頚椎損傷の後遺症|治療とリハビリの重要性と交通事故の後遺障害認定

頚椎損傷(頸椎損傷)とは、首の骨である頚椎が損傷することをいいます。
頚椎は、頭部を支えたり、首の動きや体幹と頭部の連携を担ったりと、人間の体に重要な役割を果たしています。
こうした頚椎が損傷する原因や症状、考えられる後遺症を整理していきましょう。
目次
頚椎損傷の症状と後遺症について
頚椎損傷の原因
頚椎損傷の原因としては、交通事故、転落、スポーツ中の怪我など原因は様々です。とくに、交通事故は頚椎損傷の最も一般的な原因とされています。
交通事故では、車が外部から衝撃を受けることで首が急激に曲がったり、頸部が回転したりすることで、頚椎損傷が生じる可能性があります。そして、頸髄にまで損傷がおよぶこともあるのです。
頚椎損傷は、後遺症を残す可能性が高いため、早期に適切な治療を受けることが重要です。
頚椎損傷の症状
頚椎損傷の症状は、どの程度損傷を受けたかで異なります。以下に代表的な症状を示します。
- 手足の麻痺
- 感覚障害
- 排泄障害
- 呼吸障害
- 意識障害
- 首の痛み
- 頭痛
- 吐き気
- めまい
頚椎損傷は、後遺症が残ってしまう可能性が高い、重大なケガといえます。できるだけ早期に適切な治療を受け、リハビリを開始することが重要です。
頚椎損傷の後遺症
後遺症にも比較的軽いものから極めて深刻なものがあり、損傷の程度によって異なります。
- 手足の麻痺
- 感覚障害
- 排泄障害
- 呼吸障害
- 意識障害
- 歩行障害
- 認知障害
- 首の痛み
- 頭痛
- 吐き気
- めまい
頚椎損傷による後遺症次第では、今後の日常生活に大きな影響を与える可能性があります。専門医に相談し、適切な治療やリハビリテーションを受けることが重要です。
頚椎損傷の治療とリハビリの重要性
頚椎損傷で後遺症を残さないためにも、早期に適切な治療を受けることが重要です。適切な治療によって後遺症の程度を軽減したり、後遺症が残った場合でも日常生活への影響を少なくできる可能性があります。
頚椎損傷の治療は、損傷の程度によって様々とされています。軽度の頚椎損傷であれば、安静を続けて薬物療法で治る場合もあります。しかし、重度の頚椎損傷の場合は、手術が必要になることも十分あるでしょう。
手術では、損傷を受けた頚椎の固定や、損傷した神経の修復を目指します。そして手術後には、筋力や運動機能を回復させるためにもリハビリテーションを受けることが重要です。
頚椎損傷の治療の流れ
頚椎損傷の治療を進める流れとして、一例を示します。
- 診断
- 保存療法
- 手術
- リハビリテーション
まずはレントゲンやMRIなどの検査を行い、どの程度頚椎が損傷しているかの診断を受けます。その後、有効と判断されれば安静と薬物療法といった保存療法を進めることになるでしょう。
頚椎損傷が重度である場合は、手術という選択肢が取られる可能性もあります。手術することで、損傷した頚椎の固定や神経の修復を図るのです。
そして、手術後はリハビリテーションを受けることが重要といえます。リハビリテーションでは、筋力や運動機能の回復を目指し、日常生活への復帰を目指していくのです。
頚椎損傷は後遺症が残ってしまうリスクが高いものですが、医師の指示をよく守り、早期かつ適切な治療とリハビリに努めましょう。
専門医と施設で必要な治療を受ける
頚椎損傷の治療は、整形外科の専門医に診てもらうことが大切です。頚椎の損傷について専門的な知識と経験を持つ医師の指示のもと、まずは治療に専念していきましょう。
また、被害者の栄養管理はなされているか、日常生活への復帰を目指す看護体制になっているのか、リハビリ施設にも注目しておきたいものです。たとえば、頚椎損傷により安静にしているはずが、かえって褥瘡ができるといった事態は避けねばなりません。
適切なリハビリテーションを受ける
頚椎損傷においては、リハビリテーションを受けることが重要です。
リハビリテーションのプログラムは、被害者の損傷の程度や体力に合わせて個別に作成されます。リハビリテーションの主な内容は、次のとおりです。
- 関節の動きを維持・改善するための訓練
- ベッドから車椅子への離床訓練
- 機械・リフトを使った立位の訓練
- 食事や更衣などの日常生活の動作訓練
- 食事や飲み物をとるための摂食嚥下訓練
- 気管切開後の言語訓練
作業療法士、理学療法士など専門スタッフと共にリハビリに努めることになります。
頚椎損傷で症状固定を迎えた後にすべきこと
治療やリハビリを続けてることで頚椎損傷による症状が安定はしたものの、それ以上改善しないという状態を、症状固定といいます。
こうした症状固定という診断は、医師の見解が尊重されるものです。
医師より症状固定と診断されたならば、後遺症も含めた損害賠償の検討に移らねばなりません。
頚椎捻挫の後遺症で認定される後遺障害等級と賠償金
後遺症が残ってしまった場合には、後遺障害等級認定を受けることで、後遺症部分の損害賠償金の受け取りが可能です。
頚椎損傷の後遺障害等級認定
後遺症に対する等級認定は、自賠責保険の「自賠責後遺障害等級認定基準」に基づいて行われます。後遺症の等級は、損傷の程度や内容によって1級から14級まで分類されるのです。
頚椎損傷では、1級1号から12級13号まで広く認定の可能性があります。認定基準は下表の通りです。
等級 | 症状 |
---|---|
1級1号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要する |
2級1号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの |
3級3号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの |
5級2号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの |
7級4号 | 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの |
9級10号 | 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの |
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
なお、後遺症の等級認定は、相手の任意保険会社に一任するか、もしくは相手の自賠責保険会社に直接申請できます。
もっとも、後遺障害等級認定は複雑な手続きとなるため、弁護士に任せることがおすすめです。後遺症の等級認定を受ける際に、弁護士に相談するメリットを示します。
- 後遺症の等級認定に必要な書類の作成や提出をサポートしてもらえる
- 後遺症の等級認定に不服がある場合は、異議申立てにも対応してくれる
後遺症の等級認定を受けられるか、そして適切な等級で認定を受けられるかということは、交通事故の被害者にとって極めて重要なことです。なぜなら、それは賠償金額にも関わってくるからです。
頚椎損傷で後遺症が残ったときの賠償金
後遺症の等級が認定されると、後遺障害慰謝料や逸失利益などの「後遺障害への賠償金」を受けることができます。
- 後遺障害慰謝料:後遺症によって生じた精神的苦痛に対する賠償金
- 逸失利益:後遺症によって生じた将来の収入減への補てん
こうした賠償金は、頚椎損傷の治療に対する賠償金とは別に、追加で請求可能です。金額は、後遺障害等級のほか、被害者の年齢や事故前の年収などで算定します。
頚椎損傷に対する賠償金額はどうやって決める?
交通事故で頚椎損傷を負った場合、加害者に対して賠償金を請求できます。賠償金の請求は、示談交渉や訴訟など色んな方法で行うことが可能ですが、交通事故においては示談交渉から始まることが多いです。
示談交渉とは、加害者または加害者の保険会社と直接話し合い、裁判外で賠償金の金額を決める方法です。一方で訴訟とは、裁判所に申し立てることで賠償金の金額を決定してもらう方法といえます。
示談交渉は、訴訟に比べて手続きが簡単で、時間や費用も少なくて済むことが多いです。しかし、交通事故の加害者本人または加害者の保険会社と交渉がまとまらない場合もあります。
訴訟は、示談交渉に比べて手続きが複雑で、なおかる時間や費用もかかる見込みです。しかし、示談交渉がまとまらない場合や、より多くの賠償金を請求したい場合に有効になりうる方法といえます。
賠償金の交渉は弁護士へ
治療は医療の分野になりますが、賠償金の交渉は法的な分野といえます。要は、相手との損害賠償の交渉は医師ではなく、弁護士が専門家になるのです。
頚椎損傷による後遺症がのこり、賠償金の請求を行うならば、弁護士に相談してみましょう。
弁護士は、示談交渉や訴訟の手続きを代わりにおこない、被害者の利益が最大になるような活動をしてくれます。

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了