肘頭骨折の後遺症とは?交通事故後の後遺障害等級認定と慰謝料請求のポイント

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岡野武志弁護士

監修者:アトム法律事務所 代表弁護士
岡野武志

肘頭骨折(ちゅうとうこっせつ)は、交通事故などで肘に強い衝撃が加わった際に発生しやすい骨折のひとつです。

肘頭の骨折が癒合しても、「肘が最後まで伸びない」「重いものを持つと痛みが出る」「しびれが残る」など、日常生活に支障のある後遺症が残るケースも少なくありません。

こうした後遺症の症状が後遺障害等級として認定されれば、後遺障害慰謝料や逸失利益などの損害賠償を請求できるようになるので、請求できる損害賠償金が高額になりやすいです。

この記事では、肘頭骨折の概要や認定される可能性のある後遺障害等級、後遺障害の申請方法などわかりやすく解説していきます。加えて、交通事故で肘頭骨折などを負った場合に、弁護士への相談がなぜ有効かについても解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。

交通事故で生じる肘頭骨折とは?

交通事故によって腕や肘に強い衝撃を受けた場合、骨折を伴うことがあります。なかでも「肘頭骨折(ちゅうとうこっせつ)」は、肘関節の一番膨れている部分の骨が折れる外傷で、転倒時や車との衝突で直接、肘を打ちつけた際などに起こりやすい骨折です。

ここでは、肘頭骨折がどのような外傷なのかに加えて、症状や治療法について詳しく解説します。

肘頭骨折とは?

肘頭骨折とは、肘の膨らんでいる部分(尺骨の一部)が骨折する外傷です。​骨折箇所からすると、尺骨遠位端骨折ともいえます。

交通事故により転倒し、肘付近を強打することで生じることがあります。

肘頭は肘関節の一部で、上腕三頭筋により上方へ引っ張られているので、骨折により肘のずれ(転位)が生じます。​

肘頭骨折の症状

肘頭骨折の症状としては、損傷部の痛みや腫れが生じ、肘が動かしづらくなったり、異常な動きを見せるようになります。

肘頭骨折の後遺症として懸念されるものは、肘の動かしづらさ(機能障害)や痛み(神経症状)です。

骨折により肘のずれ(転位)が生じる肘頭骨折の診断は通常容易で、単純X線像だけで十分に骨折が認められます。

肘頭骨折の治療法

肘頭骨折は基本的に肘関節を90度に曲げた状態でギプスによる固定を行います。固定期間は大体4週間程度が多いです。

もっとも、骨のずれ(転位)が大きいものや、粉砕骨折している場合には、ねじやフックプレートによる固定手術が必要です。

肘頭骨折で後遺症が生じたら後遺障害の認定を受けよう

交通事故で肘頭を骨折した場合、事故前より肘が動かなくなる、肘の痛みが取れないといった後遺症が残ることがあります。

このような後遺症が残った場合には、後遺症の症状が後遺障害に該当するという認定を受けましょう。
後遺障害に該当すると判断されると、症状の程度に応じて認定される等級に応じて、請求できる金額が増額するのです。

後遺障害認定の申請方法

後遺障害の認定を受けるためには、以下に示す手順に従う必要があります。

  1. 速やかに医師の診断を受ける
  2. 後遺障害診断書などの必要書類を取得する
  3. 自賠責保険会社に後遺障害の申請を行う
  4. 自賠責保険会社から後遺障害の認定を受ける
被害者請求の流れ

この手順は被害者請求という方法です。

被害者請求は、被害者が主体的に後遺障害申請の手続きを進める方法といえます。申請書類の吟味ができる分、後遺障害認定率を上げるための工夫が可能です。

その一方で、被害者請求は手間がかかる方法ともいえるのですが、弁護士がサポートすることでその負担を大きく軽減できます。

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後遺障害認定を受けるための注意点

後遺障害の認定を受けるためには、以下の点に注意する必要があります。

  • 早期に医師の診断を受ける
  • 後遺障害診断書を正確に作成してもらう
  • 後遺障害の申請書類を丁寧に作成する
  • 書類の作成や申請方法に疑問がある場合に弁護士に相談する

自賠責保険会社が認定した後遺障害等級に納得がいかない場合は、異議の申し立てが可能です。

交通事故による肘頭骨折で認められる後遺障害等級は?

交通事故により肘頭骨折が生じると、以下のような後遺障害が生じる可能性があります。

  • 肘が以前よりも動かなくなった(機能障害)
  • 肘の痛みが引かない(神経障害)

それぞれの後遺障害について、認められる可能性がある後遺障害等級を紹介します。

機能障害(肘を動かしづらい・肘が動かない)

肘頭骨折では、肘関節が動かしづらくなる可動域制限を残す可能性があります。そうした肘関節の動かしづらさは機能障害といわれ、後遺障害10級9号、12級6号に認定されるものです。

等級症状
10級9号1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
12級6号1上肢の3大関節中の1関節の関節の機能に障害を残すもの

3大関節とは「肩関節」、「肘関節」、「手関節」のこと

10級9号の「著しい障害を残すもの」とは、関節の可動域が2分の1以下になった場合をいいます。12級6号の「障害を残すもの」とは、関節の可動域が4分の3以下になった場合です。

神経障害(肘の痛みが取れない・しびれている)

肘頭骨折が癒合しても、痛みやしびれといった神経症状が残ってしまうことがあります。こうした神経症状は後遺障害12級13号または14級9号認定を受けられる可能性があるものです。

等級症状
12級13号局部に頑固な神経症状を残す
14級9号局部に神経症状を残す

痛みが残っていることが画像所見などから客観的に明らかにできる場合には「医学的に証明できるもの」として12級13号の認定を受けられます。

客観的な証明ができないものの、交通事故の態様・治療内容・治療中における症状の変遷などから痛みが残っていると判断できる場合には、14級9号の認定がなされるでしょう。

交通事故による肘頭骨折で後遺症が残ったらいくら請求できる?

後遺障害等級認定を受けることで請求額が増加

交通事故で後遺症が残った場合、後遺症の症状が後遺障害に該当すると認定されることで後遺障害慰謝料や逸失利益を請求できます。

肘頭骨折に関する後遺障害慰謝料について

後遺障害慰謝料は、後遺障害を負ったことで生じる精神的苦痛に対する損害賠償金です。逸失利益は、後遺障害が原因で将来的に得るはずだった収入が減ったことに対する損害賠償金となります。

後遺障害慰謝料の金額は、認定された等級に応じて異なり、具体的な金額は以下の通りです。

等級 慰謝料額
10級550万円
12級290万円
14級110万円

なお相手の任意保険会社が提示してくる後遺障害慰謝料は、こうした慰謝料額よりも低額と予想されます。なぜなら、相手の任意保険会社はあくまで自社基準にのっとった金額算定をするからです。

弁護士や裁判所といった損害賠償請求の実務を知り尽くした、法的に適正な金額を算定する立場とは違うことを知っておきましょう。

慰謝料金額相場の3基準比較

そして、相手の任意保険会社の言うままに示談を受け入れると損をする可能性が高いです。弁護士を立てて増額交渉をしていく必要があります。

肘頭骨折に関する逸失利益について

逸失利益とは、本来は得られるはずだった将来の収入が後遺障害によって減ったことへの補てんとして請求します。

逸失利益の金額は、後遺症の程度や、年齢、職業、事故前の収入などによって異なります。くわしい金額を知りたい場合には、弁護士に相談すると良いでしょう。

後遺障害等級認定を受けなくても請求できる損害

交通事故により肘頭骨折となり、後遺症が残った場合には、以下のような損害についても請求が可能です。

費目内容
治療関係費治療費、入院費、通院交通費、装具代など
休業損害治療のために仕事を休んだことによる減収
入通院慰謝料治療期間に負った精神的苦痛に対する金銭
物的損害自動車や自転車の修理費、壊れた衣類代など

具体的にどのような損害をいくら請求できるのかについては、専門家である弁護士に相談すべきでしょう。

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アトム法律事務所では、交通事故によって肘頭骨折を負ってしまった方に向けた法律相談を無料で実施しています。保険会社に治療費の打ち切りを言われて困っている後遺障害申請の手続きをサポートしてほしい相手の提案する金額に何となく不安がある、こうした様々なお悩みにお答えしています。

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弁護士費用に不安がある方へ

アトム法律事務所は、依頼時に原則として費用のかからない料金体制をとっています。弁護士費用をお支払いいただくタイミングは、示談が成立して示談金額が確定してからです。

ここで「弁護士費用特約」に注目しておきたいと思います。

弁護士費用特約とは

弁護士費用特約とは、被害者の弁護士費用を保険会社が補償してくれるというものです。補償額は約款次第によるものの、法律相談料10万円弁護士費用300万円を上限とする場合が多いといえます。

弁護士費用特約の有無弁護士費用の請求先
あり被害者の保険会社
なし被害者本人

ほとんどの交通事故の弁護士費用は、弁護士費用特約の補償範囲内におさまります。そのため、被害者は追加請求されることなく、自己負担金0円で弁護士を立てることができます。

もっとも、損害賠償金額が数千万円におよぶときには注意が必要です。弁護士費用特約の補償上限を超えた分は、被害者に請求することになります。

しかし弁護士により実現した増額分とご自身の負担する弁護士費用を比べたとき、弁護士費用を払ってでも弁護士に依頼するほうが得をすることが大多数です。

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アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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