内部通報は公益通報の一種で、従業員や退職者などが社内で発生している法令違反や不正行為を通報することです。
近年、社内における不正行為が多発しており、早期に被害を防止するための対策が求められています。
しかし、そもそも内部通報窓口をどのように作ればいいか分からない、正しく整備・運用できているか分からないとお悩みの経営者の方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、内部通報窓口の設置方法を詳しく解説します。
整備・運用する際の注意点もご紹介するので、窓口の整備に役立ててください。
目次
内部通報窓口とは?
内部通報窓口は、社内不正などの内部通報を受け付ける窓口のことで、従業員や役員、1年以内の退職者であれば原則だれでも通報可能な窓口でなければなりません。通報者は正社員に限ったものではなく、アルバイト、派遣労働者も含まれます。
たとえば営業部門だけしか通報できない窓口や、アルバイトが通報できない窓口の場合は、従業員がマスコミや行政機関に通報する恐れがあります。
最悪の場合、行政機関からの是正や勧告を受ける場合もあるため、誰でも通報できる内部通報窓口の構築が必要です。
なぜ内部通報窓口の設置が必要?
内部通報窓口の設置が必要な理由は、社内不正やコンプライアンス違反の早期発見や未然防止により、事態が大きくなる前に対処できる可能性があるからです。
また、公益通報者保護法の改正(2022年6月1日施行)により、一部の企業には内部通報窓口・公益通報窓口の設置が義務化されています。
内部通報窓口により社内不正を早期発見
内部通報窓口を設置していない、もしくは整備されていない場合は、不正の発見が遅れて被害が拡大する可能性があります。
また、マスコミや行政機関などに不祥事が通報されて事態が大きくなり、社会的な信用が低下すれば業績の悪化も免れません。
消費者庁の2016年の調査によると、内部通報窓口を導入している事業者への調査では、社内の不正発見の端緒は従業員からの内部通報が58.8%と最も高い数字でした。
統計的に見ても、内部通報窓口は不正の早期発見などに役立つといえます。
参考:消費者庁「平成28年度民間事業者における内部通報制度の実態調査報告書」
法改正で内部通報窓口設置が義務化
公益通報者保護法の改正(2022年6月1日施行)により、従業員数が301人以上の企業では内部通報窓口・公益通報窓口の設置が義務化されました。
改正法では、従業員300人以下の企業に対する内部通報窓口の設置義務は努力義務にとどまりますが、将来的に内部通報窓口の義務化の範囲が広がることも考えられます。
2022年6月施行の改正法の要点を知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
公益通報者保護法を弁護士がわかりやすく解説!|2022年改正法施行
内部通報窓口の設置方法
内部通報窓口の設置は、社内窓口のみ、社外窓口のみ、社内窓口・社外窓口を併用する3つのパターンがあります。それぞれ設置方法を解説します。
社内窓口(自社整備)
①社内規程を作成
最初に内部通報窓口における社内規程を作成しましょう。社内規程に定める必要がある事項は、公益通報者保護法に基づく指針に記載されています。
社内規程に定める必要のある事項は、主に以下のものがあります。
- 公益通報対応業務従事者と部署
- 通報対象となる事実
- 調査、是正措置の実施
- 社内処分や通知方法
- 通報者の保護や守秘義務の取り扱い
なお、公益通報対応業務従事者とは、内部通報窓口に寄せられた通報の受付や調査・是正を行う人物のことです。
事業者は、内部公益通報受付窓口において受け付ける内部公益通報に関して公益通報対応業務を行う者であり、かつ、当該業務に関して公益通報者を特定させる事項を伝達される者を、従事者として定めなければならない。
公益通報者保護法第 11 条第1項及び第2項の規定に基づき事業者がとるべき措置に関し て、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針
②通報内容は原則、どんな内容でも受け付ける
内部通報窓口を設置後、通報内容は、原則どんな内容でも受け付けましょう。通報を受け付ける方法には、電話やメール、文書などが考えられます。
しかし、全ての通報を受け付けるとはいえ、上司の悪口や会社への不満等に全て対応する必要はありません。
企業が調査などの対応をしなければならない通報は「通報対象事実」に該当する場合のみとされています。「通報対象事実」とは、刑事罰や過料(行政罰)につながる可能性がある行為や事実のことです。
「通報対象事実」の対象となる法律は刑法、食品衛生法、金融商品取引法などのおよそ500本の法律です。
たとえば、会社のお金の着服は詐欺罪や横領罪に、社内での盗撮は迷惑防止条例などに違反するため、「通報対象事実」に該当します。
参考:組織の不正を未然に防止!通報者も企業も守る「公益通報者保護制度」
③受け付けた内部通報に対しては調査と是正が必要
内部通報窓口で受け付けた通報は、「必要な調査」を実施し、調査結果をふまえて法令の遵守を確保するための是正が必要です。
「必要な調査」とは通報の内容に関しての証拠収集や、事実認定です。匿名通報などで通報者にヒアリングなどの事実確認ができない場合であっても、提供された情報から調査が可能な場合もあります。可能な限り調査を実施しましょう。
また是正は通報の内容によってさまざまなものが想定されます。違反行為を行った人物に対する処分や、プレスリリースなどの対外公表や再発防止策の策定などがあげられます。
是正に必要な措置を取ったあとは、行った措置が適切に機能しているかどうか継続的な確認が必要です。万が一機能していない場合は、あらためて別の是正措置を取りましょう。
④通報に対する利益相反に注意
内部通報窓口で受け付けた通報は、十分な調査・是正の実施をしなければなりません。
もし内部通報を受け付ける担当者が通報内容に関与していた場合、中立性や公平性を欠いた対応をする可能性があります。受け付けた内部通報の事案に関係する人物は担当者から除外しましょう。
また指針では、内部通報窓口は、経営陣と独立性を確保した別のルートを取るべきと定められています。上記同様に、経営陣への不正の内容が通報された場合、不正のもみ消しや、適切な措置が取られない可能性があるからです。
さらに顧問弁護士に社内窓口対応を依頼するケースがあります。しかし、顧問弁護士に窓口を紐づけることも可能な限り避けておいた方が無難です。顧問弁護士も利益相反の関係にあり、適切な是正措置が取られない可能性があります。
⑤情報漏洩させると、担当者に刑事罰
内部通報窓口の担当者が情報を漏洩させた場合、担当者に刑事罰が科される可能性があります。そのため、適切な情報管理と内部通報に関する知識や経験を有する人材を担当者にすることが重要です。
守秘義務に反して、内部通報者を特定できる情報を漏洩させると、30万円以下の罰金が科される可能性があります(改正法21条)。
秘密保持の徹底と通報者の保護が不十分な場合は、内部通報窓口を整備しましょう。
その他にも、内部通報制度の疑問点がある方は以下の記事も参考にしてください。
【企業向け】内部通報制度のよくある質問に弁護士が分かりやすく回答!
社外窓口(外部委託)
①どの社外窓口を使用するか検討する
社外に窓口を設置する場合は、法律事務所やシステム会社が提供する窓口に委託する方法が一般的です。
内部通報窓口を外部委託する場合、窓口の設計や運用に月額料金が発生してくるサービスがほとんどです。初期費用として、従業員数に応じて料金が発生するものもあります。
社外窓口を設置するメリットは、社内事情を知らない担当者が公正な立場で物事を判断することが可能な点です。実績や担当者の保有資格などを把握したうえで信用に値する会社を選ぶと安心して任せることができるでしょう。
②従業員に周知する
社外窓口は、特に従業員などに通報窓口の周知を行う必要があります。
周知を行わず、社内不正が通報されなければ、内部通報窓口を設置する意味がありません。
社外窓口は社内窓口よりも従業員にとっては通報しやすいと考えられます。
内部通報をしたとしても通報者が特定されにくく、不利益を被るリスクが低いからです。
社外窓口設置後の調査・是正は、社内窓口同様に行いましょう。
社内窓口・社外窓口の併用
内部通報窓口を社内と社外で併用する場合には、上記で解説した社内外の窓口の運用方法を実施してください。
事業所への調査では「社内外いずれも設置」と回答した企業が59.9%と全体の半数以上を占めています。
参考:消費者庁「平成28年度民間事業者における内部通報制度の実態調査報告書」
設置する順番に決まりはありませんが、社内窓口を設置してから社外窓口を設置するケースが一般的です。
社内窓口・社外窓口を併用するのが理想
通報窓口は社内窓口・社外窓口を併用するのが理想です。従業員にとっては、複数の窓口から通報しやすい窓口を選択できるメリットがあります。会社にとっても自社の内部通報窓口の担当者と外部の担当者が協力して是正措置を取ることが可能です。
従業員の規模にかかわらず、社内窓口・社外窓口の併用がおすすめです。ここでは社内外問わず内部通報窓口を整備・運用する際の注意点を2つ紹介します。
①匿名の通報でも必要な調査を実施する
通報内容が解決済みの案件や、通報者と連絡が取れずに事実関係が難しい場合を除き、まずは調査が必要になります。よって匿名の通報を受け付けた場合でも原則、必要な調査を実施しなければなりません。
匿名通報の場合、部署なども分からなければ調査が難しい可能性があります。
指針には、その対策として以下のように記載されています。
匿名の公益通報者との連絡をとる方法として、受け付けた際に個人が特定できないメールアドレスを利用して連絡するよう伝える、匿名での連絡を可能とする仕組み(事業者に公益通報者の氏名等を伝えない仕組み、チャット等の専用のシステム等)を導入する、といった方法が考えられる。
現在の内部通報窓口では匿名通報の受け付けが難しい場合は、通報を受け付ける方法を増やすなど、窓口を整備しましょう。
②通報者に対する不利益な扱いの禁止
内部通報を行ったことを理由とする、通報者への不利益な取り扱いは禁じられています。
通報者を正当な理由なく解雇したり、減給・降格処分などを与えたりすると、大きなトラブルに発展する場合もあります。
通報をきっかけとした従業員の処分を巡り、裁判沙汰になった事例も数多くあります。
内部通報・内部告発で裁判になった事例を確認したい方は、以下の記事もご覧ください。
アトムのコンプラチェッカーで、通報システムを手軽に導入!
内部通報窓口は、一つ設置すれば足り、自社に内部通報窓口を設置すれば外部に設置する義務はありません。しかし、第三者である窓口を外部に設置しておくことで、従業員が通報しやすい環境を整えることができます。
法律事務所が提供する窓口であれば、何かあったら法的な問題になると感じさせ、コンプライアンス意識の向上や職場の自浄作用を高める効果が期待できるでしょう。
アトム法律事務所のコンプラチェッカーとは
コンプラチェッカーとは、社内不正を発見した従業員がアトム法律事務所を経由して、会社代表者に通報するための内部通報ツールです。
「自社のメールやツールでは、通報したことがバレてしまうかも・・・」という不安を解消するため、第三者であるアトム法律事務所が通報内容のみを会社代表者の方へ転送する仕組みとなっています。
これにより、「会社には直接通報しづらい」「社長まで通報が届くのか」という従業員の懸念を取り除くことができます。
コンプラチェッカーの特徴
完全に匿名での通報が可能
コンプラチェッカーを使う場合、アトム法律事務所が発行する企業専用ページから発見した不正を通報します。
メール送信や氏名の記入などは通報の際には不要ですので、通報者の情報が判明することはありません。
従業員からの通報内容は会社代表者のみが確認できる
コンプラチェッカーを使って不正内容が送信されると、アトム法律事務所が通報内容を受け取り、会社代表者にそのまま転送します。
そのため、通報が破棄されたり、通報内容が会社代表者以外に知られたりすることはありません。
毎月の内部通報メルマガで社内不正の最新ニュースを送信
アトム法律事務所から毎月月初、前月に報道された最新の社内不正情報や弁護士の解説記事が従業員にメールで通知されます。
社内不正の危険性を従業員にリマインドすることが可能となり、積極的な内部通報を促します。
弁護士の解説記事は「社内不正の解説記事」でご確認いただけます。
コンプラチェッカーよくある質問
Q
誰が内部通報したかわかる?
A
わかりません。
通報を促進するには匿名性が重要となるため、通報者に関する情報はお伝えしていません。
Q
通報内容をアトムの弁護士に相談できる?
A
できます。
コンプラチェッカーの年間プランには弁護士との相談は含まれておりませんが
別途の時間報酬制で相談や各種依頼に対応しています。
Q
コンプラチェッカー導入のメリットは?
A
法律事務所が提供しているツールですので、不正行為に対する強力な抑止力となります。
「何かするとアトムのツールで通報されるかも・・・」と従業員が考え、社内に良い緊張感を生みます。
料金は年間一律9600円!|3か月無料トライアルも実施中
アトム法律事務所の内部通報ツール「コンプラチェッカー」の利用料金は、年間9,600円(税込み)です。企業の規模にかかわらず、一律の料金となっています。
通報手段を用意したり、従業員へのメール配信をしたりする手間をかけることなく、完全匿名の内部通報システムを導入することが可能です。
初回3か月間無料トライアルを実施していますので、ご興味のある経営者の方は、以下の専用サイトよりお問い合わせください。