肝臓損傷の後遺症|交通事故で肝臓損傷を負ったら認定される後遺障害
交通事故による肝臓損傷の後遺症は、肝硬変や慢性肝炎です。
肝臓損傷の後遺症が残った場合、その症状に応じて後遺障害等級9級11号または11級10号に認定され、各等級に応じた後遺障害慰謝料を請求することができます。
肝臓損傷の慰謝料は、420万円〜690万円です。
今回は肝臓損傷の後遺症、後遺障害等級の認定基準、後遺障害慰謝料の相場、請求できる示談金の内訳について詳しく解説します。
目次
肝臓損傷の症状・治療
肝臓損傷の症状
肝臓は食道、胃、腸、膵臓などに並ぶ消化器のひとつであり、解毒作用、アミノ酸や糖質、脂質の代謝、胆汁の生成などあらゆる機能を有する臓器です。
肝臓自体は再生能力が強い臓器であり、肝動脈、門脈、肝静脈が密集しているため多くの血液が流れている臓器でもあります。
軽度の損傷であれば、肝臓自体の再生能力や豊富に流れる血液が修復を促進することで、経過観察のみで自然と治癒し、症状が改善することもあります。
一方で、腹腔内出血が生じているような重傷なケースでは、大量出血が原因でショック死につながることもある危険な状態に陥ることもあります。
肝臓損傷の原因
事故の衝撃によって大きな外力が加わったことが原因で、肝臓が損傷することが考えられます。
バイク事故や歩行中の事故など、生身で加害者側の車と接触したケースだけでなく、自動車乗車中の事故でハンドルが腹部に衝突した際に肝臓損傷を負うことがあります。
肝臓損傷の治療
致死量の出血が疑われる重度の肝臓損傷を負っているなど、緊急性の高い状況では、すぐさま手術することになります。
腹腔内の出血に対して詳細な検査を行った後、なるべく迅速に止血を行う必要があります。手術では第一に止血と汚染の除去のみを行い、損傷した臓器の修復、摘出などの根本治療に取り掛かるといった方法が選択されることもあります。
肝臓損傷の後遺症|認定基準と慰謝料の相場
肝臓損傷の後遺症とは?
肝臓損傷の後遺症として、肝硬変や慢性肝炎が生じることが考えられます。
肝臓損傷の後遺症が残った場合、症状の種類に応じて後遺障害9級11号、11級10号に認定される可能性があります。
等級 | 認定基準 慰謝料額 |
---|---|
9級11号 | 肝硬変 690万円 |
11級10号 | 慢性肝炎 420万円 |
肝臓損傷の後遺症①肝硬変(後遺障害9級11号)
肝臓損傷の後遺症として肝硬変が残った場合、後遺障害9級11号に認定されます。
肝臓損傷の後遺症で後遺障害9級11号に認定された場合、後遺障害慰謝料は690万円です。
肝硬変は、慢性肝炎などによって細胞死した肝細胞を補修する際にできる線維組織が肝臓全体に広がり、肝臓が硬く、さらには小さくなった状態を指します。
肝硬変になると、腹水(お腹が張る)、浮腫(膝から下へのむくみ)や黄疸(白目や皮膚が黄色く染まる)、食道静脈瘤の破裂による吐血、肝性脳症などの合併症が生じることが考えられます。
肝硬変で後遺障害認定を受けるには、「ウイルスの持続感染が認められる」「AST・ALTが持続的に低値である」という2つの条件を満たしていることが必要です。
肝臓損傷の後遺症②慢性肝炎(後遺障害11級10号)
肝臓損傷の後遺症として慢性肝炎が残った場合、後遺障害11級10号に認定されます。
肝臓損傷の後遺症で後遺障害11級10号に認定された場合、後遺障害慰謝料は420万円です。
慢性肝炎とは、肝臓の炎症が最低6ヶ月以上継続している症状であり、後遺障害9級11号の認定基準にもある肝硬変に進行するおそれがある疾患です。
慢性肝炎を負っても症状が出ること自体は少なく、肝硬変になってはじめて症状がはっきりと現れるケースがみられます。
慢性肝炎で後遺障害認定を受ける場合も、「ウイルスの持続感染が認められる」「AST・ALTが持続的に低値である」という2つの条件を満たしていることが必要です。
肝臓損傷の後遺障害認定の申請
肝臓損傷の後遺障害認定を受けるためには、後遺障害申請を行い、各等級の認定基準を満たして審査を通過する必要があります。
後遺障害認定の手続きの流れ
- ①入通院治療後、医師から症状固定と診断される
- ②医師に依頼して後遺障害診断書を作成してもらう
- ③保険会社を通じて、審査機関に申請書類を提出する
- ④審査機関で審査が行われ、保険会社を通じて結果が通知される
適切な等級での認定を受けるには、後遺障害診断書の記載内容や提出する必要書類に不備がないか、しっかり確認する必要があります。
弁護士に依頼すれば、必要な書類の収集や申請手続きを変わりに進めてもらえるので、後遺障害が認定されるようしっかり対策できます。
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肝臓損傷の後遺障害慰謝料|任意保険基準とは?
肝臓損傷の後遺症が残ったとして後遺障害認定を受ければ、後遺障害慰謝料を請求できます。
慰謝料の相場は、後遺障害9級11号であれば690万円、11級10号であれば420万円です。
しかし、この金額は弁護士や裁判所が用いる弁護士基準に基づいた相場の算定額であり、相手側の保険会社が提示する慰謝料額はこの相場よりも低くなる傾向にあります。
慰謝料算定の3基準
- 自賠責基準
加害者側の自賠責保険から支払われる慰謝料の算定基準。自賠責保険会社は最低限の補償をするので、最低限の金額となる。 - 任意保険基準
加害者側の任意保険会社が用いる慰謝料の算定基準。自賠責基準に少し上乗せした程度であることが多い。 - 弁護士基準(裁判基準)
弁護士や裁判所が用いる慰謝料の算定基準。過去の判例にもとづいた法的正当性の高い基準。
相手側の保険会社は任意保険基準に基づいて算定した金額を提示し、提示額が相場額であってこれ以上増額できないと主張することもありますが、交渉次第で提示額から増額させることはできます。
弁護士であれば過去の判例や事故の状況、被害者の症状から合理的な主張ができるため、交渉を有利に進められます。
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逸失利益の請求|肝臓損傷の後遺症が残ったら
肝臓損傷の後遺症が残ったとして後遺障害が認定された場合、後遺障害慰謝料だけでなく逸失利益も請求できます。
逸失利益とは、交通事故で後遺症を負わなければ働いて将来得られたはずの利益を指します。
イメージとしては、「本来の労働能力で得られたはずの収入」と「後遺症によって労働能力が喪失した後の収入」との差額分の利益が逸失利益です。
逸失利益は、もともと得ていた1年間の収入(基礎年収)、労働能力をどれだけ喪失したか(労働能力喪失率)、どこまで喪失する期間が続くか、といった事情を考慮して算定します。
交通事故による肝臓損傷で請求できる示談金の内訳
交通事故による肝臓損傷の入通院慰謝料
交通事故による肝臓損傷を入院・通院をして治療した場合、後遺障害認定の有無にかかわらず、入通院慰謝料を請求できます。
入通院慰謝料とは、入院・通院を余儀なくされるほどの交通事故のケガで負った精神的損害に対する賠償金です。
慰謝料は、算定表を用いて金額を計算します。
たとえば、入院1ヶ月、通院5ヶ月で治療した場合、入院1ヶ月の縦の列と通院5ヶ月の横の列が交差する141万円が入通院慰謝料の相場となります。
交通事故での肝臓損傷で請求できる費用・損害|示談金の内訳
慰謝料や逸失利益以外でも交通事故で肝臓損傷を負った際に請求できる費用・損害はあります。
示談金として請求できるのは、以下のような費用・損害となります。
- 治療費:治療のために必要となった投薬代・手術代・入院費用など
- 休業損害:治療のために仕事を休んだことで生じる減収に対する補償
- その他:治療のために必要であった交通費、付添費用など
- 物的損害:自動車や自転車の修理代、代車費用など
実際に相手側保険会社から届く示談書(免責証書)にも内訳として各費目と金額が記されています。
この示談書に署名し、返送すると、相手である加害者側と示談が成立したとして示談書で提示された示談金が送金される一方、被害者が相手に提示額以上の請求をすることができなくなります。
示談書が届いてもすぐに署名、返送はせず、必ず内訳をチェックして請求する損害に間違いはないか、金額が適正か確認しましょう。
弁護士に示談書を見せれば、提示額からどれだけ増額の見込みがあるか検討し、被害者が請求すべき金額を計算してくれます。
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肝臓損傷の後遺症を弁護士に相談
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肝臓損傷の後遺症を負った際は、後遺障害認定や慰謝料増額を弁護士に相談してみましょう。弁護士事務所によっては無料相談を受け付けています。
「依頼するかどうかはわからないけど慰謝料の相場や今後の手続きの流れを知りたい」という方も相談だけでもしてみることをおすすめします。
弁護士に相談することで、以下のようなメリットが得られます。
- 加害者側の保険会社との連絡を一任できるので、治療や職場復帰に専念できる
- 後遺障害等級の認定に向けて必要な資料の収集や申請手続き、十分な対策を立ててもらえる
- 法的な根拠に基づく説得力のある主張ができるので、慰謝料・示談金の交渉を有利に進めてもらえる
アトム法律事務所では、交通事故の被害者向けに電話・LINEでの無料相談を受け付けております。
無料相談やセカンドオピニオンだけのご利用でも構いません。無料相談の予約は24時間365日受け付けております。
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弁護士費用特約で費用負担なく肝臓損傷の後遺症を相談
弁護士費用特約を利用すれば、費用負担なく弁護士に相談・依頼することができます。
弁護士費用特約とは?
弁護士費用特約とは、弁護士に支払う相談料や費用について、保険会社が代わりに負担してくれるという特約です。
負担額には上限が設定されていますが、多くのケースで生じる相談料や費用は上限の範囲内に収まるため、金銭的な負担なく弁護士への相談や依頼が可能となります。
弁護士費用特約は、自動車保険だけでなく火災保険や医療保険にも付帯していることがあります。
無料相談をされる際は、弁護士費用特約が使用できないか、あらかじめチェックしておきましょう。
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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了