上腕骨顆上骨折の後遺症と後遺障害認定のポイント!補償と対処法も解説
上腕骨顆上骨折(じょうわんこつかじょうこっせつ)は、肘の近くにある上腕骨の骨折で、特に転倒時に肘をついたり、交通事故で前腕に強い衝撃が加わった場合に発生します。
大人では稀な骨折といわれ、小児に多い骨折とされています。正しい診断・治療が行われないと、のちに発育障害を起こす可能性があるので注意が必要な骨折です。
上腕骨顆上骨折は治療によって骨折自体が癒合しても、「肘がまっすぐ伸びない」「肘の関節が変形してしまう」などの後遺症が残るケースもあるでしょう。そうした後遺症が残った場合には、後遺障害等級が認定され、後遺障害慰謝料や逸失利益の請求が可能になる場合があります。
この記事では、上腕骨顆上骨折の概要や症状・治療法を解説したうえで、後遺症が残った場合の補償や適切な対処法についてわかりやすく解説します。
目次
交通事故による上腕骨顆上骨折とは?
上腕骨顆上骨折とは?
上腕骨顆上骨折とは、上腕骨の肘関節のすぐ上(顆上部)が骨折する怪我です。肘に近い部分の骨を骨折することから、関節の動かしやすさや肘の見た目に影響しやすいという特徴があります。
交通事故により肘付近への強い衝撃があると生じやすく、骨が柔らかい子供によく起こるといわれています。
交通事故では、転倒や衝突時に腕を伸ばした状態で手をつくと、衝撃が肘に集中し、骨折してしまうことが多いです。
上腕骨顆上骨折の症状
上腕骨顆上骨折の症状としては、肘周辺の激しい痛みや腫れ、肘を動かすことができない、骨の変形などになります。
初期症状としては、疼痛、蒼白、知覚障害、運動麻痺、脈拍の消失がみられるので、異常に気付いた時は早急に医療機関にかかりましょう。
上腕骨顆上骨折の治療法
骨折箇所のずれ(転位)が少ない場合は、ギプスで固定したり、骨折した腕を上から牽引するという保存療法などによる治療が行われます。
骨折箇所のずれが大きい場合や、神経や血管が巻き込まれている可能性が高い場合などは、手術が必要なこともあるでしょう。
上腕骨顆上骨折で後遺症が生じたのなら後遺障害の認定を受けよう
交通事故で上腕骨顆上骨折を負った場合、肘がまっすぐ伸びない、肘の関節が変形してしまうなどの後遺症が残ることがあります。
このような後遺症が残った場合には、後遺症の症状が後遺障害に該当するという認定を受けましょう。
後遺障害に該当すると判断されると、症状の程度に応じて認定される等級に応じて、請求できる金額が増額するのです。
後遺障害認定の申請方法
後遺障害の認定を受けるためには、以下に示す手順に従う必要があります。
- 速やかに医師の診断を受ける
- 後遺障害診断書などの必要書類を取得する
- 自賠責保険会社に後遺障害の申請を行う
- 自賠責保険会社から後遺障害の認定を受ける

この手順は被害者請求という方法です。
被害者請求は、被害者が主体的に後遺障害申請の手続きを進める方法といえます。申請書類の吟味ができる分、後遺障害認定率を上げるための工夫が可能です。
その一方で、被害者請求は手間がかかる方法ともいえるのですが、弁護士がサポートすることでその負担を大きく軽減できます。

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後遺障害認定を受けるための注意点
後遺障害の認定を受けるためには、以下の点に注意する必要があります。
- 早期に医師の診断を受ける
- 後遺障害診断書を正確に作成してもらう
- 後遺障害の申請書類を丁寧に作成する
- 書類の作成や申請方法に疑問がある場合に弁護士に相談する
自賠責保険会社が認定した後遺障害等級に納得がいかない場合は、異議の申し立てが可能です。
交通事故による上腕骨顆上骨折で認められる後遺障害等級は?
交通事故により上腕骨顆上骨折を負うと、以下のような後遺障害が生じる可能性があります。
- 肘がうまくくっつかずに変形している(変形障害)
- 肘の痛みが引かない(神経障害)
- フォルクマン拘縮(機能障害)
それぞれの後遺障害について、認められる可能性がある後遺障害等級を紹介します。
変形障害(変形した・変な動きをする)
上腕骨顆上骨折による骨折が正しく癒合しないことで、変形してしまうことがあります。また変形した結果、本来はくっつくはずのところが関節のようになってしまい、動いてしまうのです。上腕骨顆上骨折による変形障害は、後遺障害7級9号、8級8号、12級8号認定を受けられる可能性があります。
等級 | 症状 |
---|---|
7級9号 | 1上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの |
8級8号 | 1上肢に偽関節を残すもの |
12級8号 | 長管骨に変形を残すもの |
7級9号の「1上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの」とは、以下のいずれかに該当し、かつ、常に硬性補装具を必要とする場合です。
- 上腕骨の骨幹部又は骨幹端部に癒合不全を残すもの
- 橈骨及び尺骨の両方の骨幹部等に癒合不全を残すもの
8級8号の「1上肢に偽関節を残すもの」とは、以下のいずれかに該当するものといいます。
- 上腕骨の骨幹部等に癒合不全を残し、常に硬性補装具を必要とはしない
- 橈骨及び尺骨の両方の骨幹部等に癒合不全を残し、常に硬性補装具を必要とはしない
- 橈骨及び尺骨のいずれか一方の骨幹部に癒合不全を残し、時々硬性補装具を必要とする
12級8号の「長管骨に変形を残すもの」とは、以下のような症状などとなっています。
- 上腕骨の変形が外見からわかる
- 橈骨及び尺骨の変形が外見からわかる
- 上腕骨、橈骨、又は尺骨の骨端部に癒合不全を残す
神経障害(痛みが取れない・しびれている)
上腕骨顆上骨折による骨折箇所が癒合しても、痛みやしびれといった神経症状が残ってしまうことがあります。こうした神経症状は後遺障害12級13号または14級9号認定を受けられる可能性があるものです。
等級 | 症状 |
---|---|
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残す |
14級9号 | 局部に神経症状を残す |
痛みが残っていることが画像所見などから客観的に明らかにできる場合には「医学的に証明できるもの」として12級13号の認定を受けられます。
客観的な証明ができないものの、交通事故の態様・治療内容・治療中における症状の変遷などから痛みが残っていると判断できる場合には、14級9号の認定がなされるでしょう。
機能障害(フォルクマン拘縮)
交通事故で上腕骨顆上骨折を負った場合、「フォルクマン拘縮」という深刻な合併症を残す可能性があります。
フォルクマン拘縮で手関節・手指が用廃となれば、後遺障害準用6級に認定されるでしょう。
フォルクマン拘縮とは、骨折に伴って炎症を起こした幹部が動脈の血流障害を起こし、対応が遅れると筋肉の変性や神経麻痺が残ってしまう障害です。フォルクマン拘縮が進んで筋肉が壊死してしまうと、筋肉の切除と再建手術がおこなわれることもある重大な障害です。
交通事故による上腕骨顆上骨折で後遺症が残ったらいくら請求できる?
後遺障害等級認定を受けることで請求額が増加
交通事故で後遺症が残った場合、後遺症の症状が後遺障害に該当すると認定されることで後遺障害慰謝料や逸失利益を請求できます。
上腕骨顆上骨折に関する後遺障害慰謝料について
後遺障害慰謝料は、後遺障害を負ったことで生じる精神的苦痛に対する損害賠償金です。逸失利益は、後遺障害が原因で将来的に得るはずだった収入が減ったことに対する損害賠償金となります。
後遺障害慰謝料の金額は、認定された等級に応じて異なり、具体的な金額は以下の通りです。
等級 | 慰謝料額 |
---|---|
7級 | 1,000万円 |
8級 | 830万円 |
12級 | 290万円 |
14級 | 110万円 |
なお相手の任意保険会社が提示してくる後遺障害慰謝料は、こうした慰謝料額よりも低額と予想されます。なぜなら、相手の任意保険会社はあくまで自社基準にのっとった金額算定をするからです。
弁護士や裁判所といった損害賠償請求の実務を知り尽くした、法的に適正な金額を算定する立場とは違うことを知っておきましょう。

そして、相手の任意保険会社の言うままに示談を受け入れると損をする可能性が高いです。弁護士を立てて増額交渉をしていく必要があります。
上腕骨顆上骨折に関する逸失利益について
逸失利益とは、本来は得られるはずだった将来の収入が後遺障害によって減ったことへの補てんとして請求します。
逸失利益の金額は、後遺症の程度や、年齢、職業、事故前の収入などによって異なります。くわしい金額を知りたい場合には、弁護士に相談すると良いでしょう。
後遺障害等級認定を受けなくても請求できる損害
交通事故により上腕骨顆上骨折を負い、後遺症が残った場合には、以下のような損害についても請求が可能です。
費目 | 内容 |
---|---|
治療関係費 | 治療費、入院費、通院交通費、装具代など |
休業損害 | 治療のために仕事を休んだことによる減収 |
入通院慰謝料 | 治療期間に負った精神的苦痛に対する金銭 |
物的損害 | 自動車や自転車の修理費、壊れた衣類代など |
具体的にどのような損害をいくら請求できるのかについては、専門家である弁護士に相談すべきでしょう。
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ここで「弁護士費用特約」に注目しておきたいと思います。

弁護士費用特約とは、被害者の弁護士費用を保険会社が補償してくれるというものです。補償額は約款次第によるものの、法律相談料10万円、弁護士費用300万円を上限とする場合が多いといえます。
弁護士費用特約の有無 | 弁護士費用の請求先 |
---|---|
あり | 被害者の保険会社 |
なし | 被害者本人 |
ほとんどの交通事故の弁護士費用は、弁護士費用特約の補償範囲内におさまります。そのため、被害者は追加請求されることなく、自己負担金0円で弁護士を立てることができます。
もっとも、損害賠償金額が数千万円におよぶときには注意が必要です。弁護士費用特約の補償上限を超えた分は、被害者に請求することになります。
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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了