交通事故では国家資格をもつ施術者がいる整骨院を選ぼう|整体院は要注意
交通事故で負ったケガを治したいとき、整骨院や整体院、カイロプラクティックといった施設の利用を検討する方もいらっしゃいます。
しかし、日本の国家資格をもつ施術者がいない施設だと、事故相手からの賠償の対象にならず、治療費や慰謝料を支払ってもらえないので注意が必要です。
また、国家資格をもつ施術者がいる施設でも、事前に医師の許可を得ていなければ、ケガを治すために必要な施術と認められず、賠償の対象にならない可能性が高いでしょう。
この記事では、どのような国家資格をもつ施術者がいる施設なら賠償を受けられるか、逆にどのような施設は注意すべきかをくわしく解説しています。整形外科以外への通院を考えている方は、ぜひご一読ください。
目次
交通事故で国家資格をもつ施術者がいる整骨院を選ぶべき理由
国家資格をもつ施術者がいないと賠償の対象外
交通事故で整形外科以外に通院しようとする場合、国家資格をもつ施術者がいる整骨院を選びましょう。
国家資格をもつ施術者がいない施設を選ぶと、事故相手の保険会社から施術費を賠償してもらえませんし、慰謝料の対象期間から除外されてしまいます。
賠償の対象となる施設と、賠償の対象外となる施設は以下のとおりです。
賠償 | 施設 |
---|---|
対象 | 柔道整復師 あん摩マッサージ指圧師 はり師 きゅう師 鍼灸師 |
対象外 | リラクゼーションセラピスト カイロプラクター リフレクソロジスト |
国家資格制度が整備されていない民間療法は、施術の水準や方法が施術者によって異なります。そのため、施術に医学的な必要性や合理性があると証明することが難しく、賠償の対象にならない可能性が極めて高いのです。
国家資格をもつ施術者がいても医師の許可は必要
柔道整復師やあん摩マッサージ指圧師といった国家資格をもつ施術者がいる施設に通う場合も、医師の許可を得ていなければ、賠償の対象とならないことがほとんどです。
柔道整復やあん摩マッサージはあくまで医療類似行為であり、医師が行う医療行為とは別物になります。よって、施術に関する賠償を受けるには、施術に医学的な必要性・合理性があると医学のプロである医師に判断してもらう必要があります。
柔道整復師やあん摩マッサージ指圧師は医師ではないため、施術の医学的な必要性・合理性は判断できません。
整骨院に通いたい場合、まずは整形外科で初診を受け、医師に整骨院に通ってよいか相談しましょう。また、保険会社にも整骨院に通うことをあらかじめ伝えておくようにしましょう。
交通事故では民間資格だけの施術者は選ばない
整体院は選ばない
整体院は手技を用いた民間療法を受けられる施設です。整体院の開業にあたってはとくに資格は必要なく、施術者にも国家資格は要求されません。
よって、整体院に通う場合、基本的に賠償の対象とはなりません。
ただし、整体院によっては柔道整復師やあん摩マッサージ指圧師といった国家資格をもつ施術者の施術を受けられることがあります。その場合は賠償の対象にすることも可能です。
整体に限らず、民間療法でケガを治したいときは、無断で通うのではなく事前に医師に相談するようにしてください。施術の方法によっては、ケガの治療に悪影響を及ぼす可能性もあります。
カイロプラクティックは選ばない
カイロプラクティックも手技療法のひとつであり、脊椎といった身体の部位を調整する療法とされています。カイロプラクティックは、一部の国では国家資格制度が整備されていますが、日本では制度化されておらず、資格をもたない者でも開業できる状況にあります。
よって、カイロプラクティックに通う場合も、基本的に賠償の対象になりません。
なお、カイロプラクティックでも柔道整復師やあん摩マッサージ指圧師といった国家資格をもつ施術者の施術を受けられることがあるので、その場合は賠償の対象にできるでしょう。
リラクゼーションは選ばない
交通事故の影響と思われる肩こりや腰痛に悩んでいるとき、マッサージやリフレクソロジーといった施術を受けられるリラクゼーション施設への通院を考える方もいらっしゃいます。
リラクゼーション施設における施術も、国家資格をもつ施術者の施術でない限り、基本的に賠償の対象とはなりません。
なお、タイ古式マッサージはタイ政府によって認定される国家資格制度が存在しますが、日本においては国家資格として認められていないため、基本的に賠償の対象にはできません。
交通事故の治療・施術に関するよくある質問
Q1.整形外科と整骨院の両方に通院した方がいい?
交通事故後に整骨院に通いたいとき、整形外科と併用してよいのか迷う方もいらっしゃいます。結論からいえば、整骨院に通うときは整形外科と併用する必要があります。
整形外科と併用しなかった場合、適切に賠償を受けられないだけではなく、後遺症が残ったときに「後遺障害」に認定されず賠償額が減ってしまうといったトラブルにつながってしまいます。
整骨院に通うときも、整形外科には月1回以上の頻度で通院するようにしましょう。
交通事故で整形外科と整骨院を併用する手順や、そもそも整形外科と整骨院の違いとは何かについては、『交通事故では病院と整骨院は併用しよう|整骨院だけの通院はNG』の記事をご参考ください。
Q2.鍼灸院に行ってもいい?
鍼灸院は「はり師」「きゅう師」「鍼灸師」といった国家資格をもつ施術者による施術を受けられる施設です。よって、医師の許可を得ているならば、鍼灸院も賠償の対象になります。
鍼灸院に通う場合も、整骨院と同じように医師の許可を受け、保険会社にも伝えておくようにしましょう。
鍼灸院を選ぶときは、交通事故によるケガの施術に慣れているかどうかホームページなどを見て確認することをおすすめします。似た症例の施術経験があって心強いだけではなく、保険の請求でもスムーズに連携を取りやすいからです。
Q3.海外の国家資格でも大丈夫?
施術者がもっているのが海外の国家資格のみで、日本の国家資格ではない場合、基本的には賠償の対象になりません。
日本での国家資格が整備されていない場合、誰もが施設を開業できる状態であるため、その他の民間療法と同じく、施術の方法・水準がバラバラになっています。よって、医学的必要性・合理性が欠けるとして賠償の対象にならないことが大半なのです。
カイロプラクティック、タイ古式マッサージの施術者は、海外の国家資格をもっていても日本の国家資格をもっていないケースが多いので注意しましょう。
Q4.整骨院に通った分は慰謝料が半額になるって本当?
交通事故で整骨院に通うとその分の慰謝料が半額になるという噂もありますが、これは誤解です。
交通事故の慰謝料は、事故で受けた精神的苦痛をなぐさめるためのお金です。ケガを整形外科で治す場合も、整骨院で治す場合も、ケガによって生じている精神的苦痛は変わらないと考えられます。よって、整骨院に通った分の慰謝料が半額になることはありません。
ただし、医師の許可なく整骨院に通っていた場合は、整骨院に通っていた期間が慰謝料の対象にならない可能性が高いので注意しましょう。また、整形外科と整骨院を併用していなかった場合も、慰謝料を減らされてしまうおそれがあります。
なお、整形外科と整骨院に同日に通った場合、慰謝料が倍になるといったこともありません。同日に複数の施設に通院した場合も、通院日数は1日とカウントされるためです。
まとめ
- 交通事故では、国家資格をもつ施術者がいる整骨院を利用する
- 国家資格をもつ施術者がいる場合も、医師の許可を得ないと賠償の対象にならない
- 国家資格をもつ施術者がいない整体院・カイロプラクティックなどの施設は選ばない
- 国家資格をもつ施術者がいる整骨院に通う場合も、整形外科にも通院し続ける
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了