交通事故の診断書がもらえなかった!整形外科で書いてくれないときの対処法は?

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岡野武志弁護士

監修者:アトム法律事務所 代表弁護士
岡野武志

交通事故の診断書がもらえなかった!整形外科で書いてくれないときの対処法は?

交通事故にあったときは、警察への届出や保険会社への請求など、いくつかの場面で医師の診断書が必要になります。

しかし時折、整形外科の医師が診断書を書いてくれないトラブルが起こることもあります。とくに多いのは、後遺障害認定に必要な「後遺障害診断書」を書いてくれないケースです。

そこで本記事では、後遺障害診断書に的をしぼり、医師が診断書を書いてくれない理由と対処法をお伝えします。あわせて、診断書の費用や必要な場面といった、交通事故の診断書について知っておきたいポイントも解説するので、ぜひ最後までご確認ください。

交通事故で医師の診断書が必要な3つの場面

(1)警察に人身事故の届出をする

交通事故でケガをした場合、警察に人身事故の届出をする必要があります。人身事故の届出には、医師が作成する診断書が必要です。

警察に提出する診断書は、初診時に医師に作成してもらいましょう。医師法では、医師は正当な事由がない限り、診断書の作成依頼を拒否できないと定められています。事故でケガをしているなら、初診時に診断書を書いてもらえないことは基本的にありません。

警察に診断書を提出せず、人身事故ではなく物損事故として取り扱われた場合、以下のようなリスクが生じます。

  • 保険会社に治療費や慰謝料などを支払ってもらえない可能性がある
  • 事故状況が詳細に記載された「実況見分調書」が発行されないため、保険会社と争いになったとき主張を立証しづらい

もし、すでに物損事故として処理されていても、診断書を提出すれば人身事故に切り替えてもらえます。ただし、事故から時間が経つと受け取ってもらえない可能性もあるため、遅くても事故から2週間以内には提出するようにしてください。

(2)保険会社に賠償を請求する

保険会社に治療費や休業損害、慰謝料といった賠償を請求する際も、医師の作成する診断書が必要になります。損害(ケガ)の有無や程度、交通事故との因果関係を証明するためです。

交通事故の治療費を保険会社から病院に直接支払ってもらえるなら、保険会社が病院から診断書を直接取り寄せてくれることが多いです。この場合、被害者が診断書の作成にかかわる必要はありません。

なお、被害者が事故相手の自賠責保険会社に保険金を直接請求するような場合では、被害者が医師に診断書の作成を依頼する必要があります。

(3)後遺障害認定の申請をする

交通事故で後遺症が残った場合、「後遺障害認定」の申請を行います。後遺障害認定とは、後遺症が一定の等級に該当すると認められる手続きのことです。後遺障害認定を受ければ、事故相手に新たな賠償を請求できるようになります。

後遺障害認定には、医師の作成する「後遺障害診断書」が必要です。後遺障害診断書には決められた書式があり、後遺症の症状や部位、検査結果、今後の見込みといった項目が記載されます。

後遺障害の認定は基本的に書面審査で行われるため、後遺障害診断書の内容はとても重要です。しかし、冒頭で説明したとおり、医師に後遺障害診断書を書いてもらえないトラブルが生じることもあります。

医師が診断書を書いてくれない理由と対処法

まだ治療を続ける必要がある

医師が後遺障害診断書を書いてくれない理由として、まだ「症状固定」に達しておらず、治療を続ける必要があると認識していることが考えられます。

症状固定とは、「これ以上治療してもケガが改善しない状態」のことです。後遺障害認定を受けるには、症状固定に達したと医師から診断されなければいけません。

交通事故にあってからあまり時間が経っていない場合は、まだ治療を続ける必要がある可能性が高いでしょう。

【対処法】医師の指示どおり治療を続ける

まだ症状固定ではないと診断されているなら、医師の指示どおり治療を続けましょう。症状固定と診断されてから、改めて診断書の作成を依頼してください。

今後の見通しをあらかじめ知っておきたいなら、医師に症状固定までどのくらい治療が必要か確認してもよいでしょう。

なお、多くの場合、後遺障害認定を受けるには6か月以上の治療期間が必要とされます。

後遺障害はないと判断されている

医師が診断書を書いてくれない理由として、後遺障害はないと判断されているケースもあります。

たとえば、むちうちで自覚症状のみが残っている場合、医師から後遺障害なしと判断されることも多いです。

また、医師が後遺障害認定にあまり詳しくなく、「重い症状でないと後遺障害とはいえない」と誤解しているケースも稀にあります。

【対処法】自覚症状を具体的に伝える

自覚症状のみ残っているため医師に後遺障害なしと判断されているなら、まずは自覚症状を具体的に伝えて症状の残存を訴えましょう。

自覚症状を伝える際は、ただ症状が続いていることを訴えるだけではなく、部位や日常生活への影響をくわしく伝えることをおすすめします。

「首にずっと違和感がある」といった抽象的な表現ではなく、「首の後ろが常に痛んでいて、下に曲げられない」「左肩から左手の小指にかけて痺れており、重いものを長時間持てない」といった具体的な表現が有効です。

【対処法】現在の症状をそのまま書いてもらう

もし、医師が「重い症状でないと後遺障害ではない」と誤解しているのならば、「症状固定と診断された現在の症状をそのまま診断書に書いてください」と依頼してみましょう。

後遺症が後遺障害であるか否かを判断するのは医師ではなく審査機関です。医師が後遺障害に該当しないと判断していても、申請すれば後遺障害認定を受けられるケースは少なくありません。

整骨院だけに通院していた

交通事故のあと整骨院だけに通院していた場合も、医師に診断書を書いてもらえないことが多いでしょう。たとえば、以下のようなケースが当てはまります。

  • 事故のあと整骨院に通い続け、後遺障害診断書が必要になってはじめて整形外科を受診した
  • 初診は整形外科で受けたが、あとはずっと整骨院に通っていた
  • 整骨院だけではなく整形外科にも通っていたが、2~3か月に1回程度だった

被害者が整骨院だけに通っていたなら、医師は事故後の経過やケガの回復度合いがわからないため、症状や今後の見込みといった項目を書くことができません。そのため、診断書を書くことを拒まれてしまうのです。

【対処法】整骨院と整形外科を併用して通院を続ける

交通事故で整骨院の施術を受ける際は、事前に医師の許可をとること、整形外科と併用して通うことが必要です。整骨院への通院がはじまったあとも、少なくとも月1度は整形外科に通い、医師による経過観察を受けてください

すでに整骨院だけに通院してしまっている状況の場合、しばらく整形外科に通院したあと改めて依頼すれば、医師に診断書を書いてもらえることもあります。ただし、事故のあと整形外科にほとんど通院していなかったケースでは難しいと言えるでしょう。

転院したばかりで情報が少ない

転院して間もない場合も、医師がこれまでの治療経過やケガの状況を十分に把握できていないため、診断書を書いてもらえないことがあります。

とくに、症状固定の間際に転院したケースでは、診断書の作成を断られることが多いです。転院を検討しているなら、可能な限り早めに行動するとよいでしょう。

【対処法】しばらく通院してから改めて依頼する

しばらく通院して治療や経過観察を受けることで、医師にケガの状態を把握してもらえます。その後、改めて診断書の作成を依頼してください。

どのくらい通院が必要かは、ケースバイケースなので一概には言い切れません。先行きが見えなくて不安なら、医師に通院が必要な期間をきいてみましょう。

【対処法】転院前の病院の協力をあおぐ

診断書を書いてもらうにあたり、転院前の病院に協力してもらうことも可能です。たとえば、転院前の病院から治療記録を取り寄せる転院前の主治医に後遺障害診断書の作成を依頼するといった手段が考えられます。

円満に転院していなかった場合、転院前の病院に積極的に協力してもらえない可能性もあります。交通事故後に転院する際は、事情をしっかりと転院前の医師に説明し、理解を得ておくとよいでしょう。

争いごとに関わるのを嫌がられている

医師が交通事故の損害賠償問題に関わりたくないと思っているため、診断書を作成してくれないケースもあります。

損害賠償問題に関わりたくない、忙しいので仕事を増やしたくないといった理由は、診断書を作成できない正当な理由とは言い難いです。しかし、後遺障害認定に理解のない医師や、非常に多忙な医師は、このような理由で診断書の作成を渋ることもあります。

説得しても診断書を書いてもらえない場合は、以下のような対処法をとってください。

【対処法】他の病院で診断書を書いてもらう

どうしても医師に診断書を書いてもらえない場合は、転院する以前の通院先に協力してもらうといった方法を検討してみましょう。

転院を検討する際は、後遺障害に理解のある病院かどうか、ホームページで調べてみてください。また、いきなり転院せずにまずはセカンドオピニオンを受けることも大切です。

【対処法】弁護士に依頼する

交通事故に精通した弁護士に依頼することも選択肢のひとつになります。

医師に診断書の必要性を理解してもらえないなら、弁護士に代わりに説明してもらうことが有効になるケースも多いです。また、被害者自身では医師に強く意見しづらいときも、弁護士に説得を代わってもらうとよいでしょう。

弁護士に依頼すれば、後遺障害診断書の内容のチェックや、後遺障害認定の手続きのサポートも受けられます。

交通事故の診断書に関するQ&A

Q1.整骨院でも診断書を書いてもらえる?

整骨院で施術を行う柔道整復師は、診断書を作成することができません。また、整骨院で作成してもらえる「施術証明書」を診断書の代わりにすることもできません。

診断書を作成できるのは医師のみです。診断書を適切に作成してもらうためにも、交通事故後の初診は病院で受け、定期的な通院も欠かさないようにしましょう。

Q2.診断書の料金は?事故相手に請求できる?

診断書の料金は病院によって異なりますが、おおむね2,000円~10,000円程度であることが多いです。

なお、診断書の費用は事故相手に請求できます。治療終了後の「示談交渉」で請求することになるので、診断書を作成してもらったときの領収書は忘れずに保管しておきましょう。

ただし、後遺障害診断書の費用は、後遺障害に認定されれば事故相手に請求できますが、後遺障害に非該当となれば自己負担となる点には注意してください。

Q3.診断書の作成にかかる期間は?

診断書の作成にかかる期間も病院によって異なります。警察や保険会社に提出する診断書の場合、即日~遅くても数日で書いてもらえることが多いでしょう。

一方、後遺障害診断書の作成にはやや時間がかかることがあります。早ければ数日程度で書いてもらえますが、遅ければ1か月程度かかることもあるでしょう。

診断書を早く提出する必要がある場合は、あらかじめ診断書の作成にどのくらいの期間がかかるか医師に確認しておけば安心できます。

まとめ

  • 交通事故の診断書は警察への人身事故の届出、保険会社への請求、後遺障害の申請時に必要
  • 診断書を書いてもらえない理由は、後遺症が残っていない、情報が少ないといったものが多い
  • 診断書を書いてもらえないときは、通院を続ける、他の病院や弁護士に協力してもらうなどが効果的
岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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