モンテジア骨折の後遺症と後遺障害認定のポイント。交通事故の慰謝料請求も解説

交通事故で前腕に強い衝撃を受けた結果、「モンテジア骨折」を負ってしまうことがあります。
モンテジア骨折とは、尺骨の骨折と橈骨頭の脱臼が同時に起きる重篤な外傷で、肘の可動域制限や痛みなどの後遺症が残るリスクも高い骨折です。
この記事では、モンテジア骨折の症状や治療法に加え、後遺障害が認定される可能性や、適切な補償を受けるための対応策について詳しく解説します。
目次
交通事故によるモンテジア骨折とは?
モンテジア骨折は尺骨骨折と橈骨頭脱臼が同時に起きる骨折で、後遺症が残りやすい骨折の一つです。
この章では、モンテジア骨折とはどのような骨折なのかに加えて、症状や治療法について解説していきます。
モンテジア骨折とは?
モンテジア骨折とは、尺骨骨折と橈骨頭脱臼が同時に発生する外傷です。尺骨と橈骨は肘から手首の間にある2本の骨で、小指側にあるのが尺骨、親指側にあるのが橈骨になります。
尺骨の骨幹部分の骨折と、橈骨頭の前方脱臼を合併した骨折をモンテジア骨折というのです。
交通事故で転倒した際に、地面に強く手をついたことが原因となって受傷する可能性があります。
なお、モンテジア骨折と似た骨折に「ガレアッチ骨折」があります。ガレアッチ骨折は骨折と脱臼が生じる部分がモンテジア骨折と反対です。
モンテジア骨折とガレアッチ骨折の違い
骨折名 | 尺骨 | 橈骨 |
---|---|---|
モンテジア骨折 | 骨折 | 脱臼 |
ガレアッチ骨折 | 脱臼 | 骨折 |
モンテジア骨折の症状
モンテジア骨折の症状は、肘や手首が十分に動かせない、肘や前腕部の痛みなどです。
事故直後は、尺骨骨折による痛みが強いため、橈骨頭の脱臼が見過ごされる危険性があります。そのため、レントゲンやMRIなどによる確認で、橈骨頭の脱臼が発覚することもあります。
モンテジア骨折の治療法
成人の場合、オペによるプレート固定の治療が行われます。順調にいけば大体6~8週間程度で骨折は癒合するでしょう。
もっとも、尺骨の骨折が癒合しても、橈骨頭の脱臼だけが残る可能性もあるので、この場合は尺骨の過矯正骨切りオペによって橈骨頭を正しい位置に戻します。また、橈骨頭に著しい変形がみられる場合は、橈骨頭切除術が実施されるでしょう。
特に、モンテジア骨折は手首を曲げる筋肉が硬くなり動きが悪くなる状態(阻血性拘縮)に注意すべきで、早期に発見と処置を行わなければ、前腕および手に重度の機能障害が残る可能性が生じます。
モンテジア骨折は、治療がうまくいっても、後遺症として肘の可動域制限や痛みが残ることがあり、場合によっては再手術や追加治療が必要となることもある骨折です。
モンテジア骨折で後遺症が生じたのなら後遺障害の認定を受けよう
モンテジア骨折の後遺症として、ひじや手首の動かしづらさ、ひじや腕の痛み、前腕の関節でないところが曲がってしまうことなどがあげられます。
このような後遺症が残った場合には、後遺症の症状が後遺障害に該当するという認定を受けましょう。
後遺障害に該当すると判断されると、症状の程度に応じて認定される等級に応じて、請求できる金額が増額するのです。
後遺障害認定の申請方法
後遺障害の認定を受けるためには、以下に示す手順に従う必要があります。
- 速やかに医師の診断を受ける
- 後遺障害診断書などの必要書類を取得する
- 自賠責保険会社に後遺障害の申請を行う
- 自賠責保険会社から後遺障害の認定を受ける

この手順は被害者請求という方法です。
被害者請求は、被害者が主体的に後遺障害申請の手続きを進める方法といえます。申請書類の吟味ができる分、後遺障害認定率を上げるための工夫が可能です。
その一方で、被害者請求は手間がかかる方法ともいえるのですが、弁護士がサポートすることでその負担を大きく軽減できます。

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後遺障害認定を受けるための注意点
後遺障害の認定を受けるためには、以下の点に注意する必要があります。
- 早期に医師の診断を受ける
- 後遺障害診断書を正確に作成してもらう
- 後遺障害の申請書類を丁寧に作成する
- 書類の作成や申請方法に疑問がある場合に弁護士に相談する
自賠責保険会社が認定した後遺障害等級に納得がいかない場合は、異議の申し立てが可能です。
交通事故によるモンテジア骨折で認められる後遺障害等級は?
交通事故によりモンテジア骨折を負うと、以下のような後遺障害が生じる可能性があります。
- 手首や肘、手指が動かなくなった(機能障害)
- 骨折箇所がうまくくっつかずに変形している(変形障害)
- 骨折した箇所の痛みが引かない(神経障害)
それぞれの後遺障害について、認められる可能性がある後遺障害等級を紹介します。
機能障害(手首や手指が動かしづらい・動かない)
モンテジア骨折を負ったことで、手首や肘、手指の動かしづらさが残ったり、ひどい場合は動かなくなったりする機能障害が残ることもあります。そうした機能障害は、後遺障害7級7号、8級6号に認定されるものです。
また、通常の関節より動く範囲が狭くなる可動域制限も残ることがあるでしょう。こうした可動域制限は、後遺障害10級10号、12級6号に認定される可能性があるでしょう。
等級 | 症状 |
---|---|
7級7号 | 1手の5の手指又はおや指を含み4の手指の用を廃したもの |
8級6号 | 1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの |
10級10号 | 1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの |
12級6号 | 1上肢の3大関節中の一関節の機能に障害を残すもの |
3大関節とは「肩関節」、「肘関節」、「手関節」のこと
片手の指5本すべてが麻痺などで動かなくなるか、片手の親指以外の指4本が麻痺などで動かなくなると7級7号に認定されることになるでしょう。
また、手首や肘がほとんど動かなくなるような場合、後遺障害8級6号に認定されることになります。
さらに、片方の肩・ひじ・手の関節のうち一つが半分ほどしか動かなくなれば後遺障害10級10号、4分の3以下しか動かなくなれば後遺障害12級6号に認定される可能性があるでしょう。
変形障害(変形した・変な動きをする)
モンテジア骨折を負った後、骨が正しく癒合しないことで、変形してしまうことがあります。骨折による変形障害は、後遺障害7級9号、8級8号、12級8号の認定を受けられる可能性があります。
等級 | 症状 |
---|---|
7級9号 | 1上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの |
8級8号 | 1上肢に偽関節を残すもの |
12級8号 | 長管骨に変形を残すもの |
「1上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの」とは、以下のいずれかに該当し、かつ、常に硬性補装具を必要とする場合です。
- 上腕骨の骨幹部又は骨幹端部に癒合不全を残すもの
- 橈骨及び尺骨の両方の骨幹部等に癒合不全を残すもの
「1上肢に偽関節を残すもの」とは、以下のいずれかに該当するものといいます。
- 上腕骨の骨幹部等に癒合不全を残し、常に硬性補装具を必要とはしない
- 橈骨及び尺骨の両方の骨幹部等に癒合不全を残し、常に硬性補装具を必要とはしない
- 橈骨及び尺骨のいずれか一方の骨幹部に癒合不全を残し、時々硬性補装具を必要とする
「長管骨に変形を残すもの」とは、以下のような症状などとなっています。
- 上腕骨の変形が外見からわかる
- 橈骨及び尺骨の変形が外見からわかる
- 上腕骨、橈骨、又は尺骨の骨端部に癒合不全を残す
神経障害(痛みが取れない・しびれている)
モンテジア骨折が癒合しても、痛みやしびれといった神経症状が残ってしまうことがあります。こうした神経症状は後遺障害12級13号または14級9号認定を受けられる可能性があるものです。
等級 | 症状 |
---|---|
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残す |
14級9号 | 局部に神経症状を残す |
痛みが残っていることが画像所見などから客観的に明らかにできる場合には「医学的に証明できるもの」として12級13号の認定を受けられます。
客観的な証明ができないものの、交通事故の態様・治療内容・治療中における症状の変遷などから痛みが残っていると判断できる場合には、14級9号の認定がなされるでしょう。
交通事故によるモンテジア骨折で後遺症が残ったらいくら請求できる?
後遺障害等級認定を受けることで請求額が増加
交通事故で後遺症が残った場合、後遺症の症状が後遺障害に該当すると認定されることで後遺障害慰謝料や逸失利益を請求できます。
モンテジア骨折に関する後遺障害慰謝料について
後遺障害慰謝料は、後遺障害を負ったことで生じる精神的苦痛に対する損害賠償金です。逸失利益は、後遺障害が原因で将来的に得るはずだった収入が減ったことに対する損害賠償金となります。
後遺障害慰謝料の金額は、認定された等級に応じて異なり、具体的な金額は以下の通りです。
等級 | 慰謝料額 |
---|---|
7級 | 1,000万円 |
8級 | 830万円 |
10級 | 550万円 |
12級 | 290万円 |
14級 | 110万円 |
なお相手の任意保険会社が提示してくる後遺障害慰謝料は、こうした慰謝料額よりも低額と予想されます。なぜなら、相手の任意保険会社はあくまで自社基準にのっとった金額算定をするからです。
弁護士や裁判所といった損害賠償請求の実務を知り尽くした、法的に適正な金額を算定する立場とは違うことを知っておきましょう。

そして、相手の任意保険会社の言うままに示談を受け入れると損をする可能性が高いです。弁護士を立てて増額交渉をしていく必要があります。
モンテジア骨折に関する逸失利益について
逸失利益とは、本来は得られるはずだった将来の収入が後遺障害によって減ったことへの補てんとして請求します。
逸失利益の金額は、後遺症の程度や、年齢、職業、事故前の収入などによって異なります。くわしい金額を知りたい場合には、弁護士に相談すると良いでしょう。
後遺障害等級認定を受けなくても請求できる損害
交通事故によりモンテジア骨折を負ったことで、後遺症が残った場合には、以下のような損害についても請求が可能です。
費目 | 内容 |
---|---|
治療関係費 | 治療費、入院費、通院交通費、装具代など |
休業損害 | 治療のために仕事を休んだことによる減収 |
入通院慰謝料 | 治療期間に負った精神的苦痛に対する金銭 |
物的損害 | 自動車や自転車の修理費、壊れた衣類代など |
具体的にどのような損害をいくら請求できるのかについては、専門家である弁護士に相談すべきでしょう。
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弁護士費用特約の有無 | 弁護士費用の請求先 |
---|---|
あり | 被害者の保険会社 |
なし | 被害者本人 |
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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了