末梢神経障害の後遺障害等級と認定ポイント|交通事故の衝撃で神経が損傷したら

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岡野武志弁護士

監修者:アトム法律事務所 代表弁護士
岡野武志

末梢神経障害

末梢神経障害は、交通事故の際に神経が圧迫または損傷されることによって起こる神経障害です。

末梢神経障害で後遺症が残り後遺障害等級に認定されると、等級に応じた後遺障害慰謝料や逸失利益を請求できます。

交通事故で末梢神経障害を発症した場合の後遺障害等級や慰謝料について見ていきましょう。

末梢神経障害とは?

末梢神経障害の内容と原因

末梢神経障害とは、末梢神経が損傷されることによって起こる神経障害です。末梢神経は、中枢神経以外の、筋肉の動きや感覚を受け取る働きを担う神経です。

末梢神経障害の原因は、糖尿病・アルコール依存症・感染症・薬剤などさまざまですが、交通事故においては事故の衝撃で神経が損傷して発症するケースもあります。

末梢神経障害の治療は原因によって異なりますが、薬物療法、理学療法、手術などの治療が一般的です。

末梢神経障害の代表的な症状はしびれや痛み

交通事故による末梢神経障害の症状は、損傷した神経の場所や程度によって異なります。一般的には、下記のような症状が現れます。

  • しびれ
  • 痛み
  • 筋力低下
  • 感覚障害
  • 歩行障害
  • 転倒のリスク

交通事故による末梢神経障害の症状は、損傷した神経の場所によっても異なります。

たとえば、足首の神経が損傷した場合は歩行障害や転倒のリスクが高まります。手首の神経が損傷した場合は、手指のしびれや痛み、筋力低下などの症状が現れることが多いです。

末梢神経障害は、治療が遅れると後遺症が残る可能性があります。交通事故で末梢神経障害の症状が現れた場合は、早めに医師の診察を受けることが重要です。

交通事故による末梢神経障害の後遺障害等級

交通事故による末梢神経障害の後遺障害等級は、損傷した神経の場所や程度によって異なります。一般的には、下記のとおり第12級13号または第14級9号の等級が認定される可能性があるでしょう。

内容
12級13号局部に頑固な神経症状を残すもの
14級9号局部に神経症状を残すもの

末梢神経障害の後遺障害等級が認定されると、慰謝料や逸失利益などの賠償金が支払われます。

そのため、交通事故で末梢神経障害の症状が現れた場合は、後遺障害等級の申請を行うことが重要です。

ここからは第12級13号と第14級9号について、その違いと認定のポイントを詳しく解説します。

第12級13号|局部に頑固な神経症状を残すもの

後遺障害等級第12級13号は、「局部に頑固な神経症状を残すもの」と定義されています。ポイントは「頑固な」という部分で、症状の存在が医学的に証明可能であることを意味します。

第12級13号の認定においては、交通事故後の早い段階で他覚的所見を裏付ける画像が残せているかどうかが重要です。

単に痛い、しびれるという自覚症状があるだけでなく、その原因となる神経の損傷や圧迫などが、客観的な検査結果によって裏付けられている状態である必要があります。具体的には、以下のようなケースが該当します。

  • 画像所見
    レントゲンやMRI、CTなどの画像検査で、骨の変形やヘルニアなどの器質的損傷が確認でき、それが神経を圧迫していることが分かる場合。
  • 神経学的検査
    筋電図検査や神経伝導検査といった特殊な検査によって、神経の伝達に異常があることが数値として示される場合。

このように、第12級13号は、症状の原因が客観的な医証(医学的な証拠)によって明確に示せる場合に認定される、比較的重い等級といえます。そのため、認定されると請求可能になる後遺障害慰謝料などの賠償額も、次に解説する14級9号に比べると高額になります。

第14級9号|局部に神経症状を残すもの

後遺障害等級第14級9号は、「局部に神経症状を残すもの」と定義されています。第12級との大きな違いは「頑固な」という文言がない点です。症状の原因を画像検査などで直接的に証明することは難しいものの、症状の存在が医学的に説明可能であることを意味します。

痛みやしびれの原因として、レントゲンなどで異常が見つからなくても、以下のような状況を総合的に考慮し、症状が残っていても不自然ではないと判断されれば、第14級9号が認定される可能性があります。

  • 事故の態様や規模
  • 治療の経過(通院頻度や治療内容)
  • 事故当初から症状固定まで、症状の訴えに一貫性・連続性があること

つまり、第14級9号の認定においては、自覚症状の訴えが非常に重要な要素となるのです。事故直後から医師に対し、辛い症状の内容や部位を具体的かつ継続的に伝え、カルテに記録してもらうことが、適切な等級認定を得るための鍵となります。

末梢神経障害で後遺障害等級認定を受けるには?

末梢神経障害で後遺障害認定の申請をする方法

末梢神経障害の後遺障害等級の申請方法は、以下のとおりです。

  1. 後遺障害診断書を取得する
  2. 後遺障害認定申請書を提出する
  3. 後遺障害等級認定審査を受ける

後遺障害診断書は、医師に作成してもらうものです。

後遺障害認定申請書、診療報酬明細書や支払請求書といったその他の書類とともに加害者側の自賠責保険会社または任意保険会社を介して審査機関にわたります。

【重要】非該当・等級に不服な場合は異議申立てを検討

後遺障害等級の申請を行っても、必ずしも納得のいく結果が得られるとは限りません。審査の結果、「非該当(後遺障害には当たらない)」と判断されたり、「想定していたよりも低い等級」が認定されたりする可能性もあります。

しかし、この最初の判断が最終決定ではありません。認定結果に不服がある場合は、「異議申立て」という手続きを通じて、再審査を求めることができます。

異議申立てとは、当初の判断を下した自賠責保険に対し、なぜその判断が不当・不十分であるのかを具体的に主張し、追加の医学的証拠などを提出して再審査を促す制度です。

ただし、異議申立てを成功させるハードルは非常に高く、新たな医師の意見書や検査結果など、当初の判断を覆すだけの客観的な証拠を提示する必要がある点には注意が必要です。

末梢神経障害で後遺障害等級の認定を受けるポイント

末梢神経障害で後遺障害等級の認定を受けるには、以下の点がポイントです。

  • 適切な治療を受け、症状を改善する
  • 後遺障害等級認定に必要な書類を揃える
  • 後遺障害等級認定審査に強い弁護士に依頼する

後遺障害等級の認定を受けるには、十分に治療を受けたがそれでも後遺症が残ったという状態であることが重要です。

また、後遺障害等級認定に必要な書類を揃え、後遺症の症状・程度・存在をしっかりアピールするようにしましょう。

ここからは、後遺障害等級の認定可能性を高めるために、特に意識したい3つの重要なポイントを解説します。

適切な治療を受け、症状を改善する

大前提として、治療の目的は症状を改善し、元の健康な状態に近づけることです。しかし、後遺障害認定の観点から見ると、「適切な頻度で継続的に治療を受けたにもかかわらず、症状が残ってしまった」という事実そのものが、症状の存在を裏付ける重要な証拠となります。

もし仕事の都合などで通院が途絶えがちになると、保険会社から「症状が軽いから通院しないのだろう」「治療の必要性は低い」などと判断され、治療費が打ち切られかねません。治療が不十分だと判断されると、後遺障害の認定において不利に働く可能性があります。

痛みやしびれが続く限りは、医師の指示に従い、定期的な通院を継続することが重要です。また、診察の際には、ご自身の症状を具体的かつ正確に医師に伝え、カルテに記録してもらうよう心がけてください。

後遺障害等級認定に必要な書類を揃える

後遺障害の等級審査は、原則として提出された書類のみで行われます。その中でも、認定結果を最も大きく左右するのが、医師に作成してもらう「後遺障害診断書」です。

後遺障害診断書とは、症状固定の時点でどのような後遺症が残っているのか、後遺症の具体的な内容や原因、今後の見通しなどを詳細に記載する専門的な書面です。審査機関はこの診断書の内容をもとに等級を判断するため、記載内容に不備があったり、症状の実態が正確に反映されていなかったりすると、適切な認定を受けられない可能性があります。

医師に作成を依頼する際は、日常生活でどのような不便を感じているかをまとめたメモを渡すなど、ご自身の症状が正確に伝わるよう工夫することが大切です。

後遺障害等級認定審査に強い弁護士に依頼する

末梢神経障害の等級認定は、医学的知識と法律的知識の両方が求められる複雑な手続きです。被害者だけですべての手続きを進めることも可能ですが、より確実に適切な等級認定を目指すのであれば、専門家である弁護士に依頼することもおすすめします。

交通事故に強い弁護士は、後遺障害認定の「審査基準」や「過去の認定事例」を熟知しています。そのため、以下のような専門的なサポートが可能です。

  • 後遺障害診断書の事前チェック
    医師が作成した診断書の内容を精査し、認定に有利な内容となっているか、不利な記載はないかなどを法的な観点から確認・助言できる。
  • 追加資料の収集
    認定の可能性を高めるために、新たな検査の提案や、医師の意見書の作成依頼などのサポート。
  • 異議申立ての代理
    万が一、不当な結果となった場合でも、法的な主張と証拠提出が必要な異議申立て手続きを代理人として行う。

弁護士に依頼すれば、後遺障害等級認定に必要な書類の作成や手続きのサポートが受けられます。交通事故で末梢神経障害の症状が現れた場合は、弁護士に一度相談してみるところから始めてみましょう。

交通事故による末梢神経障害の後遺障害慰謝料・逸失利益

末梢神経障害の後遺障害慰謝料相場

交通事故による末梢神経障害の後遺障害慰謝料は、後遺障害等級によって異なります。過去の判例に沿った相場は次のとおりです。

等級 後遺障害慰謝料
12級290万円
14級110万円

後遺障害慰謝料は、後遺障害が残ったことで感じる精神的苦痛に対する補償です。

後遺障害等級認定で逸失利益も請求できる

後遺障害等級が認定されると、逸失利益も請求できます。逸失利益は、交通事故によって失われた将来の収入に対する補償です。

交通事故による末梢神経障害の賠償金は、保険会社と交渉して決められます。しかし、保険会社はできるだけ少ない金額で賠償金を支払おうとします。

そのため、交通事故で末梢神経障害の症状が現れた場合は、弁護士に依頼することをお勧めします。弁護士が介入することで、保険会社と対等に交渉し、裁判基準での適正な賠償金獲得を目指せます。

交通事故による末梢神経障害は弁護士に依頼

末梢神経障害について弁護士に依頼するメリット

交通事故による末梢神経障害について弁護士に依頼する主なメリットは、下記のとおりです。

  • 後遺障害等級が適切に認定される可能性が高くなる
  • 適正な賠償金を獲得できる
  • 保険会社との交渉を一任できる
  • 精神的な負担を軽減できる

交通事故で末梢神経障害の症状が現れた場合は、弁護士に依頼することをお勧めします。弁護士は交通事故に精通しており、後遺障害等級の申請や示談交渉を効果的に進めることができるからです。

弁護士に依頼することで、適正な賠償金を獲得し、精神的な負担を軽減できるでしょう。

末梢神経障害について相談する弁護士を選ぶ際の注意点

交通事故による末梢神経障害を相談する弁護士を選ぶ際は、以下の点に注意してください。

  • 交通事故に精通している弁護士か確認する
  • 無料相談を利用し、弁護士とよく相談してから依頼する
  • 弁護士費用を事前に確認する

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岡野武志弁護士

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代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。全国15拠点を構えるアトム法律グループの代表弁護士として、刑事事件・交通事故・離婚・相続の解決に注力している。
一方で「岡野タケシ弁護士」としてSNSでのニュースや法律問題解説を弁護士視点で配信している(YouTubeチャンネル登録者176万人、TikTokフォロワー数69万人、Xフォロワー数24万人)。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士、弁理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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