交通事故で満足のいく治療を受けられていない!対処法と転院するときの注意点
「交通事故で整形外科に通院しているけど、医師が何もしてくれない」
「通院しても薬だけ渡されて、ケガが改善しているように思えない」
交通事故で満足のいく治療を受けられていないときの対処法としては、自覚症状を具体的に伝える、セカンドオピニオンを受ける、整骨院に通うなどがあげられます。
この記事では、満足のいく治療を受けられていないときの対処法を、整形外科でよくあるトラブルの体験談をまじえて解説します。
また、満足のいく治療を受けられていないなら、病院を変えることも選択肢のひとつになるでしょう。交通事故で転院する際の注意点もあわせて紹介するので、ぜひ最後までお読みください。
目次
整形外科の医師が何もしてくれないときどうする?
医師に自覚症状をくわしく伝える
整形外科の医師が何もしてくれない場合、まずは自覚症状をくわしく伝えてみましょう。
交通事故で多いむちうちは、画像検査で異常が現れず、医師であっても症状の有無や程度を判断しづらい場合があります。
自覚症状を具体的に伝えれば、どのような異常が生じているのか医師もわかりやすくなります。その結果、湿布や薬を処方するなどの表面的な治療だけではなく、より効果的な治療をしてもらえる可能性があるでしょう。
具体的には、医師に以下のような点を伝えるのがおすすめです。
- いつ痛むか
- どこの部位が痛むか
- どのような痛みか
- 日常生活にどのような影響があるか
たとえば、「交通事故の直後から常に首の後ろがジンジンと鈍く痛み、なかなか眠れない」「屈もうとすると腰の右側がズキッと鋭く痛むため、靴や靴下をはく動作に支障がある」といった形で伝えるとよいでしょう。
セカンドオピニオンを受ける
自覚症状をくわしく伝えても医師が何もしてくれない場合は、他の整形外科でセカンドオピニオンを受けることも検討してみてください。
もっとも、通院先は変更できますが、いきなり転院することにはリスクが伴います。まずは別の整形外科でセカンドオピニオンを受けてみて、治療方針や医師の姿勢に納得できると感じたら転院を検討するとよいでしょう。
なお、セカンドオピニオンの費用を事故相手の保険会社に請求したい場合は、事前に保険会社に請求可能か確認するようにしてください。
整骨院に通うことを検討する
整形外科で湿布や薬だけしかもらえない状況の方は、整骨院に通うことも検討してみましょう。整骨院の施術でむちうちなどの痛みが緩和する被害者の方もいらっしゃいます。
ただし、整骨院に通う場合は、事前に医師の許可を得るようにしてください。
また、整骨院に通いはじめてからも整形外科に月1回以上の頻度で通院するようにしましょう。整骨院での施術費を支払ってもらえない、慰謝料の対象とならないといったトラブルが生じることを防ぐためです。
整骨院に医師の許可なしで通った場合のリスクについては、『交通事故では整骨院に医師の許可なしで通わない|損害賠償のリスクあり』の記事でくわしくまとめています。
整形外科でのトラブル例
通院しても薬だけしかもらえない
例1
追突事故の被害にあってむちうちと診断されました。整形外科でレントゲンを撮ったものの異常なしといわれ、湿布と痛み止めの薬だけ渡されました。
それからしばらく湿布と薬だけで過ごしていましたが、段々と痛みが強くなり、夜眠れなくなってしまいました。しかし、医師に伝えても睡眠薬を処方されるだけです。痛みのせいで仕事にも支障が出ていますが、医師は忙しいようで、診察でまともに話を聞いてもらえません。
打撲やむちうちの場合、通院しても薬だけしかもらえないケースは少なくありません。症状が比較的軽いなら、安静にしていれば治ると考えている医師もいるからです。
整形外科で湿布や薬だけしかもらえない場合、まずは自覚症状を具体的に伝え、治療方針を再検討してもらいましょう。医師が忙しそうにしているなら、自覚症状をあらかじめメモしておいて簡潔に伝えるといった工夫もおすすめです。
自覚症状を伝えても治療方針が変わらないなら、医師の許可を得たうえで整骨院に通うことも選択肢のひとつになります。
必要な検査をしてくれない
例2
交通事故で全身を打撲し、3か月治療を続けましたが、なかなか痛みや痺れがとれません。事故当初はレントゲンしか受けていなかったのですが、脊髄や靭帯に異常があるかもしれないのでMRIを受けたいと医師に申し出ました。しかし、医師は「レントゲンで異常が見つからないので大丈夫」といい、検査をしてくれません。
今後、もし後遺症が残った場合は、神経学的な検査を受けた方がよいと聞きました。今の医師のままでそのような検査をしてくれるかどうかも心配です。
治療にあたって必要な検査をしてもらえない場合は、セカンドオピニオンを受けるのがおすすめです。検査のみ他の病院で受けることも可能なので、医師に相談し、紹介状を書いてもらいましょう。
ケガの検査を受けることは、ケガの存在を立証したり、後遺障害認定を受けたりするためにも大切です。必要な検査をなかなか受けられない場合は、転院も検討してみてください。
ケガはない・もう完治したといわれる
例3
交通事故でむちうちとなり、通院3か月を過ぎたころ、医師から突然「完治したので治療を終えましょう」といわれました。まだ痛みが残っているのですが、医師は私の主張を疑っているようです。
確かに画像検査に異常はなく、自覚症状のみなので、疑われてもある程度仕方ないかもしれません。しかし、痛みのため日常生活に支障があるのでまだ治療を続けてほしいです。
むちうちでは自覚症状のみ生じることも多いため、医師や保険会社に「嘘をついているのではないか」と疑われるケースもあります。とくに、交通事故による衝撃が比較的軽い場合や、主張する症状に一貫性がない場合は、疑いをかけられることが多いでしょう。
痛みや痺れが残っているにも関わらず完治と診断されたら、症状や日常生活への影響を具体的に伝えて治療の継続を訴えるようにしてください。
なお、自覚症状を伝える際に誇張してしまうと嘘と疑われやすいので、正確に伝えることを心がけましょう。
もし、自覚症状を伝えても医師の診断が変わらない場合は、セカンドオピニオンを受けることを検討してみてください。
リハビリをしてくれない
例4
交通事故で左足を骨折し、足首の可動域が制限されています。医師にリハビリをしてほしいと訴えたのですが、「若いのでリハビリしなくてもよいでしょう」と取り合ってもらえません。このまま後遺症として残ってしまわないかとても不安です。
また、リハビリをしない場合、事故から4か月の通院で治療終了となりそうです。事故から半年は治療しないと、後遺症が残っても後遺障害認定を受けられないと聞いたので、きちんとリハビリをしてもらって通院を続けたいです。
リハビリを受けられない場合は、セカンドオピニオンを受け、リハビリで症状の改善を目指せるか確認してください。もし、リハビリに効果があるといわれたなら、転院を検討するとよいでしょう。
また、リハビリテーション科がない病院や理学療法士が在籍していない病院では、そもそもリハビリを実施してもらえないこともあります。その場合は、別の病院でリハビリを受けてもよいか医師に相談してみるとよいでしょう。
なお、整骨院でリハビリを受けるケースもありますが、その場合は事前に医師の許可を取るようにしてください。
交通事故の病院を変えるときの注意点
転院前の医師に紹介状を書いてもらう
交通事故で整形外科の医師が何もしてくれない場合、セカンドオピニオンを受けたうえで転院するのも選択肢のひとつとなります。
転院は無断で行うのではなく、必ず転院前の医師に伝えたうえで行いましょう。また、可能な限り転院前の医師に紹介状を書いてもらうようにしてください。
紹介状には転院するまでの検査結果や治療経過が記載されています。紹介状を書いてもらえれば、転院後に改めて検査を受けたり症状を説明したりすることなく、円滑に治療を再開できます。
転院前の医師に紹介状を書いてもらえば、保険会社に「医師が転院を了承している」と捉えてもらえるので、治療費や慰謝料に関するトラブルも起こりづらいです。
転院することを保険会社に伝える
交通事故の病院を変える際は、事前に保険会社に伝えることも必要です。
交通事故の治療費は、事故相手の保険会社から病院に直接支払ってもらえます。保険会社が転院することを知らないなら、当然この対応は受けられません。
また、保険会社が転院の必要性を認めず、転院後の治療費や慰謝料の支払いを拒否することも考えられます。転院前に保険会社に連絡しておけば、あとから治療費を支払えないといわれて困ることを避けられるでしょう。
むやみやたらに何度も転院しない
交通事故後に転院するのは被害者の自由ですが、むやみやたらと何度も転院するのは避けた方がよいです。
何度も転院すると、保険会社から治療の必要性を疑われ、治療費の支払いを打ち切られてしまう可能性があるでしょう。また、後述する後遺障害認定において、医師の協力を受けられないおそれもあります。
何度も転院する事態を避けるためには、事前にセカンドオピニオンを受ける、ホームページで交通事故の治療実績を調べるなどの方法で、どの病院に変えるか慎重に考えるようにしましょう。
交通事故の通院先の選び方について解説した記事『交通事故の通院先の選び方|整形外科・整骨院を選ぶ4つのポイント』もお役立てください。
後遺症が残りそうなら円満な転院が大切
交通事故によるケガの後遺症が残りそうなときは、円満に転院することがとくに大切になります。
交通事故で後遺症が残った場合、「後遺障害認定」を申請することになります。後遺障害認定とは、後遺症が一定の等級に該当すると認められることです。後遺障害認定を受ければ、追加の賠償を事故相手の保険会社に請求できるようになります。
後遺障害認定の審査では、「後遺障害診断書」といった医師の作成する書類が重要になります。後遺障害診断書は基本的に転院後の医師に作成してもらいますが、転院したばかりだと治療の経緯がわからないため作成してもらえないことがあります。その場合、転院前の病院から治療記録を取り寄せたり、転院前の医師に作成を依頼したりする可能性があるのです。
また、転院したばかりでなくとも、後遺障害の審査では受傷時の状態が重要になるため、転院前の医師に協力をあおぐケースもあるでしょう。
もし、無断で転院したり、喧嘩別れのような形で転院したりした場合、後遺障害診断書の作成に積極的に協力してもらえないといったトラブルが生じる可能性があります。
もしものときに備え、転院前の医師にはしっかりと事情を説明し、円満な転院を目指しましょう。
まとめ
- 満足のいく治療を受けられないなら、自覚症状を具体的にくわしく伝えると解決する場合がある
- 満足のいく治療を受けられないなら、セカンドオピニオンを受けて転院してもよい
- 転院する場合は、転院前の医師や保険会社に必ず事前に伝える
- 何度も転院するとトラブルが起こりやすいので、転院先は慎重に選ぶ
- 満足のいく治療を受けられないなら、医師の許可を得て整骨院で施術を受けるのも選択肢のひとつ
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了