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内部通報・内部告発で裁判になった事例5選

2022.11.18

  • 内部通報って何?
  • 実際にどんな事例がある?
  • 内部通報した従業員に降格や減給などの処分を与えるとどうなる?

内部通報や内部告発を受けた企業は、通報の内容に応じて、調査の実施や是正措置などの適切な対処を取る必要があります。

通報を行った従業員に対して不利益な取り扱いをしてしまった場合には、訴訟を起こされるなどのトラブルに発展する可能性もあります。

この記事では、過去に内部通報をきっかけとしてトラブルになった事例をご紹介します。

通報者への処分が可能かどうかの基準についても解説しますので、内部通報窓口の担当者の方は、ぜひ参考にしてみてください。

内部通報とは

内部通報とは、社内で発生している不正行為などに関して、会社の通報窓口を介して通報を行うことです。

内部通報の対象となる代表的な例として、セクハラやパワハラ等のハラスメント行為、金銭の横領や顧客情報の漏洩などがあげられます。

企業は自社の内部通報窓口を設置することにより、不正行為の早期発見や、予防に役立てることができます。

内部告発とは

内部告発とは、保健所などの行政機関や、新聞社などの報道機関に通報することです。内部通報と異なり、通報先が外部になります。

内部通報制度がない企業に勤めている従業員は、不正行為を見つけた場合、外部に通報することになるでしょう。

内部通報・内部告発はどちらも公益通報と呼ばれます。公益通報者保護法では、内部通報などを行った労働者に対する不利益な取り扱いを禁じています。

2020年には、公益通報を行った労働者などをより一層強く保護するため、公益通報者保護法の改正法が公布され、2022年6月に施行されました。

2022年6月施行の改正法の要点を知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

公益通報者保護法を弁護士がわかりやすく解説!|2022年改正法施行

内部通報をした従業員に対する処分は認められるのか

従業員が内部通報をしたことを理由とした、解雇や降格、減給などの処分は原則認められません。

例外的に、内部通報が「不正の目的」のために行われていれば処分が認められる場合もあります。

たとえば、金品を請求するために内部通報したケースなどがあげられますが、通報が不正の目的かどうか判断することは実務上難しいです。

そのため、企業として内部通報をした従業員を処分することは、大きなリスクを伴います。

内部通報をきっかけに安易に処分を与えてしまうと、労働関連法規に違反したり、民事上の不法行為として訴訟に発展したりする可能性があります。

内部通報をした従業員に対しての降格や減給などの処分には、慎重な判断が求められます。

要件を満たさない内部告発であれば処分できる場合がある

内部告発も内部通報同様に従業員に対する処分が難しいのでしょうか。

内部告発の場合、法律上の保護要件を満たさない通報であれば、従業員に対する処分が許される場合があります。通報者への処分が可能かどうかの基準は以下の3つです。

  • 真実相当性|通報内容が「真実であるかどうか」
  • 手段の相当性|通報の方法が「相当であるかどうか」
  • 目的の公益性|通報目的が「公共の利益を図るものかどうか」

内部告発がこれらの3つの要件をすべて満たす場合には、公益通報者保護法に基づく保護の対象になります。

しかし、要件を満たしているかどうかは企業で判断することは難しいため、顧問弁護士がいれば顧問弁護士に助言を求めてもいいかもしれません。顧問弁護士がいない場合は、内部通報に強い弁護士に相談しましょう。

実際にあった内部通報の事例

千葉県がんセンター事件(平成26年5月21日東京高裁判決)

事件の概要

千葉県がんセンターの手術管理部に勤務していた麻酔科医Aが、無資格の医師が麻酔を担当している問題を発見。
直属の上司Bではなく、センター長に内部通報を行った。
通報後、上司BはAに対して一切の麻酔業務を担当させず、Aは退職を余儀なくされた。
この報復行為が違法だとして、Aは千葉県を相手に損害賠償を請求した。

結果

Aの請求が認められ、千葉県に対して30万円の賠償命令が下された。

解説

無資格の医師が麻酔業務を行っていたことは事実だったため、真実相当性は認められます。
目的の公益性についても、組織内部の改善を図る目的の通報だと認められましたので、Aの通報は適法の内部通報とされました。

オリンパス事件(平成23年8月31日東京高裁判決)

事件の概要

25年間勤務していた従業員Aは、上司が、機密情報を持っている取引先の男性を引き抜こうとしている件を問題視。
社内の内部通報制度を利用して上司の行為を内部通報した。
企業はAに対して配置転換などの報復人事や、制裁的な人事評価を行った。
Aは配転無効および損害賠償を請求する訴訟を起こした。

結果

配転命令は無効。
Aの請求が認められ、企業からAに対して損害賠償が命じられた。

解説

第一審ではAが敗訴、二審ではAが逆転勝訴しました。
最高裁では企業の上告を棄却したことからAの勝訴が確定しました。
Aは判決後も名誉回復などを巡り複数回訴訟を行い、最終的に和解に至るまで8年間の歳月を要しました。

これらの事例のように、安易に内部通報者を処分すると長年の裁判になる可能性があるため、処分は慎重に行うべきでしょう。

また、処分に対して従業員から訴訟を起こされてしまうと、情報が外部に知れ渡り、企業の評判を下げることにもつながりかねません。

自社内に適切な対処や是正措置が取られる内部通報窓口があれば、職場内で自浄作用が働き、こういった事例が発生することを未然に防ぐことができる可能性があります。

実際にあった内部告発の事例

大王製紙事件(平成28年1月14日東京地裁判決)

事件の概要

大王製紙に勤務する従業員Aが、会社のマネーロンダリングや不適切な会計処理を発見。組織外部の役員に対して「告発状」と題する文書を送付し、業界新聞にもその内容が掲載された。
この内部告発を受けた大王製紙は、Aを降格処分にし、子会社への出向を命じた。
しかしこれに応じなかったことから、会社はAを懲戒解雇。Aは、降格処分・懲戒解雇は無効であると会社を訴えた。

結果

降格処分は有効。
懲戒解雇は無効。

解説

Aの告発は、経営陣を失脚に追い詰めるための材料を提供することが主な目的だと裁判所は判断しました。
そのため、内部告発の「目的の公益性」がないと判断され、降格処分は有効と判断されました。
一方で、Aが降格処分に応じなかったことは懲戒事由にはあたらないとし、懲戒解雇は無効とされています。

ガソリンスタンド水増し請求事件(平成27年11月11日東京地裁判決)

事件の概要

ガソリンスタンドに正社員として勤務していた従業員Aは、勤務先でガソリンの水増し請求が行われていることを問題視。取引先やガソリンの元売り会社に文書などを通じて内部告発を行った。
企業はAを懲戒解雇。Aはこの結果が違法だとして訴訟を起こした。

結果

懲戒解雇は有効。

解説

Aの告発は、口止め料などの解決金を支払ってもらうといった私的な理由があると判断され、目的の公益性は認められませんでした。
手段の相当性も、従業員が元売りの企業に通報する必要性はなかったと判断されました。
Aの勤務態様が会社の就業規則の懲戒事由に該当していたことも考慮され、懲戒解雇が有効と判断されました。

いずみ市民生協事件(平成15年6月18日大阪地裁堺支部判決)

事件の概要

消費者生活協同組合の従業員Aらが、匿名で副理事長と専務理事の役員2人が不正行為をしていると告発する文書を生協組合員に送付。会社はAらを自宅待機とし、配転や懲戒解雇処分にした。
Aらは、配転命令や懲戒解雇などが報復行為や名誉侵害に当たるとして、副理事長らに損害賠償を求め、訴訟を起こした。

結果

従業員らの自宅待機や懲戒解雇は報復行為とされ、無効。
会社からAらに対して慰謝料の支払いが命じられた。

解説

手段の相当性は、氏名を公表して通報していれば処分を受ける可能性があった点も考慮され、匿名の告発もやむを得ないと判断されました。
Aらの内部告発は運営の改善目的と判断され、目的の公益性も問題ないと判断されています。

紹介した3つの事例の中には、企業の処分が認められたものもありますが、自社に従業員が手軽に使える内部通報の仕組みがあれば、社外に知れ渡る可能性が低かったかもしれません。また、職場の自浄作用が働き、不正事態が発生しなかった可能性もあります。

アトム法律事務所のコンプラチェッカーを利用すれば、社内の問題を事前に察知でき、大事になる前に対処できる可能性があります。

自社の内部通報制度を導入するメリットについては「内部通報制度のメリットとは?|通報窓口を整備する際のポイントを弁護士が解説」もご覧ください。

アトムのコンプラチェッカーで、通報システムを手軽に導入!

5つの代表的な事例をご紹介しましたが、内部通報・告発をめぐって裁判になっている事例は、ほかにも数多くあります。

裁判になる可能性があるような社内不正や企業不祥事などを知りたい方は「社内不正の事件データベース」もご確認ください。

公益通報者保護法の改正により、通報者に対する保護の強化が加わり、これまで以上に慎重な取り扱いが求められます。

既に自社に内部通報窓口を設置している企業も、第三者である法律事務所やシステム提供会社などが提供する外部の通報窓口を設けることで、さらに企業の自浄作用を高めることができるでしょう。

アトム法律事務所のコンプラチェッカーとは

コンプラチェッカーとは、社内不正を発見した従業員がアトム法律事務所を経由して、会社代表者に通報するための内部通報ツールです。

「自社のメールやツールでは、通報したことがバレてしまうかも・・・」という不安を解消するため、第三者であるアトム法律事務所が通報内容のみを会社代表者の方へ転送する仕組みとなっています。

これにより、「会社には直接通報しづらい」「社長まで通報が届くのか」という従業員の懸念を取り除くことができます。

コンプラチェッカーの特徴

完全に匿名での通報が可能

従業員が不正を発見した場合、アトム法律事務所が発行する企業専用ページから通報します。

通報の際、メール送信や氏名の記入などは不要ですので、通報者の情報が判明することはありません。

従業員からの通報内容は会社代表者のみが確認

コンプラチェッカーを使って不正内容が送信されると、アトム法律事務所が通報内容を受け取り、会社代表者にそのまま転送します。

そのため、通報が破棄されたり、通報内容が会社代表者以外に知られたりすることはありません。

毎月の内部通報メルマガで社内不正の最新ニュースを送信

アトム法律事務所から毎月月初、前月に報道された最新の社内不正情報や弁護士の解説記事が従業員にメールで通知されます。

社内不正の危険性を従業員にリマインドすることが可能となり、積極的な内部通報を促します。

社内不正の解説記事」で、企業不祥事の弁護士解説をご確認いただけます。

あわせてご覧ください。

コンプラチェッカーよくある質問

Q

誰が内部通報したかわかる?

A

わかりません。

通報を促進するには匿名性が重要となるため、通報者に関する情報はお伝えしていません。

Q

通報内容をアトムの弁護士に相談できる?

A

できます。

コンプラチェッカーの年間プランには弁護士との相談は含まれておりませんが
別途の時間報酬制で相談や各種依頼に対応しています。

Q

コンプラチェッカー導入のメリットは?

A

法律事務所が提供しているツールですので、不正行為に対する強力な抑止力となります。

「何かするとアトムのツールで通報されるかも・・・」と従業員が考え、社内に良い緊張感を生みます。

料金は年間一律9600円!|3か月無料トライアルも実施中

アトム法律事務所の内部通報ツール「コンプラチェッカー」の利用料金は、年間9,600円(税込み)です。企業の規模にかかわらず、一律の料金となっています。

通報手段を用意したり、従業員へのメール配信をしたりする手間をかけることなく、完全匿名の内部通報システムを導入することが可能です。

初回3か月間無料トライアルを実施していますので、ご興味のある経営者の方は、以下の専用サイトよりお問い合わせください。