頚椎損傷の後遺症|治療とリハビリの重要性と交通事故の後遺障害認定

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岡野武志弁護士

監修者:アトム法律事務所 代表弁護士
岡野武志

頚椎損傷の後遺症

頚椎損傷(頸椎損傷)とは、首の骨である頚椎が損傷することをいいます。

頚椎は、頭部を支えたり、首の動きや体幹と頭部の連携を担ったりと、人間の体に重要な役割を果たしています。

こうした頚椎が損傷する原因や症状、考えられる後遺症を整理していきましょう。

頚椎損傷の症状と後遺症について

頚椎損傷の原因

頚椎損傷の原因としては、交通事故、転落、スポーツ中の怪我など原因は様々です。とくに、交通事故は頚椎損傷の最も一般的な原因とされています。

交通事故では、車が外部から衝撃を受けることで首が急激に曲がったり、頸部が回転したりすることで、頚椎損傷が生じる可能性があります。そして、頸髄にまで損傷がおよぶこともあるのです。

頚椎損傷は、後遺症を残す可能性が高いため、早期に適切な治療を受けることが重要です。

頚椎損傷の症状

頚椎損傷の症状は、どの程度損傷を受けたかで異なります。以下に代表的な症状を示します。

  • 手足の麻痺
  • 感覚障害
  • 排泄障害
  • 呼吸障害
  • 意識障害
  • 首の痛み
  • 頭痛
  • 吐き気
  • めまい

頚椎損傷は、後遺症が残ってしまう可能性が高い、重大なケガといえます。できるだけ早期に適切な治療を受け、リハビリを開始することが重要です。

頚椎損傷の後遺症

後遺症にも比較的軽いものから極めて深刻なものがあり、損傷の程度によって異なります。

  • 神経障害(手足の麻痺、首の痛み、感覚障害)
  • 変形障害(首の変形)
  • 機能障害(歩行障害、呼吸障害、排泄障害)

頚椎損傷による後遺症次第では、今後の日常生活に大きな影響を与える可能性があります。専門医に相談し、適切な治療やリハビリテーションを受けることが重要です。

頚椎損傷の治療とリハビリの重要性

頚椎損傷で後遺症を残さないためにも、早期に適切な治療を受けることが重要です。適切な治療によって後遺症の程度を軽減したり、後遺症が残った場合でも日常生活への影響を少なくできる可能性があります。

頚椎損傷の治療は、損傷の程度によって様々とされています。軽度の頚椎損傷であれば、安静を続けて薬物療法で治る場合もあります。しかし、重度の頚椎損傷の場合は、手術が必要になることも十分あるでしょう。

手術では、損傷を受けた頚椎の固定や、損傷した神経の修復を目指します。そして手術後には、筋力や運動機能を回復させるためにもリハビリテーションを受けることが重要です。

頚椎損傷の治療の流れ

頚椎損傷の治療を進める流れとして、一例を示します。

  1. 診断
  2. 保存療法
  3. 手術
  4. リハビリテーション

まずはレントゲンやMRIなどの検査を行い、どの程度頚椎が損傷しているかの診断を受けます。その後、有効と判断されれば安静と薬物療法といった保存療法を進めることになるでしょう。

頚椎損傷が重度である場合は、手術という選択肢が取られる可能性もあります。手術することで、損傷した頚椎の固定や神経の修復を図るのです。

そして、手術後はリハビリテーションを受けることが重要といえます。リハビリテーションでは、筋力や運動機能の回復を目指し、日常生活への復帰を目指していくのです。

頚椎損傷は後遺症が残ってしまうリスクが高いものですが、医師の指示をよく守り、早期かつ適切な治療とリハビリに努めましょう。

専門医と施設で必要な治療を受ける

頚椎損傷の治療は、整形外科の専門医に診てもらうことが大切です。頚椎の損傷について専門的な知識と経験を持つ医師の指示のもと、まずは治療に専念していきましょう。

また、被害者の栄養管理はなされているか、日常生活への復帰を目指す看護体制になっているのか、リハビリ施設にも注目しておきたいものです。たとえば、頚椎損傷により安静にしているはずが、かえって褥瘡ができるといった事態は避けねばなりません。

適切なリハビリテーションを受ける

頚椎損傷においては、リハビリテーションを受けることが重要です。

リハビリテーションのプログラムは、被害者の損傷の程度や体力に合わせて個別に作成されます。リハビリテーションの主な内容は、次のとおりです。

  • 関節の動きを維持・改善するための訓練
  • ベッドから車椅子への離床訓練
  • 機械・リフトを使った立位の訓練
  • 食事や更衣などの日常生活の動作訓練
  • 食事や飲み物をとるための摂食嚥下訓練
  • 気管切開後の言語訓練

作業療法士、理学療法士など専門スタッフと共にリハビリに努めることになります。

頚椎損傷で症状固定を迎えた後にすべきこと

治療やリハビリを続けてることで頚椎損傷による症状が安定はしたものの、それ以上改善しないという状態を、症状固定といいます。

症状固定とは何か

こうした症状固定という診断は、医師の見解が尊重されるものです。

医師より症状固定と診断されたならば、後遺症も含めた損害賠償の検討に移らねばなりません。

頚椎損傷の後遺障害等級と慰謝料相場

頚椎損傷の後遺症としては、神経障害、変形障害、機能障害(運動障害)が考えられます。後遺症の内容によって認定される後遺障害等級が異なるため、それぞれについてみていきましょう。

痛みやしびれなど神経障害の後遺障害等級

頚椎損傷により痛みやしびれが残った場合に認定されうる後遺障害等級は12級13号、14級9号です。

等級症状
12級13号局部に頑固な神経症状を残すもの
14級9号局部に神経症状を残すもの

後遺障害慰謝料の相場は下表の通り、後遺障害等級ごとに異なり、110万円~290万円が相場です。

等級慰謝料相場
12級13号290万円
14級9号110万円

ただし損傷が頸髄にまで至っていた場合、さらに重い障害がのこり、より上位の後遺障害等級認定を受ける可能性があります。

首に変形が残った場合の後遺障害等級

頚椎損傷によって骨が変形してしまった場合、脊柱の変形障害として等級認定を受けられる可能性があります。頚椎損傷による変形障害は後遺障害6級5号、8級相当、11級7号認定です。

等級症状
6級5号脊柱に著しい変形を残すもの
8級相当脊柱に中程度の変形を残すもの
11級7号脊柱に変形を残すもの

後遺障害慰謝料の相場は下表の通り、後遺障害等級ごとに異なり、420万円~1,180万円が相場です。

等級慰謝料相場
6級5号1,180万円
8級相当830万円
11級7号420万円

動かしづらさが残った場合の後遺障害等級

頚椎損傷部位に何らかの異常が残って首自体が動かしづらくなってしまう機能障害も、後遺障害等級認定を受けられる可能性があります。頚椎損傷による機能障害は、後遺障害6級5号、8級2号認定の見込みです。

等級症状
6級5号脊柱に著しい運動障害を残すもの
8級2号脊柱に運動障害を残すもの

後遺障害慰謝料の相場は下表の通り、後遺障害等級ごとに異なり、6級5号のとき1,180万円、8級2号のとき830万円です。

等級慰謝料相場
6級5号1,180万円
8級2号830万円

機能障害とは運動障害ともいわれています。

後遺障害等級が認定される流れ

後遺障害等級の認定を受ける方法には、相手の任意保険会社に任せる流れと、自分自身で相手の自賠責保険会社に提出する流れの2つがあります。

後遺障害等級はひとつ等級が違うだけで補償が大きく変わるものです。そのため、相手の任意保険会社にすべて任せきりにすることが適切とは言い切れません。

頚椎損傷で認定されうる等級は幅広いです。そのぶん、症状の内容や被害者の状況に見合った適切な等級の認定を受けるべきです。関連記事『交通事故の後遺障害等級が認定されなかった理由と防止法|結果は変えられる?』も参考に弁護士依頼も検討してみてください。

頚椎損傷でもらえるお金はどんなものがある?

頚椎損傷を負ったことでもらえるお金

交通事故で頚椎損傷を負った時の代表的な金銭を以下に示します。

  • 治療費
  • 通院交通費
  • 入通院慰謝料
  • 休業損害
  • 車両修理費
  • 代車費用

交渉次第で増額につながる可能性もありますので、相手の保険会社の言うことをただ受け入れるのではなく、一度弁護士に相談してみてください。

なお、頚椎損傷や脊髄損傷で入院・通院の治療をしたことへの痛みや不便な思いといった精神的苦痛を緩和する金銭は入通院慰謝料といわれます。

入通院慰謝料は治療期間に応じて計算しますが、相手の保険会社が提案してくる金額は日額だったり、重傷であることを考慮していなかったりと、不当に低い金額であることが多いです。それは、誰が計算するかで、同じ交通事故でも慰謝料の金額が変わることが理由です。

慰謝料金額相場の3基準比較

相場額の入通院慰謝料を請求するには、弁護士に依頼をして交渉を代わりにおこなってもらうことがポイントになります。

頚椎損傷で後遺症が残ったときの賠償金

後遺症の等級が認定されると、後遺障害慰謝料や逸失利益などの「後遺障害への賠償金」を受けることができます。

費目内容
後遺障害慰謝料後遺障害が残ったという精神的苦痛を和らげる金銭
逸失利益後遺障害により労働能力が低下して、将来的に発生する収入減への補てん

こうした賠償金は、頚椎損傷の治療に対する賠償金とは別に、追加で請求可能です。金額は、後遺障害等級のほか、被害者の年齢や事故前の年収などで算定します。

頚椎損傷に対する賠償金額はどうやって決める?

交通事故で頚椎損傷を負った場合、加害者に対して賠償金を請求できます。賠償金の請求は、示談交渉や訴訟など色んな方法で行うことが可能ですが、交通事故においては示談交渉から始まることが多いです。

示談交渉とは、加害者または加害者の保険会社と直接話し合い、裁判外で賠償金の金額を決める方法です。一方で訴訟とは、裁判所に申し立てることで賠償金の金額を決定してもらう方法といえます。

示談交渉は、訴訟に比べて手続きが簡単で、時間や費用も少なくて済むことが多いです。しかし、交通事故の加害者本人または加害者の保険会社と交渉がまとまらない場合もあります。

訴訟は、示談交渉に比べて手続きが複雑で、時間や費用もかかります。しかし、示談交渉がまとまらない場合や、より多くの賠償金を請求したい場合に有効になりうる方法といえます。

賠償金の交渉は弁護士へ

治療は医療の分野になりますが、賠償金の交渉は法的な分野といえます。要は、相手との損害賠償の交渉は医師ではなく、弁護士が専門家になるのです。

頚椎損傷による後遺症がのこり、賠償金の請求を行うならば、弁護士に相談してみましょう。

弁護士は、示談交渉や訴訟の手続きを代わりにおこない、被害者の利益が最大になるような活動をしてくれます。

頚椎損傷や脊髄損傷は弁護士に相談すべき重大事故!

アトム法律事務所では、交通事故でケガをした人を対象に無料法律相談をおこなっています。

例えばこんなことも聞ける

  • 相手の保険会社が提案してくる金額は受け入れていい?
  • 後遺障害認定の申請方法がわからない
  • 相手の保険会社の連絡がしつこくて困っている
  • アトム法律事務所に正式依頼するときの弁護士費用は?

法律相談はお電話やLINEでおこなっていますので、事務所に足を運んでいただくこともありません。お気軽にお問い合わせください。

交通事故は示談で解決を目指すことが多いことからも、裁判沙汰になれば弁護士に依頼しようとお考えの方もいるでしょう。

しかし、弁護士が入れば、示談段階からでも賠償金増額の可能性は大いにあります。弁護士依頼することに早すぎることはなく、むしろ相手方との粘り強い交渉のためには、早めの弁護士相談がおすすめです。

交通事故の弁護士費用について

交通事故の件を弁護士に依頼する場合には、弁護士費用がかかります。弁護士費用は高そうだという理由で依頼を迷っている人は、一度「弁護士費用特約」の有無を確かめてみてください。

弁護士費用特約とは、被害者の弁護士費用を保険会社が支払ってくれる特約です。保険会社ごとの約款しだいですが、法律相談料10万円、弁護士費用300万円までを補償するケースが多くなっています。

頚椎損傷の程度によりますが、多くの弁護士費用は先の補償額だけでまかなえるため、被害者は弁護士費用の自己負担をする必要がありません。

そして弁護士費用特約はケガをした本人名義に限らず、一定範囲の家族の分が使えることがあります。交通事故の弁護士費用に不安がある方は、弁護士費用特約が使えるかどうかも確かめてみましょう。

弁護士費用特約の補償対象者

そして、弁護士費用特約が使えなかったとしても、無料法律相談によって見積もりを取れば安心です。弁護士費用の見積もりをとったうえで、ご自身の賠償金増額幅と比較してみましょう。弁護士費用を支払ってもなお、増額幅が大きい場合には、弁護士を立てるメリットは多くあります。

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了