大動脈解離での交通事故に遭ったら|大動脈解離の後遺障害認定基準

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岡野武志弁護士

監修者:アトム法律事務所 代表弁護士
岡野武志

大動脈解離は、大動脈が縦に裂ける重篤な疾患です。

症状は、偽腔開存型と偽腔閉塞型に分かれ、特に偽腔開存型は心タンポナーデを引き起こす危険性があります。

大動脈解離での交通事故に遭った場合、認定基準である偽腔開存型の解離が残る状態にあてはまれば、後遺障害として11級10号に認定される可能性があります。

大動脈解離の後遺障害慰謝料の相場は420万円です。

今回は、大動脈解離の症状や治療、後遺障害認定基準、慰謝料の相場、大動脈解離を弁護士に相談するメリットなどについて詳しく解説します。

大動脈解離の症状・治療

大動脈解離の症状

大動脈解離とは、大動脈が縦に裂けることをいいます。

心臓から全身に血液を送り出す人体最大の動脈である大動脈は内膜、中膜、外膜の3層で構成されており、このうち内膜に亀裂が入り、中膜が裂けた状態が大動脈解離です。

正常時に血液が通る層(真腔)だけでなく、中膜が裂けたことがきっかけで本来、血液が通らない層に血液が通ることで(偽腔)、血管が膨らむ動脈瘤(どうみゃくりゅう)が生じます。

偽腔内で血流が流れているかどうかで症状が分かれており、血流が流れているものを偽腔開存型、血栓で閉塞しているものを偽腔閉塞型と呼びます。

偽腔開存型になり、血圧に外膜が耐えられずに破れ、血管の外に出血すると、心タンポナーデ(心膜の中に血液が貯留し心臓を圧迫する状態)となり、心停止するおそれがあります。

大動脈解離の原因

交通事故における大動脈解離の原因は、胸腹部への大きな衝撃です。

バイクや自転車走行中の事故や歩行中の事故など、生身で車に衝突するような事故に限らず、自動車同士の事故でもハンドルで胸腹部を打撲することもあります(ハンドル外傷)。

大動脈解離の治療

上行大動脈(心臓の左心室から出て、大動脈弓に至るまでの大動脈の最初の部分)に解離があるかどうかで治療が大きく変わります。

上行大動脈に解離が生じているA型の場合、急死に至る合併症が生じやすいことから、緊急手術が行われることが多いです。

上行大動脈に解離がないB型の場合、痛みを和らげたり、血圧を下げるといった保存的治療が行われる傾向にあります。

また、大動脈解離によって心タンポナーデが生じている場合、心嚢穿刺ののち心膜の切開が行われるほか、心筋や弁の構造に損傷が及んでいる場合には修復が必要となります。

大動脈解離の後遺障害|認定基準と慰謝料の相場

大動脈解離で後遺障害が認定されるには

交通事故による大動脈解離で後遺障害の認定を受ければ、後遺障害慰謝料や逸失利益を請求できるため、慰謝料や示談金を増額させることができます。

後遺障害認定を受けるには、後遺障害認定の申請を行い、認定基準をクリアして審査を通過しなければなりません。

後遺障害認定の手続きの流れ

後遺障害等級認定の手続きの流れ
  • ①入通院治療後、医師から症状固定と診断される
  • ②医師に依頼して後遺障害診断書を作成してもらう
  • ③保険会社を通じて、審査機関に申請書類を提出する
  • ④審査機関で審査が行われ、保険会社を通じて結果が通知される

    大動脈解離で後遺障害認定を受けるためには、医師が作成する後遺障害診断書の記載が適切であり、認定に必要な書類がしっかり揃っていなければなりません。

    弁護士であれば、各等級の認定基準や判例を熟知しているので、後遺障害申請手続きから認定対策まで、手厚くサポートしてもらえます。

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    大動脈解離の後遺障害とは?

    交通事故で大動脈解離を負った場合、後遺障害11級10号に認定される可能性があります。

    大動脈解離の後遺障害認定基準は、以下の通りです。

    等級認定基準
    11級10号偽腔開存型の解離を残すもの

    大動脈に偽腔開存型の解離を残す場合、後遺障害11級に認定されます。

    偽腔開存型とは、大動脈解離によって生じた、本来血液が流れるべきではない偽腔部分に血液が流れている状態です。

    大動脈解離の後遺障害慰謝料

    後遺障害等級が認定されれば、各等級に応じた後遺障害慰謝料を請求できます。

    大動脈解離で後遺障害11級10号に認定された場合、後遺障害慰謝料の相場は420万円です。

    ただし、この相場はあくまで弁護士や裁判所が用いる弁護士基準での算定額であり、相手側の保険会社から提示される金額は、この相場よりも低い傾向にあります。

    保険会社は弁護士基準ではなく任意保険基準で算定するため、算定額に違いが生じます。

    慰謝料算定の3基準

    • 自賠責基準
      加害者側の自賠責保険から支払われる慰謝料の算定基準。自賠責保険会社は最低限の補償をするので、最低限の金額となる。
    • 任意保険基準
      加害者側の任意保険会社が用いる慰謝料の算定基準。自賠責基準に少し上乗せした程度であることが多い。
    • 弁護士基準(裁判基準)
      弁護士や裁判所が用いる慰謝料の算定基準。過去の判例にもとづいた法的正当性の高い基準。
    慰謝料金額相場の3基準比較

    本来、被害者が受け取れる適正な相場金額は弁護士基準による算定額であるため、任意保険基準の算定額との差額の範囲で増額する余地があります。

    慰謝料を増額するには、相手側の保険会社との増額交渉をしていくことになります。

    まずは、ご自身の後遺症の程度や事故の状況から慰謝料や示談金の相場がいくらになるか、弁護士に確認してみましょう。

    弁護士に相談すれば、提示額からどれくらい増額できそうか、どのような主張をすれば有利に交渉が進められるのか、適切なアドバイスがもらえます。

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    逸失利益|大動脈解離の後遺障害が認定されたら

    大動脈解離で後遺障害が認定されたら、後遺障害慰謝料だけでなく逸失利益も請求できます。

    逸失利益とは、交通事故で後遺症を負わなければ働いて得ることができたはずの収入を指します。

    逸失利益とは

    たとえば、今まで100%の労働能力で働けていたのに、交通事故で後遺障害を負ったことで80%の労働能力に減退し、労働能力が失われた分、収入も減ってしまうことが考えられます。

    この後遺症によって失った労働能力の割合を労働能力喪失率といいます。

    大動脈解離による後遺障害11級10号の労働能力喪失率の目安は、20%です。

    この労働能力喪失率に、1年あたりに得ていた年収(基礎年収)や労働能力が喪失する期間に対するライプニッツ係数(逸失利益から中間利息を差引くための数値)を掛けて算定されるのが、逸失利益です。

    後遺障害逸失利益の計算方法

    将来にわたって得られる利益にかかわる逸失利益は高額になることも少なくありません。

    そのため、労働能力喪失率や基礎年収・期間を低く見積もったり、そもそも収入は減収が認められないと保険会社が主張して逸失利益をなるべく払わないようにすることもあります。

    適正な逸失利益を受け取るためには、保険会社の主張に対して適切な反論をする必要があります。

    判例を熟知し、数々の交通事故案件を経験してきた弁護士であれば、法的根拠をもった、説得力のある反論をすることができます。

    後遺障害等級が認定された後も、慰謝料や逸失利益の増額交渉の際に弁護士を有効に活用すべき場面は多いです。

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    大動脈解離での交通事故で請求できる示談金

    大動脈解離での交通事故で請求できる入通院慰謝料

    大動脈解離の交通事故では、後遺障害慰謝料や逸失利益だけでなく、入通院慰謝料も請求できます。

    入通院慰謝料とは、交通事故で入院・通院を余儀なくされるほどのケガを負ったことによる精神的苦痛に対する賠償金です。

    治療期間に応じて増額される算定表を用いて金額を算定します。

    重傷の慰謝料算定表
    重傷の慰謝料算定表

    たとえば、入院1ヶ月、通院5ヶ月で治療した場合、入院1ヶ月の縦の列と通院5ヶ月の横の列が交差する141万円が入通院慰謝料の相場となります。

    大動脈解離での交通事故で請求できる示談金の内訳

    慰謝料以外にも大動脈解離で請求できる費用・損害はあります。

    以下のような費用や損害を示談金として相手側に請求できます。

    • 治療費:治療のために必要となった投薬代・手術代・入院費用など
    • 休業損害:治療のために仕事を休んだことで生じる減収に対する補償
    • その他:治療のために必要であった交通費、付添費用など
    • 物的損害:自動車や自転車の修理代、代車費用など
    交通事故示談金の内訳

    ただし、これらの損害についても弁護士と保険会社で算定根拠が異なるために算定額に違いが生じることがあります。

    保険会社から示談金の提示を受けたら、算定根拠の詳細や相場から減額された理由を聞いて、提示額が適正な金額か確認してみるのも1つの方法です。

    弁護士に依頼することで、保険会社とのやり取りを通じてどの損害について増額できそうか検討し、本来支払われるべき金額を請求してもらえます。

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    大動脈解離での交通事故に遭ったら弁護士に相談

    大動脈解離の後遺障害を弁護士に相談|無料相談窓口

    大動脈解離での交通事故に遭い、後遺障害申請や慰謝料増額をご検討されている場合、まずは弁護士に相談してみましょう。

    交通事故の被害者が弁護士に相談するメリットは、以下のような点です。

    • 加害者側の保険会社との連絡を一任できるので、治療や職場復帰に専念できる
    • 後遺障害等級の認定に向けて必要な資料の収集や申請手続き、十分な対策を立ててもらえる
    • 法的な根拠に基づく説得力のある主張ができるので、慰謝料・示談金の交渉を有利に進めてもらえる

    アトム法律事務所では、交通事故の被害者向けに電話・LINEでの無料相談を受け付けております。

    弁護士に相談するのに本当にメリットがあるのか、後遺症の程度や事故の状況からどれだけ増額できそうか、見込みや目安を聞くことができるので、今後の手続きの具体的なイメージを掴めると思います。

    無料相談の段階で、正式に依頼した際の弁護士費用についてもご確認いただけるので、回収見込み額や費用の見積もりから本格的に依頼すべきかご検討いただけます。

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    弁護士費用特約で費用を節約!

    弁護士費用特約を利用すれば、弁護士費用を支払わずに弁護士に相談・依頼することができます。

    弁護士費用特約とは?

    弁護士費用特約とは、弁護士に支払う相談料や費用について、保険会社が代わりに負担してくれるという特約です。

    負担額には上限が設定されていますが、多くのケースで生じる相談料や費用は上限の範囲内に収まるため、金銭的な負担なく弁護士への相談や依頼が可能となります。

    弁護士費用特約とは

    自動車保険だけでなく、火災保険や医療保険に特約が付帯していたり、ご自身の名義だけでなくご家族の名義でもご利用できるケースがあります。

    無料相談の際には、弁護士費用特約の有無も確認して弁護士費用がどれくらいかかるのか、節約できないか、確認してみましょう。

    岡野武志弁護士

    監修者


    アトム法律事務所

    代表弁護士岡野武志

    詳しくはこちら

    高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
    現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

    保有資格

    士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

    学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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