下顎骨骨折の後遺症とは?認定される後遺障害等級と慰謝料の相場
下顎骨骨折は、かみ合わせや咀嚼がしにくくなる、言葉が話しにくくなる、顔面が変形してしまう、顎や周囲に痛みやしびれが生じるといった症状がみられます。
交通事故では、特にバイクや自転車での走行中の出会い頭の事故で下顎骨骨折を負うことが多いです。
下顎骨骨折の後遺症として咀嚼機能障害、醜状障害、神経症状などが残った場合、後遺障害等級の認定が受けられる可能性があります。
下顎骨骨折の後遺障害慰謝料の相場は、110万円〜2,800万円です。
今回は、下顎骨骨折の後遺症や症状、治療、後遺障害認定基準、慰謝料の相場などについて解説いたします。
目次
下顎骨骨折の症状・治療
下顎骨骨折の症状
下顎骨(かがくこつ)骨折の症状として出血や重度の腫脹(しゅちょう)を伴うこともあり、まずは止血処置や気道の確保が優先されることもあります。
また歯の脱落を伴うことも多く、かみ合わせや咀嚼がしにくい、口が開けにくくなる、言語が不明瞭になる、顔面の変形、顔面神経麻痺などの症状が生じることがあります。
下顎骨骨折の原因
交通事故における下顎骨骨折の代表的な原因として、バイクや自転車での走行中に出会い頭での衝突などで転倒し、顔面を打ち付けることが考えられます。
下顎骨骨折の治療
下顎骨骨折の治療は、噛み合わせ(咬合)の回復を重視しつつ、機能と審美性、見た目の回復を目的としています。
手術では骨折部分を元通りに整復した上で金属製のプレートによって固定し、上顎と下顎に金属とゴムの固定具をつける顎間(がっかん)固定を行います。
顎間固定は4週間ほど続くので、その間は口を大きく開けません。
手術をしない場合は、顎間固定だけで治療をすることになります。
下顎骨骨折の後遺症|等級認定基準と後遺障害慰謝料
下顎骨骨折の後遺障害
下顎骨骨折によって、咀嚼や言語機能が妨げられる咀嚼機能障害、見た目が変わってしまう醜状障害、痛みやしびれなどの神経症状などの後遺症が残る可能性があります。
下顎骨骨折の後遺症が残ったとして後遺障害等級が認定された場合、後遺障害慰謝料を請求できるため、慰謝料を増額させることができます。
後遺障害が認定されるためには、後遺障害申請を行い、各等級の認定基準を満たすとして審査機関による審査を通過する必要があります。
後遺障害認定の手続きの流れ
- 入通院治療後、医師から症状固定と診断される
- 医師に依頼して後遺障害診断書を作成してもらう
- 保険会社を通じて、審査機関に申請書類を提出する
- 審査機関で審査が行われ、保険会社を通じて結果が通知される
下顎骨骨折の治療を終えても後遺症が残っている場合は、後遺障害申請も含めて慰謝料の増額ができないか、検討してみましょう。
下顎骨骨折の後遺症(1)咀嚼機能障害
咀嚼機能障害とは、ものを食べたり言葉を話すことが妨げられている状態を指します。
下顎骨骨折の後遺症として咀嚼機能障害が残った場合、後遺障害1級2号〜12級相当のいずれかに認定される可能性があります。
下顎骨骨折による咀嚼機能障害の後遺障害慰謝料の相場は、290万円〜2,800万円です。
等級 | 認定基準 慰謝料額 |
---|---|
1級2号 | 咀嚼及び言語の機能を廃したもの 2,800万円 |
3級2号 | 咀嚼又は言語の機能を廃したもの 1,990万円 |
4級2号 | 咀嚼及び言語の機能に著しい障害を残すもの 1,670万円 |
6級2号 | 咀嚼又は言語の機能に著しい障害を残すもの 1,180万円 |
9級6号 | 咀嚼及び言語の機能に障害を残すもの 690万円 |
10級3号 | 咀嚼又は言語の機能に障害を残すもの 550万円 |
12級相当 | 開口障害等を原因として咀嚼に相当時間を要するもの 290万円 |
後遺障害1級2号・3級2号の認定基準
後遺障害1級2号・3級2号の認定基準である「機能を廃したもの」とは、咀嚼機能の場合は流動食以外は食べられない、言語機能の場合は4種の語音のうち3種の語音が発音できないことを指します。
4種の語音とは、以下のような語音を指します。
- 口唇音:ま・ば・ぱ・わ行の音、ふ
- 歯舌音:さ・た・だ・な・ら・ざ行の音、し、しゅ、じゅ
- 口蓋音:か・が・や行の音、ひ、ぎゅ、にゅ、ん
- 喉頭音:は行の音
後遺障害4級2号・6級2号の認定基準
後遺障害4級2号・6級2号の認定基準である「機能に著しい障害を残すもの」とは、咀嚼機能の場合は粥食や粥食に準ずる程度のものしか食べられないことを指します。
また、言語機能の場合は4種の語音のうち2種の語音が発音できないまたは綴音機能に障害があることを指します。
後遺障害9級6号・10級3号の認定基準
後遺障害9級6号・10級3号の認定基準である「機能に障害を残すもの」とは、咀嚼機能の場合は十分に咀嚼できないものがある、言語機能の場合は4種の語音のうち1種の語音が発音できないことを指します。
後遺障害12級相当の認定
咀嚼はできるものの、口が開けづらいといった開口障害によって咀嚼に時間を要する場合は、後遺障害12級相当に認定されます。
下顎骨骨折の他、頬骨骨折の場合も開口障害が残ることがあるので、後遺障害12級相当が認定される可能性のあるケガのひとつです。
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下顎骨骨折の後遺症(2)醜状障害
醜状(しゅうじょう)障害とは、交通事故による怪我の傷跡が残ってしまった状態を指します。
下顎骨骨折の後遺症として醜状障害が残った場合、後遺障害7級12号〜12級14号のいずれかに認定される可能性があります。
下顎骨骨折による醜状障害の後遺障害慰謝料の相場は、290万円〜1,000万円です。
等級 | 認定基準 慰謝料額 |
---|---|
7級12号 | 外貌に著しい醜状を残すもの 1,000万円 |
9級16号 | 外貌に相当程度の醜状を残すもの 690万円 |
12級14号 | 外貌に醜状を残すもの 290万円 |
瘢痕(はんこん)とは傷跡のことであり、線状痕(せんじょうこん)は手術痕といった切り付けられた傷跡を指します。
後遺障害7級12号の認定基準
後遺障害7級12号の認定基準の「外貌に著しい醜状を残すもの」とは、「顔面部に鶏卵大以上の瘢痕(はんこん)が残ったもの、もしくは10円硬貨大以上の組織陥没が残ったもの」を指します。
後遺障害7級12号の慰謝料相場は、1,000万円です。
後遺障害9級16号の認定基準
後遺障害9級16号の認定基準の「外貌に相当程度の醜状を残すもの」とは、「顔面部に長さ5センチメートル以上の線状痕が残ったもの」を指します。
後遺障害9級16号の慰謝料相場は、690万円です。
後遺障害12級14号の認定基準
後遺障害12級14号の認定基準の「外貌に醜状を残すもの」とは、「顔面部に10円硬貨以上の瘢痕が残ったもの、もしくは長さ3センチメートル以上の線状痕が残ったもの」を指します。
後遺障害12級14号の慰謝料相場は、290万円です。
下顎骨骨折の後遺症(3)神経症状
神経症状とは、下顎骨骨折による顎や口周辺のしびれや痛みといった症状です。
下顎骨骨折の後遺症として神経症状が残る場合、後遺障害12級13号または14級9号に認定される可能性があります。
下顎骨骨折による神経症状の後遺障害慰謝料の相場は、110万円〜290万円です。
等級 | 認定基準 慰謝料額 |
---|---|
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの 290万円 |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの 110万円 |
2つの等級の違いは、後遺症が存在していることが画像診断から明らかであると医学的に証明されるか、という点です。
CTやMRIでの画像所見で異常が認められる場合は12級13号に認定されます。
そうでなくても事故状況・治療の経過・神経学的検査の結果などから考えて後遺症の存在を説明できるような場合は、14級9号に認定されます。
交通事故で下顎骨骨折を負ったら請求できる示談金
下顎骨骨折の後遺障害慰謝料
下顎骨骨折の後遺障害慰謝料の相場は、110万円〜2,800万円です。
特に咀嚼機能障害や醜状障害を負った場合は、慰謝料もかなり高額になってきます。
しかし、相手側の保険会社から提示される示談金額は相場よりも低い傾向にあります。
弁護士と保険会社が用いる算定基準がそれぞれ異なるため、相場と提示額との差が生じるのです。
特に慰謝料の相場が高額になる場合、相手側の保険会社から提示される慰謝料額と相場との差は大きくなります。
慰謝料算定の3基準
- 自賠責基準
加害者側の自賠責保険から支払われる慰謝料の算定基準。自賠責保険会社は最低限の補償をするので、最低限の金額となる。 - 任意保険基準
加害者側の任意保険会社が用いる慰謝料の算定基準。自賠責基準に少し上乗せした程度であることが多い。 - 弁護士基準(裁判基準)
弁護士や裁判所が用いる慰謝料の算定基準。過去の判例にもとづいた法的正当性の高い基準。
交通事故後、しばらくすると相手側の保険会社が事故の状況やケガの程度、後遺障害の有無から慰謝料を計算し、示談書(免責証書)にて支払い予定の金額を提示してきます。
提示されている金額はあくまで任意保険基準での金額となるため、示談書をすぐに署名・返送することはせず、まずは適正な慰謝料額かどうか確認しましょう。
弁護士に示談書を見せれば、弁護士基準に基づく慰謝料の相場がいくらか、算定してくれます。
相場の慰謝料をもらうためには、保険会社との増額交渉が必要不可欠です。
弁護士に依頼すれば、適正な慰謝料額や増額の見込み、法的根拠を把握したうえで、説得力のある主張をしてもらえるので増額の可能性を高められます。
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下顎骨骨折の入通院慰謝料
交通事故で下顎骨骨折を負ったら、後遺障害認定の有無に関係なく、入通院慰謝料を請求できます。
入通院慰謝料とは、入院・通院を余儀なくされるほどの交通事故でのケガで受けた精神的苦痛に対する賠償金です。
入通院慰謝料は、慰謝料算定表に基づいて金額が決まります。
たとえば、入院1ヶ月、通院5ヶ月で治療を終えた場合、入院1ヶ月の縦の行と通院5ヶ月の横の列が交差する141万円が入通院慰謝料の相場です。
下顎骨骨折の場合、手術後の顎間固定期間も入院をするケースも見られることから、通院期間だけでなく入院期間も考慮して慰謝料を算定することになります。
下顎骨骨折の示談金|慰謝料以外でもらえるお金
下顎骨骨折で請求できる損害は、慰謝料以外にもあります。
治療にかかる実費、仕事を休んだり後遺症が残って仕事ができなくなった分の損害などを請求することができます。
下顎骨骨折でもらえる示談金の内訳は、以下の通りです。
- 治療費:治療のために必要となった投薬代・手術代・入院費用など
- 休業損害:治療のために仕事を休んだことで生じる減収に対する補償
- その他:治療のために必要であった交通費、付添費用など
- 逸失利益:後遺障害により減収することとなる将来の収入に対する補償
- 物的損害:自動車や自転車の修理代、代車費用など
ただし、これらの損害についても相場よりも低く算定されているおそれがあります。
総額だけでなく、それぞれの損害の算定根拠や相場も確認した上で、必要に応じて増額交渉をすることが重要です。
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下顎骨骨折の後遺症は弁護士に相談!
下顎骨骨折の後遺症を弁護士に無料相談する
下顎骨骨折は、症状によっては後遺障害1級にも認定されるほどの重い後遺症を残す可能性があるケガです。
その分、慰謝料も高額になりますが、相手側の保険会社の提示額が相場を大きく下回ることも少なくありません。
適切な金額の慰謝料を受け取るためにも、法律の専門家である弁護士に相談することを検討してみましょう。
弁護士に依頼・相談することのメリットは、以下の通りです。
- 加害者側の保険会社との連絡を一任できるので、治療や職場復帰に専念できる
- 後遺障害等級の認定に向けて必要な資料の収集や申請手続き、十分な対策を立ててもらえる
- 法的な根拠に基づく説得力のある主張ができるので、慰謝料・示談金の交渉を有利に進めてもらえる
アトム法律事務所では、下顎骨骨折の被害者の方向けに電話・LINEでの無料相談を受け付けております。
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費用を払わずに弁護士に依頼する方法|弁護士費用特約
弁護士費用特約を利用すれば、弁護士費用を支払わずに弁護士に依頼・相談することができます。
弁護士費用特約とは?
弁護士費用特約とは、弁護士に支払う相談料や費用について、保険会社が代わりに負担してくれるという特約です。
負担額には上限が設定されていますが、多くのケースで生じる相談料や費用は上限の範囲内に収まるため、金銭的な負担なく弁護士への相談や依頼が可能となります。
下顎骨骨折の場合、後遺障害等級によっては高額な慰謝料を請求できることもあるので、弁護士に依頼した方が有利なケースは多いです。
無料相談では、弁護士費用についてもご案内いたしますので、費用倒れにならないか、あらかじめ確認したうえで正式に依頼するべきか、ご検討いただけます。
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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了