頚椎損傷の後遺症|交通事故による頚椎損傷の後遺障害認定基準の解説
頚椎損傷(頚椎損傷)とは、首の骨である頚椎が損傷することをいいます。
頚椎損傷の後遺症は、手足や首の痛みなどの神経障害、首の変形障害、歩行や運動が困難になる機能障害などです。
交通事故による頚椎損傷の後遺症が残ったとして後遺障害認定を受けた場合、請求できる後遺障害慰謝料の相場は、110万円〜1,180万円です。
今回は、頚椎損傷の原因や症状、後遺症、後遺障害認定基準、各等級の慰謝料の相場、請求できる示談金の内訳や弁護士に依頼するメリットについて解説します。
目次
頚椎損傷の症状と後遺症について
頚椎損傷の原因
頚椎損傷は、交通事故、転落、スポーツ中の怪我など原因は様々です。とくに、交通事故は頚椎損傷の最も一般的な原因とされています。
交通事故では、車が外部から衝撃を受けることで首が急激に曲がったり、頸部が回転したりすることで、頚椎損傷が生じる可能性があります。そして、頸髄にまで損傷がおよぶこともあるのです。
頚椎損傷は、後遺症を残す可能性が高いため、早期に適切な治療を受けることが重要です。
頚椎損傷の症状
頚椎損傷の症状は、どの程度損傷を受けたかで異なります。以下に代表的な症状を示します。
- 手足の麻痺
- 感覚障害
- 排泄障害
- 呼吸障害
- 意識障害
- 首の痛み
- 頭痛
- 吐き気
- めまい
頚椎損傷は、後遺症が残ってしまう可能性が高い、重大なケガといえます。できるだけ早期に適切な治療を受け、リハビリを開始することが重要です。
頚椎損傷の後遺症
後遺症にも比較的軽いものから極めて深刻なものがあり、損傷の程度によって異なります。
- 神経障害(手足の麻痺、首の痛み、感覚障害)
- 変形障害(首の変形)
- 機能障害(歩行障害、呼吸障害、排泄障害)
頚椎損傷による後遺症次第では、今後の日常生活に大きな影響を与える可能性があります。専門医に相談し、適切な治療やリハビリテーションを受けることが重要です。
頚椎損傷の治療とリハビリの重要性
頚椎損傷で後遺症を残さないためにも、早期に適切な治療を受けることが重要です。適切な治療によって後遺症の程度を軽減したり、後遺症が残った場合でも日常生活への影響を少なくできる可能性があります。
頚椎損傷の治療は、損傷の程度によって様々とされています。軽度の頚椎損傷であれば、安静を続けて薬物療法で治る場合もあります。しかし、重度の頚椎損傷の場合は、手術が必要になることも十分あるでしょう。
手術では、損傷を受けた頚椎の固定や、損傷した神経の修復を目指します。そして手術後には、筋力や運動機能を回復させるためにもリハビリテーションを受けることが重要です。
頚椎損傷の治療の流れ
頚椎損傷の治療を進める流れとして、一例を示します。
- 診断
- 保存療法
- 手術
- リハビリテーション
まずはレントゲンやMRIなどの検査を行い、どの程度頚椎が損傷しているかの診断を受けます。その後、有効と判断されれば安静と薬物療法といった保存療法を進めることになるでしょう。
頚椎損傷が重度である場合は、手術という選択肢が取られる可能性もあります。手術することで、損傷した頚椎の固定や神経の修復を図るのです。
そして、手術後はリハビリテーションを受けることが重要といえます。リハビリテーションでは、筋力や運動機能の回復を目指し、日常生活への復帰を目指していくのです。
頚椎損傷は後遺症が残ってしまうリスクが高いものですが、医師の指示をよく守り、早期かつ適切な治療とリハビリに努めましょう。
専門医と施設で必要な治療を受ける
頚椎損傷の治療は、整形外科の専門医に診てもらうことが大切です。頚椎の損傷について専門的な知識と経験を持つ医師の指示のもと、まずは治療に専念していきましょう。
また、被害者の栄養管理はなされているか、日常生活への復帰を目指す看護体制になっているのか、リハビリ施設にも注目しておきたいものです。たとえば、頚椎損傷により安静にしているはずが、かえって床ずれが生じるといった事態は避けねばなりません。
適切なリハビリテーションを受ける
頚椎損傷においては、リハビリテーションを受けることが重要です。
リハビリテーションのプログラムは、被害者の損傷の程度や体力に合わせて個別に作成されます。リハビリテーションの主な内容は、次のとおりです。
- 関節の動きを維持・改善するための訓練
- ベッドから車椅子への離床訓練
- 機械・リフトを使った立位の訓練
- 食事や更衣などの日常生活の動作訓練
- 食事や飲み物をとるための摂食嚥下訓練
- 気管切開後の言語訓練
作業療法士、理学療法士など専門スタッフと共にリハビリに努めることになります。
頚椎損傷で症状固定を迎えた後にすべきこと
治療やリハビリを続けてることで頚椎損傷による症状が安定はしたものの、それ以上改善しないという状態を、症状固定といいます。
こうした症状固定という診断は、医師の見解が尊重されるものです。
医師より症状固定と診断されたならば、後遺症も含めた損害賠償の検討に移らねばなりません。
頚椎損傷の後遺障害等級と慰謝料相場
頚椎損傷の後遺症としては、神経障害、変形障害、機能障害(運動障害)が残った場合、後遺障害等級の認定を受けることができます。
後遺障害等級が認定されれば、相手側に後遺障害慰謝料を請求できます。
頚椎損傷の後遺症(1)神経障害
神経症状とは、頚椎損傷によって痛みやしびれ、めまい、吐き気などが残っている状態を指します。
頚椎損傷の後遺症として神経症状が残った場合、後遺障害12級13号あるいは14級9号に認定される可能性があります。
頚椎損傷の後遺症である神経症状の後遺障害慰謝料の相場は、110万円〜290万円です。
等級 | 認定基準 慰謝料額 |
---|---|
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの 290万円 |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの 110万円 |
12級13号と14級9号の違いは、レントゲン写真やMRI画像に異常が写っているなど画像検査の結果で神経症状が客観的に明らかであるか、という点です。
画像検査で神経症状の存在が明らかにならなかったとしても、神経学検査の結果から痛みやしびれがあるといえる場合には14級9号に認定されます。
頚椎損傷の後遺症(2)変形障害
変形障害とは、頚椎損傷によって脊柱の変形が起こり、そのまま症状固定となってしまった状態のことです。
頚椎損傷の後遺症として変形障害が残った場合、後遺障害6級5号、8級相当、11級7号に認定される可能性があります。
頚椎損傷の後遺症である変形障害の後遺障害慰謝料の相場は、420万円〜1,180万円です。
等級 | 認定基準 慰謝料額 |
---|---|
6級5号 | 脊柱に著しい変形を残すもの 1,180万円 |
8級相当 | 脊柱に中程度の変形を残すもの 830万円 |
11級7号 | 脊柱に変形を残すもの 420万円 |
後遺障害6級5号の認定基準
「せき柱に著しい変形を残すもの」とは、エックス線写真等により、脊椎圧迫骨折等を確認できる、次のいずれかを満たすものです。
- 2つ以上の前方の椎体の高さが著しく減少し、後弯(こうわん・脊椎の背中側が曲がること)が発生しているもの
- 1つ以上の椎体の前方の椎体の高さが減少し、コブ法による側弯(そくわん・腰椎が左右に曲がってしまっている状態)度が50度以上となっているもの
コブ法とは、最も傾いている頭側脊椎の上縁と最も傾いている尾側脊椎の下縁のそれぞれの延長線が交わる角度の大きさを調べる検査方法です。
後遺障害8級相当の認定基準
8級相当の中程度の変形はレントゲンなどで脊椎圧迫骨折等を確認できて、いずれかに該当するものです。
- 1つ以上の前方椎体高が著しく減少し、後弯が発生しているもの
- コブ法による側弯度が50度以上であるもの
- 環椎(第一頚椎)または軸椎(第二頚椎)の変形・固定によって次のいずれかに該当するもの。
- 60度以上の回旋位となっているもの
- 50度以上の屈曲位または60度以上の伸展位となっているもの
- 側屈位となっており、レントゲンなどによって、矯正位の頭蓋底部両端を結んだ線と軸椎下面との平行線が交わる角度が30度以上斜位となっているもの
後遺障害11級7号の認定基準
11級7号に認定されるためには、以下のいずれかの条件に該当している必要があります。
- せき椎圧迫骨折等を残しており、そのことがエックス線写真等により確認できるもの
- せき椎固定術が行われたもの(ただし、移植した骨がいずれかの脊椎に吸収された場合は認定されない)
- 3個以上のせき椎について、椎弓切除術等の椎弓形成術を受けたもの
頚椎損傷の後遺症(3)機能障害
機能障害とは、頚椎損傷が原因で首や背中が曲がりにくくなり、そのまま症状固定となってしまった状態のことです。
頚椎損傷によって運動障害が残った場合、後遺障害6級5号、8級2号に認定される可能性があります。
頚椎損傷による運動障害の後遺障害慰謝料は、830万円〜1,180万円です。
等級 | 認定基準 慰謝料額 |
---|---|
6級5号 | 脊柱に著しい運動障害を残すもの 1,180万円 |
8級2号 | 脊柱に運動障害を残すもの 830万円 |
後遺障害6級5号の認定基準
後遺障害6級5号「脊柱に著しい運動障害」を残すものとは、以下のいずれかに該当し、強直(脊椎が固くなり、可動域制限が起こること)しているケースを指します。
- 頚椎および胸腰椎のそれぞれに脊椎圧迫骨折等などが生じており、レントゲンで確認できるもの
- 頚椎および胸腰椎のそれぞれに脊椎固定術がおこなわれたもの
- 項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められるもの
後遺障害8級2号の認定基準
後遺障害8級2号「脊柱に運動障害」を残すものとは、以下のいずれかに該当するケースを指します。
- 以下のいずれかにより頚椎または胸腰椎の可動域が、参考可動域角度(可動域の正常値)の2分の1以下に制限されたもの
- 頚椎または胸腰椎のどちらかに脊椎圧迫骨折等が生じており、レントゲンで確認できるもの
- 頚椎または胸腰椎に脊椎固定術がおこなわれたもの
- 項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められるもの
- 頭蓋と上位頚椎(第一頚椎と第二頚椎)の間に著しい異常可動性が生じたもの
頚椎損傷の後遺障害申請
後遺障害認定を受けるには、後遺障害申請を行って、各等級の認定基準にあてはまるとして審査を通過する必要があります。
具体的には、以下のような方法で申請を行います。
後遺障害認定の手続きの流れ
- 入通院治療後、医師から症状固定と診断される
- 医師に依頼して後遺障害診断書を作成してもらう
- 保険会社を通じて、審査機関に申請書類を提出する
- 審査機関で審査が行われ、保険会社を通じて結果が通知されるリスト
適切な等級認定を受けるには、後遺障害診断書だけでなく後遺症の存在と症状の重さを示す書類を漏れなく用意、準備する必要があります。
どのような書類が必要か、書類作成のためにどんな検査を受けたらよいか、把握して、後遺障害認定に向けた十分な対策をしておきたい方は、ぜひ弁護士にご相談ください。
弁護士に依頼すれば、書類の準備から後遺障害申請まで必要となる手続きを一任することができます。
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交通事故で頚椎損傷になったら請求できる示談金
交通事故による頚椎損傷の入通院慰謝料
交通事故で負った頚椎損傷を入院・通院を経て治療した際には、後遺障害認定の有無にかかわらず、入通院慰謝料を請求できます。
入通院慰謝料とは、交通事故によって入院・通院を余儀なくされるほどのケガを負ったことで受けた精神的苦痛に対する賠償金のことです。
入通院慰謝料は、症状に合わせて使い分ける軽傷用と重傷用の算定表に基づいて、金額を決定します。
たとえば、交通事故で負った重傷のケガを入院1ヶ月、通院5ヶ月で治療した場合、入通院慰謝料は入院1ヶ月の列と通院5ヶ月の行が交差する141万円です。
どちらの算定表も、治療期間が長いほど慰謝料額も増額されます。
また、同じ治療期間でも通院のみで治療したケースに比べて入院もして治療したケースの方が慰謝料は高いです。
交通事故による頚椎損傷で請求できる示談金の内訳
交通事故で頚椎損傷を負った場合、請求できる費用や損害は慰謝料だけではありません。
頚椎損傷で請求できる示談金の内訳は、以下のような費用・損害が含まれています。
- 治療費:治療のために必要となった投薬代・手術代・入院費用など
- 休業損害:治療のために仕事を休んだことで生じる減収に対する補償
- その他:治療のために必要であった交通費、付添費用など
- 逸失利益:後遺障害により減収することとなる将来の収入に対する補償
- 物的損害:自動車や自転車の修理代、代車費用など
この中でも、後遺障害等級の認定によって請求できる逸失利益は将来にわたっての利益を対象としていることから高額になりやすい損害といえます。
高額であるがために、その分、支払う立場にある保険会社の負担も増えるため、保険会社はなるべく負担を減らそうと逸失利益を低く見積もることもあります。
逸失利益の他の損害も適正な金額よりも低く計算されていることは少なくないので、各損害ごとに金額や算定根拠を確認する必要があります。
相手側の保険会社から支払い予定の示談金について提示されている示談書(免責証書)が届いたら、弁護士に見せてみましょう。
免責証書の提示額を基に、相場はいくらか、相場と提示額との差はどのぐらいあるのか、増額を主張できそうな算定根拠はあるか、検討した上で保険会社との交渉の対策を進めてくれます。
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交通事故に遭ったら弁護士に相談するメリットは、以下の通りです。
- 加害者側の保険会社との連絡を一任できるので、治療や職場復帰に専念できる
- 後遺障害等級の認定に向けて必要な資料の収集や申請手続き、十分な対策を立ててもらえる
- 法的な根拠に基づく説得力のある主張ができるので、慰謝料・示談金の交渉を有利に進めてもらえる
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事故の状況や症状の程度から慰謝料の相場がいくらになるか、相手側の保険会社の提示額からどのくらい増額できるか、後遺障害認定に向けてどう対策すべきか、適切な法的アドバイスを受けられます。
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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了