脾臓破裂の後遺症と認定基準 | 慰謝料の相場と算定基準について

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岡野武志弁護士

監修者:アトム法律事務所 代表弁護士
岡野武志

交通事故による脾臓破裂は、出血多量となり、最悪の場合ショック死するおそれがあるため、状況によっては速やかな措置を要する疾患です。

脾臓破裂の後遺症として、古くなった赤血球の除去や抗体の生成機能が損なわれ、感染症への免疫機能に大きく影響が出る可能性があります。

後遺症が残った場合、後遺障害13級11号に認定される可能性があり、後遺障害慰謝料の相場は180万円です。

今回は、脾臓破裂の症状や治療法、後遺障害認定基準、後遺障害慰謝料の相場、さらに逸失利益や示談金の内訳などを解説いたします。

脾臓破裂の症状・治療

脾臓破裂の症状

脾臓破裂の症状:循環器への影響。

脾臓は、心臓と並ぶ、代表的な循環器です。

主に抗体の生成、古くなった赤血球の除去、血液の貯蔵などの役割を担っています。

血液が多く通っている脾臓が破裂すると、出血多量となり、最悪の場合、ショック死するおそれがあるため、緊急時には速やかな措置を要する状態になります。

脾臓の役割は他の臓器で代替できるので、出血がひどい場合は脾臓を摘出することも少なくありません。

また、出血が確認できなかったり出血が少ない場合もあるので、X線やCTなどの検査で症状や出血量について把握した上で具体的な治療方法を決めます。

脾臓破裂の原因

主な脾臓破裂の原因は外傷性の事故、交通事故や転落事故、スポーツ中の衝突などです。

交通事故では、左上腹部へ直接的な衝撃を受けて、脾臓破裂を引き起こすケースがみられます。

脾臓破裂の治療

出血していない場合には、経過観察をしながら自然治癒(保存的治療)を待つことになります。

脾臓破裂による出血がみられる場合は手術となることが多いです。

出血量や損傷など症状の程度に合わせて縫合や切除、摘出手術が行われます。

脾臓を摘出しても生命維持はできることから従来は脾臓全摘出術が一般的でした。

しかし、脾臓摘出による免疫力低下から感染症が重症化しやすくなることから、近年では脾臓の機能温存を目指した部分切除術や動脈塞栓術なども行われています。

脾臓破裂の後遺症|後遺障害認定基準と慰謝料の相場

脾臓破裂の後遺症|後遺障害認定基準

脾臓破裂の後遺症が残った際には、後遺障害13級11号に認定される可能性があります。

等級認定基準
13級11号胸腹部臓器の機能に障害を残すもの

具体的には、脾臓を失った場合、13級に認定するとされています。

交通事故で脾臓破裂を負った場合、古くなった赤血球の除去や抗体の生成機能が損なわれるので、感染症への免疫機能に大きく影響がでます。

脾臓破裂により出血が多い場合、脾臓が摘出されるケースもあり、全摘出となれば13級11号に認定される可能性があります。

脾臓破裂の後遺症で後遺障害認定を受けるには?

脾臓破裂の後遺症が残った場合、後遺障害認定を受けることで後遺障害慰謝料を請求できます。

後遺障害認定を受けるには、後遺障害申請をする必要があります。

後遺障害認定の手続きの流れ

後遺障害等級認定の手続きの流れ
  • ①入通院治療後、医師から症状固定と診断される
  • ②医師に依頼して後遺障害診断書を作成してもらう
  • ③保険会社を通じて、審査機関に申請書類を提出する
  • ④審査機関で審査が行われ、保険会社を通じて結果が通知される

具体的な申請方法については、事前認定と被害者請求の2つの方法があります。

前者の事前認定とは、後遺障害診断書以外の必要書類を相手側の保険会社が用意したうえで審査を受ける方法です。

事前認定の流れ

一方、後者の被害者請求は、後遺障害診断書だけでなく、後遺障害認定に必要な書類を被害者側で用意して審査を受ける方法です。

被害者請求の流れ

被害者請求は必要書類を被害者側で準備・提出するので事前認定に比べて負担が大きいように思えます。

しかし、適切な等級に認定されるために必要な書類を自分で揃えることができるので、後遺障害認定に向けた十分な対策をすることができます。

弁護士に依頼すれば、認定に必要な書類の準備、後遺障害認定の申請手続きを一任することができるので、被害者請求であっても被害者本人の負担は最小限で済みます。

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脾臓破裂の後遺症が残った際の後遺障害慰謝料の相場

脾臓破裂の後遺症が残ったことで後遺障害認定を受けた場合、後遺障害慰謝料の相場は180万円です。

この金額は、弁護士や裁判所が用いる弁護士基準に基づいて算定された相場の金額です。

一方、交通事故後、しばらくすると相手側の保険会社から示談書(免責証書)が送付され、提示される支払い予定の慰謝料額は、180万円を下回る傾向にあります。

相手側の保険会社が算定に用いるのは、弁護士基準ではなく任意保険基準です。

慰謝料算定の3基準

  • 自賠責基準
    加害者側の自賠責保険から支払われる慰謝料の算定基準。自賠責保険会社は最低限の補償をするので、最低限の金額となる。
  • 任意保険基準
    加害者側の任意保険会社が用いる慰謝料の算定基準。自賠責基準に少し上乗せした程度であることが多い。
  • 弁護士基準(裁判基準)
    弁護士や裁判所が用いる慰謝料の算定基準。過去の判例にもとづいた法的正当性の高い基準。
慰謝料金額相場の3基準比較

慰謝料算定には3つの基準がありますが、今までの裁判例を基にした、法的根拠のある正当性の高い適正な金額は、弁護士基準での算定額です。

相手側の保険会社が弁護士基準での算定額を下回る金額を提示してきた場合、適正な金額との差額分、慰謝料を増額できる余地があります。

示談書(免責証書)が届いたらひとまず署名・返送はせず、弁護士に見せてみましょう。

弁護士であれば、提示額や算定根拠を基に弁護士基準での相場の金額や増額の見込みについてアドバイスすることができます。

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脾臓破裂の後遺症で請求できる逸失利益

脾臓破裂の後遺症が残ったことで後遺障害認定を受けた場合、後遺障害慰謝料だけでなく逸失利益も請求できます。

逸失利益とは

逸失利益とは、交通事故によって被害者が被った後遺障害のために失った、将来得られるはずであった収入のことを指します。

具体的には、事故がなければ得られたであろう将来の収入から、後遺障害による労働能力の喪失を考慮して算出される経済的損失のことです。

逸失利益は、1年あたりの基礎年収、労働能力喪失率、労働能力喪失が続く期間の中間利息を差引くための数値(ライプニッツ係数)などを考慮して算定します。

将来にわたって得られたはずの収入を対象とすることから、逸失利益は非常に高額になるケースも少なくありません。

そのため、保険会社はなるべく高額な示談金は払いたくないと感じて、基礎年収や労働能力喪失率、期間を低く見積もって支払額を抑えようとすることもあります。

後遺障害慰謝料だけでなく逸失利益についても適正な金額を受け取るためには保険会社の主張に対して合理的な反論をする必要があります。

弁護士であれば、過去の判例の知識や相談経験を活かして増額交渉を有利に進めてくれます。

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交通事故による脾臓破裂の示談金の内訳

交通事故による脾臓破裂の入通院慰謝料

交通事故による脾臓破裂で入院・通院をして治療した場合、後遺障害認定の有無にかかわらず、入通院慰謝料を請求できます。

入通院慰謝料とは、入院・通院を余儀なくされるほどのケガを交通事故で負ったことで受けた精神的苦痛に対する賠償金です。

重傷の慰謝料算定表
重傷の慰謝料算定表

慰謝料は、算定表を用いて金額を計算します。

たとえば、入院1ヶ月、通院5ヶ月で治療した場合、入院1ヶ月の縦の列と通院5ヶ月の横の列が交差する141万円が入通院慰謝料の相場となります。

同じ治療期間でも、通院だけで治療したケースより、入院もして治療したケースの方が入通院慰謝料は高額になります。

脾臓破裂の場合、手術や経過観察で入院した際には実際の入院期間も考慮しながら入通院慰謝料を算定することになります。

交通事故による脾臓破裂で請求できる示談金の内訳

交通事故で脾臓破裂を負った際に請求できるのは、慰謝料や逸失利益だけではありません。

交通事故による脾臓破裂で請求できる示談金の内訳は、以下のような費用・損害です。

交通事故示談金の内訳
  • 治療費:治療のために必要となった投薬代・手術代・入院費用など
  • 休業損害:治療のために仕事を休んだことで生じる減収に対する補償
  • その他:治療のために必要であった交通費、付添費用など
  • 物的損害:自動車や自転車の修理代、代車費用など

相手側の保険会社から届く示談書(免責証書)には支払い予定の提示額だけでなく、内訳として各損害の金額も記載されています。

一度、示談が成立してしまうと被害者側が追加で請求したい損害があっても、加害者側が支払いを拒めてしまうので、示談成立前には念入りに内訳についても確認する必要があります。

弁護士であれば各損害に見落としがないか、金額が適正か、増額の見込みがあるか、すべて確認したうえで保険会社との増額交渉をしてもらえます。

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弁護士に脾臓破裂の後遺症を相談する

アトム法律事務所の無料相談|脾臓破裂の後遺症

アトム法律事務所では、交通事故の被害者の方向けに電話・LINEでの無料相談を受け付けております。

脾臓破裂の後遺症による後遺障害申請や慰謝料増額をご検討されている方は、ぜひ弁護士に相談してみましょう。

弁護士に相談することで今後の後遺障害申請手続きや損害賠償請求の流れ、適正な慰謝料額、示談金の増額の見込みなどについて法的なアドバイスを受けられます。

まだ正式に依頼するかどうか決めかねている方でも、まずは無料相談だけ利用して弁護士に依頼するメリットがあるかどうか確認してみるのもひとつの手段です。

無料相談で無理に正式な依頼をするよう強いることもありませんので、どうぞ安心してお気軽にご連絡ください。

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弁護士費用を安くするには?

無料相談の段階から弁護士費用についてもご確認いただけるので、提示額からの増額の見込みや負担する弁護士費用から費用倒れにならないか、正式に依頼すべきかご検討いただけます。

また、弁護士費用特約を利用して弁護士費用を支払わず、あるいは抑えて弁護士に依頼する方法もあります。

弁護士費用特約とは?

弁護士費用特約とは、弁護士に支払う相談料や費用について、保険会社が代わりに負担してくれるという特約です。

負担額には上限が設定されていますが、多くのケースで生じる相談料や費用は上限の範囲内に収まるため、金銭的な負担なく弁護士への相談や依頼が可能となります。

弁護士費用特約とは

弁護士費用特約は、ご自身の自動車保険や火災保険、クレジットカードなどに付帯されていることがありますので、ご相談の際には特約が利用できないか確認してみましょう。

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代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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