外傷性散瞳による後遺障害|認定基準と慰謝料の相場

更新日:
岡野武志弁護士

監修者:アトム法律事務所 代表弁護士
岡野武志

外傷性散瞳による後遺障害

交通事故や眼への外傷により生じる外傷性散瞳は、瞳孔が過度に拡大したままの状態となる疾患です。

外傷性散瞳は、まぶしさや像のぼやけといった症状を引き起こし、日常生活や労働に支障をきたす可能性があります。治療法が限られているため、後遺障害が残るケースも少なくありません。

外傷性散瞳の後遺障害での慰謝料の相場は、110万円〜420万円です。

本記事では、外傷性散瞳の症状や治療法、後遺障害認定基準、慰謝料の相場、請求できる示談金の内訳、そして弁護士に相談することのメリットについて詳しく解説します。

外傷性散瞳の症状・治療

外傷性散瞳とは?

視覚障害の症状:ものが見えにくくなる、見えなくなる、ぼやけて見える、だぶって見えるなど。視野が狭くなるといった症状も考えられる。

外傷性散瞳(さんどう)とは、皮膚や眼球部分を貫通しない、鈍的な外傷によって散瞳(瞳孔が過度に拡大されたままの状態)が生じている疾患です。

眼球の色がついている部分である虹彩(こうさい)がカメラの絞りのように伸縮することで、一般的に黒目と呼ばれる瞳孔(どうこう)が光の加減に合わせて大きさを変えます。

正常な瞳孔は明るいところでは収縮し、過度に眩しくならないよう調整していますが、散瞳はその瞳孔の役割がうまく機能していない状態となります。

散瞳の症状として、まぶしさや像のぼやけが生じることがあります。

関連記事

複視の後遺障害を解説|交通事故で複視が残ったら

交通事故で視力低下(視覚障害)が残ったら|眼の後遺障害の認定基準

外傷性散瞳の原因

外傷性散瞳の原因として、交通事故による裂傷(れっそう)や打撲など眼への外傷が考えられます。

なかでも鈍的な衝撃により瞳孔を縮める筋肉である瞳孔括約筋(どうこうかつやくきん)に何らかの障害を負ったことが原因となることが多いです。

外傷性散瞳の治療

外傷性散瞳の治療について、主な原因となる瞳孔括約筋の損傷は時間経過によって回復するとの報告も多くありますが、根本的な治療法がないのが実情です。

時間経過によっても回復しないような大きな損傷の場合は、虹彩(こうさい)がついているコンタクトレンズを使用して過度な光を抑えることもできます。

その他の合併損傷がある場合には、その態様に合わせ異物除去や薬物療法、縫合などを行うこともあります。

外傷性散瞳の後遺障害と慰謝料の相場

外傷性散瞳の後遺障害とは?

外傷性散瞳の後遺障害が認定されるのは、後遺症によって労働に支障をきたすようなケースです。

後遺障害等級の認定を受けた場合、各等級に対応した後遺障害慰謝料や逸失利益を請求できるため、慰謝料・示談金を増額させることができます。

後遺障害認定を受けるためには、後遺障害申請を行い、後遺症の状態が認定基準を満たすと判断されて審査を通過する必要があります。

外傷性散瞳の後遺障害認定基準と慰謝料相場

後遺症として外傷性散瞳が残った場合、後遺障害11級相当、12級相当、14級相当のいずれかに認定される可能性があります。

外傷性散瞳の後遺障害認定基準と慰謝料相場

等級認定基準
慰謝料額
11級相当両眼の瞳孔の対光反射が著しく障害され、著名な羞明を訴え労働に著しく支障をきたすもの
420万円
12級相当1眼の瞳孔の対光反射が著しく障害され、著名な羞明を訴え労働に著しく支障をきたすものもしくは両眼の瞳孔の対光反射はあるが不十分であり、羞明を訴え労働に支障をきたすもの
290万円
14級相当1眼の瞳孔の対光反射はあるが不十分であり、羞明を訴え労働に支障をきたすもの
110万円

羞明とは、いわゆる「まぶしい」状態を指します。

外傷性散瞳の後遺障害慰謝料と算定基準

外傷性散瞳の後遺障害慰謝料の相場は、110万円〜420万円です。

ただし、これらの金額はあくまで弁護士や裁判所が用いる弁護士基準に基づいて算定した金額であり、実際に相手方の保険会社から提示される金額とは異なります。

慰謝料は、用いる算定基準によって金額が異なります。

慰謝料算定の3基準

  • 自賠責基準
    加害者側の自賠責保険から支払われる慰謝料の算定基準。自賠責保険会社は最低限の補償をするので、最低限の金額となる。
  • 任意保険基準
    加害者側の任意保険会社が用いる慰謝料の算定基準。自賠責基準に少し上乗せした程度であることが多い。
  • 弁護士基準(裁判基準)
    弁護士や裁判所が用いる慰謝料の算定基準。過去の判例にもとづいた法的正当性の高い基準。
慰謝料金額相場の3基準比較

弁護士基準での算定額は、今までの判例や法的根拠に基づく適正な相場金額といえます。

しかし、相手側の任意保険会社から提示される支払額は、自賠責基準での算定額を上回るものの、弁護士基準での算定額を下回る傾向にあります。

弁護士基準での算定額で慰謝料を請求するためには、保険会社に対して交通事故の状況や症状の程度に応じた、法的根拠に基づいた説得力のある主張を行い、増額するよう交渉する必要があります。

弁護士は被害者が抱えている事情や状況に類似する判例を熟知しているので、増額交渉もより有利に進めることができます。

交通事故慰謝料
無料相談

外傷性散瞳での逸失利益

外傷性散瞳の各等級の認定基準で「労働に支障をきたすもの」という条件が入っていることからも、後遺障害が認定された場合、労働能力にかかわる逸失利益の請求も検討することになります。

逸失利益とは

逸失利益とは、交通事故によって後遺症を負わなければ本来得ることができたはずの将来の利益のことです。

1年間の収入(基礎年収)、後遺症によって今までの仕事を十分にこなせず失われた労働能力(労働能力喪失率)、労働能力喪失が続く期間などの事情を考慮して金額を決定します。

逸失利益は、将来にわたる利益という性質から非常に高額になることも少なくなく、保険会社によっては支払い負担が重くなることから金額を低く見積もることがあります。

基礎年収や労働能力喪失率、期間、認定等級、減収の有無など様々な理由から保険会社は逸失利益の減額を主張するおそれがあるため、示談交渉には十分な対策が必要不可欠です。

交通事故慰謝料
無料相談

外傷性散瞳での示談金請求

外傷性散瞳での入通院慰謝料

交通事故による外傷性散瞳で入院・通院を経て治療した場合、入通院慰謝料を請求できます。

入通院慰謝料は交通事故での入通院を余儀なくされるケガによる精神的損害に対する賠償金であり、後遺障害の認定の有無にかかわらず請求することができます。

入通院慰謝料は、症状に合わせて2つの算定表を使い分けて算定します。

重傷の慰謝料算定表
重傷の慰謝料算定表
軽症・むちうちの慰謝料算定表
軽症・むちうちの慰謝料算定表

治療期間が長ければ、入通院慰謝料はその分増額されます。

また、同じ治療期間でも入院していないケースに比べて入院しているケースの方が入通院慰謝料は高額になります。

外傷性散瞳で請求できる示談金の内訳

外傷性散瞳で請求できる費用・損害は、慰謝料だけではありません。

交通事故で外傷性散瞳を負った場合、以下のような費用・損害を請求できます。

  • 治療費:治療のために必要となった投薬代・手術代・入院費用など
  • 休業損害:治療のために仕事を休んだことで生じる減収に対する補償
  • その他:治療のために必要であった交通費、付添費用など
  • 逸失利益:後遺障害により減収することとなる将来の収入に対する補償
  • 物的損害:自動車や自転車の修理代、代車費用など
交通事故示談金の内訳

ただし、示談金として提示されるこれらの費目の金額も、被害者が請求できる相場の金額を下回る傾向があります。

請求できる費目に漏れがないか、各金額は適正な相場金額といえるのか、入念に確認する必要があります。

相手側の保険会社から示談書(免責証書)が送られてきたら、弁護士に見せてみましょう。

提示されている示談金総額、内訳をもとに本当に適正な価格といえるか、増額の余地はないか、弁護士からアドバイスを受けられます。

交通事故慰謝料
無料相談

外傷性散瞳の後遺障害は弁護士に相談

外傷性散瞳の後遺障害はアトムで無料相談

外傷性散瞳の後遺障害の認定をめざしたい、慰謝料を増額させたい方は弁護士に相談してみましょう。

アトム法律事務所では、交通事故の被害者向けに電話・LINEでの無料相談を受け付けております。

弁護士に依頼することには、以下のようなメリットがあります。

  • 加害者側の保険会社との連絡を一任できるので、治療や職場復帰に専念できる
  • 後遺障害等級の認定に向けて必要な資料の収集や申請手続き、十分な対策を立ててもらえる
  • 法的な根拠に基づく説得力のある主張ができるので、慰謝料・示談金の交渉を有利に進めてもらえる

外傷性散瞳は治療が難しく後遺症が残ってしまうことも少なくない疾患であることから、特に弁護士依頼の必要性が高いケースといえます。

無料相談段階で、後遺障害認定や増額の見込み、正式に依頼した際の流れ、弁護士費用といったことをご確認いただけるので、ぜひお気軽にご相談ください。

交通事故慰謝料
無料相談

無料で弁護士に依頼する方法|弁護士費用特約

弁護士に相談・依頼できない理由のひとつとして、弁護士費用が高額になるのでないかとご不安に思われる方も少なくありません。

しかし、弁護士費用特約を利用すれば、弁護士費用を抑えて弁護士に相談・依頼ができます。

弁護士費用特約とは?

弁護士費用特約とは、弁護士に支払う相談料や費用について、保険会社が代わりに負担してくれるという特約です。

負担額には上限が設定されていますが、多くのケースで生じる相談料や費用は上限の範囲内に収まるため、金銭的な負担なく弁護士への相談や依頼が可能となります。

弁護士費用特約とは

また、特約内容によってはご自身の名義でなくてもご家族名義の弁護士費用特約を利用することができます。

弁護士費用特約の補償対象者

ご相談の際には、あらかじめ弁護士費用特約の有無をご確認いただけると、ご自身が負担する費用の目安も立てやすくなります。

交通事故慰謝料
無料相談
交通事故被害者の方に選ばれ続けた実績
アトムを選んだお客様の声
交通事故被害者の方に選ばれ続けた実績
アトムを選んだお客様の声
岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

詳しくはこちら

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

アトム法律事務所の相談窓口

事故の慰謝料を相談