それに対する補償も支払われます。

脊髄損傷での慰謝料請求のポイント(1)後遺障害認定

ここからは、バイク事故などで脊髄損傷を負った場合の慰謝料請求に向けた動きを解説していきます。

脊髄損傷では後遺症が残ることが多いため、症状固定と診断されて治療が終了したら、まず後遺障害認定を受ける必要があります。

後遺障害認定は慰謝料額にも大きく影響するので、流れやポイントを解説します。

脊髄損傷で後遺障害認定を受ける流れ

後遺障害認定では、主に書類審査にて後遺障害の有無や程度などが確認され、それに応じた後遺障害等級が検討されます。

後遺障害認定のおおまかな流れは、以下のとおりです。

脊髄損傷の後遺障害認定の流れ

  1. 弁護士相談
    交通事故に強い弁護士に相談し、後遺障害認定の時期を見極める
  2. 治療終了・症状固定
    治療を続けてもこれ以上回復しない状態(症状固定)を迎えたら、症状固定の診断を受ける
  3. 後遺障害診断書の作成等
    主治医に、脊髄損傷の後遺症があることについて、後遺障害診断書を作成してもらう
    後遺障害診断書のほか、必要書類の準備を進める
  4. 後遺障害等級認定の申請・認定
    事故相手の自賠責調査事務所に、必要書類を送付する
    数か月の審査を経て、認定結果が通知される
  5. 加害者側の任意保険会社と示談交渉

審査機関に書類を送付する方法には、以下の2つがあります。

  • 被害者請求
    加害者側の自賠責保険を介した申請方法。被害者がすべての書類を用意する。
  • 事前認定
    加害者側の任意保険会社を介した申請方法。後遺障害診断書以外は、任意保険会社が用意してくれる。

後遺障害認定は基本的に書類審査なので、すべての書類を被害者側で用意する被害者請求のほうが対策がしやすくお勧めです。

弁護士に依頼すれば、いずれの申請方法をとればよいか、後遺障害の申請にあたって準備すべきことは何かなどがわかります。

後遺障害認定後に行う加害者側との示談交渉も、弁護士にまかせることができます。

脊髄損傷で後遺障害認定を受けるポイント

脊髄損傷で後遺障害認定を受ける場合には、以下の点がポイントです。

  • 適切な等級と、その認定基準の把握
  • 認定基準を踏まえた書類対策

適切な等級と、その認定基準の把握

後遺障害認定を受ける際には、まず脊髄損傷による後遺症が、後遺障害何級に該当しうるものなのか把握する必要があります。

狙うべき等級とその認定基準を正確に把握していなければ、適切な書類対策が難しくなるからです。

ただし、例えば同じ下半身不随でも、具体的な症状や程度によって該当する等級が変わってくるなど、適切な等級の判断は難しいものです。

また、各等級の認定基準を見ても記載があいまいでわかりにくいこともあり、過去の類似判例などの確認が必要になることもあります。

適切な等級と認定基準の確認は、弁護士に問い合わせることがお勧めです。アトム法律事務所では、無料で電話・LINE相談を行っています。

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認定基準を踏まえた書類対策

狙うべき等級とその認定基準が分かったら、認定基準を満たしていることを証明する書類の用意が必要です。

後遺障害認定では様々な書類を提出しますが、特に重視されるのが後遺障害診断書です。

症状の今後の見通しを書く欄や自覚症状を書く欄などがあり、それぞれにポイントがありますが、医師が後遺障害認定に精通しているとは限りません。

後遺障害認定に適した書き方になっているかは、専門家である弁護士に相談することがお勧めです。

合わせて、必要に応じて検査結果や日常生活の様子をまとめた報告書など、追加書類の添付も重要です。

必要最低限の書類だけでは症状のことが十分に伝わらないこともあるので、過去の類似事例なども踏まえてどのような書類を添付すべきか検討してみましょう。この点についても、弁護士に相談するとアドバイスを受けられることがあります。

脊髄損傷での慰謝料請求のポイント(2)示談交渉

後遺障害認定が終わったら、加害者側との示談交渉です。示談交渉次第で受け取れる慰謝料・賠償金額が大きく変わるため、事前にしておくべき準備と注意点を解説します。

示談交渉までにしておくべき準備

バイク事故などで脊髄損傷を負った場合、示談交渉前には以下のことをしておきましょう。

  • 慰謝料・賠償金の相場の確認
  • 請求できる費目の洗い出し

慰謝料・賠償金の相場の確認

まずは、慰謝料・賠償金の相場の確認をしておきましょう。

示談交渉の際には加害者側の任意保険会社が慰謝料や賠償金を計算し、提示してくれます。

しかし、これらは任意保険会社独自の基準で計算されていたり、低額になるよう調整されていたりすることが多く、十分とは言えません。

適切な金額を把握していなければ提示を受け入れるべきかの判断ができないため、事前に相場を確認しておくことが重要です。

なお、慰謝料や賠償金には一定の計算方法があることが多いですが、実際には細かい要素を踏まえて柔軟に増額・減額されることも多いです。

専門知識を踏まえた確認が必要なので、一度弁護士に問い合わせてみてください。

請求できる費目の洗い出し

バイク事故などに遭い、脊髄損傷を負ったことでどのような損害を被り、どのような賠償金を請求すべきなのかも、事前に洗い出しておきましょう。

特に重大な後遺障害が残った場合には、介護に関する様々な費用を賠償金として請求できることがあります。しかし、加害者側の任意保険会社がそこまで細かく確認し、漏れのない提示をしてくれるとは限りません。

「これも請求できるのかな?」と思う点があれば、弁護士に問い合わせて確認してみましょう。

示談交渉時の注意点

先述の通り、加害者側の任意保険会社は、示談交渉で低い金額を提示してくることが多いです。

しかし、いくら被害者が事前に正しい相場を確認していても、その主張がすんなり受け入れられることはほとんどありません。

「そのような高額な慰謝料・賠償金は裁判でないと認められない」「専門家でもない人がそのような金額を主張しても、説得力に欠ける」などと反論されてしまうことが考えられます。

そのため、示談交渉では弁護士を立てることがポイントです。弁護士が出てくると、加害者側の任意保険会社は「示談がまとまらないと裁判になるかもしれない」と危惧して、譲歩しやすくなるのです。

弁護士を立てれば直接加害者側と関わることもなくなるため、加害者側の言動にストレスを感じることもなくなります。

弁護士を立てるには費用が掛かりますが、保険に弁護士特約が付いていれば、費用を保険で賄えます。

バイク事故・自転車事故による脊髄損傷に関する裁判例

続いては、バイク事故・自転車事故による脊髄損傷に関する裁判例を紹介します。

バイク事故による脊髄損傷(半身不随)が認定された事例

横浜地判平成29年5月12日(平成27(ワ)第4831号)では、バイク(普通自動二輪車)を運転していた原告が、交通事故により「脊髄損傷」の傷害を負い、半身不随となり、自賠法施行令別表第1級1号の後遺障害(=最重度の後遺障害)に該当すると認定されています。

認定のポイント

本件のバイク事故の概要や、脊髄損傷・半身不随の賠償金について以下のとおりです。

  • 事故態様
    普通乗用自動車を運転していた被告が、安全確認を怠ってハンドルを左に切ったため、左側を並走していた原告のバイクと接触。
  • 受傷内容
    原告は脊髄損傷を負い、両下肢完全麻痺。症状固定時43歳。
  • 後遺障害
    自賠法施行令別表第1級1号「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの」。
  • 慰謝料など
    傷害慰謝料:350万円
    後遺障害慰謝料(本人):2,800万円
    後遺障害慰謝料(近親者):200万円
    将来介護費(日額8,000円×38年間):4,925万4,268円
    総損害額(弁護士費用含む):約1億6,070万円の支払いを命令

自転車事故による脊髄不全損傷が認定された事例

大阪地裁平成20年7月31日判決(平成19年(ワ)687号)では、自転車事故によって脊髄損傷の傷害を負ったことが認定され、被害者に対して2026万9,432円の賠償が認められました。

認定のポイント

裁判所は、以下のようなポイントを認定し、事故と脊髄不全損傷の因果関係を認めました。

  • 事故態様・衝撃の大きさ
    被害者は、自転車で走行中、制限速度を大きく超える時速70〜80kmで被告の自動車に衝突され、車のボンネットにはね上げられた状態で、約39.7m進行後、地面に落下した。車のフロントガラスや天井が大きく破損。
  • 医学的所見
    被害者は、事故により、脊椎の多発骨折(第6・7頸椎棘突起骨折、第一胸椎破裂骨折)、左足関節内顆骨折、左腓骨骨幹部骨折、左肩関節脱臼等の傷害を負った。第1胸椎の椎体は、完全に潰れている状態で、椎体の後方にある脊髄の一部が損傷した可能性が高い。
  • 被害者の症状
    被害者には、両下肢の痙性不全麻痺、両下肢の知覚障害、排尿・排便障害等の脊髄損傷に典型的な症状が残った。
  • その他
    事故直後の画像所見では脊髄損傷が明確に映っていなかった点については、脊髄不全損傷は画像で捉えきれないことも多く、臨床上、麻痺や神経障害が遅れて出現・進行するケースも存在するため、自転車事故による脊髄損傷を否定する根拠にならない。

バイク事故による脊髄損傷に関する質問集

続いて、バイク事故による脊髄損傷に関するよくある質問として、以下にお答えします。

  • バイク事故で使える保険は
  • 自転車事故で脊髄損傷を負ったが後遺障害認定は受けられる?
  • バイク事故・自転車事故による脊髄損傷は多い?

Q.バイク事故で使える保険は?

バイク事故で使える保険は、事故相手の自賠責保険・任意保険の他に、自分の人身傷害保険、労災保険、健康保険の傷害手当金(会社員の場合)、生命保険・医療保険などがあります。

【人身傷害保険】
自損事故でも、ご自身が加入しているバイクの任意保険に「人身傷害保険」があれば、過失に関係なく、治療費や休業損害、慰謝料などが補償されます。
限度額は契約によって異なり、数千万円〜数億円の範囲で設定されることが多いです。
加入状況が分からない場合は、ご自身の保険会社に問い合わせてみましょう。

【労災保険】
仕事中や通勤中に事故に遭った場合は、労災保険から休業補償や治療費が支給されます。
休業補償については、休業給付と休業特別支給金を合わせると、給与の約8割を受けとれるケースがあります。
ただし、加害者の保険で賠償を受けている場合は、一部、給付が制限されるため注意が必要です。

【傷病手当金】
会社を休んだ場合、健康保険から傷病手当金を受け取れることがあります。条件を満たせば、標準報酬日額の約2/3が最長1年6ヶ月支給されます(参考:全国健康保険協会「傷病手当金」)。
任意保険や労災が使えない自損事故などで役立つ制度です。
詳しくは、ご自身の健康保険組合などにご確認ください。

【生命保険・医療保険】
契約内容にもよりますが、ご自身の加入する生命保険・医療保険に、災害入院特約や傷害特約などがついている場合、保険金を受け取れる可能性があります。一般に、加害者側の自賠責保険や任意保険から賠償を受けていたとしても、受け取れます。

【障害年金】
重度の障害を負った場合に受給できる公的年金です。脊髄損傷による半身不随など、一定の障害等級に該当すれば、長期的に年金が支給されます。生活の安定に役立つ重要な制度です。くわしくは、日本年金機構の「障害年金」のページでご確認ください。

Q.自転車事故で脊髄損傷を負ったが後遺障害認定は受けられる?

自転車事故は、自動車やバイクと異なり強制加入保険である「自賠責保険」はありません。

被害者が自転車、事故相手が自動車やバイクの事故で脊髄損傷を負った場合、損害保険料率算出機構という第三者機関が後遺障害認定を行ってくれます。

しかし、自転車同士の事故で脊髄損傷を負った際に、相手方が無保険だった場合、自身の加入する保険会社に人身傷害保険を請求して等級認定をしてもらうか、裁判で後遺障害について判断してもらうことになります。

Q.バイク事故・自転車事故による脊髄損傷は多い?

バイク事故・自転車事故に遭った場合、どのくらいの割合で、脊髄損傷をおこすのかについて、詳しい統計はありません。

しかし、バイクや自転車は、衝撃から身体を守ってくれる車体がないため、事故に見舞われた場合は、脊髄損傷などの重傷に至りやすいと言われています。

参考までに、バイク事故の死亡例では、致命傷となった部位として「頭部」が26.3%、「胸部」が42.1%を占めています(警視庁「2024年中 二輪車の死亡事故の状況(東京都内) 」参照)。

頭部や胸部は、脊椎(頸椎・胸椎)に近い部位であり、死亡に至らなかった場合でも、事故の衝撃により脊髄損傷を引きおこすリスクが高いと考えられます。

脊髄損傷に至る原因としては、以下のようなものがあります。

・打撲による揺さぶり
・骨折による圧迫
・衝撃による部分的あるいは完全な断裂
・脊椎の骨折、椎骨の脱臼、亜脱臼、椎骨をつなぐ靱帯の緩み

これらはいずれも、交通事故の衝撃で生じる可能性があるもの

バイク事故による脊髄損傷については弁護士に相談

弁護士に相談するメリット

バイク事故により脊髄損傷が生じた場合には、後遺障害等級認定の申請が必要となり、請求できる損害賠償額も高額になりやすいでしょう。

そのため、相場の金額を請求するためには専門知識を有する弁護士に相談する必要性が高いといえます。

弁護士に相談・依頼するメリットは以下の通りです。

  • 適切な後遺障害等級の認定を受けられる
  • 保険会社との交渉を一任できる
  • 交渉に必要な証拠の収集を手伝ってもらえる
  • 示談金を相場に近い金額まで増額できる可能性が高まる

弁護士に相談・依頼することで、自身の負担を減らしつつ、相場に近い損害賠償金を得られる可能性が高まるでしょう。

弁護士費用の負担を減らす方法

弁護士に相談の上、依頼するとなると、弁護士に支払う費用の負担が気になる方は多いでしょう。

弁護士費用が気になる方は「弁護士費用特約」の有無をご確認ください。

弁護士費用特約とは、ご自身で加入している任意保険に付帯されている特約のことです。

具体的な補償額は約款しだいですが、よくある内容としては、弁護士費用を300万円まで、法律相談料を10万円まで補償してくれるため、弁護士費用の負担を大きく軽減できるでしょう。

また、ケガをした本人名義でなくても、一定の範囲の親族名義であれば補償の対象になれる可能性もあります。

以下のように、弁護士費用特約の補償対象者は、同居している配偶者や子ども、両親、別居している未婚の子までが対象となる可能性があるため、約款を確認してみてください。

弁護士費用特約の補償対象者

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。全国15拠点を構えるアトム法律グループの代表弁護士として、刑事事件・交通事故・離婚・相続の解決に注力している。
一方で「岡野タケシ弁護士」としてSNSでのニュースや法律問題解説を弁護士視点で配信している(YouTubeチャンネル登録者176万人、TikTokフォロワー数69万人、Xフォロワー数24万人)。

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士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士、弁理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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