鎖骨骨折の後遺症とは?後遺障害の認定条件と慰謝料・保険金も解説

この記事でわかること
交通事故の衝撃で鎖骨を骨折してしまい、骨がうまくくっつかない、肩が動かしづらい、見た目が変わったなどの後遺症に悩む方は少なくありません。
鎖骨骨折は、後遺障害として認定される可能性があるケガのひとつです。
認定されれば慰謝料や逸失利益などの補償を受け取れる可能性がありますが、そのためには等級や症状の正確な理解が欠かせません。
この記事では、鎖骨骨折によって生じる症状・後遺障害・賠償金のポイントについて、詳しく解説します。
目次
交通事故での鎖骨骨折とは?症状・後遺症と対処法を解説
鎖骨骨折とは、胸の上部にある鎖骨が強い衝撃によって折れるケガです。鎖骨は皮膚のすぐ下にあるため、転倒や衝突によって折れやすく、交通事故でも発生します。
交通事故で鎖骨を骨折してしまうと、日常生活にさまざまな支障が出るだけでなく、後遺症が残るリスクもあります。
この章では、鎖骨骨折であらわれる代表的な症状や、後遺症が残りやすいケースについて見ていきましょう。
鎖骨骨折であらわれる主な症状と後遺症リスク
鎖骨を骨折すると、単なる骨の損傷だけでなく、痛みや腫れ、腕の動かしにくさなど、さまざまな症状が出ることがあります。
鎖骨骨折の症状は治療を経ても完全に回復せず、日常生活に影響を及ぼすような後遺症として残ることもあります。
代表的な後遺症は、次の通りです。
- 変形障害:骨がずれて癒合し、鎖骨が変形した状態
- 機能障害:肩の可動域が狭まり、腕をスムーズに上げられない状態
- 神経症状:腕や肩周辺に、しびれや慢性的な痛みが続く状態
たとえば鎖骨の中央か端かといった骨折部位の違いや、粉砕骨折など骨折の種類によってもどのような後遺症が残るかは変わってきます。
また、保存療法か手術かといった治療内容によっても回復の経過は異なります。
初期段階では軽い症状に思えても、回復が進まなければ後遺障害等級の認定対象となることがあるでしょう。
プレート手術・粉砕骨折など重症ケースの特徴
鎖骨骨折の中でも、骨が複雑に砕ける「粉砕骨折」や、金属製のプレートで固定する手術を伴うケースは、重症とされます。
粉砕骨折では、骨が複数の骨片に分かれることで骨の再生が難しくなり、強い痛みや変形、機能障害が残りやすいです。
また、骨のズレが大きい場合などは、プレートやワイヤーを使って骨を固定する手術が選択されることがあります。
この手術により骨の安定性は高まりますが、術後にプレート部分に違和感や痛みが残ることもあり、神経症状の原因となる場合もあるため注意が必要です。
鎖骨骨折で認定される後遺障害等級と症状の種類
鎖骨骨折の後遺症が残った場合、症状の内容に応じて後遺障害等級の認定を受けられる可能性があります。
とくに認定の対象になりやすいのが、変形障害・機能障害・神経症状の3つです。
この章では、それぞれの症状がどのような状態を指し、どの等級に該当するのかを詳しく見ていきましょう。
変形障害|見た目の変化で12級認定されるケースも
鎖骨骨折で骨のつながり方にズレが生じた結果、鎖骨の見た目が変わってしまうことがあります。こうした状態は「変形障害」とされ、後遺障害等級の12級5号に該当する可能性があります。
等級 | 認定要件 |
---|---|
12級5号 | 鎖骨に著しい変形を残すもの |
変形障害とは、主に次のようなケースを指します。
- 鎖骨がズレたりねじれたりして、外見上明らかに変形している
- 骨折箇所がうまくくっつかず、関節のように動く(偽関節)状態になっている
とくに上半身裸の状態で変形が明確に視認できる場合は、「著しい変形を残すもの」として認定の対象になります。
ただし、レントゲン写真だけでは変形の程度を判断できないため、変形がわかる正面写真を添付するなど、客観的に視認できる資料の提出が重要です。
機能障害|肩が動かしづらいと等級が変わる
鎖骨骨折によって肩関節の動きが制限されると、「機能障害」として後遺障害認定されることがあります。
肩の可動域が制限されていると、次のような等級に該当する可能性があります。
等級 | 認定基準 |
---|---|
8級6号 | 肩関節の機能をほとんど失っている(腕がまったく上がらない) |
10級10号 | 健常な側と比べて可動域が2分の1以下に制限されている |
12級6号 | 健常な側と比べて可動域が4分の3以下に制限されている |
鎖骨のなかでも遠位端(肩に近い側)を骨折した鎖骨遠位端骨折では、特に肩の機能障害が後遺症として残る傾向があります。
正確な等級認定を受けるためには、治療後の可動域を適切に測定し、左右の差を医学的に証明することが重要です。
神経症状|しびれ・痛みが続く場合の等級と認定ポイント
鎖骨骨折が原因で、腕や肩まわりに痛みやしびれといった神経症状が残るケースもあります。このような症状が続いている場合には、後遺障害の「神経症状」として認定されることがあります。
神経症状に関する認定等級は、以下の通りです。
等級 | 認定基準 |
---|---|
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
12級13号に認定されるためには、MRIなどの画像検査で異常が証明できることが求められます。
一方で14級9号は、医学的な証明が難しくても、事故の態様、治療の過程、症状の一貫性などの事実から「後遺症が残っていると推定される」場合に認められる可能性があります。
【補足】鎖骨偽関節も後遺障害認定される?
鎖骨の骨折がうまく癒合せず、骨折部が関節のように動いてしまう状態を「偽関節」と呼びます。これは正常な骨の回復ができていないことを示すものです。
鎖骨偽関節による骨のズレや可動が明らかで、外見上も変形が認められるケースでは、変形障害として12級5号に該当する可能性があります。
さらに、偽関節では骨が関節のようにグラつくため、見た目の問題に加えて痛みが残ることも少なくありません。
医師による的確な診断と、レントゲンやCTなど偽関節の存在を明確に示す資料が必要となるため、申請前に準備を整えることが大切です。
交通事故で鎖骨骨折した場合の慰謝料・保険金の相場
交通事故で鎖骨を骨折し、後遺障害が認定された場合には後遺障害慰謝料を請求できます。
慰謝料の金額は、後遺障害の等級に応じて決まる仕組みとなっており、重い後遺症が認定されるほど高額になります。
この章では、鎖骨骨折によって想定される後遺障害等級ごとの慰謝料相場や、慰謝料以外に請求できる保険金の種類について確認していきましょう。
後遺障害等級ごとの慰謝料相場一覧
後遺障害の慰謝料は、認定された等級によって大きく異なります。等級が重くなるほど、支払われる金額も高くなる仕組みです。
鎖骨骨折でよく該当する後遺障害等級と、裁判基準(弁護士基準)での慰謝料相場は次のとおりです。
後遺障害等級 | 慰謝料相場(裁判基準) |
---|---|
8級 | 830万円 |
10級 | 550万円 |
12級 | 290万円 |
14級 | 110万円 |
上記は、裁判で認められる法的に適正な金額(弁護士基準)であり、保険会社が提示してくる金額よりも高額になる傾向があります。適正な慰謝料を受け取るためには、弁護士に相談することが重要です。
慰謝料以外に請求できる保険金・損害とは?
交通事故で鎖骨を骨折した場合、後遺障害慰謝料以外にも複数の損害項目を請求できます。慰謝料だけでなく、治療や生活にかかった実費、将来的な収入の減少に対する補償も対象となります。
主な請求対象は以下の通りです。
- 治療費:診察料・投薬代・手術費・入院費など
- 休業損害:仕事を休んだことによる収入の減少
- 入通院慰謝料:ケガによる精神的苦痛への補償
- 交通費:通院にかかった公共交通機関やタクシー代など
- 逸失利益:後遺障害によって将来的に得られなくなった収入
- 物的損害:車やバイク、自転車などの修理費や買い替え費用
これらの損害の請求に備え、事故後の早い段階から領収書や通院記録を保管しておくことが大切です。
また、これらの損害は加害者側の任意保険や自賠責保険から「保険金」という形で支払われるのが一般的です。つまり、「加害者側に請求できる保険金」とは加害者側に請求する慰謝料・賠償金と同義だと考えてよいでしょう。
変形障害で逸失利益は認められる?職業によって違うことがある
交通事故で鎖骨を骨折し、後遺障害が残った場合には、逸失利益(将来の収入減に対する補償)を請求できることがあります。ただし、すべてのケースで必ず認められるわけではありません。
たとえば変形障害の場合、「見た目の問題はあっても、仕事に支障がない」と判断され、逸失利益が認められにくい傾向があります。
逸失利益の請求では、後遺障害により労働能力がどの程度下がったか、症状が収入にどう影響しているかが重要なポイントです。
このため、外見を重視する職業(モデル・接客業など)では変形障害でも逸失利益が認められる可能性がありますが、一般的なデスクワークなどでは認定が難しい可能性があります。
一方で、肩の可動域制限や神経症状など、業務に直接支障が出るような後遺障害では、逸失利益は比較的認められやすくなります。
具体的な等級や職業、労働内容に応じた判断が必要になるため、申請前には専門家に相談することをおすすめします。
鎖骨骨折・後遺障害に関するよくある質問
鎖骨骨折による後遺障害に関しては、「後遺障害等級はどうやって決まる?」「プレートを入れたら等級認定されるのか?」など、よくある疑問が数多く寄せられます。
ここでは、交通事故により鎖骨を骨折した方が気になりやすいポイントを、わかりやすく解説していきます。
鎖骨骨折で後遺障害認定されるためのポイントは?
交通事故で鎖骨を骨折し、後遺障害の認定を受けたい場合には、治療の進め方や診断書の内容に注意が必要です。以下のポイントを押さえておくことで、等級認定の可能性が高まります。
- 事故直後に整形外科を受診し、レントゲンやCTなどで骨折状況を正確に記録する
- 骨の癒合や可動域の変化を経過観察するため、定期的に通院を継続する
- 痛みやしびれ、肩の可動制限、骨の変形といった症状を後遺障害診断書に具体的に記載してもらう
鎖骨骨折の場合は、変形障害・機能障害・神経症状といった後遺症が残るケースが多く、検査結果や自覚症状などが適切に診断書に反映されているかが重要です。
後遺障害認定は基本的に書類審査なので、医師だけでなく、後遺障害認定に詳しい弁護士にも診断書の内容チェックを依頼することがおすすめです。
鎖骨骨折でプレートを入れたら後遺障害になる?
鎖骨骨折でプレートを入れた場合、それだけで後遺障害等級が認定されるわけではありません。
ただし、手術後にプレート部分に痛みや違和感が残る場合には、神経症状として後遺障害の対象になる可能性があります。症状が続いている場合には、後遺障害診断書にその内容を具体的に記載してもらうことが重要です。
鎖骨骨折の治療法には、三角巾やクラビクルバンドで固定する保存療法に加えて、ワイヤーや金属製のプレートを使った手術もあります。骨のズレが大きい粉砕骨折や複雑骨折では、プレート手術が選択されるケースも少なくありません。
鎖骨遠位端骨折ではどんな後遺症が残りやすい?
鎖骨遠位端骨折とは、鎖骨の中でも肩に近い部分(遠位端)が骨折するケースを指します。交通事故の衝撃で発生することが多く、肩関節に近い部位のため、可動域の制限が残りやすいのが特徴です。
このような機能の制限が認められた場合、後遺障害等級としては8級6号、10級10号、12級6号のいずれかに認定される可能性があります。
また、骨折の影響でしびれや痛みが残ることもあり、この場合は神経症状として12級13号または14級9号に認定される可能性があります。
さらに、骨のつながり方に異常があり変形や偽関節が生じている場合には、変形障害として12級5号に該当することもあります。
鎖骨骨折の賠償は弁護士に相談!保険会社との交渉で損しないために
交通事故で鎖骨を骨折した場合、後遺障害の有無にかかわらず賠償金の金額に大きな差が生まれることがあります。
とくに、後遺障害が認定されるようなケースでは、適切な等級が認められるかどうか、慰謝料や逸失利益が正しく反映されているかによって、最終的に受け取れる金額は大きく変わってきます。
ここでは、交通事故の賠償問題を弁護士に相談すべき理由や、相談時にかかる費用について詳しく解説していきます。
弁護士に相談すべき理由|慰謝料や等級認定で損しないために
鎖骨骨折による賠償問題で適正な慰謝料や保険金を受け取るためには、弁護士への相談が非常に重要です。とくに後遺障害が絡むケースでは、専門的なサポートの有無によって、受け取れる金額に大きな差が出ることがあります。
弁護士に相談・依頼することで、次のようなサポートを受けることが可能です。
- 保険会社の提示金額が妥当かどうかを見極められる
- 法的に正しい基準で慰謝料や逸失利益を増額交渉してもらえる
- 相手方との連絡や交渉をすべて任せられる
- 後遺障害等級の認定申請をサポートしてもらえる
- 治療費・休業損害など、慰謝料以外の損害も漏れなく請求できる
保険会社は、できる限り支払額を抑えようとする傾向があるため、専門家の助けを得ることで適正な補償を受けやすくなります。
無料相談のご案内|費用負担を軽くできる方法も
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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了