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[契約社員でも退職代行は使える?退職代行を利用するときの注意点を解説!](https://atomfirm.com/roudou/12095): 契約社員であっても、条件をクリアすれば退職代行を利用して退職可能です。 退職代行の利用を検討している方は、トラブルを防いで安心して退職するためにも、退職代行事業者の違いや退職代行の流れをしっかりと理解したうえで利用するようにしましょう。 - [ハラスメントの相談窓口5選!ハラスメントの種類と具体例も解説!](https://atomfirm.com/roudou/11975): モラハラ・マタハラ・パワハラなど、さまざまなハラスメントの相談に対応している窓口をご紹介!ハラスメントは客観的な証拠が重要です。専門家に相談して解決の糸口を探しましょう。 - [給料が振り込まれない!振り込まれるのはいつ?自分でできる対処法も解説!](https://atomfirm.com/roudou/11670): 給料が振り込まれないことでお悩みの方に向けて、給料未払い時に確認すべきポイントや自分でできる対処法を解説。未払いが続く場合や未払い給料の計算方法が分からな場合は弁護士に相談しましょう。 - [不当な人事異動を受けた!不当とされるケースや相談先を解説](https://atomfirm.com/roudou/11362): 原則として、従業員は人事異動の命令を拒否できませんが、場合によっては人事異動が不当であり、無効となる可能性もあります。 不当な人事異動でお悩みの方は、弁護士に相談することをおすすめします。 - [退職代行を使っても退職金はもらえる?弁護士が解説](https://atomfirm.com/roudou/11523): 退職代行を利用しても退職金を受け取ることができます。しかし、会社によっては退職金規定が設けられていたり、依頼する業者によっては退職金を請求できなかったりすることもあるので、退職代行を利用するときは注意が必要です。お困りの方は弁護士に相談してください。 - [ブラック企業の辞め方!退職方法とスムーズに退職する方法を解説](https://atomfirm.com/roudou/10930): ブラック企業を辞めたいという方は、弁護士への相談をおすすめします。 弁護士に依頼すれば、法的なアドバイスをもらえるほか、未払いになっている残業代や給与を請求できます。 法的トラブルに発展した場合でも、弁護士であれば対応が可能です。 - [ブラック企業とは?特徴と見極めるポイントを弁護士が解説](https://atomfirm.com/roudou/11027): ブラック企業には明確な定義はありませんが、「極端な長時間労働やサービス残業を強いている」「ハラスメント行為が横行している」などの特徴があります。 自分が入社する会社がブラック企業かどうか気になるという方は、「労働時間が適切か」「募集要項は具体的か」といったポイントを確認するようにしましょう。 もしブラック企業に勤めていて精神的に疲弊しているという方は、弁護士への相談をおすすめします。 - [退職代行で起こるトラブルとは?未然に防ぐ方法を弁護士が解説](https://atomfirm.com/roudou/10767): 退職代行によるトラブルや失敗するケースについて不安に思う方もいるのではないでしょうか。 退職代行サービスを利用することで、退職が認められなかったり、会社から損害賠償を請求されたりすることは基本的にありません。 - [退職代行の流れは?手順を弁護士が徹底解説](https://atomfirm.com/roudou/10714): 退職代行サービスを利用すれば、会社に対して代理で退職の意思を伝えてもらえ、心理的な負担を軽くできるというメリットがあります。 今回は、退職代行サービスの流れや、依頼する前にやっておくべきこと、依頼後にやるべきことについて解説します。 - [内定取り消しに対して損害賠償請求はできるのか?弁護士が解説](https://atomfirm.com/roudou/10532): 不当な理由で会社から内定を取り消されてしまったという場合には、会社からの内定取り消しを無効にできたり、損害賠償や慰謝料を請求できたりするケースがあります。 内定取り消しで損害賠償請求をおこなう場合には、弁護士への相談をおすすめします。 - [内定取り消しは弁護士に相談!メリット・デメリットを解説](https://atomfirm.com/roudou/10634): 内定取り消しについて相談したいという方は、弁護士への相談をおすすめします。 弁護士であれば、「自分が受けた内定取り消しが違法かどうか判断してくれる」「会社と代理で交渉してくれる」「適切な対応策を紹介してくれる」といったメリットがあります。 - [有給トラブルの相談は労働基準監督署がおすすめ!相談の流れを弁護士が解説](https://atomfirm.com/roudou/10332): 有給休暇について使用者側とトラブルになっている場合は、証拠をそろえたうえで労働基準監督署に相談することをおすすめします。 もしトラブルが解決しなかったという場合には、弁護士への相談も検討しましょう。 - [派遣元や派遣先から解雇と言われた!対処法を弁護士が解説](https://atomfirm.com/roudou/9867): 派遣先や派遣元で解雇を告げられても、解雇事由によっては解雇が無効になる可能性があります。 派遣会社に解雇されてしまいお悩みの方は、弁護士への相談をおすすめします。 - [解雇を無効にしたい!無効となるケースや対処法を解説](https://atomfirm.com/roudou/9840): 解雇は少なくとも30日以前に予告されていなければならず、客観的で合理的な理由がなく、社会通念上相当であると判断されない場合は、不当解雇として解雇が無効になる可能性があります。 解雇を無効にしたいという方は、弁護士への相談をおすすめします。 - [残業200時間は命の危険!過労死ラインと対処法について解説](https://atomfirm.com/roudou/10143): 残業時間が200時間におよぶというのは異常な数値です。200時間の残業は、いわゆる過労死ラインの倍以上の数値であり命の危険があります。 残業時間や退職・転職でお悩みの方は、弁護士に相談することをおすすめします。 - [労災と認定されるには?認定基準・手続き・受け取れる給付金について解説](https://atomfirm.com/roudou/8997): 労災認定とは、雇用形態に関わらず、労働者が仕事中や通勤中に負ったケガや病気により、労災保険の認定を受けることを指します。労災認定の手続きは原則本人がする必要があり、労災が認定されれば様々な給付金を受け取ることができます。 - [労働局とは?相談できることと利用するメリット・注意点を解説](https://atomfirm.com/roudou/8910): 労働局では、労働条件や職場環境についてのトラブルなどを相談でき、当事者間での問題解決が難しい場合にはあっせんを依頼することで労働トラブルの解決が期待できます。労働局に相談してもトラブルが解決できなかったという場合には、弁護士への相談をおすすめします。 - [残業代が支払われない!請求方法と流れを解説!](https://atomfirm.com/roudou/8842): 会社が残業代を支払わないことは労働基準法違反であり、残業代を請求することは正当な権利です。残業代が支払われない方は、弁護士に相談してください。 - [残業代請求で必要となる証拠を徹底解説!証拠がない場合の対処法は?](https://atomfirm.com/roudou/8963): 残業代が支払われていない場合、残業代を請求するのは労働者の権利です。ただし、残業代を請求するためには、労働者側が残業の実態を証明する証拠を揃える必要があります。この記事では残業代請求の証拠を詳しく解説しています。 - [未払いの給料を請求する方法は?流れと注意点を弁護士が解説](https://atomfirm.com/roudou/8755): 未払いになっている給料を会社に請求する際には、会社に請求書を送る、労働基準監督署に申告する、法的手続きをとる、といった手段が考えられます。 弁護士に依頼すれば、未払い給料の請求をスムーズにおこなうことができます。 - [残業代請求で負ける5つのケース!敗訴を防ぐポイントを弁護士が解説](https://atomfirm.com/roudou/8871): 残業代請求で負けてしまう主なケースや、残業代請求で負けないよう有利に進めるためのポイント、残業代請求で負けてしまったときに備えて知っておくべきことを解説します。 - [労働基準監督署は電話で相談できる!相談のポイントを解説](https://atomfirm.com/roudou/8781): 労働基準監督署に電話で相談をする際には、夜間や休日での相談が難しいこと、ハラスメントなど個人間での問題の対応はできないといった点に注意する必要があります。 弁護士に相談すれば、労働トラブルについて労働者側の味方として動いてくれるというメリットがあります。 - [退職トラブルの相談窓口3選!よくある相談事例も紹介](https://atomfirm.com/roudou/8820): 退職トラブルの相談窓口と退職トラブルのよくある質問をご紹介しました。法律上のルールなども解説しているので、退職トラブルでお悩みの方はご紹介した窓口に相談してみましょう。 - [退職代行を利用しても残業代は請求できる?【弁護士が解説】](https://atomfirm.com/roudou/7058): 弁護士に依頼すれば、退職代行と同時に残業代を請求することができます。退職代行を利用して残業代の請求をお考えの方は弁護士に相談してください。 - [【テンプレートあり】残業代請求書(内容証明)の書き方・送付方法を解説!](https://atomfirm.com/roudou/6884): 残業代請求で内容証明を利用することにはメリットがありますが、形式や内容など押さえておくべきポイントを守ることが重要です。弁護士に依頼して作成してもらうメリットも大きいため、検討しましょう。 - [労働基準法による残業の規制を解説!上限や残業代の決まりとは?](https://atomfirm.com/roudou/6885): 労働基準法には、残業についていくつかの規制が定められています。違反には罰則もあるため、困ったら労働基準監督署や弁護士といった第三者に相談しましょう。 - [保育士の残業が多いのはなぜ?平均残業時間は?サービス残業への対処法を解説](https://atomfirm.com/roudou/6886): 残業に悩む保育士にとって、残業に関する法的な制度を知っておくことが重要と言えます。残業問題に悩んだ場合には労働基準監督署に相談する、弁護士へ相談するなどの対処法を検討しましょう。 - [未払賃金立替制度はいつもらえる?利用条件や手続きの流れを解説](https://atomfirm.com/roudou/6877): 未払賃金立替制度は倒産した場合に未払いとなっている賃金を国が支払ってくれる制度です。支払いの対象や上限、確定申告の必要性など未払賃金立替制度の疑問について網羅しています。 - [退職金未払いの無料相談窓口は?退職金が支払われないときの対処法](https://atomfirm.com/roudou/6878): 未払い退職金の請求は、未払いを明らかにする証拠集めがポイントです。就業規則に記載があれば会社に退職金支払い義務があることを証明できます。会社と直接交渉しても退職金が支払われないときは、弁護士など専門家に相談してみましょう。 - [みなし残業とは?違法になるケースや違法な残業への対処法](https://atomfirm.com/roudou/6879): みなし残業は、あらかじめ決められた一定時間の残業代を、給与に含めて支払う制度です。法律によって比較的厳しい導入の条件が定められているため、違法の疑いを持った場合には弁護士などの専門家に相談しましょう。 - [残業代請求をしたら報復される?予想される行為と対策を弁護士が解説](https://atomfirm.com/roudou/6873): 残業代請求で報復を受けるかもしれないと不安になっている方に向けて残業代請求によって予想される報復行為や、対処法について解説します。 - [残業は1分単位での計算が原則!残業代の計算方法も解説](https://atomfirm.com/roudou/6874): 残業は1分単位で計算しなくてはいけません!残業時間の計算方法について法的な仕組みを解説しています。会社は残業を正確に計算する義務を負います。残業代の計算方法のほか、1分単位で記録されていない場合の対処法も網羅しています。 - [退職後に給料が振り込まれない!未払い給料の請求方法や期限を解説](https://atomfirm.com/roudou/6875): 退職後に給料が支払われない方に向けて未退職後の未払い給料について解説。未払い給料は、退職後でも請求できます。未払い給料の時効は3年であるため、早めに請求することがおすすめです。 - [裁量労働制だと残業代が出ない?計算や請求方法を解説](https://atomfirm.com/roudou/6867): 裁量労働制の残業代について解説。裁量労働制であっても時間外労働の割増はきちんと計算される必要があります。裁量労働制であっても、残業代を請求できるケースがあります。裁量労働制の残業でお悩みの方は弁護士に相談してください。 - [過労死ラインの残業時間は月80時間以上。長時間労働の違法性を解説](https://atomfirm.com/roudou/6869): 過労死ラインとなる残業時間は1か月100時間もしくは2~6か月平均80時間です。過労死ライン超えの残業をさせられたときの相談先・対処法や集めるべき証拠や相談先も紹介しています。 - [残業代請求は退職後でも可能!注意点や退職後の証拠の集め方を解説](https://atomfirm.com/roudou/6864): 残業代請求は退職後でも可能です。残業代請求をするための法的な要件や時効について解説。退職後のの残業代請求はなるべく早急に行うべきです。証拠の収集についての注意点も解説しています。 - [未払い残業代の遅延損害金はいくら?付加金についても解説](https://atomfirm.com/roudou/6857): 未払い残業代における遅延損害金について解説!その計算方法を具体例を挙げてみていきます。また、残業代未払いに付加されるお金についても解説。 - [残業代未払いは労基署に相談できる?弁護士との役割の違い](https://atomfirm.com/roudou/6858): 未払い残業代は労働基準監督署に相談したら解決するのかを徹底解説。労基署の仕組みや役割をについてご紹介しています。未払い残業代でお悩みの方は、労基署・弁護士など適切な窓口に相談してください。 - [変形労働時間制とは?制度の内容と残業代についてわかりやすく解説](https://atomfirm.com/roudou/6860): 変形労働時間制は、法定労働時間を業務の繁閑に合わせて変形させることのできる制度であり、残業をなくす・残業代を支払わないといった制度ではありません。残業代の未払いでお困りの方は弁護士に相談してください。 - 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[サービス残業の残業代を請求する方法!請求の手順を解説](https://atomfirm.com/roudou/6815): サービス残業の残業代を請求する方法は、裁判や労働審判など複数あります。また、証拠となる資料の収集も重要です。そのため、まずは弁護士に相談することが効果的でしょう。 - [36(サブロク)協定とは?ポイントと残業時間との関係について解説](https://atomfirm.com/roudou/6797): 36協定とは、労働者に法定労働時間を超えて労働させたり、休日労働をさせたりするときに結ぶ労使協定のことをいいます。 「36協定を結んではいるが残業代が出ない」といったトラブルでお悩みの方は、弁護士への相談をおすすめします。 - [固定残業代の計算方法を弁護士が解説!超過分の残業代は請求できる!](https://atomfirm.com/roudou/6792): 固定残業代が適法となるためには条件があり、固定残業代の計算は重要です。また、固定残業代は残業代未払いのトラブルが発生しやすいため、お困りの方は弁護士に相談することが必要です。 - [残業代が出ないのは違法?職種や勤務形態ごとに残業代が支払われるか解説](https://atomfirm.com/roudou/6794): 残業代の未払いは、よくある労働問題の1つです。残業代が出ていない人は、会社からの言葉を鵜呑みにせず、本当に残業代がもらえないのかを確認してみましょう。 - [残業60時間がきつい!残業代や違法となるケースについて解説](https://atomfirm.com/roudou/6795): 月に60時間を超える残業を何か月も続けているという場合は、36協定を結んでいたとしても違法である場合があります。 残業代や残業時間についてお困りの方は、弁護士への相談をおすすめします。 - [残業80時間はきつい…過労死ラインや違法となるケースについて解説](https://atomfirm.com/roudou/6796): 月に80時間を超える残業をおこなっているという場合は、過労死ラインに該当する可能性があります。 残業時間や残業の違法性についてお悩みの方は、弁護士への相談をおすすめします。 - [退職代行を弁護士に依頼するメリットは?費用・代行業者との違いまで完全解説!](https://atomfirm.com/roudou/6787): 退職代行を弁護士に依頼すると、弁護士法違反(非弁)のリスクがなく、トラブル化した時には審判や訴訟に移行できます。労働問題に精通していて、退職代行の実績が豊富な弁護士事務所へ退職代行を依頼しましょう。 - [退職代行の相談時に確認すべき内容や選び方を解説!](https://atomfirm.com/roudou/6788): 退職代行サービスに相談する際に確認しておくべき内容や、退職代行サービスの種類と選び方を詳しく解説。退職代行を弁護士に依頼すれば、未払いの賃金や残業代の請求、パワハラやセクハラに対する慰謝料請求など、さまざまなトラブルにも対応できます。 - [残業代の正しい計算方法とは?基本から応用的な計算まで徹底解説!](https://atomfirm.com/roudou/6791): 残業代の計算方法は法令で決まっており、内容も複雑です。基本的には残業代単価×残業時間数から計算されることは押さえつつ、自分の残業代額に疑問を持った場合には専門家へ相談することが重要です。 - [残業100時間は危険な数値!過労死ラインや違法となるケースについて解説](https://atomfirm.com/roudou/6785): 100時間という残業時間は法律でも禁止され、心身の健康にも被害が生じかねない時間数です。 残業時間や残業の違法性についてお悩みの方は、弁護士への相談をおすすめします。 - [退職代行サービスとは?メリット・デメリットや選び方を弁護士が解説](https://atomfirm.com/roudou/6786): 退職代行サービスについて徹底解説!退職代行の種類とは?メリット・デメリット、利用のリスクについてもわかります。実際に利用したときの手続きの流れも網羅。具体的な相談先も紹介! - [会社から突然解雇されたらどうする?違法な解雇への対処法や相談先は?](https://atomfirm.com/roudou/6778): 突然の解雇は無効となりやすく、手続的にも違反が起きやすいものです。しかし、わずかながら違法とならない場合もあり、迅速な行動も求められるため、突然の解雇に遭った場合には、解雇理由を確認したうえで弁護士に相談してください。 - [有給休暇が自由に取れない!ポイントと対処法を弁護士が解説](https://atomfirm.com/roudou/6773): 有給休暇は法律で与えられた労働者の権利であり、有給休暇の申請を拒否することは「違法行為」です。上司から有給休暇の取得を拒否された場合は、社内窓口などに相談してしっかりと対応することをおすすめします。 - [外資系企業でリストラされそう!対処法と弁護士に相談するメリット](https://atomfirm.com/roudou/6774): 外資系企業でのリストラでは、パッケージという金銭などの条件が提示されることがあります。パッケージ内容が適切であるかどうかの判断は、弁護士に相談することをおすすめします。 - [解雇予告通知書とは?受け取った時に確認すべきことを解説!](https://atomfirm.com/roudou/6764): 解雇予告通知書について徹底解説!解雇の証拠になる?解雇理由証明書との違いとは?不当解雇されてしまった場合の撤回や慰謝料請求の方法についても解説しています。 - [労働審判は自分でできる?自分でやる方法とメリット・デメリット!](https://atomfirm.com/roudou/6744): 労働審判とは、個人の労働者と事業主の労働問題を解決するための制度です。弁護士に依頼せず自分でおこなう場合のメリット・デメリットについて解説します。 - [労災事故の慰謝料は会社に請求できる?労災保険と慰謝料の違い](https://atomfirm.com/roudou/6741): 労災の慰謝料は、労災保険では支払われないため、会社などに請求する必要があります。労災の慰謝料でお悩みの方は弁護士に相談してください。 - [最短で退職したい!退職届を出して次の日から行かないことはできる?](https://atomfirm.com/roudou/6725): 最短で退職したい方に向けて退職届を出して次の日から会社に行かずに退職する方法を解説。有給休暇を消化すると言った方法により、明日から会社に行かずに退職できます。 - [セクハラ被害の相談ができる無料窓口7選!抱え込まずに相談しよう](https://atomfirm.com/roudou/6717): セクハラの無料相談窓口を7つご紹介。セクハラの定義と対価型と環境型の違いも解説しています。セクハラ被害でお悩みの方は、弁護士、公的機関などの無料相談窓口に相談してください。 - [上司をパワハラで訴える方法は?訴える際に必要な証拠を解説](https://atomfirm.com/roudou/6707): パワハラを受けている場合には、すぐに裁判を起こすのではなく、最終手段として裁判を検討しましょう。 パワハラを訴えるためには、会話の音声やメールのやり取りなどの客観的な証拠が必要です。証拠を収集し、どのような対処法を取るべきか弁護士しましょう。 - [労働問題を依頼するときの弁護士費用は?トラブル別の費用と相場を解説](https://atomfirm.com/roudou/6705): 労働問題を依頼するときの弁護士費用は、トラブルの内容によってまちまちですが、初回相談料無料の弁護士事務所に相談するなどさまざまな方法で安く抑えられる可能性があります。 労働トラブルでお悩みの方は、まずは弁護士に相談することをおすすめします。 - [マタハラは弁護士に相談!マタハラの種類やポイントを解説](https://atomfirm.com/roudou/6698): マタニティハラスメント(マタハラ)とは、労働者に対し、妊娠や出産・育児休暇などを理由に、解雇や雇い止め・降格などといった不利益な取り扱いをおこなうことをいいます。 マタハラで不利益な取り扱いを受けたり働けなくなったりした場合には、弁護士に相談することをおすすめします。 - [ブラック企業を訴えたい!訴えることができるケースや相談窓口を解説](https://atomfirm.com/roudou/6690): ブラック企業を訴えたいという方は、まず弁護士をはじめとした相談窓口に相談することをおすすめします。 ブラック企業を訴えられるケースには、残業代未払いやハラスメント行為などがありますが、弁護士に依頼すれば、相談内容の違法性の有無の判断をしてくれるほか、代理人として本人の代わりに会社と交渉をしてくれます。 - [労働基準監督署に通報!その後はどうなる?会社にバレる?](https://atomfirm.com/roudou/6680): 労働基準監督署に通報するか悩んでいる方に向けて、労働基準監督署に通報した後、どうなるのかを詳しく解説しています。相談・通報したことにより不利益を被る可能性についても解説しています。 - [未払い残業代を請求する場合の流れと注意点を解説!](https://atomfirm.com/roudou/6673): 未払い残業代の請求する場合の流れや注意点を解説しました。残業代請求には複雑な計算や法的トラブルに発展するおそれもあることから、残業代請求をお考えの場合は弁護士に相談してください。 - [給料未払いの証拠がない!泣き寝入りを防ぐための対処法を解説!](https://atomfirm.com/roudou/6638): 給料の未払いの証拠がない場合にどのように未払い給料を請求すればいいのか解説。手元に証拠がなくても、弁護士に依頼して開示請求を行うなどの手段もあります。給料未払いでお困りの方は弁護士に相談してください。 - [会社を辞めたいのに辞めさせてくれない時はどうする?対処法を解説!](https://atomfirm.com/roudou/6633): 会社を辞めたくても辞めさせてくれない場合の法律問題や、労働者がとりうる手段について解説。法律上、労働者は辞める意思を伝えてから2週間が経過すれば退職できます。 - [労働問題はどこに相談すればいい?相談窓口ごとの違いを解説](https://atomfirm.com/roudou/6623): 労働問題でどこの相談窓口に相談すればいいかお悩みの方に向けて、相談窓口のちがいやポイントを解説しています。個別の事案に対して解決をお望みの方は弁護士への相談がおすすめです。 - [【弁護士解説】就業規則を無視して退職できるのか](https://atomfirm.com/roudou/6609): 「退職の申告は3か月前まで」といった就業規則を無視して退職できるか解説。正社員のような無期雇用の場合は、2週間前までに退職を申告すれば就業規則を無視して退職できます。 - [パワハラなどのハラスメントは弁護士に相談!メリットとデメリットを解説](https://atomfirm.com/roudou/6610): パワハラなどのハラスメントにお悩みの方は、弁護士に相談することをおすすめします。弁護士に相談すれば代理人として会社との交渉や、損害賠償請求などの法的な手続きを依頼することが可能です。 - [懲戒解雇されると給料はどうなる?解雇予告手当はもらえる?](https://atomfirm.com/roudou/6567): 懲戒解雇されると給料はどうなるのか、解雇予告手当はもらえるのか解説。懲戒解雇と給料は別の制度であるため、労働者はそれまでに働いた給料は受け取ることができます。 - [会社に労災隠しをされてしまった!労災隠しの対処法を解説](https://atomfirm.com/roudou/6571): 「労災隠し」は犯罪行為であり、会社から「労災隠し」をされていると感じた場合には、労働基準監督署に相談してみることをおすすめします。 対処法としては、労災指定病院を受診したり、健康保険を使わずに治療を受けたりするといったことが挙げられます。 - [パワハラを弁護士に相談するメリット・デメリット、費用を解説!](https://atomfirm.com/roudou/6565): パワハラを弁護士に相談する際のメリット・デメリットを解説。相談には費用が発生することもありますが、法的な観点から対処法のアドバイスをもらえます。お悩みの方は弁護士に相談しましょう。 - [パワハラの相談ができる無料窓口5選!相談前に準備すべき事も紹介](https://atomfirm.com/roudou/6559): 「上司から暴言を受けている」「上司が全く仕事を与えてくれない」など、上司からのパワハラ行為にお悩みの方はいませんか? パワハラを受けた時、誰かに相談したいと思ってもどこに問い合わせすべきか分からないですよね。 今回はパワハラの相談先として適切な機関を5つご紹介します。どれも無料で相談を受け付けている窓口なので、ぜひ参考にしてみてください。 目次無料でパワハラ相談ができる相談先5選厚生労働省総合労働相談コーナーNPO法人労働組合 作ろう!入ろう!相談センター法テラスこころの耳法務省みんなの人権110番パワハラは弁護士に相談できる?パワハラ相談前に準備しておくことまず現在の状況やパワハラによって生じた影響を整理する証拠を集めるまとめ 無料でパワハラ相談ができる相談先5選 厚生労働省総合労働相談コーナー 総合労働相談コーナーでは、労働トラブルに関する悩みをワンストップで解決することが可能です。 パワハラのほか、解雇や雇い止め、賃金引き下げ、採用などのあらゆる労働問題に対し、面談もしくは電話で話を聞いてもらえます。 総合労働相談コーナーは、全国の労働基準監督署や都道府県労働局の中に設置されているため、お住まいの地域にかかわらず、対面での相談が受けやすいのがメリットです。 また、相談には料金が発生せず、予約も必要ありません。相談者のプライバシーの保護にも配慮してくれるので、安心して相談できるでしょう。 参考:厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」 NPO法人労働組合 作ろう!入ろう!相談センター 労働組合作ろう!入ろう!相談センターは、様々な労働問題の相談を受け付けているNPO法人です。 会社で従業員として働く人であれば誰でも相談ができ、中立的立場でなく、完全に労働者側にたった労働相談をおこなうところが特徴です。 相談方法には電話・メール・来所(要予約)の3つのやり方があります。 電話や面談の場合、平日の午前9時~午後5時までの営業時間内での対応になるので注意してください。 また電話や面談では、事前に電話予約が必要になります。一方、メールに関しては、営業時間外でも随時受け付けています。 ただし、職場のパソコンから問い合わせメールを送信することがないよう注意が必要です。女性の相談員も在籍しているので、女性の方も気兼ねなく相談できるでしょう。... - [セクハラで慰謝料を請求したい!慰謝料の相場や用意すべき証拠を解説](https://atomfirm.com/roudou/6543): セクハラで辛い思いをしているのであれば、慰謝料の請求を検討してみてはいかがでしょうか。この記事では、セクハラで慰謝料を請求するための基本的な知識と、準備すべき事項を紹介します。 - [労使協定とは?内容や種類、違反したときの罰則を解説](https://atomfirm.com/roudou/6544): 労使協定とは、従業員の代表者と使用者が書面で約束をすることで、「原則では認められていないことを例外的にできるようにする」効果を持たせる協定のことです。 もし「会社が労使協定を無視している」「会社が36協定を届け出ずに残業をさせている」などのトラブルでお悩みの方は、弁護士に相談することをおすすめします。 - [セクハラで裁判を起こしたい!セクハラ訴訟の流れと訴えるときのポイント](https://atomfirm.com/roudou/6545): セクハラでの訴訟・裁判でお悩みの方に向けて、慰謝料や会社の債務不履行に対する損害賠償を解説しています。「弁護士の選定」「証拠集め」「請求内容の決定」などの重要ポイントもまとめています。 - [労災で後遺障害を認定してもらうためには?条件と手順を解説](https://atomfirm.com/roudou/6534): 労災による後遺障害を認定してもらい障害補償給付を受給するために必要な条件と手順を解説しています。後遺障害の認定が受けられなかったことでお悩みの方は弁護士に相談してください。 - [給料の未払いは弁護士に相談!依頼するメリットと費用を徹底解説](https://atomfirm.com/roudou/6526): 未払い給料の請求を弁護士に依頼するメリットや弁護士費用を解説しています。費用面や手続きの流れなど弁護士相談の不安がある方はこの記事を読んで弁護士に相談しましょう。 - [労働組合に相談できることと相談の流れ【弁護士が解説】](https://atomfirm.com/roudou/6520): 労働組合とは、労働者の地位向上のための団体のことを指します。 労働組合は企業側と団体交渉をおこない、さまざまな労働トラブルを解決に導く手助けをしてくれます。 - [会社が労災申請を嫌がるのはなぜ?違法性と対処法を解説](https://atomfirm.com/roudou/6503): 会社が労災の認定を嫌がる理由を、労災の認定によって会社が受けるデメリットから解説しています。労災を隠蔽することはれっきとした犯罪です。もし社内で労災隠しが発生していたら、適切な方法で対処しましょう。 - [セクハラを弁護士に相談する|費用・準備するもの・注意点を確認!](https://atomfirm.com/roudou/6504): この記事では、セクハラを弁護士に相談する場合の費用についてや、弁護士に相談するにあたって準備しておくべきこと・注意点等を確認し、セクハラを「弁護士に相談する」ことへの不安を取り除いていきます。 - [労災の相談はどこでできる?困ったときの相談先を紹介!無料の窓口も!](https://atomfirm.com/roudou/6483): 労災の相談はどこでできる?困ったときの(無料)相談先を紹介! 労災について会社以外に相談すべきケースと相談先について解説します。いざというときに困らないように覚えておきましょう。 - [自己都合退職と会社都合退職の違いは?知らないと損する両者の違い](https://atomfirm.com/roudou/6486): 自己都合退職と会社都合退職の違いを解説。懲戒解雇、退職勧奨、派遣切りなどの扱いもご紹介しています。自己都合退職と会社都合退職では会社都合退職の方が失業手当などの面でメリットとなります。 - [不当解雇は弁護士に相談すべき?相談するときのポイントを解説](https://atomfirm.com/roudou/6479): 不当解雇について弁護士に相談する方法を紹介!費用相場は?相談料、着手金、成功報酬など費目ごとに解説。弁護士相談成功のコツも伝授!弁護士相談のメリットとは? - [労災は弁護士に依頼するべき?気になる労災の手続きを紹介](https://atomfirm.com/roudou/6480): 労災保険給付を受け取るためにはどのような手続が必要になるのでしょうか。 労災にあった場合には弁護士に依頼するべき理由についても解説しています。 - [労働条件が不利益に変更(賃金の減額など)されたら?相談窓口を解説!](https://atomfirm.com/roudou/6448): 会社を存続させるために労働条件が不利益変更される場合があります。この記事では、不利益変更とは何か、不利益変更の条件と相談窓口を解説します。 - [就業規則を見たことがない!就業規則のない会社は違法?](https://atomfirm.com/roudou/6435): 会社の就業規則を見たことがありますか。見ようと思っても見れない場合,会社の規模によっては違法となる場合があります。この記事では、就業規則とは何か、就業規則がない場合に想定される問題ついて解説します。 - [労働基準監督署に相談できる内容とは?メリット・デメリットから徹底解説](https://atomfirm.com/roudou/6436): 労働基準監督署は会社が労働基準法等を違反していないかチェックしている機関です。今回の記事では、労働基準監督署に相談できることやできないこと、活用するメリット・デメリットについて解説します。 - [試用期間で退職することは可能!辞めるときに知っておくべきこと](https://atomfirm.com/roudou/6430): 試用期間中に会社の社風や業務内容が自分とは合わないと感じ、試用期間で辞めたいとお考えではないでしょうか。この記事では、試用期間で辞めるメリット、デメリットや、辞める場合の手順と伝え方等をご紹介します。 - [退職金が未払いの時は弁護士に相談!弁護士に相談すべき理由](https://atomfirm.com/roudou/6423): 退職金が未払いだったり少なかったりしてお悩みの方はいませんか。未払いになっている退職金には、請求できるケースが存在します。法的な対応が必要となった場合には、弁護士への相談をおすすめします。 - [【労働者側】退職勧奨は違法?判例と対処法を弁護士が解説](https://atomfirm.com/roudou/6407): 執拗な退職歓奨をされている、また退職勧奨された際に暴言や強要をされた方に向けて退職歓奨の違法性と判例を解説します。お悩みの方は弁護士に相談してください。 - [【最新版】うつ病でも労災認定は可能!労災認定されるための条件を解説!](https://atomfirm.com/roudou/6382): うつ病は労災認定されにくいと言われていますが、過去に労災認定された事例は多いです。本記事では、うつ病が労災認定されるための基準と、実際に労災認定された事例を2例紹介します。 - [どこからがセクハラになる?結局セクハラの基準は?職場のセクハラ発言一覧](https://atomfirm.com/roudou/6384): セクハラと思われる被害で嫌な思いをしている方に向けて、セクハラの定義と基準を解説。どこからがセクハラになるのか具体例とセクハラ発言一覧もご紹介しています。 - [うつ病で退職する前にすべきこと5選!退職までの流れも解説!](https://atomfirm.com/roudou/6381): 本記事は業務や会社内の人間関係など労働環境が要因でうつ病を患い、かつそれが労災と認定された場合を想定したものです。休職をおすすめする理由と、休職中や退職時の注意点などをご紹介します。 - 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[不当解雇とは?正当な解雇との違いや不当解雇の事例を解説](https://atomfirm.com/roudou/6275): 不当解雇とは、労働基準法や就業規則などの規定に違反して、労働者を会社の都合だけで解雇することです。今回の記事では、法律上認められる正当な解雇と法律違反となる不当解雇、具体的事例や不当解雇への対応策について解説します。 - [給料の未払いを請求したい!給料未払いが生じる原因と6つの対処法](https://atomfirm.com/roudou/6234): 待ちに待った給料日なのに、「給料が支払ってもらえない!」という経験をしたことがありますか?この記事では、給料の未払いが発生する原因と、未払い給料を取り戻すためにできる6つの対処法について解説します。 - [労働審判の弁護士費用相場は?労働審判を弁護士に依頼すべき理由](https://atomfirm.com/roudou/6226): 労働審判とは、労働者と事業主との間の労働トラブルを早期に解決するための制度です。労働審判の特徴や弁護士費用などを解説しています。労働審判でお悩みの方は弁護士相談してください。 - [退職勧奨(勧告)とは?違法になるケースと対処法を解説!](https://atomfirm.com/roudou/6217): 退職勧奨とは会社が従業員を説得し、自主的な退職を促すことです。退職勧奨は違法かどうか、解雇との違いなど退職勧奨についての疑問に答えていきます。不利益を被る前に、大切な知識を蓄えておきましょう。 - [退職勧奨の相談窓口は?解決事例も紹介](https://atomfirm.com/roudou/6219): 退職勧奨の相談窓口をご紹介しています。対処法・解決事例・などをについても解説しているので、退職勧奨でお悩みの方は参考にしてください。 - [会社をクビになったらするべきこと6選!必要な手続きを解説](https://atomfirm.com/roudou/6208): 解雇の種類や、不当解雇がなされた後に解雇を無効にする流れ、退職勧奨をされた際の対処法などを解説していきます。会社をクビになったことで、お悩みの方は参考にしてください。 - [能力不足で会社から解雇されたときの対処法は?不当解雇の可能性が高い!](https://atomfirm.com/roudou/6203): 能力不足で会社からクビにされた際の対処法や、クビが認められるケース、不当解雇問題の相談窓口などを解説していきます。解雇問題でお悩みの方はぜひご参考にしてください。 - [労働相談ができるおすすめの窓口は?無料・24時間受付の窓口も!](https://atomfirm.com/roudou/6206): サービス残業や不当解雇など、労働問題を解決するための相談窓口をまとめました。24時間対応の相談窓口もあるので、困ったときは専門家に相談しましょう。 - [整理解雇された!有効・無効の判断基準となる4要件を弁護士が解説](https://atomfirm.com/roudou/6201): 整理解雇の有効・無効の判断基準となる4要件を詳しく解説しています。いきなり整理解雇を言い渡された場合などは、整理解雇が無効となる可能性が高いです。お悩みの方は弁護士の相談してください。 - [解雇予告手当がもらえない!法的にもらえないケースや請求方法を解説!](https://atomfirm.com/roudou/6190): 解雇予告手当がもらえずにお悩みの方に向けて、解雇予告手当を法的にもらえないケースや請求方法を解説しています。 解雇予告手当がもらえない場合は労働基準監督署や弁護士に相談しましょう。 - [失業保険(雇用保険)とは?受給条件・申請期間・無料相談窓口も!](https://atomfirm.com/roudou/6150): 会社から不当解雇された場合、失業保険の受給の面で有利な取り扱いが受けられるかもしれません。ご自身が失業保険を受け取ることができるのか、いつまで受け取ることができるのか、受給の流れや手続きなど、失業保険の条件にまつわる疑問にお応えします。 - [不当解雇されたら慰謝料(損害賠償)請求できる?相場と判例を解説](https://atomfirm.com/roudou/6143): 不当解雇で請求できる慰謝料の相場をまとめています。損害賠償請求の方法と相談窓口、弁護士費用についても解説していますので、相談をご検討ください。不当解雇に屈さないために、訴訟のやり方や流れを確認しておきましょう。 - [即日解雇されたらどうする?違法な不当解雇への対処法は?](https://atomfirm.com/roudou/6137): 即日解雇の3つの種類と即日解雇が有効となる解雇理由について解説します。違法となる条件もありますので確認しましょう。違法な即日解雇への対処法や相談窓口、慰謝料・解決金の請求の可否についてもまとめていますので、即日解雇でお困りの方はぜひご覧ください。 - [解雇予告手当とは?制度の内容を弁護士がわかりやすく解説](https://atomfirm.com/roudou/6140): 解雇予告手当についての解説や雇用形態、解雇理由ごとの対応についてまとめています。解雇予告手当の計算方法を知っておけば、金額を不当に支払われる恐れもなくなりますね。会社が払ってくれないときは、ご案内している相談窓口をご検討ください。 - [内定取り消しは違法?違法性や対処法について解説](https://atomfirm.com/roudou/6141): 内定を取り消された場合、内容によっては取り消しを無効にできたり、損害賠償を請求できたりする可能性があります。 突然の内定取り消しでお困りの方は、弁護士に相談することをおすすめします。 - [雇い止めの無料相談窓口3選!拒否できるケースと対処法](https://atomfirm.com/roudou/6132): 長期間に及ぶ雇用や、何度も契約が更新されている場合の雇い止めは、無効となる可能性があります。突然雇い止めを受けてお悩みの方は、弁護士に相談することをおすすめします。 - [不当解雇の解決金(和解金)相場は?実例もご紹介!](https://atomfirm.com/roudou/6129): 不当解雇の解決金の相場を解説。不当解雇の解決金は賃金の数か月分になることが多いです。お悩みの方は弁護士に相談してください。 - [不当解雇の無料相談窓口7つを比較!弁護士やハローワーク・労基署・労働組合の違いは?](https://atomfirm.com/roudou/6130): 不当解雇の相談は、①国や地方公共団体が運営する相談窓口、②労働組合やユニオンが運営する相談窓口、③弁護士が運営する相談窓口などを上手に使い分けて、進めることが大切です。このページでは、不当解雇の慰謝料や解決金の増額方法から、弁護士費用や成功報酬の内訳まで、詳しく解説していきます。 - [不当解雇に強い弁護士の探し方|相談無料・費用の仕組み](https://atomfirm.com/roudou/6131): 不当解雇に強い弁護士の探し方を解説しています。不当解雇に強い弁護士は経験や実績のみならず、説明の分かりやすさも重要です。無料相談を受け付けている法律事務所もあるので、お悩みの方は相談してみましょう。 --- # # Detailed Content ## Pages ### AI Sitemap (LLMs.txt) - Published: 2025-04-09 - Modified: 2025-04-09 - URL: https://atomfirm.com/roudou/ai-sitemap What is LLMs. txt? 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サービス残業は、労働基準法37条に違反する違法行為です。 労働基準法37条において、時間外労働や深夜労働(22時~5時)、法定休日の労働に対して、使用者は残業時間数や時間帯に応じた割増賃金を支払う義務があると定められているためです。 そもそも、労働時間は原則として「1日に8時間、週40時間まで」と決められています(労働基準法32条)。 この時間を法定労働時間と呼び、法定労働時間を超える労働については時間外労働として割増賃金が支払われなければなりません。 そのため、賃金が発生しないサービス残業は、明確な違法行為であるといえます。 労働基準法で定められている以上、会社は労働者に割増賃金を支払わなければならないため、労働者がサービス残業の残業代を請求することは正当な権利です。 サービス残業で労働基準法に違反した会社が受ける罰則は? 労働基準法37条に違反した会社は「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金」の刑事罰に科せられる可能性があります。 実際にはいきなり刑事罰の対象となることはありませんが、労働基準監督官による指導・是正勧告を無視し続けると、刑事罰が科せられることがあるのです。 労働者の立場から考えると、サービス残業は会社に刑事罰が科される可能性があるほどの違法行為だととらえることができます。 サービス残業させられているときの対処法 サービス残業は拒否してもよい 労働者は賃金の出ない労働を断ることができます。サービス残業を引き受ける必要はありません。 サービス残業を断ったり、定時に帰宅したりすることは勇気がいるかもしれませんが、違法なことをしているのは会社側なので、自信をもって断ってよいのです。 サービス残業を断ったことを理由に、労働条件を不利益に取り扱うことも違法です。 賃金の減額や降格などの不利益変更を心配している方は『労働条件が不利益に変更(賃金の減額など)されたら?相談窓口を解説!』の記事をご覧ください。 労働基準監督署に申告する 会社の風土や人手不足、繁忙期などが原因でサービス残業が行われている場合、拒否しづらい事情もあるでしょう。 その場合には、労働基準監督署に申告する方法があります。 労働基準監督署は、会社が労働基準法を遵守しているかを管理・監督し、法令に違反している会社に対し指導や勧告を行う機関です。 労働基準監督に相談することで、会社の法律違反に対して指導や勧告を行ってもらえる可能性があります。 指導や勧告が入ることで、残業代が適切に支払われるようになることはあるでしょう。 ただし、労働基準監督署に申告したとしても、申告した従業員個人のこれまでの残業代を回収してくれるわけではありません。 労働基準監督署に申告・通報することで、会社にバレることを心配している方は『労働基準監督署に通報!その後はどうなる?会社にバレる?』の記事をご覧ください。 弁護士に相談する サービス残業でお悩みの方は、弁護士に相談することがおすすめです。 サービス残業を弁護士に相談するメリットは、主に以下の3つが挙げられます。 残業代の金銭回収の可能性が上がる 残業代請求後のトラブルを防ぐことができる サービス残業の証拠が収集しやすい 法律の専門家である弁護士ならば、会社との交渉や書類の作成など、複雑な手続きを一任できます。 証拠の収集や計算、会社との交渉などは、ご自身では難しいことも多いです。また、立場的に残業代を請求しても、取り合ってもらえないこともあります。 一方で弁護士は、証拠がない場合には会社に証拠の開示請求を求めたり、法的な観点から会社に直接請求したりすることが可能です。 証拠の開示請求や未払い残業代の支払いは、弁護士を通じて行ったほうが会社側も応じる可能性が高くなります。 弁護士に相談するメリットの詳細については『サービス残業は弁護士に相談!弁護士に相談するメリットを解説!』をご覧ください。 なお、今後の就職や転職でサービス残業などの労働問題に巻き込まれる不安がある方は、トラブルに事前に備える手段として、弁護士保険をご検討ください。 参考サイト 弁護士保険STATION|エレメントインシュランス 違法なサービス残業が生じるのはどんなとき? 会社の労働時間管理がずさん サービス残業が生じる典型例は、残業していることを会社が把握していないというものです。 会社には、労働者1人1人の労働時間をタイムカード等の客観的な方法で把握する義務があります(労働安全衛生法66条の8の3、労働安全衛生規則52条の7の3)。 しかし、労働時間を把握する体制が整っていない会社が存在するのも事実です。 たとえば、労働時間の記録が労働者の自己申告任せで正確かどうかの確認もしていなかったり、タイムカードの打刻を上司がまとめてやっていたりする例があります。 会社が残業を黙認している 会社がサービス残業は違法と認識していながらも、黙認していることがあります。 たとえば、明確な残業指示がないものの、暗黙の了解で残業が常態化しているケースや、残業をした方が評価される風潮があるケースなどが挙げられます。 始業時刻前や持ち帰りの労働を強いる 残業は定時後に行うものという認識が広まっているため、始業前に働いても残業したと考えない方が多いでしょう。 しかし、所定労働時間以外の時間帯に働いたのなら、れっきとした残業です。 また、自宅へ仕事を持ち帰ることを指示され、帰宅後に仕事をした場合も残業にあたります。 ノー残業デーなどの取り組みにより、社内で残業しなくても、帰宅してからの仕事を余儀なくされるケースもあります。 残業代を1分単位で計算しない 本来、残業代は1分単位で計算して支給されなければいけません。 残業代の支払いを少しでも削ろうとする企業では、15分や30分などの単位で区切り、端数を切り捨てるなどということが行われます。 影響が少ないために見過ごされがちですが、残業代の一部を支払わないサービス残業です。 関連記事 ・残業は1分単位での計算が原則!残業代の計算方法も解説 みなし残業(固定残業)制度を悪用する みなし残業(固定残業)制を適用しつつ、みなし残業時間以上の残業代を支払わないという手口を取る会社があります。 給与に一定の残業代を含めて支払うみなし残業では、あらかじめ固定の残業代の時間数と金額が決められています。 固定の残業代に割り当てられた時間数を超えて残業すれば、超過分の賃金が支給されなければなりません。 たとえば、みなし残業が20時間で月に30時間の残業を行ったと仮定します。この場合、10時間分の残業代を追加でもらえなければ、10時間分はサービス残業です。 なお、故意に超過分の残業代を出さないケースもあれば、会社が制度を理解していない場合も考えられます。いずれにしても、労働に対して賃金を出さないのは違法です。 管理職に残業代を支払っていない 「管理職には残業代を支払わなくていい」という誤解に基づき、管理職がサービス残業をしているケースがあります。 事実として、労働基準法上の「管理監督者」には、労働時間の規制が適用されません(労働基準法41条2号)。 しかし、「管理監督者」にあたるか否かは、職務内容や責任があるかなどの実態から判断されます。課長や部長などの役職であれば残業代が出ないと考えるのは誤りです。 管理職の残業代について詳しく知りたい方は、『管理職は残業代が出ない?残業代がもらえるケースや基準を解説』の記事をご覧ください。 自主的なサービス残業も違法となる? 労働者の中には、「自主的にサービス残業を行っている」と考えている方もいるかもしれません。 自主的なサービス残業であっても違法となり、残業代が支払われる可能性があります。 そもそも残業は会社から命令されて行うものであり、自主的に行った場合は労働時間に該当しないとする判例があります。 しかし、残業をしている状況から、会社がサービス残業をさせていると判断される可能性もあるのです。 たとえば、実際の残業命令がなくとも、客観的に見て業務が非常に多く命じられており、残業をしなければ仕事を終わらせられない場合などが考えられます。 また、残業している労働者に対して恒常的に夜食の差し入れなどがされていた場合も、黙示的に残業命令されていたとみなされ、残業代が支払われる可能性があります。 サービス残業の未払い残業代を請求する方法 最後に、サービス残業の残業代を請求する方法をご紹介します。 サービス残業の残業代を請求する方法 会社と直接交渉する 労働審判 訴訟 残業代の証拠の収集から計算方法、残業代を請求する方法は『サービス残業の残業代を請求する方法!請求の手順を解説』の記事でより詳しく解説しています。併せてご覧いただくと理解が深まるでしょう。 会社と直接交渉する 残業代未払いの証拠を持参して残業代を支払ってもらうよう、直接交渉する方法があります。 伝える相手は直属上司や人事や総務の担当者などです。 担当者が計算ミスしていて会社がすぐに支払ってくれれば問題は解決です。会社がすぐにミスを認めない場合も、証拠を提示しながらできるだけ穏便に話を進めましょう。 上司などとの人間関係を悪くしないように、客観的事実に基づいて丁寧に説明する姿勢が重要です。 なお、残業代請求の時効は3年です。3年が経過してしまうと時効が完成し、請求しても残業代を受け取れなくなるおそれがあります。 残業代の時効について詳しく知りたい方は『残業代請求の時効は3年!将来は5年に?時効中止や請求の方法を解説』の記事をご覧ください。 労働審判 会社との交渉がうまくいかなかった場合には、労働審判や訴訟といった法的手続きを検討しましょう。 労働審判は、労働審判官(裁判官)1名と労働審判員2名から構成される、労働審判委員会という組織を利用する制度です。 労働審判について詳しく知りたい方は『労働審判とは?制度の内容や手続きの流れを弁護士がわかりやすく解説』の記事をご覧ください。 労働審判は、原則として3回以内の審理で結論を出すことになっているため、2〜3か月程度で結論が出ることが多くなっています。 また、当事者の話し合いによる解決を基本とするため、柔軟な解決も期待できます。もちろん、話し合いがまとまらない場合には労働審判委員会が判断を下します。 ただ、労働審判委員会の判断に異議があった場合には、訴訟となります。 訴訟 訴訟とは、裁判所に訴えて権利を争うことです。訴訟を行うためには、証拠を集めて訴状を作成しなければなりません。 訴状とは、裁判を始める際に訴える側(原告)が裁判所に提出する書面で、請求の内容やその根拠が記載されます。 訴状は訴えられた側(被告)である会社に送られ、会社はその内容を見て反論等を検討します。 反論は答弁書という書面で裁判所に提出され、原告側は答弁書に対してさらに反論していくという流れで進みます。 このように、訴訟は、基本的に原告と被告が交互に主張を重ねていき、最終的な結論(判決)を裁判所が下す手続きです。 労働者と相手(会社)が主張する回数には基本的に制限がないため、結論が出るまでに1年以上かかることもあります。 関連記事 ・裁判で残業代請求を行う場合のメリットは?デメリットは期間の長さ? まとめ サービス残業でお悩みの方は弁護士相談することがおすすめです。 弁護士に相談すれば、労働者が置かれている状況を踏まえて、証拠の収集方法や残業代の請求方法の相談が可能です。 労働審判や訴訟の手続きは客観的な証拠に基づく主張などが必要になるため、法律の専門家である弁護士のサポートが欠かせません。 残業代請求の相談は、無料で実施している弁護士事務所も多いため、お近くの事務所を探してみるといいでしょう。 --- ### 労働問題の無料相談窓口7選!専門家のサポートを受けたい方へ - Published: 2024-06-14 - Modified: 2024-06-24 - URL: https://atomfirm.com/roudou/12906 - Categories: 労働問題全般 労働問題のお悩みを抱えている方に向けて、労働問題を無料で相談できる窓口を解説しています。専門家に相談することで、労働問題解決の糸口となります。 「労働問題はどこに相談すればいい?」「無料で労働トラブルを相談したい」 この記事では、労働問題のお悩みを抱えている方に向けて、労働問題を無料で相談できる窓口をご紹介します。 「賃金未払い」「解雇」「ハラスメント」「雇用問題」など、労働問題の悩みは人それぞれであり、一人で悩んでいても解決が難しいことが多いです。 そのようなときには無料相談できる窓口に相談し、労働問題の専門家に解決のためのアドバイスをもらいましょう。 労働問題の無料相談ができる窓口7選! 労働問題の無料相談ができる窓口は以下の通りです。 労働問題の無料相談窓口7選 弁護士|法律上の判断や法的なアドバイスが欲しいとお考えの方 労働基準監督署|労働基準法違反に関する相談をしたい方 総合労働相談コーナー|労働問題をどの機関に相談してよいかわからない方 法テラス|相談に応じた適切な窓口を知りたい方 労働条件相談ほっとライン|労働問題のアドバイスが欲しい方 労働組合|労働者の権利を会社に交渉したい方 社会保険労務士(社労士)|労働災害の届け出や社会保険に関して相談したい方 (1)弁護士 弁護士は法律の専門家です。法律上の判断や法的なアドバイスが欲しいとお考えの方は弁護士相談が有効です。 弁護士は、会社と労働者の交渉を行うことができるほか、交渉で話がまとまらない場合には、労働審判や裁判などの法的手続きを任せることが可能です。 弁護士事務所のなかには初回の相談を無料/一部無料としているところがあります。弁護士事務所の多くは事前予約が必要なので、予約してから相談しましょう。 具体的に相談できる分野は以下の通りです。 未払い残業代 未払い賃金 不当解雇 退職勧奨 ハラスメント 労働条件の不利益変更 損害賠償請求 労働災害の慰謝料請求 など 料金無料または1時間5,000円~1万円程度Webサイト「労働問題 弁護士事務所」などで検索 関連記事 ・労働問題に強い弁護士に相談!弁護士に相談するメリットや探し方 (2)労働基準監督署 労働基準監督署は、労働基準法違反があった場合に会社への是正・監督を行う機関です。 平日8時30分から17時15分まで、無料の電話相談および面談相談を受け付けています。 労働基準法に違反していることが判明している場合には、労働基準監督署に相談することが有効です。 一方、会社と労働者個人の交渉を行う機関ではないため、ご自身の抱える全ての問題が解決できるわけではないことに注意が必要です。 具体的に相談できる分野は以下の通りです。 未払い残業代 未払い賃金 労災保険の申請手続き 36協定違反 解雇予告手当の不支給 など 一方、労働基準監督署では「上司からの行為がハラスメントに該当するかどうか」や「自身の受けた解雇の有効性」などの法的な評価が必要な判断はおこなわれません。 あくまで、明確な法律違反があったときに相談する機関だと認識しておきましょう。 労働基準監督署に相談できる内容について詳しく知りたい方は『労働基準監督署に相談できる内容とは?メリット・デメリットから徹底解説』の記事をご覧ください。 料金無料所在案内全国労働基準監督署の所在案内 (3)総合労働相談コーナー 総合労働相談コーナーでは、無料・予約不要で、あらゆる労働問題の相談を受け付けています。 労働基準法違反の疑いがある場合、行政指導等の権限を持つ担当部署に取り次ぐことになり、会社に対し行政が是正を促すことになります。 また、その他の紛争解決機関の情報も提供されます。 具体的な解決は、他の機関を通して行われるため、ご自身の労働問題をどの機関に相談してよいかわからない、という方におすすめです。 具体的に相談できる分野は以下の通りです。 解雇 雇い止め 配置転換 雇用トラブル 減給 いじめ・嫌がらせ セクハラ・パワハラ 性的指向・性自認 など 料金無料所在案内総合労働相談コーナーのご案内 (4)法テラス 法テラスでは、無料で電話・メール相談を受け付けています。 法テラスは、国が設立した法的トラブル解決の総合案内所で、アドバイスを始め、最適な窓口の紹介もしてくれます。 ただし、法テラスは経済的に余裕のない人のために無料法律相談を行っているため、収入要件に該当しないと無料法律相談は利用できません。資力要件があることに注意が必要です。 具体的に相談できる分野は以下の通りです。 パワハラ・セクハラ 未払い残業代 不当解雇 有給休暇 就業規則 育児・介護休業 労働災害 など 電話番号0570-078374(法テラス・サポートダイヤル)受付時間平日 9時~21時、土曜 9時~17時料金無料 参考:法テラス (5)労働条件相談ほっとライン 労働条件相談ほっとラインは、平日夜間・土日に、無料で相談できる電話相談窓口です。 お仕事が忙しく、なかなか平日・平日昼には相談する時間がない方におすすめです。 労働条件相談ほっとラインに相談すれば、悩みや不安、疑問を減らすアドバイスをもらえる可能性があります。 具体的に相談できる分野は以下の通りです。 違法な時間外労働 サービス残業 賃金未払い など 電話番号0120-811-610受付時間平日17時~22時 土・日・祝日:9時~21時料金無料 参考:労働条件相談ほっとライン (6)労働組合 労働組合は、簡単にいうと、「労働者の権利を守る組織」です。 労働者の抱えるさまざまな問題の改善を、労働組合が会社側に求めて交渉し、労働者の権利を守るために活動を行います。 労働組合は労働組合法という法律によって個人よりも交渉力が強固にされているうえ、人員の数の利を活かせることも多いです。 もっとも、そもそも労働組合に加入していない、もしくは加入していても相談が物理的心理的にしづらい関係にあるような場合も少なくありません。 具体的に相談できる分野は以下の通りです。 賃金 人事評価制度 労働時間 休暇 ハラスメント 解雇 未払い残業代 など 料金無料または有料Webサイト「労働問題 労働組合」などで検索 関連記事 ・労働組合に相談できることと相談の流れ【弁護士が解説】 (7)社会保険労務士(社労士) 社会保険労務士(社労士)は、主に労働法規、社会保険制度に関する専門的な知識を持ち、労働災害の届け出や社会保険手続きに関するサポートを行う専門家です。 また、正確な給与計算や年末調整を行い、適正な給与支払いをサポートしています。 具体的に相談できる分野は以下の通りです。 労災申請の届け出 健康保険証の紛失 給与の支払い など 料金無料または1時間5,000円~1万円程度Webサイト「労働問題 社労士事務所」などで検索 労働問題の無料相談は弁護士・社労士のどちらがおすすめ? 上記で7つの相談窓口をご紹介しましたが、なかでも弁護士と社労士は、どちらも労働問題を専門的に扱うことがある士業です。 しかし、弁護士と社労士の役割は明確な違いがあります。労働の無料相談は弁護士にすることがおすすめです。 労働問題で会社と交渉したり、裁判所に提訴したりするなど、あなたに代わって法的な手続きを進めることができるのは弁護士だけです。 社労士に相談すれば、一般的なアドバイスや、あっせん(当事者間の話し合いによる紛争解決手続き)を行ってくれるケースもあります。 ただし、あっせんが不成立となると、社労士はその後の法的手続きに移行できません。 不当解雇や職場のいじめなどの問題は、当事者間の話し合いで解決できないこともあり、法的な判断が求められるケースも多いです。 交渉や訴訟などが必要となりそうな労働問題は、あらかじめ弁護士に相談しておくと安心でしょう。 労働問題を相談する手段 労働問題でお困りの場合、主に「電話」「メール」「対面」の3つの手段で相談することができます。 それぞれの特徴とメリット・デメリットを理解したうえで、自分に合った方法を選びましょう。 電話相談 電話相談は、迅速に専門家と直接話すことができます。できるだけ早くアドバイスをもらいたい方は電話相談がおすすめです。 しかし、音声でのやり取りのため、アドバイスの内容を失念してしまうおそれがあります。また、会話の流れの中で、質問したかったことを質問できずに終わってしまうことも考えられます。 大事な部分はメモを取りながら話をすると、あとから内容を確認できるため安心でしょう。 メール相談 メール相談は基本的には24時間受付であり、いつでも相談内容を送信をすることができます。 またメールは、文章でやり取りするため、自分のペースで相談内容を整理して伝えることができます。 記録が残るため、後で確認しやすいのも特徴です。 しかし、双方の返信に時間がかかることでスムーズに相談が進まなかったり、対応の優先度が下がったりするおそれがあります。 急ぎの相談や必ず対応してほしい重大な事案などは、電話または直接訪問しての相談が適切かもしれません。 メールで相談できる窓口をお探しの方は『労働相談はメールで可能!無料で相談可能な窓口6選!』の記事をご覧ください。 対面相談 対面相談は、直接専門家と会って相談するため、信頼関係を築きやすいです。 証拠を提示しながら、より深い問題まで踏み込んだアドバイスを受けやすいのが特徴です。 しかし、対面相談は予約が必要なケースが多く、すぐに相談できない場合もあります。相談したい窓口があっても、距離が遠いこともあるでしょう。 無料相談前は質問事項を準備しておくと安心 相談先と相談の手段が決まったら、実際に相談する際のポイントを確認しておきましょう。 質問事項を準備しておく 無料相談を行う際には、事前に質問事項を準備しておくと安心でしょう。 無料相談は時間制限が設けられていることもあり、抱えている労働問題の内容を説明するだけで時間が経ってしまうことが考えられます。 事前に質問事項を準備しておけば、聞きたかった質問を聞き逃すことを防ぐことができるでしょう。 また、質問事項を準備する際、法律相談の目的を明確にすることが大事です。 たとえば、解雇された場合にはお金がほしい(不当な解雇がなければ得られた賃金・慰謝料)のか、会社に残りたいのかなど、ご自身の望む最終的な解決方法を明確にすることで、適切なアドバイスを受けることができます。 準備する物の具体例 電子メールや書面など、ご自身の法律問題に関連する資料がある場合には、準備しておきましょう。 たとえば、未払い賃金を請求したい場合、勤怠がわかるものや給与明細があれば準備するなど、ご自身の記憶を裏付ける資料があれば準備しておくと有効です。 また、会社の労働者に対する違法な処分の類型は、会社と労働者の契約が違法であるか、会社と従業員の契約に反して違法な処分がなされることが多いです。 そのため、会社と労働者の重要な契約が書かれている就業規則を準備しておくことが有効です。 労働相談したことは会社にバレない? 労働相談をするにあたって、会社にバレることを心配する方は多いです。 ここでは、相談窓口に労働相談をした際に会社にバレることはあるのか解説していきます。 相談を受ける機関は守秘義務を負っている 相談を受ける機関は、守秘義務を負っています。そのため、労働者が相談した内容だけでなく、相談をしたかどうかについても、外部に漏れることはありません。 したがって、会社にバレることを過度に心配する必要はないでしょう。 ただし、「労働基準監督署に相談した」「今日弁護士に相談しに行く」などと職場の同僚に話したり、SNSでメッセージを送ったりすると、そこからバレてしまう可能性はゼロではありません。 また、相談したことがバレたくない方は、社内での電話・メールを開くといった行為も避けるべきでしょう。 不安な場合は匿名相談を活用 ご紹介した無料相談窓口の中でも、「労働条件ほっとライン」は、匿名相談が可能です。 どうしても不安で匿名相談をしたい方は、「労働条件ほっとライン」の利用をおすすめします。 ただし、匿名相談の場合は、労働問題を詳しく説明することが難しいため、より具体的なアドバイスをもらいにくくなるおそれがあるので注意しましょう。 まとめ 労働問題を抱えたまま働くことは、メンタルヘルスなどの健康上の問題を発生させかねません。 困ったときはご紹介した窓口に相談し、専門家の指示を仰ぎアドバイスをもらいましょう。 万が一、相談した窓口で適切な回答が得られない場合には、複数の窓口にセカンドオピニオンすることも有効です。 ぜひ無料の相談窓口を活用して、労働問題の解決に役立ててください。 --- ### 残業代請求を相談できるおすすめ窓口5選!無料の窓口も紹介! - Published: 2024-06-12 - Modified: 2024-06-24 - URL: https://atomfirm.com/roudou/12787 - Categories: 残業代請求 残業代の請求をお考えの方に向けて相談窓口を5つご紹介しています。残業問題は一人で抱え込まず、専門家に相談することが大切です。まずは無料の窓口に相談してみましょう。 「残業問題はどこに相談すればいい?」「残業代請求について無料で相談したい」 残業代が支払われないことはおかしいと感じながらも、日々働いている方は多いのではないでしょうか。 残業問題は一人で抱え込まず、専門家に相談してみましょう。 この記事では、残業代を請求したいとお考えの方に向けて、残業代請求の相談窓口を解説します。 残業代請求の方法や注意点も解説しているので、ぜひ最後までご覧ください。 残業代請求の相談窓口5選! (1)労働基準監督署(無料) 労働基準監督署は、会社が労働基準法を遵守しているかを管理・監督し、法令に違反している会社に対し指導や勧告を行う機関です。 労働基準監督署は無料で相談することができます。残業代請求はもちろん、長時間労働や給料未払いなどの労働問題を相談できます。 最寄りの労働基準監督署は、以下から探すことができます。 参考:労働基準監督署の所在地一覧 ただし、労働基準監督署は、会社の法律違反に対して指導や勧告を行ってはくれますが、従業員個人の残業代請求の支払いを命じるわけではありません。 労働基準監督署に相談したとしても、相談した従業員個人の残業代を回収してくれるわけではないので、注意が必要です。 また、労働基準監督署に相談することで、会社にバレることを心配している方は『労働基準監督署に通報!その後はどうなる?会社にバレる?』の記事をご覧ください。 料金無料Webサイト「○○県 労働基準監督署」で検索 関連記事 ・残業代未払いは労基署に相談できる?弁護士との役割の違いを解説 (2)弁護士(無料もしくは有料) 弁護士は法律の専門家です。残業代請求は弁護士に相談することがおすすめです。 弁護士に相談・依頼すれば、代理人として会社と従業員の交渉を任せることができます。従業員個人の悩みを解決するために動いてくれます。 残業をしていた証拠が集められないときでも、弁護士から会社に開示請求を行うことで、証拠を収集できる可能性が高まるでしょう。 さらに、交渉で話がまとまらない場合には、労働審判や裁判などの法的手続きを任せることが可能です。 早急な解決に向けて手助けをしてくれる弁護士は、従業員本人や家族にとって強い味方といえるでしょう。 無料相談を実施している弁護士事務所もあります。 料金無料または1時間5,000円~1万円程度Webサイト「残業代請求 弁護士事務所」などで検索 (3)総合労働相談コーナー(無料) 労働基準監督署などに設置されている総合労働相談コーナーは、職場のトラブルに関する相談や解決のための情報提供をワンストップで行っています。 残業代請求に限らず、いじめや嫌がらせなど、あらゆる労働問題に対応しています。 総合労働相談コーナーは、電話や面談で無料相談できます。 また、状況に応じて適切な相談先や解決策も案内してくれるので、どこに相談していいのかわからない場合も気軽に相談できることが特徴です。 最寄りの総合労働相談コーナーは下記リンクで確認できます。 参考:厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」 料金無料Webサイト「○○県 総合労働相談コーナー」で検索 (4)法テラス(無料) 法テラスは、労働問題を含む各種法的トラブルの解決に向けた情報やサービスを行うために設けられた国民向けの法的支援機関です。 法テラスでは、電話や面談で弁護士などの専門家に無料で相談できます。 最寄りの相談窓口は下記リンクで確認できます。 参考:日本司法支援センター法テラス「お近くの法テラス(地方事務所一覧)」 ただし、法テラスは経済的に余裕のない人のために無料法律相談を行っているため、収入要件に該当しないと無料法律相談は利用できません。 料金無料電話番号0570-078374(法テラス・サポートダイヤル)受付時間平日 9時~21時、土曜 9時~17時 (5)労働組合(無料もしくは有料) 労働組合は、簡単にいうと、「労働者の権利を守る組織」です。 労働者の抱えるさまざまな問題の改善を、労働組合が会社側に求めて交渉し、労働者の権利を守るために活動を行います。 労働組合は労働組合法という法律によって個人よりも交渉力が強固にされているうえ、人員の数の利を活かせることも多いです。 もっとも、そもそも労働組合に加入していない、もしくは加入していても相談が物理的・心理的にしづらい関係にあるような場合も少なくありません。 料金無料または有料Webサイト「残業代請求 労働組合」などで検索 関連記事 ・労働組合に相談できることと相談の流れ【弁護士が解説】 残業代請求を弁護士に相談するメリット 残業代請求を相談できる窓口を5つ紹介しましたが、弁護士に相談することがおすすめです。 弁護士に相談する主なメリットを3つ解説します。 (1)証拠が収集しやすくなる 残業代請求を弁護士に相談することで、証拠が収集しやすくなります。 具体的には、弁護士を通して会社に証拠の開示請求を行う方法があります。 従業員本人から開示請求することも可能ですが、何を請求すればいいのか、会社にどう伝えればいいのか、分からないこともあるでしょう。会社に遠慮して言いづらいという人もいると思います。 また、従業員が開示請求して拒否された場合でも、弁護士が請求すれば簡単に回答が得られたというケースもあります。 (2)法的に正しく残業代を計算できる 弁護士であれば、法的に正しく残業代を計算してもらうことができます。 残業代の計算は複雑であり、一定の知識がないと正しく計算することが難しいケースも多いです。 残業代を正しく計算するときのポイント 法定内残業と法定外残業の計算方法の違い 一般的な残業と深夜残業、休日出勤の割増率の違い 残業時間や残業代の端数処理の方法 など 専門家である弁護士に依頼すれば、収集した証拠から正しい残業代を計算したうえで会社に請求してくれます。 請求できる残業代を知りたい方へ ご自身がいくら請求できるのか、おおよその残業代を知りたい方は、以下のツールをご利用ください。6つの質問に答えるだけでおおよその残業代がわかります。 残業代計算ツール (3)会社にとってプレッシャーになる 弁護士が相手だと会社にとってプレッシャーになることもメリットと言えます。 会社内の立場が下で専門知識のない従業員が相手だと強気に交渉していた会社側も、法律に詳しい弁護士が来ると遠慮して弱腰な対応になることもあります。 また、弁護士を雇ったということから裁判等へ移行するリスクも考慮に入れざるを得ないため、会社に一定のプレッシャーを与えられます。 残業代請求をするときの注意点 残業代請求の時効は3年 残業代請求の時効は3年です。 残業した月に対する給与の支給日翌日から3年を経過すると、会社が時効を主張すれば残業代をもらうことはできません。 時効が完成する前に請求しましょう。 関連記事 ・残業代請求の時効は3年!将来は5年に?時効中止や請求の方法を解説 証拠は労働者が収集する必要がある 残業代請求には証拠が重要です。残業代を支払っていない会社が悪いと思うかもしれませんが、請求するための証拠は労働者側が集める必要があります。 残業代請求の証拠は、未払い残業時間がきちんと把握できる客観的な証拠を集めることがポイントです。主な証拠としては以下のものが挙げられます。 残業代請求における証拠 タイムカード 勤怠管理システム メールの送受信履歴 パソコンのログ記録 上司の承認のある業務日誌 など タイムカードや日誌はコピーを取り、メールやパソコンの記録はスクリーンショットを取って保存し、正確な残業時間がわかる記録を集めましょう。 関連記事 ・残業代請求で必要となる証拠を徹底解説!証拠がない場合の対処法は? 未払い残業代を請求する方法 未払い残業代を請求する方法は主に以下の3つが挙げられます。 未払い残業代を請求する方法 会社と直接交渉する 労働審判 訴訟 弁護士に相談すれば、労働者が置かれている状況を踏まえて、証拠の収集方法や労働審判と訴訟のどちらが適しているかなどの相談が可能です。 労働審判や訴訟の手続きは客観的な証拠に基づく主張などが必要になるため、法律の専門家である弁護士のサポートが欠かせません。残業代請求でお悩みの方は、まずは弁護士に相談することをおすすめします。 会社と直接交渉する 残業代未払いの証拠を持参して残業代を支払ってもらうよう、直接交渉する方法があります。 伝える相手は直属上司や人事や総務の担当者などです。 担当者が計算ミスしていて会社がすぐに支払ってくれれば問題は解決です。会社がすぐにミスを認めない場合も、証拠を提示しながらできるだけ穏便に話を進めましょう。 上司などとの人間関係を悪くしないように、客観的事実に基づいて丁寧に説明する姿勢が重要です。 労働審判 会社との交渉がうまくいかなかった場合には、労働審判や訴訟といった法的手続きを検討しましょう。 労働審判は、労働審判官(裁判官)1名と労働審判員2名から構成される、労働審判委員会という組織を利用する制度です。 労働審判について詳しく知りたい方は『労働審判とは?制度の内容や手続きの流れを弁護士がわかりやすく解説』の記事をご覧ください。 労働審判は、原則として3回以内の審理で結論を出すことになっているため、2〜3か月程度で結論が出ることが多くなっています。 また、当事者の話し合いによる解決を基本とするため、柔軟な解決も期待できます。もちろん、話し合いがまとまらない場合には労働審判委員会が判断を下します。 ただ、労働審判委員会の判断に異議があった場合には、訴訟となります。 訴訟 訴訟とは、裁判所に訴えて権利を争うことです。訴訟を行うためには、証拠を集めて訴状を作成しなければなりません。 訴状とは、裁判を始める際に訴える側(原告)が裁判所に提出する書面で、請求の内容やその根拠が記載されます。 訴状は訴えられた側(被告)である会社に送られ、会社はその内容を見て反論等を検討します。 反論は答弁書という書面で裁判所に提出され、原告側は答弁書に対してさらに反論していくという流れで進みます。 このように、訴訟は、基本的に原告と被告が交互に主張を重ねていき、最終的な結論(判決)を裁判所が下す手続きです。 労働者と相手(会社)が主張する回数には基本的に制限がないため、結論が出るまでに1年以上かかることもあります。 関連記事 ・裁判で残業代請求を行う場合のメリットは?デメリットは期間の長さ? まとめ この記事では、残業代請求の相談窓口を5つご紹介しました。 残業代請求は弁護士に相談することがおすすめです。弁護士に相談・依頼すれば、証拠の収集がしやすくなったり、複雑な残業代の計算を任せたりすることができます。 また、代理人として会社と従業員の交渉をしてもらい、労働審判や訴訟への法的な手続きにもスムーズに移行できます。 残業代請求でお悩みの方は、弁護士に相談してみましょう。 弁護士に残業代請求を依頼する場合の費用は『残業代請求を弁護士に依頼する場合の費用相場は?弁護士に依頼するメリット5選!』の記事で詳しく解説しています。 弁護士費用が心配な方は併せてご覧ください。 弁護士事務所の中には、着手金無料の弁護士事務所もあります。まずは一度相談してみてはいかがでしょうか。 --- ### 派遣社員でも退職代行は利用できる!注意点を解説 - Published: 2024-06-12 - Modified: 2024-06-24 - URL: https://atomfirm.com/roudou/12833 - Categories: 退職代行 派遣社員でも退職代行を利用できるか解説。雇用形態によっては退職代行を慎重に選ぶ必要があるケースもあります。退職代行を利用するときの注意点も解説しています。 「派遣社員として働いている会社が合わない」「派遣社員だけど退職代行を使って辞めたい」 派遣社員として勤めている会社が合わず、派遣会社に言いづらいことから、退職代行を利用して辞めることを考えている方もいるでしょう。 結論から言えば、派遣社員であっても退職代行は利用できます。 しかし、雇用形態によっては、退職代行業者選びを慎重に行う必要があります。 この記事では、派遣社員の雇用形態における退職条件の違い、退職代行を利用するときの注意点を詳しく解説していきます。 派遣社員でも退職代行は利用できる 派遣社員には「常用型派遣(無期雇用契約)」と「登録型派遣(有期雇用契約)」があり、雇用形態によって退職の条件が異なります。 どちらの派遣社員でも退職代行を利用して退職することは可能です。しかし、常用型よりも登録型の方が、利用できる退職代行サービスが限られるので、探す際には注意が必要です。 ご自身がどちらの雇用形態に該当するか確認したうえで、退職代行サービスを利用しましょう。 常用型派遣(無期雇用契約)の場合 常用型派遣は、派遣社員と派遣元(派遣会社)が無期雇用契約を結んでいる雇用形態です。 常用型派遣の場合は、正社員と同様に民法627条の退職ルールが適用されます。 つまり、2週間前に退職の意思を伝えれば、基本的にいつでも辞めることができます。 登録型派遣(有期雇用契約)の場合 登録型派遣は、派遣先に就業している契約期間のみ、派遣元と雇用契約を結んでいる雇用契約のことです。派遣先での契約が終了すれば、派遣元との契約も終了します。 登録型派遣の場合は、原則として、雇用契約で定められた期間働かなければなりません。 契約期間満了前でも退職代行を利用して退職できますが、やむを得ない事由が必要となります。 民法628条では、「当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる」とあります。 やむを得な事由は、以下のようなものが挙げられます。 やむを得ない事由の例 パワハラやセクハラを受けている 身内の介護が必要となった ケガや病気などで仕事に支障をきたした なお、やむを得ない事由がなくても、会社と労働者との間で両者の合意があれば退職できます。 実務上、退職の際にやむを得ない事由の有無について争われることは少ないです。会社との合意のもと、退職を認めてもらえるケースが多いでしょう。 退職代行を利用する場合には、退職代行業者から会社に合意を求めるように働きかけてもらう必要があります。 そのため、登録型派遣の場合はとくに、退職代行業者選びを慎重に行う必要があるといえるでしょう。 登録型派遣でも契約開始から1年以上経過していれば退職できる 契約開始から1年以上経過している派遣社員は、いつでも退職可能です。 期間の定めのある労働契約を締結した労働者は、契約の初日から1年が経過すれば、その使用者に申し出ることにより、いつでも退職できると定められています(労働基準法137条)。 正社員のように退職を申し出てから2週間といった期間の決まりもありません。 もっとも、業務の引き継ぎを行わずに即日退職すると、会社から損害賠償請求されるおそれもあるので、退職時には注意が必要です。 派遣社員が退職代行を利用するときの注意点 派遣社員も利用できる退職代行事業者を選ぶ そもそも退職代行事業者によっては、派遣社員からの依頼を受け付けていないこともあります。 また、退職代行業者によっては、常用型派遣は対応しているものの、登録型派遣は対応していないケースも多いです。 退職代行を利用する際には、自身が常用型・登録型の派遣社員であることを告げ、利用できる退職代行事業者を選ぶようにしましょう。 派遣社員が利用できるかどうかは、ホームページや口コミなどで確認してください。もし記載がなければ、退職代行事業者に事前に相談するといいでしょう。 関連記事 ・退職代行の相談時に確認すべき内容や選び方を解説! 退職代行を利用した派遣会社は使えなくなる 退職代行を利用して退職すると、契約していた派遣会社は使えなくなる可能性が高いです。 退職代行を利用すると、派遣会社との関係性が悪化し、再雇用のリスクが非常に大きくなるためです。 なお、退職代行を利用しても、新たにほかの派遣会社で働くことはできます。 「退職代行を利用したことで派遣会社全体のブラックリストに載る」などと噂されることもありますが、派遣会社同士で個人情報を共有することは、個人情報保護法違反にあたります。 ほかの派遣会社で働けなくなることは、心配する必要はないでしょう。 派遣社員が退職代行業者を選ぶときのポイント 非弁行為のリスクがない弁護士に依頼する 退職代行を行う事業者は、「一般の退職代行業者」「労働組合」「弁護士」の3種類に区別できます。 どの事業者に依頼するか迷ったときには、弁護士に依頼することがおすすめです。 一般の退職代行業者が代行できるのはあくまで「退職の意思を告げること」だけです。 そのため、それ以上に何らかの法的な交渉をおこなうと、非弁行為(弁護士資格をもたない者が、報酬を目的に弁護士業務をおこなう違法行為)に該当するリスクが大きくなります。 派遣社員が退職代行を利用した場合は、会社に合意を得るといった会社との交渉が必要になることが多いです。 とくに登録型の派遣社員の方は会社との交渉が可能な労働組合や弁護士に依頼すべきと言えます。 また、弁護士であれば会社との交渉ができるうえ、未払い残業代や給与、退職金の請求も可能です。 さらに、労働組合が訴訟といった法的な手続きに発展すると対処が難しくなるデメリットがある一方、弁護士は法的な手続きにもスムーズに移行できるメリットがあります。 関連記事 ・退職代行を弁護士に依頼するメリットは?費用・代行業者との違いまで完全解説! 退職代行の料金やサービス内容も確認しておく 利用する退職代行サービスによって、かかる費用は異なります。 依頼費用や追加料金の発生の有無、万が一退職が失敗してしまった場合の返金保証が付いているかなどは確認しておくべきでしょう。 退職代行サービスを依頼するからには、当然失敗は避けたいものです。返金保証が付いていないサービスは、お金を払って損することも考えられるので、選ぶときには注意が必要です。 また、退職は成功したものの、追加料金が発生し、想像以上の費用がかかってしまうこともあります。 相場よりも極端に費用が低い退職代行サービスは、追加料金を設定している可能性もあります。相談する際には、追加料金の条件などを確認しておきましょう。 関連記事 ・退職代行サービスの金額相場はいくら?3つの相談先と対応の違いを解説 まとめ この記事では、派遣社員が退職代行が利用可能かどうかについて詳しく解説しました。 派遣社員であっても、退職代行を利用して退職可能です。 退職代行の利用を検討している方は、トラブルを防いで安心して退職するためにも、退職代行事業者の違いや退職代行の流れをしっかりと理解したうえで利用するようにしましょう。 また、失業保険や国民健康保険の切り替え手続きなど、具体的に退職代行をした後にやるべきことを把握しておけば、安心して退職代行を利用できると思います。 退職代行の流れや退職代行利用後の手続きに関して詳しく知りたい方は、『退職代行の流れは?手順を弁護士が徹底解説』の記事もご覧ください。 --- ### 労災の休業補償を受けるための手続きは?医師の証明が必要な理由 - Published: 2024-06-12 - Modified: 2024-06-24 - URL: https://atomfirm.com/roudou/12762 - Categories: 労働災害 業務上のケガや病気で仕事を休まなければなら亡くなった方に向けて労災保険の休業給付について解説しています。休業補償を受け取るためには、医師の証明が必要な理由も解説しています。 「労災の休業補償の手続きは?」「休業補償はいくら受け取れる?」 業務上のケガや病気で仕事を休む必要が生じたとき、労災保険の認定を受ければ、労災保険から休業補償給付を受け取ることができます。 この記事では、労災で休業補償給付を受けるための手続きや受け取れる金額について解説します。 医師の証明が必要な理由についても分かりやすく解説しているので、休業補償給付をこれから請求される方は、ぜひ最後までご覧ください。 労災保険の休業補償とは 休業補償とは 休業補償とは、労働者が業務上のケガや病気で仕事を休まなければならなくなった場合に、労災保険から支給される給付金です。 療養期間中の労働者の生活を保護することを目的としています。 休業補償は、就業中の災害で休業した場合に支払われる「休業補償給付」と、通勤中の災害が対象の「休業給付」の2種類に分かれます。 内容や支給される金額は同じであるため、いずれもこの記事では休業補償として取り扱います。 休業補償を受けるための条件 休業補償を受けるためには、以下の3つの要件を満たす必要があります。 休業補償を受けるための条件 業務災害または通勤災害に該当すること 労働できないこと 賃金の支払いがないこと 業務災害または通勤災害に該当すること 労働災害は大きく「業務災害」と「通勤災害」の2種類に分けられます。 まず、業務災害から見ていきましょう。 保険給付の対象となる業務災害は「業務上の」負傷等でなければなりません。業務災害は「業務起因性」と「業務遂行性」の2つを満たす必要があります。 業務遂行性... ... 労働者がケガや病気を負ったとき、事業主の支配下にある状態で業務をしていたかどうか 業務起因性... ... 労働者が負ったケガや病気の原因が、仕事内容に関連するものかどうか たとえば、自然現象やけんかなどの被災者の私的な逸脱行為が原因であれば、業務起因性は否定され、労災認定されない可能性があります。 次に、通勤災害は通勤中に発生した災害のことを指します。 ここでいう「通勤」は、以下のようなケースが該当します。 住居と就業場所との間の往復 単身赴任先の住居と帰省先の住居との間の移動 就業場所から他の就業場所への移動 上記のケースについては、「合理的な経路及び方法」で通勤していることが前提となります。寄り道をや遠回りをしていた場合には、通勤として認められない場合もあります。 労働できないこと 休業補償は療養のために休業している期間を補償する制度です。 療養中は支給対象ですが、負傷や疾病が治った後は補償対象にはなりません。 また、働くことができない状態に陥っている必要があります。 賃金の支払いがないこと 会社から平均賃金の60%以上の賃金が支払われている場合には休業補償は給付されません。 休業補償の対象となるのは? 休業補償は、雇用形態にかかわらず、すべての労働者が対象となります。 正社員に限らず、契約社員やアルバイト、パートであっても労災保険の認定を受ければ、休業補償を受け取ることができます。 労災の休業補償はいくら受け取れる? 「給付基礎日額」の80%を受け取ることができる 休業補償では、給付基礎日額の80%(保険給付60%+特別支給金20%)をもらうことができます。 休業補償は賃金ではなく、働けなくなったことに対する補償になるので税金がかかりません。つまり、実際に受け取る金額は、普段受け取っている給料の80%よりも多くなります。 給付基礎日額の計算 給付基礎日額は、労働基準法における平均賃金に相当する額のことを言い、原則として「3か月間の賃金総額÷3か月間の暦日数」によって計算されます。 この計算にあたっては、臨時に支払われるもの・3か月を超える期間ごとに支払われるものについては含めずに計算をします。半年に1度支払われる賞与は含めないということです。 ただし、この計算式によると、アルバイトやパートなど、出勤日数の少ない人については非常に低額になってしまいます。 そのため、上記の計算式と「3か月間の賃金総額÷3か月間の実労働日数×60%」を求め、どちらか多い方を平均賃金とすることが可能です。 休業補償が支給される期間はいつからいつまで? 休業補償の支給は休業を開始して4日目から 休業補償は休業を開始して4日目から支給されます。 休業してから3日間については休業補償をもらうことはできません。この3日間のことを「待期期間」と呼んでいます。 3日間の待期期間は、仮病防止のために設けられていると言われています。 この待期期間については労災保険からは給付が受けられません。 しかし、業務災害の場合は、会社から労働者に給付基礎日額の60%が支払われます。 一方、通勤災害の場合、会社から金銭は支払われません。就業規則に支給規定がない限り、待期期間中は無給となります。 休業補償は原則ケガや病気が治るまで受け取ることができる 休業補償は、受け取るための要件を満たしている限りは、原則ケガや病気が治るまで受け取ることができます。 ただし、例外的に支給が終了するケースがあります。 症状固定で給付が終了となるケース ケガや病気が治ゆしなくても、症状固定と判断されれば給付が終了となります。 症状固定とは、ケガや病気の治療を続けても症状の改善が見込めなくなった状態を指します。 症状が一定期間以上変わらなかったり、検査結果や画像所見などからこれ以上の改善が見込めなかったりするときに、医師によって判断されるものです。 傷病(補償)年金に切り替わるケース 労災の治療を開始して1年6か月経過したあとでも治ゆしておらず、傷病等級1~3級に該当する場合には傷病(補償)年金に切り替わるケースがあります。 傷病(補償)年金への切り替えは、労働基準監督署長の職権により行われるため、被災者自身で請求手続きをする必要はありません。 給付の内容は「傷病(補償)年金」「傷病特別一時金」「傷病特別年金」の3つに分類できます。 傷病等級別の支給額は以下の表の通りです。 傷病等級傷病(補償)年金(給付基礎日額)傷病特別一時金傷病特別年金(算定基礎日額)第1級313日分114万円313日分第2級277日分107万円277日分第3級245日分100万円245日分 もっとも、1年6か月経過後も傷病等級1~3級に該当せずに、対象となるケガや病気が治ゆ(症状固定)していなければ、休業補償を引き続き受け取ることができます。 引き続き休業補償を受け取るためには、「傷病の状態等に関する届」(様式第16号の2)を労働基準監督署に提出する必要があります。 療養から1年6か月を経過すると、労働基準監督署から申請の手続きの指示があるので、指示に従いましょう。 退職後でも休業補償の支給要件を満たせば給付を受けられる 労災で休業補償給付を受けながら退職した場合も、支給要件を満たしていれば支給は継続されます。 「保険給付を受ける権利は、労働者の退職によって変更されることはない」と定められているからです(労働者災害補償保険法12条の5)。 なお、退職後に労災保険の請求を行うこともできます。 休業補償を申請する手続きの流れ (1)労働基準監督署長に請求書を提出する 休業補償を申請するには、労働基準監督署に請求書を提出する必要があります。 請求書への記載や手続き申請は、原則被災した労働者本人が行います。 休業補償の請求書は、「業務災害」「通勤災害」によって書面が異なります。 休業補償の請求に必要な書類は以下の通りです。 業務災害の場合:「休業補償給付支給申請書」(様式第8号) 通勤災害場合:「休業給付支給請求書」(様式第16号の6) 請求書の様式は、厚生労働省のホームページからダウンロードできます。 まず、労働者自身で記載できる部分を記載してから、医師の証明などを記載してもらいましょう。 請求書への記載例は、以下を参考にしてください。 参考:休業(補償)等給付・傷病(補償)等年金の請求手続|厚生労働省 また、休業補償の請求には時効があります。2年間のうちに請求しないと時効となってしまうため、業務上のケガや病気で休業が必要になったら早めに請求しましょう。 (2)審査を受ける 提出後は、労働基準監督署長による審査が行われます。審査期間の目安は、1か月程度です。 労災認定されたら、給付を受けることができます。 休業が長期になる場合には、1か月ごとに1回請求することが一般的です。 もし、認定されないといった労災保険給付に関する処分に納得がいかない場合は、不服申し立てを行うことができます。 不服申し立ては、都道府県労働局の「労働者災害補償保険審査官(労災保険審査官)」に対して行います。 休業補償の請求に医師の証明が必要な理由 休業補償の請求書には、診療担当者の証明(医師の証明)を受ける欄があります。医師の証明がなければ休業補償を受けられません。 ここでは、休業補償の請求に医師による証明が必要な理由を解説します。 「労働できないこと」を証明するために医師の証明が必要 そもそも休業補償は、労働者が業務災害または通勤災害によって傷病し、労働ができない場合に支給されるものです。 そのため、医師の証明によって、「労働ができないこと」を客観的に証明してもらう必要があります。 医師の証明には、傷病の部位や名称、傷病の経過などが記載されている必要があります。 医師の証明にかかる費用は労災保険から給付される 医師に請求書への記載を依頼すると、2000円の費用がかかりますが、その費用は労災保険から給付されます。 また、労災指定病院を受診すれば、労働者が医師の証明にかかる費用を負担する必要はありません。 労災指定病院以外の病院を受診した場合、被災者がいったん費用を立て替える必要がありますが、あとから費用を療養に関する給付として請求することが可能です。 まとめ 労災は、働いている限り誰に起こってもおかしくありません。 業務上、または、通勤途中のケガや病気で仕事を休まなければならないときは、労災保険の休業補償を請求しましょう。 休業補償の請求には、医師の証明が必要になります。病院を受診し、労働災害の経緯や傷病の経過を伝えて、医師に記載してもらいましょう。 労災の申請手続きで不明点がある場合は、労働基準監督署に相談してください。労働基準監督署は労災保険申請の窓口であるため、適切な回答が得られるでしょう。 また、労災で会社に慰謝料を請求したい場合には、弁護士への相談がおすすめです。 労災の相談窓口については『労災の相談はどこでできる?困ったときの相談先を紹介!無料の窓口も!』の記事で解説しています。 無料の窓口もあるので、労災でお悩みの方はぜひ一度相談してみてください。 --- ### 労災の申請手続きの流れ|給付申請は時効に注意! - Published: 2024-06-07 - Modified: 2024-06-10 - URL: https://atomfirm.com/roudou/12672 - Categories: 労働災害 業務中の災害により、病気やケガをした場合、労災認定されれば、労災保険によって補償を受けることができます。労災の申請手続きの流れを詳しく解説しています。 業務中の災害により、病気やケガをした場合、労災認定されれば、労災保険によって補償を受けることができます。 労災の申請における手続きの流れは、以下の通りです。 労災申請手続きの流れ 労働災害の発生を勤務先に報告する 病院を受診する 労働基準監督署に申請する 審査を受ける ここでは、労災の申請手続きの流れを詳しく解説します。 労災の申請手続きの流れ (1)労働災害の発生を勤務先に報告する まずは、速やかに労働災害が発生したことを勤務先に報告する必要があります。 報告は、口頭でも書面でも構いませんが、書面で報告しておくと、後々証拠になるためおすすめです。 報告内容としては、いつ、どこで、誰が、どのような状況で災害が発生したのかを具体的に伝える必要があります。 (2)病院を受診する 労働災害で病気やケガをした場合には、すぐに病院を受診しましょう。 病院での手続きの流れは、「労災指定医療機関を受診する場合」と、「労災指定医療機関以外を受診する場合」に分けることができます。 労災指定医療機関を受診する場合 労災指定医療機関に受診すれば、治療費を支払う必要がなく、無料で治療を受けることができます。 受診する際には、労災指定医療機関を選ぶことをおすすめします。 労災保険指定医療機関は、下記から探すことができます。 参考:労災保険指定医療機関検索|厚生労働省 労災指定医療機関で治療を受ける場合には、労災である旨を窓口で伝え、以下の請求書を提出します。 ・業務災害の場合:「療養補償給付たる療養の給付請求書(様式第5号)」 ・通勤災害の場合:「療養給付たる療養の給付請求書(様式16号の3)」 労災指定医療機関であれば、病院内に請求書が用意されていることも多いです。 申請書類は、下記のページからダウンロードも可能です。 参考:主要様式ダウンロードコーナー(労災保険給付関係主要様式)|厚生労働省 なお、療養(補償)給付については、指定医療機関に請求書を提出すれば、労働基準監督署への提出は必要はありません。指定医療機関を経由して、労働基準監督署に提出されるからです。 労災指定医療機関以外を受診する場合 労災指定医療機関以外を受診する場合は、治療費を自費で立て替えなければなりません。 後から労災保険に申請することで同額の給付を受けることができますが、健康保険を利用できないため、全額負担となります。 高額な治療費を立て替える必要が生じる可能性もあるので注意してください。 ただし、被害者が大きなケガを負っており、近くに労災指定医療機関がなければ、対応できる病院で治療を行うことが最優先です。 (3)労働基準監督署に請求書を提出 治療を受けた後は、請求書を記入し、労働基準監督署に提出しましょう。 補償の種類に応じて添付資料が必要なケースも多いです。 また請求書には、会社が労災の証明を記載する「事業主証明欄」があり、この部分は会社側に記載してもらう必要があります。 もし会社に記載を拒否された場合には、労働基準監督署に相談しましょう。やむを得ない場合には、事業主証明がなくても労災申請することができます。 (4)審査を受ける 提出後は、労働基準監督署長による審査が行われます。審査期間の目安は、負傷なら1か月~3か月、死亡なら4か月程度です。 労災認定されたら、給付を受けることが可能です。労災保険給付に関する処分に納得がいかない場合は、不服申し立てを行うことができます。 不服申し立ては、都道府県労働局の「労働者災害補償保険審査官(労災保険審査官)」に対して行います。 労災保険給付の種類 労災事故が起きたとき、労災保険で受け取れる保険給付は以下の7種類です。どのようなものがあるか確認しておきましょう。 労災保険で受け取れる保険給付の種類 療養(補償)給付 休業(補償)給付 障害(補償)給付 遺族(補償)給付 葬祭料・葬祭給付 傷病(補償)年金 介護(補償)給付 ※業務災害の場合は、補償給付・補償年金という名称となる 労災保険では、労働災害の状況に応じて、さまざまな給付が用意されています。 ケガをした場合には療養(補償)給付、労災で仕事を休む必要が生じた場合には休業(補償)給付といった具合で給付が行われます。 (1)療養(補償)給付 療養(補償)給付は、業務災害・通勤災害による傷病により療養するときや、労災病院、労災保険指定医療機関などで療養を受けるときにもらえる給付金です。 療養(補償)給付は、治療のために必要となる費用と同額です。 (2)休業(補償)給付 休業(補償)給付は、労働災害による傷病の療養のために働くことができず、賃金を受けることができない場合に受けることができる給付金です。 休業1日につき給付基礎日額(平均賃金)の60%相当額について支給されます。 また、休業補償給付に加え、特別支給金を受給することもできます。特別支給金は給付基礎日額の20%です。 つまり、労災で休業した場合は、休業補償給付と休業特別支給金併せて、休業していなければ得られた給与の約80%が支払われるということです。 (3)障害(補償)給付 障害(補償)給付は、労働災害によって障害が残ったときに受けられる給付金です。障害補償給付は、障害補償年金と障害補償一時金に分けられます。 障害補償年金は、労働災害によって障害等級第1級から第7級までに該当する障害が残ったときに受けることができる給付金となります。 一方、障害補償一時金は、労働災害によって障害等級第8級から第14級までに該当する障害が残ったときに受けることができる給付金となります。 (4)遺族(補償)給付 遺族(補償)給付は、労働災害によって労働者が死亡したときに、遺族等が受けられる給付金です。 遺族補償給付は、遺族補償年金と遺族補償一時金に分けられます。 遺族補償年金とは、労働災害によって労働者が死亡した場合に遺族が受け取ることができる給付金となります。 遺族補償一時金とは、「遺族補償年金を受け取る遺族がいないとき」もしくは「遺族補償年金を受けている人が失権し、しかも他に遺族補償年金を受け取ることができる人がいないとき、かつ、すでに支給された年金の合計額が給付基礎日額1000日分に満たないとき」に支給されるものです。 (5)葬祭料・葬祭給付 葬祭料・葬祭給付は、労働災害により死亡した人の葬祭(葬儀など)を行う場合に給付されます。 支給金額は、31万5000円に給付基礎日額の30日分を加えた額、または、給付基礎日額の60日分の高い方の金額です。 (6)傷病(補償)年金 傷病(補償)年金は、労働災害によって負った傷病が、療養開始後1年6か月以降も「傷病が治癒または症状固定していない場合」かつ「症状による障害の程度が傷病等級に該当する場合」に受けることができる給付金です。 (7)介護(補償)給付 介護(補償)給付は、労働災害によって重い障害を負ってしまった方に支給される給付金です。具体的な条件は下記の2点を満たすことです。 介護(補償)給付を受けられる要件 傷病補償年金または障害補償年金受給者 精神、神経、胸腹部臓器機能の著しい障害がある者で常に、または、随時介護を受けている者 労災保険給付の申請は時効に注意! 労災保険給付には、給付の種類に応じて2年または5年の時効が設定されています。 時効が完成してしまうと、給付を受けられなくなってしまうため、早めに請求しましょう。 給付金の種類と時効は以下の通りです。 給付の種類時効起算日療養(補償)給付2年療養にかかる費用の支出が具体的に確定した日の翌日休業(補償)給付2年働くことができず賃金が受けられない日ごとの翌日葬祭料・葬祭給付2年労災で労働者が死亡した日の翌日介護(補償)給付2年介護を受けた月の翌月1日障害(補償)給付5年傷病が治癒(症状固定)した日の翌日遺族(補償)給付5年労災で労働者が死亡した日の翌日 時効が完成する前であれば、治療終了後、退職後であってもさかのぼって請求可能です。 なお、傷病(補償)年金の時効はありません。療養期間が長引いているケースなど、労働基準監督署長の裁量により支給されるものだからです。 会社が労災申請に協力的でないときはどうすべき? 労働基準監督署に相談する 会社が労災申請に協力的でないときは、会社による労災隠しが行われている可能性があります。その場合は、労災申請の窓口である労働基準監督署へ相談しましょう。 労働基準監督署に相談する際は、労災が発生したときの正確な状況、病気やケガの状態、会社がどのように対応したのかについて詳しく説明することが重要です。 会社が労災隠しを行う理由については『会社に労災隠しをされてしまった!労災隠しの対処法を解説』の記事をご覧ください。 労働基準監督署以外にも、相談できる窓口があるので、他の相談窓口が知りたい方は、『労災の相談はどこでできる?困ったときの相談先を紹介!無料の窓口も!』の記事をご覧ください。 弁護士に相談する 労災申請の手続きは労働基準監督署に相談すべきですが、労災において「会社に慰謝料を請求したい」「訴訟を起こしたい」とお考えの方は、弁護士に相談すべきです。 法律の専門家である弁護士は、法的な手続きのサポートを行ってくれます。 また、弁護士に相談すれば、時間をかけて個々の状況に応じた具体的なアドバイスを受けられ、状況次第で手続きや交渉を代行してもらえます。 関連記事 ・労災は弁護士に依頼するべき?気になる労災の手続きを紹介 --- ### 適応障害で休職するまでの流れと受け取れる給付金を解説 - Published: 2024-06-04 - Modified: 2024-06-10 - URL: https://atomfirm.com/roudou/12614 - Categories: 労働問題全般 適応障害と診断された場合に、休職するための流れや受け取れる給付金の金額・申請方法を詳しく解説しています。適応障害となったら、労災保険の休業給付による給付金もしくは傷病手当金を受け取ることができます。 仕事でのストレスが原因で適応障害と診断された場合には、療養のために休職を検討する方が多いと思います。 しかし、「本当に休職できるのか」「休職中の生活費はどうすればいいのか」など、悩むことは多いのではないでしょうか。 適応障害となったら、労災保険の休業(補償)給付もしくは傷病手当金を受け取ることができます。 この記事では、適応障害と診断された場合に、休職するまでの一般的な流れや受け取れる給付金の金額・申請方法を詳しく解説します。 休職後に退職を検討する際に取るべき対応も解説しているので、ぜひ最後までご覧ください。 適応障害で休職|休職中の給料はどうなる? そもそも休職とは 休職とは、労働者が何らかの理由で就業することが困難または不適当になった場合に、雇用契約を維持したまま就業を免除する制度のことです。 休職は、労働基準法で定められている制度ではありません。そのため、そもそも休職制度がない会社もあります。 また、休職制度がある場合でも、休職するための条件・休職できる期間などは会社によって異なります。 適応障害をはじめとする精神疾患で休職する場合には、就労が困難な状態かどうかを診断書などから判断されることになるでしょう。 休職中は原則給料が支払われない 休職中は、原則給料が支払われません。給料は「労働の対価として支払われる報酬」だからです。 休職中は労働ができない状況ゆえに「報酬を受け取る権利がない=給料が出ない」ということになります。 ただし、会社によっては給料が支払われることもあります。休職中に給料が支払われるか気になる方は、就業規則を確認しましょう。 「休職中であっても賃金を支払う」といった内容の規定があれば、給料が支払われます。 適応障害で休職するまでの一般的な流れ 適応障害で休職するまでの一般的な流れは、以下の通りです。 適応障害で休職するまでの流れ 病院を受診して診断書をもらう 会社に相談する 休職の手続きを行う (1)病院を受診して診断書をもらう 心身の不調を感じたら、早めに心療内科や精神科などの医療機関を受診しましょう。 医師の診察を受ける際には、「休職をしたいので診断書を発行してほしい」と伝えてください。 診断書の金額は各病院によって異なり、2,000円~10,000円が相場です。 なお、休職するためには原則、会社から診断書の提出を求められます。 休職に伴う今後の生活費のことから、できるだけ出費を抑えたいと考えるかもしれませんが、診断書は発行しておくべきです。 (2)会社に相談する 診断書を受け取ったら、直属の上司や人事担当者などとの面談の機会を設け、休職したい旨を伝えましょう。 面談の機会を設けることが難しい場合には、メールやビジネスチャットなどで申し出ることもできます。 医師の診断により、休職が必要と判断されていれば、休職が認められる可能性が高いです。 (3)休職の手続きを行う 休職の手続きとは、主に休職期間の確認や業務の引き継ぎなどです。 診断書とあわせて会社へ申請書の提出を求められるケースもあります。 できる範囲で現時点での復帰の見通しなども伝えておくといいでしょう。 休職中に受け取れる給付金 適応障害と診断されて休職する労働者が受け取れる主な給付金は、「労災保険の休業(補償)給付」と「健康保険による傷病手当金」の2つです。 労災保険の休業(補償)給付 適応障害が労災認定されれば、労災保険によって休業(補償)給付を受けとることが可能です。 たとえば、長時間労働や上司からのハラスメント、誰が見ても達成困難なノルマを強いられていたなどの理由で適応障害になった場合は、労災認定される可能性があります。 休業(補償)給付は、以下の条件を満たせば支給されます。 業務上の負傷や傷病による療養であること 労働できないこと 賃金の支払いがないこと 休業(補償)給付とは、労災で負った病気で休業した場合に認められる給付です。仕事を4日以上休業した場合に限り、給付基礎日額の80%(保険給付60%+特別支給金20%)を支給してもらえます。 給付基礎日額は、「3か月間の賃金総額÷3か月間の暦日数」で計算されます。 休業給付が支給される期間に制限はなく、休業開始から4日目から休業が終了するまで支払われます。 なお、休業開始1日~3日間は「待期期間」といわれ、休業給付は支払われません。ただし、待期期間中は会社から労働者に給付基礎日額の60%が支払われます。 健康保険による傷病手当金 労災の認定がされなかったら、健康保険による傷病手当金を請求することができます。 傷病手当金とは、病気やケガで仕事を休み、その間の給与を受けられないときに支給される健康保険の給付金です。 傷病手当金においても、以下のような受給条件が定められています。 業務外の病気やケガであること 仕事に就くことができない状態であること 連続する3日間を含み、4日以上仕事に就けなかったこと 休業した期間について、給与の支払いがないこと 条件を満たせば、給料のおおよそ3分の2が支給されます。 傷病手当金が支給されるのは、支給開始日から最長で1年6か月間です。 もっとも、復職が難しく、会社を退職して健康保険から国民健康保険に切り替わった場合でも、傷病手当金の給付は継続できます。 ただし、退職日までに被保険者期間が継続して1年以上あり、被保険者資格喪失日の前日に傷病手当金の給付を受けているか、受けられる状態になっていることが条件です。 労災保険の休業(補償)給付の申請方法 (1)医師の診断を受けて診断書をもらう 適応障害を証明するためには、医師による診察が必要になります。 適応障害をはじめとする精神疾患は、他人から見ても判断がつきにくいことが多いので、専門の医師による診察と適切な治療を受けているかが重要です。 また、これらの精神疾患を患っていることを証明するために、診断書が必要となります。診断書のみならず、診察時のカルテが労災認定の判断に用いられる場合もあります。 (2)会社に「事業主証明」を書いてもらう 診断を受けたら、労働基準監督署に請求書を提出しましょう。請求書の様式は、厚生労働省のホームページからダウンロードできます。 請求書には、会社が労災の証明を記載する「事業主証明欄」があり、この部分は会社側に記載してもらうことが必要です。 しかし、会社側が労災の保険料負担増加を懸念することなどから、事業主証明の記載を拒否することもあります。 会社が労災を認めない・いわゆる労災隠しを行う理由については『会社に労災隠しをされてしまった!労災隠しの対処法を解説』の記事で詳しく解説しています。 なお、会社に事業主証明を拒否された場合でも労災保険の請求はできるため、労働基準監督署に相談しましょう。 (3)請求書を労働基準監督署に提出する 請求書に記入できたら、労働基準監督署に提出しましょう。 給付金の種類ごとに申請期限が設けられているので、注意が必要です。 参考:「労災保険の各種給付の請求はいつまでできますか。」|厚生労働省 労働基準監督署への請求が認められれば、労災認定となり、労災保険の受給が可能になります。 労災の請求をしてから実際に労災保険を受給するまではおおむね1か月程度かかります。内容によっては数か月間かかる場合もあります。労災の被害に遭った際には速やかに手続きを進めましょう。 傷病手当金の申請方法 (1)会社に相談し、待機期間を完成させる 会社に相談し、適応障害で仕事を休むことを伝えます。傷病手当金を受給するためには、「連続する3日間を含み、4日以上仕事に就けなかったこと」が必要であるため、待機期間を完成させましょう。 (2)傷病手当金支給申請書に記入する 傷病手当金支給申請書に、必要事項を正確に記入してください。 通院先の医師が意見を記入する項目もあるので、確認のうえ症状を記載してもらいましょう。 (3)書類を提出する 必要事項を記入したら、会社の担当部署に提出するのが一般的です。 申請書には会社側が記載する項目もありますが、通常会社側で記載してくれます。その後の提出手続きも会社が行ってくれることが多いです。 参考:健康保険傷病手当金支給申請書|全国健康保険協会 記載に問題がなければ、提出から約1か月~2か月程度で支給されます。 適応障害で休職する際の注意点 社会保険の支払い義務は免除されない 休職中であっても、健康保険料や厚生年金保険料などの社会保険料の支払い義務は免除されません。 休職中は無給のため給与から天引きされなくなります。 そのため、休職中の労働者の社会保険料は、会社が一旦立て替えて納付し、あとから労働者に請求するケースが多いです。 適応障害による休職中でも、社会保険料を支払う必要があることは覚えておきましょう。 休職中も会社に対する報告は必要 休職中は、療養に専念できますが、会社との雇用関係は継続しています。 そのため、体調の経過や治療状況、復職の目途などを定期的に会社に報告する必要があります。 報告の仕方や頻度は会社からの指示に従いましょう。 休職期間満了後に復職できなければ自然退職・解雇となる 休職期間満了後に復職ができないと、自然退職または解雇となることが通常です。 しかし、復職可能な状態にないにもかかわらず、会社の都合で一方的に解雇されることがあります。 自然退職または解雇を告げられて納得がいかない場合は、弁護士に相談しましょう。 弁護士に相談すれば、適応障害による休職後に会社が行った解雇の無効・撤回を訴えることができるケースがあります。 不当解雇で弁護士に相談するかお悩みの方へ 適応障害で不当解雇された場合には、弁護士に相談することが重要です。弁護士に相談するメリットや相談するときのポイントを解説しています。 不当解雇は弁護士に相談すべき?相談するときのポイントを解説 適応障害で退職する際に行っておくべきこと 最後に、適応障害で休職しても復職が難しく、そのまま退職を検討するケースもあると思います。 ここでは、適応障害で退職する際に行っておくべきことを解説します。 自立支援医療制度の申請をする 自立支援医療制度とは、心身の障害に対する医療費の自己負担を軽減する制度です。 自立支援医療制度は全ての精神疾患を対象にしていますので、適応障害も含まれます。 自立支援医療制度を利用するメリットは、医療費の自己負担額を一定額や1割に軽減できることです。 通常、65歳未満であれば医療費の自己負担割合は3割なので、負担額をおおきく軽減することができます。 ただし、自立支援医療制度が適用される医療機関は、都道府県が指定した病院や薬局のみです。 もっとも、指定医療機関数は非常に多いので、通院出来る範囲内に指定医療機関はあることがほとんどでしょう。 参考までに例を挙げると、神奈川県の自立支援医療制度の指定病院(精神通院医療)は343棟、薬局は1351店舗あります。 自立支援医療制度の相談や申請は、お住まいの市区町村の障害福祉課が窓口になります。 制度の申請を検討されている方は、一度相談されてみることをおすすめします。 国民年金保険料の免除・猶予申請をする 退職するにあたって、あまり金銭的な余裕がない方は、国民健康保険料の免除・猶予の申請をすることが可能です。 国民年金保険料が免除になった場合、失業した前の月から翌々年の6月までの国民年金保険料の全額もしくは一部(4分の3、半額、4分の1)が免除されます。 どのくらい免除になるか、また猶予になるかはケースバイケースです。 そのため、国民年金保険料の猶予・免除を検討されているのであれば、ご自身のお住まいの市区町村の国民年金担当窓口、またはお近くの年金事務所に一度相談されることをおすすめします。 雇用保険の延長手続きをする 適応障害で退職した場合、しばらくの間は求職活動をせずに治療に専念される方も多いかと思います。 そのような方は、雇用保険の延長申請をすることをおすすめします。 雇用保険とは、失業や休業で収入が減ってしまった労働者の生活を安定させ、再就職を支援するために設けられた社会保険制度です。 雇用保険は、求職期間中の生活を安定させることを目的としているため、給付条件の一つに「求職活動を行なっていること」があります。 適応障害ですぐには就職できず、求職活動しない期間は、基本手当を受け取ることができません。 しかし、退職後雇用保険をそのまま放置してしまった場合、離職日の翌日から1年を経過すると求職活動を開始した場合でも雇用保険の受給資格が消滅してしまいます。 適応障害で30日以上働くことが出来ない場合、雇用保険の延長手続きを行えば、本来の受給期間1年間に加えて、最大3年間の延長が可能です。 延長申請は、受け取れる金額にも関わるので、できるだけ早めに行いましょう。ご自身のお住まいの住所を管轄しているハローワークで行うことができます。 参考:全国ハローワークの所在案内|厚生労働省 国民健康保険料の減額の申請ができるか確認する お住まいの市区町村にもよりますが、適応障害を理由に退職された方は国民健康保険料の減額を認めている市区町村も多いです。 適応障害を理由に退職された方は、特定理由離職者となります。 特定理由離職者の国民健康保険料減額を認めている市区町村では、前年中の給与所得を100分の30として保険料を計算するところが多いです。 ただし、適応障害で離職された方は、上記の通り療養もあるため、すぐに求職活動を始めて雇用保険の受給資格者になることは難しいでしょう。 そのため、雇用保険の受給開始するまでは減額申請をすることができませんが、受給資格者になると退職の翌日にまで遡って減額されて既に支払った保険料は返却されます。 もっとも、市区町村によって取り扱いが異なります。 国民健康保険の減額を検討されている方は、お住いの市区町村の国民健康保険課にお問い合わせください。 まとめ 適応障害で休職を検討している方は、会社に休職制度があるかどうか確認しましょう。 休職すると、原則給料は支払われません。しかし、適応障害が労災認定されれば、労災保険によって休業(補償)給付、労災認定されないケースでも傷病手当金を受け取り、生活を守りながら療養にあたることができます。 適応障害による休職後の復職に関しては、会社と労働者間でトラブルに発展するケースがあります。会社から一方的に自然退職または解雇を告げられて納得がいかない場合は、弁護士に相談しましょう。 --- ### セクハラで労災認定を受けることはできる!認定されるための条件と申請の流れ - Published: 2024-05-31 - Modified: 2024-06-28 - URL: https://atomfirm.com/roudou/12504 - Categories: ハラスメント・いじめ セクハラ被害によるうつ病や適応障害でお悩みの方に向けて労災の認定を受ける条件や申請の流れを解説しています。労災が認定されれば保険によって補償を受けられます。 「上司の執拗なセクハラで適応障害になった」「セクハラ被害で休職を検討している。労災認定は可能?」 セクハラ被害が原因でうつ病や適応障害などの精神疾患になった場合、労災認定されれば、労災保険によって補償を受けることができます。 ただし、セクハラ被害で労災認定を受けるためには、いくつかの条件を満たす必要があります。 この記事では、セクハラで労災認定を受けるための条件や労災申請を行う流れを解説します。 セクハラで労災認定を受けるための条件 セクハラで労災認定を受けるためには、以下の3つの条件をすべて満たす必要があります。 セクハラで労災認定されるための条件 労災認定の対象となる精神疾患を患うこと 発病前の約6か月間に、セクハラによる強い心理的負荷が認められること セクハラ以外、もしくは個体要因による発病でないこと それぞれ詳しく解説していきます。そもそもセクハラがどういったものか詳しく知りたい方は『どこからがセクハラになる?結局セクハラの基準は?職場のセクハラ発言一覧』の記事もあわせてご覧ください。 (1)労災認定の対象となる精神疾患を患うこと まず、労災認定を受けるためには、厚生労働省が定める「心理的負荷による精神障害の労災認定基準」に該当する精神疾患を患っていることが必要です。 対象となる精神疾患の代表的なものは、うつ病や適応障害、急性ストレス反応などです。 参考:「ICD-10(国際疾病分類)第5章 精神および行動の障害」厚生労働省 (2)発症前の約6か月間に、セクハラによる強い心理的負荷が認められること セクハラで労災認定されるためには、発病前の約6か月間に、業務上のセクハラ被害による強い心理的負荷が認められることが重要です。 心理的負荷の強度は負荷の種類ごとに「弱」「中」「強」の3段階で評価され、心理的負荷が「強」と評価されれば、原則労災と認められます。 (3)セクハラ以外、もしくは個体要因による発病でないこと セクハラで労災認定を受けるためには、業務上のセクハラ被害で精神疾患を患っている必要があります。 そのため、精神疾患を患った原因が、「離婚した」「多額の借金を負った」など、業務とは関係ないものであるときは労災認定されません。 また、過去にセクハラとは無関係に精神疾患を患っていたり、アルコールや薬物依存があったりした場合には精神疾患の要因がセクハラ以外にある可能性を慎重に判断されます。 ここまで紹介した3つの条件が揃ってはじめて、セクハラの労災と認定されます。 心理的負荷が「強」と判断される例 心理的負荷の認定は、「特別な出来事」がある場合とない場合に分類できます。 特別な出来事がある場合 まず、不同意性交や本人の意思を抑圧してわいせつ行為が行われた場合は、心理的負荷が「強」となります。 1度だけでも被害者の尊厳を大きく傷つける行為です。 特別な出来事がない場合 特別な出来事がない場合は、「セクハラの内容や程度、継続する状況」「セクハラ後の会社の対応や改善状況、人間関係」などを総合的に評価されます。 中でも、心理的負荷が「強」と判断されるようなケースは以下の通りです。 身体接触を含むケース 胸や腰などへの身体接触を継続して行われた 会社にセクハラ被害を訴えたものの適切な対応がされなかった 身体接触を含まないケース セクハラ発言の中に人格を否定するものが含まれており、継続して発言された 性的な発言が継続し、会社が把握しても適切な対応や改善が見られなかった 一方、セクハラ行為が一度きりだった、会社にセクハラ被害を訴えたら適切な対応が取られ改善されたなどのケースでは、心理的負荷が「中」となり、労災認定されないこともあります。 参考:セクシュアルハラスメントによる精神障害の労災認定について|厚生労働省 セクハラで労災申請を行う流れ (1)医師の診断を受けて診断書をもらう 精神疾患を証明するためには、医師による診察が必要になります。 精神疾患は他人から見ても判断がつきにくいことが多いので、専門の医師による診察と適切な治療を受けているかが重要です。 また、これらの精神疾患を患っていることを証明するために、診断書が必要となります。診断書のみならず、診察時のカルテが労災認定の判断に用いられる場合もあります。 (2)会社に「事業主証明」を書いてもらう 診断を受けたら、労働基準監督署に請求書を提出しましょう。請求書の様式は、厚生労働省のホームページからダウンロードできます。 請求書には、会社が労災の証明を記載する「事業主証明欄」があり、この部分は会社側に記載してもらうことが必要です。 しかし、会社側が労災の保険料負担増加を懸念することなどから、事業主証明の記載を拒否することもあります。 会社が労災を認めない・いわゆる労災隠しを行う理由については『会社に労災隠しをされてしまった!労災隠しの対処法を解説』の記事で詳しく解説しています。 なお、会社に事業主証明を拒否された場合でも労災保険の請求はできるため、労働基準監督署に相談しましょう。 (3)請求書を労働基準監督署に提出する 請求書に記入できたら、労働基準監督署に提出しましょう。 給付金の種類ごとに申請期限が設けられているので、注意が必要です。 参考:「労災保険の各種給付の請求はいつまでできますか。」|厚生労働省 労働基準監督署への請求が認められれば、労災認定となり、労災保険の受給が可能になります。 労災の請求をしてから実際に労災保険を受給するまではおおむね1か月程度かかります。内容によっては数か月間かかる場合もあります。労災の被害に遭った際には速やかに手続きを進めましょう。 セクハラによる労災認定で受け取れる金額 セクハラで労災認定を受けた場合、労働者は労災保険から給付金を受け取れます。ここではセクハラで労災認定された際に受け取れる主な給付金を紹介します。 療養(補償)給付:全額 療養(補償)給付とは、労災による病気の治療費を補償するものです。 労働者の治療費や通院料、入院料に至るまでが全額労災保険で支払われます。 休業(補償)給付:8割 休業(補償)給付とは、労災で負った病気によって休業した場合に認められる給付です。 休業(補償)給付は、以下の条件を満たせば支給されます。 業務上の負傷や傷病による療養であること 労働できないこと 賃金の支払いがないこと 休業(補償)給付は、仕事を4日以上休業した場合に限り、給付基礎日額の80%(保険給付60%+特別支給金20%)を支給してもらえます。 給付基礎日額は、「3か月間の賃金総額÷3か月間の暦日数」で計算されます。 休業給付が支給される期間に制限はなく、休業開始から4日目から休業が終了するまで支払われます。 なお、休業開始1日~3日間は「待期期間」といわれ、休業給付は支払われません。ただし、待期期間中は会社から労働者に給付基礎日額の60%が支払われます。 関連記事 ・労災の休業補償を受けるための手続きは?医師の証明が必要な理由 セクハラは慰謝料請求も検討すべき 慰謝料請求は労災認定の有無に関係なくできる セクハラで労災が認定されれば、治療費の全額や休業した場合の賃金は8割給付されます。しかし、労災給付はあくまで生活を守るための賃金です。 セクハラで精神疾患を患った場合は、慰謝料請求も検討しましょう。 セクハラ行為自体が労働者に対する不法行為となるため、労災認定の有無にかかわらず慰謝料請求可能です。 セクハラにあって、精神的な苦痛を受けた場合、セクハラ行為者や会社に対して慰謝料を請求することができます。 セクハラで慰謝料請求する場合は、会社と労働者の両方に請求することが一般的です。 セクハラの慰謝料は加害者の地位が高く、被害者にとって拒むことが難しい状態でのセクハラであれば、高額になる傾向があります。 セクハラの慰謝料の事例を詳しく知りたい方は、『セクハラで慰謝料を請求したい!慰謝料の相場や用意すべき証拠を解説』の記事をご覧ください。 セクハラの慰謝料請求は弁護士に相談 セクハラで慰謝料を請求したい方は、法律の専門家である弁護士に相談しましょう。 弁護士に相談することで、そもそも自分が受けている行為がセクハラに該当するのか、過去の判例などから慰謝料がいくら受け取れる可能性があるのかなどを知ることができます。 また、セクハラで慰謝料請求するための証拠の収集方法についてもアドバイスをもらうことができます。 弁護士に相談した際には、セクハラの期間や態様などを聞かれることになるので、事前にある程度情報を整理してからいくと、より適切な回答をうけられるでしょう。 関連記事 ・セクハラを弁護士に相談する|費用・準備するもの・注意点を確認! まとめ セクハラ被害が原因でうつ病や適応障害などの精神疾患になった場合、労災認定される場合があります。 労災が認定されれば、労災保険の療養(補償)給付で治療費用が全額、休業(補償)給付により給与の約8割が支払われます。 セクハラ被害で悩んでいる方は、労災申請を行う流れを確認し、請求しましょう。 労災は労働基準監督署に請求するため、労災に関して分からない点があれば労働基準監督署への相談がおすすめです。 なお、労災の相談窓口については『労災の相談はどこでできる?困ったときの相談先を紹介!無料の窓口も!』の記事で相談先ごとの特徴を解説しています。 セクハラで慰謝料請求を検討している方は弁護士への相談がおすすめです。 無料の相談を受け付けている弁護士事務所や、女性弁護士が相談に乗ってくれる事務所もあるので、抱え込まずに相談してみてください。 「これはセクハラじゃないのかも」「周りの人も我慢している」などの理由で自身でセクハラ被害を抱え込む必要はありません。 専門家への相談がセクハラ被害解決の一歩となります。 --- ### 懲戒解雇とは?要件と具体例、解雇されたときの対処法を徹底解説! - Published: 2024-05-31 - Modified: 2025-01-29 - URL: https://atomfirm.com/roudou/12463 - Categories: 不当解雇 懲戒解雇とは、就業規則上の懲戒事由に反したことを理由に、使用者(会社)が一方的に労働者との契約を解除することを指します。懲戒解雇がどのようなものか、労働者が懲戒解雇されたときの対処法を解説しています。 懲戒解雇とは、就業規則上の懲戒事由に反したことを理由に、使用者(会社)が一方的に労働者との契約を解除することを指します。 懲戒解雇されると、自分に非があることから受け入れてしまいがちです。しかし、会社から不当な懲戒解雇を言い渡されたり、会社の就業規則に懲戒解雇に関する記載がなかったりするケースもあります。 この記事では、懲戒解雇の要件と懲戒解雇が認められる具体例、不当な懲戒解雇をされたときの対処法を詳しく解説します。 懲戒解雇とは? 懲戒解雇とは 懲戒解雇とは、就業規則上の懲戒事由に反したことを理由に、使用者(会社)が一方的に労働者との契約を解除することを指します。 解雇には、普通解雇・整理解雇・懲戒解雇の3つの種類があります。中でも懲戒解雇は社内秩序を著しく害した労働者へのペナルティとして行われる解雇であり、普通解雇・整理解雇とは性質が異なります。 解雇の種類について詳しく知りたい方は『不当解雇とは?正当な解雇との違いや不当解雇の事例を解説』の記事もご覧ください。 懲戒解雇は最も重たい懲戒処分 懲戒解雇は、懲戒処分の一つです。 懲戒処分は大きく6種類に分類できますが、その中で懲戒解雇は最も重たい懲戒処分です。 懲戒処分の種類※下に行くほど重くなる 戒告・けん責:従業員の将来を戒めるために行う処分 減給:給与の一部を減額する処分 出勤停止:一定期間、出勤を停止する処分 降格:役職を下げる処分 諭旨解雇:従業員に自主的に退職を促す処分 懲戒解雇:従業員を解雇する処分 懲戒解雇されたときのチェックポイント 懲戒解雇された場合は、以下の点を確認しましょう。 懲戒解雇されたときのチェックポイント 就業規則に合理的な懲戒処分の根拠が明記されているか 懲戒解雇が懲戒権の濫用にあたらないか 懲戒解雇までの適正な手続きが踏まれているか 就業規則に合理的な懲戒処分の根拠が明記されているか 懲戒解雇をされたら、まずは就業規則の規定を確認してください。 懲戒処分をするためには、就業規則や労働契約に有効な懲戒処分の根拠がなければなりません。ただ規定が明記されているだけでは足りず、その規定が有効である必要があります。 具体的には以下が要求されます。 懲戒事由及び懲戒の種類が明記されていること 懲戒規定(就業規則等)が労働者に周知されていること 懲戒規定が合理的な内容であること 就業規則は労働者に周知されている必要があります。 就業規則が周知されていない場合は、就業規則に懲戒事由及び種類が明記されていたとしても、懲戒解雇が違法となります。 就業規則の周知の方法や確認方法は『就業規則を見たことがない!就業規則のない会社は違法?』の記事をご覧ください。 また、懲戒規定を処分後に後付けすることは認められません。 懲戒解雇が懲戒権の濫用にあたらないか 会社の懲戒権の行使は、客観的に合理的理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、懲戒権の濫用として無効となります(労働契約法15条)。 一般に、懲戒権の濫用にあたるかどうかは、対象となる労働者の行為の性質・態様、その他の事情を考慮して判断されます。 労働者の非違行為の性質、態様、程度 就業規則の懲戒事由への該当性 情状されるべき事情 懲戒権の行使に至るまでの過程 同様の事案における懲戒状況 「非違行為」とは、就業規則などの会社で定められているルールを違反する行為のことです。 たとえば、就業規則に記載のないような軽微な非違行為の場合は、その行為により企業秩序を乱したとまでは考えられず、懲戒解雇となる客観的に合理的な理由がないと言えます。 懲戒解雇までの適正な手続きが踏まれているか 懲戒処分は、制裁罰としての性格を持つため、適正な手続きを踏む必要があります。 多くの企業では、懲戒委員会や労使協議会などでの検討を行う、当事者に弁明の機会を与えるなどの手続きを経た上で処分を決定するという運用を取っています。 弁明の機会が与えられない、懲戒解雇の理由を告知されない場合は、適正な手続きを踏まれていないため、懲戒解雇は無効になる可能性があります。 不当な懲戒解雇でお悩みの方へ 企業が従業員を懲戒解雇するためには厳しい要件が設けられており、法的な要件を満たさなければ懲戒解雇は違法となります。 不当な懲戒解雇だと感じる方は今すぐに弁護士に相談してください。 懲戒解雇されたら弁護士に相談!弁護士に相談すべき理由を解説 懲戒解雇が認められる行為と具体例 ここでは、懲戒解雇が認められる主な行為と具体例を解説していきます。 業務上の地位を利用した犯罪行為 業務上の地位を利用し、横領や窃盗などの犯罪行為をした場合、懲戒解雇されることがあります。 たとえば、経理担当者が不正経理によって会社のお金を横領した、営業担当者が架空取引で利益を得るといった刑事責任を問われるような行為です。 たとえ刑事事件として立件されない場合でも、会社側には大きな損害が被る深刻な背信行為のため、懲戒解雇になる可能性は高いと言えるでしょう。 会社の名誉を著しく害する犯罪行為 業務には関係ないとしても、重大な犯罪行為や、会社の名誉を著しく害する犯罪行為があった場合は、懲戒解雇が認められることがあります。 たとえば、殺人、強盗、放火などの行為です。 ただし、会社の信用や社会的評価を害する行為だとしても、それが職場以外の私生活の範囲での行為である場合は、すぐに懲戒解雇されるということはありません。 しかし、労働者の私生活の言動により、会社に著しくダメージを与えた場合は、懲戒解雇が認められる可能性が高くなります。 重要な経歴詐称 採用の判断に大きな影響を与える学歴、資格、職歴、犯罪歴などの経歴を偽っていた場合、経歴詐称として懲戒解雇が認められる可能性があります。 たとえば、特定資格を保有していなければ働けない職種につくために資格を保有していると偽ったり、大卒募集としている仕事につくために高卒なのに大卒と偽ったりする行為は、重要な経歴詐称と認められやすいでしょう。 ただし、単に経歴詐称をしたとしても、懲戒解雇が認められるというわけではありません。 あくまでも「重要な」経歴詐称をした場合です。 なにが重要な経歴詐称にあたるかは、詐称内容や当該労働者の職種などに即し個別具体的に判断されます。 長期間にわたる無断欠勤 正当な理由なく、長期間にわたる無断欠勤をした場合にも懲戒解雇の対象となることがあります。 たとえば、1か月以上の無断欠勤や遅刻・早退などを続けたり、出勤命令を拒否し続けたりするケースです。 しかし、1回の欠席や遅刻で懲戒解雇になるということはありません。 無断欠勤などが相当悪質で、社内の秩序を著しく乱すような場合は、懲戒解雇が認められると考えられています。 セクハラ・パワハラなどのハラスメント セクハラやパワハラなどのハラスメントで懲戒解雇となる場合もあります。ハラスメントでの懲戒解雇は、大きく2つのパターンがあります。 1つ目は「極めて悪質なハラスメント」で、犯罪に近い行為がこれに該当します。 たとえば、セクハラのケースは不同意性交や不同意わいせつ、パワハラのケースは恐喝や傷害により、業務に大きな支障があった場合は懲戒解雇の対象となります。 2つ目は「同様の行為を繰り返すハラスメント」です。 軽度のセクハラやパワハラは厳重注意、戒告・減給などの比較的軽い懲戒処分で終わることが多いです。 しかし、再三注意されても同様の行為を繰り返し、改善の見込みがないことが認められると、社内秩序を乱したとして懲戒解雇の対象になることもあります。 懲戒解雇されたときにすべきこと 懲戒解雇の理由には明確な定めがないため、不当な理由で懲戒解雇されてしまうこともあります。 では、懲戒解雇処分に納得できない場合、どのように対処すればよいのでしょうか。 就業規則を確認する 懲戒解雇された場合、もしくは懲戒解雇になりそうな場合は、まず就業規則を確認してください。 就業規則に懲戒解雇ができる事由が明記されていない場合、懲戒解雇をすることはできません。 そのため、会社から懲戒解雇された場合、自分の問題行為が就業規則の懲戒事由に記載されているかどうかを確認しましょう。 就業規則に記載がないにもかかわらず懲戒解雇された場合は、懲戒解雇が無効となる可能性が高いです。今後の対応について弁護士に相談しましょう。 解雇理由証明書を請求する 懲戒解雇に限らず、解雇された場合は、「解雇理由証明書」を会社に請求してください。 解雇理由証明書には、どのような理由で解雇をしたか記載されています。解雇の正確な理由を知ることができます。 もしも不当な解雇であった場合は、それを主張する証拠ともなります。 関連記事 ・解雇理由証明書を請求する方法は?請求するために知っておくべきことを解説 失業保険を申請する 懲戒解雇された場合には、失業保険を申請しましょう。 懲戒解雇されると失業保険の給付制限を受ける可能性があるため、なるべく早めに申請しておくといいでしょう。 懲戒解雇に納得がいかずに、不当解雇を争っている間でも、失業保険は受給できます。 ただし、失業保険の「仮給付」と呼ばれる手続きを利用して、解雇を争っていることを証明する必要があります。詳しくはハローワークなどの窓口に相談しましょう。 関連記事 ・失業保険(雇用保険)とは?受給条件・申請期間・無料相談窓口も! 懲戒解雇されるとどのようなデメリットがある? 退職金や解雇予告手当がもらえない 懲戒解雇されると、退職金や解雇予告手当がもらえないことが多いです。 ただし、会社が退職金などを不支給とするには一定の制約があるので確認しておきましょう。 退職金の不支給 退職金については、下記の2要件に該当すれば、全額不支給または一部不支給になる可能性があります。 就業規則に退職金を不支給にすることが明記されている 従業員の永年の功を抹消・減殺するほどの重大な不信行為がある 就業規則に退職金を不支給にすることが明記されていなければ退職金を請求できます。就業規則に退職金を不支給にすることが明記されているか確認しましょう。 解雇予告手当の不支給 会社が労働基準監督署に申請して解雇予告除外認定を受けた場合、即時解雇されても従業員は解雇予告手当を受けられません。 解雇予告手当については労働基準監督署の解雇予告除外認定を受けているか確認しましょう。 解雇予告手当がもらえないケースについては『解雇予告手当がもらえない!法的にもらえないケースや請求方法を解説!』の記事で詳しく解説しています。 失業保険の給付が不利になる可能性がある 懲戒解雇されると、失業保険の給付においても不利になる可能性があります。 ただし、失業保険において不利になるのは、懲戒解雇が「重責解雇」となった場合です。 重責解雇とは、雇用保険(失業保険)上の概念で、労働者が自己の責めに帰すべき重大な理由によって解雇されることをいいます。 犯罪行為などで懲戒解雇された場合は、重責解雇となる可能性が高いです。 重責解雇となると、7日間の待期期間に加えて3か月間の給付制限期間が生じたり、給付日数が短くなったりするデメリットがあります。 もっとも、懲戒解雇されたとしても、重責解雇になるとは限りません。 重責解雇にならなければ、7日間の待期期間後3か月の給付制限を受けることなく、すぐに失業保険を受給できます。 再就職活動が不利になる可能性がある 懲戒解雇されると、転職・再就職活動が不利になる可能性があります。 再就職活動のとき、就職希望の会社に懲戒解雇されたことを話すと、採用が見送られることもあるでしょう。 また、懲戒解雇されたことを隠して面接を受けても、退職証明書や離職票の提出を求められた場合や入社後に懲戒解雇がわかると経歴詐称で解雇される場合もあります。 懲戒解雇のことを話したことで、希望する会社に再就職できないデメリットは大きいです。 もっとも、懲戒解雇された事実を隠して入社した場合も、嘘をついて仕事を続ける精神的苦痛や発覚した時のリスクは非常に大きくなります。 懲戒解雇されても、懲戒解雇された事実を隠さずに面接で伝え、再就職できた人も多くいます。再就職して人生をやり直すことは不可能ではありません。 参考サイト 以下のサイトでは、実際に懲戒解雇から社会復帰された方の体験談などをまとめています。 ぜひ参考にしてみてください。 前科・逮捕・懲戒解雇からの社会復帰を応援するメディア|人生やり直しラボ 懲戒解雇が不当な解雇と感じた場合の対処法 懲戒解雇は会社が自由にできるわけではなく、厳しい要件が定められています。 就業規則に記載のない理由で解雇されたり、一度のミスで指導なく解雇されたりした場合は不当解雇の可能性があります。 懲戒解雇が不当な解雇と感じた場合の対処法をご紹介します。 会社に対して直接交渉をする 会社と交渉をすることで、解雇自体を撤回して職場復帰できたり、不当解雇されたことに対して損害賠償を請求できる可能性があります。 懲戒解雇による損害賠償請求が認められるには、その行為が不法行為だったと証明しなければいけません。 民法709条には、故意または過失によって他人の利益を侵害した者は、不法行為による損害賠償責任を負うとあります。 この規定に従えば、不法行為に該当する懲戒解雇だと立証できれば、損害賠償請求は認められます。 注意すべきは不当解雇だからといって、必ずしも違法な解雇に該当するとは限らない点です。不当解雇の違法性が著しい場合にのみ、損害賠償請求は可能とされています。 不当解雇の慰謝料は、不法行為の違法性が高いほど高額になる傾向があります。不当解雇による慰謝料の相場は、50~100万円です。 たとえば、パワハラを受け、それに抗議したら懲戒解雇となったケースでは、会社側とパワハラをした上司にそれぞれ100万円の支払いが命じられました。 具体的な事例に沿った不当解雇の損害賠償の相場を知りたい方は『不当解雇されたら裁判で慰謝料を請求!損害賠償の相場と相談窓口』の記事をご覧ください。 労働審判や訴訟を行う 会社との交渉がうまくいかない場合は、労働審判や訴訟を起こすこともできます。 労働審判は、訴訟よりも速やかに手続きが進むため、早期の解決が期待できるでしょう。労働審判について詳しく知りたい方は『労働審判とは?制度の内容や手続きの流れを弁護士がわかりやすく解説』の記事をご覧ください。 一方、訴訟は裁判所での審理が必要となりますが、より多くの金銭的な賠償を得られる可能性があります。 懲戒解雇に関するよくある質問 Q. 遅刻を繰り返すと懲戒解雇される? 一般的には遅刻のみで懲戒解雇となることは少ないです。 しかし、遅刻以外に無断欠勤や業務命令違反、社内秩序を乱すような行為が相まって懲戒解雇が言い渡される可能性はあります。 遅刻したことだけを理由に懲戒解雇するためは、就業規則に以下のような「遅刻が理由で懲戒解雇となりうる」ということがわかる規定があることが必要です。 就業規則における記載の例 第●条 労働者が次のいずれかに該当するときは、懲戒解雇とする。 〇号  正当な理由なく無断でしばしば遅刻、早退又は欠勤を繰り返し、〇回にわたって注意を受けても改めなかったとき 就業規則に遅刻に関する規定があった場合には、遅刻のみで解雇されることもあるでしょう。 Q. 転勤を拒否したら懲戒解雇される? 転勤拒否すると懲戒解雇される可能性があります。理由としては、長期雇用を前提とする正社員に対しては配置転換命令権の存在が強く肯定されているからです。 配置転換とは、従業員の職務内容や勤務場所が長期にわたって変更されることを指します。 通常、正社員は採用時点では職種や勤務地が限定されておらず、長期雇用が前提とされていることもあり、会社は配置転換命令権を有していると考えられます。 配置転換命令権の実効性を担保するために、会社側はその義務を履行しない従業員に対して、懲戒解雇処分を行うことが相当だとされます。ただし、転勤命令に従わない社員に対して、即座に懲戒解雇処分を下すのは禁じ手です。 必要かつ相当な説得を行い、それでも命令に従わなかった場合でないと懲戒解雇処分はされません。 とはいえ、結局は命令に従い転勤を認めなければ、最終的に懲戒解雇処分を受けることもあります。転勤命令は非常に強制力が強いものであることは認識しておきましょう。 Q. 副業がバレたら懲戒解雇される? 副業を会社に隠して行っていても、本業に支障が出ていなければ懲戒解雇されることはありません。 副業は私生活上の行為であるから、労働者が自由に行えることが原則です。会社が副業を禁止できるのは、本業に支障がある場合、職場秩序に影響する場合、企業秘密が漏洩する危険性がある場合に限られます。 たとえ、就業規則で禁止をされていたり、無許可で行っていた副業であっても、本業に支障がないのであれば副業を理由に懲戒解雇をすることは認められません。 もっとも、副業により本業に支障をきたしていれば、指導や禁止命令の末に懲戒解雇される可能性もあります。 Q. 懲戒解雇されたら有給休暇はなくなる? 懲戒解雇の場合、有給休暇がなくなるかどうかは、 「即時解雇」 か 「予告解雇」 かにより異なります。 即時解雇の場合 懲戒解雇が即日解雇である場合、従業員は解雇された日以降、年次有給休暇を取得することはできません。 有給休暇は雇用契約に伴い発生する権利であり、解雇日(雇用契約が終了する日)に、有給休暇を取得する権利が消滅するからです。 裁判などで解雇が無効とされない限り、有給休暇を取得する権利は解雇日に消滅します。 予告解雇の場合 懲戒解雇が予告解雇である場合、従業員は解雇予告期間中に有給休暇を取得することができます。 会社は、解雇予告期間中に従業員に有給休暇を取得させる義務があります。有給休暇の取得を認めないことはできません。 Q. 懲戒解雇されたら人生終了? 懲戒解雇されると、再就職が不利になるなどから、「人生終了」と言われることがあります。 しかし、当然ですが懲戒解雇されたとしても、人生が終了になるわけではありません。正直に懲戒解雇されたことを伝えて再就職している方や、起業・フリーランスの道を選んだ方もいます。 また、企業側から一方的に懲戒解雇された場合は、懲戒解雇が無効となる可能性もあります。懲戒解雇されたからといって悲観的に考えすぎることなく、今後の対策を練りましょう。 懲戒解雇についてお悩みならまずは弁護士に相談 懲戒解雇は労働者にとって非常に重たい処分です。懲戒解雇をされたからといって泣き寝入りする必要はありません。 法的な要件を満たさなければ懲戒解雇は違法ですし、慰謝料が請求できる場合もあるでしょう。 特に、少しでもやましいところがあると、つい懲戒解雇を認めてしまいがちです。 しかし、厳格な条件のもとでのみ認められるものですので、懲戒解雇について納得がいかない場合は法律の専門家である弁護士に相談しましょう。 弁護士に相談することで「そもそも懲戒解雇が法的に有効なものなのか」「今後どのように対処したらいいのか」を知ることができます。 実際に弁護士に依頼した方が良いのかどうかという点も含めて、まずは無料相談を利用されるのがおすすめです。 無料相談を受け付けている弁護士事務所もあるので、一度相談してみてはいかがでしょうか。 --- ### 業務委託契約を突然打ち切られた!弁護士が違法性を解説 - Published: 2024-04-24 - Modified: 2024-04-30 - URL: https://atomfirm.com/roudou/12001 - Categories: 不当解雇 業務委託契約で働いている方に向けて、雇用契約と業務委託契約の違いを詳しく解説しています。業務委託契約でも通常の「雇用契約」とみなされ、労働法の保護を受けられる場合もあるので、お悩みの方は弁護士に相談してください。 会社から急に業務委託契約を破棄されたり、契約を打ち切られたりすると、今後の生活が不安になってしまう方も多いと思います。 業務委託契約は「使用者と労働者」といったような主従の関係ではなく、独立した事業者間の契約であるため、労働者とみなされず労働法の保護は受けられません。 しかし、会社との契約が「業務委託契約」になっている場合にも、内容によっては通常の「雇用契約」とみなされ、労働法の保護を受けられる場合があります。 今回は、雇用契約と業務委託契約の違いや、業務委託契約が雇用とみなされるケース、契約を突然打ち切られたときにすべきことを解説します。 雇用契約と業務委託契約の違い 雇用契約 雇用契約とは、一方(労働者)が労働に従事し、もう一方(使用者)がこれに対してその報酬を与えることを約束することを内容とする契約をいいます(民法623条)。 雇用契約を結び、「労働者」に該当する場合は、原則として、労働基準法や労働契約法上の保護を受けることになります。 業務委託契約 業務委託契約について明確な定義はありませんが、一方がある特定の仕事をおこない、その仕事について相手方が報酬を支払うことを約束するという内容であるのが一般的です。 雇用契約とは異なり、業務委託契約は「使用者と労働者」といったような主従の関係にない独立した事業者間の契約です。 そのため、業務委託契約を結んでいる場合、「労働者」に該当せず、原則として、労働基準法や労働契約法上の保護は受けられないということになります。 形式が業務委託であっても雇用とみなされるケース 会社との契約が「業務委託契約」ということになっていても、内容によっては通常の「雇用契約」とみなされ、労働法の保護を受けられる場合があります。 指揮命令関係がある 業務のやり方や作業時間について、委託先から指示を受けて働いている(当事者に指揮命令関係がある)場合は、通常の雇用契約とみなされる場合があります。 業務をおこなう際、業務について委託先による拘束性があり、業務をおこなううえで制約が生じている場合は、労働者性が認められて「雇用契約である」と判断される可能性が高いです。 指揮命令関係があるかどうかについては、業務委託契約書の規定だけでなく、実際の労働状況や勤務の実態に即して判断されます。 たとえば、以下のようなケースが該当します。 指揮命令関係が認められるケース 業務をおこなう時間や場所が決められている 業務を断る自由が認められていない 社内ルールの遵守が義務付けられている 兼業・副業が認められていない など 自分の勤務内容がこういったケースに該当する方は、通常の雇用契約とみなされる可能性が高いです。 使用従属性がある 労働基準法において、労働者と判断されるためには、「指揮監督下で労働していること」「労務の対象が支払われていること」の2点が必要になります。この2点を使用従属性といいます。 すなわち、使用従属性が認められれば、同時に労働者性が認められることになり、労働法上の保護を受けられることになります。 使用従属性が認められる可能性が高くなる要素として、以下のようなものが挙げられます。 使用従属性が認められやすくなる要素 仕事の依頼を拒否できない 業務をおこなううえで、指揮監督の拘束性が強い 報酬が成果ではなく「労働そのもの」に対して支払われている 就業規則や服務規律の遵守が義務付けられている など 自分の勤務内容と照らし合わせてみて、要素がいくつも当てはまった場合は、労働性が認められ、労働者として労働法の保護を受けられる可能性があります。 突然解雇されたときにすべきこと 「自分の勤務実態では指揮命令関係や使用従属性も認められそうになく、契約を打ち切られてしまった」という方もいるかもしれません。 業務委託を突然打ち切られてしまったという方に向けて、やっておくべきことについて解説します。 業務委託の契約書を確認する 業務委託契約を結ぶうえで、「業務委託契約書」や「委任契約書」と名のついた契約書を取り交わしている場合は、契約書の内容を確認するようにしましょう。 解約時のルールや仕事をキャンセルしたときのルールが書かれているはずなので、確認したうえで委託先に契約解除の理由を聞いてみることをおすすめします。 働いた分の報酬を請求する 契約を打ち切られてしまったという場合でも、自分が働いた分の報酬を請求することは可能です。 契約打ち切りについて認めるという場合でも、報酬を請求するのを忘れないようにしましょう。 損害賠償請求ができるケースか確認する 民法では、委任契約の解約によって委任された側に損害が生じた場合には、委任した側が損害を賠償しなければならないと定められています(民法651条2項)。 「長期契約が見込めると思っていたのに急に契約を打ち切られた」といった場合には、損害賠償請求ができるかもしれません。 業務委託についての相談窓口 「業務委託契約だと思っていたが、自分の勤務実態だと普通の雇用契約と変わらないかもしれない」という方は、労働時間や勤務実態に関する証拠を集めたうえで、外部の窓口に相談することをおすすめします。 弁護士 弁護士は突然の解雇について、その違法性を整理し法的にまとめたうえで、労働者の権利を主張するために活動します。 無料相談をしている弁護士・法律事務所もあるため、探してみるといいでしょう。 弁護士に相談するメリットは、労働審判や裁判での勝率も視野に入れた相談ができることです。 加えて、弁護士から解雇の違法性を主張することで、自分自身で対応するよりも解雇を撤回してもらえる可能性が高まります。 解雇の違法・無効を主張したいという方にとっては適した相談先と言えるでしょう。 関連記事 ・不当解雇は弁護士に相談すべき?相談するときのポイントを解説 労働組合 職場復帰を望むのであれば、労働組合に相談するという選択肢もあります。 労働組合は労働者の処遇の向上のために使用者に対して働きかけをおこなう団体で、主な活動は「団体交渉」と呼ばれる使用者との交渉です。 団体交渉には憲法・労働組合法上の裏付けがあり、一定の法的な効力があります。また、解雇の違法性のほか、職場復帰したあとの条件等まで含めて交渉することができ、柔軟な解決が期待できます。 関連記事 ・労働組合に相談できることと相談の流れ【弁護士が解説】 まとめ 会社との契約が「業務委託契約」ということになっていても、「会社との間に指揮命令関係がある」「使用従属性がある」と認められた場合は、通常の「雇用契約」とみなされ、労働法の保護を受けられる場合があります。 業務委託契約を打ち切られてしまったという方は、まず自分の契約内容が雇用契約とみなされるかどうか、契約書や勤務実態から把握してみることをおすすめします。 もし通常の雇用契約とみなされる可能性が高い場合は、弁護士や労働組合へ相談することも検討してみましょう。 --- ### 残業代を請求したのに無視された!その後の対処法は? - Published: 2024-04-03 - Modified: 2024-04-30 - URL: https://atomfirm.com/roudou/11941 - Categories: 残業代請求 「内容証明を送ったのに無視されている」「残業代請求したのに会社側からの反応が一切ない」 会社に対して未払い残業代を請求したものの、会社に請求自体を無視されてしまうケースがあります。 残業代請求を無視されてしまうと、今後どういった対応を取るべきか悩んでしまいますよね。 今回の記事では、会社が残業代請求を無視する理由や残業代請求を無視された場合に労働者が取れる対処法について詳しく解説します。 会社が従業員からの残業代請求を無視する理由 会社が従業員からの残業代請求を無視する理由としては、以下のものが挙げられます。 会社が残業代請求を無視する理由 残業代を支払う気がない 残業代を支払うか社内で協議している 請求内容を確認したうえで対応せずに放置している 残業代を支払う気がない 会社によっては、そもそも残業代を支払う義務がないと考えている場合もあります。 また、残業代を支払わなければいけないことは認識していても、経営状況が悪く、残業代を支払う余裕がないために無視している場合もあります。 残業代を支払うか社内で協議している 無視されたと思っていても、残業代請求を受けて、社内で協議をしている段階の可能性もあります。 会社側も請求された残業代の金額が正しい金額なのか、客観的に証明できる証拠があるのかなどを確認する必要があります。 この場合は、電話やメールで問い合わせれば、状況を教えてくれることがあるでしょう。 請求内容を確認したうえで対応せずに放置している 請求内容を確認したうえで対応せずに放置していることも考えられます。 支払う気がないとも取れますが、こちらは対応する気はあったものの、対応の必要がないために放置しているような場合です。 具体的には、請求書の内容に不備があったり、時効が成立していたりするケースです。 請求書の内容に不備がある例として、名前や連絡を取る手段がない、銀行の振込先口座がないといったことが挙げられます。 また、残業代請求の時効は3年です。すでに時効が成立している場合には、残業代を請求しても時効の成立を根拠に残業代が支払われないでしょう。 3年以上前の残業代を請求した場合には、対応されずに放置されてもおかしくありません。 関連記事 ・残業代請求の時効は3年!将来は5年に?時効中止や請求の方法を解説 残業代請求した後はどうする?どれくらい待てばいい? 送付した残業代請求書を確認する まずは、自身が会社に送付した残業代請求書を確認してみましょう。 残業代を請求する際には、振込期日を設けることが一般的です。もし振込期日を設定していなかった場合には、再度残業代請求書を送ることも検討しましょう。 『【テンプレートあり】残業代請求書(内容証明)の書き方・送付方法を解説!』の記事で必要な内容を記載したテンプレートをダウンロードできます。ぜひご活用ください。 振込期日まで無視されれば法的措置を検討 振込期日を過ぎても、会社側から何の反応もない場合には、法的措置を検討しましょう。 残業代を支払う気のある会社は、たとえ振り込みがなくても、期日までに電話やメールで事実確認といった何らかのアクションを取ってくる可能性が高いです。 振込期日を超えても反応がなければ、故意的に無視していると考えられます。 残業代請求を無視された場合の対処法 残業代請求を無視された場合、労働者側から続けてアクションを取らないと、残業代が支払われずに泣き寝入りしてしまう可能性が高いです。 ここでは、残業代請求を無視された場合の対処法を5つご紹介します。 労働基準監督署に申告する 残業代が支払われないことは、労働基準法違反です。残業代請求が無視される場合には、労働基準監督署に申告することもできます。 労働基準監督署に申告する場合の流れ 適切な証拠を準備する 労働基準監督署に残業代未払いを訴える 労働基準監督署が調査 違反が認められれば、企業に支払い勧告が出される 労働基準監督署による介入は、会社に労働基準法などの労働法規を守らせることが目的です。 労働基準監督署の勧告はあくまでも行政指導であるため、法的拘束力はありません。申告したからといって必ずしも企業が支払いに応じるとは限らないので注意しましょう。 支払い督促を行う 支払い督促は、簡易裁判所に申し立てることによって行う債権回収手続きです。 会社に対して未払い残業代の督促の通知をすることができます。 参考:支払督促 労働審判を行う 残業代が支払われない場合は、法的措置を取ることも選択肢となります。 労働審判は、労働審判官(裁判官)1名と労働審判員2名から構成される、労働審判委員会という組織を利用する制度です。 原則として3回以内の審理で結論を出すことになっているため、2〜3か月程度で問題を解決できる可能性があることが大きなメリットです。 労働審判を行う場合は以下のように進みます。 労働審判をする場合の流れ 労働審判申立書や陳述書等の必要書類と、残業の証拠となりうるものを全て裁判所に提出 40日以内に最初の期日が開かれ、会社側と双方の主張や事実関係の確認を行う 3回目の期日までに調停が成立しなければ、審判官と審判員が評議を行い「審判」が下される 審判の内容に双方が合意すれば、労働審判は終了する ただし、労働審判委員会の判断に異議があった場合には、訴訟となります。 関連記事 ・労働審判とは?制度の内容や手続きの流れを弁護士がわかりやすく解説 少額訴訟を行う 少額訴訟とは、60万円以下の金銭の支払い請求を目的とする手続きのことです。 原則1回で審理を終えて即日判決が出るため、費用も安く時間も短くてすみます。 ただし、異議の申し立てがあれば、最終的には通常の訴訟になります。 参考:少額訴訟 訴訟を行う 訴訟は、基本的に原告と被告が交互に主張を重ねていき、最終的な結論(判決)を裁判所が下す手続きです。 訴訟を行う場合の流れは以下の通りです。 訴訟を行う場合の流れ 会社の所在地を管轄する地方裁判所または簡易裁判所に訴状を提出 第1回期日は会社側が訴状に対する答弁書を提出 2回目以降の期日では双方が主張と証拠となる書類を一緒に提出し、具体的な答弁を行う 双方が全ての主張書面の提出を終えると弁論終結となり、その後判決が言い渡される なお、労働者と相手(会社)が主張する回数には基本的に制限がないため、結論が出るまでに1年以上かかることもあります。 関連記事 ・裁判で残業代請求を行う場合のメリットは?デメリットは期間の長さ? 残業代請求を無視されている方は弁護士に相談 残業代請求を無視されている方は、弁護士に相談しましょう。 未払い残業代を個人の力で請求しようとすると、会社側が頑なな姿勢を崩さなかったり、不利益な取り扱いをしたりして、うまく解決に至らない場合があります。 弁護士に相談し、弁護士を通して会社に未払い残業代を請求できれば、会社にプレッシャーを与えることができ、残業代を受け取れる可能性が高まります。 また、請求を無視されて法的な措置を検討した場合にも、弁護士に依頼すれば労働者の代理人として会社との交渉にあたってくれます。 弁護士への相談が未払い残業の問題解決の糸口になります。無料相談を受け付けている弁護士事務所もあるので、一度相談してみてはいかがでしょうか。 関連記事 ・残業代請求を弁護士に依頼する場合の費用相場は?弁護士に依頼するメリット5選! --- ### 契約社員でも退職代行は使える?退職代行を利用するときの注意点を解説! - Published: 2024-04-03 - Modified: 2024-04-30 - URL: https://atomfirm.com/roudou/12095 - Categories: 退職代行 契約社員であっても、条件をクリアすれば退職代行を利用して退職可能です。 退職代行の利用を検討している方は、トラブルを防いで安心して退職するためにも、退職代行事業者の違いや退職代行の流れをしっかりと理解したうえで利用するようにしましょう。 「契約社員で働いている会社が合わない」「契約社員だけど退職代行を使って辞めたい」 契約社員として入社した会社の社風や業務内容が合わずに、契約期間満了前に退職したいとお考えの方は多いのではないでしょうか。 契約社員は正社員と異なり、有期雇用契約が結ばれているため、退職に関して厳しい制限が設けられています。 しかし、契約社員でも退職代行を利用できるケースがあります。 この記事では、契約社員でも退職代行を利用できるケースの具体例、退職代行を利用するときの注意点を詳しく解説していきます。 契約社員でも条件をクリアすれば退職代行を利用できる 契約社員は、正社員と異なり、退職代行の利用に制限があります。 契約社員は有期雇用契約である以上、退職を自ら申し出ることが基本的にできないからです。 しかし、以下のいずれかに該当する場合は、契約期間満了前に退職代行を利用して退職できます。 契約社員でも退職代行を利用できるケース やむを得ない事情がある場合 契約開始から1年以上経過している 会社との間で両者の合意がある それぞれ詳しく解説します。 やむを得ない事由がある場合 やむを得ない事由がある場合には、契約期間の満了前でも退職代行を使って退職可能です。 民法628条では、「当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる」とあります。 やむを得な事由は、以下のようなものが挙げられます。 やむを得ない事由の例 パワハラやセクハラを受けている 身内の介護が必要となった ケガや病気などで仕事に支障をきたした 契約開始から1年以上経過している 契約開始から1年以上経過している契約社員は、退職代行を利用できます。 期間の定めのある労働契約を締結した労働者は、契約の初日から1年が経過すれば、その使用者に申し出ることにより、いつでも退職できます(労働基準法137条)。 正社員の場合は、退職の意思を告げてから2週間後に退職が可能ですが(民法627条)、1年以上経過している契約社員の場合は、退職代行を利用して即日退職も可能です。 もっとも、業務の引き継ぎを行わずに即日退職すると、会社から損害賠償されるおそれもあるので、退職時には注意が必要です。 会社と労働者との間で両者の合意がある 契約期間中であっても、会社と労働者との間で両者の合意があれば退職できます。 たとえ契約から1年が経過していない・やむを得ない事由がない場合でも、会社が退職を認めれば退職できるということです。 退職代行を利用する場合には、退職代行業者から会社に合意を求めるように働きかけてもらう必要があります。 なお、退職代行業者に依頼しても、必ずしも合意を得られるわけではありません。合意が得られなければ退職できない可能性もあるので、注意しましょう。 契約社員が退職代行を利用するときの注意点 上記のいずれかに該当した場合でも、退職代行を利用するときには注意が必要です。 契約社員も利用できる退職代行事業者を選ぶ そもそも退職代行事業者によっては、契約社員からの依頼を受け付けていないこともあります。 退職代行を利用する際には、自身が契約社員であることを告げ、契約社員も利用できる退職代行事業者を選ぶようにしましょう。 契約社員が利用できるかどうかは、ホームページや口コミなどで確認してください。もし記載がなければ、退職代行事業者に事前に相談するといいでしょう。 関連記事 ・退職代行の相談時に確認すべき内容や選び方を解説! 非弁行為のリスクがない弁護士に依頼する 退職代行を行う事業者は、「一般の退職代行業者」「労働組合」「弁護士」の3種類に区別できます。 どの事業者に依頼するか迷ったときには、弁護士に依頼することがおすすめです。 一般の退職代行業者が代行できるのはあくまで「退職の意思を告げること」だけです。 そのため、それ以上に何らかの法的な交渉をおこなうと、非弁行為(弁護士資格をもたない者が、報酬を目的に弁護士業務をおこなう違法行為)に該当するリスクが大きくなります。 契約社員が退職代行を利用した場合は、会社に合意を得るといった会社との交渉が必要になることが多いです。契約社員の方はとくに労働組合や弁護士に依頼すべきと言えます。 また、弁護士であれば会社との交渉ができるうえ、未払い残業代や給与、退職金の請求も可能です。 さらに、労働組合が訴訟といった法的な手続きに発展すると対処が難しくなるデメリットがある一方、弁護士は法的な手続きにもスムーズに移行できるメリットがあります。 関連記事 ・退職代行を弁護士に依頼するメリットは?費用・代行業者との違いまで完全解説! 料金やサービス内容も確認しておく 利用する退職代行サービスによって、かかる費用は異なります。 依頼費用や追加料金の発生の有無、万が一退職が失敗してしまった場合の返金保証が付いているかなどは確認しておくべきでしょう。 退職代行サービスを依頼するからには、当然失敗は避けたいものです。返金保証が付いていないサービスは、お金を払って損することも考えられるので、選ぶときには注意が必要です。 また、退職は成功したものの、追加料金が発生し、想像以上の費用がかかってしまうこともあります。 相場よりも極端に費用が低い退職代行サービスは、追加料金を設定している可能性もあります。相談する際には、追加料金の条件などを確認しておきましょう。 関連記事 ・退職代行サービスの金額相場はいくら?3つの相談先と対応の違いを解説 まとめ この記事では、契約社員が退職代行が利用可能かどうかについて詳しく解説しました。 契約社員であっても、条件をクリアすれば退職代行を利用して退職可能です。 退職代行の利用を検討している方は、トラブルを防いで安心して退職するためにも、退職代行事業者の違いや退職代行の流れをしっかりと理解したうえで利用するようにしましょう。 また、失業保険や国民健康保険の切り替え手続きなど、具体的に退職代行をした後にやるべきことを把握しておけば、安心して退職代行を利用できると思います。 退職代行の流れや退職代行利用後の手続きに関して詳しく知りたい方は、『退職代行の流れは?手順を弁護士が徹底解説』の記事もご覧ください。 --- ### ハラスメントの相談窓口5選!ハラスメントの種類と具体例も解説! - Published: 2024-03-29 - Modified: 2024-04-03 - URL: https://atomfirm.com/roudou/11975 - Categories: ハラスメント・いじめ モラハラ・マタハラ・パワハラなど、さまざまなハラスメントの相談に対応している窓口をご紹介!ハラスメントは客観的な証拠が重要です。専門家に相談して解決の糸口を探しましょう。 「ハラスメント全般の相談窓口はある?」「ハラスメントを無料で相談したい」 職場におけるハラスメントは他人に相談しづらい内容も多く、一人で抱え込んでしまいがちです。 同僚や家族など、身近に相談できる相手がいればいいですが、相談できる人が周りにいない方もいると思います。 厚生労働省の委託事業である「ハラスメント悩み相談室」は、以前までセクハラ・パワハラなどの相談も可能でしたが、現在相談可能なのは就活・カスタマーハラスメントだけとなってしまいました。 この記事では、セクハラ・パワハラはもちろん、モラハラ・マタハラ・ケアハラなどのあらゆるハラスメントを相談できる窓口5選をご紹介します。 ハラスメントの相談窓口5選! ハラスメントの相談ができる窓口を5選ご紹介します。 弁護士は事務所によって料金体系が異なりますが、弁護士以外の相談窓口は無料で相談できるので、活用しましょう。 ハラスメントの相談窓口5選 総合労働相談コーナー NPO法人労働組合 作ろう!入ろう!相談センター こころの耳 法務省みんなの人権110番 弁護士 総合労働相談コーナー 総合労働相談コーナーは、都道府県の労働局や全国の労働基準監督署などに設置されている厚生労働省管轄の相談窓口です。 あらゆる労働問題をあつかっており、職場で受けているハラスメントであれば電話もしくは対面で相談できます。 総合労働相談コーナーは、全国の労働基準監督署や都道府県労働局の中に設置されているため、お住まいの地域にかかわらず、対面での相談が受けやすいのがメリットです。 また、相談には料金が発生せず、予約も必要ありません。相談者のプライバシーの保護にも配慮してくれるので、安心して相談できるでしょう。 参考:厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」 NPO法人労働組合 作ろう!入ろう!相談センター 労働組合作ろう!入ろう!相談センターは、さまざまな労働問題の相談を受け付けているNPO法人です。 会社で従業員として働く人であれば誰でも相談ができ、中立的立場でなく、完全に労働者側にたった労働相談をおこなうところが特徴です。 相談料はかからず、無料で相談できます。相談方法には電話・メール・来所(要予約)の3つのやり方があります。 電話や面談の場合、平日の午前9時~午後5時までの営業時間内での対応になるので注意してください。 また電話や面談では、事前に電話予約が必要になります。一方、メールに関しては、営業時間外でも随時受け付けています。 ただし、職場のパソコンから問い合わせメールを送信することがないよう注意が必要です。女性の相談員も在籍しているので、女性の方も気兼ねなく相談できるでしょう。 相談後にジャパンユニオンという労働組合への加入を促される場合があります。 入会金や月組合費が発生しますが、ユニオンに加入すれば2回目以降も継続して個別相談に応じてくれるというメリットがあります。 参考:NPO法人労働組合 作ろう!入ろう!相談センター こころの耳 こころの耳は、厚生労働省が運営しているメンタルヘルス・ポータルサイトです。無料で相談でき、ハラスメントを受け、精神的に参っている人はこちらを利用してみると良いでしょう。 こころの耳ではさまざまな相談窓口が用意されており、メールと電話に加えSNSでの相談が可能です。 相談の結果、必要だと判断されれば、より専門的な機関を紹介してくれる場合もあります。メンタルケアの抜本的な解決も可能なので、メンタルの問題でお悩みならぜひ利用を検討したい機関です。 こころの耳のサイト上では「疲労蓄積度セルフチェック」を受けられたり、ストレス軽減ノウハウなどコンテンツも充実しています。 参考:こころの耳 法務省みんなの人権110番 みんなの人権110番は、さまざまな人権問題の相談を受け付けている相談機関です。 ハラスメントは人権侵害の要素をはらんでいるケースも少なくありません。加害者からの発言や嫌がらせで人権を傷つけられたと感じているなら、みんなの人権110番の利用をおすすめします。 電話をかけると最寄りの法務局・地方法務局につながり、法務局職員もしくは人権擁護委員が相談に応じてくれます。 他にも法務局・地方法務局の窓口で対面による相談も実施しており、希望があればインターネットからの相談も可能です。 法的な観点からハラスメントへの解決策を一緒に考えてくれるので、ハラスメントから一刻も早く逃れたいという方はぜひ利用してみましょう。 参考:法務省みんなの人権110番 弁護士 ハラスメントに関するお悩みは、法律の専門家である弁護士に相談可能です。 ただし、相談する弁護士事務所がお悩みのハラスメントの相談が可能かどうかは、事前に調べておく必要があるでしょう。 総合労働相談コーナーなどへの相談は、あくまで相談がメインであり、法的に強制力をもったトラブル解決に向かない面があります。 一方で、弁護士に相談すれば、労働者の立場から法的に強制力をもったトラブル解決法や、法的な手続きに関してアドバイスをもらうことができます。 無料で相談できる弁護士事務所もありますが、相談費用がかかる弁護士事務所もあるので注意が必要です。弁護士への相談料の相場は、1時間1万円(30分5,000円)です。 弁護士に相談するメリット・デメリットについて詳しく知りたい方は『パワハラなどのハラスメントは弁護士に相談!メリットとデメリットを解説』の記事もご覧ください。 ハラスメントの種類と具体例 そもそもハラスメントとは、日本語で「嫌がらせ」を指す言葉です。 ハラスメントは数多くの種類があります。下記に挙げる具体例に該当する場合は、上記の相談窓口への相談を検討しましょう。 ハラスメントの種類 パワーハラスメント(パワハラ) セクシャルハラスメント(セクハラ) マタニティハラスメント(マタハラ) パタニティハラスメント(パタハラ) モラルハラスメント(モラハラ) ケアハラスメント(ケアハラ) パワーハラスメント(パワハラ) パワーハラスメント(パワハラ)は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、労働者の就業環境が害される行為のことをいいます。 パワハラは、以下の6類型に分類できます。 身体的攻撃(殴る・蹴る・物を投げるなど) 精神的攻撃(侮辱・脅迫など) 人間関係からの切り離し(無視・隔離など) 過剰要求(能力に対し難易度が高すぎる業務を押し付ける) 過少要求(難易度が低すぎる仕事しか与えない) 個の侵害(プライベートに過剰に立ち入る) 職場で上司から「殴られる」「暴言を吐かれる」などの行為がパワハラの典型例と言えます。 関連記事 ・パワハラの相談ができる無料窓口5選!相談前に準備すべき事も紹介 セクシャルハラスメント(セクハラ) セクシャルハラスメント(セクハラ)とは、職場で労働者の意に反する性的な言動について、労働条件について不利益を受けたり、性的な言動により就業環境が害されたりすることを言います。 セクハラは態様により「対価型セクハラ」と「環境型セクハラ」の2種類に分類されます。 対価型のセクハラは、性的な事柄、言動等に対して拒絶するなど何らかの対応をしたことを原因として、解雇、降格などの客観的な不利益を受けることを指します。 環境型のセクハラは、性的な言動などによって働く環境が不快となり、就労に支障が出ることを意味します。 対価型は「上司からデートに誘われ、それを断ったら異動になった」、環境型は「腰や胸などの身体を執拗に触られた」ことが典型例です。 関連記事 ・セクハラ被害の相談ができる無料窓口7選!抱え込まずに相談しよう マタニティハラスメント(マタハラ) マタニティハラスメント(マタハラ)とは、労働者に対し、妊娠や出産・育児休暇などを理由に、解雇や雇い止め・降格などといった不利益な取り扱いを行うことをいいます。 「産休を申請しようとしたが、上司に休むなら辞めろと言われた」「あなたが妊娠したことで私たちの仕事が増えたと同僚に言われた」などが典型例です。 関連記事 ・マタハラは弁護士に相談!マタハラの種類やポイントを解説 パタニティハラスメント(パタハラ) パタニティハラスメント(パタハラ)とは、男性労働者が育児休業を取得したり、育児に対する制度を活用したりすることへの妨害行為を言います。 「男なのに育児で休むのか」といった発言や「同僚に、自分なら育休を申請しないと言われ、利用できなかった」などが典型例です。 モラルハラスメント(モラハラ) モラルハラスメント(モラハラ)とは、倫理や道徳に反した嫌がらせのことを言います。 「バカ」「役立たず」といった発言や、社内のイベントに特定の人物だけ誘わないことなどがモラハラとなります。 関連記事 ・職場におけるモラハラとは?モラハラの具体例や対処法を解説 ケアハラスメント(ケアハラ) ケアハラスメント(ケアハラ)とは、働きながら介護を行う人に対する嫌がらせを指します。 また、介護施設で働く労働者が利用者やその家族から嫌がらせを受ける場合も、ケアハラスメントと言われます。 「親の病院への付き添いが必要なのに介護休業制度の取得を妨げられた」「介護施設で利用者から暴言を吐かれた」などが典型例として挙げられます。 ハラスメント行為を訴えるときのポイント ハラスメントでお悩みの方の中には、加害者や会社を訴えて慰謝料を請求したいとお考えの方もいるでしょう。 どのようなハラスメント行為であっても、ハラスメント行為を訴え、法的に「ハラスメントによる被害を受けている」と認められるためには、以下の2点に注目しておくことが重要です。 ハラスメント行為を訴えるときのポイント 具体的な証拠を集めておく 具体的な被害があるかどうかを確認する 具体的な証拠を集めておく まず、ハラスメントによって受けた被害の証拠を集めておくことが重要です。証拠として有効的と考えられるものには、以下のようなものが挙げられます。 ハラスメントにおける重要な証拠 相手の発言の録音 医師からの診断書 相手からのメールや書面の履歴 被害を受けたときの証拠写真や画像ファイル ハラスメントを受けた期間と内容が詳細に記録された日記 など 客観的な証拠を残しておくことで、今後の交渉や訴訟を有利に進めることができます。 また、社内の相談窓口がある場合は、「ハラスメント被害を受けた」ということを報告しておくと、被害を受けている本人が何かアクションを起こしたという証拠にもなります。 具体的な被害があるかどうかを確認する 「ハラスメントが原因で被害を受けた」と客観的に認められるためには、具体的な被害を受けたかどうかを確認しておくことが重要です。 たとえば、「セクハラを注意したら賃金が引き下げられた」「パワハラが原因で不当に解雇されてしまった」といったことなどが挙げられます。 単に「ストレスを受けている」というだけでは、ハラスメントとして認定されなかったり、認定されたとしても満足のいく慰謝料を受け取ることができなかったりする場合があります。 まとめ この記事では、ハラスメントの相談窓口5選と、ハラスメントの種類と具体例を解説しました。 ハラスメントでお悩みの方は、それぞれの用途に応じてご紹介した窓口に相談しましょう。 専門家への相談が解決の糸口となります。 --- ### 給料が振り込まれない!振り込まれるのはいつ?自分でできる対処法も解説! - Published: 2024-03-27 - Modified: 2024-04-02 - URL: https://atomfirm.com/roudou/11670 - Categories: 給料未払い 給料が振り込まれないことでお悩みの方に向けて、給料未払い時に確認すべきポイントや自分でできる対処法を解説。未払いが続く場合や未払い給料の計算方法が分からな場合は弁護士に相談しましょう。 「給料日に給料が振り込まれない」「給料が振り込まれるのはいつ?」 給料日に給料が振り込まれていないと、どうして振り込まれていないのか心配になりますよね。 時間を空けて確認した時に振り込まれていればいいですが、時間を空けても振り込まれていない場合には、会社側に何らかの理由があることが考えられます。 この記事では、給料未払い時に確認すべきポイントや自分でできる対処法、請求方法を解説します。 給料が振り込まれない!まずは落ち着いて確認しよう 給料の支払い(振り込み)に関しては、「通貨で、直接労働者に、その全額を毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない」と規定されています(労働基準法24条)。 上記で定める「通貨払い」「直接払い」「全額払い」「毎月払い」「一定期日払い」のことを「賃金支払い5原則」といいます。 給料が振り込まれないと、なぜ振り込まれていないのか不安になってしまいますが、落ち着いて以下のことを確認しましょう。 給料未払い時に確認すべきこと いつまでに振り込まれるはずだったのか 振り込まれていないのは自分だけなのか いつまでに振り込まれるはずだったのか 給料が振り込まれる日付は、給与明細書で確認できます。 給料が振り込まれる時間は、金融機関や企業によって異なります。 ただし、厚生労働省では「口座振り込みの賃金は午前10時頃までに払い出しが可能となっていること」と定められています。 そのため、銀行の営業時間の午前9時、遅くても午前10時ごろまでには給料が振り込まれるように事前に手続きを取っている企業が多いです。 参考:厚生労働省「賃金の口座振込み等について」 また、給料日が休日の場合には、振込日が変わることがあるので注意が必要です。多くの企業では給料日が休日であれば、給料日の前の平日に振り込むことが一般的です。 しかし、休日明けに振り込む企業もあるので、就業規則や給与明細書を確認しましょう。 振り込まれていないのは自分だけなのか 他の従業員に給与が振り込まれているか確認しましょう。 自分だけではなく、複数人が未払いになっている場合は、会社の問題である可能性が高いです。 給料の振り込みに関するポイント 給料の振り込みが1日遅れることは違法? 給料の振り込みが1日でも遅れることは、労働基準法違反となります。 労働基準法24条で「一定の期日を定めて支払わなければならない」と定められているからです。 ただし、会社が事前に労働者に遅延の理由を説明し、同意を得ている場合は、違法にはならない可能性があります。 また、会社が遅延損害金を支払う場合は、違法にならない可能性もあります。 給料の振り込みは何時まで待てばいい? 給料の振り込みは、給料日の15時まで待ってみましょう。なぜ15時かというと、一般的な銀行窓口の営業時間が15時までだからです。 たとえ、給料の支払いを失念されていても、15時までは担当者が給料を振り込んでくれる可能性があります。 15時まで振り込まれていない場合は、以下で紹介する対処法を試してみてください。 給料が振り込まれていないときに自分でできる対処法 会社に確認する 給料が未払いになっている場合は、経理・総務などの担当者に問い合わせてみましょう。担当者に連絡し、給与が振り込まれていない理由を確認してください。 確認事項として、給与が振り込まれていない理由はもちろんのこと、いつまでに振り込まれるのか、具体的な期日を聞いておくと、安心して生活できます。 また、電話で問い合わせた際の音声は録音しておくと、後々トラブルに発展した時に役立ちます。 給料未払いの証拠を集める 給料未払いがトラブルに発展した場合に備えて、証拠を集めておくことが重要です。 給料未払いを証明する有効的な証拠には、以下のようなものがあります。 給料未払いを証明する証拠 給与明細書 タイムカード 勤怠管理システム 就業規則 雇用契約書 シフト表 など 有効的な証拠を、多くの種類かつ長期間集めておくことで、労働基準監督署が動きやすくなったり、法的手続きを有利にすすめたりすることができます。 関連記事 ・給料未払いの証拠がない!対処法や請求をする際の手順を解説! 未払い給料を請求する方法 未払いになっている給料を請求する方法は、以下のようなものがあります。 未払い給料を請求する方法 会社に内容証明郵便で請求書を送る 労働基準監督署に申告する 法的手続きをとる (1)会社に内容証明郵便で請求書を送る 未払い給料を会社に請求するための最初の手段は、「未払いになっている給与の支払いを会社に求める」といった旨の請求書を会社に送ることです。 請求書を送る際には、内容証明郵便(いつ、誰が誰に、どのような内容を伝えたのかを郵便局が証明してくれるサービス)を利用することをおすすめします。 内容証明郵便を利用すれば、仮に裁判に発展した際に、労働者が未払い給料を請求したという証拠として活用できます。 (2)労働基準監督署に申告する 請求書を送っても会社側からの対応が見受けられないという場合には、労働基準監督署に申告するという手段が考えられます。 労働基準監督署は、会社が労働に関する法令を守っているかどうかを監督する機関です。給料未払いの事実が確認されれば、会社に対して是正や改善の指導をおこなう場合があります。 ただし、労働基準監督署の指導や勧告には法的な強制力がないため、未払い給料などの問題の解決が必ず期待できるというわけではないことに注意が必要です。 関連記事 ・労働基準監督署に相談できる内容とは?メリット・デメリットから徹底解説 (3)法的手続きをとる 会社との交渉がうまくいかなかったり、労働基準監督署の指導があっても会社が未払い給料を支払わなかったりした場合には、労働審判・訴訟などの法的な手続きをとることになります。 労働審判とは、労働者個人と会社との間に生じたトラブルを、原則として3回以内の期日で審理する制度です。 また、労働審判でも解決しない場合、訴訟をして未払い給料の請求をすることになります。 労働審判・訴訟のいずれも高度な知識が必要となるので、法的手続きをとることを検討されている方は、一度弁護士に相談することをおすすめします。 関連記事 ・労働審判とは?制度の内容や手続きの流れを弁護士がわかりやすく解説 まとめ この記事では、給料が振り込まれないことでお悩みの方に向けて、給料未払い時に確認すべきポイントや自分でできる対処法を解説しました。 給料未払いが会社の思わぬミスによるもので、今後改善されれば問題はありませんが、未払いが続く場合や未払い給料の計算方法が分からな場合は弁護士に相談しましょう。 無料相談を受け付けている弁護士事務所もありますので、まずは弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。 関連記事 ・給料の未払いは弁護士に相談!依頼するメリットと費用を徹底解説 --- ### 不当な人事異動を受けた!不当とされるケースや相談先を解説 - Published: 2024-03-22 - Modified: 2024-03-27 - URL: https://atomfirm.com/roudou/11362 - Categories: 労働問題全般 原則として、従業員は人事異動の命令を拒否できませんが、場合によっては人事異動が不当であり、無効となる可能性もあります。 不当な人事異動でお悩みの方は、弁護士に相談することをおすすめします。 「急に転勤命令を下された」「不当な人事異動を受けたので相談したい」 会社から突然転勤を命じられてしまうと、「この先どうすればいいか」「どこに相談すればいいか」など、不安になる方も多いと思います。 原則として、従業員は人事異動の命令を拒否できませんが、場合によっては人事異動が不当であり、無効となる可能性もあります。 今回は、不当な人事異動に関するケースや、不当な人事異動を受けたときの相談先について解説します。 不当な人事異動に該当するケース 原則として、従業員は人事異動の命令を拒否できず、拒否すれば懲戒処分の対象とされることになります。 しかし、以下のようなケースでは人事異動が不当であり、無効となる可能性もあります。 業務上の必要性がない 人事異動を命じる業務上の必要性がないにもかかわらず、人事異動がおこなわれた場合は、人事権の濫用にあたるとして無効になる可能性があります。 業務上の必要性には、「ある部署で欠員が出たため、補充として異動を命じた」「定期的なローテーション異動の一環だった」といったことが想定されます。 いわゆる報復人事に該当する 人事異動の動機や目的が不当な場合は、人事権の濫用にあたるとして無効になる可能性があります。 たとえば、「内部告発をしたところ異動を命じられた」「性格が合わないといわれ転勤させられた」といった、いわゆる「報復人事」に該当するケースです。 こういったケースでは、不当な人事異動であるばかりか、パワハラに該当するとして損害賠償を請求できる可能性があります。 労働者が大きな不利益を被る 労働者に以下のようなやむを得ない事情があり、大きな不利益を被ってしまうという場合は、異動命令が無効になることがあります。 やむを得ない事情 持病があり、特定の病院に通う必要がある 要介護認定の家族がいて、その労働者以外に介護できる人がいない など 「単身赴任したくない」「通勤時間が長くなってしまう」といった場合では、異動命令が無効になる可能性は低いです。 異動によって賃金が減少する 異動によって賃金が減少する場合は、異動命令を拒否することができます。 合意なく賃金を引き下げられてしまったという場合は、労働契約法違反のため、会社に対して差額分の賃金を請求することができます(労働契約法8・9条) 採用時に職種や勤務地が限定されている 雇用契約書や労働条件通知書で、職種や勤務地が限定されている場合は、異動命令が無効になることがあります。 採用時に職種や勤務地が限定されていたにもかかわらず転勤を命じられたという場合は、「エリア限定社員」「転勤なし」などの記載がないかどうか、雇用契約書や労働条件通知書を確認してみましょう。 不当な人事異動を受けるおそれがあるケース 内部告発や内部通報をおこなった 企業に対して内部告発や内部通報をおこなった場合、企業から「裏切り行為」とみなされ、見せしめとして不当な人事異動を命じられることがあります。 上司に意見したり、反論したりした 上司に意見したり反論したりした場合、「上司に労働環境の改善を訴えたところ降格させられた」といった不当な人事異動を命じられることもあります。 上司に「そりが合わないから部署を異動させた」「退職勧奨を無視したから配置転換した」などと発言された場合は、不当な人事異動である可能性が高いです。 育休や有休を取得した 「繁忙期に有休を取得したところ異動を命じられた」といったケースもあります。 しかし、育児休暇や有給休暇といった法定休暇を取得することは、労働者の権利として認められています。 「休暇を取得したことで異動を命じられた」といった人事は「報復人事」に該当し、不当な人事異動である可能性が高いです。 不当な人事異動についての判例 退職勧奨の拒否を理由に、肉体労働への配転命令を受けた元・管理職の男性が、配転命令の無効や慰謝料などを求めて会社を提訴した事件です(『フジシール事件』大阪地判平12. 8. 28)。 50代のXさんは、もともと技術開発部門の管理職としてY社に勤務していました。 あるとき、XさんはY社から退職勧奨を受けましたが、これを断りました。 その後、Y社から「管理職としての業績不振の成績をとってもらう」として、配置転換先が決まるまで自宅待機を命じられました。 自宅待機が命じられた後、会社から配置命令が出されましたが、その命令は「工場での肉体労働」や「ゴミ回収」といったものであり、今までの管理職の業務とはまったく異なるものでした。 これについてXさんは、「いずれの配転命令も無効である」として、慰謝料の支払いと降格処分の無効、賃金減額相当額の支払いを求めて提訴しました。 結果として、慰謝料の支払いは認められませんでしたが、配転命令は無効であり、降格処分の無効と賃金減額相当額の支払いが認められました。 配置される部署の労働内容や、もともと管理職として労働していたXさんの職歴を鑑みて、人事異動を命じる業務上の必要性がないと判断されたことになります。 不当な人事異動の相談先 「不当な人事異動を受けて悩んでいる」という方は、外部の相談窓口に相談してみることをおすすめします。 労働局 労働局(都道府県労働局)とは、労働基準監督署の上部組織にあたる、厚生労働省所管の機関です。 相談に対しての情報提供や、労働トラブルが発生した際には助言や指導、あっせん(話し合いの仲介)を無料でおこなってくれます。 一般的に、相談は平日の午前8時30分から午後5時15分まで受け付けているところが多いです。 関連記事 ・労働局とは?相談できることと利用するメリット・注意点を解説 総合労働相談コーナー 総合労働相談コーナーとは、あらゆる労働問題について相談できる、厚生労働省所管の窓口です。 予約や料金はいっさい不要で、専門相談員が電話で対応してくれます。また、相談や助言で解決しない場合は、あっせん制度も利用できます。 さらに労働基準法違反の疑いがある場合は、担当部署に引き継ぎ、行政指導もしてくれる場合もあります。 弁護士 弁護士であれば、受けた人事異動が不当であるかどうか、法的な観点で判断してもらえるほか、損害賠償請求などの法的手続きを一任できます。 また、相手が逆に損害賠償請求を起こしてきた場合など、法的トラブルに発展した際にもスムーズに対応することができるのもポイントです。 関連記事 ・労働問題に強い弁護士に相談!弁護士に相談するメリットや探し方 まとめ 原則として、従業員は人事異動の命令を拒否できませんが、「業務上の必要性がないのに異動を命じられた」「報復人事を受けた」などの場合には、不当な人事異動であるとして命令が無効になる可能性があります。 場合によっては、不当な人事異動であるばかりか、パワハラに該当するとして損害賠償を請求できる可能性があります。 不当な人事異動でお悩みの方は、弁護士に相談することをおすすめします。 弁護士であれば、受けた人事異動が不当かどうか法的に判断してもらえるほか、損害賠償請求といった法的手続きを一任できます。 無料相談を受け付けている弁護士事務所もありますので、まずは弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。 --- ### 退職代行を使っても退職金はもらえる?弁護士が解説 - Published: 2024-03-22 - Modified: 2024-06-27 - URL: https://atomfirm.com/roudou/11523 - Categories: 退職代行 退職代行を利用しても退職金を受け取ることができます。しかし、会社によっては退職金規定が設けられていたり、依頼する業者によっては退職金を請求できなかったりすることもあるので、退職代行を利用するときは注意が必要です。お困りの方は弁護士に相談してください。 「退職代行事業者の選び方は?」「退職代行を使うと退職金がもらえない?」 退職代行を使うと、退職金がもらえなくなることを心配している方は多いのではないでしょうか。 会社に退職金制度がある場合には、退職代行を利用しても退職金を受け取ることができます。 しかし、会社によっては退職金規定が設けられていたり、依頼する退職代行業者によっては退職金を請求できずにトラブルに発展したりすることもあります。 この記事では、退職代行で退職金を受け取る際の注意点や、トラブルを防ぐ退職代行事業者の選び方を詳しく解説します。 退職代行を使っても退職金はもらえる 退職代行サービスを利用した場合でも、会社に退職金制度がある場合には、退職金を受け取ることができます。 退職代行を利用したことと退職金の支払いは、一切関係ないからです。 しかし、会社によっては就業規則に退職金の規定を設けていなかったり、一方的に退職代行を利用したことを理由として退職金の支払いを拒否したりすることがあります。 退職代行で退職金を受け取るときの注意点 退職代行で退職金を受け取る際の注意点として、以下の2点があげられます。 退職代行で退職金を受け取る際の注意点 会社に退職金制度があるか確認する 退職金を請求できる退職代行に依頼する 会社に退職金の制度があるか確認する 勤務先の会社にそもそも退職金制度があるかどうか確認しましょう。 退職金は法律で定められている制度ではないため、従業員数が少ない会社では、退職金制度自体がない可能性もあります。 また、退職金制度がある場合でも、勤続年数や退職理由によって退職金が減額されたり・受け取れなかったりする場合もあります。 退職代行を利用する前に、会社の就業規則や退職金規程を確認しましょう。会社によっては、総務・人事部に問い合わせる必要がある場合もあります。 「会社に就業規則がない」「就業規則がないような気がする... 」とお考えの方は『就業規則を見たことがない!就業規則のない会社は違法?』の記事もご覧ください。 退職金を請求できる退職代行に依頼する 退職代行事業者によっては、退職代行で退職金を請求できない場合があります。 そのため、「無事退職できたが退職金が受け取れなかった」という事態が発生してしまうおそれもあるのです。 退職金を請求できる退職代行に依頼するようにしましょう。 退職代行の種類|退職金請求ができるのは弁護士だけ 退職代行をおこなう事業者は、大きく以下の3種類に分けられます。 退職代行事業者の種類 一般の退職代行業者 退職代行ユニオン 弁護士 (1)一般の退職代行業者 弁護士などの国家資格をもたない、株式会社や個人事業主による代行業者です。 会社に退職する意思を伝えることはできますが、会社と法的な交渉をおこなうことは非弁行為(弁護士資格をもたない者が、報酬を目的に弁護士業務をおこなう違法行為)にあたるため、退職金請求といったアクションを起こすことはできません(弁護士法第72条)。 (2)退職代行ユニオン 退職代行ユニオンとは、退職代行サービスをおこなっている合同労働組合のことです。 合同労働組合とは、社内に労働組合がない企業の労働者などが加入できる団体のことで、正社員や派遣社員、パートなどといった雇用形態に関係なく加入できるという特徴があります。 労働組合には団体交渉権が認められている(日本国憲法第28条)ため、会社と交渉や話し合いをすることや、退職と同時に退職金を請求することはできます。 しかし、実際にユニオンが労働委員会の承認を受けているかどうかや、運営実態が明らかにされているかといった、確認するべき点があるところに注意が必要です。 また、退職代行ユニオンには訴訟など法律問題に発展した場合、対処が難しくなるというデメリットがあります。 (3)弁護士 弁護士であれば、勤務先に退職する意思を伝えてもらえるだけでなく、以下のような交渉を同時におこなってもらえます。 弁護士に退職代行を依頼するとできること 退職金の請求 未払いになっている残業代や給与の支払い交渉 離職票などといった退職書類の請求 勤務先からの損害賠償請求に対する交渉 退職金はもちろん、サービス残業をしていた場合には、未払い残業代も請求できます。 関連記事 ・退職代行を弁護士に依頼するメリットは?費用・代行業者との違いまで完全解説! 弁護士に退職代行を依頼することのメリット 退職金も同時に請求してもらえる 弁護士に退職代行を依頼することの大きなメリットとして、退職金を退職代行と同時に請求できるということが挙げられます。 退職代行の利用を検討されている方は、ご自身では退職はもちろん、退職金の支払いについても上司に告げることが難しい方が多いと思います。 弁護士に依頼すれば、退職代行と同時に退職金も請求してもらえるので、退職金を受け取れる可能性が高くなります。 非弁行為のリスクがない 一般の退職代行業者が代行できるのはあくまで「退職の意思を告げること」だけです。そのため、それ以上に何らかの法的な交渉をおこなうと、非弁行為に該当するリスクが大きくなります。 一方、弁護士であれば非弁行為に該当するリスクはなく、退職金の請求ができるうえ、支払いを拒否されたとしても代理で会社と交渉できます。 退職に失敗するおそれが小さい 一般の退職代行業者では、退職する意思を告げたときに勤務先側から反論を受けたり、退職を認められなかったりした場合、法的な対応をとることができないというリスクが考えられます。 場合によっては、勤務先から損害賠償を請求されてしまうこともあるかもしれません。 弁護士に依頼すれば、勤務先側と法的な交渉をおこなうことができるため、そういったリスクを考えることなくスムーズにトラブルに対処できます。 弁護士に退職代行を依頼することのデメリット 弁護士に退職代行を依頼するメリットは多いですが、弁護士に退職代行を依頼することのデメリットは、他の事業者と比べると費用が高くなってしまうことが挙げられます。 弁護士に退職代行を依頼する際には、最初に相談をするときに必要な法律相談料、退職代行を依頼するための手数料、事務的な作業について生じる実費などが必要となります。 ただし、相談料は無料の弁護士事務所もあるため、費用が心配な方は無料の法律相談をうまく活用するといいでしょう。 関連記事 ・退職代行サービスの金額相場はいくら?3つの相談先と対応の違いを解説 退職金を受け取れない場合は弁護士に相談 退職代行を利用して退職金をしっかりと受け取りたいとお考えの方は、弁護士に依頼しましょう。 弁護士であれば、会社側が退職代行を利用したことを理由に退職金の支払いを拒否してきても、労働者の代理人として会社との交渉や法的手続きに対応することができます。 就業規則や退職金の規定を持参して、弁護士に事前に相談すれば、退職金制度として退職金が受け取れるかどうかも教えてもらえるでしょう。 まずは弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。 --- ### ブラック企業の辞め方!退職方法とスムーズに退職する方法を解説 - Published: 2024-03-11 - Modified: 2025-01-23 - URL: https://atomfirm.com/roudou/10930 - Categories: 労働問題全般 ブラック企業を辞めたいという方は、弁護士への相談をおすすめします。 弁護士に依頼すれば、法的なアドバイスをもらえるほか、未払いになっている残業代や給与を請求できます。 法的トラブルに発展した場合でも、弁護士であれば対応が可能です。 「ブラック企業の辞め方がわからない」「ブラック企業の退職方法を知りたい」 ブラック企業に勤めている方のなかには、いざ退職しようと思ってもなかなか踏ん切りがつかないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。 退職しようとしても、上司に引き留められてしまったり、「法的措置をとる」と言われたりしてしまったという方もいるでしょう。 今回は、ブラック企業を辞めたい方に向けて、想定される引き留めやその対処法、スムーズに退職する方法について解説します。 ブラック企業の特徴 ブラック企業について明確な定義はありませんが、一般的には以下のような特徴に該当していれば、ブラック企業である可能性が高いといえます。 ブラック企業の特徴 極端な長時間労働やサービス残業 ハラスメント行為が横行している 休日出勤が多く有給が取れない 不当な人事がある など ブラック企業の特徴については『ブラック企業とは?特徴と見極めるポイントを弁護士が解説』の記事でより詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。 極端な長時間労働やサービス残業 ブラック企業の特徴として、極端な長時間労働を強いているということが挙げられます。 労働基準法は、1日および1週間で働かせることのできる最長の労働時間(「法定労働時間」といいます)を、原則として1日8時間・1週間40時間と定めています(労働基準法32条)。 1日8時間、1週40時間の法定労働時間を超えて労働者が働くときには、労使協定(いわゆる36協定)を結ぶ必要があります。 ただし、36協定を結んでいても、「月45時間・年360時間」を超える残業は、原則として違法となります。 また、法定労働時間を超える労働については、割増賃金を支払う義務が生じます(労働基準法37条1項)。 「違法に長時間労働を強いている」「残業代を割増賃金で支払っていない」という場合は、ブラック企業に該当する可能性が高いです。 関連記事 ・残業代について解説!残業の定義、計算方法や残業代未払い時の対処法 ハラスメント行為が横行している ブラック企業の特徴として、セクハラやパワハラなどのハラスメント行為が横行しているということが挙げられます。 労働契約法では、使用者が、労働者の生命身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう配慮するという「安全配慮義務」について定めています(労働契約法5条)。 「安全配慮義務」の内容として、職場におけるいじめやハラスメントが生じないように職場環境を整 える義務があるとされています。 ハラスメント行為が見られるという場合は、職場が安全配慮義務に違反の状態を放置しているといえ、法令遵守意識が低いといえることから、ブラック企業に該当する可能性が高いといえます。 関連記事 ・ハラスメントの相談窓口5選!ハラスメントの種類と具体例も解説! ・職場でいじめにあったら?対処法と相談窓口を解説 休日出勤が多く有給が取れない 休日出勤が多かったり、有給が自由に取れなかったりすることも、ブラック企業の特徴の一つといえます。 労働基準法では、原則として毎週少なくとも1日、または4週間を通じて4日以上の休日をとることを定めています(労働基準法35条)。 休日出勤が多いという場合は、ブラック企業の特徴といえるでしょう。 また、企業は労働者が「入社から6か月継続して勤務をしている」「規定労働日の8割以上出勤している」ことを満たす場合、原則として10日の有給休暇を付与しなければなりません(労働基準法39条)。 有給休暇の申請を拒否することは、原則として違法行為にあたります。 したがって、有給休暇を自由に取得できないという場合も、ブラック企業である可能性が高いです。 関連記事 ・有給休暇が自由に取れない!ポイントと対処法を弁護士が解説 不当な人事がある 「気に入らないからという理由でしつこく退職勧奨された」「上司に意見したら降格させられた」など、不当な人事があるのもブラック企業の特徴です。 労働契約法では、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当だと認められなければ、解雇や懲戒処分は不当であると定められています(労働契約法15・16条)。 そのため、不当な人事異動があった場合には、ブラック企業である可能性が高いといえるでしょう。 そのほか、ブラック企業の特徴としては、「離職率が高い」「上司や社長の意見が絶対視されている」などがあります。 関連記事 ・不当な人事異動を受けた!不当とされるケースや相談先を解説 想定される引き留めと対処法 ブラック企業を退職しようと思っても、退職を認められず会社に引き留められてしまうことがあるかもしれません。 ここでは、想定される引き留めとその対処法について解説します。 退職届を受理しない 予想される引き留めとして、退職届を受理しないというものがあります。 ただし、正社員などの無期契約の労働者は、退職日の2週間以上前に退職の意思を会社へ伝えるだけで、会社との雇用関係を解消できると定められています(民法627条1項)。 そのため、退職届を受け付けてもらえなかったとしても、提出してから2週間が経過すれば、法的には退職できます。 退職したいのに辞められない場合の対処法については『会社を辞めたいのに辞めさせてくれない時はどうする?対処法を解説!』の記事をご覧ください。 「法的措置をとる」と脅す 「辞めれば損害賠償請求する」「退職すれば訴える」などと、法的措置をとると言われる場合もあるかもしれません。 しかし、労働者には退職の自由が認められており、損害賠償を請求されるリスクは小さいです。 そのため、「法的措置をとる」という主張には、法的に根拠があるわけではないということを意識しておきましょう。 待遇改善の意思を示す 「給料を上げるので辞めないでほしい」「昇格させるので辞めないでほしい」といった発言で、退職を引き留められるかもしれません。 こういった口約束は守られないことがあるばかりか、待遇が改善されても労働環境は改善されないといったケースもあります。 退職に際して、待遇改善の意思を示されても、毅然とした対応をとることをおすすめします。 後任者の不在をアピールする 「後任者が見つかるまで待ってほしい」「今辞められると困る」などと、後任者の不在をアピールされる場合があります。 その場合でも、後任者を見つけるのは企業側の役目であるため、そのまま退職して構いません。 もし、引き継ぎをしないことで会社に損害を与えてしまうという場合は、きちんと引き継ぎや、引き継ぎ文書の作成などをおこなってから退職することをおすすめします。 関連記事 ・会社を辞めたいのに辞めさせてくれない時はどうする?対処法を解説! ブラック企業を退職する流れ 就業規則を確認する 退職する際には、まず就業規則を確認しましょう。 就業規則を見たことがない方もいるかもしれませんが、労働者が10人以上いる会社は就業規則を作成することが義務付けられています(労働基準法89条)。 就業規則を会社に確認する方法について知りたい方は『就業規則を見たことがない!就業規則のない会社は違法?』の記事をご覧ください。 退職時の手続きについては、会社の就業規則で定めることが法律で義務付けられています(労働基準法89条3号)。 円満に退職したいという方は、就業規則にのっとって退職や引き継ぎ業務をおこないましょう。 先述の通り、正社員などの無期契約の労働者は、退職日の2週間以上前に退職の意思を会社へ伝えるだけで、会社との雇用関係を解消できると定められています(民法627条1項)。 就業規則に「1か月前に退職を申し出ること」と書かれていたとしても、2週間前に退職を申し出ていれば、法的には問題はありません。 就業規則を無視して退職することが不安な方は『【弁護士解説】就業規則を無視して退職できるのか』の記事をご覧ください。 退職届を書く 退職の意思を会社に伝えるために、退職届を書きましょう。 退職届の様式については特に法律で定められてはいませんが、「会社を退職する旨」「退職届の提出日」「退職希望日」が書かれていれば問題ありません。 上司に退職届を提出する 退職届を作成したら、上司に退職届を提出しましょう。 会社が退職届の受け取りを拒否した場合には、内容証明郵便で退職届を郵送することをおすすめします。 内容証明郵便を使うことで、退職の意思表示をしたという証明になります。 引き継ぎや会社の備品を返却する 会社に退職の意思を伝えた後は、業務の引き継ぎをおこなっておきましょう。引き継ぎが法的に労働者の義務と定められているわけではありません。 しかし、円滑に引き継ぎをおこなっておけば、「引き継ぎをおこなわなかったことで会社に損害を与えた」といったような、損害賠償請求のリスクを無くすことができます。 また、会社から備品を借りているという場合は、退職前に返却する必要があるので注意が必要です。 必要な書類を受け取る 会社から退職した後は、「離職票」「雇用保険被保険者証」「源泉徴収票」「年金手帳」といった書類を受け取りましょう。 このときの書類は健康保険や失業給付といったものの申請に必要となるので、忘れずに受け取っておきましょう。 ブラック企業をスムーズに辞める方法 退職届は内容証明郵便を使用する 退職届を出すときには、内容証明郵便を使用することをおすすめします。 内容証明郵便とは、どのような内容の手紙が、いつ、誰から誰に差し出されたかを証明してくれる郵便局のサービスです。 会社に退職の意思を伝えたことの証明になるため、「退職届を受理してくれない」「出社せずに退職したい」という際に有効となります。 労働基準監督署や労働局に相談する 会社に退職の意思を伝えた際、「退職するのなら給与を払わない・損害賠償を請求する」と引き留められた場合には、労働問題を扱う機関への相談をおすすめします。 たとえば、労働基準監督署であれば、労働基準法に違反している労働トラブルを相談できます。 労働局では、労働トラブルが発生した際には助言や指導、あっせん(話し合いの仲介)を無料でおこなってくれます。 スムーズに退職したいという場合は、労働問題を扱う機関に相談してみるというのも一つの手です。 関連記事 ・労働基準監督署に相談できる内容とは?メリット・デメリットから徹底解説 ・労働局とは?相談できることと利用するメリット・注意点を解説 退職代行サービスを利用する 自分から退職を言い出しにくいという場合には、退職代行サービスを利用するのもよいでしょう。 退職代行サービスとは、退職の手続きを自分の代わりに行ってくれるサービスです。 なお、一般の退職代行業者は、会社に退職する意思を伝えることはできます。 しかし、会社と法的な交渉をおこなうことは非弁行為(弁護士資格をもたない者が、報酬を目的に弁護士業務をおこなう違法行為)にあたるため、未払い残業代の請求といったアクションを起こすことはできません(弁護士法第72条)。 非弁のリスクを考え、退職代行業者選びは注意する必要があります。 関連記事 ・退職代行サービスとは?メリット・デメリットや選び方を弁護士が解説 弁護士に依頼する スムーズに退職したいという方は、弁護士への依頼をおすすめします。 弁護士に依頼すれば、未払いになっている残業代や給与を請求できます。 同時に退職代行を依頼したいという場合も、非弁のリスクなく、有給消化や未払い賃金などについて会社と交渉することができます。 また、勤務先から損害賠償を請求されてしまうといった、法的トラブルに発展した場合でも、弁護士であれば対応が可能です。 関連記事 ・労働問題に強い弁護士に相談!弁護士に相談するメリットや探し方 退職前後にやるべきこと 有給を消化しておく ブラック企業に勤めている方のなかには、有給の取得が認められず、たまっているという方も多いのではないでしょうか。 退職する前に、有給を消化しておくことをおすすめします。 退職の意向を会社に伝えたあとでも、在職期間中であれば、有給休暇を取得することができます。 関連記事 ・有給休暇が自由に取れない!ポイントと対処法を弁護士が解説 退職後は失業給付を申請する 退職先から必要な書類をもらった後は、ハローワークで失業保険の申請をおこなうことが重要です。 失業保険の申請が通れば、退職してから最大で約1年間は、前職の給与の5割~8割程度の基本手当が受け取れます。 ハローワークへの申請手続きが遅れた場合、基本手当の受け取り開始日も遅れてしまうので、必要な書類が用意できた時点で手続きを進めておきましょう。 以下の条件を満たしていれば、失業保険を受け取れます。 失業保険を受け取れる条件 転職活動をしているものの、就業できない失業状態が続いていること 離職日以前の2年間で、雇用保険への加入期間が12か月以上あること 関連記事 ・失業保険(雇用保険)とは?受給条件・申請期間・無料相談窓口も! 健康保険の切り替え手続き 退職日以降は健康保険が適用されなくなるため、健康保険の切り替えを忘れずにおこないましょう。 すぐに転職先が決まらないという場合は、「家族の扶養に入る」「前職の健康保険を任意で継続する」「国民健康保険に加入する」といった対応が必要です。 国民健康保険に加入する場合は、退職日の翌日から14日以内に役所で加入手続きをおこなわなければなりません。 手続きをする際には、「健康保険の資格喪失証明書」が必要であることに注意しておきましょう。 国民年金の手続き 年金の切り替えが遅れると年金未払いとなってしまうため、年金の切り替え手続きも忘れずにおこないましょう。 退職から転職までの期間が空く場合は、「家族の扶養に入る」「国民年金に切り替える」といった対応が必要です。 国民年金に加入する場合は、退職から14日以内に市区町村の国民年金窓口で加入手続きをおこなわなければなりません。 手続きをする際には、「年金手帳(基礎年金番号通知書)あるいはマイナンバー」「離職票」が必要であることに注意しておきましょう。 離職票が届かなったり、何らかの事情で手続きができなかったりする場合には、所轄の年金事務所に相談する必要があります。 離職票が届かない場合の対処法については『離職票はいつ届く?退職から失業手当を受給するまでの流れを解説!』の記事をご覧ください。 住民税の納付手続きをおこなう 在職中に天引きされていた住民税は、退職する月によって支払い方法が異なります。 月によって異なる住民税の支払い 1月~5月に退職する場合... ... 役所から送付される納税通知書に従い、分納する 6月~12月に退職する場合... ... 最後の給与や退職金から一括で天引きしてもらう 住民税の支払いに関しては、居住する市区町村によって納付方法が異なる場合があるため、各自治体に確認しておきましょう。 まとめ ブラック企業を辞めたいという方は、弁護士への相談をおすすめします。 弁護士に依頼すれば、法的なアドバイスをもらえるほか、未払いになっている残業代や給与を請求できます。 また、サービス残業やハラスメントに対して、ブラック企業を訴えることができるか相談することもできます。 ブラック企業を訴える方法については『ブラック企業を訴えたい!訴えることができるケースや相談窓口を解説』の記事をご覧ください。 無料相談を受け付けている弁護士事務所もありますので、まずは弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。 --- ### ブラック企業とは?特徴と見極めるポイントを弁護士が解説 - Published: 2024-03-11 - Modified: 2025-03-03 - URL: https://atomfirm.com/roudou/11027 - Categories: 労働問題全般 ブラック企業には明確な定義はありませんが、「極端な長時間労働やサービス残業を強いている」「ハラスメント行為が横行している」などの特徴があります。 自分が入社する会社がブラック企業かどうか気になるという方は、「労働時間が適切か」「募集要項は具体的か」といったポイントを確認するようにしましょう。 もしブラック企業に勤めていて精神的に疲弊しているという方は、弁護士への相談をおすすめします。 「ブラック企業の特徴を知りたい」「内定先がブラック企業かどうか気になる」 ブラック企業とは、過酷な環境で労働者を働かせ、労働法に違反するような働き方を強制するような企業の俗称です。 入社する前に志望する会社や現在働いている会社がブラック企業かどうか気になる方は多いのではないでしょうか。 今回は、ブラック企業の特徴や、会社がブラック企業かどうかを見極めるポイントについて解説します。 ブラック企業の特徴 ブラック企業について明確な定義はありませんが、一般的には以下のような特徴に該当していれば、ブラック企業である可能性が高いといえます。 ブラック企業の特徴 極端な長時間労働やノルマを課している サービス残業やハラスメント行為の横行などコンプラ意識が低い 上記の状況において、労働者に対して過度な選別をおこなう 参考:確かめよう労働条件「ブラック企業」ってどんな会社なの? それでは、ブラック企業の特徴について見ていきます。 当てはまる項目が多ければ多いほど、ブラック企業に該当する可能性が高いといえるでしょう。 極端な長時間労働やサービス残業を強いている ブラック企業の特徴として、極端な長時間労働を強いているということが挙げられます。 労働基準法は、1日および1週間で働かせることのできる最長の労働時間(「法定労働時間」といいます)を、原則として1日8時間・1週間40時間と定めています(労働基準法32条)。 1日8時間、1週40時間の法定労働時間を超えて労働者が働くときには、労使協定(いわゆる36協定)を結ぶ必要があります。 ただし、36協定を結んでいても、「月45時間・年360時間」を超える残業は、原則として違法となります。 また、法定労働時間を超える労働については、割増賃金を支払う義務が生じます(労働基準法37条1項)。 「違法に長時間労働を強いている」「残業代を割増賃金で支払っていない」という場合は、ブラック企業に該当する可能性が高いです。 関連記事 ・残業代について解説!残業の定義、計算方法や残業代未払い時の対処法 ハラスメント行為が横行している ブラック企業の特徴として、セクハラやパワハラなどハラスメント行為が横行しているということが挙げられます。 労働契約法では、使用者が、労働者の生命身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう配慮するという「安全配慮義務」について定めています(労働契約法5条)。 「安全配慮義務」の内容として、職場におけるいじめやハラスメントが生じないように職場環境を整 える義務があるとされています。 ハラスメント行為が見られるという場合は安全配慮義務を果たしておらず、法令遵守の意識が欠けていることから、ブラック企業に該当する可能性が高いといえます。 関連記事 ・ハラスメントの相談窓口5選!ハラスメントの種類と具体例も解説! ・職場でいじめにあったら?対処法と相談窓口を解説 休日出勤が多く有給が取れない 休日出勤が多かったり、有給が自由に取れなかったりすることも、ブラック企業の特徴の一つといえます。 労働基準法では、原則として毎週少なくとも1日、または4週間を通じて4日以上の休日をとることを定めています(労働基準法35条)。 休日出勤が多いという場合は、ブラック企業の特徴といえるでしょう。 また、企業は労働者が「入社から6か月継続して勤務をしている」「規定労働日の8割以上出勤している」ことを満たす場合、原則として10日の有給休暇を付与しなければなりません(労働基準法39条)。 有給休暇の申請を拒否することは、原則として違法行為にあたります。 したがって、有給休暇を自由に取得できないという場合も、ブラック企業である可能性が高いです。 関連記事 ・有給休暇が自由に取れない!ポイントと対処法を弁護士が解説 不当な人事がある 「気に入らないからという理由でしつこく退職勧奨された」「上司に意見したら降格させられた」など、不当な人事があるのもブラック企業の特徴です。 労働契約法では、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当だと認められなければ、解雇や懲戒処分は不当であると定められています(労働契約法15・16条)。 そのため、不当な人事異動があった場合には、ブラック企業である可能性が高いといえるでしょう。 関連記事 ・不当な人事異動を受けた!不当とされるケースや相談先を解説 労働時間に対して給料が低い 「時給換算してみると最低賃金を下回っている」といった、労働時間に対する給料の低さもブラック企業の特徴です。 労働者に支払われる賃金は、厚生労働省が定めている最低賃金を上回っていなければなりません。 参考:厚生労働省|地域別最低賃金の全国一覧 最低賃金の対象となるのは、残業代やボーナス、通勤手当などを除く、毎月支払われる基本的な賃金です。 給与を時給換算したときに都道府県の最低賃金を下回っているという場合は、ブラック企業である可能性が高いです。 「名ばかり管理職」がいる 労働基準法では、管理監督者に該当する管理職であれば、労働時間、休憩および休日に関する規定は適用されないと定められています(労働基準法41条2号)。 しかし、すべての管理職が管理監督者に該当するわけではありません。 労働基準法上の「管理監督者」に該当するかどうかは、「責任や権限」「職務内容」「待遇面」などによって判断されることになります。 「管理監督者」の要件に該当する権限を有さない場合は、管理監督者という肩書を有していても、労働時間、休憩および休日に関する規定が適用されるのです。 このような、管理監督者の肩書だけで労働時間などの規定が適用外と扱われている、いわゆる「名ばかり管理職」いえる立場の人が多く存在する場合は、法令遵守意識を欠いており、ブラック企業に該当する可能性があります。 離職率が高い 離職率の計算方法は定義されているわけではなく、企業によって定義や算出方法が異なります。 厚生労働省の雇用動向調査では、以下のような計算方法で離職率を計算しています。 雇用動向調査での離職率の計算方法 離職者数÷1月1日現在の常用労働者数×100(%) 参考:厚生労働省|-令和4年雇用動向調査結果の概況- 「離職率の高い企業はブラック企業である」ということはありませんが、ブラック企業では労働者の入れ替わりが激しく、離職率が高い傾向にあります。 上司や社長の意見が絶対視されている 上司や社長の意見が絶対視されているというのも、ブラック企業の特徴の一つです。 突発的で理不尽な内容であったとしても、反論すればパワハラやセクハラなどの行為に発展する恐れがあります。 精神論や根性論が横行している 「すべては自分次第」「やる気の問題」などと、精神論や根性論が横行しているのもブラック企業の特徴といえるでしょう。 「精神論や根性論での指導が多すぎる」という場合は、ブラック企業に該当する可能性が高いです。 ブラック企業かどうか見極めるポイント 「これから入る会社がブラック企業かどうか知りたい」という方は多いと思います。 ここでは、求人情報からブラック企業かどうかを見極めるポイントについて解説します。 労働時間や勤務日数が適切か ブラック企業の特徴として極端な長時間労働が挙げられます。 そのため、労働時間や勤務日数が適切かどうかをチェックしましょう。 インターネットで元従業員の声を聴いてみたり、実際に職場を見学して従業員の様子を見たりすることが重要です。 「1日の労働時間が8時間を大幅に超えている」「休日の日数が少なすぎる」という場合は注意が必要です。 残業代についての記述が明確か 残業代がきちんと支払われるかどうかも重要なチェックポイントです。 求人情報ではよく「固定残業(みなし残業)代」という文言を目にします。 みなし残業(固定残業)は、あらかじめ一定時間分の残業代を給与に含めて支払う制度のことです(労働基準法38条)。 実際に支払われるべき残業代が固定支給額を超えない場合は、残業代の追加請求が認められないことになります。 しかし、みなし残業代については、通常の賃金部分と割増賃金部分が書面ではっきりと区別されていることや、固定手当が割増賃金の対価として支払われていることが必要となります。 残業代についての記述が明確かどうかを確認しておくことが重要です。 募集要項は具体的か 募集について具体的な職種が書かれていなかったり、アピールポイントがあやふやだったりする場合は、ブラック企業に該当する可能性が高いです。 「アットホームな職場」「若手が活躍」といった抽象的で精神論をアピールする言葉が用いられることがたびたびあるので、注意しておきましょう。 参考サイト ホワイト企業ナビ アットホームはブラック企業の特徴か?(解説記事) 給与が極端に高い・低い 同業他社と比べたときに、給与が極端に高かったり、あるいは低かったりする企業は、ブラック企業である可能性があります。 極端に高い場合は、高い給与の代わりに長時間労働を強いられるおそれがあるばかりか、給与自体も保証されていない場合があります。 反対に極端に低い場合は、安い給与のもと厳しい労働条件・環境で働かされるケースもあるので注意が必要です。 離職率が高くないか ブラック企業では労働者の入れ替わりが激しく、離職率が高い傾向にあります。 「年間を通していつも求人を出している」「採用する人数が極端に多い」という場合は、従業員の定着率が低く、離職率が高い可能性があるため注意が必要です。 参考サイト 【就職活動】コンサル業界はブラックなの?ブラックと言われる理由やブラック業界ランキングなども含めて紹介しています!|就活HAND BOOK 社員の見た目や雰囲気はどうか 実際に現場に向かう機会がある場合は、社員の見た目や会社の雰囲気をチェックしておきましょう。 「社内の掃除が行き届いているかどうか」「社員が疲れた見た目をしていないかどうか」「逆に異様な熱気につつまれていないかどうか」といった点に注意しましょう。 法令違反したことがあるかどうか 厚生労働省の「労働基準関係法令違反に係る公表事案」(通称:ブラック企業リスト)を見れば、労働基準関係法に違反した企業や、その違反内容を確認することができます。 法令違反を犯したすべての企業が記載されているというわけではありませんが、簡単に会社のコンプラ意識をチェックできます。 「もしかしたら転職先がブラック企業で問題が生じるかもしれない」とお考えの方は、トラブルに事前に備える手段として、弁護士保険をご検討ください。 参考サイト 弁護士保険STATION|エレメントインシュランス ブラック企業にいる場合は退職を検討 「自分の勤めている会社がブラック企業である」という場合には、退職を検討することをおすすめします。 勤めている会社が明らかに労働基準法に違反している場合には、労働基準監督署に相談すれば、是正指導・勧告を行ってもらえることもあります。 しかし、労働基準監督署によって会社に是正指導や勧告がなされても、改善が見られなかったり、一度改善しても前の状態に戻ってしまったりして、労働問題が根本的に解決しないこともあります。 その場合は、労働者個人で会社に労働環境の改善を求めていくことになりますが、実際に会社と交渉をしていくことは現実的ではないでしょう。そのため、労働環境が整った環境で働きたい方は退職を検討するべきと言えます。 ただし、人手不足や上司からの圧力などで、なかなか会社を辞められない方もいるでしょう。ブラック企業をスムーズに退職したい方は、『ブラック企業の辞め方!退職方法とスムーズに退職する方法を解説』の記事も参考にしてください。 まとめ ブラック企業には明確な定義はありませんが、「極端な長時間労働やサービス残業を強いている」「ハラスメント行為が横行している」などの特徴があります。 自分が入社する会社がブラック企業かどうか気になるという方は、「労働時間が適切か」「募集要項は具体的か」といったポイントを確認するようにしましょう。 もしブラック企業に勤めていて精神的に疲弊しているという方は、弁護士への相談をおすすめします。 弁護士に相談すれば、ブラック企業を訴えることができるケースもあります。 無料相談を受け付けている弁護士事務所もありますので、まずは弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。 関連記事 ・ブラック企業を訴えたい!訴えることができるケースや相談窓口を解説 --- ### 退職代行で起こるトラブルとは?未然に防ぐ方法を弁護士が解説 - Published: 2024-03-08 - Modified: 2025-02-20 - URL: https://atomfirm.com/roudou/10767 - Categories: 退職代行 退職代行によるトラブルや失敗するケースについて不安に思う方もいるのではないでしょうか。 退職代行サービスを利用することで、退職が認められなかったり、会社から損害賠償を請求されたりすることは基本的にありません。 「退職代行を利用しても退職が拒否されるのでは?」「退職代行が失敗になることはないのか」 退職代行サービスとは、退職の手続きを自分の代わりに行ってくれるサービスです。 退職代行サービスを利用したいと考えている方の中には、退職代行によるトラブルや失敗するケースについて不安に思う方もいるのではないでしょうか。 退職代行を利用しても、基本的には退職が認められなかったり、会社から損害賠償を請求されたりすることはありません。 しかし、依頼する代行業者によっては、「法的トラブルに対応できない」「想定よりも費用がかかってしまう」といった事態に陥るおそれがあります。 そこで今回は、退職代行サービスを利用することで想定されるトラブルや、それを未然に防ぐ対策について弁護士が解説します。 退職代行で退職しても大丈夫! 退職は基本的に認められる 退職代行サービスの依頼先には、一般の退職代行業者や労働組合(退職代行ユニオン)、弁護士といったものが挙げられます。 いずれのサービスを利用しても、基本的に退職が認められないということはありません。 無期雇用の場合は、労働者は退職の意志を伝えれば退職できると法律で定められています(民法627条)。 したがって、退職代行サービスを使ったからといって、退職が認められないということはありません。 退職代行で損害賠償請求の危険性もまずない 「退職代行で会社を突然辞めると、損害賠償を請求されてしまうのではないか」と考える方もいるかもしれません。 損害賠償請求は、会社の権利を侵害された場合に限ります(民法709条)。 したがって、退職代行を利用したことで会社から損害賠償を請求されるリスクは小さいでしょう。 ただし、「必要な引き継ぎをせずに退職した結果、取引先との契約がなくなってしまった」など、会社に具体的な損害が発生している場合は、損害賠償を請求されるおそれがあるので注意しましょう。 退職代行で懲戒解雇となるリスクは非常に低い 「退職代行を利用すると懲戒解雇されてしまうのでは」と不安になる方もいるかもしれません。 退職代行を利用したことで懲戒解雇されるリスクは非常に低いです。 また、退職代行を利用したことで懲戒解雇をすることは、よほどの悪質性がないと違法であり、懲戒解雇は無効になります。 退職代行を利用することが、懲戒解雇に直接影響するわけではないといえます。 退職代行で想定されるトラブル 非弁業者に依頼してしまう 退職代行で失敗するケースとして、非弁業者に依頼してしまうということが挙げられます。 一般の退職代行業者は、会社に退職する意思を伝えることはできます。 しかし、会社と法的な交渉をおこなうことは非弁行為(弁護士資格をもたない者が、報酬を目的に弁護士業務をおこなう違法行為)にあたるため、未払い残業代の請求といったアクションを起こすことはできません(弁護士法第72条)。 そのため、「有給を消化したい」「未払い残業代を支払ってほしい」といった要望を通すことができないというデメリットがあります。 退職代行で失敗するその他のケースについては、以下の記事をご確認ください。 参考 退職代行で失敗するケース3つ|トラブルを避ける方法も解説 業者に予想以上の金額を請求される 他の業者よりも極端に安い価格で退職代行サービスをおこなっている業者には注意が必要です。 当初予定されていた金額よりも多額のサービス料を請求されたり、サービスの質が悪かったりするおそれがあります。 関連記事 ・退職代行サービスの金額相場はいくら?3つの相談先と対応の違いを解説 法的トラブルに対応できない 基本的に退職代行を使ったことで会社から損害賠償を請求されることはありませんが、仮に訴訟や法的トラブルに発展した場合、一般的な退職代行業者やユニオンでは対応が難しいです。 結局、依頼者自身が会社と直接交渉したり、別途で弁護士に依頼したりといった対応が必要になる可能性があります。 退職後に必要書類が送られてこない 「退職代行で退職できたものの、離職票といった書類が送られてこない」というケースがあります。 離職票や雇用保険被保険者証といった書類は、失業保険の申請手続きに必要です。 こういった書類が送られてこないという場合は、ハローワークに相談すれば、ハローワーク側から会社に書類を発行するように要請してもらえます。 退職代行のトラブルを防ぐ方法 退職代行を利用することで発生しうるトラブルは、どのようにすれば防げるのでしょうか。 顧問弁護士がいる業者に依頼する 退職代行業者に依頼する際に、顧問弁護士が存在しているかどうかをチェックすることが重要です。 顧問弁護士を設置している退職代行業者であれば、非弁行為のリスクが低いといえるでしょう。 もちろん、口コミや評判をチェックしておくことも重要です。 依頼前にサービスの範囲を確認する 退職代行業者に依頼する前に、業者がどのようなサービスまでおこなってくれるか、サービスの範囲について説明を受けておきましょう。 顧問弁護士を設置していない退職代行業者の場合は、サービスの範囲は「退職意思を代理で会社に伝える」にとどまります。 それにもかかわらず、「未払い残業代の交渉もできる」「有給消化の交渉も可能」などとうたっている場合は、非弁業者である可能性が高いといえます。 退職代行に相談する際のポイントは『退職代行の相談時に確認すべき内容や選び方を解説!』の記事で詳しくまとめています。ぜひご覧ください。 料金システムが明確な業者に依頼する サービス内容と同じく、料金システムや価格体系が明確な業者に依頼するようにしましょう。 不明瞭な料金システムの業者に依頼すると、のちに金銭トラブルに発展してしまうリスクが高くなります。 引き継ぎ資料を残しておく 担当業務で引き継ぎが必要な場合は、引き継ぎ資料を残しておくようにしましょう。 引き継ぎ資料を残すことで、会社から「損失を受けた」という理由で損害賠償を請求されるリスクを小さくすることができます。 貸与物は返却し、私物は回収しておく 退職代行サービスを利用する際には、会社からの貸与物は返却し、会社に残っている私物については郵送してもらうことになります。 会社とのやり取りを減らすためにも、あらかじめ貸与品をまとめておいたり、私物を持ち帰ったりしておきましょう。 弁護士に依頼する 非弁のリスクを考えると、退職代行は弁護士に依頼することをおすすめします。 「有給を消化したい」「未払い残業代を請求したい」などについて会社と交渉することができるほか、訴訟問題に発展したとしてもスムーズに対応することができます。 弁護士に退職代行を依頼するメリット 先述のように、退職代行を弁護士に依頼すれば、トラブルに発展したとしてもスムーズに対応することができます。 未払いの残業代や給与を請求してもらえる 弁護士に退職代行を依頼することの大きなメリットとして、未払いになっている残業代や給与を退職代行と同時に請求できるということが挙げられます。 在職中に残業代を請求することが心理的に難しかったり、規程通りに退職金が支給されなかったりした場合でも、弁護士に依頼すれば代理で請求してもらうことができます。 非弁行為のリスクがない 先述のように、一般の退職代行業者が代行できるのはあくまで「退職の意思を告げること」だけです。それ以上に何らかの法的な交渉をおこなうと、トラブルに発展するおそれがあります。 一方、弁護士であれば非弁行為に該当するリスクはなく、有給休暇の取得や退職日の調整といったさまざまな事情を代理で交渉してもらうことができます。 退職に失敗するおそれが小さい 一般の退職代行業者では、退職する意思を告げたときに勤務先側から反論を受けたり、退職を認められなかったりした場合、法的な対応をとることができないというリスクが考えられます。 場合によっては、勤務先から損害賠償を請求されてしまうといった、トラブルに発展してしまうかもしれません。 弁護士に依頼すれば、勤務先側と法的な交渉をおこなうことができるため、そういったリスクを考えることなくスムーズにトラブルに対応することができます。 関連記事 ・退職代行を弁護士に依頼するメリットは?費用・代行業者との違いまで完全解説! まとめ 退職代行サービスを利用することで、退職が認められなかったり、会社から損害賠償を請求されたりすることは基本的にありません。 弁護士であれば、非弁のリスクを考えることなく退職代行を依頼できます。 ほかの事業者と比較して退職代行の費用は高くなりますが、退職代行をお考えの場合は弁護士に依頼することをおすすめします。 無料相談を受け付けている弁護士事務所もありますので、まずは弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。 --- ### 退職代行の流れは?手順を弁護士が徹底解説 - Published: 2024-03-08 - Modified: 2024-03-11 - URL: https://atomfirm.com/roudou/10714 - Categories: 退職代行 退職代行サービスを利用すれば、会社に対して代理で退職の意思を伝えてもらえ、心理的な負担を軽くできるというメリットがあります。 今回は、退職代行サービスの流れや、依頼する前にやっておくべきこと、依頼後にやるべきことについて解説します。 「退職代行を依頼したい」「退職代行の流れがわからない」 退職を考えており、なかなか退職の意思を切り出せないという方の中には、退職代行サービスへの依頼を検討している方も多いのではないでしょうか。 しかし、実際に退職代行はどのような流れでおこなわれるのか、やり方がわからないと不安に思う方もいるでしょう。 今回は、退職代行サービスの流れや、利用する前にやっておくべきこと、利用後にやるべきことについて解説します。 退職代行を利用する前にやるべきこと 有給休暇の残り日数を確認しておく 退職代行サービスに依頼する前に、有給休暇の残り日数を確認しておきましょう。 有給休暇の残り日数は、給与明細に記載されているのが一般的です。 「退職するときに有給休暇をすべて消化できなかった」という事態を避けるために、必ず確認しておくようにしましょう。 会社の備品などの返却を準備しておく 会社からパソコンやスマホ、制服などの備品を借りている場合は、退職時に返却する必要があるため、返却する準備をしておくようにしましょう。 会社に預けているものがあるという場合は、退職代行サービスを依頼するときに、業者にその旨を伝えておくことが重要です。 退職金を確認しておく 基本的には、退職代行サービスを利用しても退職金を受け取れます。 そのため、会社に退職金制度はあるかどうか、就業規則や社内規程から確認しておきましょう。 引き継ぎ資料を作成しておく 法律上は、引き継ぎをしなくても基本的には問題ありません。 しかし、「就業規則で引き継ぎが義務化されている」「引き継ぎがないことで会社に大きな影響を与える」といった場合には、引き継ぎが必要とされる可能性があります。 上記のようなケースに該当する場合は、引き継ぎ資料を作成しておきましょう。 社宅や寮の場合は引っ越しの準備をしておく 社宅や寮に住んでいるという場合は、退職と同時に出ていく必要があります。 退職代行サービスを依頼する前に、引っ越し先を探したり、部屋の片づけをしたりしておきましょう。 また、配達物などの住居変更を忘れてしまうと、会社や社宅、寮に取りにいかなければならなくなるおそれがあるため、注意が必要です。 退職代行の流れ 退職代行業者に相談する 退職代行サービス事業者は大きく「一般の退職代行業者」「退職代行ユニオン(労働組合)」「弁護士」の3種類があります。 依頼先によって相場や対応してくれる内容が異なるので、自分に合った業者を選ぶようにしましょう。 こちらの内容について詳しく知りたい方は「退職代行サービスの金額相場はいくら?3つの相談先と対応の違いを解説」の記事をご覧ください。 相談方法については大きく「メール」「電話」「LINE」の3種類があります。 相談する際は、以下の点について質問しておくことが重要です。 相談時にしておくべき質問 追加料金が発生するかどうか、料金システム 決済方法 即日対応はできるか 備品の返却や私物の回収の方法 退職後の書類の受け取り方法 など 料金を支払う 依頼する退職代行業者を決めたら、料金を支払いましょう。 退職代行は銀行振り込みによる前払い制を採用している業者がほとんどですが、中にはクレジットカードなどでのキャッシュレス決済や、後払い制を採用している業者もあります。 すぐに退職代行を利用したいという場合は、時間帯に左右されないクレジットカード払いの業者を利用するのがおすすめです。 利用者の情報を記入して打ち合わせをする 退職代行業者への相談と料金の支払いが終わったら、希望退職日や依頼者情報のヒアリングがおこなわれます。 ヒアリングで聞かれる個人情報には、以下のようなものがあります。 必要な個人情報 氏名や生年月日、住所、電話番号 雇用形態や勤続年数 会社名や部署の情報 退職理由や退職希望日 有給休暇の残り日数 退職金や未払い残業代の有無 など 会社に退職の意思を連絡してほしい日時があったり、なにか会社に対して伝えてほしい内容があったりする場合には、この時点で打ち合わせをしておくようにしましょう。 退職代行業者が会社に退職の連絡をする ヒアリングした情報をもとに、退職代行業者が会社へ退職の意思を伝えます。 依頼者が会社と直接連絡を取る必要は一切ありません。 有給休暇や未払い残業代など、会社に対して何か交渉が必要な場合は、退職代行ユニオン(労働組合)や弁護士による退職代行であれば代行業者に任せることが可能です。 備品を返却したり退職書類を受け取ったりする 退職代行業者と会社との間で話し合いや交渉がまとまれば、退職代行業者から依頼主に報告があるはずです。 その後、会社に対して退職届を提出し、会社からの貸与品や備品を郵送すれば退職が完了することになります。 退職から2週間程度すれば、「離職票」「雇用保険被保険者証」「雇用保険被保険者証」「年金手帳」といった書類が会社から送られてきます。 これらの書類は転職するときや失業保険を受け取るときに必要な書類であるため、届かないという場合は代行業者に早めに相談しましょう。 退職代行をした後にやるべきこと 失業手当の手続き 退職先から必要な書類をもらった後は、ハローワークで失業保険の申請をおこなうことが重要です。 失業保険の申請が通れば、退職してから1年間は、前職の給与の5割~8割程度の基本手当が受け取れます。 ハローワークへの申請手続きが遅れた場合、基本手当の受け取り開始日も遅れてしまうので、必要な書類が用意できた時点で手続きを進めておきましょう。 以下の条件を満たしていれば、失業保険を受け取れます。 失業保険を受け取れる条件 転職活動をしているものの、就業できない失業状態が続いていること 離職日以前の2年間で、雇用保険への加入期間が12か月以上あること 退職代行を利用した退職の場合は、自己都合退職とみなされるため、退職から失業保険が給付されるまでは、およそ2か月かかるという点に注意が必要です。 国民健康保険の手続き 退職日以降は健康保険が適用されなくなるため、健康保険の切り替えを忘れずにおこないましょう。 すぐに転職先が決まらないという場合は、「家族の扶養に入る」「前職の健康保険を任意で継続する」「国民健康保険に加入する」といった対応が必要です。 国民健康保険に加入する場合は、退職日の翌日から14日以内に役所で加入手続きをおこなわなければなりません。 手続きをする際には、「健康保険の資格喪失証明書」が必要であることに注意しておきましょう。 国民年金の手続き 年金の切り替えが遅れると年金未払いとなってしまうため、年金の切り替え手続きも忘れずにおこないましょう。 退職から転職までの期間が空く場合は、「家族の扶養に入る」「国民年金に切り替える」といった対応が必要です。 国民年金に加入する場合は、退職から14日以内に市区町村の国民年金窓口で加入手続きをおこなわなければなりません。 手続きをする際には、「年金手帳(基礎年金番号通知書)あるいはマイナンバー」「離職票」が必要であることに注意しておきましょう。 離職票が届かなったり、何らかの事情で手続きができなかったりする場合には、所轄の年金事務所に相談する必要があります。 所得税・住民税の手続き 年明け以降に転職する場合や、転職しない場合は、確定申告が必要であることに注意しましょう。 また、在職中に天引きされていた住民税は、退職する月によって支払い方法が異なります。 月によって異なる住民税の支払い 1月~5月に退職する場合... ... 役所から送付される納税通知書に従い、分納する 6月~12月に退職する場合... ... 最後の給与や退職金から一括で天引きしてもらう 住民税の支払いに関しては、居住する市区町村によって納付方法が異なる場合があるため、各自治体に確認しておきましょう。 退職代行で依頼主がすることは4つだけ 退職代行業者へ依頼すること 「退職代行サービスを利用しよう」と決めたら、退職代行業者に問い合わせてみましょう。 相談自体は無料でおこなっている業者が多いので、「話を聞いてほしい」という気持ちで連絡してみることもおすすめします。 有給の消化や退職希望日といった、疑問や要望を相談し、内容に納得してから依頼するようにしましょう。 依頼料金を支払うこと 退職代行業者の多くは前払い制を採用しています。 退職代行業者が入金を確認してから退職代行が始まる点に注意しておきましょう。 また、料金に関するトラブルを回避するためにも、最終的にかかる料金や費用の内訳について、相談する際に詳しく確認しておくことが重要です。 退職届の作成や備品の郵送 退職代行サービスは本人に代わって会社に退職の意思を伝えてくれますが、「退職届」などの退職に必要な書類は依頼者本人が執筆する必要があります。 また、作成した書類や、会社からの貸与品や備品は依頼者本人が会社に郵送する必要があります。 原則として郵送という形になるため、依頼者が直接出社する必要はありません。 また、私物を郵送してもらいたいという場合も、代行業者が間に入ってくれるため、依頼者が直接会社とやり取りする必要はないところがポイントです。 退職書類や私物を受け取ること 無事に退職手続きが終われば、会社側から書類や私物が依頼者の自宅に郵送されます。 私物の郵送が必要な場合は、「何を送ってほしいのか」「どこに置いてあるか」といった情報を代行業者に伝えておきましょう。 退職代行で業者がしてくれること 会社に退職の意思を伝えること 退職代行を依頼すれば、自分に代わって会社に退職の意思を伝えてくれます。 業者によっては、依頼した当日に退職できる即日退職に対応しているところもあります。 すぐにでも退職したいという方は、即日退職に対応した業者を探してみることをおすすめします。 退職手続きや会社とのやりとりのサポート 退職する際には、書類の提出、貸与品や備品の返却といったさまざまな手続きが必要です。 退職代行に依頼すれば、面倒な手続きややり取りをサポートしてくれるため、心理的負担を軽くできるというメリットがあります。 退職代行ユニオンや弁護士は会社と交渉できる 一般の退職代行業者が会社と法的な交渉をおこなうことは、非弁行為(弁護士資格をもたない者が、報酬を目的に弁護士業務をおこなう違法行為)にあたるため、残業代の請求などといったアクションを起こすことはできません(弁護士法第72条)。 退職代行ユニオンや弁護士に退職代行を依頼すれば、有給消化や退職日の決定など、さまざまな交渉ができます。 また、弁護士であれば、未払い残業代やハラスメントなどの慰謝料請求といった法的な対応を依頼できます。 もし会社と何らかのトラブルを抱えており、そのうえで退職代行を依頼したいという場合は、弁護士に依頼することをおすすめします。 退職代行のポイント 退職日の2週間前に退職の意思を伝えよう 仕事を辞める場合、少なくとも退職希望日の2週間前までに会社や上司に伝える必要があります(民法627条)。 したがって、退職希望日から2週間前には退職代行業者に相談しておきましょう。 もちろん、退職代行サービスに依頼したその日から有給を取得すれば、退職希望日まで出社せずに退職日を迎えることもできる可能性があります。 また、有給休暇の残り日数が少ないという場合でも、以下のようなやむを得ない事由があるケースでは即日退職が認められる可能性があります(民法628条)。 やむを得ない事由と認められるケース パワハラなどハラスメントやいじめなどで強いストレスを感じている 従業員本人が精神疾患を患っている 長時間に及ぶ過度な残業など違法行為が認められる など 自分のケースが即日退職できるケースかわからないという方は、弁護士事務所に相談することをおすすめします。 転職先にバレることは基本的にない 「自分が退職代行サービスを使ったことが転職先にバレてしまうのではないか」と不安になる方もいるかもしれません。 しかし、退職代行サービスを利用して会社を退職したとしても、転職先にバレてしまうリスクは低いといえます。 というのも、企業が退職した従業員の個人情報を外部に提供する行為や、以前勤務していた会社を調べる行為は、個人情報保護法で禁止されています(個人情報保護法27条)。 また、退職代行業者もプライバシー保護を徹底しているため、その点でもバレてしまうリスクは低いでしょう。 弁護士はトラブルにも対応がスムーズ 退職代行サービスを利用して企業に退職を申し出た場合でも、企業が退職を認めず訴訟問題といった法的トラブルに発展するおそれがあります。 その場合、一般の退職代行業者や退職代行ユニオンでは、うまく対処することが難しいというデメリットがあります。 しかし、弁護士であれば、法的な専門知識を背景に、法的トラブルに発展した場合でもスムーズに対処できるというメリットがあります。 関連記事 ・退職代行を弁護士に依頼するメリットは?費用・代行業者との違いまで完全解説! まとめ 退職代行サービスを利用すれば、会社に対して代理で退職の意思を伝えてもらえ、心理的な負担を軽くできるというメリットがあります。 退職に関してお悩みの方は、一度利用を検討してみてはいかがでしょうか。 また、退職代行サービスを利用したいという方は、弁護士に依頼することをおすすめします。 弁護士であれば、未払い残業代請求や退職希望日の交渉ができるほか、法的トラブルに発展した際の対応をスムーズにおこなえます。 無料相談を受け付けている弁護士事務所もありますので、まずは弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。 関連記事 ・退職代行サービスとは?メリット・デメリットや選び方を弁護士が解説 --- ### 内定取り消しに対して損害賠償請求はできるのか?弁護士が解説 - Published: 2024-03-06 - Modified: 2024-03-11 - URL: https://atomfirm.com/roudou/10532 - Categories: 労働問題全般 不当な理由で会社から内定を取り消されてしまったという場合には、会社からの内定取り消しを無効にできたり、損害賠償や慰謝料を請求できたりするケースがあります。 内定取り消しで損害賠償請求をおこなう場合には、弁護士への相談をおすすめします。 「内定取り消しで損害賠償請求はできるのか」「内定取り消しの相談は、いくらかかるのか」 内定通知を受けた会社から急に内定を取り消されてしまうと、不安になってしまいますよね。 内定取り消しが違法となるケースでは、会社に対して損害賠償を請求できます。 なお、内定取り消しを言い渡された理由にもよりますが、損害賠償や慰謝料の相場は、約50~100万円程度といわれています。 今回は、内定取り消しが違法となるケースや、損害賠償をするときのポイント、弁護士に相談するメリットについて解説します。 違法な内定取り消しには損害賠償請求できる! 内定とは 法律上、内定とは「始期付解約権留保付労働契約」と呼ばれます。 始期付解約権留保付労働契約 実際に入社して就労するまで一定の期間があるという条件(始期付)で、かつ入社までにやむを得ない事由が発生したときには労働契約を取り消すという条件(解雇権留保付)における、労働契約のこと 内定取り消しが違法となるケース 法律上、雇用契約に留保された解約権(入社までにやむを得ない事由が発生したときに労働契約を取り消すことができるという権利)は、無制限に行使できるわけではありません。 合法的に行使されたかどうかというのは、解雇に準じて非常に厳しく審査されます。 内定取り消しが法律上有効になるためには、内定取り消しに至った過程において、合理的な理由と社会的な相当性があることが必要になります。安易な内定取り消しは、不当解雇と同様、無効になります。 こういったケースに該当する場合は、会社に対して損害賠償や慰謝料を請求することができます。 内定取り消しが認められるケース 内定取り消しは、必ずしも違法になるとは限りません。 内定取り消しについて客観的かつ合理的な理由があり、社会通念上相当であると判断された場合には、内定取り消しが認められます。 具体的には以下のようなケースが挙げられます。 内定取り消しが認められるケース 内定者が大学を卒業できなかった場合 健康上の問題がわかった場合 履歴書の内容に虚偽があった場合 内定後に刑事事件を起こした場合 経営不振でリストラ・整理解雇が必要な場合 関連記事 ・内定取り消しは違法?違法性や対処法について解説 内定取り消しの損害賠償に関する判例 内定を取り消されてしまった採用者が、内定取り消しの無効と、前の職場を退職してから再就職するまでの未払い賃金や、慰謝料の支払いを求めて会社を提訴した事件です(『オプトエレクトロニクス事件』東京地判平16. 6. 23)。 転職活動をおこなっていたXさんは、Y社から採用内定の通知を受けました。それを受けて、最終面接待ちであったほかの企業を断り、元の職場も退職しました。 しかし、Y社はXさんに関する勤務態度などの悪い噂を聞き、最終的にXさんの採用内定を取り消しました。 Xさんは、これについて内定取り消しの無効と、前の職場を退職してから再就職するまでの未払い賃金や、慰謝料の支払いを求めてY社を提訴しました。 裁判所は、「噂は伝聞の域を出ないもので、証拠も存在しない」として、採用内定取り消しを違法であると判断しました。 結果として、裁判所はY社に対して2か月分の賃金と、慰謝料100万円の支払いを命じました。 内定取り消しで損害賠償請求をするときのポイント 「損害賠償や慰謝料をできるだけ多く勝ち取りたい」という方も多いのではないでしょうか。 内定取り消しで損害賠償請求をおこなううえで、重要なポイントを解説します。 損害賠償請求をするときのポイント 証拠を集めておく 内定取り消しの撤回を求める 弁護士に相談する 証拠を集めておく 慰謝料を増額したいという場合には、証拠を集めておくことが重要です。 有効的な証拠の例 内定通知書や内定取り消し通知書 自分が他社の内定を辞退したメール 就職活動の状況がわかる記録やメール 内定取り消しによるショックでり患した病気の診断書 など 証拠を集めておけば、弁護士などに相談する際に役立つうえ、いざ裁判になったときに主張が通りやすくなるといったメリットがあります。 内定取り消しの撤回を求める 内定取り消しを受けてしまったときには、すぐに内定取り消しの撤回を求め、就労の意思を明確にしておきましょう。 内定取り消しを撤回してもらうことで、社員としての地位を確認することができれば、本来であれば入社していた日以降の賃金を請求することができます。 また、内定取り消しについて争っているときに転職や就職をした場合、状況によっては「内定取り消しを承諾した」とみなされてしまうこともあるので注意が必要です。 弁護士に相談する 内定取り消しについて損害賠償請求をする際には、弁護士への相談をおすすめします。 会社に対して労働審判や訴訟を起こすといった場合では、法律の知識や高い専門性が要求されます。 個人からの訴えでは会社も話を聞いてくれないということも考えられるため、弁護士への依頼を検討してみてはいかがでしょうか。 損害賠償請求は弁護士に依頼しよう 先ほども言ったように、内定取り消しで損害賠償請求をする場合には、弁護士に依頼することをおすすめします。 やり取りや手続きを任せられる 弁護士に損害賠償請求を依頼するメリットとして、面倒なやり取りや手続きを一任できるということが挙げられます。 もし会社側が応じず裁判に発展してしまったという場合でも、弁護士であれば法的な対応を任せることができ、スムーズに問題に対処することができます。 適切な金額を計算・請求してもらえる 内定取り消しの慰謝料は、50~100万円がおおよその相場となっています。相談内容によっては、相場よりも高くなったり低くなったりします。 弁護士であれば、損害賠償や慰謝料、和解金について適切に計算してくれるというメリットがあります。 「実際にはより多く損害賠償を請求できたのに、個人で請求をおこなったことで言いくるめられてしまった」といったトラブルを防ぐことができます。 関連記事 ・内定取り消しは弁護士に相談!メリット・デメリットを解説 弁護士費用相場と内訳 内定取り消しについて損害賠償請求を弁護士に依頼する際、一般的には以下のような料金体系になっていることが多いです。 項目費用相場相談料(弁護士との相談時に発生する費用)1万円前後/1時間(無料のケースもある)着手金(弁護士に事件解決を依頼した際に発生する費用)10~30万円前後成功報酬(依頼が成功した際に支払いが発生する費用)経済的利益(実際に依頼人が獲得した慰謝料や未払い賃金)の10%〜15%前後実費(手続き上の費用)実際にかかった交通費・印紙代等日当(裁判所まで弁護士に赴いてもらった際に発生する費用)1〜3万円前後 まとめ 違法な内定取り消しに対しては、会社に対して損害賠償や慰謝料を請求することができます。 内定取り消しで損害賠償請求をおこなう場合には、弁護士への相談をおすすめします。 弁護士に依頼すれば、やりとりや手続きを代理でおこなってもらえるほか、慰謝料などについて適切な金額を計算・請求してもらえるというメリットがあります。 弁護士に相談する際には、証拠を集めたり、内定取り消しの撤回を求めて働く意思を示したりしておくことが重要です。 無料相談をおこなっている弁護士事務所もありますので、探してみてはいかがでしょうか。 --- ### 内定取り消しは弁護士に相談!メリット・デメリットを解説 - Published: 2024-03-06 - Modified: 2024-03-11 - URL: https://atomfirm.com/roudou/10634 - Categories: 労働問題全般 内定取り消しについて相談したいという方は、弁護士への相談をおすすめします。 弁護士であれば、「自分が受けた内定取り消しが違法かどうか判断してくれる」「会社と代理で交渉してくれる」「適切な対応策を紹介してくれる」といったメリットがあります。 「内定取り消しの相談先がわからない」「内定取り消しについて話を聞いてほしい」 内定通知を受けた企業から突然内定を取り消されてしまい、どうすればよいかわからないという方はいませんか。 「内定取り消し」は、いわゆる「解雇」と同じ枠組みで判断されることになります。そのため、場合によっては内定取り消しが違法となることもあります。 今回は、内定を取り消された際の相談窓口や、弁護士に相談することのメリット・デメリットについて解説します。 内定取り消しに関する相談窓口 内定取り消しに関する相談窓口として、以下のようなものが挙げられます。 内定取り消しに関する相談窓口 大学のキャリアセンターやハローワーク 総合労働相談コーナー 弁護士 大学のキャリアセンターやハローワーク 内定取り消しの相談窓口として、就職の支援をしてくれた大学のキャリアセンターや、ハローワークが挙げられます。 2020年4月から、内定を取り消されてしまった新卒者に向けて、新卒応援ハローワークに特別相談窓口が設置されています。 参考:厚生労働省|「新卒者内定取消等特別相談窓口」を全国56ヵ所の新卒応援ハローワークに設置します 総合労働相談コーナー 総合労働相談コーナーは、あらゆる労働問題について相談できる、厚生労働省所管の窓口です。 予約も不要で、無料で利用できるところがポイントです。専門相談員が電話で対応してくれ、相談や助言で解決しない場合は、あっせん制度も利用できます。 総合労働相談コーナーは全国各地に設置されています。電話番号は所在地によって異なりますので、お住まいの県から探してみましょう。 参考:総合労働相談コーナー 弁護士事務所 弁護士は、法的な問題を解決する専門家です。会社に対して損害賠償請求などをお考えの場合は、弁護士事務所への相談が有効といえます。 弁護士に相談すれば、これまでの経験や判例などから、労働審判・訴訟を視野に入れたアドバイスをもらうことができるでしょう。 相談する前にしておくべきこと 内定取り消しを相談する前に、以下のようなことをおこなっておきましょう。 相談する前にしておくべきこと 企業に内定取り消しの理由を確かめておく 証拠を集めておく 企業に内定取り消しの理由を確かめておく まずは企業に内定取り消しの理由を確認しておきましょう。 内定取り消しの理由が不明瞭だったり、内定通知書などに記載された内定取り消し事由に当てはまらなかったりした場合は、内定取り消しが違法と判断される可能性が高いです。 証拠を集めておく 相談する前に、できるだけ証拠を集めておくことも重要です。 たとえば、内定取り消しの際に会社と交わしたメールなどのやりとりや、内定を受けた証拠になるような内定通知書といったものを集めておくといいでしょう。 証拠を集めておけば、弁護士などに相談する際に役立つうえ、いざ裁判になったときに主張が通りやすくなるといったメリットがあります。 弁護士に内定取り消しを相談するメリット 内定を取り消されてしまったという場合には、弁護士への相談をおすすめします。 弁護士に内定取り消しを相談するメリットとしては、以下のようなものがあります。 弁護士に内定取り消しを相談するメリット 内定取り消しが適法かどうかわかる 会社とのやり取りや法的手続きを任せられる 損害賠償や慰謝料の請求を同時におこなえる 内定取り消しが違法かどうかわかる 弁護士に相談すれば、自分が受けた内定取り消しが違法かどうか判断してくれるというメリットがあります。 もし違法であると判断された場合は、どのような証拠を集めればよいかといった、適切なアドバイスをしてくれます。 関連記事 ・内定取り消しは違法?違法性や対処法について解説 会社とのやり取りや法的手続きを任せられる 弁護士に依頼することで、企業との交渉や法的手続きを代理でおこなってもらうことができます。 もし会社側が訴えに応じず裁判に発展してしまったという場合でも、弁護士であれば法的な対応を任せることができ、スムーズに問題に対処することができます。 損害賠償や慰謝料の請求を同時におこなえる 弁護士に依頼すれば、不当な内定取り消しに対して損害賠償や慰謝料の請求をスムーズにおこなうことができます。 損害賠償の請求以外にも、会社に対する地位の確認といった、依頼者の状況に応じた適切な対応策を紹介してくれるといったところも魅力です。 弁護士に依頼するデメリットは費用 弁護士事務所に相談するデメリットは、費用が発生することです。 ただし、無料で相談を受け付けていたり、着手金を無料にしている弁護士事務所もあるので、探してみるといいでしょう。 内定取り消しに関する弁護士費用については、「内定取り消しで損害賠償請求はできるのか?弁護士が解説」をご覧ください。 まとめ 内定取り消しについて相談したいという場合は、弁護士に相談することをおすすめします。 弁護士であれば、「自分が受けた内定取り消しが違法かどうか判断してくれる」「会社と代理で交渉してくれる」「適切な対応策を紹介してくれる」といったメリットがあります。 費用がかかってしまうというデメリットはありますが、無料で相談を受け付けている弁護士事務所もありますので、探してみてはいかがでしょうか。 --- ### 有給トラブルの相談は労働基準監督署がおすすめ!相談の流れを弁護士が解説 - Published: 2024-02-28 - Modified: 2024-03-07 - URL: https://atomfirm.com/roudou/10332 - Categories: 労働問題全般 有給休暇について使用者側とトラブルになっている場合は、証拠をそろえたうえで労働基準監督署に相談することをおすすめします。 もしトラブルが解決しなかったという場合には、弁護士への相談も検討しましょう。 「有給トラブルについて相談したいが、どこに相談窓口があるかわからない」「有給休暇についてのトラブルを労働基準監督署に相談したい」 有給休暇(年次有給休暇)は労働者の権利であり、原則として会社の承認や許可を得ずに取得できます。 したがって、有給を申請しても拒否されたり、有給を申請したのに欠勤扱いにされたりした場合には、労働基準監督署に相談してみることをおすすめします。 労働基準監督署は、労働基準法を会社が守っているのかチェックしたり、安全衛生法などに基づく検査や労災の支給業務をおこなったりする機関です。 有給の取得を拒否するのは、労働基準法に違反する行為である可能性があるため、労働基準監督署に相談できます。 今回は、労働基準監督署が対応できる有給トラブルや、相談する流れや準備について解説します。 労働基準監督署が対応する有給トラブル 労働基準監督署(労基署)では、労働基準法に違反している労働トラブルを相談することができます。 有給休暇に関するトラブルについても同じで、対応できるケースと対応が難しいケースとがあります。 労働基準監督署が対応できるケース 労働基準監督署が対応できる有給トラブルは、以下のようなケースが挙げられます。 労基署が対応できる有給トラブル 合理的な理由がないのに有給申請や取得を拒否された 有給を申請したのに欠勤扱いにされた 有給取得について理由を執拗に聞かれた 退職前の有給消化を拒否された 年5日間の有給取得義務を無視している など こういったケースは労働基準法に違反している可能性が高いため、労働基準監督署の対応が期待できます。 有給が取れない場合の対処法については、『有給休暇が自由に取れない!ポイントと対処法を弁護士が解説』の記事で詳しく解説しています。 労働基準監督署の対応が難しいケース 以下のようなケースでは、労働基準監督署の対応が難しい場合があります。 労基署の対応が難しい有給トラブル 有給取得の条件を満たしていなかった 企業が時季変更権を行使したことについての相談 など こういったケースは労働基準法違反のおそれが小さく、相談しても対応が難しいといえるでしょう。 関連記事 ・労働基準監督署に相談できる内容とは?メリット・デメリットから徹底解説 有給トラブルを労働基準監督署に相談する流れ ご自身の状況が労働基準監督署に相談できるケースであれば、相談することをおすすめします。 労働基準監督署への相談は、以下のような流れで進んでいきます。 有給トラブルを相談する流れ 有給に関する資料や拒否された証拠を集める 労働基準監督署に相談・申告をおこなう 内容によっては是正勧告や行政指導がおこなわれる 有給に関する資料や拒否された証拠を集める 有給トラブルを相談する前に、勤務先の違法行為の証拠を集めておきましょう。 労働基準監督署は、実際に違法行為の証拠がなければ、動いてくれないことが多いです。 有効的な証拠としては、以下のようなものが挙げられます。 有給トラブルについて有効的な証拠 有給の取得条件がわかるもの就業規則、雇用契約書 など 有給の残りの日数がわかるもの給与明細書、勤怠管理表 など 有給を拒否されたことがわかるもの有給申請したメール、音声 など 事前に証拠を収集しておけば、労働基準監督署が対応しやすくなります。 労働基準監督署に相談・申告をおこなう 証拠を集めることができたら、労働基準監督署に相談や申告(通報・報告)をおこないましょう。 参考:厚生労働省「全国労働基準監督署の所在案内」 相談方法としては、直接窓口に出向くか、電話での相談を受け付けています。 窓口での相談は、平日の9時から17時まで受け付けているところが多いです。 夜間や土日に相談をしたい場合は、「労働条件相談ほっとライン」の利用をおすすめします。 なお、申告(通報・報告)の形をとると、会社と対立して争うことになってしまうため、なるべく穏便に済ませたい場合はあくまで相談に留めておくといいでしょう。 是正勧告や行政指導がおこなわれる 労働基準監督署が労働基準法違反であると判断した場合は、実際に事業場に立ち入り検査をしたのち、会社に対して是正勧告や行政指導をおこなうケースがあります。 会社に対して行政指導をおこなうことで、労働環境の改善が見込めます。 労働基準監督署に相談するメリット・デメリット 労働基準監督署に有給トラブルを相談するメリットとしては、企業に是正勧告や行政指導をおこなうことで、企業側の対応が改まる可能性があることが挙げられます。 相談料が無料であることや、匿名で相談できることもポイントです。 デメリットとしては、労働者の代理人として直接トラブルを解決してくれるわけではない点です。 また、必ずしも問題解決のための対応をしてくれるわけではないところにも注意が必要です。 解決しない場合は弁護士に相談 労働基準監督署に相談してもトラブルが解決しなかった場合には、弁護士への相談をおすすめします。 弁護士に依頼すれば、以下のようなメリットがあります。 弁護士に相談するメリット 法的なアドバイスをもらえる 法的手続きにも対応できる 退職代行などほかの労働問題も対応できる 法的なアドバイスをもらえる 弁護士に依頼すれば、相談内容について法的なアドバイスをもらうことができます。 会社側が違法行為をしているかどうかを判断してくれると同時に、どのように対応していけばいいかアドバイスを受けることができます。 法的手続きにも対応できる 会社との交渉が決裂してしまったときには、労働審判や訴訟などの法的な手続きに移行する場合があります。 弁護士に依頼すれば、こういった法的手続きを一任でき、スムーズな対応が望めます。 退職代行などほかの労働問題も対応できる 「有給トラブルだけでなく、未払い残業代がある」「そのまま退職代行をお願いしたい」という方もいるでしょう。 有給トラブルだけでなく、ほかの労働問題の対応を任せることができるのも弁護士のメリットの一つです。 まとめ 有給を申請しても拒否されたり、有給を申請したのに欠勤扱いにされたりした場合は、労働基準監督署に相談することがおすすめです。 相談する際には、しっかりと証拠を集めたうえで相談することがポイントです。 労働基準監督署に相談してもトラブルが解決しなかった場合には、弁護士への相談を検討してみましょう。 弁護士であれば、ほかの労働問題にも対応できるほか、依頼者の代理人として会社と交渉できるメリットがあります。 無料相談をしている弁護士・法律事務所もあるため、探してみてはいかがでしょうか。 --- ### 派遣元や派遣先から解雇と言われた!対処法を弁護士が解説 - Published: 2024-02-27 - Modified: 2024-03-27 - URL: https://atomfirm.com/roudou/9867 - Categories: 不当解雇 派遣先や派遣元で解雇を告げられても、解雇事由によっては解雇が無効になる可能性があります。 派遣会社に解雇されてしまいお悩みの方は、弁護士への相談をおすすめします。 「派遣先からもう来なくていいと言われてしまった」「派遣先で解雇といわれ、派遣元からも突然契約を解除された」 派遣先からクビと言われたり、派遣元から突然解雇されたりしてしまうと、収入源を失うために不安になると思います。 今回は、派遣社員が解雇されてしまうケースや、それが違法となるケース、対処法について解説します。 派遣元や派遣先から解雇されたとき 派遣元の企業から解雇された場合 派遣元の企業から解雇(契約解除)された場合は、直接雇用されている社員と同じように対応することが求められます。 こちらの内容について詳しく知りたい方は『会社から突然解雇されたらどうする?違法な解雇への対処法や相談先は?』の記事をご覧ください。 派遣先の企業からクビと言われた場合 派遣労働とは、派遣元の企業と労働契約を結び、派遣先の企業で派遣先の命令に従って業務をおこなうことを指します。 つまり、派遣労働者と派遣先の企業との間には労働契約は存在していないので、派遣先が派遣労働者を解雇することはできないことになります。 派遣先が派遣元との労働者派遣契約を解除したいという場合は、派遣元に対して損害賠償責任を負う必要があります。 この場合でも、派遣先は派遣労働者の新しい就業機会を保障し、それができない場合は派遣元に派遣労働者の休業で発生する休業手当などを支払わなければなりません。 参考:厚生労働省「派遣先が講ずべき措置に関する指針」 派遣先でクビと言われた場合には、派遣元の責任者に連絡を取ることが重要です。 仮に派遣元も対応してくれなかったという場合には、弁護士への相談をおすすめします。 労働契約期間中に解雇された場合 派遣先と派遣元の労働者派遣契約が解除されたことを理由に、派遣元が労働契約期間の途中で契約を解除するケースがあります。 原則として、労働契約期間の途中で契約を解除することは認められていません。 派遣元は、やむを得ない事由がなければ、派遣労働者に責任がないにもかかわらず契約途中で解雇することはできません(労働契約法17条)。 また、その事由が派遣元の過失により生じた場合は、損害賠償の責任を負うことになります(民法628条) それに加え、派遣労働者は派遣元に対して、契約期間の残りの賃金の全額の支払いを要求する権利があるのもポイントです(民法536条2項)。 労働者が休業する理由について派遣元に責任がある場合、派遣元は労働者に平均賃金の6割以上を休業手当として支払う必要もあります。そのため、突然契約を解除されたという場合には落ち着いて対応しましょう(労働基準法26条)。 派遣社員が解雇や派遣切りに遭う理由 派遣切りとは、派遣先企業や派遣会社に派遣契約を打ち切られたり、契約更新を拒否されたりすることをいいます。 派遣社員が解雇・派遣切りに遭う理由として、以下のような例が挙げられます。 派遣社員の解雇・派遣切りの理由 能力不足や勤務態度の不良 派遣先や派遣元の経営状態の悪化 3年の派遣期間経過 5年経過による無期転換の防止 社員側の能力不足や勤務態度の不良 派遣先でミスを繰り返したり、十分な成果を上げられなかったりした際は、能力不足とみなされて派遣切りに遭うおそれがあります。 また、「上司の命令を聞かなかった」「無断欠勤を繰り返した」など、勤務態度が悪いという場合にも派遣切りされるおそれがあります。 しかし、「注意や指摘などがない状態で突然契約を打ち切られた」といった場合では、違法性が認められるケースがあります。 関連記事 ・能力不足で会社から解雇されたときの対処法は?不当解雇の可能性が高い! 派遣先や派遣元の経営状態の悪化 会社が経営不振に陥った場合に、人件費を削減するために派遣元が派遣社員を解雇したり、派遣先の会社が契約解除を申し入れたりすることがあります。 派遣先の会社が整理解雇をおこなうということであれば、正社員より派遣社員を優先して辞めさせるという合理性が認められるかもしれません。 しかし、派遣元による解雇は厳しい要件で判断されます。 3年の派遣期間経過 派遣社員は、同一の職場で働ける期間は最長3年と定められています(労働者派遣法35条の3)。 3年を超えて同じ組織で働く場合は、派遣先の会社と直接雇用契約を結ぶか、派遣元で無期雇用契約に切り替える必要があります。 派遣先は人件費、派遣元はリスクの増大をおそれ派遣切りをおこなう可能性があります。 5年経過による無期転換の防止 契約更新を重ねて、通算雇用期間が5年を経過した場合は、会社に対して無期の労働契約を結ぶ(無期転換)ことができます(労働契約法18条)。 しかし、労働者と無機契約を結ぶことは、会社側にとって人件費の増大を意味するため、無期転換をおこなう前に派遣切りをおこなう場合があります。 派遣社員の解雇が無効とみなされるケース 派遣社員の解雇が無効とみなされるケースとしては、以下のようなものが挙げられます。 派遣社員の解雇が無効とみなされるケース 解雇事由が適切でないケース 30日前に解雇を予告していないケース 契約がこれまでに何度も更新されている・更新が期待できるケース 解雇事由が適切でないケース 無期雇用の派遣社員の場合 派遣元が無期雇用の派遣社員を解雇するには、解雇について客観的で合理的な理由があり、社会通念上相当であると判断される必要があります(労働契約法16条)。 たとえば、業績不振により整理解雇(リストラ)をおこなうといった場合には、以下のような要件が必要になると考えられます。 整理解雇(リストラ)をおこなう要件 整理解雇が必要なほど業績不振であるかどうか 解雇を回避する努力をおこなっていたかどうか 解雇となる対象が解雇について納得のいく説明を受けているかどうか 解雇となる対象と話し合う機会を設けたかどうか など こういった要件に当てはまらない場合は、解雇が無効になるかもしれません。 リストラについて詳しく知りたい方は、『リストラに納得がいかない!リストラを弁護士に相談するメリットを解説』の記事をご覧ください。 有期雇用の派遣社員の場合 派遣元が有期雇用契約の派遣社員を契約途中で解雇する場合は、やむを得ない事由が必要です(労働契約法17条)。 やむを得ない事由については、「重大犯罪を起こした」「派遣先の会社のお金を横領した」などが該当すると考えられます。 30日前に解雇を予告していない・解雇予告手当を払っていないケース 有期雇用派遣の場合では、やむを得ない事由がない限り、契約期間中のクビは認められていません。 もし解雇する場合は、30日前にまでに解雇予告をしておく必要があります(労働基準法20条)。 また、解雇予告をおこなわない場合は、30日分の賃金(予告の日数が30日に満たない場合はその不足日数分の賃金)を解雇予告手当として支払わなければなりません。 ただし、2か月以内の短期派遣者や、日雇い労働者、季節労働者、試用期間中の労働者については、解雇予告についてのルールはないので注意が必要です。 関連記事 ・解雇予告手当がもらえない!法的にもらえないケースや請求方法を解説! 契約がこれまでに何度も更新されている・更新が期待できるケース 労働者が有期労働契約の終了後すみやかに契約更新の申し入れをした際、以下のケースに該当するときは、会社側は労働者の申し入れを拒否できなくなっています。 契約更新の申し入れを拒否できないケース 有期労働契約や期間雇用が繰り返し更新されており、無期契約と実質的に異ならない場合 上記の場合には当てはまらないものの、雇用関係の継続が見込まれる場合 雇い止めに客観的で合理的な理由がなく、社会通念上相当でないと判断された場合 また、契約が3回以上更新されている場合や、1年以上継続勤務している場合に雇い止めをおこなう際には、労働者に30日前までに通達しなければならないと定められています。 参考:厚生労働省|有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準について 関連記事 ・雇い止めは弁護士に相談!弁護士に相談するメリットと対処法を解説 解雇の無効を請求するなら弁護士に相談 解雇の無効を請求するときは、弁護士に相談することをおすすめします。 解雇されたときの対処法として、解雇理由証明書の請求をしておくことが重要ですが、場合によっては会社が応じないこともあるかもしれません。 弁護士であれば、「解雇事由を確認できる」「会社と代理で交渉できる」「労働審判などを相談できる」というメリットがあります。 また、解雇を受け入れ退職するという場合でも、残業代請求や解雇予告手当の請求といった法的手続きを任せられます。 関連記事 ・不当解雇は弁護士に相談すべき?相談するときのポイントを解説 まとめ 派遣先や派遣元に突然解雇を告げられた場合には、弁護士に相談することをおすすめします。 会社から解雇を言い渡されると不安になるとは思いますが、無料相談をしている弁護士・法律事務所もあるため、探してみてはいかがでしょうか。 --- ### 解雇を無効にしたい!無効となるケースや対処法を解説 - Published: 2024-02-21 - Modified: 2024-06-06 - URL: https://atomfirm.com/roudou/9840 - Categories: 不当解雇 解雇は少なくとも30日以前に予告されていなければならず、客観的で合理的な理由がなく、社会通念上相当であると判断されない場合は、不当解雇として解雇が無効になる可能性があります。 解雇を無効にしたいという方は、弁護士への相談をおすすめします。 「会社から解雇されたが、納得がいかない」「企業に解雇無効の訴えを起こしたい」 会社から解雇を言い渡されると、不安になってしまいますよね。 解雇は少なくとも30日以前に予告されていなければなりません。また、客観的で合理的な理由がなく、社会通念上相当であると判断されない場合は、不当解雇として解雇が無効になる可能性があります。 今回は、解雇が無効となり得るケースや、解雇を言い渡されてしまったときの対処法について解説します。 解雇が無効となり得るケース 解雇が無効とみなされるケースの例として、以下のようなものがあります。 解雇が無効となり得るケース 解雇権の濫用とみなされる場合 解雇の手続きが遵守されていない場合 解雇が禁止されているケースだった場合 解雇権の濫用とみなされる場合 先述の通り、客観的で合理的な理由がなく、社会通念上相当であると判断されない場合は、「解雇権の濫用」であるとして、解雇が無効になる場合があります(労働契約法16条)。 客観的で合理的な理由には、以下のような例が挙げられます。 客観的で合理的な理由の例 ケガや病気によって労働能力が低下している 労働者の能力不足や適性の欠如 労働者の業務命令違反や職務規律違反 使用者の業績悪化などの経営上の理由(整理解雇) など 社会通念上相当であるかどうかは、「労働者の過去の処分歴」「解雇事由に対して処分が厳しすぎないかどうか」といった点から判断されます。 上記の理由に該当しない場合は、解雇権の濫用であるとして、解雇が無効になるかもしれません。 会社が従業員を解雇するための要件については、『会社から突然解雇されたらどうする?違法な解雇への対処法や相談先は?』の記事をご覧ください。 解雇の手続きが遵守されていない場合 たとえば、懲戒解雇をするにあたっては、「就業規則に懲戒事由と種別を規定している」「労働者に弁明の機会が与えられている」といったことが必要になります。 そういった手続きを無視して解雇を言い渡された場合は、解雇が無効になる可能性は高いでしょう。 解雇が禁止されているケースだった場合 以下のような場合については、法律で解雇が禁止されています。 法律で解雇が禁止されているケース 労働基準監督署に申告したことを理由とする解雇 労働組合の組合員であることなどを理由とする解雇 労働者の性別を理由とする解雇 労働者が育児・介護休業などを申し出たこと、または育児・介護休業などをしたことを理由とする解雇 など 参考:厚生労働省|労働契約の終了に関するルール 上記のケースに当てはまる場合には、法律で解雇が禁止されているため、解雇は無効であるといえます。 解雇が無効となった判例 ラジオアナウンサーが、解雇の無効と賃金支払いを求めて会社を提訴した事件です(『高知放送事件』最高裁 昭52. 1. 31)。 宿直勤務をしていたラジオアナウンサーは、2週間で2回寝過ごしてしまい、ラジオニュースを放送できませんでした。 ラジオアナウンサーは事故報告書の提出を求められましたが、事実とは異なる報告書を提出しました。 こういった事情から、会社側は懲戒解雇が相当であると考えたものの、アナウンサーの将来を考え普通解雇として処理しました。この普通解雇の有効性が問われることになりました。 裁判所は、アナウンサー側に責任感が欠けているとしたものの、「過失であった」「会社側も事故を防止する策を考えていなかった」などの理由から、「社会通念上相当であるとはいえない」として、解雇を無効と判断しました。 解雇されたときの対処法 解雇されてしまったときは、以下のような対処法をとることをおすすめします。 解雇されたときの対処法 解雇理由証明書を請求する 解雇が違法かどうか検討する 突然の解雇について金銭の支払いを求める 解雇理由証明書を請求する 解雇に納得がいかない場合は、解雇理由の確認のため、会社に解雇理由証明書の交付を請求してください。 解雇理由証明書は、その名の通り解雇の理由が記された書面であり、労働者が請求すれば、使用者には交付の義務があります(労働基準法22条1項)。 口頭で解雇理由を聞かされていた場合でも、解雇理由証明書を請求し、解雇理由を明らかにしましょう。 関連記事 ・解雇理由証明書を請求する方法は?請求するために知っておくべきことを解説 解雇が違法かどうか検討する 会社から解雇理由証明書が送られてきたら、解雇理由が違法かどうか検討しましょう。 なお、使用者から解雇理由証明書の交付を受けたとしても、詳細な理由が記載されているとは限りません。 たとえば、「就業規則の第○条に該当したため」といったように、就業規則の該当条文が書かれているだけということもあります。 突然の解雇について金銭の支払いを求める 解雇が違法・無効となれば、その解雇はなかったことになり、職場に復帰できますが、加えて、会社に対して慰謝料などの損害賠償を請求できます。 ただし、違法な解雇でも慰謝料の請求が認められない例も多く、慰謝料額についても明確な基準はありません。請求するのであれば、専門家に依頼することが最適でしょう。 また、解雇予告がされていない場合については、解雇予告手当の支払いを求めることもできます。この場合、労働基準監督署に相談することが、費用もかからず比較的迅速な解決も望めるため有効といえます。 もっとも、解雇が無効であるとの主張は難しくなるため、慎重な検討が必要だといえます。できれば、まずは専門家に、解雇の有効性について相談することをおすすめします。 解雇が無効と判断されたその後は? 復職する 解雇が無効となれば、会社に復職することが可能です。 復職後に「労働条件を一方的に変えられる」などの不利益な扱いを受けることは基本的にありませんが、解雇が無効になるまで長期間かかったり、復職できたとしても社内でのイメージが悪くなったりといったリスクがあるのも事実です。 賃金請求をおこなう 解雇が無効と認められた場合、解雇時点から解雇が無効と認められた時点までの賃金相当額を請求できます(バックペイ)。 バックペイについては、解雇された期間中の失業給付や、ほかの会社で働いて得た給与と重複して受け取ることができるため、復職を選ばずに賃金請求をおこなうのも一つの手です。 解雇の無効を請求するなら弁護士に相談 解雇の無効を請求するときは、弁護士に相談することをおすすめします。 解雇されたときの対処法として、解雇理由証明書の請求をしておくことが重要ですが、場合によっては会社が応じないこともあるかもしれません。 弁護士であれば、「解雇事由を確認できる」「会社と代理で交渉できる」「労働審判などを相談できる」というメリットがあります。 また、解雇を受け入れ退職するという場合でも、残業代請求や解雇予告手当の請求といった法的手続きを任せられます。 会社から解雇を言い渡されると不安になるとは思いますが、無料相談をしている弁護士・法律事務所もあるため、探してみてはいかがでしょうか。 関連記事 ・不当解雇は弁護士に相談すべき?相談するときのポイントを解説 --- ### 残業200時間は命の危険!過労死ラインと対処法について解説 - Published: 2024-02-19 - Modified: 2024-03-29 - URL: https://atomfirm.com/roudou/10143 - Categories: 残業代請求 残業時間が200時間におよぶというのは異常な数値です。200時間の残業は、いわゆる過労死ラインの倍以上の数値であり命の危険があります。 残業時間や退職・転職でお悩みの方は、弁護士に相談することをおすすめします。 「月の残業時間が200時間を超えており、会社を辞めたい」「残業が200時間を超えてしまった。プライベートの時間が取れない」 月200時間の残業は、労働基準法で許容されている労働時間の倍以上の残業を強いられていることになり、きわめて危険です。 労働基準法では、法定労働時間を原則1日8時間、1週40時間と定めています(労働基準法32条)。 法定労働時間が1週40時間のところ、200時間の残業をおこなっているということは、残業時間だけで法定労働時間の5倍の時間残業していることになります。 今回は、月200時間におよぶ残業の異常性や、長時間におよぶ労働時間・未払い残業代の対処法について解説します。 月200時間の残業時間は過労死ラインを超えている 過労死ラインとは、健康被害や精神障害が発生するリスクが高くなる残業時間の目安です。 2021年9月に労災認定基準が改正され、長時間の労働と過労死の関係性について、以下のような基準が設けられました。 労働の期間と時間業務と発症との関連性発症前1~6か月間にわたって、1か月あたりおおむね45時間を超える時間外労働が認められない弱い発症前1~6か月間にわたって、1か月あたりおおむね45時間を超える時間外労働が認められる場合徐々に強まる発症前1か月間におおむね100時間を超える時間外労働が認められる場合強い発症前2~6か月間にわたって、1か月あたりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合強い 参考:厚生労働省|血管病変等を著しく増悪させる業務による脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準について 基準からわかるように、「発症前1か月間におおむね100時間」あるいは「発症前2~6か月間にわたって1か月あたりおおむね80時間」を超える時間外労働がある場合は、業務と発症との関係性が強いとされています。 月に200時間残業しているということは、この過労死ラインを大幅に上回っており、きわめて危険な状態といえます。 そもそも月45時間を超える残業が続くと違法のおそれも 原則として、月45時間以上の残業が何か月も続く場合、違法とみなされるおそれがあります。 36協定の締結と届け出が必要 1日8時間、1週40時間の法定労働時間を超えて労働者が働くときには、労使協定(いわゆる36協定)を結ぶ必要があります。 36協定を結んだだけで、労働基準監督署長に届け出ていない場合や、そもそも36協定を結んでいないという場合には、法定時間を超える残業は違法となります。 36協定があっても月45時間・年360時間を超える残業は違法 36協定を結んでいても、「月45時間・年360時間」を超える残業は、原則として違法となります。 臨時的な特別の事情がある場合は、特別条項付きの36協定を結ぶことで上限を超えた残業をさせられることがありますが、その場合でも残業時間は以下の範囲内で定められていなければなりません。 特別条項付き36協定の残業時間の上限 時間外労働が年720時間以内である 時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満である 2か月、3か月、4か月、5か月、6か月のいずれの期間においても、時間外労働と休日労働を合わせて平均80時間以内にしなければならない 月45時間を超える時間外労働は、年6か月まで(1年に6回まで) したがって、月45時間を超える残業が何か月も続いている場合は、違法と判断されることもあります。 つまり、36協定が締結されている場合でも、月200時間の残業は法定労働時間の4倍以上の時間残業していることになります。 月の残業が200時間に達しているというのは、きわめて異常な値であるといえます。 そのほかに残業が違法になるケース 36協定に関する規制以外で、違法な残業とみなされるケースもいくつか存在します。 そのほかに残業が違法となるケース 残業代が正しく計算されていない みなし残業制度が守られていない いわゆる「名ばかり管理職」になっている 残業代が正しく計算されていない 従業員が月60時間を超える残業をおこなった場合は、企業の規模にかかわらず50%以上の割増率で計算された割増賃金が支払われなければなりません。 適切な残業代が支払われていない場合は、違法な残業といえるでしょう。 関連記事 ・残業代の正しい計算方法とは?基本から応用的な計算まで徹底解説! 長時間の残業が常態化しているなど、労働基準法の遵守がきちんとなされていないような企業では、残業代も未払いになっているおそれがあります。 200時間にもおよぶ残業をおこなっている場合、その分残業代も高額になるのがふつうです。 「適切な残業代が支払われていない」などといった場合には、すぐに弁護士に相談することをおすすめします。 関連記事 ・残業代が支払われない!請求方法と流れを解説! もちろん、残業代がきちんと支払われているという状況であったとしても、過労死のリスクを考えると、200時間にもおよぶ残業が常態化している会社からの退職や転職の検討をおすすめします。 みなし残業制度が守られていない みなし残業(固定残業)とは、実際の残業時間にかからわず、あらかじめ決められた一定時間の残業代を給与に含めて支払う制度です。 一定時間を超えて残業しているのにもかかわらず、超過分の残業代が支払われていないケースは違法といえます。 こちらの内容について詳しく知りたい方は『会社から突然解雇されたらどうする?違法な解雇への対処法や相談先は?』の記事をご覧ください。 いわゆる「名ばかり管理職」になっている 労働基準法では、管理監督者に該当する管理職であれば、労働時間、休憩および休日に関する規定は適用されないと定められています(労働基準法41条2号)。 しかし、すべての管理職が管理監督者に該当するわけではありません。 労働基準法上の「管理監督者」に該当するかどうかは、「責任や権限」「職務内容」「待遇面」などによって判断されることになります。 いわゆる「名ばかり管理職」に該当しており、残業代が支払われない場合は、違法といえます。 こちらの内容について詳しく知りたい方は『管理職は残業代が出ない?残業代がもらえるケースや基準を解説』の記事をご覧ください。 長時間の残業や未払い残業代の対処法 200時間におよぶ残業や、残業代が未払いになっているということでお悩みの方は、すぐに以下のような対処法をとることをおすすめします。 長時間の残業や未払い残業代の対処法 退職・転職する 労働組合や労働基準監督署に相談する 弁護士に相談する 退職・転職する 長時間におよぶ残業が常態化している状況では、過労死のリスクが非常に高くなり、命の危険があります。 会社側の改善が見込めそうにないという場合には、健康なうちに会社を退職したり、転職したりすることをおすすめします。 未払いの残業代が残っているというケースでも、退職後に残業代を請求することはできるので安心してください。 ただし、在職中であれば、未払い残業代の証拠を集めやすいというポイントもあります。 こちらの内容について詳しく知りたい方は『残業代請求は退職後でも可能!注意点や退職後の証拠の集め方を解説』の記事をご覧ください。 労働組合や労働基準監督署に相談する 個人で対処することが難しいという場合には、労働組合や労働基準監督署に相談することで、状況の改善が見込めることもあります。 残業によって健康被害が生じているという際には、労災が認められることもあるので、労働基準監督署に相談してみることをおすすめします。 弁護士に相談する 「残業代が未払いのままで困っている」という場合には、弁護士に相談することをおすすめします。 弁護士に相談すれば、代理で会社と交渉を進められます。 健康被害を受けているという場合には、労災保険の申請について、弁護士がアドバイスをしてくれるというメリットもあります。 200時間を超える残業時間や退職については弁護士に相談 月200時間の残業は、残業時間の上限を超える異常な数値です。 仮に残業代をきちんと支払われていたとしても、すぐにでも退職や転職を考えることをおすすめします。 残業時間や労災申請について話を聞いてもらいたいという方は、弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。 弁護士に相談すれば、「未払い残業代があるかどうか判断してもらえる」「会社に対して未払い残業代を代理でおこなってくれる」「労働審判などの法的対応をスムーズに任せられる」といったメリットがあります。 無料相談を受け付けている弁護士事務所もありますので、まずは弁護士に相談してみることをおすすめします。 ほかの残業時間に応じたポイントを知りたい方へ 原則的には、残業時間の上限は、月45時間・年360時間です。 残業200時間は命の危険がある異常な数値であると言えますが、80時間・100時間残業をした場合でも健康被害や精神障害が発生するリスクがあります。 残業時間別にポイントをまとめました。ぜひご覧ください。 ・残業60時間がきつい!残業代や違法となるケースについて解説・残業80時間は過労死ライン!過労死ラインや違法となるケースについて解説・残業100時間は違法!過労死ラインや違法となるケースについて解説 --- ### 労災と認定されるには?認定基準・手続き・受け取れる給付金について解説 - Published: 2024-02-01 - Modified: 2024-05-30 - URL: https://atomfirm.com/roudou/8997 - Categories: 労働災害 労災認定とは、雇用形態に関わらず、労働者が仕事中や通勤中に負ったケガや病気により、労災保険の認定を受けることを指します。労災認定の手続きは原則本人がする必要があり、労災が認定されれば様々な給付金を受け取ることができます。 「通勤中の事故は労災認定される?」「労災の認定基準を知りたい」 仕事中や通勤中にケガをしてしまったという方のなかには、自分の事故が労災として認定されるかどうか気になるという方も多いのではないでしょうか。 労災認定とは、雇用形態にかかわらず、労働者が仕事中や通勤中に負ったケガや病気により、労災保険の認定を受けることを指します。 労災認定は、労働者の申請書に基づき、労働基準監督署長が行うことになっています。 今回は、労災認定される基準や、労災認定に必要な手続き・受け取れる給付金について解説します。 労災保険の認定基準 労働災害は大きく「業務災害」と「通勤災害」の2種類に分けられます。 業務災害は業務中・業務と関連しているかどうか 業務災害とは、業務上の事故や過労といった、仕事中に発生した災害のことを指します。 業務災害として認められるには、以下の2つが重要なポイントとなります。 業務災害として認められるポイント 業務遂行性... ... 労働者がケガや病気を負ったとき、事業主の支配下にある状態で業務をしていたかどうか 業務起因性... ... 労働者が負ったケガや病気の原因が、仕事内容に関連するものかどうか 通勤災害では通勤に「合理性」があるかどうか 通勤災害とは、通勤中に発生した災害のことを指します。 ここでいう「通勤」は、以下のようなケースが該当します。 「通勤」と判断されるケース 住居と就業場所との間の往復 単身赴任先の住居と帰省先の住居との間の移動 就業場所から他の就業場所への移動 上記のケースについては、「合理的な経路及び方法」で通勤していることが前提となります。寄り道をや遠回りをしていた場合には、通勤として認められない場合もあります。 労災認定を受ける手続きは原則本人がする 労災の認定を申請する手続きについては、原則本人あるいは遺族が行う必要があります。 労災認定の手続きについては、以下のような流れとなっています。 労災認定に必要な手続き 労災の事実を会社に報告 医療機関で治療を受ける 労働基準監督署に請求書を提出する 労災保険を受給する (1)会社に報告 まずは労災が起こったという事実を会社に報告しましょう。本人以外が報告するときは、以下のポイントを正確に伝えることが重要です。 本人以外が労災を報告するときのポイント 労災の被害者の名前 労災が起こった日時と場所 労災がどのように起こったか 労災によってどこに被害を受けたかとその度合い (2)治療を受ける 労災によって負傷した場合は、すぐに医療機関で治療を受けましょう。医療機関の種類によって、医療費の支払いの流れが異なってきます。 治療を受ける医療機関と支払いの違い 労災指定の医療機関... ... 病院で治療費を払う必要はない 一般の医療機関... ... 一度被災者が全額支払い、労災保険の申請が認められれば返金される 一般の医療機関で治療を受ける場合は、医療費が高額になることも考えられるため、治療費の立て替えが難しいという際には、労災指定の医療機関への受診をおすすめします。 (3)労働基準監督署に請求書を提出 治療を受けた後は、労働基準監督署に請求書を提出しましょう。請求書の様式は、厚生労働省のホームページからダウンロードできます。 請求書には、会社が労災の証明を記載する「事業主証明欄」があり、この部分は会社側に記載してもらう必要があります。 もし拒否されたという場合には、会社と交渉したり、労働基準監督署に相談したりといった対応が必要になります。 給付金の種類ごとに申請期限が設けられているため、早めに申請の準備をすることをおすすめします。 参考:「労災保険の各種給付の請求はいつまでできますか。」|厚生労働省 (4)労災保険を受給する 労働基準監督署への申請が認められれば、労災認定となり、労災保険の受給が可能になります。 労災の被害に遭ってから実際に労災保険を受給するまではある程度の時間がかかるため、労災の被害に遭った際には速やかに手続きを進めましょう。 労災認定で受け取れる給付金 労災認定を受けたとき、受け取れる給付金の種類については以下のようなものがあります。 労災認定で受け取れる給付金 療養(補償)給付 休業(補償)給付 障害(補償)給付 傷病(補償)給付 遺族(補償)給付 など ※業務災害の場合は「補償給付」という名称となる。 療養(補償)給付 療養(補償)給付とは、労災によるケガや病気の治療費を全額補償するもののことをいいます。 労働者のケガの検査や治療費、入院料や通院料に至るまでが労災保険で支払われます。 休業(補償)給付 休業(補償)給付とは、労災で負ったケガや病気によって働けなくなった場合に認められる給付です。 仕事を4日以上休業した場合に限り、賃金の補償を受けられることになります。 障害(補償)給付 障害(補償)給付とは、労災で負ったケガや病気によって障害が残った場合に支給される給付です。 残った障害の症状が後遺障害に該当するという認定を受けることで給付の対象となります。 給付の種類や金額は、障害に程度に応じて定められる後遺障害等級により異なります。 傷病(補償)給付 傷病(補償)給付とは、労災で負ったケガや病気の治療が1年6か月を超えても終了しなかった場合に受け取れる給付です。 現在生じている症状が傷病等級に該当するという認定を受けることで給付の対象となります。 関連記事 ・労災による後遺症を後遺障害と認定されるには?条件と手順を解説 遺族(補償)給付 遺族(補償)給付とは、労災によって労働者が死亡した場合に、その遺族に支払われる給付です。 遺族(補償)年金、遺族特別支給金(一時金)、遺族特別年金の3種類が支給されることになります。 受け取れる給付金は計8種類あります。ほかの給付金についても、詳しく知りたい方は『労災事故の慰謝料は会社に請求できる?労災保険と慰謝料の違い』の記事もご覧ください。 労災認定されなかった場合は弁護士に相談 「会社側と折り合いがつかなかった」「労災認定を受けられなかった」という場合には、弁護士に相談してみましょう。 弁護士であれば、労災認定に必要な証拠を集めてもらえたり、会社に対する損害賠償請求などをしてもらえたり、正しく障害の等級の認定をしてもらえたりといったメリットがあります。 無料相談を受け付けている弁護士事務所もありますので、まずは弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。 関連記事 ・労災は弁護士に依頼するべき?気になる労災の手続きを紹介 --- ### 労働局とは?相談できることと利用するメリット・注意点を解説 - Published: 2024-01-26 - Modified: 2024-06-28 - URL: https://atomfirm.com/roudou/8910 - Categories: 労働問題全般 労働局では、労働条件や職場環境についてのトラブルなどを相談でき、当事者間での問題解決が難しい場合にはあっせんを依頼することで労働トラブルの解決が期待できます。労働局に相談してもトラブルが解決できなかったという場合には、弁護士への相談をおすすめします。 「労働問題を労働局に相談したい」「労働トラブルで悩んでいるが、労働局ではどのようなことを相談できるのか」 労働問題でお悩みの方の中には、労働局への相談を検討している人も多いのではないでしょうか。 労働局(都道府県労働局)とは、労働基準監督署の上部組織にあたる、厚生労働省所管の機関です。 相談に対しての情報提供や、労働トラブルが発生した際には助言や指導、あっせん(話し合いの仲介)を無料でおこなってくれます。 一般的に、相談は平日の午前8時30分から午後5時15分まで受け付けているところが多いです。 今回は、労働局が労働者に対しておこなう業務や、労働局で相談する際のメリット・注意点について解説します。 労働局がしてくれること トラブルを抱える労働者に対して労働局がおこなう業務として、大きく以下の3つが挙げられます。 労働者に対する労働局の業務 総合労働相談コーナーでの情報提供や相談 都道府県労働局長による助言や指導 紛争調整委員会によるあっせん (1)総合労働相談コーナーでの情報提供や相談 労働局では、総合労働相談コーナーを通して、法令の知識や判例といった情報を提供したり、さまざまな労働問題について相談を受け付けたりといった業務をおこなっています。 労働問題に関する情報提供から個別相談までの流れを、ワンストップでおこなっているところが特徴です。 (2)都道府県労働局長による助言や指導 労働局の大きな業務の一つとして、労働トラブルに悩む労働者に対して、広い範囲で助言や指導をおこなっているということが挙げられます。 労働者が抱えている労働トラブルについて企業側の問題点を指摘し、自主的に問題を解決するよう促してくれます。 労働基準監督署が労働に関係する法令と縁の深い労働トラブルにのみ対応しているのに対し、労働局では以下のようなトラブルについて助言や指導をおこなってくれるところが特徴です。 労働局が対応している労働トラブル 解雇や雇止めといった、労働条件に関するトラブル いじめやパワハラといった、職場環境に関するトラブル 営業車の破損など、会社の所有物についての損害賠償に関するトラブル 同業他社への就業禁止などといった労働契約に関するトラブル 配置転換や出向、募集や採用に関するトラブル など (3)紛争調整委員会によるあっせん 当事者間での問題解決が困難な場合には、労働局内に設置されている紛争調整委員会によってあっせんや調停をおこなうことも、労働局の業務の一つです。 トラブルに悩む労働者と企業の間に、中立な第三者として労働問題の専門家が入ります。そして、当事者双方の主張の要点を確かめ、調整をおこなって話し合いを促進することで、トラブルの解決を図ってくれます。 労働局にあっせんを依頼するメリット 労働局に相談してあっせんを依頼すれば、以下のようなメリットを期待できます。 労働局にあっせんを依頼するメリット 迅速な解決が期待できる 非公開のためプライバシーが守られる 無料で利用できる 合意内容には法的拘束力が生じる 迅速な解決が期待できる 労働問題を裁判で争う際、解決まで長期間を要する場合があります。 これに対し、あっせんは申請が受理された場合、約80%が2か月以内に処理されており、裁判よりも迅速なトラブルの解決が期待できます。 非公開のためプライバシーが守られる あっせんは公開を原則としている裁判とは異なり、非公開で実施されることになっています。 和解の成立の成否に関わらず非公開でおこなわれるため、労働者側も企業側もプライバシーが保護されます。 無料で利用できる 職場とのトラブルを抱えており、金銭的に余裕がないという場合であっても、あっせんは国が運用する制度であることから無料で利用できます。 合意内容には法的拘束力が生じる あっせんを実施したことで労働トラブルの解決に合意があった場合には、民法上の和解契約となります。 合意内容に法的拘束力が生じることになるため、あっせん後のトラブル解決に期待できます。 必ず問題が解決するとは限らない点に注意 労働局であっせんを依頼しても、参加を強制する力はないため、企業側があっせんの出席を無視したり、合意が得られなかったりする可能性はあります。 そのため、あっせんによって必ず労働トラブルが解決するとは限らない点に注意が必要です。 労働局以外の労働トラブルの相談先 労働局以外の主な労働問題の相談先として、「労働基準監督署」と「弁護士」が挙げられます。 労働基準監督署 労働基準監督署では、以下のような労働基準法などの労働法令に関するトラブルの相談を受け付けています。 労働基準監督署で相談できること 残業代未払い 労災保険に関する内容 36協定違反 解雇予告手当の不支給 など 労働基準法に関する問題でお悩みの場合は、労働基準監督署に相談することをおすすめします。 関連記事 ・労働基準監督署に相談できる内容とは?メリット・デメリットから徹底解説 弁護士 弁護士であれば、労働トラブルの種類に関わらず相談できるほか、損害賠償や残業代の請求といった、法的手続きを依頼できます。 また、相手が逆に損害賠償請求を起こしてきた場合など、法的トラブルに発展した際にもスムーズに対応することができるのもポイントです。 関連記事 ・労働問題に強い弁護士に相談!弁護士に相談するメリットや探し方 まとめ 労働局では、労働条件や職場環境についてのトラブルなどを相談でき、当事者間での問題解決が難しい場合にはあっせんを依頼することで労働トラブルの解決が期待できます。 労働局に相談してもトラブルが解決しなかったという場合には、弁護士への相談をおすすめします。 無料相談を受け付けている弁護士事務所もありますので、まずは弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。 --- ### 残業代が支払われない!請求方法と流れを解説! - Published: 2024-01-23 - Modified: 2024-03-29 - URL: https://atomfirm.com/roudou/8842 - Categories: 残業代請求 会社が残業代を支払わないことは労働基準法違反であり、残業代を請求することは正当な権利です。残業代が支払われない方は、弁護士に相談してください。 所定の労働時間に終わらない業務量や仕事への責任感から、サービス残業が横行している職場で働いている方は多いのではないでしょうか。 残業代が支払われないことはおかしいと感じながらも、日々の業務をこなすことが精いっぱいな方もいるはずです。 会社が残業代を支払わないことは労働基準法違反であり、残業代を請求することは正当な権利です。 しかし、残業代を請求する際には、いくつかの手順を踏む必要があります。また、会社側と交渉がうまくいかない場合、労働基準監督署や裁判所への申し立てが必要になることもあります。 この記事では、残業代が支払われない場合の具体的な請求方法と流れを、わかりやすく解説します。 残業代が支払われない理由 残業代が支払われない理由 残業代が支払われない理由には、以下のような理由があることが多いです。 残業代が支払われない理由 定時にタイムカードを打刻させる 自宅に持ち帰らせて残業させる みなし残業制度を悪用している 残業を黙認している会社の多くは、定時にタイムカードを打刻させたり、終わらない仕事は自宅に持ち帰らせて残業をさせたりすることがあります。 このような場合、打刻したタイムカードには残業をしている記録が残っていないため、当然のように残業が支払われないことになるのです。 また、みなし残業制度を悪用している会社もあります。 みなし残業制とは、給与に一定の残業代を含めて支払う制度で、あらかじめ固定の残業代の時間数と金額が決められています。 本来は固定の残業代に割り当てられた時間数を超えて残業すれば、超過分の賃金が支給されなければなりません。 しかし、会社から「給料に残業代は含まれている」と主張され、残業代が支払われないこともあります。 会社が残業代を支払わないことは労働基準法違反 会社が従業員に残業代を支払わないことは、労働基準法違反です。 時間外労働(残業代)や休日労働の割増賃金を支払わなかった場合は、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます(労働基準法119条1号)。 働かせてもらっているという気持ちもあるかもしれませんが、労働基準法で定められている以上、労働者が残業代を請求することは正当な権利です。 関連記事 ・労働基準法による残業の規制を解説!上限や残業代の決まりとは? 残業代が支払われないときにすべきこと 残業をした証拠を収集する 残業代が支払われないときには、残業をした証拠を収集することが重要です。 実際の残業時間とタイムカード・勤怠管理システムの記録が合わない場合には、他の証拠から実際の残業時間を証明する必要があります。 収集すべき証拠には、以下のものが挙げられます。 集めておくべき証拠 タイムカード・勤怠管理システムの記録 始業・終業の時間を記した手書きメモ、業務日誌など 業務上のメールの送信記録など パソコンのログイン・ログオフ時間の記録など 証拠を集める際には、できるだけ数か月単位の証拠を集めておくことがポイントです。 関連記事 ・残業代請求で必要となる証拠を徹底解説!証拠がない場合の対処法は? 支払われるべき残業代を計算する 残業代が支払われないときには、未払い残業代の額を正しく計算しておくと、スムーズに残業代請求に移ることができます。 残業代を計算するときには、証拠のあるなしもメモをしておくと、会社への請求や弁護士への相談をおこなうときに便利です。 関連記事 ・残業代の正しい計算方法とは?基本から応用的な計算まで徹底解説! 残業代請求の方法と手順 (1)会社に直接請求する 残業代が支払われないときは、会社に直接請求することができます。 会社が残業時間を正確に把握していないことが残業代が支払われない原因となっている可能性もあります。 時間とコストの面からも、まずは直接交渉から始めるのが最適だと言えます。 会社に直接請求する際の流れは以下の通りです。 会社に直接請求する場合の流れ 適切な証拠を準備する 会社に内容証明郵便で請求の通知書を送る 会社側と直接交渉する 交渉を経て示談に達すれば、ここで問題を収束させることができます。 ただし、自分一人で交渉しようとすると会社が交渉に応じてくれなかったり、不利な条件を突きつけられたりするおそれがあります。 できる限り交渉だけで解決させたいとお考えの場合は、交渉の段階から弁護士をつけるのが良いでしょう。 (2)労働基準監督署に申告する 残業代が支払われないことは、労働基準法違反です。会社が交渉に応じない場合は、労働基準監督署に申告することもできます。 労働基準監督署に申告する場合の流れ 適切な証拠を準備する 労働基準監督署に残業代未払いを訴える 労働基準監督署が調査 違反が認められれば、企業に支払い勧告が出される 労働基準監督署による介入は、会社に労働基準法などの労働法規を守らせることが目的です。 労働基準監督署の勧告はあくまでも行政指導であるため、法的拘束力はありません。申告したからといって必ずしも企業が支払いに応じるとは限らないので注意しましょう。 (3)労働審判を行う 直接の交渉や労働基準監督署に申告をしても残業代が支払われない場合は、法的措置を取ることも選択肢となります。 労働審判は、労働審判官(裁判官)1名と労働審判員2名から構成される、労働審判委員会という組織を利用する制度です。 原則として3回以内の審理で結論を出すことになっているため、2〜3か月程度で問題を解決できる可能性があることが大きなメリットです。 労働審判を行う場合は以下のように進みます。 労働審判をする場合の流れ 労働審判申立書や陳述書等の必要書類と、残業の証拠となりうるものを全て裁判所に提出 40日以内に最初の期日が開かれ、会社側と双方の主張や事実関係の確認を行う 3回目の期日までに調停が成立しなければ、審判官と審判員が評議を行い「審判」が下される 審判の内容に双方が合意すれば、労働審判は終了する ただし、労働審判委員会の判断に異議があった場合には、訴訟となります。 (4)訴訟を行う 訴訟は、基本的に原告と被告が交互に主張を重ねていき、最終的な結論(判決)を裁判所が下す手続きです。 訴訟を行う場合の流れは以下の通りです。 訴訟を行う場合の流れ 会社の所在地を管轄する地方裁判所または簡易裁判所に訴状を提出 第1回期日は会社側が訴状に対する答弁書を提出 2回目以降の期日では双方が主張と証拠となる書類を一緒に提出し、具体的な答弁を行う 双方が全ての主張書面の提出を終えると弁論終結となり、その後判決が言い渡される なお、労働者と相手(会社)が主張する回数には基本的に制限がないため、結論が出るまでに1年以上かかることもあります。 残業代が支払われないときに弁護士に相談するメリット 残業代が支払われないときは、弁護士に相談しましょう。弁護士への相談は、以下のようなメリットがあります。 残業代請求を弁護士に相談するメリット 残業代の金銭回収の可能性が上がる 残業の証拠が収集しやすい 残業代請求後のトラブルを防ぐことができる 残業代の金銭回収の可能性が上がる 弁護士は法律の専門家であり、法的な知識と経験があります。その知識をベースに法的根拠をもって会社と交渉するため、未払い残業代が回収できる確率を高めることができます。 また、弁護士に依頼することで従業員の本気度を伝え、「裁判を起こされるかもしれない」というプレッシャーを会社に与えられることもメリットと言えるでしょう。 また、実際に裁判が必要になった場合でも、法律の専門家である弁護士が側にいれば手続きを任せられるだけでなく、法律に基づいた主張で裁判を有利に進めることが可能です。 残業の証拠が収集しやすい 残業代を回収するためには、証拠が重要です。 証拠が手元にそろっておらず、回収を決意した段階では集めることが困難な状況もあり得ます。 従業員が会社に対してタイムカードやパソコンの記録を見せてくれと言っても、会社はすぐに応じてくれないかもしれません。 しかし、弁護士に相談し、依頼した弁護士から証拠の開示請求を行うと、会社側が証拠の提出に応じてくれる可能性が高まります。 残業代請求後のトラブルを防ぐことができる 未払い残業代の回収を会社に在籍したまま行うときに心配となるのが、会社から従業員への不利益な対応です。 会社によっては、未払い残業代の請求をしたことにより従業員を懲戒解雇するところもあります。 従業員が弁護士をつけていれば、そのような対応は当然弁護士から追及されるため会社もうかつな対応はできません。 弁護士に依頼することで、会社からの不利益な対応を抑止する効果が期待できます。 --- ### 残業代請求で必要となる証拠を徹底解説!証拠がない場合の対処法は? - Published: 2024-01-23 - Modified: 2024-04-18 - URL: https://atomfirm.com/roudou/8963 - Categories: 残業代請求 残業代が支払われていない場合、残業代を請求するのは労働者の権利です。ただし、残業代を請求するためには、労働者側が残業の実態を証明する証拠を揃える必要があります。この記事では残業代請求の証拠を詳しく解説しています。 「残業を証明できる証拠はどのようなものがある?」「残業代未払いを請求したいけど、証拠がない」 残業代が支払われていない場合、残業代を請求するのは労働者の権利です。 ただし、残業代を請求するためには、労働者側が残業の実態を証明する証拠を揃える必要があります。 残業代の証拠には、タイムカードや勤怠管理システムの記録、上司の承認がある業務日報などがあげられます。 証拠がない場合の対処法も紹介するので、証拠がないとお悩みの方も、ぜひ最後までご覧ください。 残業代請求で必要となる証拠 残業代請求で必要となる証拠は、主に以下の3つに分類することができます。 実際の残業時間を明らかにするもの 残業に関する労働条件が記載されているもの 支給された残業代を明らかにするもの 実際の残業時間を明らかにするもの 実際の残業時間を明らかにするもの タイムカード 勤怠管理システムの記録 パソコンのログイン・ログオフ時間の記録 タコグラフ 上司の承認がある業務日報 残業代を請求するためには、実際の残業時間を明らかにする証拠を収集することが必要です。 実際の残業時間が明らかになれば、請求できる残業代を計算することができます。 「タイムカード」や「勤怠管理システムの記録」は、実際に残業を行ったことを明らかにする有力な証拠になります。 これらは、労働者の出勤および退勤を管理するものであるため、労働者の残業時間を証明することが可能です。 しかし、違法なサービス残業をさせられているケースでは、定時にタイムカードを打刻したり、自宅に仕事を持ち帰らせて残業したりすることもあるでしょう。 タイムカードに実態が残らない残業している場合には、タイムカードや勤怠管理システムだけでは十分な証拠とは言えません。 その場合には、実際に残業をしていることを証明できる証拠を収集する必要があります。 具体的には、「パソコンのログイン・ログオフ時間の記録」や上司の許可を得た業務日報などがあげられます。運送業の方は、「タコグラフ」も証拠になります。 関連記事 ・タイムカードがなくても残業代の請求は可能!収集すべき証拠とは? 残業に関する労働条件が記載されているもの 労働条件が記載されているもの 雇用契約書 労働条件通知書 就業規則 残業に関する労働条件を記した「雇用契約書」や「労働条件通知書」などは、残業代請求の権利や、残業代の計算方法を確認する上で有効です。 また、労働基準法89条では、就業規則に「賃金の決定、計算・支払い方法」を定めるよう会社に義務付けています。 雇用契約書が見当たらない場合は、就業規則をみれば「残業に関する労働条件」がわかるため、就業規則も未払い残業代を明らかにする証拠となります。 支給された残業代を明らかにするもの 支給された残業代を明らかにするもの 給料明細 銀行口座の写し 「給与明細」や「銀行口座の写し」は、実際の給与額を示す上で有効です。 給与明細が手元にあれば給与明細で十分ですが、給与明細がない場合には、給料の振り込みが確認できる銀行口座の写しや領収書などを収集しましょう。 残業代請求の証拠集めのポイント 残業代請求で必要となる証拠を収集しましたが、残業代請求の証拠集めのポイントを解説します。 早めに証拠を集める 残業代請求の時効は3年です。3年が経過すると、請求しても残業代が支払われない可能性が高くなります。 できる限り早めに証拠を集め、請求準備を進めることが重要です。 また、退職して時間が経てば経つほど、証拠の収集が難しくなります。在職中は証拠を収集しやすいため、できる限り在職中に証拠を収集することがおすすめです。 関連記事 ・残業代請求は退職後でも可能!注意点や退職後の証拠の集め方を解説 複数の証拠を集める 一つの証拠だけでは、残業の実態を十分に証明できない場合があります。そのため、複数の証拠を集めて、残業の実態を裏付けることが重要です。 残業代請求の証拠は多ければ多いほどいいです。できる限り証拠を収集しましょう。 「実際の残業時間を明らかにするもの」で挙げた以外に、収集しておくと役立つ証拠には、以下のようなものがあります。 残業をしていたことを示す証拠 自身で記録した残業時間のメモ 家族へのLINE・メールによる日常的な連絡 業務で使用したメールの送受信履歴 これらは、単体で残業していたことを証明する証拠としては弱いですが、タイムカードなどの残業時間を補完する証拠として役立ちます。 「自身で記録した残業時間のメモ」や「家族へのLINE・メールによる日常的な連絡」は、たまにではなく、毎日メモ・連絡をしているほうが残業を補完する資料として認められやすくなります。 同様に「業務で使用したメールの送受信履歴」も証拠を補完するものとして有効です。 企業が定めた所定労働時間を超えた時間に上司から仕事を追加されていたり、他社とやり取りをしていたりする場合には、残業をしていた証拠になります。 残業の証拠がない場合の対処法 開示請求を行う タイムカードや勤怠管理システムなどの証拠がない場合でも、弁護士に依頼して会社に開示請求を行うことで、証拠を収集できる可能性があります。 開示請求は個人で行うこともできます。しかし、会社と労働者の立場上、個人で開示請求をしても会社側が真剣に取り扱ってくれない可能性もあるでしょう。 弁護士から開示請求を行うことで、会社側も真剣な態度をみせ、開示請求に応じてくれる可能性が高まります。弁護士からの請求を断ると、それ以上の手段(調停・訴訟等)に発展し、強制的に証拠開示となるおそれがあるためです。 証拠保全の手続きを行う また、民事訴訟法の証拠保全の手続き(民事訴訟法132条)を活用するという方法もあります。 証拠保全の手続きとは、訴訟を行う前に、裁判で必要となる証拠をあらかじめ確保しておく手続きです。 証拠が消滅・改ざんされるおそれがある場合や、証拠を保全しておかないと裁判で証拠として提出ができない場合に取ることが多いです。 強制力のある手続きではありませんが、裁判所からの命令であるため、会社側も応じてくれる可能性が高いでしょう。 証拠保全の手続きは、裁判所に申し立てを行います。申し立てには、証拠保全の必要性や、保全の対象となる証拠の内容などを記載した申立書を提出する必要があります。 申立書に記載すべき証拠が分からない場合は、一度弁護士に相談することをおすすめします。 残業代の証拠でお悩みの方は弁護士に相談! 残業代の証拠でお悩みの方は、弁護士に相談しましょう。 残業代請求は証拠が重要であり、労働者側が証拠を収集する必要あります。 残業代の証拠を収集して、労働者の権利として残業代を請求しましょう。 弁護士から開示請求を行えば、会社側も開示請求に応じてくれる可能性が高まります。 残業代の請求は、訴訟を背景とした交渉で解決することもあります。無料相談を受け付けている弁護士事務所もあるので、一度相談してみてはいかがでしょうか。 関連記事 ・残業代請求を弁護士に依頼する場合の費用相場は?弁護士に依頼するメリット5選! --- ### 未払いの給料を請求する方法は?流れと注意点を弁護士が解説 - Published: 2024-01-19 - Modified: 2024-06-21 - URL: https://atomfirm.com/roudou/8755 - Categories: 給料未払い 未払いになっている給料を会社に請求する際には、会社に請求書を送る、労働基準監督署に申告する、法的手続きをとる、といった手段が考えられます。 弁護士に依頼すれば、未払い給料の請求をスムーズにおこなうことができます。 「未払いの給料を請求する方法は?」「未払いの給料を会社に請求したいが、流れがよくわからない」 給料が未払いになっていても、どのように請求すればいいのかわからないといった悩みを抱えている方は多いと思います。 給料の未払いは労働基準法によって違法と定められており、労働者には未払いになっている給料を会社に請求する権利があります(労働基準法第120条1号)。 この記事では、未払いになっている給料を会社に請求する方法・流れや、請求する上でのポイントについて詳しく解説します。 給料未払いとは|請求の対象となる賃金 給料未払いは違法 給料未払いは、法律上では「未払賃金」と言われています。 労働基準法24条において、「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない」と規定されています。 給料が全額支払われていない、給料の一部が未払いになっている状態は、全額払いの原則が守られていないため、違法となります。 給料未払いの対象となる賃金は? 給料未払いの対象となる賃金は、毎月の給料のほかにも下記があげられます。 未払い賃金の対象となるもの 毎月の給料 退職金 賞与やボーナスなどの一時金 休業手当 割増賃金 有給休暇の賃金 給料という名目ではなくても、雇用契約や就業規則で支払われることが決まっている賃金が対象となります。 給料未払いの原因を問わず請求できる 未払い給料を請求することは労働者の権利です。労働者は給料未払いの原因を問わず、未払い給料を会社に請求できます。 実際に、給料が未払いになっている原因は、企業の経営不振や、企業と労働者間のトラブルなどが考えられます。 しかし、どのような原因があったとしても、企業には労働の対価として労働者に給料を支払うことが義務付けられています。 引継ぎをせずに退職したことや業績の悪化を理由に給料を支払わないことは違法です。 未払い給料を請求する方法|一般的な流れ 未払い給料の請求は、以下のような手順を踏むことが一般的です。 未払い給料を請求する一般的な流れ 未払い給料の証拠を集める 会社に内容証明郵便で請求書を送る 労働審判・訴訟などの法的手続きをとる なお、会社に内容証明郵便で請求書を送らずに、労働審判・訴訟などの法的手続きを行うことも可能です。 未払い給料の請求方法や手順について詳しく知りたい方は、弁護士に相談しましょう。 (1)給料が未払いである証拠を収集する 未払い給料を請求するためには、証拠が重要です。給料が未払いになっていることを証明する有効的な証拠には以下のようなものがあります。 給料未払いを証明する証拠 給与明細書 タイムカード 就業規則や退職金規定 シフト表 雇用契約書 など 有効的な証拠を、多くの種類かつ長期間集めておくことで、労働基準監督署が動きやすくなったり、法的手続きを有利にすすめたりすることができます。 給料未払いの証拠が手元にない・収集が難しい方は、『給料未払いの証拠がない!対処法や請求をする際の手順を解説!』の記事もご覧ください。 (2)会社に内容証明郵便で請求書を送る 未払い給料の証拠が収集出来たら、給与未払いの請求書を会社に送りましょう。 会社が給料未払いを認識していなかったケースでは、この時点で支払ってもらえる可能性が高いといえます。 また、期日までに支払わなければ法的手続きに移行することを記載することで、支払ってもらえることもあります。 請求書を送る際には、内容証明郵便(いつ、誰が誰に、どのような内容を伝えたのかを郵便局が証明してくれるサービス)を利用することをおすすめします。 もっとも、内容証明書を送ったとしても、会社が必ず支払いに応じてくれるという保証はありません。 しかし、内容証明郵便を送ることで「未払い給料を支払ってほしい」という労働者の意思を示すことができ、その後、労働審判や訴訟を起こすときの証拠にもなります。 参考:内容証明郵便 (3)労働審判・訴訟などの法的手続きをとる 未払い給料の請求書を送ったものの、会社との交渉がうまくいかなかったり、そもそも会社が対応してくれないケースもあります。その場合には、労働審判・訴訟などの法的手続きをとる方法があります。 労働審判とは、労働者個人と会社との間に生じたトラブルを、原則として3回以内の期日で審理する制度です。 労働審判がどのような制度が詳しく知りたい方は、『労働審判とは?制度の内容や手続きの流れを弁護士がわかりやすく解説』の記事をご覧ください。 訴訟とは、紛争を解決するために公開で行われる裁判手続きです。労働審判よりも長期化する傾向にあるものの、裁判所の判決によりトラブルの解決が見込めます。 また、請求する金額が60万円以下の場合は、少額訴訟も一つの選択肢となります。 少額訴訟とは、60万円以下の未払い給料を請求するために利用できる訴訟です。簡易裁判所において、原則として1回の審理で結果が出ます。 通常の裁判と比較して給料未払い請求を早く解決できるのがメリットとなります。迅速に未払い給料の問題を解決することができる可能性が高まります。 参考:少額訴訟|裁判所 【コラム】労働基準監督署に申告する方法もある 会社から給料が支払われない場合には、労働基準監督署に申告する手段も考えられます。 労働基準監督署は、会社が労働に関する法令を守っているかどうかを監督する機関です。給料未払いの事実が確認されれば、会社に対して是正や改善の指導をおこなう場合があります。 ただし、労働基準監督署の指導や勧告には法的な強制力がないため、未払い給料などの問題の解決が必ず期待できるというわけではないことに注意が必要です。 関連記事 ・労働基準監督署に相談できる内容とは?メリット・デメリットから徹底解説 未払い給料を請求する際の注意点 未払い給料を請求する際の注意点として、以下の2点が挙げられます。 未払い給料を請求する際の注意点 未払い給料の時効が3年であることに注意 会社が倒産したときは「未払賃金立替払制度」を利用する 未払い給料を請求する時効が3年であることに注意 未払いになっている給料を請求するとき、時効が3年であることに注意が必要です。 すでに時効が完成している場合には、会社に請求しても支払ってもらえない可能性が高いでしょう。 時効を完成させない方法として、会社に対して「未払いになっている給料の支払いを求める」という旨の請求書を内容証明郵便で送ること(催告)が挙げられます。 催告が成立すれば、時効の完成を6か月間止める(猶予)させることができます。 なお、退職金の請求権は5年です。 会社が倒産したときは未払賃金立替払制度を利用する 会社が倒産してしまい、未払い給料が回収できない場合には、未払賃金立替払制度を利用しましょう。 未払賃金立替払制度とは、倒産してしまった企業の代わりに、国が未払いになっている賃金の一部を労働者に支給する制度です。 「退職日が倒産日の6か月前から2年の間であること」などの要件を満たせば、未払いになっている給料の一部を受け取ることができます。 関連記事 ・未払賃金立替制度はいつもらえる?利用条件や手続きの流れを解説 給料未払いを弁護士に相談するメリット 未払いになっている給料は個人で請求することもできますが、弁護士に相談することでさまざまなメリットがあります。 弁護士に相談するメリットは、以下のようなものがあげられます。 給料未払いを弁護士に相談するメリット 未払い給料の請求を代理でおこなってもらえる 未払いになっている給料の計算を代理でおこなってもらえる 有効的な証拠を代理で集めてもらえる 弁護士に相談するメリットについては、『給料の未払いは弁護士に相談!依頼するメリットと費用を徹底解説』の記事でさらに詳しく解説しています。 未払い給料の請求を代理でおこなってもらえる 現在自分が働いている職場に対して未払い給料を請求することについて、ハードルが高いという人も多いでしょう。 弁護士に相談や依頼をおこなうことで、未払い給料の請求を一任することができます。 また、未払い給料の支払いが遅れている場合、遅延した日数分の「遅延損害金」も併せて請求することができるところもポイントです。 未払いになっている給料を正確に計算してもらえる 未払いになっている給料を会社に請求するとき、労働者側が未払いになっている給料を正しく計算する必要があります。 弁護士に相談や依頼をおこなうことで、未払いになっている賃金を正確に計算してもらうことができます。 有効的な証拠を代理で集めてもらえる 未払いになっている給料を請求するときには、有効的な証拠が必要です。 しかし、賃金に関わる書類といった証拠を会社側が保管していたり、既に退職していたりする場合には、証拠を集めることが難しいこともあります。 弁護士に依頼すれば、会社が保管している証拠についての開示請求を弁護士から行ってもらえます。 弁護士からの請求となると、本人による請求より会社側も協力的になることが多いので、有効的な証拠を集めやすいでしょう。 まとめ 給料の未払いは違法であり、労働者には、未払いになっている給料を請求する権利があります。 未払いになっている給料を請求したいとお悩みの方は、できるだけ証拠を集め、速やかに会社に請求することが重要です。 弁護士に依頼すれば、未払いになっている給料の計算や、会社への請求について代理でおこなってもらえるメリットがあります。 無料相談を受け付けている弁護士事務所もありますので、まずは弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。 --- ### 残業代請求で負ける5つのケース!敗訴を防ぐポイントを弁護士が解説 - Published: 2024-01-19 - Modified: 2024-04-23 - URL: https://atomfirm.com/roudou/8871 - Categories: 残業代請求 残業代請求で負けてしまう主なケースや、残業代請求で負けないよう有利に進めるためのポイント、残業代請求で負けてしまったときに備えて知っておくべきことを解説します。 「残業代請求で負けることはあるのか」「未払い残業代を請求する裁判で敗訴したらどうなるのか」 未払いになっている残業代について会社に裁判を起こすとき、「訴えても負けたらどうしよう」と悩む方は多いと思います。 「残業代が一銭も支払われなかった」「残業代の一部は戻ってきたが、十分な額ではなかった」など、人によって「負け」と考えるケースはさまざまです。 今回は、残業代請求で負けてしまう主なケースや、残業代請求で負けないよう有利に進めるためのポイント、残業代請求で負けてしまったときに備えて知っておくべきことを解説します。 残業代請求で負けるケース 残業代を全く回収できなかった場合、「負け」と考える人がほとんどでしょう。残業代請求を回収できないケースとして、以下のようなものが挙げられます。 残業代請求で負けるケース 残業時間を証明する証拠が不十分だった 会社の残業禁止命令を無視して残業していた 残業代請求の時効である3年が経過していた 固定残業制で正しく残業代が支払われていた 管理監督者だと判断された 残業時間を証明する証拠が不十分だった 残業代請求をするには、労働者側が実際にどれだけ残業をおこなったかを立証する必要があります。 有効な証拠がなければ、残業時間について立証できず、訴えが棄却されたり、請求が一部しか認められなかったりする場合があります。 有効な証拠としては、以下のようなものが挙げられます。 未払い残業代請求に有効な証拠 タイムカード等の勤怠記録 就業規則 雇用契約書 業務用PCの使用時間の記録・ログイン時間の記録 残業代の計算をする際、直近1か月分の証拠しかないという状態であれば、残業代をさかのぼって計算することが難しいです。 そのため、証拠を集めるときには、できるだけ長期間にわたってさまざまな種類の証拠を集めておくことがポイントです。 関連記事 ・残業代請求で必要となる証拠を徹底解説!証拠がない場合の対処法は? 会社の残業禁止命令を無視して残業していた 「就業規則などで残業の禁止が明記され、広く社内で認識されていた」「禁止命令を破って残業をさせるような指示が無かった」 こういった場合には、残業代請求の訴えが退けられるケースがあります。 労働者側が会社側に残業代を請求できるのは、会社側から残業指示があった場合のみです。労働者側が独自の判断で残業をおこなった場合には、残業代請求が認められないおそれがあります。 もちろん、業務量や業務状況から、明らかに残業が必要であったと判断されれば、残業代請求が認められる余地はあります。 残業代請求の時効である3年が経過していた 残業代を請求する上で、未払いになっている残業代を請求できる時効が3年であるという点に注意をしておく必要があります(労働基準法115条)。 残業代請求の時効をストップさせたいという場合には、会社側に内容証明郵便を使用して請求書を送っておくなどの対処法が考えられます。 内容証明郵便を使用すれば、時効の期間を6か月間延長させることができますが、時効が過ぎた場合は残業代は請求できないので注意しましょう。 固定残業制で正しく残業代が支払われていた みなし残業(固定残業)は、あらかじめ一定時間分の残業代を給与に含めて支払う制度のことです(労働基準法38条)。 実際に支払われるべき残業代が固定支給額を超えない場合は、残業代の追加請求が認められないことになります。 しかし、みなし残業代については、通常の賃金部分と割増賃金部分が書面ではっきりと区別されていることや、固定手当が割増賃金の対価として支払われていることが必要となります。 こういった条件に反していれば、残業代請求について認められる可能性が高いため、会社で運用されている固定残業制が適正であるかどうかを確認することがポイントです。 管理監督者だと判断された 管理監督者に該当する職務の人には、残業代を支払わなくてもよいとされています(労働基準法41条2項)。管理監督者に該当する人には、以下のような条件があります。 管理監督者に該当する人 経営や人事に関わるなど経営者と一体的立場にある 労働時間による管理を受けていない 基本給や手当などにおいて、その地位にふさわしい処遇を受けている ただし、単に「管理職である」という理由だけで管理監督者として認定されるわけではなく、自分が会社内でどのような立ち位置であるかを確認しておく必要があります。 実際に、美容室を経営する会社の総店長として勤務していた従業員が、会社に対して残業代の請求を求めた際、従業員が「管理監督者にあたる」として残業代請求を棄却した判例があります(『ことぶき事件』東京高判平20. 11. 11)。 関連記事 ・管理職は残業代が出ない?残業代がもらえるケースや基準を解説 残業代請求を有利に進めるポイント 残業代請求を有利に進めるためのポイントとして、以下のようなものが挙げられます。 残業代請求を有利に進めるポイント 残業時間を証明する証拠を集めておく 残業代請求に強い弁護士に依頼する 残業時間を証明する証拠を集めておく 残業代請求を有利に進めるための一番のポイントは、有効な証拠を集めておくことです。 残業代請求で必要となる証拠は、主に以下の3つに分類することができます。 実際の残業時間を明らかにするもの 残業に関する労働条件が記載されているもの 支給された残業代を明らかにするもの もし退職してしまっているなどの理由で証拠が集められないという場合には、会社に対して証拠の開示請求をしたり、裁判所や弁護士に手続きを依頼したりといった対処法をとることをおすすめします。 関連記事 ・残業代請求で必要となる証拠を徹底解説!証拠がない場合の対処法は? 残業代請求に強い弁護士に依頼する 残業代請求を有利に進めるためには、残業代に強い弁護士に依頼することも重要です。 弁護士に依頼すれば、会社との交渉を一任できることはもちろん、法的トラブルに発展した際にもスムーズに対応してもらえます。 残業代請求に強い弁護士を選ぶ際には、実際に相談した人の口コミなどから、弁護士の労働問題についての実績を確認しておくことがポイントとなります。 関連記事 ・残業代請求を弁護士に依頼する場合の費用相場は?弁護士に依頼するメリット5選! 残業代請求に負けたときに備えて知っておくべきこと 残業代請求の訴訟に負けてしまったときのデメリットについて心配される方も多いかもしれませんが、主なデメリットとしては費用についてのことがほとんどです。 残業代請求に負けたときに備えて、知っておくべきことは以下の3つが挙げられます。 主なデメリットは費用 会社から損害賠償請求されることは基本的にない 転職先に訴訟した事実が伝わってしまうことも基本的にない 残業代請求のデメリットは費用 残業代請求の裁判で敗訴してしまった場合に考えられる一番のデメリットは、裁判にかかった弁護士費用などが無駄になってしまうことです。もちろん、請求が一部しか認められず、結果として弁護士費用のほうが多くかかってしまう場合もあるでしょう。 費用倒れのリスクを回避するためには、完全成功報酬制(依頼によって経済的利益が生じた場合にだけ弁護士費用が発生する)の弁護士に依頼するなどの対処法が考えられます。 会社から損害賠償請求されることは基本的にない 裁判に負けたとき、「逆に会社側から裁判にかかった費用を請求されるのでは?」と心配になる方もいるでしょう。 裁判を起こして敗訴してしまった場合には、訴訟費用(訴訟提起に必要な印紙代、証人に支払う日当など)は原則として敗訴した側が負担することになります(民事訴訟法61条)。 しかし、訴訟費用には該当しない費用(弁護士への依頼費用など)は依頼した側が負担するのであり、勝訴した側の損害として敗訴側に原則として請求できるものでもありません。 したがって、残業代請求で全面的に敗訴となってしまったとしても、会社側から損害賠償請求をされることは基本的にないといえるでしょう。 敗訴による負担は、訴訟費用にとどまります。 転職先に訴訟した事実が伝わってしまうことも基本的にない 残業代請求が認められなかったとき、「転職先の会社に訴訟したことをバラされてしまうのでは?」と不安になる方もいるかもしれません。 しかし、残業代を請求したという事実は、個人情報保護法や弁護士の守秘義務によって守られているので、転職先や新しい職場に伝わってしまうことは基本的にありません。 残業代を請求する上での勝率の考え方や、残業代を回収できるケースとポイントについて知りたい方は『残業代請求の勝率はどのくらい?残業代を回収できるケースとポイントを解説』もご覧ください。 まとめ 残業代請求について、「負け」と感じるパターンは人によってさまざまですが、残業代請求ではどれだけ有効な証拠を集めることができるかがポイントです。 残業代請求には時効もあり、迅速な対応が求められます。残業代請求を有利に進めるためにも、弁護士に依頼することをおすすめします。 無料相談を受け付けている弁護士事務所もありますので、まずは弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。 --- ### 労働基準監督署は電話で相談できる!相談のポイントを解説 - Published: 2024-01-19 - Modified: 2024-06-28 - URL: https://atomfirm.com/roudou/8781 - Categories: 労働問題全般 労働基準監督署に電話で相談をする際には、夜間や休日での相談が難しいこと、ハラスメントなど個人間での問題の対応はできないといった点に注意する必要があります。 弁護士に相談すれば、労働トラブルについて労働者側の味方として動いてくれるというメリットがあります。 「労働基準監督署に相談したいが、電話は受け付けているのか」「労働基準監督署でどんな問題を相談できるかわからない」 労働トラブルが発生したとき、労働基準監督署への相談を考える人も多いと思います。 労働基準監督署とは、企業が労働に関連する法律を遵守しているかを監督する機関です。 労働基準監督署は電話相談が可能です。無料で相談できる点や、場合によっては企業に是正勧告や指導をしてくれる点がメリットとなっています。 今回は、労働基準監督署に相談できる内容や、相談方法と流れについて解説します。 労基署で相談できる内容・できない内容 労働関連法に抵触する問題なら労基署に相談できる 労働基準監督署(労基署)では、以下のような労働に関連する法律と縁の深い問題を相談することができます。 労働基準監督署に相談できる内容 給料や残業代の未払い 違法な長時間労働 休暇や有給休暇の拒否 退職の拒否 労災保険の受給の拒否 パワハラや異動などは労基署に相談できない 労働トラブルであったとしても、労働に関連する法律に抵触しない内容であれば、労基署に相談しても対応しきれない場合があります。該当するケースとしては、以下のようなものがあります。 労基署の対応が難しいケース パワハラなどのハラスメント 職場内いじめ 配置転換や異動に関するトラブル など 労基署以外の無料相談窓口を知りたい方は『労働問題の無料相談窓口7選!専門家のサポートを受けたい方へ』の記事をご覧ください。 労基署への相談方法3つ・おすすめは直接訪問 実際に労基署に相談する方法として、以下の3つの方法が挙げられます。 労基署に相談する方法 電話で相談する メールで情報を匿名で提供する 直接訪問する (1)電話で相談する 各労働基準監督署によって異なりますが、おおむね平日の9時~17時であれば電話相談を受け付けています。 夜間や土日祝日に電話相談をしたい場合は、厚生労働省の「労働条件相談ホットライン」の使用をおすすめします。 「労働条件相談ホットライン」では、年末年始を除き、平日の17時~22時と土日・祝日の9時~21時まで電話相談を無料で受け付けています。 (2)メールで情報を匿名で提供する 「労働基準関係情報メール窓口」フォームを利用すれば、24時間いつでも匿名で情報提供をすることができます。 あくまで情報提供という形になるため、労働トラブルの解決に直結しにくいというところに注意が必要です。 (3)直接訪問する 各労働基準監督署によって異なりますが、一般的には平日の8時30分~17時15分であれば窓口での相談を受け付けています。 直接労基署に訪問すれば、窓口で証拠を見せながら事態を説明できるなどのメリットがあり、労基署側に具体的なアクションを期待できます。 相談するときのポイントとその後の流れ 証拠を集めておく 労基署に実際に相談する際には、会社が労働基準法に違反していることを示す証拠を集めておくことがポイントです。有効的な証拠として、以下のようなものがあります。 集めておきたい証拠 タイムカード 給与明細 雇用契約書 就業規則 など 通報すると立ち入り調査、是正や勧告がおこなわれる場合も 実際に会社側に労働基準法違反が疑われた場合、労基署は会社に対して立ち入り調査をおこないます。 調査の結果として不正が発覚した際には、会社に対して是正の指導や勧告がおこなわれることになります。 企業側に改善が見られない場合には、労働基準監督署が会社を送検し、悪質であるとして経営者を逮捕するケースもあります。 労基署に通報した後の流れを詳しく知りたい方は『労働基準監督署に通報!その後はどうなる?会社にバレる?』の記事をご覧ください。 労基署で解決しない場合は弁護士に相談 労基署によって会社に是正の指導や勧告がなされても、改善が見られなかったり、一度改善はしたもののもとに戻ってしまったりして、労働トラブルが解決しないという場合があります。 そういった場合には、弁護士に相談することをおすすめします。 他の機関があっせんやアドバイスでの対応にとどまるのに対し、弁護士に依頼すれば、企業と代理で交渉してもらったり、裁判になった際などの法的な対応をスムーズにおこなえたりといったメリットがあります。 弁護士費用がかかってしまうというデメリットはありますが、労働者側に立って動いてくれるという点でも、弁護士への相談がおすすめです。 関連記事 ・労働問題を依頼すべき弁護士とは?選び方や注意点も解説! まとめ 労働基準監督署で電話相談をすることはできますが、夜間や休日での相談が難しかったり、ハラスメントなどの個人間の問題の場合は対応できなかったりといった注意点があります。 労基署での相談を検討している方は、直接窓口に訪問することをおすすめします。 また、労基署で労働問題が解決しなかった場合には、弁護士への相談も検討してみましょう。 無料相談を受け付けている弁護士事務所もありますので、まずは弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。 --- ### 退職トラブルの相談窓口3選!よくある相談事例も紹介 - Published: 2024-01-18 - Modified: 2024-06-14 - URL: https://atomfirm.com/roudou/8820 - Categories: 退職・退職後の手続き 退職トラブルの相談窓口と退職トラブルのよくある質問をご紹介しました。法律上のルールなども解説しているので、退職トラブルでお悩みの方はご紹介した窓口に相談してみましょう。 「退職の意思を伝えたら拒否された」「退職したいのに退職できない」 退職に関するトラブルは、退職したくてもできない「在職強要」や、一方的に退職を促される「退職勧奨」などがあります。 今回の記事では、退職トラブルの相談窓口3選とよくある質問をご紹介します。 退職トラブルを抱えている方は、ご紹介する専門家の窓口に相談してみましょう。 退職トラブルの相談窓口3選 退職トラブルが発生した場合は、下記の窓口に相談できます。 退職トラブルの相談窓口 総合労働相談コーナー 法テラス 弁護士事務所 総合労働相談コーナー 労働基準監督署内に設置されている「総合労働相談コーナー」は、厚生労働省が管轄する窓口で、あらゆる労働問題を相談できます。退職トラブルに関しても相談可能です。 予約も不要で、無料で利用可能です。また、相談や助言で解決しない場合は、あっせん制度も利用できます。 さらに労働基準法違反の疑いがある場合は、担当部署に引継ぎ、行政指導もしてくれる場合もあります。 総合労働相談コーナーは全国各地に設置されています。 料金無料Webサイト「○○県 総合労働相談コーナー」で検索 参考:総合労働相談コーナー 法テラス 法テラスは、国が設立した法的トラブル解決の総合案内所です。アドバイスを始め、最適な窓口の紹介もしてくれます。 退職に関する相談をすれば、頼れる弁護士を紹介してくれることもありますので、まずは相談をしてみてください。 電話番号0570-078374(法テラス・サポートダイヤル)受付時間平日 9時~21時、土曜 9時~17時料金無料 参考:法テラス 弁護士事務所 弁護士は、法律の専門家です。労働問題に関しても幅広く相談することができます。 とくに退職勧奨や雇い止め、退職金未払いに関しては、弁護士への相談がおすすめです。 弁護士に相談することで、これまでの経験や判例などから違法性があるかどうかの判断と、労働審判・訴訟を視野に入れた今後の対処法を教えてもらえることができます。 弁護士事務所に相談するデメリットは、費用が発生することです。弁護士相談にかかる費用は1時間5,000円~1万円が相場です。 事案にもよりますが、事務所によっては無料相談ができる場合もあります。 料金無料または1時間5,000円~1万円程度Webサイト「退職 弁護士事務所」などで検索 そもそも退職・解雇は自由にできる? 法律上は退職日の2週間前までに告げれば問題ない 労働者は、期間の定めのない雇用契約については、2週間の予告期間を置くことによって解約することができます(民法627条1・2項)。 ただし、会社の就業規則には「退職日の1か月以上前までに退職願を提出しなければならない」といった規定が置かれている場合も多いです。 この場合、会社の就業規則に従わなければならないと考えがちですが、退職の予告期間を2週間より長期間にする旨の規定は、無効となる可能性があります。 民法より厳しい定めを会社が勝手に設定しているだけであり、法律上は退職日の2週間前までに退職の意思を告げれば問題ないのです。 なお、期間の定めがある有期労働契約の場合は、原則として途中解約できないので、注意する必要があります。 一方的な雇い止めは違法? 雇い止めとは、派遣社員のように有期労働契約を結んでいる従業員について、契約期間が満了した際に契約更新をすることなく労働契約を終了させることをいいます。 一方的な雇い止めは、不当な解雇と同視できるとして、無効であるとみなされる場合があります。 以下のようなケースでは雇い止めが無効になる可能性があります。 無効となり得る雇い止めのケース 雇用が長期間に及んでいるなど、契約がほぼ無期雇用者と変わらない場合 これまでに何度も契約が更新されているなど、契約更新について合理的な期待が生じている場合 一方的に雇い止めをされた場合には、専門家に相談しましょう。 関連記事 ・雇い止めの無料相談窓口3選!拒否できるケースと対処法 退職したい労働者を会社が引き止めることは違法? 退職したくても、引き継ぎができていないことや後任がいないことを理由に、会社から引き止めにあっている方もいるでしょう。 退職したいと言ってきた労働者に対して会社が引き止めること自体は、違法なことではありません。 ただし、会社の引き止めには、法的な強制力があるわけではありません。考え直してほしいという要望を伝えているだけにすぎないので、引き止めを拒否して退職することもできます。 労働者は期間の定めのない雇用契約については、退職の意思を伝えて2週間が経過していればいつでも退職できます。本来は会社の承認を受ける必要もないのです。 退職トラブルのよくある質問 退職は認めないと言われた 就業規則に定められた退職日に関するルールも守っても、会社側から「退職は認めない」「退職するなら労働契約違反で損害賠償を請求する」などと言われる場合もあります。 これらの文句は単なる脅しなので安心してください。 退職は労働者に認められた権利であり、会社側がこの権利を侵害することはできません。 会社側の圧が強くどうしても辞めるのが難しい場合は、弁護士に相談し、代わりに交渉してもらうのが良いでしょう。 退職金を支払ってもらえない 退職金が支払ってもらえるかどうかは、就業規則に退職金の規定があるかによります。 就業規則に退職金に関する規定はあるか確認してみましょう。 労働基準法上は退職金に関する規定は存在しないため、退職金を支払わない企業があっても問題はありません。実際、退職金制度を設けていない企業は一定数存在します。 退職金の規定がなければ原則として退職金はもらえませんが、退職金の規定があるにもかかわらず支払ってもらえない場合は、専門家に相談しましょう。 関連記事 ・退職金未払いの無料相談窓口は?退職金が支払われないときの対処法 有給休暇の消化を認めないと言われた 有給休暇の消化は、労働基準法によって認められている労働者の権利です(労働基準法39条)。 退職するからといって有給休暇を消化する権利が消滅することはありません。有給休暇をすべて消化したうえで退職できます。 退職を認めず懲戒解雇と言われた 会社が労働者を懲戒解雇するためには、懲戒処分に相当する理由が必要です。 客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当でない場合は懲戒処分や解雇が無効になる可能性があります(労働契約法15・16条)。 退職するという行為が懲戒処分に相当する理由とはならないので、退職を希望しただけで会社が懲戒解雇した場合は無効となる可能性が高いです。 関連記事 ・懲戒解雇されたら弁護士に相談!弁護士に相談すべき理由を解説 まとめ 退職トラブルの相談窓口と退職トラブルのよくある質問をご紹介しました。 退職できないことでお悩みの方も多いと思いますが、法律上は退職日の2週間前までに退職の意思を告げれば問題ありません。会社からの引き止めで心情的に退職しづらい方や、在職強要されている方は、ご紹介した相談窓口に相談してください。 また、退職勧奨や雇い止めに関しては、弁護士に相談することがおすすめです。弁護士であれば違法性があるかどうか判断できるうえ、依頼すれば代理人として会社と交渉することもできます。 費用の心配をされている方は、まずは無料の相談窓口を選んで相談してみてはいかがでしょうか。 --- ### 退職代行を利用しても残業代は請求できる?【弁護士が解説】 - Published: 2023-12-15 - Modified: 2025-01-06 - URL: https://atomfirm.com/roudou/7058 - Categories: 退職代行 弁護士に依頼すれば、退職代行と同時に残業代を請求することができます。退職代行を利用して残業代の請求をお考えの方は弁護士に相談してください。 「退職代行を利用して会社を辞めたいが、残業代も同時に請求できる?」「退職代行を使って辞めると、残業代請求できなくなるのではないか」 日々の残業に悩まされながら退職代行の利用を検討している方の中には、そのようなお悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。 退職代行を利用しても、残業代を請求することは可能です。 しかし、退職代行を利用して残業代請求をしたい方は、退職代行事業者を慎重に選ぶ必要があります。 利用する退職代行事業者によっては、未払いになっている残業代を請求することが難しいケースもあるからです。 今回は、退職代行事業者の種類や退職代行を弁護士に依頼するメリット、残業代を請求する際のポイントについて詳しく解説します。 退職代行事業者の種類は3つ!残業代請求ができるのは弁護士だけ 退職代行をおこなう事業者は、大きく以下の3種類に分けられます。 退職代行事業者の種類 一般の退職代行業者 退職代行ユニオン 弁護士 (1)一般の退職代行業者 弁護士などの国家資格をもたない、株式会社や個人事業主による代行業者です。 会社に退職する意思を伝えることはできますが、会社と法的な交渉をおこなうことは非弁行為(弁護士資格をもたない者が、報酬を目的に弁護士業務をおこなう違法行為)にあたるため、残業代の請求などといったアクションを起こすことはできません(弁護士法第72条)。 しかし、弁護士を利用する場合に比べ、一般の退職代行業者は手軽な費用で利用できる場合があります。弁護士を使う必要がない事案であれば、検討することをおすすめします。 (2)退職代行ユニオン 退職代行ユニオンとは、退職代行サービスをおこなっている合同労働組合のことです。 合同労働組合とは、社内に労働組合がない企業の労働者などが加入できる団体のことで、正社員や派遣社員、パートなどといった雇用形態に関係なく加入できるという特徴があります。 労働組合には団体交渉権が認められている(日本国憲法第28条)ため、会社と交渉や話し合いをすることや、退職と同時に残業代を請求することはできます。 しかし、実際にユニオンが労働委員会の承認を受けているかどうかや、運営実態が明らかにされているかといった、確認するべき点があるところに注意が必要です。 また、退職代行ユニオンには訴訟など法律問題に発展した場合、対処が難しくなるというデメリットがあります。 (3)弁護士 弁護士であれば、勤務先に退職する意思を伝えてもらえるだけでなく、以下のような交渉を同時におこなってもらえます。 弁護士に退職代行を依頼するとできること 未払いになっている残業代や給与の支払い交渉 退職金の請求 離職票などといった退職書類の請求 勤務先からの損害賠償請求に対する交渉 関連記事 ・退職代行を弁護士に依頼するメリットは?費用・代行業者との違いまで完全解説! 弁護士に退職代行を依頼することのメリット 残業代など未払いの給与を請求してもらえる 弁護士に退職代行を依頼することの大きなメリットとして、残業代などの未払いになっている給与を退職代行と同時に請求できるということが挙げられます。 在職中に残業代を請求することが心理的に難しかったり、規程通りに退職金が支給されなかったりした場合でも、弁護士に依頼すれば代理で請求してもらうことが可能です。 非弁行為のリスクがない 退職代行業者が代行できるのはあくまで「退職の意思を告げること」だけで、それ以上に何らかの法的な交渉をおこなうと、非弁行為に該当するリスクが大きくなります。 一方、弁護士であれば非弁行為に該当するリスクはなく、有給休暇の取得や退職日の調整といったさまざまな事情を代理で交渉してもらうことができます。 退職に失敗するおそれが小さい 一般の退職代行業者では、退職する意思を告げたときに勤務先側から反論を受けたり、退職を認められなかったりした場合、法的な対応をとることができないというリスクが考えられます。 場合によっては、勤務先から損害賠償を請求されてしまうこともあるかもしれません。 弁護士に依頼すれば、勤務先側と法的な交渉をおこなうことができるため、そういったリスクを考えることなくスムーズにトラブルに対応することができます。 弁護士に退職代行を依頼することのデメリット 弁護士に退職代行を依頼することのデメリットとして、費用が高くなってしまうことが挙げられます。 弁護士に退職代行を依頼する際には、最初に相談をするときに必要な法律相談料、退職代行を依頼するための手数料、事務的な作業について生じる実費などが必要となります。 退職代行と同時に残業代請求や未払い賃金の請求を依頼したい場合は、上記に加えて別途料金が必要になる場合もあります。 そのため、一般の退職代行業者や退職代行ユニオンと比べて費用がかさむというところがデメリットです。しかし、弁護士に依頼すれば、他のサービスと比べて圧倒的にスムーズな対応をすることができます。 関連記事 ・退職代行サービスの金額相場はいくら?3つの相談先と対応の違いを解説 残業代請求をする際のポイント 残業の証拠を集めておく 残業代を請求するうえでは、自分がどれだけの時間働いたかを示す証拠が重要となります。 そこで、次のような証拠を集めておくことがポイントです。 残業代を請求する際の証拠 残業していたことの証明になる証拠... ... タイムカード、交通系ICカードの履歴など 残業代を計算するのに必要となる証拠... ... 雇用契約書、就業規則など 残業代が未払いであることを示す証拠... ... 給与明細、源泉徴収票など 残業代についての証拠を集めるときには、なるべく会社側にバレないように証拠を集めることが重要です。会社側としては、残業代の請求を逃れるために証拠を隠滅するおそれがあるからです。 また、多くの残業代を請求できるように、なるべく多くの証拠を集めておくことも重要です。 証拠が手元にない場合でも弁護士に相談し、弁護士から証拠の開示請求を行ってもらうと、勤務記録や就業規則といった証拠を得られやすくなるでしょう。 関連記事 ・残業代請求で必要となる証拠を徹底解説!証拠がない場合の対処法は? 残業代請求の時効は3年 残業代を請求する上で気をつけておきたいポイントは、未払いになっている残業代を請求できる時効が3年であるという点です(労働基準法第115条)。 残業代請求の時効をストップさせるには、内容証明郵便を使用して、請求書を送るなどといった手段が挙げられます。 関連記事 ・残業代請求の時効は3年!将来は5年に?時効中止や請求の方法を解説 退職前に証拠を揃えて退職後の残業代請求がおすすめ 残業代は在職中でも退職後でも請求ができますが、退職後の残業代請求がおすすめです。 在職中に請求する場合、残業代についての証拠が集めやすいという反面、請求をやめるよう説得されたり、請求後にパワハラ行為を受けるなどといった不当な扱いを受けたりするリスクがあるからです。 退職後であれば、そういった不当な扱いを受けるリスクがなくなります。 しかし、在職中で3年以上残業代が未払いであるという場合は、毎月古い残業代から時効になるため、できるだけ早く残業代を請求することをおすすめします。 関連記事 ・残業代請求は退職後でも可能!注意点や退職後の証拠の集め方を解説 まとめ 弁護士に依頼すれば、退職代行と同時に残業代を請求することができます。 ほかの事業者と比較して退職代行の費用は高くなりますが、残業代請求をお考えの場合は弁護士に依頼することをおすすめします。 無料相談を受け付けている弁護士事務所もありますので、まずは弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。 --- ### 【テンプレートあり】残業代請求書(内容証明)の書き方・送付方法を解説! - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-03-25 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6884 - Categories: 残業代請求 残業代請求で内容証明を利用することにはメリットがありますが、形式や内容など押さえておくべきポイントを守ることが重要です。弁護士に依頼して作成してもらうメリットも大きいため、検討しましょう。 「内容証明で残業代を請求するには?」「内容証明の書き方は?」 未払い残業代の請求手段として挙げられる内容証明郵便ですが、具体的な利用方法、書くべき内容がわからない方も多いのではないでしょうか。 内容証明は郵便局が行っているサービスの1つであり、残業代請求のための制度というわけではありません。 そのため、内容証明を残業代請求で利用する場合には、ちょっとしたコツを押さえる必要があります。 この記事では、内容証明を利用した残業代請求をお考えの方に向けて、内容証明の書き方や内容証明を利用するメリットを解説します。 残業代請求で内容証明を利用するメリット 内容証明がどんなサービスなのかをみたうえで、残業代請求に内容証明を用いるメリットについて解説します。 内容証明は郵便局が郵便の内容を証明してくれるサービス 内容証明は、送った郵便について、①郵送日時、②差出人・宛先人、③記載内容について、郵便局が証明してくれるサービスです。 通常、郵便局は郵便を配達するだけであり、①〜③のどれも証明してもらえません。そもそも封筒に入った文書については郵便局が内容を見ることもありません。 内容証明は通常の郵便物とは異なり、郵便局が内容を確認します。 確認は、相手に送ろうとしている文書の全部を写した書面(謄本)を郵便局に持参することで行います。 謄本は相手に送った文書と全く同じ内容ですので、この確認によって、①・②に加えて③も郵便局が証明してくれるというわけです。 残業代請求で内容証明を利用するメリット①|時効の完成が猶予される 内容証明を利用することの最大のメリットは、時効の完成をストップすることにあります。 残業代を含む未払賃金の時効期間は3年です。 つまり、残業代請求が認められるのは最大で3年間分であり、それより前の分を請求しても「時効で消滅している」と会社から主張されてしまうでしょう。 残業代請求の時効は、基本的に毎月の給料日を基準に進んでいきます。 たとえば、給料日が毎月末日だとすると、2023年10月分の未払い残業代は、2026年10月末日までに請求しなければなりません。 いったん会社に対して支払いを請求すると、時効の完成が6か月間猶予され、猶予期間中は時効が完成しなくなります。この請求を「催告」と呼びます。 催告は口頭でも構わないのですが、口頭だと、会社から「支払いの請求はされていない」と言われた場合に、明確な反論が難しくなってしまいます。 時効との関係では「いつ支払いを求めたか」が重要なわけですが、口頭でこれを証明することは非常に困難というわけです。 一方、内容証明を利用すれば、催告を行ったことや行った日付を客観的に証明できます。 そのため、時効との関係で内容証明を利用するメリットが大きいわけです。 残業代請求で内容証明を利用するメリット②|請求の意思が伝わる 内容証明を利用するもう一つのメリットは、「残業代請求の強い意思」を会社に伝えることができるという点です。 内容証明は郵便局のサービスなので、基本的に、特別な効力があるわけではありません。 口頭で残業代を請求をしても内容証明でも、「未払いの残業代の請求」という点では法律上の扱いは変わらないということです。 しかし、実際には、口頭で請求してもあしらわれてしまったり、うまく理由をつけて丸め込まれてしまったりといったことがあります。 内容証明は後で見るように、利用に費用もかかりますし、様式にもルールがあります。 わざわざそういった制度を利用して請求することで、請求に対して本気であるという姿勢をアピールでき、会社側の真摯な対応を引き出せる可能性が高まります。 従業員との関係に絞っても、会社は日々多くの業務に対応しています。対応の優先順位を上げるという意味でも、内容証明による請求は効果的といえるでしょう。 残業代請求書の内容証明の文例・テンプレート 請求書 〇〇年〇月〇日 〇〇県〇〇市〇〇区〇丁目〇番〇号〇〇株式会社代表取締役 〇〇 〇〇殿 〇〇県〇〇市〇〇区〇丁目〇番〇号鈴木 太郎 印 前略 私は、貴社で勤務していた〇〇と申します。 〇年〇月〇日から〇年〇月〇日にかけて合計〇時間の時間外労働をしました。 割増賃金率を含め残業代は〇円になりますが、〇円が未払いですので請求いたします。 未払い残業代の支払いについては、〇年〇月〇日までに給与振込口座へお振込みお願いします。 万一上記期間内にお支払いを確認できない場合、労働審判、訴訟等の手段により、残業代・遅延損害金を請求いたしますのでお含み頂けますと幸いです。 【振込先の口座】 〇〇銀行〇〇支店 普通預金 口座番号〇〇〇〇〇〇〇口座名義人 〇〇〇〇〇〇〇 草々 PDFでダウンロードする 残業代請求における内容証明の書き方と送付方法 残業代請求における内容証明の書き方 次に残業代請求書の書き方をご説明します。 残業代請求書には、以下の事項を記載しましょう。 内容証明に記載すべき事項 タイトル、宛名、請求者名、押印、日付を入れる 請求する残業代の金額、期間 相当期間内に支払うよう求める 支払いがない場合の対応を明確にする 振込先口座を記入する タイトル、宛名、請求者名、押印、日付を入れる タイトルにこだわる必要はあまりありませんが、「請求書」「催告書」など、一見して何かの請求だとわかる記載が望ましいでしょう。 次に宛先を書きます。会社の住所、会社名、代表取締役の名称を書きましょう。 その下に、差出人の情報を書きます。住所と氏名、必要に応じて電話番号やメールアドレスも記入しましょう。 差出人名の横には「押印」が必要です。認印でかまいません。 忘れずに「文書の作成日付(発送日付)」も書き入れましょう。 請求する残業代の金額、期間 内容としては、「未払いの残業代を請求する」ことが重要です。 残業をしていたのに支払われなかった期間、割増賃金の割合を明記するとより効果的です。 残業がいくら請求できるのか分からないという方に向けて、残業代の計算方法を『残業代の正しい計算方法とは?基本から応用的な計算まで徹底解説!』の記事の記事で解説しています。ぜひ参考にしてください。 相当期間内に支払うよう求める 未払い残業代は、請求書到着後速やかに(相当期間内に)払うよう求めます。相当期間にルールはありませんが、1週間から10日くらいに設定すると良いでしょう。 支払いがない場合の対応を明確にする 末尾に、相当期間内に支払いがない場合の対処も付言しておくようおすすめします。会社へのプレッシャーとなるからです。 たとえば、労働基準監督署への通報や、労働審判や労働訴訟などの法的手続きへの移行の旨を記載することが挙げられます。 振込先口座を記入する 未払い残業代は、通常振込送金してもらいます。振込先の口座も忘れずに記入しましょう。金融機関名、支店名、預金の種別(ほとんどのケースでは普通預金)、口座番号、口座名義人の名称(カタカナ)を書いてください。 支店名が抜けたり口座番号が間違っていたりすると支払いを受けられないので、銀行通帳などをみて慎重に書き写しましょう。 内容証明郵便の送り方・利用方法 内容証明郵便には、以下の2種類の利用方法があります。 電子内容証明郵便を利用する 1つ目の方法は電子内容証明郵便です。これは、郵便局が提供している「ネットから内容証明郵便を発送できる」サービスです。 わざわざ郵便局に出向く必要はありませんし、内容証明の特殊な書式に従う必要もありません。 日頃忙しくしている方、パソコンを日常的に使っている方などは、電子内容証明郵便を利用すると便利でしょう。 なお電子内容証明郵便の場合「押印」は不要です。 参考:e内容証明(電子内容証明) 郵便局から差し出す 内容証明郵便を取り扱っている郵便局へ文書を持参し、発送する方法です。 このとき、まったく同じ内容の文書を3通用意しなければなりません。 また内容証明郵便用の特殊な書式に従う必要もあります。書式を無視すると受け付けてもらえないので注意しましょう。 内容証明に用いる謄本は、下記の条件をクリアするように作成しなければなりません。 書き方条件縦書き1行20字以内、1枚26行以内横書き・1行20字以内、1枚26行以内・1行13字以内、1枚40行以内・1行26字以内、1枚20行以内(3つのうちいずれでも可) どれにするか迷われる方は、「1行20字以内、1枚26行以内」「1行26字以内、1枚20行以内」のいずれかを選ぶといいでしょう。 用紙に決まりはないため、この形式を守っていれば、手書きでもパソコンで作成してプリントアウトしたものでも構いません。 すべての郵便局で内容証明郵便を受け付けているわけではないので、事前に発送できる郵便局を調べてから持ち込んでください。 また、残業代を請求する会社への郵送方法は、一般書留とする必要があります。 そのため、通常の郵便料金に加え、一般書留分を追加で支払う必要があります。 さらに配達証明をつけることで、会社が「受け取っていない」と弁解することを防ぐことができるでしょう。 なお、内容証明は謄本1枚だと440円の加算料金がかかります。以後は、1枚増えるごとに260円が追加されていきます。 内容証明の作成を弁護士に依頼すべき場合 最低限の記載項目を押さえていれば、残業代請求の内容証明を自分で作成することも可能ですが、いくつか注意点があります。 残業代請求書を自分で作成するにあたって、以下の場合には注意しなければいけません。 内容証明の利用で注意する場合 時効が迫っている場合 遅延損害金も請求する場合 会社が要求に応じない見込みが高い場合 上に挙げた要件に当てはまっている場合、弁護士に内容証明の作成を依頼すべきといえます。以下で具体的に見ていきましょう。 残業代請求の時効が迫っている場合 残業代請求の時効が迫っている場合、早急に弁護士に相談し、内容証明を作成して送付してもらうことが望ましいといえます。 自分で作成しようと検討しているうちに時効が完成してしまう可能性もありますし、送付した内容に不備があれば時効の完成が猶予されなくなってしまうこともあります。 弁護士に依頼して適切な内容証明を作ってもらえば、請求前に時効が完成する事態を回避することができます。 関連記事 ・残業代請求の時効は3年!将来は5年に?時効中止や請求の方法を解説 遅延損害金もあわせて残業代請求をする場合 未払いの残業代を請求する際には、残業代の金額そのものに加え、遅延損害金も請求することができます。 遅延損害金は、支払いが遅れたことに対する損害賠償として支払われるものです。 未払いの残業代は、「給料日を過ぎても支払われていない残業代」ということであり、支払いが遅れていると捉えられるため、遅延損害金の対象となります。 遅延損害金の利率は、現在、基本的に年3%と設定されており(民法404条2項)、軽視できない額となることもあります。 また、退職後に未払いの残業代を請求する場合、退職日の翌日からの利率が年14. 6%と大幅に高くなります(賃金の支払の確保等に関する法律6条1項)。 残業代請求の際には忘れずに加えておきたい請求ですが、遅延損害金を適切に計算して請求することはそこまで簡単ではありません。 適切に計算し内容証明に反映するためには、弁護士に相談すべきでしょう。 関連記事 ・未払い残業代の遅延損害金はいくら?付加金についても解説 残業代請求に会社が応じない見込みが高い場合 内容証明は口頭や通常の郵便に比べれば厳格な請求手段ですが、会社に対する法的な強制力があるわけではありません。 そのため、内容証明を送っても会社が応じないと思われるときには、弁護士に内容証明郵便の作成を依頼する方が効果的でしょう。 なお、弁護士に依頼した場合、内容証明を弁護士名で出すかそれとも自分の名前で出すかは、ケースバイケースです。 弁護士が入ることでより事態がこじれてしまいそうな場合は、あえて弁護士の名前を出さないこともあります。 もっとも、弁護士名で出した方が会社側の対応もより真剣になりますし、「弁護士名で内容証明がきた」というだけで残業代が支払われることもあります。 会社が支払わない見込みが高い場合には、弁護士名で内容証明を送る方が基本的には望ましいでしょう。 弁護士への相談にあたって、費用相場や流れ、メリットなどを知りたい方は『残業代請求を弁護士に依頼する場合の費用相場は?弁護士に依頼するメリット5選!』の記事をご覧ください。 --- ### 労働基準法による残業の規制を解説!上限や残業代の決まりとは? - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-06-28 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6885 - Categories: 残業代請求 労働基準法には、残業についていくつかの規制が定められています。違反には罰則もあるため、困ったら労働基準監督署や弁護士といった第三者に相談しましょう。 「労働基準法で定められた残業時間のルールは?」「労働基準法と残業代の関係は?」 労働基準法は会社が守るべき労働条件を決めている法律であり、残業に関する規定も多く含まれています。 しかし、現実には労働基準法を守らない会社も多く、違法な長時間労働や残業代の未払いなどが後を絶ちません。 自分の労働状況が適切かを判断するために、労働基準法の残業に関する規定を知りたい方も多いのではないでしょうか。 今回の記事では、労働基準法で定められている残業時間の上限や残業代に関する規定を解説します。 労働基準法を守らない会社への対処法もご紹介するので、ぜひ最後までご覧ください。 労働基準法における残業規制 労働基準法で定められた残業の規制 労働基準法において、法定労働時間を超える労働は原則として禁止されています。 法定労働時間とは1日及び1週間の最長労働時間を定めたもので、具体的には以下の通りです(労働基準法32条)。 法定労働時間 1日8時間 1週間40時間 「1日8時間・1週間40時間」を超える労働は原則として禁止されているということです。 また、労働基準法では休日に関する規定も定められており、以下の通りです。 休日に関する規定 会社は毎週少なくとも1日の休日または4週間で4日の休日を設けなければならない。 労働基準法で定められている休日のことを「法定休日」と呼び、法定休日に働かさせることも原則として禁止されています。 時間外労働や休日労働は「残業」の典型的な場面ですから、労働基準法は、時間外労働や休日労働を原則禁止とすることで、残業を規制していると言えます。 関連記事 ・残業代について解説!残業の定義、計算方法や残業代未払い時の対処法 36協定があれば残業が認められる 時間外労働や休日労働が許容される場合があります。それは「36協定」が締結されている場合です。36協定が締結されている場合、法定労働時間を超える労働が認められます。 36協定とは、使用者と従業員の代表または労働組合との間で時間外労働・休日労働を行いうる旨を約した労使協定のことです。 この36協定を締結し、労働基準監督署に提出すれば、会社が社員に残業させることが可能となります。 関連記事 ・36(サブロク)協定とは?ポイントと残業時間との関係について解説 36協定には残業のルールを決めなければならない 36協定の手続きをとれば、残業が無制限に許されるわけではありません。 36協定には時間外労働や休日労働をどういったルールで行うのか、従業員の代表と話し合って決めた内容を記載する必要があります。 中でも、法定労働時間を超えてどの程度働かせるか(時間外労働の時間数の上限)や休日労働の回数・時間数の設定が重要です。 会社は、36協定で定めた時間数や回数までしか、時間外労働や休日労働をさせてはなりません。つまり、36協定で定めた内容がその会社の残業の上限になるということです。 言い換えれば、会社ごとに残業の上限は異なるということです。自社の36協定の内容を確認する必要があるでしょう。 会社は36協定を従業員に周知する義務を負っています(労働基準法106条1項)。見当たらないようであれば、人事担当者への照会などで確認できます。 労働基準法で定められた残業の上限 36協定を結んでも超えられない残業の上限がある 36協定で定めることのできる残業時間には上限があり、以下の通りです。 残業時間の上限 1か月の時間外労働は45時間まで 1年の時間外労働は360時間まで たとえ、36協定を締結していたとしても、「月45時間・年360時間」を超える残業は認められないということです。 ただし、例外があり、「特別な事情がある場合には、1か月100時間未満・年間720時間まで」延長できます(労働基準法36条5項)。 この例外は年に6回まで(つまり、1か月45時間を超えることができるのは最大で年に6か月)とされています。 また、「1か月100時間未満」というルールには、時間外労働だけでなく休日労働も含みます。 このように、通常時は1か月45時間が時間外労働の上限となります。ただし、例外を発動した場合でも残業は100時間未満に抑えられなければなりません。 労働基準法には実際の残業時間の上限も定められている 36協定で定めた残業時間に関係なく、実際の残業時間にも次の上限が設けられています(労働基準法36条6項)。 残業時間の上限 1か月の実際の残業時間が100時間未満(休日労働含む) 2〜6か月のいずれの平均も実際の残業時間が80時間以内(休日労働含む) これらを超えて実際に残業をした場合、違法となります。 労働基準法における残業代のルール 労働基準法では残業に対して割増賃金を支払う 「残業代」という一般的な言葉に対応する用語として、労働基準法では「割増賃金」が使われています。 割増賃金は、時間外労働、休日労働、深夜労働に対して支払うことが義務付けられており(労働基準法37条1項)、計算方法も決められています。 割増賃金は、基本的に、残業をした時間に対して支払うこととされており、以下のように計算されます。 割増賃金の計算方法 ①1時間あたりの賃金額(時間単価)×②割増率×③残業をした時間数 なお、②の割増率は時間外労働で125%、休日労働:135%と決められています。 関連記事 ・残業代の正しい計算方法とは?基本から応用的な計算まで徹底解説! 時間単価の求め方 時間単価の求め方は、給与形態によって次のように変わります。 給与体系時間単価の求め方月給制月給額÷1か月の平均所定労働時間日給制日給額÷1日の所定労働時間時給制時給額 月給制や日給制では、「1時間いくら」と賃金額が決まっているわけではないため、このような計算が必要となります。 所定労働時間というのは、就業規則や雇用契約書などであらかじめ決められている、「始業時刻から終業時刻までの時間数から休憩時間の時間数を除いたもの」を意味します。 たとえば、始業9時・終業18時・休憩12時〜13時の場合、1日の所定労働時間は8時間です。 日給制の場合はここまででいいのですが、月給制の場合は1日の所定労働時間では単価の計算ができません。 そのため、月給制では1日単位ではなく、1か月単位の平均所定労働時間で計算します。 たとえば、1日の所定労働時間が8時間で1か月平均20日勤務するという場合、「8時間×20日=160時間」が1か月の平均所定労働時間ということになります。 この平均の勤務日数には、いわゆる休日出勤は含まれず、就業規則や雇用契約書で決められている出勤日をもとに計算します。 残業時間のカウントは毎日1分単位 ③の残業をした時間数ですが、これは毎日の労働時間を集計し、そこから時間外労働や休日労働に該当する時間を計算することで求めます。 毎日の労働時間はタイムカード等を使って記録している会社が多いと思いますが、そのうち「法定労働時間を超えて労働した部分」「法定休日に労働した部分」を特定しなければならないということです。 その際、1日の残業時間は1分単位でカウントしなければなりません。 たとえば、「1日の残業時間は15分単位で記録し、それ未満は切り捨てる」というルールでは、最大14分間分の割増賃金が支払われないことになってしまいます。 これでは、割増賃金を支払う義務に違反するため、毎日の残業時間はたとえ1分でも切り捨てることはできません。 なお、毎日の残業時間を集計した1か月分の残業時間については、「30分以上を1時間に切り上げ、30分未満を切り捨てる」という扱いが認められています。 関連記事 ・残業は1分単位での計算が原則!残業代の計算方法も解説 残業に関する労働基準法の規定に違反がある場合は? 労働基準法に違反する場合には罰則がある ここまで「時間外労働・休日労働の原則禁止」「時間外労働等の上限規制」「割増賃金の支払義務」について解説しました。 労働基準法では、これらの違反について、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金という罰則を設けています(労働基準法119条1号)。 たとえば、「時間外労働・休日労働の原則禁止」に違反するケースとしては、36協定の手続きを行っていないにも関わらず、時間外労働や休日労働を行わせるといった場合が考えられます。 また、月平均80時間を超える残業を行わせた場合には「時間外労働等の上限規制」に違反します。 さらに、割増賃金を全く支払わないだけでなく、先に見たような残業時間の計算が不適切で割増賃金に不足がある場合なども、会社は「割増賃金の支払義務」に違反することになります。 労働基準法違反の残業への対処法 労働基準法に違反する残業が行われている場合や残業代の未払いがある場合、主な対処法として大きく3つが考えられます。 会社の労基法違反への対処法 会社に確認し改善を求める 労働基準監督署に相談する 弁護士に相談する 会社に確認し改善を求める 残業の上限を超えるような長時間労働は、慢性的な人手不足や会社の需要の急激な増加といった理由でも起こります。 これらは外部の機関に相談するよりも、会社に改善を求める方が早く解消されることがあります。 また、割増賃金に未払いは単なる計算間違いでも起こるため、会社に問い合わせるだけで修正されて支払われるという場合もあります。 ただ、会社から疎ましく思われる懸念などから相談できないこともあります。 労働基準監督署に相談する 労働基準監督署は、労働基準法などに対する会社の違反を取り締まる機関です。 無料で利用でき、違反が疑われる場合には会社に対して指導や是正勧告といった形でアクションを起こしてくれます。 ただし、労働基準監督署は個人的な労働問題の解決を目的とする機関ではないため、必ずしも望み通りの対応をしてくれるとは限りません。 また、残業代の未払いの指導や是正勧告では、未払い分全額の支払いが命じられないこともあります。 参考:労働基準監督署の所在地一覧 関連記事 ・残業代未払いは労基署に相談できる?弁護士との役割の違い 弁護士に相談する 残業代に関して会社の労働基準法違反にお困りの方は、弁護士に相談することをおすすめします。 法律の専門家である弁護士ならば、会社との交渉や書類の作成など、複雑な手続きを一任できます。 また、弁護士が代理人となって交渉にあたれば、会社にとっても大きなプレッシャーとなり、対応が改善される可能性が高まります。 関連記事 ・残業代請求を弁護士に依頼する場合の費用相場は?弁護士に依頼するメリット5選! --- ### 保育士の残業が多いのはなぜ?平均残業時間は?サービス残業への対処法を解説 - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-03-06 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6886 - Categories: 残業代請求 残業に悩む保育士にとって、残業に関する法的な制度を知っておくことが重要と言えます。残業問題に悩んだ場合には労働基準監督署に相談する、弁護士へ相談するなどの対処法を検討しましょう。 「保育士の平均残業時間は?」「サービス残業への対処法は?」 残業することが当たり前の職場で働いている方は「もう辞めたい」「せめて残業代がもらえれば」とお悩みの方も多いのではないでしょうか。 保育士の残業に対する問題は根深く、働き方改革が進められている現在でも大きな改善はみられていません。 また、保育士には、特殊な働き方の制度が導入されることも多く、法律上の残業のルールを知っておくことが重要と言えるでしょう。 そこで、今回の記事では、保育士の残業時間と残業時間が多くなる理由、保育士の残業問題の対処法について解説していきます。 保育士の残業が多い理由 保育士の残業が多い理由としては、以下のようなものが挙げられます。 保育士の残業が多い理由 資料や配布プリント作成といった事務作業が多い 人手不足 行事・イベントの準備や対応 資料や配布プリント作成といった事務作業が多い 保育士の仕事は、子どもと接することだけではありません。保護者への連絡文書や配布プリントの作成など、多くの事務作業も担っています。 日中は子どもの面倒を見なければならないため、事務作業が後回しになってしまう傾向があります。 事務作業は、保護者のお迎え待ちの時間や、子どもたちが帰宅した後に行うことが多くあるため、残業時間の増加につながっています。 人手不足 保育士の人手不足は、残業時間が長くなる大きな原因の一つです。 人手不足が深刻化している保育園では、一人当たりの業務量が増え、定時内に仕事を終わらせることが難しくなるでしょう。 行事・イベントの準備や対応 運動会、発表会、クリスマス会など、保育園では年間を通して多くの行事・イベントが開催されます。 これらの行事・イベントの準備や対応は、多くの時間と労力を必要とします。 場合によっては、自宅に持ち帰って制作物を作成しなければならないこともあります。 保育士の残業の実態|平均残業時間は? 保育士という職種全体で見たときに、残業がどのように問題視されているのか、確認していきます。 保育士の平均残業時間は月4時間程度 厚生労働省が行なっている2019年の賃金構造基本統計調査によると、保育士の1か月の平均残業時間は4時間となっています。 数字だけを見ると残業が少ないと感じるかもしれませんが、この数字には「サービス残業」は含まれていません。 サービス残業が常態化している保育園は多くあることから、実態としては1か月4時間よりもかなり多くなっていると考えられます。 参考:賃金構造基本統計調査令和元年以前 職種DB第1表|統計表・グラフ表示|政府統計の総合窓口 残業の多さは保育士の就業環境における課題 保育士の残業が多いことは、保育士の就業環境での課題と認識されています。 東京都福祉保健局が実施した「令和4年度東京都保育士実態調査」では、保育士を辞めた理由として、「仕事量が多い」と答えた割合が23. 1%、「労働時間が長い」が18. 6%となっています。 保育士全体にとって仕事量と残業をはじめとする労働時間の問題は、解決すべき課題として認識されていると言えるでしょう。 保育士の残業に関わる法律のルール 保育士の業務に特殊な制度を導入している保育園も多いです。保育士に適用されることの多い労働制度について解説します。 残業に関する基本的な規制 残業とは「所定労働時間」を超えて働くことを意味します。 所定労働時間とは、始業時刻から終業時刻までの時間から休憩時間を除いたものです。 また、労働基準法は、労働者に働かせることのできる最長の労働時間を定められており、法定労働時間と呼ばれます。 法定労働時間 1日8時間 1週間40時間 法定労働時間を超えて働くこと(「時間外労働」といいます)も残業に含まれます。 所定外労働の場合、いわゆる「残業代」が通常の賃金に追加で支払われることが一般的です。ただし、いくら支払われるか(通常の賃金よりも高くなるかどうか)は会社の決まり次第です。 一方、時間外労働に対しては、通常の賃金の125%を支払わなければなりません(労働基準法37条1項・2項)。割増賃金と言われるものですが、これも一般的な残業代の意味に含まれるでしょう。 以上のルールは保育園・保育士にも同じように適用されます。 保育士に適用されることの多い制度①|変形労働時間制 変形労働時間制とは、繁忙期や閑散期に合わせて労働時間の使い方を調整できる制度です。 変形労働時間制を適用すれば、「一定期間の1週平均が40時間以内に収まっていれば、8時間を超える日や40時間を超える週があっても構わない」とされています。 ただし、「変形労働時間時間制であれば残業代は不要」と誤解されていることも多くありますが、残業は発生しますし、もちろん、残業代も支払われます。 園が変形労働時間制を導入している場合、残業が適切にカウントされているか確認することが重要です。 保育士に適用されることの多い制度②|固定残業代 保育士の業務には固定残業代が採用されていることも多くあります。 固定残業代とは、実際の残業時間に関わらず一定額の残業代を支払う制度です。 残業代は、本来、残業時間数をカウントしてそれに応じて計算されるものです。1時間残業したなら、1時間分の残業代を支払うということです。 しかし、固定残業代が採用されている場合、1時間でも10時間でも、決められた金額までは残業代が変動しません。 たとえば、「固定残業代として5万円を支払う」という手当が設けられている場合、実際の残業代が5万円を超えない限り、残業時間にかかわらず5万円が支払われます。 もっとも、残業時間に応じて計算した残業代が、固定残業代として決められた金額を超えた場合、差額を追加して支払わなければなりません。 固定残業代が設けられていても、適切に差額の支払いが行われているか、チェックすることが大切です。 保育士の残業問題への対処法 最後に、保育士が残業に悩んだ場合の対処法を解説します。 対処法としては以下の3つが挙げられます。 残業問題への対処法 保育園に直接相談する 労働基準監督署に相談する 弁護士に相談する 残業について保育園に相談する 保育士が残業で悩んでいる場合、勤めている保育園に直接相談することが対処法の一つとして挙げられます。 長時間労働は、会社との話し合いと、それを踏まえた改善により解決することが望ましいトラブル類型です。 とくに、保育園は、従業員規模の小さい部類です。 規模の小さい職場で、いきなり法的手段に訴えてしまうと、保育園の中での立場が悪くなり、働きにくくなってしまうこともあり得ます。 保育園に業務改善に取り組む姿勢を持ってもらうよう、直接働きかけることが望ましいといえるでしょう。 ただし、保育園に直接相談しても動いてくれない可能性もあります。また、そもそも相談できるような職場の雰囲気でないこともあるでしょう。 保育園に直接はたらきかけても効果がないという場合は、外部機関への相談を考えましょう。 労働基準監督署に相談する 外部機関の相談先として労働基準監督署が挙げられます。 労働基準監督署は、企業が労働関係の法令を守っているかをチェックする機関です。相談・申告すれば、法律に違反している会社に対して是正勧告や指導を行ってくれる場合もあります。 残業に悩む保育士の方も労働基準監督署に相談することができます。 ただし、労働基準監督署には会社に対する強制力はなく、未払い残業代の請求などを行うことはできません。 また、労働基準監督署はあくまで中立の立場を取るため、柔軟なアドバイスを受けにくいという面があります。 参考:労働基準監督署の所在地一覧 弁護士に相談する 残業に悩む保育士の方々に最もおすすめの対処法は弁護士への相談です。 残業代請求は自身でも行うことは可能ですが、法律の専門家である弁護士に相談・依頼すれば、保育園との交渉を一任することができます。 また、保育園に働き続けたい場合、退職する場合を考慮して、適切なアドバイスをもらうことができるでしょう。 さらに、未払い残業代が発生している場合、弁護士なら未払い額を正確に計算することができ、保育園に請求することが可能です。 行事・イベントの準備のために、持ち帰りで残業をした場合なども、場合によっては残業代が発生します。 ご自身だけでは、残業代がいくらになるのか、持ち帰って制作物を作成したら残業になるのかなど、分からない点が多いと思います。 つらい残業にお悩みの保育士の方は、一度弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。 弁護士への相談にあたって、費用相場や流れ、メリットなどを知りたい方は「残業代請求を弁護士に依頼する場合の費用相場は?弁護士に依頼するメリット5選!」の記事をご覧ください。 --- ### 未払賃金立替制度はいつもらえる?利用条件や手続きの流れを解説 - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-05-28 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6877 - Categories: 給料未払い 未払賃金立替制度は倒産した場合に未払いとなっている賃金を国が支払ってくれる制度です。支払いの対象や上限、確定申告の必要性など未払賃金立替制度の疑問について網羅しています。 「未払賃金立替払制度とは?」「未払賃金立替払制度はいつもらえる?」 会社が倒産してしまった場合に、給料が支払われないことを心配する気持ちはよくわかります。 給料未払いを懸念される方に是非知っておいてほしいのが、未払賃金立替払制度です。 未払賃金立替払制度を利用すれば、会社が倒産してしまった場合に、受け取れるはずだった賃金の8割をもらうことができます。 未払賃金立替払制度の請求から振込みまでにかかる期間は、30日以内が目安です。書類の不備があると、その分振り込みが遅れてしまうこともあるので注意しましょう。 この記事では、未払賃金立替払制度について詳しく知りたい方に向け、未払賃金立替払制度とはどういうものか、利用のための要件について詳しく解説していきます。 そもそも未払賃金立替払制度とは? まず、未払賃金立替払制度の内容について解説します。 制度を利用するための手続きも、この内容を踏まえて設計されているため、確認してください。 未払賃金立替払制度とは? 未払賃金立替払制度とは、会社が倒産したことによって賃金が支払われないまま退職せざるを得なくなった労働者に対し、支払われていない賃金の一部を国が会社に代わって労働者に支払う制度です。 未払賃金立替払制度は、会社の倒産という非常事態に遭った労働者を保護するために設けられています。 そのため、立替払いという形で国が直接労働者に支払う仕組みとなっているのです。 未払賃金立替払制度の対象となる賃金の種類|退職金も対象 未払賃金立替払制度の対象となる賃金は、①定期賃金(毎月決まって支払われている賃金)②退職金の2種類とされています(賃金の支払の確保等に関する法律7条、賃金の支払の確保等に関する法律施行令4条2項)。 退職金は対象となりますが、ボーナスは対象外となります。他にも、結婚祝い金などの、臨時に支給される金銭も対象とはなりません。 未払賃金立替払制度でもらえる額は未払賃金総額の8割 上で述べた定期賃金・退職金に該当する賃金であっても、未払い分が全て支払われるわけではありません。 まず、未払賃金立替払制度でもらえる賃金は「退職日の6か月前から立替払の請求日の前日まで」に支払われるはずだった賃金に限られます。 また、実際に支払われる額は、未払い総額の80%とされています。ただし、未払い総額には退職時の年齢別に以下のように上限額が設定されています。 退職日における年齢未払賃金総額の限度額立替払上限額45歳以上370万円296万円30歳〜45歳未満220万円176万円30歳未満110万円88万円 参考:独立行政法人労働者健康安全機構 なお、立替払の対象となる最低金額は2万円以上と決められています。 未払賃金総額の残りの2割は? 未払賃金総額の残りの2割については、会社に対する権利が失われるわけではありません。 そのため、破産手続きなどの際に請求することができます。配当額は、会社の資産状況によって異なります。 しかし、実際には、倒産してしまった会社の資産は不足していることが多いため、2割が支払われる可能性は低いと言えます。 未払賃金立替制度の受給の条件は? ①法律上、もしくは事実上会社が倒産したこと 未払賃金立替払制度を利用するためには、大前提として会社が「倒産」している必要があります。単なる給料未払いや、退職金未払いの状態では利用することができません。 会社の倒産には、「法律上の倒産」と「事実上の倒産」の2種類があります。 法律上の倒産 法律上の倒産は、以下の4パターンに分類されます。 法律上の倒産 破産手続の開始 特別清算の開始 民事再生手続の開始 会社更生手続の開始 これら4つは、いずれも法律に基づいて行われるものです。法律上の倒産は、裁判所が関与しつつ法律に定められた要件・手続きに応じて行われるものを指しています。 事実上の倒産 事実上の倒産は、中小企業に対し、「事業活動が停止し、再開する見込みがなく、かつ賃金支払能力がない」と労働基準監督署長が認定することです。 中小企業の定義は下記の通りです。 業種定義卸売業資本金額1億円以下または常時雇用の従業員数100人以下サービス業資本金額5000万円以下または常時雇用の従業員数100人以下小売業資本金額5000万円以下または常時雇用の従業員数50人以下上記以外の業種資本金額3億円以下または常時雇用の従業員数300人以下 なお、「法律上の倒産」「事実上の倒産」どちらの場合でも、自分で労働者健康安全機構の窓口に請求書及び必要書類を提出する必要があります。 ②会社に労働者として雇用されていたこと 未払賃金立替払制度を利用できるのは、倒産した会社に労働者として雇用されていた人に限られます。 労働者は「会社と雇用関係にあり、労働の対価として賃金の支払いを受けていた人」のことを指します。正社員だけでなく、パートやアルバイトも「労働者」に含まれます。 なお、業務委託や請負契約として働いていた場合は、原則利用できません。 ただし、契約の形式にかかわらず、労働の形態や報酬、関連する要素などを考慮して、実質的な労働従属関係があると判断されれば、利用できる場合もあります。 ③退職日が倒産の日の6か月前から2年後の間であること 未払賃金立替払制度を利用するためには、退職日が倒産の日の6か月前から2年後の間でなければなりません。 倒産の日とは、具体的には以下のように定義されます。 倒産の日 法律上の倒産の場合:破産手続きが申し立てられた日 事実上の倒産の場合:労働者が労働基準監督署に認定申請した日 会社が倒産したからといって自動的に手続きがなされるわけではありません。退職後6か月以内に裁判所や労働基準監督署に認定申請を行う必要があります。 認定申請がない場合には、制度を利用できないので、倒産を知ったらできる限り早めに申請するようにしましょう。 倒産する前に退職していても未払賃金立替払制度が使える 未払賃金立替払制度は、倒産した会社に勤めていた労働者を対象とする制度です。 ただし、会社の経営が危うくなってきている場合、倒産前に転職などですでに退職してしまっていることがあります。 倒産前に退職した場合でも、退職日が倒産の日の6か月前であれば、未払賃金立替払制度を利用できます。 なお、退職はいわゆる「自己都合」「会社都合」のどちらでも構わないため、退職した理由が転職だとしても、未払金があれば利用できます。 このように、倒産と6か月以上離れたタイミングで退職していると対象とはなりませんが、そこまで離れていなければ倒産前に退職していても制度を利用することができます。 未払賃金立替払制度を受け取るための手続きは? 未払賃金立替払制度を受け取る手続き 未払い賃金額の計算 会社が倒産した「証明書」・「確認通知書」を受け取る 請求書への記入 立替賃金を受け取る 1. 未払い賃金額の確認 まず、給料や退職金について、未払いとなっている賃金額について確認しましょう。 給料未払いは給料明細や銀行の口座、退職金はそもそも退職金が支払われるかどうかを就業規則、労働条件通知書などから確認しなければなりません。 請求の手続きを行う際に、労働基準監督署から賃金が未払いであることの証拠の提出を求められます。 スムーズに手続きを行うためにも、必要に応じて会社の労務担当者に聞くなどして証拠を収集しましょう。 関連記事 ・給料未払いの証拠がない!対処法や請求をする際の手順を解説! 2. 会社が倒産した「証明書」「認定通知書」の交付を受ける 申請は、会社の倒産の種類によって異なります。 法律上の倒産をした場合 法律上の倒産は、倒産の認定を法的に受けています。 裁判所などから、会社が倒産した「証明書」を交付してもらいましょう。 事実上の倒産をした場合 事実上の倒産の場合は、倒産の事実を確認してもらうために、労働基準監督署に「認定申請書」を提出する必要があります。 倒産が認められれば、「認定通知書」が交付されます。 参考:事実上の倒産認定申請 3. 請求書への記入 「証明書」や「認定通知書」の交付を受けたら、立替払請求書に必要事項を記載します。 書面は、「未払賃金立替払制度 記入用」からダウンロードできます。 記入の方法は下記を参考にしてください。 参考:立替払請求書・退職所得申告書の記入のしかた|独立行政法人労働者健康安全機構 4. 立替賃金を受け取る 申請した書面などによって、支払いが認められれば、立替賃金を受け取ることができます。 未払賃金立替払制度によって支払われるお金は、申請時に記入した自身の金融機関口座に振り込まれます。 請求から振込みまでは、30日程度が多いとされています。しかし、請求書や添付書類に不備があればその分遅れる可能性があります。 また、実際に振り込まれる前には「支払通知書」が送付される運用になっており、そこに立替払額や振込日等が記載されています。 未払賃金立替払制度を利用した場合の税金はどうなる? 未払賃金立替払制度で支払われた分の確定申告は必要? 未払賃金立替払制度で支払われた分の確定申告は必要です。 未払賃金立替払制度を利用して支払われるお金は、もともと賃金として支払われるものです。そのため、本来であれば所得税が源泉徴収されるはずです。 この所得税の仕組みは制度を利用しても基本的に変わらず、未払賃金立替払制度で得られる金額は原則「退職所得」として課税の対象となります。 もっとも、未払賃金立替払制度の申請書には、同時に退職所得の申告ができるよう、記載欄が設けられています。 その記載欄に必要事項を記入すれば、基本的には別途、確定申告を行う必要はありません。 実際には立替分が課税される可能性は低い 未払賃金立替払制度で支払われた定期賃金・退職金は、ともに税金上は「退職所得」として扱われるこため、退職所得控除という所得控除を受けることができます。 退職所得控除は、以下のルールで計算されます。 退職所得控除の計算 勤続年数20年以下の場合:40万円×勤続年数 勤続年数20年超の場合:800万円+70万円×(勤続年数ー20年) 未払賃金立替払制度では、支払われる額の上限が決められているため、実際には退職所得控除の枠内に収まることがほとんどです。課税されることは考えにくいでしょう。 ただし、他の退職所得がある場合などは扱いが変わるため、注意が必要です。 未払賃金立替払制度で不明な点があれば弁護士に相談 この記事では、未払賃金立替払制度について解説してきました。 「自分が制度の対象となるかわからない」「賃金が未払いで困っている」などの悩みを抱える方も多いと思います。 未払賃金の請求には時効もあり、速やかな行動が求められます。 会社の倒産、賃金未払いにお困りの方は、弁護士に相談することをおすすめします。法律の専門家である弁護士であれば、取るべき最適な手段を提示してくれるでしょう。 弁護士への相談にあたって、費用相場や流れ、メリットなどを知りたい方は『給料の未払いは弁護士に相談!依頼するメリットと費用を徹底解説』の記事をご覧ください。 --- ### 退職金未払いの無料相談窓口は?退職金が支払われないときの対処法 - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-06-28 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6878 - Categories: 退職・退職後の手続き 未払い退職金の請求は、未払いを明らかにする証拠集めがポイントです。就業規則に記載があれば会社に退職金支払い義務があることを証明できます。会社と直接交渉しても退職金が支払われないときは、弁護士など専門家に相談してみましょう。 「退職金が支払われない」「未払い退職金の請求方法は?」 退職金は、老後の生活費や転職活動資金として当てにしている人も多いでしょう。退職金が支払われないと今後の生活が不安になりますよね。 長年働いたにも関わらず、最後の最後で退職金が未払いであることに不満を覚える気持ちもよくわかります。 貰えるはずだった退職金が支払われていない場合、会社に対して退職金の請求ができます。 今回の記事では、退職金の未払いでお困りの方に向けて、退職金の無料相談窓口や退職金の請求方法を詳しく解説します。 退職金未払いの無料相談窓口は? 退職金未払いの無料相談窓口は以下の窓口があります。 退職金未払いの相談窓口3選 弁護士 労働基準監督署 労働組合 弁護士 退職金の未払いにお困りの方はまずは弁護士に相談してみることをおすすめします。 弁護士なら依頼者の希望に沿ってさまざまな対応をしてくれます。法律面での相談から会社との交渉、ADRや訴訟の対応など、安心して任せることができます。 また、請求開始から問題解決まで、継続して対応してもらえるのは弁護士だけです。 無料相談を実施している事務所もあるので探してみるといいでしょう。 関連記事 ・退職金が未払いの時は弁護士に相談!弁護士に相談すべき理由 労働基準監督署 労働基準監督署は、労働に関する法律を会社が遵守しているのかをチェックし、指導票や是正勧告書の交付によって、働く人の権利を守る行政機関です。 労働基準監督署は予約不要で、無料で相談することができます。 相談内容は、退職金の支給条件や額、会社への請求方法など、幅広く対応してもらえます。 ただし、労働基準監督署は、あくまでも行政機関であるため、強制力はありません。会社が退職金を支払わない場合は、裁判などの法的手段を検討する必要があります。 関連記事 ・労働基準監督署に相談できる内容とは?メリット・デメリットから徹底解説 労働組合 退職金未払いは、労働組合に相談することも可能です。 労働組合に相談することのメリットとして、会社に対して団体交渉をしてくれるという点が挙げられます。会社は正当な理由なく、この団体交渉を拒否することができません。 また、使用者が団体交渉に応じたとしても、不誠実に応じることは不当労働行為として禁止されています(労働組合法第7条2号)。 そのため、団体交渉で会社側と対等に話をした結果、退職金が支払われる可能性もあります。 無料相談を受け付けている労働組合もあるでしょう。 関連記事 ・労働組合に相談できることと相談の流れ【弁護士が解説】 そもそも退職金が支払われないのは違法? 会社の退職金支払い義務があるのかどうかについて見ていきましょう。法律上の義務がある場合には、退職金が支払われないのは違法です。 会社に退職金を支払う義務はない 労働基準法や関係法令には、会社の退職金支払い義務についての記載がないため、本来、会社に退職金を支払う義務はありません。 従業員の福利厚生などを目的に、多くの会社には退職金規定がありますが、会社が義務で設けたものではなく任意に決めただけです。 ただし、退職金には「賃金後払い的性格」と「功労報償的性格」の2種類があります。功労報償的性格とは長年勤務した者への慰労金という意味です。 退職金が「賃金後払い的性格」を有するものならば、労働基準法の「賃金」に該当するため支払い義務が発生します。 就業規則に書いてあれば退職金支払いは義務となる? 退職金が「賃金後払い的性格」を有していると判断されるのは主に次の2つのケースです。 退職金が賃金後払い的性格を有する場合 就業規則や退職金規定に退職金の支払いが明記されている 退職金を支払うという労使慣行が存在する 就業規則に退職金の支払いが明記されているケース 就業規則に退職金の支払いが記載されていれば、支給要件を満たす退職者に会社は退職金を支払う義務があります。 就業規則は賃金や労働時間などの労働条件を定めたもので、会社も従業員も就業規則を遵守する義務があるからです。 また、就業規則に記載することで、退職金の「賃金後払い的性格」が強くなります。 退職金を支払うという労使慣行が存在すると認められるケース 就業規則に記載がない場合でも、退職金を支払うという労使慣行が存在すると認められれば、会社に退職金支払い義務が生じます。労使慣行が存在すると認められるには、次の要件が必要です。 労使慣行が存在すると認められる要件 期間にわたって退職金の支払いが反復継続している これまで、退職金の支払いに対し会社も従業員も異議を唱えていない 会社も従業員も、退職金の支払いを一定のルールとして認識している 就業規則に記載がなく、退職金の有無を社長がその都度判断しているようなケースでは、労使慣行が存在するとは言えないでしょう。 解雇されたら退職金は支払われない? 会社から解雇された場合、退職金は支払われないのでしょうか。 解雇の種類によって、退職金の有無は異なります。解雇は大きく「整理解雇」「普通解雇」「懲戒解雇」の3つに分類されます。 解雇の種類 整理解雇会社の経営不振などを理由に解雇せざるを得ない場合、人員削減のために行う解雇 普通解雇病気やけがによる長期の欠勤など、従業員の個人的な状況を理由とする解雇 懲戒解雇会社の規律や秩序に反した従業員に対して懲戒として行なわれる解雇 解雇されても退職金が支払われるケース 整理解雇や普通解雇の場合、退職金は支払われます。 整理解雇は従業員には責任のない会社都合によるものなので、退職金の不払いは認められません。逆に、会社都合のため、退職金が割増されるケースがあるくらいです。 また、普通解雇は従業員の個人的な状況が原因ですが、やむを得ない事情があるのが一般的で、退職金を不払いにするほどの懲罰的な措置は妥当とは言えません。 懲戒解雇されると退職金は支払われない? 懲戒解雇の場合は、退職金が支払われないケースもあります。 懲戒処分には「戒告」「譴責(けんせき)」「減給」「出勤停止」「降格」「諭旨解雇」「懲戒解雇」などがあり、最も重い処分が懲戒解雇です。 ただし、労働基準法第89条では、「制裁の定めをする場合はその種類及び程度に関する事項」を就業規則に記載することを義務付けています。 就業規則に「懲戒解雇の場合は退職金を支払わない」旨の記載がない場合、会社は懲戒解雇した社員に退職金を支払わなければなりません。 未払い退職金の請求方法は? 未払い退職金の請求には証拠が必要 未払い退職金を請求するときに重要なのが、退職金が未払いであることを証明する証拠です。主な証拠は次の4つです。 退職金請求に有効な証拠 就業規則、退職金規定 労働契約書、労働条件通知書 離職票(解雇の場合は解雇通知書・解雇理由証明書) 給与明細、出勤簿 退職金規定のない会社で「退職金を支払うという労使慣行が存在する」ことを理由に会社の退職金支払い義務を追求するには、既に退職した人のほとんどが退職金をもらっていたという事実を明らかにしなければなりません。 退職者の協力を得るか、弁護士を通じて会社に情報開示を求める方法などが考えられます。 請求方法①内容証明郵便を送る 請求方法の1つ目は、内容証明郵便を使って会社に未払い退職金の請求をすることです。 内容証明郵便には、請求内容と会社に請求したという事実を証明したり、時効を止めることができたりするメリットがあります。 裁判等で争うことになれば、内容証明郵便は請求の事実を証明する証拠となります。さらに、退職金の時効(5年)が近い場合は、時効を6か月間止める効果もあります。 また、内容証明郵便を受け取った会社が、退職者が訴訟を起こすリスクを想定して、真摯に対応するケースもあります。 請求方法②裁判外紛争解決手続(ADR)を利用する 請求方法の2つ目は、裁判外紛争解決手続(ADR)を利用することです。 ADRとは、時間と費用のかかる訴訟手続を避け、民事上の紛争を解決するために公正な第三者が関与して解決を図る手続きです。 裁判所が行うADRには民事調停や労働審判などがあります。 民事調停とは、裁判官と調停委員2名の調停委員会が仲介し当事者間の話し合いにより解決を図る手続きです。 また、弁護士会が運営する紛争解決センターなど、民間のADRもあります。 ADRは訴訟と比較して手続きが簡単で費用や時間がかからないというメリットがある一方、調停で合意が得られなかったり審判に不服申立てなどがあれば、退職金は支払われないままとなるデメリットもあります。 まとめ 未払い退職金の請求は、未払いを明らかにする証拠集めがポイントです。 就業規則に記載があれば会社に退職金支払い義務があることを証明できます。 会社と直接交渉しても退職金が支払われないときは、弁護士や労働基準監督署など、ご紹介した相談窓口に相談してみましょう。 --- ### みなし残業とは?違法になるケースや違法な残業への対処法 - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-03-29 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6879 - Categories: 残業代請求 みなし残業は、あらかじめ決められた一定時間の残業代を、給与に含めて支払う制度です。法律によって比較的厳しい導入の条件が定められているため、違法の疑いを持った場合には弁護士などの専門家に相談しましょう。 「みなし残業とはどういった制度?」「みなし残業なしだったら残業代は支払われる?」 みなし残業(固定残業)とは、実際の残業時間にかからわず、あらかじめ決められた一定時間の残業代を給与に含めて支払う制度です。 しかし、みなし残業は、違法になるケースがあります。違法なみなし残業が発生している場合、労働者は会社に対して未払い残業代の請求を行うことができます。 この記事では、みなし残業とは何かを解説し、みなし残業が違法になる場合や違法な労働条件への対処法についてもご紹介します。 そもそもみなし残業とはどういう制度? みなし残業とは みなし残業(固定残業)とは、あらかじめ決められた一定時間の残業代を、給与に含めて支払う制度です。 通常、使用者(会社)が従業員に残業をさせる場合には、残業代を支払わなければなりません。 しかし、みなし残業(固定残業)制度を導入していれば、一定時間の残業代を給与に含めて支払っているため、残業が発生したとしても残業代を支払う必要がなくなります。 もっとも、あらかじめ決められた一定の残業時間を超えた場合には、超過した分の残業代を支払うことが必要です。 みなし残業(固定残業)制度の例は? みなし残業(固定残業)制度の典型例は、「月給24万円(5万円の固定残業代含む)」「月30時間分の残業代として固定残業手当5万円を支払う」といったものです。 みなし残業制度がとられている場合、設定された金額や時間数までは残業代の金額が変わりません。 上記の例の場合、5万円がみなし残業(固定残業)手当として定められているため、月に1時間しか残業しなくても30時間ちょうど残業しても、5万円が給料に含めて支払われることになります。 みなし残業が導入されるメリットは? みなし残業が会社に導入されるのは、企業にとっていくつかのメリットがあるからです。 具体的には、「残業代計算が不要になる」「人件費が把握しやすくなる」ことが挙げられます。 残業代の計算は複雑です。毎月の残業代を計算する際に、従業員が多い企業では残業代計算に時間を割いてしまうことも考えられます。 みなし残業制にすることで、残業代を計算する業務を減らすことができるうえ、給与の上り幅を想定できることで人件費が把握しやすくなるのです。 なお、従業員にとっては、実際の残業時間が少なくても、あらかじめ決められた残業代を受け取ることができることがメリットといえます。 みなし残業(みなし労働時間制)の3種類 みなし残業は、すべての職種で採用できる「固定残業制」のほかに、一部の職種しか使用できない「みなし労働時間制」と呼ばれるものがあります。 「みなし労働時間制」には、実際の労働時間に関係なく、一定時間働いたことになる制度が3種類あります。みなし労働時間制の3種類を解説します。 事業場外みなし労働時間制 事業場外みなし労働時間制は、社外での業務が中心となる職種で、「実際の労働時間を算定することが難しい」場合に使用される制度です(労働基準法38条の2第1項)。 社外での仕事が多い飛び込み営業職やバスガイドなどに適用されます。 みなされる時間は、基本的には所定労働時間とされますが、一定の条件をクリアすればそれより長い時間とすることもできます。 たとえば、始業9時・終業18時・休憩12時〜13時の場合、所定労働時間は8時間です。 この場合には、ある日、仮に21時まで仕事をして実労働時間が11時間となったとしても、所定労働時間である8時間とみなされるということです。 反対に、16時までに仕事を終えてしまい、そこから先は働いていなかったとしても、8時間働いたとみなされます。 専門業務型裁量労働制 専門業務型裁量労働制は、専門的な知識や経験が必要とされる業務に従事する労働者を対象とした制度です。 この制度は、業務の性質上、業務の手段や方法、時間配分などを大幅に労働者の裁量に委ねたほうが効率的に業務を進められる場合に使用されます。 新聞社の記者や弁護士など、法律で定められた19職種に適用されます。 企画業務型裁量労働制 企画業務型裁量労働制は、事業運営上の重要な決定に係る企画、立案、調査、分析などの業務に従事する労働者を対象とした制度です。 対象業務は、経営企画や経理、広報などがあげられます。 みなし残業が違法となる場合 みなし残業は、法律で定められているものもありますが、状況によっては違法となります。ここでは、みなし残業が違法となるケースを解説します。 みなし残業が違法となる場合 労働基準法では、実際の残業時間に応じて残業代を計算して支払うことが原則とされています。 みなし残業制はこの原則に従わず例外的であるため、導入・運用には下記の条件が設けられています。 みなし残業制を導入するための条件 割増賃金(残業代)に該当する部分が他の賃金から区別されていること 何時間分の割増賃金(残業代)をカバーしているのか明示されていること 超過分については差額を支払うこと 大まかに言えば、これらが守られていない場合にみなし残業代は違法となります。 たとえば、雇用契約書に「月給30万円(みなし残業代含む)」と記載するだけでは不十分です。みなし残業がいくらなのか区別され、何時間分の残業代をカバーしているのか明示されていなければなりません。 また、悪質な企業では、みなし残業代を超えて残業をさせているにもかかわらず、「残業代はみなし残業代に含まれている」と、超過した分の残業を支払わないケースがあります。 一定時間を超えて残業しているのにもかかわらず、超過分の残業代が支払われていないケースは違法です。 みなし残業で確認すべきポイント 上記の条件は法律に明記されているわけではなく、判例などによって形作られてきたものです。 そのため、条件を全てクリアしたとしても、場合によっては違法となることもあります。 みなし残業を導入する条件をクリアしていても、以下のようなケースでは違法となる可能性もあります。 みなし残業が違法となる可能性があるケース 1か月45時間を超える時間数を設定している 就業規則等にみなし残業が明記されていない みなし残業を含まなければ最低賃金を割っている ご自身の残業が違法となるかどうか分からない方は、一度弁護士に相談しましょう。 違法なみなし残業への対処法 まず必要なことは、自分に何らかのみなし残業制が適用されているか、適用されているみなし残業の内容を確認することです。 みなし残業制が適用されているかどうかを確認する方法は、以下の通りです。 労働条件の確認方法 雇用契約書をみる タイムカードと給与明細を比較する 人事担当に尋ねる 「みなし残業(固定残業)制」は、通常、雇用契約書をみれば確認することができます。雇用契約書が手元にない場合は、就業規則や給与明細でもわかるでしょう。 一方、「みなし労働時間制」は、雇用契約書や就業規則をみてもわからないことがあります。 雇用契約書に記載がないこともあり、「みなし労働時間制」が一般的な制度として就業規則に記載されていることが多く、実際に自分に適用されているかまではわからないからです。 そのような場合には、タイムカードなどの記録と給与明細の残業時間・残業代の記載を突き合わせる、人事担当に尋ねてみるといった手法で確認することも検討する必要があります。 みなし残業で未払い残業代が発生しているときは? 手順(1)|証拠を収集、未払い残業代を計算 みなし残業で未払い残業代が発生している場合は、実際に支払われている残業代と超過分の差額を計算しましょう。 タイムカードや勤怠システムなどの証拠から正確な残業時間を確認し、実際に支払われなければならない残業代を計算してみてください。 残業代の一般的な計算方法は次の通りです。 残業代の計算方法 残業代=1時間あたりの賃金✕割増賃金率✕残業時間 「1時間あたりの賃金」は賃金が月給制の場合、「月収÷1か月の平均所定労働時間」で計算します。たとえば、月給24万円、平均所定労働時間が月160時間なら、「1時間あたりの賃金」は1,500円(=24万円÷160時間)です。 割増賃金率は法定労働時間を超える残業に対する割増で、原則25%(夜間や休日労働に対する割増率もある)と規定されています。たとえば、1時間あたりの賃金が1,500円の場合、残業1時間に対する残業代は1,875円(=1,500円✕1. 25)です。 関連記事 ・残業代請求で必要となる証拠を徹底解説!証拠がない場合の対処法は? ・残業代の正しい計算方法とは?基本から応用的な計算まで徹底解説! 手順(2)|会社と直接交渉 未払い残業代を計算したら、残業代未払いの証拠を持参して会社に残業代が適切に支払われていないことを伝えましょう。伝える相手は直属上司や人事や総務の担当者などです。 担当者が計算ミスしていて会社がすぐに支払ってくれれば問題は解決です。会社がすぐにミスを認めない場合も、証拠を提示しながらできるだけ穏便に話を進めましょう。 上司などとの人間関係を悪くしないように、客観的事実に基づいて丁寧に説明する姿勢が重要です。 手順(3)|内容証明郵便を郵送 会社と直接交渉しても残業代を支払ってもらえなければ、証拠を残すために内容証明郵便を使って残業代を請求しましょう。 残業代の時効は3年ですが、請求すると時効の完成を一時的に阻止する効果もあります。 手順(4)|弁護士に相談 これまで説明した方法で解決できない場合は、専門家である弁護士などに相談しましょう。 弁護士に相談すれば、対応方法や証拠の収集のアドバイスをもらえるだけでなく、次の対応が期待できます。 弁護士に期待できること 弁護士が会社と交渉する 「支払督促」「少額訴訟」「労働審判」など民事訴訟より簡易な裁判制度を利用して未払い残業代の請求を行う 民事訴訟を起こす など 弁護士は依頼者の意向に応じて適切な方法をとってくれるので、安心して会社と争うことができます。 関連記事 ・残業代請求を弁護士に依頼する場合の費用相場は?弁護士に依頼するメリット5選! まとめ この記事では、みなし残業の制度について詳しく解説しました。 ご自身が働いている企業のみなし残業について疑いを持った場合は、弁護士への相談をおすすめします。 みなし残業制度そのものは違法とは限りませんが、状況によっては違法となる可能性があります。超過分が支払われないことは違法であるため、労働者の権利として残業代を請求可能です。 無料相談を受け付けている弁護士事務所もあるので、まずは相談してみてはいかがでしょうか。 --- ### 残業代請求をしたら報復される?予想される行為と対策を弁護士が解説 - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-06-05 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6873 - Categories: 残業代請求 残業代請求で報復を受けるかもしれないと不安になっている方に向けて残業代請求によって予想される報復行為や、対処法について解説します。 「未払いの残業代を請求したいけど、会社から報復されるのが怖い」「残業代請求したいけど、お世話になった会社だし気まずい... 」 残業代を請求したいと思っても、請求をためらってしまう気持ちもよくわかります。 しかし、残業代を請求することは労働者の権利です。残業代を請求することは当然の行為であるため、本来気まずさを感じる必要はありません。 万が一、残業代請求によって不利益な扱いを受けても、残業代請求を弁護士に依頼すれば、報復に対してスムーズに対処できます。 そこで今回は、残業代請求によって予想される報復行為と、対処法について解説します。 在職中に残業代請求をしたときに予想される報復 いじめ、嫌がらせ、パワハラ 残業代を請求したことで、上司や同僚から、いじめや嫌がらせを受けたりパワハラなどのハラスメントの被害を受けたりするおそれがあります。 もちろん、労働者が残業代を請求したことを理由に、「無視などの行為を働く」「雑用を押し付ける」ことは不法行為であるといえます。 このようないじめやパワハラを放置した会社には、安全配慮義務違反として損害賠償を請求できるでしょう。 左遷や降格といった報復人事 残業代請求をおこなうことで、地方や閑散とした部署に左遷させられたり、降格されて給与を下げられたりするおそれがあります。 会社には人事権が認められていますが、こういった不当な目的や理由に基づく人事異動は、権利の濫用であるとして無効であると考えられます。 不当な人事異動に該当するケースを詳しく知りたい方は、『不当な人事異動を受けた!不当とされるケースや相談先を解説』の記事をご覧ください。 懲戒処分や報復目的の解雇 残業代請求をきっかけに、減給などの懲戒処分を受けたり、報復目的で解雇されたりするおそれがあります。 しかし、懲戒処分や解雇には客観的かつ合理的な理由があり、社会通念上相当でない限り、法的な効力は認められないことになっています。 したがって、報復によって懲戒処分を受けたり解雇されたりしたという場合でも、無効であると考えられます。 損害賠償請求 会社に対する残業代請求を取り下げさせるために、損害賠償を請求されることがあるかもしれません。 しかし、法的理由がなければ請求は認められないため、損害賠償を請求されても無効であるといえます。 在職中に残業代請求するメリットはある? (1)残業をしていた証拠を収集しやすい 在職中は退職後に比べて、勤怠管理システムやタイムカード、メールなどの記録が残っているため、客観的な証拠を集めやすいというメリットがあります。 また、上司や同僚の証言なども得やすくなります。 関連記事 ・残業代請求で必要となる証拠を徹底解説!証拠がない場合の対処法は? (2)労働条件の改善が期待できる 会社が従業員の労働時間を正しく把握していないことが原因で残業代未払いになっているケースでは、請求をすることによって、きちんと残業代がもらえるようになる可能性があります。 故意的に支払っていない悪質な会社ばかりではないため、請求を機に労働条件の改善が見込める会社もあるでしょう。 (3)時効の完成を阻止できる 残業代請求の時効は3年です。退職後に残業代請求をしようと考えていると、時効が完成し、請求しても時効を理由に受け取れる残業代が減ってしまうおそれがあります。 在職中に残業代請求することで、時効の完成を阻止して、働いた分の残業代を請求できます。 関連記事 ・残業代請求の時効は3年!将来は5年に?時効中止や請求の方法を解説 気まずい場合は退職後に請求|証拠改ざんリスクに注意 残業代を請求したいものの、どうしても気まずいといった場合は、退職後に請求することも検討しましょう。 ただし、退職後の場合は、在職中よりも証拠の収集が難しくなるケースが多いです。 証拠がない場合には、会社に対して資料の開示請求もできますが、資料がないと言われてしまったり、証拠を改ざんされてしまったりするリスクもあります。 そのため、在職中に残業をしていた証拠を収集し、退職後すぐに請求するといいでしょう。 関連記事 ・残業代請求は退職後でも可能!注意点や退職後の証拠の集め方を解説 退職後に残業代請求をしたときに予想される報復 少額しか支払われない 退職後に残業代請求をしたときに、本来支払われるべき残業代よりも少ない額しか支払われないといったケースが考えられます。 こういった場合は、相手側の要求を断ったり、弁護士などに依頼して徹底的に請求したりといった対応策が挙げられます。 報復として反対に訴えられる 「残業代請求の報復で逆に訴えられてしまうのではないか」と考える方もいるかもしれません。 しかし、基本的には訴えられることはありません。 残業代請求は労働者の正当な権利であり、報復的な訴訟はそれ自体が不法行為としてみなされ損害賠償の対象となりえます。 転職先に噂を流される 残業代請求をおこなっても、基本的には転職先に噂を流されることはありません。 会社が特定の社員に残業代請求をされたと転職先に噂を流すことは、個人情報保護法に違反します。 また、報復を目的として悪い噂を流されたとしても、不法行為として損害賠償の対象となりえます。 残業代請求により報復を受けた場合の対処法 「残業代請求を理由に降格になった」「残業代について少額しか支払ってもらえなかった」など、会社から報復ともとれる対応を受けた場合には、以下のような対処法をとることが重要です。 報復を受けた場合の対処法 報復されたという証拠を残す 労働基準監督署などの専門機関に相談する 弁護士に相談する 報復を受けた証拠を残す 残業代請求で報復を受けた場合には、証拠を残しておきましょう。 たとえば、以下のような証拠が重要です。 報復を受けたという証拠の例 上司などからの叱責や暴言の録音・日記 「解雇通知書」など報復の内容が書かれてあるメール 異動や減給などが記された書面 など 労働基準監督署・労働局などの専門機関に相談する もし残業代請求で報復を受けた場合には、労働問題を扱う労働基準監督署や労働局などの専門機関に相談することも重要です。 労働基準監督署は、労働に関する法律を会社が遵守しているのかをチェックし、指導票や是正勧告書の交付によって、働く人の権利を守る公的機関です。あらゆる労働問題を相談できます。 また、労働局は、労働トラブルに悩む労働者に対して、広い範囲で助言や指導をおこなっています。 関連記事 ・労働基準監督署に相談できる内容とは?メリット・デメリットから徹底解説・労働局とは?相談できることと利用するメリット・注意点を解説 弁護士に相談する 残業代請求で報復を受けた場合には、弁護士に相談することをおすすめします。弁護士に依頼すれば、以下のようなメリットがあります。 残業代請求を弁護士に依頼するメリット 適切な残業代の計算や、有効的な証拠集めをしてくれる 報復されたとしても適切に対応できる 労働審判や訴訟を起こす際に手続きを任せられる 会社と代理で交渉してくれる 残業代請求を弁護士に相談するメリットは『残業代請求を弁護士に依頼する場合の費用相場は?弁護士に依頼するメリット5選!』の記事で詳しく解説しています。 まとめ 残業代請求をしたことで報復を受ける可能性はゼロではありませんが、報復を受けたとしても、弁護士に依頼すれば、残業代請求の交渉から、報復を受けた際の対応までを安心して任せられます。 残業代請求を検討されている方は、証拠を集めて弁護士に依頼することをおすすめします。 無料相談を受け付けている弁護士事務所もありますので、まずは弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。 --- ### 残業は1分単位での計算が原則!残業代の計算方法も解説 - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-03-29 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6874 - Categories: 残業代請求 残業は1分単位で計算しなくてはいけません!残業時間の計算方法について法的な仕組みを解説しています。会社は残業を正確に計算する義務を負います。残業代の計算方法のほか、1分単位で記録されていない場合の対処法も網羅しています。 「残業は15分単位で計算するから、毎日15分未満は切り捨てる」といった規則を設けている会社があります。 たとえ数分の残業であったとしても、その分の賃金が支払われないのは納得いかないですよね。 法律上、残業は1分単位で計算することが原則であり、会社が独自に設けている規則は違法となる可能性が非常に高いです。 そこで、この記事では、残業代が切り捨てられることでお悩みの方に向けて、残業代を1分単位で計算しなければならない理由や残業代の計算方法について解説します。 残業は1分単位で計算しなければならない理由 1分単位で残業を計算しなければ残業代の未払いが起こる 労働基準法24条1項には、使用者(会社)は労働者に賃金の全額を支払わなければならないと規定されています。 残業代も賃金の一部であるため、1分単位で支払わなければならないことになります。 たとえば、「1日の残業時間は15分単位で記録し、それ未満は切り捨てる」というルールでは、最大14分の残業代未払い可能性が生じます。 したがって、毎日の残業時間は1分でも切り捨てることはできません。日々の残業は1分単位で残業代計算に反映させなければならないということです。 会社には正確に残業を計算する義務がある 残業時間の計算がおろそかになると、長時間労働による健康被害や後にみる残業代の未払いなどの問題に発展する可能性が高くなります。 そこで、法律上、会社には「労働者1人1人の実労働時間の把握」が義務付けられています(労働安全衛生法66条の8の3)。 把握の方法も、「タイムカードによる記録・パソコンの使用時間の記録等の客観的な方法その他適切な方法」と定められています(労働安全衛生規則52条の7の3)。 実労働時間には、時間外労働(残業)も含まれるため、会社は従業員の残業時間を適正に把握しなければならないことになります。 残業を1分単位で計算しなければ違法となる可能性が高い 法律には実労働時間の把握が義務付けられてはいますが、厳密に言えば、1分単位で計算しなければならないとは書かれていません。 ただし、会社が1分単位で残業時間を計算しなければ、違法となる可能性が高いです。 定められた残業時間の上限を超えているか判断するためには、従業員の労働時間の正確な把握は必要不可欠だからです。 使用者が労働者を働かせられる時間数には上限が定められており、この上限を1分でも超えれば、会社に罰則が与えられます。労働時間の上限は以下の通りです。 労働時間の上限 単月の時間外労働・休日労働時間数100時間未満 2〜6か月のいずれの時間外労働・休日労働時間数も平均80時間以内 36協定の締結の有無、締結した36協定の内容などによっては、これよりも短い時間の上限が定められている場合もあります。 これら上限を超えて労働者を働かせた場合には、「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金」という罰則が設けられています(労働基準法119条1号)。 また、月間80時間を超えた残業がある場合は、会社はその従業員に対して医師による面接指導を受けさせなければなりません(労働安全衛生法66条の8第1項など)。 このように定められた残業時間の上限を超えているか判断するためには、従業員の労働時間の正確な把握が欠かせません。 残業の種類と計算方法 残業を1分単位で計算することは法律上の要求です。 残業代の種類と、残業代の計算方法についてわかりやすく解説します。 法律上の残業は2種類ある 一般的に「残業」というと、定時以外の労働、つまり「始業時刻前や終業時刻後に働くことをイメージすると思います。 法律に基づき正確に説明すると、残業は大きく分けて、以下の2種類に分類できます。 2種類の残業 所定外労働 時間外労働 所定外労働とは、企業が定めた所定労働時間を超えた労働のことです。 所定労働時間とは、始業時刻から終業時刻までの時間から休憩時間を除いた時間のことをいいます。 時間外労働とは、法定労働時間を超えた労働を指します。 法定労働時間とは、法律で定められた1日及び1週間に働かせることのできる時間の上限であり、1日8時間・1週40時間と決められています(労働基準法32条)。 つまり、1日8時間・1週40時間を超えて働いた場合、その超えた分が時間外労働に当たるというわけです。 残業代は日々の残業をベースに計算する 普段支払われている賃金は、所定労働時間通りに働いたことに対して支払われています。 そのため、所定労働時間を超えて働いた分には追加の賃金が支払われなければなりません。この追加の賃金のことを一般的に「残業代」と呼んでいます。 また、時間外労働には、割増賃金を支払わなければなりません(労働基準法37条1項)。先程のように、時間外労働も残業ですから、割増賃金も残業代の中に含まれます。 したがって、残業代の中には、通常の賃金と同様に支払われる部分と、割増賃金として支払われる部分があるということです。 ただし、どちらも「追加で働いた時間(残業時間)に対して支払われる」ことは共通しています。 つまり、日々の残業時間をもとに残業代は計算されるということです。 関連記事 ・残業代の正しい計算方法とは?基本から応用的な計算まで徹底解説! 1日の残業を1分単位で計算しなければ残業代が正しく計算できない 所定外労働時間・時間外労働時間の計算は、「何時間働いたか(総労働時間)」を単純にカウントするだけでは行えません。 なぜなら、総労働時間のうち、「所定労働時間を超えて働いた部分」と「法定労働時間を超えて働いた部分」を区別して、特定しなければならないからです。 残業時間の計算は「日々何時から何時まで働いたか」の記録をベースに、その記録を、それぞれの所定労働時間や法定労働時間に当てはめて行われます。 具体的な事例を2つ挙げて、解説します。 始業が9時、終業が18時(休憩1時間)の場合 この例だと、所定労働時間は8時間ですが、19時まで働けば、法定労働時間である1日8時間を超えて1時間働いていることになるので、時間外労働が1時間ということになります。 時間外労働には、割増賃金が支払われます。 始業が9時、終業が17時(休憩1時間)の場合 この例だと、所定労働時間は7時間ですが、18時まで働いた場合、1時間の所定外労働となります。 しかし、1日8時間を超えないため、時間外労働とはなりません。割増賃金は支払われませんが、1時間分の賃金が支払われます。 上記の2つの事例のように、1か月に1回給料日がある一般的なパターンの場合、この毎日の残業時間を1か月分合計して残業代を計算します。 したがって、毎日の実労働時間の記録が1分単位で正確に記録されていなければ、残業代の計算も間違ったものとなるのです。 残業代は1分単位で請求できる? 【原則】1分単位で請求できる 残業代は、原則として、1分単位で請求することができます。 従業員は、残業代が支払われなかったり、一部が未払いになっていたりするケースでは、会社に未払いの残業代を請求できます。 なお、残業時間を切り捨てるのではなく、切り上げることはできます。5分の残業だったとしても、15分として扱うことは問題ありません。 【例外】残業代を1分単位で支払わなくていいケース 残業代は、原則1分単位で支払う必要がありますが、例外もあります。 日々の残業時間をまとめた1か月の残業時間については、「30分以上を1時間に切り上げ、30分未満を切り捨てる」という扱いが認められています。 これは、残業計算事務を簡略化するために、認められたものです。 あくまで1か月についてですので、1日の残業について同様の扱いはできません。1日分は1分単位で残業時間を計算する必要があります。 残業が1分単位で計算されていない場合の対処法 以上みてきたように、残業は1分単位で計算しなければ、さまざまな法律に違反する可能性があります。 ただ、実際にはそうなっていないことも多いため、最後に残業代の支払いに不備がある場合の対処法を解説します。 企業の人事担当に残業の扱いについて確認する 残業代が正確に計算されていないと思ったら、企業の人事担当に直接確認してみましょう。 残業の計算が実際にどのように行われているのか、日々勤務するだけではわかりにくい場合があります。 タイムカードなど勤怠を記録している資料を確認しても、毎日の出退勤時間がわかるだけで、残業時間が切り捨てられているかどうかといったことまではわかりません。 もっとも、給与明細には1か月分の残業時間が記載されていることが一般的なので、タイムカード等の記録をもとに自分で1か月分の残業時間を計算して照合することはできます。 それによりある程度残業の計算方法がわかるかもしれませんが、給与計算を行なっている部門に確認する方が手間もかからず正確です。 人事担当であれば基本的には知っていると思いますので、確認できる場合は尋ねてみましょう。 残業代が1分単位で支払われない方は弁護士に相談! 残業の細かな計算方法を尋ねることには、「印象が悪くなる」とためらうこともあると思います。 あるいは、「人事に相談しても難しいことを言われて丸め込まれてしまう」という不安もあるかもしれません。 社内で確認できないときには、弁護士への相談を検討しましょう。 法律の専門家である弁護士ならば、自分の残業代を正確に計算することができ、残業代の未払いがないか適切に判断してくれます。 また、残業代の未払いがあった際には、会社への請求を依頼することが可能です。 まずは弁護士事務所の無料相談などを利用して、会社との関係を含め、今後のアクションについてアドバイスをもらうことをおすすめします。 関連記事 ・残業代請求を弁護士に依頼する場合の費用相場は?弁護士に依頼するメリット5選! --- ### 退職後に給料が振り込まれない!未払い給料の請求方法や期限を解説 - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-05-28 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6875 - Categories: 給料未払い 退職後に給料が支払われない方に向けて未退職後の未払い給料について解説。未払い給料は、退職後でも請求できます。未払い給料の時効は3年であるため、早めに請求することがおすすめです。 「退職後に未払いの給料を請求できる?」 「未払い給料の請求期限は?」 退職後に最後の給料が振り込まれているか確認すると、給料が支払われていなかったり、給料の額が少なかったりすることがあります。 退職したからといって、本来貰えたはずの給料が受け取れないのは納得できませんよね。 退職後に給料が振り込まれない場合には、未払い給料を会社に請求できます。 ただし、未払い給料の請求には時効があるため、できるだけ早く請求することが重要です。 この記事では、退職後に給料が振り込まれないことでお困りの方に向け、未払い給料の請求方法、期限などを詳しく解説します。 退職後に給料が振り込まれない!請求できる? 退職後に給料が振り込まれない場合、退職後でも未払い給料の請求は可能です。 ただし、未払い給料の全額を回収したい場合には、時効を迎える前に請求する必要があります。 退職後の給料未払いは違法 退職後であっても、会社が未払い給料を支払わないことは違法です。 会社には、労働者へ給料を支払う義務があります(労働契約法6条)。あらかじめ決められた給料日に支払わない会社は労働基準法違反です(労働基準法11条、24条)。 給料を支払っていない会社には、労働基準法違反として30万円以下の罰金が科されます(労働基準法120条)。 会社が給料を支払う義務を負うのは、雇用契約期間中だけではありません。給料は過去に行った労務に対して支払われるものであり、支払う義務は雇用契約解消後もそのままです。 つまり、退職後でも未払いの給料の請求は可能ということです。 退職後の未払い給料の時効は3年 退職後も未払い給料の請求は可能ですが、時効が3年であることに注意しましょう。 未払い給料の時効は、退職後からカウントが始まるわけではありません。時効期間のカウントが開始されるのは、本来賃金が支払われる予定だった給料日の翌日からです。 民法には「初日不算入の原則」があり、起算点はその翌日となります。 たとえば、月末締め、翌月20日払いの場合は、「給料日の翌日」である21日から時効期間がカウントされます。 時間が経つにつれて、過去の未払い給料に対する時効が成立し、請求できなくなっていく仕組みになっています。 退職後に未払い給料を請求する流れ 退職後に未払い給料を請求する流れは、以下の通りです。 退職後に未払い給料を請求する流れ 証拠から未払い給料の額を計算 メールやLINE・内容証明郵便などで請求 労働基準監督署に相談する 弁護士に相談して法的手続きをとる 未払い給料を請求する方法については、『未払いの給料を請求する方法は?流れと注意点を弁護士が解説』の記事でさらに詳しく解説しています。併せてご覧いただくと理解が深まるでしょう。 証拠から未払い給料の額を計算 未払い給料を請求するために、証拠から未払い給料の額を計算します。 未払い給料を請求するためには、給料が未払いであることを証拠をもとに証明する必要があるからです。 給料が未払いであることを証明する証拠には、給与明細書、源泉徴収票、給与口座の履歴などがあります。 証拠を収集できたら、未払い給料の額を計算してください。 未払い給料の計算方法 締め日と退職日が一緒の場合支払い額 = 総支給額(基本給+手当) - 控除額(社会保険料+税金+会社独自のもの) 締め日前に退職する場合基本給を日割りして計算。固定残業代がある場合には就業規則に応じて日割り・全額が支払われる 証拠がない場合の対処法などを詳しく知りたい方は、『給料未払いの証拠がない!対処法や請求をする際の手順を解説!』をご覧ください。 メールやLINE・内容証明郵便などで請求 未払い給料の計算を終えたら、会社に未払い給料を請求しましょう。 未払いの給料の請求は、直接会社に出向くか、メールやLINEでできます。労働者に給料を支払うことは会社の義務なので、遵法意識がある会社であれば、会社で給料の未払い額を計算し支払ってもらえます。 会社へ請求しても給料を支払ってもらえない場合には、内容証明郵便で未払い給料の請求を行いましょう。 内容証明郵便であれば、会社に未払い給料を請求した事実を証拠として残せるメリットがあります。 参考:日本郵便「内容証明」 会社側としては、内容証明郵便で請求されると無視しづらくなるため、未払い給料が受け取れる可能性が高くなります。 労働基準監督署に相談する 口頭やメール、LINEでの請求が無視され、内容証明郵便による請求でも未払い給料を受け取れなかった場合には、労働基準監督署へ相談しましょう。 労働基準監督署の総合労働相談コーナーでは、給料の未払いだけでなく、解雇・労働条件・募集・採用・いじめ・嫌がらせ・セクシュアルハラスメントなど、労働問題に関するさまざまな分野の相談が可能です。 ただし、労働基準監督署は、会社に対して未払い給料を支払うように強制することはできません。 法的な専門家の立場から、どうすべきかアドバイスが受けられるだけです。相談しても未払い給料が受け取れない可能性があることに注意しましょう。 弁護士に相談して法的手続きをとる 労働基準監督署に相談しても、事態が改善されない場合は弁護士に相談しましょう。 弁護士に相談・依頼すれば、未払い給料の対処法についてアドバイスをもらえるだけではなく、弁護士から請求することで会社にプレッシャーを与えることができます。 また、会社との交渉がうまくいかずにトラブルに発展した場合でも、弁護士であれば、労働審判・訴訟などの法的手続きにスムーズに移行することが可能です。 弁護士への相談にあたって、費用相場や流れ、メリットなどを知りたい方は『未払い給料の請求を弁護士に依頼するメリットと費用|請求手順も解説』の記事をご覧ください。 会社が倒産していた場合も請求可能? 会社が倒産している場合や、実質的な倒産状態にある場合には、「未払賃金立替払制度」が利用できます。 未払賃金立替払制度とは、企業が倒産したことにより、給料が支払われないまま退職した労働者に対して、未払い給料の一部を立替払いする制度です。 退職してしまった会社が倒産してしまった方に向けて、未払賃金立替払制度を詳しく解説します。 未払賃金立替払制度の要件 未払賃金立替払制度を利用するための要件は、会社側と労働者側の両方にあります。 会社側の要件は以下の2つのいずれかです。 会社側の要件 勤務していた会社が1年以上事業を行っており、法律上の倒産状態にある場合 事業活動を行っておらず、支払い能力がない事実上の倒産状態にある場合 法律上の倒産とは、破産、特別清算、民事再生、会社更生のいずれかです。破産管財人等に倒産の事実を証明してもらう必要があります。 労働者側の要件は、以下の通りです。 労働者側の要件 倒産を裁判所に申し立てた日、あるいは事実上の倒産を労働基準監督署へ認定申請した日の6か月前の日から2年の間に退職したこと 立替払いされる給料の対象・割合は? 未払賃金立替払制度の対象となる未払い給料は、退職した日の6か月前から請求する前日までに支払日が来ているぶんとなります。 未払賃金立替払制度で受け取れるのは、上記の未払い給料の8割です。ただし、年齢に応じて上限が定められており、88万円~296万円の範囲が上限となります。 また、倒産寸前の会社で給料の未払いが続いている場合は、請求することで給料が受け取れる可能性があります。 労働者の給料は、他の一般債権者より優先して受け取る権利があります(民法第308条)。 ただし、抵当権や税金の方が給料より優先されるため、会社に給料を支払う資金が残っていない可能性もあります。 関連記事 ・未払賃金立替制度はいつもらえる?利用条件や手続きの流れを解説 その他給料未払いの退職についてよくある疑問 上記の他、未払い給料と退職についてお悩みの方がよく抱いている疑問について解説します。 ばっくれた場合にも未払い給料は請求できる? アルバイトによくある「ばっくれ」のように、給料を受け取る前に無断で退職した場合でも、未払い給料は請求できます。 ただし、正規の退職手続きを取らなかった場合は、無断欠勤を行ったと判断され、民法709条違反として会社から損害賠償請求される可能性もあります。 また、制服など会社からの貸与物を返却していない場合は、その分の費用を請求される可能性もあります。 ばっくれた後に未払い給料を請求すべきかどうかについては、未払いの額、会社に負わせた損害の程度などの情報から客観的に判断する必要があります。一度弁護士に相談することがおすすめです。 給料未払いを理由に退職した場合、会社都合退職になる? 給料未払いを理由に自分で退職した場合でも、会社都合退職になる可能性があります。 原則として、自分で退職を伝えた場合は自己都合退職になります。 ただし、以下のような場合には、自分から退職した場合でも特定受給資格者と認められます。 特別受給資格者となる条件 労働契約で締結した労働条件が事実と著しく異なることで退職した 給料の3分の1を超える額が、引き続き2か月以上給料日までに支払われなかった 給料の3分の1を超える額が支払われなかったことが、退職の直前6か月の間に3月あった 自己都合退職の場合は、失業手当の受給で不利になります。 一方、特定受給資格者と認められれば、失業給付日数や初回の支給などが有利になる可能性があります。 未払い給料を請求するつもりなら、退職せずに請求することもひとつの選択肢をして検討すべきです。 関連記事 ・自己都合退職と会社都合退職の違いは?知らないと損する両者の違い まとめ この記事では、退職後に給料が振り込まれない場合に、未払い給料を請求できるのか、未払い給料の請求方法を解説しました。 退職後に給料が振り込まれない場合には泣き寝入りせず、未払い給料を会社に請求しましょう。 会社が倒産した場合には、未払賃金立替払制度も利用できます。 未払い給料の時効は3年です。時間が経つと証拠の収集なども難しくなるため、給料未払いが発覚した場合には、できる限り早めに対処することをおすすめします。 未払い給料の請求に関して、不明な点がある方は弁護士に相談してみてください。 --- ### 裁量労働制だと残業代が出ない?計算や請求方法を解説 - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-03-29 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6867 - Categories: 残業代請求 裁量労働制の残業代について解説。裁量労働制であっても時間外労働の割増はきちんと計算される必要があります。裁量労働制であっても、残業代を請求できるケースがあります。裁量労働制の残業でお悩みの方は弁護士に相談してください。 「裁量労働制だと、残業代は出ない?」「裁量労働制での残業代の計算方法は?」 プログラマーや経営企画といった職種に、「裁量労働制」という制度が適用されていることがあります。 裁量労働制は、導入・運用のルールが複雑です。残業代の扱いや、自分の給料が適切に支払われているのか不安になっている方も多いかと思います。 裁量労働制でも、休日出勤などを行えば割増の賃金が発生するため、違法な裁量労働制の場合には未払い残業代を請求できる可能性が高いです。 この記事では、裁量労働制と残業代の関係について詳しく知りたい方に向けて、裁量労働制でも残業代が出るケースや残業代の請求方法について解説します。 裁量労働制とは?残業代との関係を解説 裁量労働制は法律で厳格にルールが決められた制度ですが、「残業代を支払わなくてもいい」と直接的に決められているわけではありません。 この点が制度をわかりにくくしているため、まずは裁量労働制と残業代との関係を解説します。 そもそも裁量労働制って? 裁量労働制とは、大まかに言えば、「実際に働いた時間数に関わらず、あらかじめ決められた一定の時間数を働いたものとみなす」制度です。 たとえば、「1日8時間働いたものとみなす」と決められている場合、実際に働いた時間が1日5時間であっても、1日10時間であっても、8時間働いたものとして扱われます。 裁量労働制では、業務の進め方や方法、時間配分などが労働者の裁量にゆだねられます。 決められた時間内で労働者自身が発揮しやすい環境を作り、生産性を向上させるために設置されています。 「専門業務型」と「企画業務型」2つの違いとは? 裁量労働制は、どんな業務でも採用できるというわけではなく、業務内容によって「専門業務型裁量労働制」か「企画業務型裁量労働制」の2つに分けられます。 専門業務型裁量労働制 専門業務型裁量労働制に該当するのは、高度に専門的な業務に携わる労働者です。 19の業務が対象と定められており、代表的な業種として以下のものが挙げられます。 専門業務型裁量労働制の例 研究者・大学教員 新聞やテレビの記者 弁護士・公認会計士 ソフトウェア開発 コピーライター 映画のプロデューサー など 参考:厚生労働省「専門業務型裁量労働制」 企画業務型裁量労働制 企画業務型裁量労働制に該当するのは、会社での企業経営や事業運営などの部門での企画立案、調査、分析業務に携わる労働者です。 具体的には、リサーチ業務や新規事業開発、コンサルタントなどが挙げられます。 参考:厚生労働者「企画業務型裁量労働制」 裁量労働制では残業代問題が生じやすい 裁量労働制が採用されている場合、残業代が出ないことが多く、残業代未払い問題が生じやすいです。 その理由は、働いたものとみなされる一定の時間数を「8時間」と決めていることが多いからです。 労働基準法は、1日及び1週間で働かせることのできる最長の労働時間(「法定労働時間」と言います)を、原則として1日8時間・1週間40時間と定めています(労働基準法32条)。 また、法定労働時間を超える労働のことを「時間外労働」と言います。法定労働時間を超えた場合には、割増賃金(残業代)として通常の賃金の125%を支払う必要があります(労働基準法37条1項)。 このルールに従うと、1日の労働時間が8時間ちょうどまでであれば、時間外労働の割増賃金の支払いは不要ということです。 つまり、実際の労働時間にかかわらず、「8時間働いたものとみなす」と決められている場合、実際には8時間を超えて働いているのだとしても残業代は支払われません。 8時間では終わらない業務量を労働者に強いているにもかかわらず、裁量労働制であるからといって残業代を支払わずに、制度を悪用している企業があることも事実です。 次項で、裁量労働制でも残業代が支払われるケースを詳しく解説します。 裁量労働制でも残業代が支払われるケース 裁量労働制を採用している場合でも、残業代が出ないわけではありません。 具体的には、以下のケースであれば、残業代が支払われます。 裁量労働制でも残業代が支払われるケース みなし時間数が法定労働時間を超えている 法定外休日に出勤している 法定休日に出勤している 深夜労働している ここでは、裁量労働制でも残業代が出るケースについて具体的に解説していきます。 みなし時間数が法定労働時間を超えている まず、裁量労働制においてみなされる1日の労働時間として、法定労働時間である8時間を超える時間数が設定されている場合があります。 たとえば、「1日の労働時間を9時間とみなす」といったようなものです。 この場合、9時間のうち、8時間は法定内労働、残りの1時間は時間外労働として扱われます。 時間外労働に対しては、通常の賃金に割増率をかけた割増賃金が支払われます。 みなし労働時間が8時間を超えて設定されている場合は、「8時間分の賃金+割増がきちんと行われた時間外労働分の賃金」が支払われているかを確認しましょう。 関連記事 ・残業代の正しい計算方法とは?基本から応用的な計算まで徹底解説! 法定外休日に出勤している 休日には法定休日と法定外休日の2種類があります。 労働基準法は、原則として、1週間に1日の休日もしくは4週間で4日の休日を設けなければならないとしており、この休日を法定休日と言います。 完全週休2日制の場合、週のうち1日は法定休日となり、もう1日は法定外休日となるわけです。 法定外休日に出勤したとき、その多くは法定労働時間外の労働となります。 先程の通り、法定労働時間は1日だけでなく1週間単位でも定められており、1週間の法定労働時間40時間を超える場合にも残業代が支払われます。 そのため、1日の労働時間を8時間とみなしていても、休日出勤を行って40時間を超える場合には、残業代が支払われることとなります。 たとえば、土・日が休日に設定されている場合に、月曜日から土曜日まで働くと、「8時間×6日=48時間」となり、8時間分の割増賃金(残業代)が支払われなければおかしいということです。 法定休日に出勤している 割増賃金には時間労働割増賃金だけでなく、休日労働割増賃金もあります。 先述の通り、労働基準法は、原則として、1週間に1日の休日もしくは4週間で4日の休日を設けなければならないとしており、この休日を法定休日と言います。 この法定休日に働くことを「休日労働」と呼び、会社は割増賃金として、通常の賃金の135%を支払わなければなりません。 法定休日は、基本的には会社の休日が何曜日に設定されているかとは関係なく、週に1日休日があればその日が法定休日とされます。 言い換えれば、「週に1日の休みもなく働いた場合」に休日労働が生じるということです。 先程の例でいえば、土曜日だけでなく日曜日も出勤しているような場合です。 その場合には、8時間分の時間外労働割増賃金に加え、さらに、8時間分の休日労働の割増賃金も追加で請求できます。 深夜労働している 労働基準法では、22時から翌朝5時に労働した場合、深夜労働の割増賃金として、通常の賃金の125%が支払われることになっています(労働基準法37条4項)。 このルールは裁量労働制でも変わらないため、この時間帯に働けば深夜労働の割増賃金が支払われます。 深夜労働に従事した場合、深夜労働分の割増賃金がきちんと上乗せされているか、確認を忘れないようにしましょう。 裁量労働制における残業代の計算方法 裁量労働制の残業代の計算方法についてご紹介します。残業代の計算は、まず1時間当たりの賃金を求めるところから始めます。 1時間あたりの賃金 1時間あたりの賃金は以下のように算定されます。 1時間あたりの賃金 月給 ÷ 月平均所定労働時間(365日-1年間の休日数)×1日の所定労働時間÷12※うるう年の場合は366日 みなし時間数が法定労働時間を超えているときの残業代計算方法 1日のみなし労働時間が法定労働時間を超えているときの賃金について見ていきます。 法定労働時間を超えた労働については125%の割増が行われることになります。 具体例として、以下のケースをみてみましょう。 みなし労働時間が10時間、1時間当たりの賃金が2,000円のときの残業代 1日あたりの時間外労働時間→みなし労働時間10時間-法定労働時間8時間=2時間 1日あたりの時間外労働の賃金→1時間当たりの賃金2,000円×割増率1. 25×2時間=5,000円 このとき、1日当たりの賃金は「1時間あたりの賃金2,000円×8時間+時間外労働2時間分の賃金5,000円=2万1,000円」となります。 法定外休日に時間外労働をしたときの残業代計算方法 先述の通り、労働基準法に義務として定められた「1週間に1日の休日もしくは4週間で4日の休日」以外の休日を法定外休日と言います。 法定外休日には休日出勤の割増は適用されません。一方で法定外休日の労働が、週40時間の上限を超えている場合には、時間外労働として125%の割増が発生します。 具体例として、以下のケースをみてみましょう。 土日が休みの会社で、みなし労働時間が8時間、1時間当たりの賃金が2,000円のとき、平日のほか土曜日にも出勤した場合 週あたりの時間外労働時間→総労働時間48時間-法定労働時間40時間=8時間 週あたりの時間外労働の賃金→1時間当たりの賃金2,000円×割増率1. 25×8時間=2万円 このとき、この週の賃金は「1時間あたりの賃金2,000円×40時間+時間外労働8時間分の賃金2万円=10万円」となります。 法定休日に働いたときの残業代計算方法 労働基準法に義務として定められた「1週間に1日の休日もしくは4週間で4日の休日」に労働をしたときには、休日労働として135%の割増が行われます。 具体例として、以下のケースをみてみましょう。 上記「法定外休日に時間外労働をしたとき」の例を準用しつつ、さらに日曜日にも8時間の労働をした場合 法定休日に働いた時間→8時間 法定休日に働いた分の賃金→1時間当たりの賃金2,000円×割増率1. 35×8時間=2万1,600円 このとき、この週の賃金は「月~土までの賃金10万円+法定休日労働の賃金2万1,600円=12万1,600円」となります。 なお、法定休日の割増と時間外労働の割増は重複せず、たとえ法定労働時間を超えていたのだとしても、休日労働の割増率は135%のままとなります。 深夜労働をした場合の計算方法 深夜に労働したときには、その労働した時間分、0. 25%の割増が行われます。 なお、法律上の深夜労働とは、22時から翌5時までの労働のことを指します。 具体例として、以下のケースをみてみましょう。 1時間当たりの賃金が2,000円、みなし労働時間8時間、実際の労働時間は14時から24時だった場合 この時、みなし労働時間は8時間であるので、実際の労働時間が10時間であったとしても、計算上の労働時間は8時間として扱われます。 一方で22時から24時までの2時間は深夜労働を行っていることになります。 深夜労働時間→2時間 深夜労働の割増分→1時間当たりの賃金2,000円×割増率0. 25×2時間=1,000円 このとき、1日あたりの賃金は「1時間あたりの賃金2,000円×みなし労働時間8時間+深夜労働2時間分の割増1,000円=1万7,000円」となります。 残業代の計算については、『残業代の正しい計算方法とは?基本から応用的な計算まで徹底解説!』の記事でも詳しく解説しているので、合わせてご確認ください。 違法な裁量労働制に対する残業代請求の方法は? 裁量労働制は導入の条件が非常に厳しく設定されていますが、適切な手続き、運用を行わず、違法な状態のまま裁量労働制をとっている会社というのも数多く存在します。 仕事が終わらず深夜労働をしている、完全週休二日制と思って入社したが、土日も仕事をしているようなケースでは、裁量労働制であっても残業代を請求できます。 ここでは違法な裁量労働制に対する残業代請求方法を解説します。 証拠を集める 裁量労働制が採用されている企業で、残業代を請求するためには、必要な証拠を集めることが重要になります。 有効な証拠としては以下のものが挙げられます。 残業代請求に有効な証拠 タイムカード パソコンのログ記録 雇用契約書 就業規則 給与明細 など また、裁量労働制においては、「運用の実態が裁量労働制の趣旨から外れている」という主張をすることもあります。その場合には「業務の遂行方法が指定されていた」という証拠を集める必要があります。 出退勤時間を指定する業務上のメールやチャット 会議への出席や仕事の遂行方法などが指示されている業務上のメールやチャット このような証拠は「運用の実態が裁量労働制の趣旨から外れている」という主張をする際、非常に強力な証拠になるので、ぜひ集めておきましょう。 関連記事 ・残業代請求で必要となる証拠を徹底解説!証拠がない場合の対処法は? 会社と直接交渉する 残業代に未払いがあるとわかったら、会社に直接、請求するのも手段の一つです。 この際、同時に会社に内容証明郵便を送ることをおすすめします。公的な書面である内容証明郵便を送れば記録が残るため、会社に残業代を請求した証拠になります。 残業代を請求した・していないのトラブルを避けることができます。 参考:日本郵便「内容証明」 また、残業代請求の時効は3年です。時効が完成してしまうと、残業代の請求が難しくなってしまいますが、内容証明郵便を送ることで、時効の完成を6か月間遅らせる効果もあります。 関連記事 ・残業代請求の時効は3年!将来は5年に?時効中止や請求の方法を解説 弁護士に相談する 弁護士への相談は残業代の請求において最も効果的です。 裁量労働制と残業代との関係は複雑です。そのため情報不足や社風、業界の慣習といったものにより、裁量労働制をめぐるトラブルは自身で対処するだけでは解決できない可能性が高いです。 法律の専門家である弁護士であれば、適切な手段で残業代請求を行うことができます。 また、会社との交渉が決裂した場合でも、弁護士であれば法的手続きにスムーズに移行することが可能です。 弁護士への相談にあたって、費用相場や流れ、メリットなどを知りたい方は『残業代請求を弁護士に依頼する場合の費用相場は?弁護士に依頼するメリット5選!』の記事をご覧ください。 裁量労働制の残業代請求は弁護士に相談! 裁量労働制は「1日に○○時間働いたものとみなす」という制度であり、そういった意味では1日何時間働いたのだとしても、追加で残業代が支払われるといったことはありません。 しかし、残業代における割増賃金については、正しく計算が行われ、支払われている必要があります。 裁量労働制の残業代について疑問をお持ちの方は、休日労働や深夜労働の部分についてきちんと割増が行われているかを確認しておきましょう。 裁量労働制で違法性が疑われる、長時間労働しているなどのお悩みを抱えている方は、弁護士への相談を考えてみてはいかがでしょうか。 --- ### 過労死ラインの残業時間は月80時間以上。長時間労働の違法性を解説 - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-03-18 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6869 - Categories: 残業代請求 過労死ラインとなる残業時間は1か月100時間もしくは2~6か月平均80時間です。過労死ライン超えの残業をさせられたときの相談先・対処法や集めるべき証拠や相談先も紹介しています。 過労死ラインとは、健康被害や精神障害が発生するリスクが高くなる残業時間の目安です。 長時間労働は過労死と密接に関係しており、厚生労働省では月80時間以上の残業が認められる場合に、業務の発症との関連性が強いと評価できるとしています。 この記事では、長時間労働を強いられている方に向けて、過労死ラインとなる残業時間数や長時間労働が心身に及ぼす影響について詳しく解説します。 過労死ラインを超える残業により、身体への影響をきたしている方は、ぜひ最後までご覧ください。 過労死になる目安の残業時間「過労死ライン」とは? 過労死ラインとは、健康被害や精神障害が発生するリスクが高くなる残業時間の目安です。 2021年9月に労災認定基準が改正され、長時間の労働と過労死の関係性について、以下のような基準が設けられました。 労働の期間と時間業務と発症との関連性発症前1~6か月間にわたって、1か月あたりおおむね45時間を超える時間外労働が認められない弱い発症前1~6か月間にわたって、1か月あたりおおむね45時間を超える時間外労働が認められる場合徐々に強まる発症前1か月間におおむね100時間を超える時間外労働が認められる場合強い発症前2~6か月間にわたって、1か月あたりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合強い 参考:厚生労働省|血管病変等を著しく増悪させる業務による脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準について たとえば「発症前1ヵ月間に100時間」「発症前2~6ヵ月間平均80時間」を超える残業をして脳血管疾患や心臓疾患になってしまった場合は、仕事と発症に強い因果関係があるとして労働災害と認定される可能性が高くなります。 過労死ラインの基準は残業100時間?それとも80時間? 過労死ラインの残業時間は「80時間」「100時間」どちらも正解です。過労死ラインの目安となる残業時間数は月単位によって変動します。 発症前1か月の場合は残業「100時間」が過労死ラインの基準となっており、発症前2~6ヵ月間とする場合は残業が「平均80時間」であれば過労死ラインの基準を満たしていることになります。 「過労死ラインは残業60時間」という説の真偽 残業60時間を過労死ラインとする説もありますが、事実ではありません。 なぜ「60時間」という数字が出てきたかというと、残業が月50~60時間前後であっても労災が認められたことが挙げられます。 平成20年、月に50~60時間の残業をしていた看護師(当時25歳の女性)がくも膜下出血で亡くなった際に、大阪府の高等裁判所が過労死として労災認定をしました。 また、月65時間の残業で自殺した事件が過労死として認定されるなど、60時間前後の残業であっても過労死として認定されることがあります。 また、厚生労働省のパンフレットに「過労死等防止に関連する国の目標」として将来的に過労死等をゼロとすることを目指し、週労働時間60時間以上の雇用者の割合を5%以下にするという目標が掲げられています。 このことから、「過労死ラインは残業60時間」という説が浮上しましたが、現状は過労死ラインが60時間とする事実はありません。 過労死ラインを超える残業によって生じる身体への影響 残業時間が増えると睡眠や余暇を楽しむ時間が減ってしまいます。 また、疲労が溜まってしまい脳血管疾患や心臓疾患だけではなく睡眠障害やうつ症状、糖尿病の発症リスクが高くなります。 過労死の症状やその前兆とは? 過労死は「突然死」と思われがちですが、体の異変は亡くなる前から少しずつあられます。 大したことないと自己判断して放置せず、次にあげるような症状があてはまっていれば早急に対応してください。 心臓疾患の前兆 左腕にだるさを感じる 動悸がする 胸に圧迫されたような感覚がある 緊張や不安が高まると、胸が焼けるように感じる 脳疾患の前兆 めまいや、ろれつが回らないといった症状がある 片方の手足にしびれを感じる 人と話しているときに話の内容がわからない 片目がたまにぼやける 持っていたものを落としてしまう こうした症状は狭心症、心筋梗塞、くも膜下出血などの前触れかもしれません。心当たりがあればすぐに病院に行くことをおすすめします。 うつ病など精神面への影響とは?自殺も過労死であれば労災? 極度の長時間労働やストレスにさらされたことにより、うつ病などの精神障害を引き起こし自殺にいたった場合、その精神障害の発症と仕事に大きな関連があると認定されれば「過労自殺」となります。 2015年に広告代理店で勤務していた女性社員が飛び降り自殺した事件では、100時間を超える時間外労働によりうつ病を発症したとして過労自殺が認められました。 自殺であっても長時間労働やセクハラやパワハラによるストレスが影響しているときは、労災として認められる可能性があります。 うつ病の前兆としては以下のものが挙げられます。 うつ病の前兆 睡眠障害 焦燥感がある 何事も楽しく感じられない 集中力がなくなる このような症状が当てはまる場合は、一度、精神科で診断を受けることをおすすめします。 過労死ラインを超えた残業は違法?残業の法的な基準とは? 過労死ラインである80時間や100時間におよぶ残業を従業員にさせること自体は、所定の手続きを会社が行っていれば法的に問題はありません。 ただし、残業には上限となる時間が設定されており、その上限を守らないときや、適切な手続きが行われていないときは法律違反となります。 36協定が結ばれていない状態での残業は違法 残業とは法定労働時間を超えて働く「時間外労働」のことを指します。 36(サブロク)協定と呼ばれる労使協定を結んで労働基準監督署へ提出していなければ、会社は従業員に時間外労働をさせることができません。 つまり、36協定を結んでいなかったり、労働基準監督署へ提出していなかったりすると、時間外労働をさせただけで違法となります。 36協定があっても残業時間の上限を超える時間外労働は違法 36協定の手続きをしたからといって、従業員に好きなだけ時間外労働をさせられるわけではありません。 時間外労働には上限が決められおり、36協定を締結している場合でも時間外労働の上限は以下のように設定されています。 時間外労働の制限 月45時間 年360時間 ただし、臨時的な特別な事情がある場合は複数月平均80時間以内、月に100時間未満までなら時間外・休日労働をさせることができます。 もし、上限時間を超えて残業をさせたときは残業をするように指示した上司や社長、会社は労働基準法32条違反となり、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されるおそれがあります。 36協定における残業時間の上限について知りたい方は『36(サブロク)協定とは?ポイントと残業時間との関係について解説』の記事をご覧ください。 残業代が支払われないのはもちろん違法|割増賃金とは? 法定労働時間(1日8時間または週40時間)を超えた時間外労働に対し支払われる残業代は割増賃金と呼ばれます。 割増賃金を支払ってもらうのは従業員の当然の権利です。 割増賃金は「割増率」をかけて計算するので、通常の給与よりも高い金額となります。 残業代の計算方法、割増率について詳しく知りたい方は『残業代の正しい計算方法とは?基本から応用的な計算まで徹底解説!』の記事をご覧ください。 また、サービス残業や長時間労働が当たり前になっている会社はきちんと労働時間を記録・把握していないことが多く、残業代がきちんと支払われていないおそれがあります。 残業代が未払いであれば、いくら36協定を締結して上限規制を守っていたとしても違法です。 過労死ライン超えの残業をさせられたときの相談先・対処法 過労死ラインを超えるような時間外労働を続けていると心身に負担がかかります。 従業員はもちろんのこと、会社にとってもよい状況とはいえません。 長時間労働を改善していくには会社と交渉、必要となれば裁判をすることとなります。具体的にどのような対応をとればよいかみていきましょう。 まずは正確な残業時間の証拠を集める 過労死ラインを超えるような残業があったと示すために、時間がきちんと把握できる客観的な証拠を用意しましょう。有効な証拠としては以下のものが挙げられます。 残業代請求における証拠 タイムカード 勤怠管理システム メールの送受信履歴 パソコンのログ記録 上司の承認のある業務日誌 など タイムカードや日誌はコピーを取り、メールやパソコンの記録はスクリーンショットを取って保存し、正確な残業時間がわかる記録を集めましょう。 関連記事 ・残業代請求で必要となる証拠を徹底解説!証拠がない場合の対処法は? 長時間の残業で身体に支障が出たら労災と認定される 時間外労働が長時間におよび病気・死亡にいたったときは労災として認定される可能性があります。 その場合は労働基準監督署へ書類を提出して労災の申請を行います。 会社を経由して申請するのが一般的ですが会社が手続きをしてくれないときは、自分で手続きをするか労働基準監督署や弁護士へ相談してみましょう。 もし、労災として認定されれば病院の受診料負担がなく会社を休んでいる期間についても給付を受けることができ、死亡した際は生活補償として遺族にお金が支払われます。 関連記事 ・労災と認定されるには?認定基準・手続き・受け取れる給付金について解説 労働基準監督署に相談する 労働基準監督署は、あらゆる労働に関する相談を受け付けている厚生労働省管轄の行政機関です。労働者からの申告によって必要があると判断すれば会社に対し勧告や指導を行ってくれます。 労働基準監督署が悪質なケースとして判断し動くには、会社が具体的に法律違反をしていたという証拠に基づいた事実を従業員が申告しなくてはなりません。 相談後は会社への立ち入り調査や責任者への呼び出しが行われ、もし違法と認められれば指導・勧告をしてくれます。 参考:労働基準監督署の所在地一覧 ただし、労働基準監督署は会社の法律違反に対して指導や勧告を行ってはくれますが、未払いの残業代の請求など、個人の問題については自分自身で行わなければなりません。 弁護士に相談する 過労死ラインを超える残業をしていても証拠がなければ、労働基準監督署に対応してもらえないことがあります。 また、労働基準監督署が会社に指導や勧告をしたとしても無視され問題がすぐに解決しない場合も考えられます。 一方、法律の専門家である弁護士ならば、代理人として会社と従業員の間に立って交渉してくれ、従業員個人の悩みを解決するために動いてくれます。 残業の証拠が集められないときでも、弁護士から会社に開示請求を行うことで、証拠を収集できる可能性が高まるでしょう。 さらに、交渉で話がまとまらない場合でも、労働審判や裁判に移行した際も弁護士に法的手続きを任せることが可能です。 早急な解決に向けて手助けをしてくれる弁護士は、従業員本人や家族にとって強い味方といえるでしょう。 弁護士への相談にあたって、費用相場や流れ、メリットなどを知りたい方は『残業代請求を弁護士に依頼する場合の費用相場は?弁護士に依頼するメリット5選!』の記事をご覧ください。 --- ### 残業代請求は退職後でも可能!注意点や退職後の証拠の集め方を解説 - Published: 2023-11-22 - Modified: 2025-01-23 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6864 - Categories: 残業代請求 残業代請求は退職後でも可能です。残業代請求をするための法的な要件や時効について解説。退職後のの残業代請求はなるべく早急に行うべきです。証拠の収集についての注意点も解説しています。 在職中はやむを得ずサービス残業をしていても、退職後に未払いだった残業代の請求を考える方は多いのではないでしょうか。 残業代を受け取るのは正当な権利です。自分が時間と労力を費やした残業の賃金が受け取れないのは納得いかないでしょう。 法律上、退職後でも残業代請求は可能です。 しかし、辞めた会社に対する残業代請求は、証拠集めや時効など、いくつか注意しなければならない点もあります。 この記事では、退職後の残業代請求を失敗したくない方に向けて、退職後に残業代を請求するときのポイントや注意点を詳しく解説します。 退職後に残業代請求が可能な理由 退職後でも残業代請求の権利がある限り請求できる 退職後に残業代請求ができるということは、「残業代を請求する法的な権利が使える状態」を意味します。 この権利は、いったん発生すると、会社から残業代が支払われるまで基本的には消滅しません。 退職しても残業代請求の権利は持ち続けるため、その権利を使って辞めた会社に対し残業代請求ができるということです。 自主的な退職ではなく、たとえ解雇された場合でも、残業代は請求できます。 退職後に残業代請求する例は多い 退職後に残業代請求をする例は多いです。 在職中の残業代請求も可能ですが、会社ともめることや、残業代請求による嫌がらせや不利益を受けることも懸念されるため、退職後に行う人が多いようです。 ただ、退職後に請求する場合でも、「転職先に圧力をかけられたくない」といった不安をお持ちの方もいるかと思います。 しかし、そもそも会社が従業員の転職先を把握しているケースというのは稀です。自分で教えない限り、転職先が正確にわかることはほとんどないでしょう。 また、仮に圧力がかけられたとしても、転職先が残業代を適正に支払っている会社であれば、圧力をかける方が不当であると正しく判断してくれるはずです。 退職後の残業代請求は時効に注意 残業代請求の時効は3年 退職後、過去の残業代を何十年も遡って請求できるわけではありません。残業代請求の時効は3年です。 つまり、残業代が支払われていない状態であっても、残業代請求が認められるのは最大で3年間分ということです。 時効で消滅する部分を出さないために、残業代の未払いが生じてから3年以内に請求するべきと言えるでしょう。 残業代請求をする場合の起算点 残業代の請求期限の起算点は「給料日の翌日」です。 残業代の請求期限の起算点とは、時効期間のカウントが始まる日付のことです。 通常は毎月の給料日ということになるため、その給料日から3年以内に請求しないと、支払われるはずだった残業代を支払ってもらえなくなるということになります。 請求しても「時効で消滅している」と会社から主張されてしまうでしょう。 たとえば、2023年の8月末で退職し、最後の給料が翌月の9月15日に支給されたとします。 起算点は給料日の翌日の9月16日になるため、2026年の9月15日までに残業代を請求しなければ、時効が完成してしまうということです。 実際には会社に対する請求が遅くなると、古い分から時効によって請求できなくなっていきます。 いったん会社に対して支払いを求めれば、時効の完成が6か月先送りされるというルールもあるため(民法150条1項)、退職後は迅速に残業代請求を行うことが重要といえるでしょう。 未払い残業代の請求の時効についてさらに詳しく知りたい方は、『残業代請求の時効は3年!将来は5年に?時効中止や請求の方法を解説』の記事をご覧ください。 退職後に残業代請求するためには証拠が重要 残業代請求を行うためには証拠を収集する 退職後に残業代請求を行うためには、残業代未払いの証拠を収集することが重要です。 在職中は、就業規則やタイムカードなど、残業代請求の証拠となる資料にアクセスしやすい環境にあります。 しかし、退職後は、基本的に会社に依頼しなければそういった資料が手に入らなくなります。 また、古い記録・資料は消去・廃棄されていくため、一般的に、時間が経つほど証拠の収集は困難になります。 証拠がない場合はどうすればいい? 在職中は仕事に追われており、証拠の収集ができないまま退職してしまった方もいるでしょう。 すでに退職しており、手元に残業をしていた証拠がなくても、泣き寝入りする必要はありません。 退職後でも、ご自身で収集できる証拠は以下のようなものがあります。 退職後に収集できる証拠 交通ICカードの入退場履歴 会社のアカウントからのメール履歴 帰宅時間がわかる家族へのLINE など 交通ICカードの履歴は、利用した交通機関に問い合わせれば確認できます。場合によっては開示請求を行うことも可能です。 一定期間経過すると履歴が印字できないケースもあるため、自宅からの通勤で利用していた方は、早めに問い合わせておきましょう。 また、会社のアカウントからのメール履歴が自身の携帯に残っていた場合は、証拠になる可能性があります。 さらに、家族へ「今から帰るよ」といった帰宅時間を報告するLINEなどが証拠になる場合もあります。LINEを送る習慣があった方は、LINEの履歴から残業代の時間を計算してみてもいいでしょう。 残業代の証拠は多ければ多いほどいいです。これは証拠にならなそうと思ったものでも、証拠を補完する役割を果たすこともあります。 履歴がなくなったり、請求期限があったりするものは、早めに収集しておきましょう。 弁護士による開示請求も可能 上記のような証拠がない場合でも、弁護士に依頼して会社に開示請求を行うことで、証拠を収集できる可能性もあります。 民事訴訟法の証拠保全の手続(民事訴訟法132条)を活用するという方法もありますが、弁護士からタイムカードなど勤務時間の分かる資料を請求すれば、多くの会社では開示に応じてくれます。 関連記事 ・タイムカードがなくても残業代の請求は可能!収集すべき証拠とは? 退職後の残業代請求のポイント 退職後の残業代請求は高額となりやすい 残業代請求は、未払いの残業代額そのものに加えて、遅延損害金も請求することが一般的です。 遅延損害金の額は基本的に法律で決まっており、原則は年3%(民法419条1項、404条2項)ですが、退職の日までに支払われていない賃金に関しては年14. 6%となります(賃金の支払の確保等に関する法律6条1項)。 残業代も賃金ですから、もちろん対象となります。 これは金銭債務一般にはない賃金だけの特徴であり、賃金という生活に密接に結びついたお金を確実に支払わせるため、法定利率よりはるかに高い利率が設定されているのです。 退職時まで残業代の未払いがあるケースは未払い額が高額であることも多いため、全体の請求額も高くなる傾向にあるといえるでしょう。 残業代請求の場合には付加金も検討 さらに、残業代の未払いには付加金という制度が設けられています(労働基準法114条)。 付加金とは、使用者が労働基準法上支払い義務がある一定のお金を支払わなかった場合、未払い分に加え、それと同額の支払いを裁判所が命じることのできる制度です。 単純に言えば、未払い残業代額の2倍の支払いを受けられるということであり、違反に対する経済的ペナルティとして設けられているものです。 退職後でも付加金の請求は可能であり、裁判で残業代を請求する場合には検討する必要があります。 もっとも、付加金の支払いを命じるのは裁判所ですので、裁判を起こさなければ請求はできません。たとえば、会社と直接交渉して支払いを受ける場合、付加金を得ることはできません。 さらに、付加金が支払われるかどうかは裁判所の判断に任せられていますので、請求したからといって必ず認められるわけでもありません。 裁判所は、違反の程度(悪質性)や労働者が被った不利益の大きさなどを総合的に考慮して、付加金の支払いを命じるか否かを決定することになります。 退職後の残業代請求は弁護士に相談 退職後の残業代請求をお考えの方は、弁護士に相談しましょう。 残業代請求の時効は3年ですが、退職から時間が経ってしまうと、証拠の収集が難しくなってしまうため、可能な限り早めに動き出すことが大切です。 何から始めればいいのか分からないという方は、まず弁護士に相談し、必要となる証拠や、収集の仕方などのアドバイスをもらうといいでしょう。 加えて相談の際には、仕事内容や給与額、おおよその残業時間といった事情を整理しておくと、請求できる残業代を知ることができます。 ご自身の未払い残業代が、いくらになるか分からず、目安の残業代を計算したい方は、残業代計算ツールをご利用ください。 関連記事 ・残業代請求を弁護士に依頼する場合の費用相場は?弁護士に依頼するメリット5選! --- ### 未払い残業代の遅延損害金はいくら?付加金についても解説 - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-03-29 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6857 - Categories: 残業代請求 未払い残業代における遅延損害金について解説!その計算方法を具体例を挙げてみていきます。また、残業代未払いに付加されるお金についても解説。 残業代の未払いについては遅延損害金が発生し、在職中の遅延損害金の利率は年3%です。 ただ、遅延損害金の請求方法を知らずに、請求を失念してしまうケースも多いです。 残業代として受け取れる額を増額できたにもかかわらず、請求を失念してしまうと損した気分になるでしょう。 この記事では、遅延損害金を正確に受け取りたい方に向けて、遅延損害金の概要や計算方法、遅延損害金以外に請求できる付加金について詳しく解説します。 残業代の未払いには遅延損害金を請求できる 残業代の未払いに対しては、残業代額そのものに加え、遅延損害金というお金を請求することができます。 遅延損害金という言葉は、一般的に使われるものではないため、まずは内容を解説します。 残業代の未払いってどういう状態? 遅延損害金は、残業代の未払いに対して追加で請求できるお金です。 残業代の未払いは、本来支払われなければならない給料日に、残業代が支払われていない状態を意味します。 これは、法的には「残業代の支払いが遅れている状態」と捉えることになります。 したがって、将来的に支払われるかどうかに関係なく、1日でも遅れれば遅延損害金の請求が可能となります。 結果として未払い残業代が支払われたのだとしても、その支払いが遅れたのであれば、遅れた期間に応じた分の遅延損害金を請求できるのです。 遅延損害金は支払いの遅れによって生じた損害を賠償するためのもの では、支払いが遅れることは、法的にどのような意味を持っているのでしょうか。 労働者は使用者に対して残業代を請求する権利を持っており、反対に、使用者は労働者に対して支払う義務を負っています。 この使用者に対して残業代を請求する権利を「債権」といい、使用者は労働者に対して支払う義務を「債務」といいます。 残業代を支払う債務は、お金の支払いを内容としているため、支払いが遅れると「支払ってもらえるはずだったお金を利用できない」という損害が発生します。 このような損害は、支払いを遅らせた側、つまり使用者の責任によって賠償されなければなりません。 そのため、支払いが遅れている側、つまり労働者には、この損害を賠償してもらう権利が生じます(民法415条1項)。 この賠償金のことを、支払いが「遅延」した「損害」を賠償する「お金」ということで、遅延損害金と呼んでいるのです。 遅延損害金の利率 在職中の遅延損害金の利率は年3% 未払い残業における在職中の遅延損害金の利率は、年3%です。これは法定利率と呼ばれるもので、金銭債務の支払いが遅れた場合に適用される利率です。 この法定利率は、現在年3%に設定されています(民法404条2項)。 法定利率は、2020年4月から3年ごと定期的に見直されています。 以前は5%が適用されていた期間もありましたが、2023年4月1日~2026年3月31日までの期間は3%です。 退職後の遅延損害金の利率は年14. 6% 遅延損害金の利率は基本的に年3%ですが、退職日までに支払われていない賃金に関しては年14. 6%となります(賃金の支払の確保等に関する法律6条1項)。 これは金銭債務一般にはない賃金だけの特徴です。 賃金という生活に密接に結びついたお金を会社に確実に支払わせるため、法定利率よりはるかに高い利率が設定されているのです。 残業代も賃金ですから、もちろん対象となります。 退職時まで残業代の未払いがあるケースは未払い額が高額であることも多いため、全体の請求額も高くなる傾向にあると言えるでしょう。 残業代の遅延損害金の計算方法 では、実際の遅延損害金はいくらになるのでしょうか。例を使いながら計算方法を解説します。 残業代の遅延損害金の計算式 遅延損害金を計算するための要素は、次の3つです。 遅延損害金の計算のための要素 支払いが遅れている残業代の金額 遅延損害金の率(年率) 本来の支払日から何日遅れているか この3つの要素を使い、計算式としては、以下のようになります。 遅延損害金=支払いが遅れている金額×遅延損害金の率(3%)×遅れた日数/365日 なお、うるう年の場合は365日ではなく366日となります。 残業代の遅延損害金の計算例 残業代の未払いを仮定し、実際に計算してみます。以下のケースを見てみましょう。 【在職中】給与が毎月15日締め25日払いで、5月15日までの給与が5月25日に振り込まれるという場合 5月15日までの分の残業代として基本給とは別に5万円が支払われるはずだったが、残業代は振り込まれていなかった 会社と交渉し、最終的に残業代は6月15日に振り込まれることになった このとき、遅延損害金は、5万円×3%×(21日/365日)≒86円となります。 また、上記の例を退職後と仮定した場合には、年14. 6%の利率となります。 利率年14. 6%で計算し直すと、「5万円×14. 6%×(21日/365日)≒420円」と、高額になることがわかるでしょう。 残業代の未払いについてトラブルとなっている場合、多くは長期間にわたって未払いが続いています。 そのため、未払いの残業代額も累積して大きくなりますし、遅延損害金の額も高額となります。 残業代の計算方法について詳しく知りたい方は、『残業代の正しい計算方法とは?基本から応用的な計算まで徹底解説!』の記事もご覧ください。 遅延損害金以外に残業代未払いに付加されるお金 ここまで遅延損害金について解説してきましたが、それ以外にも、残業代の未払いに付随して請求できるお金があります。 これらは政策的なペナルティとも呼べるもので、賃金に特有の制度です。利用するか否かで請求額も大きく異なります。 未払い残業代の付加金 割増賃金の未払いには、付加金という制度が設けられています(労働基準法114条)。 付加金とは、割増賃金など、使用者が労働基準法上支払い義務がある一定のお金を支払わなかった場合、未払い分に加え、それと同額の支払いを裁判所が命じることのできる制度です。 単純に言えば、未払い残業代額の2倍の支払いを受けられるということであり、違反に対する経済的ペナルティとして設けられています。 裁判で残業代を請求する場合は付加金の請求が可能 付加金の支払いを命じるのは裁判所です。付加金は、裁判で残業代を請求する場合に限って請求が可能です。 裁判ではなく、会社との直接の交渉や労働審判で解決した場合には、付加金は支払われることはありません。 また、裁判で付加金を請求しても、支払われるかどうかは裁判所の判断に任せられおり、請求したからといって必ず認められるわけではないので注意してください。 裁判所は、違反の程度(悪質性)や労働者が被った不利益の大きさなどを総合的に考慮して、付加金の支払いを命じるか否かを決定することになります。 未払い残業代の遅延損害金を請求する方法 遅延損害金は、未払い残業代の元本と併せて請求するケースが多いです。 残業代請求の方法は、大きく以下の3種類があります。 残業代請求の方法 会社に直接請求する 労働審判を行う 訴訟を行う 会社に直接請求する 残業代の未払いがある場合は、会社に対して直接請求することができます。未払い残業代の請求は、内容証明郵便を利用すると、時効を延長させることができるうえ、後々のトラブルを防ぐことが可能です。 労働者もしくは労働者の代理人である弁護士が会社の役員などと話し合いの場を設け、交渉行うこととなるでしょう。 未払い残業代の元本と併せて遅延損害金を請求し、交渉を経て示談に達すれば、ここで問題を収束させることができます。 内容証明の書き方を知りたい方は、『【テンプレートあり】残業代請求書(内容証明)の書き方・送付方法を解説!』をご覧ください。 労働審判を行う 労働審判は、労働審判官(裁判官)1名と労働審判員2名から構成される、労働審判委員会という組織を利用する制度です。 原則として3回以内の審理で結論が出ます。2〜3か月程度で問題を解決できる可能性があることが大きなメリットです。 関連記事 ・労働審判とは?制度の内容や手続きの流れを弁護士がわかりやすく解説 裁判を起こす 裁判は、基本的に原告と被告が交互に主張を重ねていき、最終的な結論(判決)を裁判所が下す手続きです。 労働者と相手(会社)が主張する回数には基本的に制限がないため、結論が出るまでに1年以上かかることもあります。 ただし、「付加金」を請求できるメリットもあります。 残業代請求の方法について詳しく知りたい方は、『残業代が支払われない!請求方法と流れを解説!』の記事をご覧ください。 未払いの残業代請求は弁護士に相談 これらのように、退職や裁判という状況になれば、通常の遅延損害金の額を大きく上回る請求ができる可能性があります。 もっとも、それらの状況になるということは、使用者との関係悪化が懸念されるのであり、「働き続ける」という利益を失ってしまうおそれもあります。 そのため、残業代の請求は、法的な視点と現在の自分の状況・要望の両面を適切に組み合せ、慎重に行うことが望ましいと言えるでしょう。 残業代請求の対応は弁護士が得意とする分野であり、残業代の未払いで悩んでいる場合には相談してみることをおすすめします。 また、付加金を請求するのであれば裁判を起こす必要がありますが、訴訟行為を代理できるのは基本的に弁護士のみです。 その意味でも、当初から弁護士に相談しておくとスムーズだと言えるでしょう。 無料の弁護士相談を受け付けている事務所もあるので、一度相談してみてはいかがでしょうか。 関連記事 ・残業代請求を弁護士に依頼する場合の費用相場は?弁護士に依頼するメリット5選! --- ### 残業代未払いは労基署に相談できる?弁護士との役割の違い - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-06-28 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6858 - Categories: 残業代請求 未払い残業代は労働基準監督署に相談したら解決するのかを徹底解説。労基署の仕組みや役割をについてご紹介しています。未払い残業代でお悩みの方は、労基署・弁護士など適切な窓口に相談してください。 肉体的・精神的に大きな負担となる残業ですが、残業問題を解決したくても、最適な相談先がわからないと困ってしまいますよね。 労働基準監督署(労基署)は会社の労働基準法違反の確認と、違法状態の解消を行う組織です。労働問題に関する相談も受け付けているため、残業代未払いに関する相談も可能です。 しかし、労基署の役割を理解していないと、労基署に相談してもお悩みが解決せずに、他の相談窓口を探すことが必要になるかもしれません。 この記事では、残業代未払いの相談を適切に行いたいという方に向けて、 労基署の役割や具体的にしてくれること、残業の相談が可能な窓口について解説します。 労基署は是正勧告等で違法な会社の対応を正す公的機関 労働基準監督署の役割は、以下の5つです。 労基署の役割 申告・相談の受付 労働基準法に基づいた事業場への監督指導 重大・悪質な事案に対する任意捜査や強制捜査 労働安全衛生法に基づいた事業場への指導 労働者災害補償保険法に基づいた調査や保険給付 監督課・安全衛生課・労災課が上記の業務を行っています。 特に残業代について問題となるのは1,2,3です。 1. 申告・相談の受付 監督課では、労働条件や労働問題などの労働者からの相談を受け付けています。 受け付けている相談の範囲は、未払い等の賃金に関する相談のほか、解雇、雇い止め、配置転換、いじめやパワハラ等など広範にわたります。もちろん、残業代についての相談も受け付けています。 また相談者の勤務している企業が労働基準法に違反しているような場合、これに対する行政指導を求める申告も受け付けています。 2. 労働基準法に基づいた事業場への監督指導 労働基準監督所は労働者からの相談があったとき、事業場への立ち入り、設備や帳簿の検査、労働条件の確認などを行います。 調査の結果、労働基準法違反が認められた場合には、事業主に対して是正指導を行います。危険性の高い設備がある場合には、その場で使用停止などを命ずる行政指導を行うこともあります。 労働基準監督署が行う監督指導としては「代表者の呼び出し」「立ち入り調査」「是正勧告」があります。 監督指導の流れ① 代表者の呼び出し 労働者からの相談を受けた労働基準監督署は、聞き取りした内容に従って本当にその会社が労基法違反を犯しているのかどうか調査を開始します。 調査の方法としてはまず代表者の呼び出しがあります。 労働基準監督署から呼び出された代表者は、以下のような書類を準備するように指示され、労働基準監督署へ出頭します。 就業規則 時間外労働・休日労働・労使協定に関する書類 労働時間が確認できる書類 健康診断表 衛生委員会の議事録 など 監督指導の流れ② 立ち入り調査 代表者の呼び出しで違法行為の疑いがあった場合には、会社に立ち入り調査を行います。 立ち入り調査では、会社の設備や帳簿、書類などを確認したり、従業員に尋問を行ったり、労基法違反を犯していないかの調査が行われます(労働基準法101条)。 違法な残業や残業未払いが疑われる場合には、代表者に対してタイムカードやパソコンのログイン情報の提出を求めたり、実際に働いている労働者の方に質問したりもします。 なおこの立ち入り調査は予告なし行われることもあります。そのような場合には代表者の呼び出しは行われません。 労働基準監督署の職員(労働基準監督官)が事前連絡なしで訪問し、上記の調査を行うのです。 会社側はこの立ち入り調査を拒むことができません。立ち入り調査を拒んだり妨げたりした場合には、刑事罰を科される場合もあります(労働基準法120条)。 監督指導の流れ③ 是正勧告 立ち入り調査の結果、労働基準法に違反する行為が確認された場合は、問題を是正するように代表者へ指導し、是正勧告書が交付されます。 是正勧告書に書かれている内容は、指導内容や違法内容、是正期限などです。 代表者は、期限までに違法状態を改善し、是正報告書を提出する必要があります。 代表者が是正勧告書を提出し、労働基準監督官によって改善されたことが確認されれば調査は終了です。 しかし、十分に改善されていない、あるいは改善されていないと判断された場合には、再度調査が行われます。 3. 重大・悪質な事案に対する任意捜査や強制捜査 労働基準法違反に対する指導を繰り返し行っても是正措置を取らないなど、重大・悪質な事案に対しては、労働基準監督署は刑事事件として任意捜査や強制捜査を行い、検察庁に送致を行うこともあります。 つまり、警察と同じように刑事事件として捜査を行うことがあるという事です。 実は労働基準監督官は労働関係の法律違反について、「司法警察官の職務を行う」とされています(労働基準法102条)。 もっとも、実務上は労働問題について労基署が刑事事件として捜査を開始するケースというのは稀です。 残業代トラブルについてお悩みの方の中には「会社を刑事的に処罰してほしい!」とお考えの方もいるかもしれません。 しかし、労働問題が刑事事件化するケースというのは少ないので、その点については期待しすぎないほうが良いと言えるでしょう。 労基署に残業について相談できる部署はある? 労基署で残業の相談ができるのは、労基署内に設置されている総合労働相談コーナーです。 解雇・労働条件・募集・採用・いじめ・嫌がらせ・セクシュアルハラスメントなど、労働問題に関するすべての分野の相談ができます。 専門の相談員に対する相談は、直接面談する以外に、電話でも受け付けています。 総合労働相談コーナーの相談窓口の受付時間は、午前9時から午後5時までです。総合労働相談員が不在の日や不在の時間があるので、事前に電話で確認しておきましょう。また、土・日・祝日・年末年始 (12月29日から1月3日)は休みです。 参考:総合労働相談コーナーの所在地一覧 労基署に相談する際の注意点 労基署に相談する際の注意点についても確認しておきましょう。 以下の3点を抑えておけば、労基署への相談やその後の対応が非常にスムーズになります。 労基署に相談する際の注意点 証拠を持っていく必要がある 違法な状態でないと動いてくれない 交渉や請求自体はしてくれない 以下で具体的に解説していきます。 証拠を持っていく必要がある 違法な残業や残業未払いを労基署に相談する際には、証拠を持っていく必要があります。 証拠がなくても労働基準法に基づいて、個人としてどうすべきかのアドバイスはもらえます。 しかし会社に対する指導や是正勧告をお望みの場合には、証拠が必要になります。 違法な残業や残業未払いの証拠なしに、労働基準監督署が会社に対して指導をおこなうことはありません。 「労働条件」「残業代の支払いの有無」「残業時間」を証明する証拠を集めておきましょう。 残業代請求に必要な証拠 労働条件の証拠:就業規則や労働契約書 残業代証拠:給与明細 残業時間の証拠:タイムカードや勤怠管理システムの記録など 関連記事 ・残業代請求で必要となる証拠を徹底解説!証拠がない場合の対処法は? 違法な状態でないと動いてくれない 労基署が会社に指導を行うのは、労働基準法に違反している場合です。 違法である可能性が低い、または違法行為が確認されない等の事情があれば、労基署は労働者から相談されてもすぐに動いてくれるとは限りません。 ただし、違法性が確認されていなくても、労基署は定期的に立ち入り調査を行っています。 労働者の相談があったかどうかは、立ち入り調査の対象の選定の際に参考とされる可能性があります。 交渉や請求自体をしてくれるわけではない 労基署が行うことは、労働基準法違反の改善です。会社が労働者に違法な残業を強要している場合は、会社に違法行為を行わないように指導します。 しかし、労基署が目的としているのはあくまで労働基準法違反の状態を改善することです。個人的な請求についてまでは行ってくれません。 つまり、未払いの残業代を支払うように交渉したり、残業代の請求を行ったりすることはなく、未払い残業代の回収という点についてはあまり期待できないということです。 労基署と弁護士の役割の違いとは? 労基署と弁護士は、どちらも「残業代未払いの相談が可能」という共通点はありますが、それぞれの役割が違います。 先述したように労基署の役割は、あくまで労働基準法違反の状態を改善することであり、労働者個人の残業代を請求することではありません。 一方で弁護士の役割は、依頼者である労働者個人のために、法律の専門家として残業代未払いを回収するための助言や代理人業務を行うことです。 つまり、労基署と弁護士との役割の違いは、代理人として労働者個人の問題を解決するか否かです。 労働者個人の正確な残業時間の計算や証拠の開示請求などは、弁護士にしかできません。 未払い残業代の請求なら弁護士への相談がおすすめ これまでの未払い残業代を請求したいとお考えの場合などは、労基署ではなく弁護士への相談がおすすめです。 弁護士に相談すれば、複雑な残業代の計算や会社との交渉を請け負ってくれる上、交渉が決裂した場合でも、労働審判や訴訟などの法的手続きへのスムーズな移行が可能です。 なお、労基署に相談しても、残業代未払い問題が解決する可能性はあります。 ただし、労基署の立ち入り調査や是正勧告などでは、会社の違法状態が改善されるまでには時間がかかります。そのため、すぐに違法な残業がなくなったり、未払いの残業代がすぐに支払われたりするとは限らないので注意してください。 労基署は無料で相談できるため、労基署へ相談後、弁護士に相談してみるのもいいでしょう。 関連記事 ・残業代請求を弁護士に依頼する場合の費用相場は?弁護士に依頼するメリット5選! まとめ 未払い残業代を労基署に相談することについて詳しく解説しました。 労基署は、労働問題全般の相談が可能ですが、会社の労働基準法違反の確認と、違法状態の解消を行う組織であるため、個人的な残業代請求などは行ってくれません。 個人的な未払い残業代の請求なら弁護士への相談がおすすめです。 残業代請求の時効は3年です。時効が完成してしまうと請求が難しくなるため、早めに最適な窓口に相談しましょう。 残業代の時効については『残業代請求の時効は3年!将来は5年に?時効中止や請求の方法を解説』の記事をご覧ください。 --- ### 変形労働時間制とは?制度の内容と残業代についてわかりやすく解説 - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-03-11 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6860 - Categories: 労働問題全般 変形労働時間制は、法定労働時間を業務の繁閑に合わせて変形させることのできる制度であり、残業をなくす・残業代を支払わないといった制度ではありません。残業代の未払いでお困りの方は弁護士に相談してください。 「変形労働時間制とは?」「変形労働時間制なら残業代は出ない?」 変形労働時間制は、忙しい時期と暇な時期に合わせて、労働時間の使い方を調整できる制度です。 変形労働時間制はルールが複雑であるため、十分に理解していないまま働いている方も多いでしょう。 変形労働時間制が適用されていた場合でも、残業代は発生します。 しかし、残業は1日単位で発生するのではなく、採用されたルールごとに決まってくるため、変形労働時間制のルールを十分に理解する必要があります。 この記事では、変形労働時間制で働いている・働く予定の労働者の方に向けて、変形労働時間制の制度の内容や残業代との関係をわかりやすく解説していきます。 変形労働時間制とは? 変形労働時間制とは、労働基準法に定める「1日8時間、週40時間」という法定労働時間を超えて仕事をしても、一定要件を満たせば法定労働時間の範囲内であると認められる制度です。 分かりやすく言い換えると、忙しい時期と暇な時期に合わせて、労働時間の使い方を調整できる制度と言うことができます。 変形労働時間制は、労働時間を適切に配分し、業務効率の向上と全体の労働時間短縮を図ることを目的に導入されています。 変形労働時間制のメリット・デメリット 変形労働時間制には、メリットとデメリットが存在します。 企業側のメリットは、残業代の抑制やシフト管理での24時間勤務が可能といった点が挙げられますが、ここでは労働者側から見た変形労働時間制のメリット・デメリットを解説します。 変形労働時間制のメリット 変形労働時間制における労働者のメリットとして、忙しいときは長く働き、忙しくないときは短く働くというメリハリの利いた働き方ができることです。 主なメリットは以下の通りです。 変形労働時間制のメリット メリハリの利いた働き方ができる ライフワークバランスが向上する可能性がある 子育て中に時短業務ができる可能性がある 変形労働時間制は、一部の労働者にとってはメリットになりますが、多くの労働者にとってメリットは少ないのが実状です。 変形労働時間制のデメリット 変形労働時間制における労働者のデメリットとして、最も懸念されるのは違法な長時間労働や残業代の未払いです。 とくに労働者の理解不足が原因で、以下のようなデメリットを被ってしまう可能性があります。 変形労働時間制のデメリット 変形労働時間制の条件を満たしていない状態で適用されてしまう 労使協定で締結した労働時間を超えて労働させられる 「変形労働時間制だから残業代はでない」と一方的に思わされてしまう 企業側の都合で、急にシフト(労働時間)が変更になる 深夜労働の割増賃金が支払われない 変形労働時間制の適用に関しては、企業側の導入手続きがずさんで、無効と判断されるケースもあります。企業側も理解しきれずに導入している場合もあるため、労使協定を確認しておくことが重要です。 変形労働時間制の種類 変形労働時間制には、以下の3種類があります。 変形労働時間制の種類 1年単位の変形労働時間制 1か月単位の変形労働時間制 1週間単位で労働時間を決める、非定型的変形労働時間制 変形労働時間制は、主に労働時間を清算する期間の範囲によって分類されます。 厚生労働省の「令和5年就労条件総合調査の概要」によれば、従業員30名以上の企業で変形労働時間制を採用する企業は全体の59. 3%でした。 種類別にみると「1年単位の変形労働時間制」が31. 5%、「1か月単位の変形労働時間制」が24. 0%と大半を占めています。そのため、2つの変形労働時間制の仕組みについて詳しく解説していきます。 1か月単位の変形労働時間制 まず、清算期間が短い1か月単位の変形労働時間制です。 1か月を変形労働時間の期間とする場合、月ごとの法定労働時間内の範囲で就業時間が定められます。 月ごとの法定労働時間は以下の通りです。 月の日数法定労働時間28日160. 0日29日165. 7日30日171. 4日31日177. 1日 月ごとの法定労働時間 ひと月当たりの就業時間が定められると、各日、各週に労働時間が振り分けられます。 たとえば、月末に忙しくなるような会社の場合は、以下のように労働時間が振り分けられます。 期間就業時間1日から24日まで1日7時間25日から月末日まで1日10時間 月単位の変形労働時間制の就業時間の例 この場合、通常の労働形態を採用していると、法定労働時間「1日8時間・1週40時間」に基づき、月末は毎日2時間の時間外労働が発生していることになります。 しかし、変形労働時間制を採用することで、ひと月の労働時間の合計が月単位の法定労働時間以内となるため、時間外労働が生じます。 このように、変形労働時間制では繁忙期と閑散期の労働時間を相殺することで、時間外労働の発生を抑えることができるのです。 1年単位の変形労働時間制 1年単位の変形労働時間制では、1か月以上1年未満の期間で、1週間あたりの労働時間を平均して40時間以内になるようにします。 1年単位とするのは、シーズンごとに、繁忙期・閑散期があるような業種に向いています。たとえば、プールやスキー場などです。 繁忙期に就業時間を延ばし、閑散期に減らすことで、1年間の法定労働時間に収まるように調整します。 1年単位での法定労働時間は以下の通りです。 1年の日数法定労働時間365日2085. 7時間366日(うるう年)2091. 4時間 1年単位での法定労働時間 また、1年単位での変形労働時間制の場合、閑散期の間ずっと休ませて、繁忙期に毎日働かせるといったようなことがないように、以下のような規制が定められています。 1年あたりの労働日数280日(年間休日85日)1日あたりの労働時間10時間まで1週間あたりの労働時間52時間まで原則連続で労働できる日数連続6日特定的に連続で労働できる日数1週間に1日の休み(最大連続12日) 1年単位での変形労働時間制における規制 変形労働時間制で残業が生じるパターンと時間の計算 変形労働時間制は、業務の繁忙期、閑散期に合わせて法定労働時間を変形させることで、残業を抑制するものです。 しかし、時間外労働をなくす制度ではないため、残業は生じ得ます。 変形労働時間制の残業時間の算出は、1日の場合、1週間の場合、対象となる清算期間の場合と、それぞれの時間数を合算した値を求める必要があります。 変形労働時間制における残業時間の計算方法|1日の場合 変形労働時間制において、1日ごとに残業時間を計算する場合、以下のように計算されます。 1日あたりの所定労働時間残業時間8時間以内労働時間ー8時間8時間を超えている労働時間ー所定労働時間 残業時間の算出方法 「労働時間ー所定労働時間」が変形労働時間制に特有のものであり、先に説明した仕組みによるものです。 具体的には以下のように残業時間が計算されます。 月火水木金所定労働時間51010105労働時間7101299時間外労働00201 所定労働時間を超える部分で、1日8時間を超える部分だけが、時間外労働となります。 たとえば、金曜日は所定労働時間が5時間に対して、9時間働いているので、4時間の時間外労働が発生しているように感じます。 しかし、時間外労働は、所定労働時間を超える部分で、1日8時間を超える部分だけであるため、1時間となるのです。 なお、この場合、5時間を超えて8時間以内の部分の労働に関しても、時給換算した給与を支払うべきとされています。これは、時間外労働とは別の言い方で法定内残業と呼ばれます。 変形労働時間制における残業時間の計算方法|1週の場合 基本的な考え方は1日ごとに計算する場合と同じで、以下のようになります。 1週間当たりの所定労働時間残業時間40時間以内労働時間ー40時間40時間を超えている労働時間ー所定労働時間 変形労働時間制に特有の残業|法定労働時間の総枠 変形労働時間は、1か月や1年といった期間(対象期間)内で1週平均40時間に収まっていることを条件に、1日8時間・1週40時間という原則の変更を認めるものです。 そのため、対象期間の長さに応じて、法定労働時間の総枠が決まっていることになります。 4週間であれば160時間、1か月(31日)は177. 1時間、1年(365日)だと2085. 71時間といった具合です。 変形労働時間制の場合、この総枠も法定労働時間として扱われるため、対象期間に行った実際の労働時間が総枠を越えれば、その分も時間外労働となります。 具体例として以下のような勤務時間であると仮定します。 勤務時間の具体例 1週目:10時間×5日勤務(週50時間) 2週目:6時間×5日勤務(週30時間) 3週目:6時間×5日勤務(週30時間) 4週目:10時間×5日勤務(週50時間) たとえば、3週目のどこか1日が7時間労働になったとします。 その場合、1日の労働時間は8時間を超えておらず、1週の労働時間も40時間を超えていないため、日・週という期間では時間外労働は発生していません。 しかし、他の日を欠勤や遅刻、休暇などなく所定労働時間通りに働いていたとすれば、この4週間の労働時間は161時間となります。 これは法定労働時間の総枠である160時間を超えており、超えた1時間分が時間外労働としてカウントされることになります。 この計算方法は、通常の労働時間制では用いられないため、注意が必要です。 変形労働時間制の残業代計算方法|残業の時間がポイント ここまで、変形労働時間制の基本と時間外労働(残業)の考え方について説明してきました。 最後に、時間外労働が生じた場合の残業代についてご案内します。 変形労働時間制でも残業代の計算方法は同じ 時間外労働(残業)に対しては、法律上、割増賃金(残業代)を支払わなければなりません(労働基準法37条1項)。 残業代の計算式は、以下の通りです。 残業代の計算 ①1時間あたりの通常の賃金額×②時間外労働をした時間数×③割増率 これは、通常の法定労働時間でも変形労働時間制でも変わりません。 また、①の1時間あたりの通常の賃金額の計算方法も同じですし、③の割増率が基本的に125%である点も同様です。 つまり、変形労働時間制でも割増賃金の計算に特例はなく、時間外労働をした時間数の計算に特殊点があるだけということです。 関連記事 ・残業代の正しい計算方法とは?基本から応用的な計算まで徹底解説! 変形労働時間制では残業時間の計算に間違いが起きやすい ただ、変形労働時間制における時間外労働(残業)の計算が複雑で、ミスが生じやすい点には注意しなければなりません。 この計算は会社側が適切に行い、割増賃金(残業代)を不足なく支払わなければなりません。 しかし、変形労働時間制の場合、複雑な計算が求められます。 残業代を計算するソフトと勤怠管理に特化したシステムが連動している場合にはミスの心配は少ないですが、そうでない限りはミスと隣り合わせの状態と言えるでしょう。 変形労働時間制|残業代未払いへの対処法 変形労働時間制では、労働者が制度を理解していないため、知らないうちに残業させられるケースや、残業代(または時間外手当)が支払われないケースが散見されます。 残業代未払いの対処法について確認しておきましょう。 自分の労働条件を知る 就業規則、労使協定で「労働日」と「その日の労働時間(所定労働時間)」を確認しましょう。休日は労働日以外の日です。 自分の労働条件に対する無知・無関心が、会社の不法行為を助長する場合もあります。 就業規則や労使協定の内容を知ることは、労働者の権利であるため遠慮は不要です。 勤務時間を記録する 毎日の勤務時間を記録しましょう。タイムカードや会社の勤怠システムで確認できる場合は、その記録を使います。 給与明細をチェックする 毎月、給与明細をチェックして残業代が正しく支払われているかチェックしましょう。 所定労働時間と実際の勤務時間を比較すれば確認できます。 残業代が正しくない場合は申し出する 残業代が正しくない場合は、会社へ申し出しましょう。 原因は事務的なミスだけでなく、会社が意図的に残業代を支払わないケースもあります。 弁護士に相談する 変形労働時間制で時間外労働や割増賃金に疑問を抱いた場合、弁護士に相談することをおすすめします。 労働問題を専門的に扱う弁護士に相談すれば、変形労働時間制の制度に関する詳しい説明をもらうことができます。 また、残業代請求の方法や証拠の収集などについてアドバイスをもらうことができるでしょう。 会社によっては、「変形労働時間制なら残業代は不要」という誤解も根強くあり、残業代未払いを会社に伝えても支払ってもらえないことも考えられます。 弁護士にトラブル解決を依頼すると、弁護士は本人の代理人として会社側と交渉を行います。 弁護士は交渉のプロで法律の知識や経験も豊富なので、労働者本人が対応するより有利に解決できる可能性が一気に高まるでしょう。 関連記事 ・残業代請求を弁護士に依頼する場合の費用相場は?弁護士に依頼するメリット5選! まとめ 変形労働時間制は、法定労働時間を業務の繁閑に合わせて変形させることのできる制度であり、残業をなくす・残業代を支払わないといった制度ではありません。 ただ、制度が複雑で残業時間の計算に特殊な点があることで、残業代の計算に誤りが生じやすいため、自身でも確認し、困ったら専門家に相談するべきといえます。 --- ### 労働基準法における休憩時間のルールは?休憩中に働いた分の賃金は請求できる? - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-04-30 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6861 - Categories: 労働問題全般 労働基準法における休憩時間のルールを解説しています。会社が労働者を休憩時間中に労働させるのは労働基準法違反となり、休憩時間中の業務には賃金(残業代)が発生します。休憩時間に関してお悩みの方は弁護士に相談してください。 「休憩時間に関する労働基準法の規定は?」「仕事が忙しくてお昼休みが取れない」 休憩時間を削って働いているのに、その分の給料が支払われないことに納得がいかない方も多いと思います。 休憩に関しては労働基準法で明確にルールが定められており、「6時間を超える労働に対して休憩が取れないこと」「休憩時間中の労働に賃金が払われないこと」は違法です。 この記事では、休憩時間が取れない・削られていることでお困りの方に向けて、労働基準法が定める休憩時間のルールや休憩時間中に労働した場合の賃金について詳しく解説します。 労働基準法における休憩時間のルール 休憩時間は会社によって異なりますが、6時間を超えた場合には一定の時間以上を設けなければならないと規定されています(労働基準法34条)。 休憩時間のルール 労働時間が6時間以内:不要 労働時間が6時間を超える場合:45分以上 労働時間が8時間を超える場合:1時間以上 労働時間が8時間ちょうどなら休憩時間は45分でも法律上は問題ありません。 しかし、45分休憩だと残業が発生した場合に休憩時間を15分追加しなければならず、残業の前に休憩という非効率な状態となってしまいます。 そのため、所定労働時間(会社で定められた始業から終業までの時間)を1日8時間・週40時間としている会社では、休憩を1時間としている会社がほとんどです。 休憩時間の取り方|休憩時間の3原則 休憩の取り方についても労働基準法の定めがあり、「休憩時間の3原則」とよばれます。 休憩時間の3原則 一斉付与の原則 途中付与の原則 自由利用の原則 それぞれの原則について解説します。 一斉付与の原則 一斉付与の原則とは、「会社は従業員全員に同時に休憩時間を付与しなければならない」といった決まりです。 パート・アルバイトや派遣労働者も同様です。特定の労働者だけ休憩を遅らせることは原則認められません。 お昼休みを交代制にするためには、会社は労働者の過半数で組織する労働組合などと「対象となる労働者の範囲」と「休憩の与え方」について労使協定を結ぶ必要があります。 労使協定が結ばれていないのにお昼休みが交代制になっている場合、これは労働基準法違反になります。 ただし、特定の職種に関しては、一斉付与をしなくても良いとされています。 一斉付与の原則が適用外となる職種 運輸交通業 商業 金融・保険業 映画・演劇業 郵便・電気通信業 保健衛生業 旅館、飲食店 官公署 これら特定業種については、一斉に休憩を付与すると業務に支障が生じるおそれがあるとして、一斉付与の原則が適用されません。 途中付与の原則 途中付与の原則は、休憩時間は労働時間の途中に付与しなければならないという決まりです。 「8時間勤務した後、1時間の休憩して退社」「出社後すぐに1時間休憩してその後に連続8時間勤務」などは、途中付与の原則に違反しています。 自由利用の原則 自由利用の原則は、会社は休憩時間を従業員に自由に利用させなければならないという決まりです。 休憩時間は外食や買い物などのほか、会社の秩序や業務に支障がなければ政治活動や宗教活動をすることも認められています(会社施設内で政治活動などを行う場合は、会社の許可が必要な場合があります)。 休憩時間を自由に利用できない下記のようなケースは、本来、休憩時間ではなく労働時間とすべきものです。 労働時間とカウントされるもの 当番制で昼休みに行う電話対応や来客対応 強制的なランチミーティング 勉強会 仕事の合間の手待ち時間 業務が発生すれば対応が必要な仮眠時間 仕事の合間の手待ち時間とは、たとえば電話を待っている時間や店舗などで客待ちをする時間です。 休憩中にお昼をデスクで食べていても、電話に出ることを命じられていた場合には、休憩時間ではなく、手待ち時間と呼ばれる労働時間となります。 また、仮眠時間はビルの警備業務などでよく設けられる時間です。仮眠時間も緊急対応が必要なときには対応が求められるため、手待ち時間となる可能性が高いと言えます。 休憩時間と労働時間のどちらになるのかが裁判で争われることもありますが、厳密にいえば、実際に仕事をしている時間以外でも、会社の「指揮命令下」に置かれている時間は労働時間となります。 休憩時間の付与の対象となるのは? 労働基準法における休憩時間の基本ルールを解説しましたが、雇用形態によって休憩時間の付与の対象となる人・ならない人も存在します。 パート・アルバイト・派遣労働者の休憩時間は? パート・アルバイトも、正社員と同様、6時間超の労働に対し45分以上、8時間超の労働に対し1時間以上の休憩を取る権利があります。 労働基準法の休憩時間に関する規定は、すべての労働者に対して適用されるからです。 派遣労働者も同様に、休憩時間を取ることができます。 ただし、派遣労働者の労働契約は派遣元の会社と締結するものなので、労働契約で決められた休憩時間が取れない場合は、派遣元に相談してみましょう。 管理職の休憩時間は? 管理職の休憩時間はどうでしょう。「管理監督者」と認められる管理職については、休憩時間を含む労働時間に関する法律は適用除外となっているため、休憩時間は保証されていません。 気を付けなければならないのは、「管理監督者」は法律で厳密に基準が定められており、いわゆる課長・部長などの役職があっても即座に管理監督者として認められるわけではないという点です。 法律上の管理監督者と認められるためには、以下の要件を知りたい方は、管理職は残業代が出ない?残業代がもらえるケースや基準を解説』の記事をご覧ください。 休憩中に働いた分の賃金は請求できる? 繁忙期や人手不足で、休憩の時間を削って働くことがあるかもしれません。ここでは、休憩中に働いた分の賃金について解説していきます。 同日に休憩時間が取れない場合は残業代を請求できる 法律上、休憩時間に行った労働に対しては、残業代を請求できます。 ただし、忙しくて休憩を取れないときには、同じ日の別の時間帯で休憩時間を取ることが原則です。そのため、残業代を請求できるのは、同日の別の時間帯で代わりの休憩が取れなかった場合に限られます。 この場合、休憩時間に行った労働に対しては、所定労働時間を超えた残業代として賃金を受け取ることができます。 法定労働時間を超える場合の残業代は割増して計算 休憩中の労働時間を含めて1日の労働時間が法定労働時間を超えた残業については、割増賃金をプラスした額を請求できます。 法定労働時間は「1日8時間、1週40時間」で、これを超える労働時間に対する割増は25%です。 定時で仕事が終わっても、休憩時間を削ったことによって実際の労働時間が法定労働時間を超えれば、割増した残業代を受け取ることができます。 残業代の計算方法について詳しく知りたい方は『残業代の正しい計算方法とは?基本から応用的な計算まで徹底解説!』をご覧ください。 休憩時間が取れない場合の対処法 休憩時間を取れないことが常態化している場合、会社は労働基準法違反となり、「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金」を科せられる可能性があります。 会社から休憩時間がもらえない、休憩時間の労働に対し賃金が支払われないなどの場合には、下記の対策を検討してみましょう。 会社に申し出る 休憩が取れない場合、まずは直属上司に申し出ましょう。事態を把握してなかった場合、問題点に気づいた上司が対応してくれるかもしれません。 上司が対応してくれなければ、総務や人事など会社の担当部署に相談する方法もあります。 また、自分一人で会社に申し出ることが難しければ、労働組合に相談するという選択肢もあります。 労働基準監督署へ相談する 社内での解決が望めない場合は、労働基準監督署に相談する方法があります。 労働基準監督署は、労働基準法をはじめとする労働関係の法令を守らない企業を取り締まる機関です。 労働基準監督署は、労働者に対して、有効なアドバイスをしてくれたり、会社に指導・勧告してくれる可能性があります。 ただし、労働基準監督署は会社に法令を順守させることを目的とする機関ですので、労働者の個人的な問題を解決することは期待できません。 また、指導・勧告はあくまで強制力を伴わない行政指導であり、会社が動かない可能性もあることにも注意しましょう。 参考:労働基準監督署の所在地一覧 弁護士に相談する 休憩時間に関する問題を解決するための最も有効な手段は弁護士への相談です。 弁護士に相談すれば、休憩時間も労働していたことを証明するための証拠の集め方や、法的手続きも視野に入れた今後の対応などのアドバイスをもらうことができます。 弁護士に依頼すれば、複雑な残業代の計算や会社との交渉を一任することができ、さらには会社に対して未払い賃金の請求を行うことも可能です。 また、交渉が決裂してトラブルに発展した場合でも、弁護士ならば法的手続きにスムーズに移行できます。 「休憩時間がとれない」「休憩中も働いている」とお悩みの方は一度、弁護士に相談することをおすすめします。 弁護士への相談にあたって、費用相場や流れ、メリットなどを知りたい方は『残業代請求を弁護士に依頼する場合の費用相場は?弁護士に依頼するメリット5選!』の記事をご覧ください。 --- ### 裁判で残業代請求を行う場合のメリットは?デメリットは期間の長さ? - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-04-25 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6852 - Categories: 残業代請求 裁判で残業代請求をする場合の必要知識を解説!裁判のメリット、デメリットを網羅しています。裁判と労働審判の比較、手数料や弁護士費用などにも触れています。 「残業代未払いを訴えたい」「残業代請求の裁判の期間はどれくらい?」 未払い残業代を会社に請求する方法として、裁判が思い浮かぶ方は多いと思います。 しかし、裁判について「手続きが複雑で難しそう」「費用や期間がかかる」と不安になる要素が多く、なかなか行動を起こせない方も多いのではないでしょうか。 この記事では、残業代で訴訟を起こすか迷っている方に向けて、残業代請求の裁判のメリット・デメリットや裁判の期間、裁判を行う場合のポイントを詳しく解説していきます。 裁判で残業代請求を行うメリット 残業代請求の主な方法として、裁判のほかにも交渉や労働審判など、いくつかの手段があります。 その中から、裁判を選ぶことで得られるメリットは、以下の3つが挙げられます。 裁判で残業代請求を行うメリット 問題の是非を明確に決定できる 相手を強制的に巻き込むことができる 請求を認める判決を得れば最終的な解決まで見込める 問題の是非を明確に決定できる 裁判は、裁判所が法律を使ってトラブルを解決する手続きです。法律的な強制力により、問題の是非を明確に決められることが裁判を利用するメリットの一つと言えます。 裁判では、法律を厳格に適用することで、争われている問題の白黒をはっきりさせることが可能です。 残業代請求においては、請求した金額に対して支払われる金額を明確にすることができるでしょう。 関連記事 ・残業代請求の勝率はどのくらい?残業代を回収できるケースとポイントを解説 訴訟相手を強制的に巻き込むことができる 訴訟を起こせば、相手を強制的に巻き込むことができます。 残業代請求の裁判では、訴える側である原告が「未払いの残業代を○○円請求します」という旨の訴状を裁判所に提出することからスタートします。 訴状は裁判所から訴えられた相手である会社(被告)に送られますが、被告は「裁判に応じない」ということが原則としてできません。 送られてきた訴状を被告が無視して裁判に参加しなかったとしても、裁判所は原告の訴えを認める内容の判決を下すことができるからです。 この仕組みにより、トラブルを強制的に解決できるため、交渉での進展が見込めなかったり、そもそも交渉に応じてもらえない事件にも対処することができます。 残業代請求においては、会社と労働者の立場上、労働者が会社に交渉しても、会社側が頑なな姿勢を崩さなかったり、不利益な取り扱いをしたりして、解決に至らない場合があります。 裁判を起こすことで、相手を強制的に巻き込むことができ、最終的な解決につなげることができます。 請求を認める判決を得れば最終的な解決まで見込める 裁判で下される判決には、非常に強い強制力があります。 原告の請求を一部でも認める判決が出た場合、被告がその内容に従わなかったとしても強制的に判決の内容を実現することが可能です。 たとえば、残業代請求のように金銭の支払いを求める場合、最終的には被告の財産を強制的に売却し、原告はその売却代金から支払いを受けることができます。 これを強制執行といいます。 さらに、同じ事件でいったん判決が確定した場合、再度同じ事件について裁判をすることは原則として許されません。 そのため、判決が確定した後で、会社が「出し忘れていた証拠があった」「事情が違っていた」と主張しても、再度争い(裁判)になることはありません。 判決が持っているこれらの力によって、トラブルを最終的に解決できる点も、裁判を選ぶメリットになるでしょう。 裁判で残業代請求を行うデメリット|労働審判との比較 このように、残業代請求を裁判で行うことにはメリットがあります。 しかし、残業代請求を裁判で行うデメリットもあります。 裁判以外の残業代請求の手段 裁判で残業代請求を行うデメリットは、裁判以外で残業代請求を行う方法と比較すると分かりやすいです。 裁判以外で残業代請求を行う方法としては、以下の3つが挙げられます。 裁判以外の残業代請求方法 会社に直接請求する 労働基準監督署に申告する 労働審判 裁判はこれらの手段に比べ、一般的に期間と費用がかかるとされています。 もっとも、会社に直接請求しても、会社が未払い残業代の支払いを拒めばいつまでも解決しません。 また、労働基準監督署への申告は、あくまで「残業代の未払いという法律違反の是正」が目的であるため、未払い残業代全額が支払われることについてはあまり期待できません。 相談にあたって費用はかかりませんが、最終的に得られる金額はむしろ裁判よりも低くなってしまうことも考えられます。 ここでは、裁判と同じく裁判所の関与のもと進められる、労働審判との比較を中心に解説していきます。 残業代請求を裁判で行うことのデメリット①期間が長くなる 残業代請求を裁判で行うことのデメリットの1つ目は、解決までの期間が長くなる可能性がある点です。 残業代請求の裁判は、期日の回数制限がありません。「期日」は、当事者が自身の主張を行なったり、証拠を整理したりする場のことです。 そのため、残業代未払いの裁判にかかる期間は、解決まで1年以上になることも多くあります。 実際に、裁判で労働紛争を争った場合の平均審理期間は、17. 2か月と1年を超える長期間となっています。 参考:2022年|最高裁判所事務総局「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書」 一方、労働審判は、その名の通り労働トラブルだけを扱う制度であり、労働トラブルの迅速な解決が制度の目的として掲げられています(労働審判法1条)。 労働審判は原則として3回以内の期日で結論を出さなければならないと定められています(労働審判法15条2項)。 労働審判の場合は、平均90. 3日で解決しています。 参考:2022年|最高裁判所事務総局「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書」 裁判と労働審判の解決までの期間の比較 裁判労働審判期日の回数無制限原則3回解決までの期間1年以上かかることも2~4か月程度 残業代請求を裁判で行うことのデメリット②費用がかかる 残業代請求を裁判で行うときにかかる費用は、主に裁判所への費用と弁護士費用があります。 もっとも、労働審判と裁判でかかる費用に大きな差が生じることは基本的にないでしょう。 裁判所費用 裁判も労働審判も裁判所が関与する制度であり、利用するためには手数料が必要です。 裁判所費用の内訳として、収入印紙代と郵便切手代があげられます。 収入印紙代は、訴状の書類に貼付する裁判の申立手数料です。残業代請求では、会社に請求する金額に応じて金額が変動します。 たとえば、残業代請求において、100万円を相手方会社に請求する場合の手数料は、裁判で1万円、労働審判で5,000円となっています。 参考:手数料額早見表 郵便切手代は、裁判所から被告や関係者に郵便物を送付するための郵便費用です。郵便切手代は、約6,000円程度です。 弁護士費用 裁判を行うことは自力でも可能ですが、専門家である弁護士に依頼すべきでしょう。 そのため、裁判にあたっては手数料額だけでなく弁護士費用もかかるといえます。 弁護士費用は、依頼する弁護士によって異なります。着手金、成功報酬金、実費などから構成されます。 着手金は、弁護士に依頼する際に支払う費用です。成功報酬金は、裁判で一定の成果が得られた場合に支払う費用です。実費は、弁護士の交通費や証拠収集などの費用です。 着手金は、おおよそ10~30万円が相場となります。成功報酬金は相手から回収できた額(慰謝料・損害賠償金など)のうち、おおよそ20~30%が相場となります。 弁護士費用は、慰謝料の請求額によって大きく異なるため、どのくらいの費用がかかるか詳しく知りたい方は、弁護士に相談しましょう。 【まとめ】手段ごとのメリット・デメリットの比較 手段メリットデメリット会社に直接請求・費用が抑えられる・労働審判や裁判に比べれば弁護士費用も安い・会社が和解を拒否する可能性がある労働基準監督署に申告・費用がかからない・会社の是正が目的であり未払い賃金の支払いは期待できない労働審判・裁判に比べ解決までの期間が短い・裁判に比べ手数料等は安い・弁護士への依頼がほぼ必須になる・強制力はない裁判・強制力がある・弁護士への依頼がほぼ必須になる・解決までの期間が長い 関連記事 ・残業代請求を弁護士に依頼する場合の費用相場は?弁護士に依頼するメリット5選! 裁判で残業代請求をする場合のポイント ここまで、裁判で残業代を請求する場合のメリット・デメリットについてみてきました。 最後に、それを踏まえ、残業代請求をスムーズに進めていくためのポイントを解説します。 残業の証拠を十分に集める 裁判は、法律を厳格に適用してトラブルを最終的に解決する制度です。 したがって、自分の主張は法律的な根拠をもって組み立てなければなりません。 その際に重要となるのが、残業の事実を裁判官に認めてもらうための証拠です。 たとえば、残業代は残業した時間に応じて支払われることになるため、自分が何時間残業したのかという事実を示す必要があります。 その際に重要となるのが残業代請求の証拠です。 証拠は、タイムカード等の勤怠記録や就業規則といった資料のほか、自分が仕事をしていたことを示すことができる資料を幅広く検討します。 残業代に関する事実を整理し、証拠となりそうな資料をできる限り揃えておくことがポイントになります。 残業代請求で集めておくべき証拠 雇用契約書・労働契約書 就業規則に関する書面 タイムカード勤怠管理システム 給与明細 など タイムカードや勤怠システムは、始業や終業の時間がわかるので、証拠として役立ちます。 タイムカードや勤怠システムなどが用意できない場合には、「始業・終業の時間を記した手書きメモ」「上司の承認を得た業務日誌」などを収集しましょう。 また、証拠がない場合でも、証拠の開示請求を行えば、証拠を収集できる可能性が高まります。 関連記事 ・残業代請求で必要となる証拠を徹底解説!証拠がない場合の対処法は? 残業代請求に強い弁護士に依頼する 残業代請求を裁判で行うには、多くの時間と手間がかかる複雑な作業が必要であり、法律の知識が乏しい労働者一人で対応するには限界があります。 弁護士に裁判での請求を依頼することで、裁判を一任でき、的確な訴訟対応が望めます。 ただし、記事で解説したように、残業代を裁判で解決することには、期間や費用などのデメリットもあります。 まず自身の状況に訴訟が向いているのかどうかについて判断してもらうためにも、残業代請求の悩みは弁護士に相談することが効果的です。 残業代請求の時効は3年です。退職から年月が経ってしまうと証拠の収集が難しくなり、残業代が請求しにくくなります。できる限り早く弁護士に相談しましょう。 弁護士への相談にあたって、費用相場や流れ、メリットなどを知りたい方は『残業代請求を弁護士に依頼する場合の費用相場は?弁護士に依頼するメリット5選!』の記事をご覧ください。 --- ### 運送業トラック運転手の残業代請求は弁護士に相談!残業代の計算方法は? - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-06-04 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6855 - Categories: 残業代請求 トラック運転手の残業代請求について徹底解説!2024年4月からトラック運転手の残業時間の上限は960時間となります。残業代未払いでお悩みの方は弁護士に相談しましょう。 「トラックドライバーをしているが残業代が支払われない」「運送会社に勤めており、残業代を請求したいけどいくらもらえる?」 トラック運転手などの運送業は、1日の労働時間の把握が難しいことが多く、残業代トラブルが発生しやすい業種となっています。 2024年4月1日の労働基準法の改正により、トラック運転手の残業時間の上限は年960時間に制限されました。 しかし、業務量が減るわけではないため、長時間の残業を強いられている方もいるかもしれません。 そこで、この記事では、サービス残業にお悩みのトラックドライバーの方に向けて、残業代が発生する状況や給与の計算、未払い残業代の請求方法について詳しく解説します。 2024年4月からトラック運転手の残業時間の上限が年960時間に トラック運転手の残業時間(時間外労働)の上限は、2024年4月1日から年960時間になりました(厚生労働省「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」)。 2024年3月31日までは残業時間の制限がなかったため、上限が新たに設けられたかたちになります。 残業時間の規定が適用されたことに伴い、いま一度残業代の計算方法や請求方法について確認しておきましょう。 トラック運転手の残業代に関するポイント トラック運転手の残業代を計算するうえでは、以下のポイントを押さえておく必要があります。 会社からは何らかの理由を付けて「残業代は出ない」と伝えられるケースも多いので、しっかりと確認しましょう。 トラック運転手の残業代に関するポイント 歩合制でも残業代は支払われる 荷待ちを含めた待機時間や、渋滞で止まっている時間でも残業代は発生する 「休憩時間」も指揮命令下にあるなら残業代は発生する 歩合制でも残業代は支払われる トラックドライバーの残業代を計算するポイントの1つとして、歩合制でも残業代が支払われるということが挙げられます。 会社側から「残業代は歩合給で支払っているので別途支払う予定はない」などと主張され、残業代が支払われないケースも多いです。 しかし、歩合給は成果に対する報酬であることから、時間外労働に対しての報酬である残業代とは性質が異なります。したがって、歩合制であったとしても残業代を受け取ることができます。 「残業代は歩合給で支払っている」という主張が認められるのは、以下の2点を満たした時だけです。 歩合給の金額が、実際の労働時間に応じて適切に増額されている 給与明細上、通常の労働時間の賃金と残業代の賃金が明確に区別できる 荷待ちを含めた待機時間や渋滞で止まっている時間でも残業代は発生する トラック運転手の残業代は、荷待ちを含めた待機時間や、渋滞で止まっている時間でも発生します。 法律上では、会社の指揮命令下にあり、いつでも作業できる状態であれば労働時間となります。 荷待ちで待機している時間や、渋滞で止まっている時間は、労働時間とみなされます。 労働時間である以上、賃金あるいは残業代が発生することになります。 「休憩時間」も指揮命令下にあるなら残業代は発生する 休憩時間とは、労働から解放される自由に利用できる時間です(労働基準法34条3項)。 荷待ちなどの待機時間に休憩するように指示されたとしても、その時間は休憩時間ではなく労働時間とみなされます。 指揮命令下にあるなら休憩時間や仮眠時間も労働時間であり、労働時間である以上、賃金あるいは残業代は発生します。 トラック運転手の残業代計算方法 トラック運転手の残業代の基本的な計算方法は、以下のようになります。 トラック運転手の残業代計算方法 残業代=1時間あたりの賃金×割増賃金率(1. 25%)×残業時間1時間あたりの賃金=基準賃金÷月平均所定労働時間 まずは残業代計算において基準となる時給がいくらになるか計算するところから始めましょう。 残業代の計算方法について詳しく知りたい方は『残業代の正しい計算方法とは?基本から応用的な計算まで徹底解説!』の記事をご覧ください。 歩合制を導入している場合は以下のようになります。 歩合制の場合 残業代=1時間あたりの賃金×割増賃金率(0. 25%)×残業時間1時間あたりの賃金=歩合給÷総労働時間 歩合制を導入している場合、割増賃金率が0. 25%になることに注意が必要です。また、給料が歩合給と固定給の両方で支払われている場合は、それぞれ分けて残業代を計算する必要があります。 また、みなし残業(固定残業代)制が導入されている場合も、追加の残業代が受け取れる場合があります。 たとえば、月当たりに30時間分の固定残業代が支払われているとき、実際には40時間残業したとしたら超過した10時間分の残業代が受け取れます。 なお、歩合制やみなし残業(固定残業代)制が導入されている場合の残業代計算は、複雑になるケースが多いです。ご自身で残業代の計算が難しい場合には、専門家である弁護士に相談してみましょう。 残業代計算でお悩みのドライバーの方へ サービス残業は違法であり、未払い残業代は請求できます。請求できる未払い残業代の目安を知りたい方は、以下のツールもご活用ください。 残業代計算ツール トラック運送業で未払いの残業代を請求する方法 トラック運送業で未払いの残業代を請求する方法は、大きく以下の3つが挙げられます。 未払い残業代の請求方法 会社に自分で請求する 労働審判を利用する 訴訟を提起する 残業代の請求方法については、『未払い残業代請求の方法|証拠や時効など基礎知識を解説』の記事でより詳しく解説しています。併せてご覧いただくと理解が深まるでしょう。 (1)会社に自分で請求する 未払いの残業代を会社へ直接請求する方法は、大きく2つあります。話し合いで請求する、内容証明郵便で請求する方法です。 会社が労働者の残業を認知しておらず、請求することで残業代が支払われる可能性が高い場合は、話し合いの上で請求する方が早いでしょう。 しかし、意図的に支払っていない会社の場合、話し合いからトラブルに発展する可能性があります。 内容証明郵便で請求すれば、直接話し合う必要がなく、未払いになっている残業代を請求できます。 また、内容証明郵便を利用することの最大のメリットは、残業代の請求を行った証拠を残すことで時効の完成をストップすることにあります。内容証明郵便の書き方やメリットについては『【テンプレートあり】残業代請求書(内容証明)の書き方・送付方法を解説!』の記事をご覧ください。 (2)労働審判を利用する 会社との話し合いや内容証明郵便による請求でも残業代が支払われなかった場合は、労働審判によって解決を図ることもできます。 労働審判は、訴訟よりも速やかに手続きが進むため、早期の解決が期待できるでしょう。 関連記事 ・労働審判とは?制度の内容や手続きの流れを弁護士がわかりやすく解説 (3)訴訟を提起する 労働審判手続で解決出来なかった場合や、労働審判手続を利用しない場合には、会社に対して残業代未払いの訴訟を提起できます。 裁判官による判決が出るため、明確な結論を得ることができる方法です。また判決には強制力があり、同意の有無に関わらず双方が判決に従う義務を負うことになります。 ただし、訴訟を起こすには法的な知識や手続きが必要であり、解決までの期間が長くなりやすいというデメリットがあります。 関連記事 ・裁判で残業代請求を行う場合のメリットは?デメリットは期間の長さ? 未払い残業代を請求する場合の注意点 残業代を請求する場合には、以下の3点に注意しておきましょう。 残業代を請求する場合の注意点 残業をした証拠を集めておく 未払い残業代の正しい額を把握する 時効が成立する前に請求する 残業をした証拠を集めておく 未払いの残業代を請求する場合には、残業をした証拠を集めておくことが重要です。 集めておくべき証拠には、タイムカードやシフト表、雇用契約書などが挙げられます。 また、タコグラフも残業代の証拠として有効です。 タコグラフがあれば、運転により残業していたことを客観的な証明として示せる可能性があります。 さらに、運転日報や自身の出退勤のメモも残業をしていた証拠となる可能性があります。 証拠を集める際には、できるだけ数か月単位の証拠を集めておくことがポイントです。 残業代請求の証拠については、『残業代請求で必要となる証拠を徹底解説!証拠がない場合の対処法は?』の記事でより詳しく解説しています。 未払いの残業代の正しい額を把握する 未払いの残業代を請求するためには、未払い残業代の額を正しく把握する必要があります。 請求する残業代を計算するときには、証拠のある・なしもメモをしておくと、会社への請求や弁護士への相談をおこなうときに便利です。 正確な額の把握をしたい、計算にかかる手間や時間を節約したいという方は、まず弁護士に相談するのがおすすめです。 時効が成立する前に請求する 未払い残業代の時効は3年です。 時効が成立してしまうと、残業代を受け取ることが難しくなってしまうため、時効が成立する前に未払いの残業代を請求しましょう。 関連記事 ・残業代請求の時効は3年!将来は5年に?時効中止や請求の方法を解説 未払い残業代の請求は弁護士に相談ください 本来であれば、残業代は会社が正確に計算し、労働者へ支払うべきものです。しかし、トラック運転手の残業代は会社が拒む場合も多く、社会問題にもなっています。 会社に対して直接請求するとトラブルに発展する恐れもありますし、自分で手続きの準備をしているうちに時効にかかれば請求できなくなります。 自身で未払い残業の証拠を収集しても、証拠として認められるのか分からないケースもあるでしょう。 トラック運転手の未払い残業代の請求は、弁護士に相談することがおすすめです。 法律の専門家である弁護士であれば、安心して未払い残業代の請求を依頼することができます。 また、証拠の収集方法や適切な証拠についても、アドバイスをもらうことができるでしょう。 万が一、会社とのトラブルに発展した場合でも、スムーズに労働審判や訴訟などの法的手続きに移行することが可能です。 残業代を弁護士に相談するメリットについて詳しく知りたい方は、『残業代請求を弁護士に依頼する場合の費用相場は?弁護士に依頼するメリット5選!』の記事をご覧ください。 無料相談を受け付けている弁護士事務所もありますので、まずは弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。 --- ### 残業代請求における和解金の相場は?和解金は何で決まる? - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-02-16 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6847 - Categories: 残業代請求 残業代請求における和解金の相場を解説!金額に影響を与える要素とは?相場の具体的な金額を記載。金額の多寡を決める重要ポイントも紹介。残業代請求の計算方法や集めるべき証拠も解説しています。 「残業代請求における解決金の相場はどのくらい?」「和解したら本来の残業代よりも少ない額しか回収できない?」 残業代の未払いは違法であり、本来であれば使用者(会社)が全額支払うべきものです。しかし、実際には残業代請求をしてもその全額ではなく、いくらか譲歩した和解金で和解することが多くあります。 残業代請求の和解金に確固たる相場はありません。労働者の給料や残業時間によっても、和解金額が異なるからです。 この記事では、残業代請求の和解金相場の推定や、和解金は何で決まるのかを解説していきます。 残業代請求の和解金の相場がない理由 そもそも残業代請求における和解とは? 和解金は文字通り、和解に際して支払われる金額です。 和解というのは、トラブルの当事者がお互いに譲歩してトラブルを終結させる約束(契約)のことです。 残業代請求でいえば、「請求している残業代の金額のうちいくらかを使用者が支払うことで、残業代請求におけるトラブルを解決済みとする」ということになるでしょう。 使用者が支払う金銭は本来残業代ですが、和解の際には「トラブルを解決するための金銭」という意味で、和解金や解決金といった別の名称になることが一般的です。 和解金が支払われることで、残業代請求におけるトラブルが解決することとなります。 和解金相場の確定が難しい理由は事案の違い 和解金の相場の確定が難しい理由は、「和解がお互いの譲歩によってなされる以上、そもそもいくら残業代を請求していたかによって和解金の額も変わる」からです。 当然、請求する残業代は、給料や残業時間、勤めている年数などの事案によって異なります。 一般的には、請求金額が高ければ和解金の額も高くなると言えるでしょう。 もっとも、これは請求金額に一定の法的な根拠があることが前提です。 残業代請求における和解金の相場の推定 残業代請求の和解金相場はありませんが、実際にどの程度の金額が動いているかは気になるところだと思います。 そこで、残業代請求だけの資料ではありませんが、和解金の相場に近いと思われる報告書の内容をご紹介します。 和解金の相場を知るには労働審判の調査結果が有効 労働審判は、会社との労働トラブルを「労働審判委員会」という第三者を交えて解決する制度です。 参考:労働審判手続 対象となるトラブルは幅広く、残業代請求はもちろんのこと、解雇や配置転換、ハラスメントなど、会社と労働者個人とのトラブルであればほとんど対象となります。 また、労働審判委員会は、労働審判官(裁判官)1名と労働審判員2名から構成されます。2名の労働審判員は裁判官ではありませんが、労働関係についての専門的知識・経験を持っている人が選ばれます。 労働審判では、この労働審判委員会が当事者(会社と労働者)間の労働トラブルについて、和解による解決を促します。 このような仕組みは「調停」と呼ばれており、労働審判が利用される事件のうち、70%以上が調停によって終了しています。つまり、和解がまとまったということです。 労働審判で調停が成立した際に支払われる金銭は、「解決金」という名目になることが一般的ですが、意味は和解金とほぼ同じです。 したがって、労働審判における解決金額を確認すれば和解金の相場に近い情報が得られると思われます。 残業代請求以外も含んだ和解金の相場に関係する資料 東京大学社会学研究所が発表している「第2回 労働審判制度についての意識調査 基本報告書」という資料では、労働審判を利用した労働者・使用者にアンケート調査を行った結果が報告されています。 調査では、残業代請求以外のトラブル解決に労働審判を利用した人の回答も含まれており、賃金関係のトラブルで利用した人は半分程度となっています。 特に、解雇に関するトラブルでの利用も相当数含まれているため、残業代請求における和解金の相場資料とは言えませんが、解決金など支払われた金銭に関する労働者側の回答は以下の通りです。 解決金の金額労働者の割合50万円未満19%50万円〜100万円未満20. 8%100万円〜150万円未満18. 5%150万円〜200万円未満11. 9%200万円〜300万円未満7. 7%300万円〜500万円未満12. 5%500万円〜1000万円未満7. 7%1000万円以上1. 8% ※第2回 労働審判制度についての意識調査基本報告書より 中央値は120万円、平均値は195. 3万円です。 一応、50万円から200万円程度となることが多いとは言えそうですが、解決金額はかなりばらついています。 この結果からも、残業代請求の和解金に確固たる相場はないことがわかるでしょう。 残業代請求の和解金は何で決まるのか 和解金に影響を与える要素①|残業代請求額の計算 和解金に大きな影響を与える要素の1つ目は、「請求金額の大きさ」が挙げられます。 残業代請求を考えている方は、請求金額がどのように決まるのかを知っておく必要があるでしょう。 残業代請求では、まず、未払いの残業代額を計算しなければなりません。 残業代の額は、大まかには以下のように計算されます。 残業代の計算方法 残業代=残業1時間あたりの賃金額(単価)×残業時間数 ここからすでに支払われている残業代を差し引いた金額が、未払いの残業代額となります。 さらに、基本的に未払いの残業代額に対して年3%分の遅延損害金を追加して請求することができる(民法404条)ため、これが会社に対する請求額ということになります。 計算に関する要素のうち、残業代請求の事案の多くは、残業時間数が請求額の重要なポイントとなります。 残業時間数が長ければ長いほど請求金額も高くなるわけですが、会社側も争ってきますので、しっかりと根拠を持っておくことが重要です。 関連記事 ・残業代の正しい計算方法とは?基本から応用的な計算まで徹底解説! 和解金に影響を与える要素②|残業代請求の証拠 和解金に大きな影響を与える要素の2つ目は、「残業した時間数を示す証拠があるか」です。 残業代請求をする際には、証拠をもとに金額を算定し、会社に残業代を請求していくことになるでしょう。証拠がなければ労働審判や裁判に訴えても認められる可能性が低くなります。 つまり、証拠の有無で請求できる金額も変わるため、和解金額には証拠がどの程度揃っているかという点も大きな影響を与えるということです。 もっとも、残業した時間数についての証拠としては、タイムカード等の公式な勤怠記録以外にも以下のものが有効です。 残業時間を示す証拠として有効なもの タイムカード等の公式な勤怠記録 業務用PCの使用時間の記録・ログイン時間の記録 ビジネスチャットやメールの送信履歴 顧客を管理している社内システムへの書き込み記録やアクセス記録 会議の議事録(開始時刻や終了時刻が記載されているもの) 可能な限り、証拠を揃えておくことが和解金の面でも有利に働くでしょう。 関連記事 ・残業代請求で必要となる証拠を徹底解説!証拠がない場合の対処法は? 和解金に影響を与える要素③|残業代請求についての弁護士の有無 和解金の額に影響する要素の3つ目は、「残業代請求を弁護士に依頼しているかどうか」です。 なぜなら、労働審判や労働裁判のほとんどは弁護士が代理人として遂行しているため、弁護士を立てていないと会社側の主張(反論)にうまく対応できず、和解金額が低くなってしまうからです。 弁護士は根拠をもって請求可能な金額を見極めることができ、証拠の収集と活用にも長けています。 適切な和解金を得るためには弁護士に相談・依頼することが効果的と言えるでしょう。 関連記事 ・残業代請求を弁護士に依頼する場合の費用相場は?弁護士に依頼するメリット5選! まとめ この記事では、残業代請求の和解金の相場について解説をしました。 残業代請求の和解金に確固たる相場はありません。 しかし、残業をしている証拠を収集のうえ、弁護士に依頼し適切なアドバイスを受けることで、根拠をもって残業代を請求することが可能です。 弁護士は残業代未払いの問題解決に向けて、労働者のサポートを行います。残業代に関してお悩みの方は、弁護士に相談してみましょう。 --- ### テレワークでも残業代は出る?在宅勤務で残業代が出ない場合の違法性は? - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-03-29 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6849 - Categories: 残業代請求 テレワーク(在宅勤務)における残業について解説!テレワークにも労働基準法が適用されます。テレワークにおける残業ルールのよくあるパターンや残業代発生の仕組み、残業トラブルの相談先を紹介しています。 「テレワークでも残業代は出る?」「在宅勤務の日は残業禁止と言われた」 テレワークが導入されている企業で勤めている方は、テレワークの残業でお悩みの方は多いのではないでしょうか。 テレワークは労働時間を正確に把握することが難しく、業務量が増加しやすい傾向にあり、残業トラブルが生じやすいです。 この記事では、テレワークにおける残業について詳しく知りたい方に向け、テレワークの残業ルールや出社する場合との違いを詳しく解説します。 テレワークの残業ルール|基本は出社と変わらない テレワークの場合、自分の仕事の様子が実際に上司に見られているわけではありません。 この点が出社して働く場合との一番の違いであるため、まずはそれが残業にどう影響するのかを解説します。 テレワークでも残業の仕組みを含めて労働基準法が適用される テレワークというのは、情報通信技術(ICT)を利用した働き方の総称です。 実は、テレワークについて定めた法律は存在しないため、テレワークでも出社して働く場合と法律の決まりは同じです。 以下のような残業に関する基本ルールは、テレワークでも変わりません。 残業代に関する基本ルール 会社は各労働者の毎日の労働時間を把握しなければならない 会社が残業を命じるには根拠が必要 残業の中でも、時間外労働をさせるには36協定が必要 残業には残業代の支払いが必要 時間外労働には割増賃金の支払いが必要 関連記事 ・残業代について解説!残業の定義、計算方法や残業代未払い時の対処法 テレワークの特徴|残業のルールは会社次第 テレワークには、「社屋や工場に出社しない」ことによって、以下のような特徴があります。 テレワークの特徴 タイムカードなどの出社を必要とする勤怠管理の仕組みが使えない 仕事の様子を他人(主に上司)が確認できない 報告・連絡・相談に通信手段を使わなければならない 仕事をする環境・設備が通常時と異なる プライベートとの境界があいまいになる テレワークは、出社して働く場合に比べると、会社が労働者の労働時間を正確に把握することが難しくなる傾向にあります。 また、上司が部下の仕事量を把握しにくいため、業務量が増加しやすくなります。 以上のように、テレワークには残業を生じやすくさせる原因がいくつかあります。 ただし、法律上の残業の扱いは出社でもテレワークでも変わりません。 そのため、会社がどれだけ残業を生じさせやすくする原因に対処をとっているかによって、従わなければならないルールや注意点が変わってきます。 残業のルールがテレワークと出社とで変わるパターン テレワークの運用は会社次第のため、残業に関するルールも会社によってまちまちです。 ただ、出社時と異なるルールとなる典型的なパターンがいくつかあります。 そこで、次に、そのパターンについて解説します。 テレワークの場合に残業が禁止されている テレワーク時に労働時間の把握が難しくなることを見越して、会社からあらかじめ残業が禁止される場合があります。 会社のルールではありますが、勝手に残業をすると、業務命令違反を理由に懲戒処分を受ける可能性もゼロではありません。 テレワークで残業が禁止されているにもかかわらず、どうしても残業が必要となれば、上司に確認するなど慎重な対応が求められます。 テレワーク時に残業するには許可が必要とされている 残業は禁止されていないものの、会社の許可を得なければ残業ができない場合もあります。 残業が禁止されているとき同様に、許可を得ずに残業をしてしまうと懲戒処分の可能性があります。 ただ、仕事の状況を上司が把握しにくいテレワークでは、許可の基準があいまいになったり、反対に丁寧な説明を求められたりと、許可を申請する側にとって支障となる事情が生じることがあります。 許可を求める相手に、いつまでに・どのような方法で・どのような内容を示して許可を得るのか、十分に確認しておくことが重要です。 テレワークに事業場外みなし労働時間制が適用されている また、残業のルールを直接決めるものではありませんが、テレワークに「事業場外みなし労働時間制」が適用される場合もあります。 これは、通常の社屋や工場の「外」で働く場合で、「実際の労働時間を算定することが難しい」場合に、実際に労働した時間に関わらず一定時間働いたものと「みなす」制度です(労働基準法38条の2第1項)。 基本的には、会社の始業から終業までの休憩時間を除いた時間がみなし労働時間となります。 なお、事業場外みなし労働時間制は「実際の労働時間を算定することが難しい」場合に限り適用される制度です。テレワークで導入するためには、以下のような条件を満たす必要があります。 労働時間の算定が難しいとされる条件 情報通信機器が常時接続されていないこと 会社(上司)からの随時の指示で業務を行なっていないこと たとえば、仕事の様子を監視するモニターが接続されていても、仕事は自分のペースとやり方で進められ、離席することも認められているような場合はこの条件をクリアしていると言えるでしょう。 会社側から「事業場外みなし労働時間制」の採用を通知されている方は、ご自身の労働条件をあらためて確認し、適正なのかどうかを確認すべきです。 テレワークの残業代が請求できるケースは? ここまで、テレワーク時の残業に関するルールを解説してきました。 テレワークにおける残業が禁止・許可制である場合に、禁止を破って残業した場合や許可を得ずに残業した場合、残業代はどうなるのでしょうか。 テレワーク時に残業が禁止・許可制となっている場合でも、以下のようなケースでは残業代を請求できる可能性があります。 黙示の残業命令があるケース 残業が禁止・許可制となっており、残業を直接命じられていなくても、黙示の残業命令があったと考えられる場合は、残業代を請求することが可能です。 たとえば、定時内に終わらせることのできない業務を与えられた場合や、残業をしていることを会社が把握していながら黙認している場合が挙げられます。 残業代は、残業をしている時間が会社からの指揮命令下にあると言えるならば、残業が禁止されていたり、許可を得ていなかったとしても支払われます。 関連記事 ・未払い残業代請求の方法|証拠や時効など基礎知識を解説 みなし労働時間制の適用が認められないケース みなし労働時間制が採用されている会社でも、適用が認められないケースでは残業代が支払われる可能性があります。 事業場外みなし労働時間制が適用されると、極端に言えば、何時間働いたとしても所定労働時間数しか働いていないことになります。 たとえば、所定労働時間が8時間であれば、10時間働いたとしても8時間しか労働していないことになってしまいます。 つまり、所定労働時間より長く働いたと扱われることがないため、残業代も支払われません。 しかし、「労働時間の算定が難しい」と判断される条件は厳しいです。加えて労働時間の実態と所定労働時間がかけ離れてもいけないと考えられています。 そのため、在席を厳しく管理されている場合や日常的に残業が生じている場合などは、事業場外みなし労働時間制が適用されず、残業代が支払われる可能性があります。 これは、会社が「テレワークには事業場外みなし労働時間制を適用する」と決めていたとしても変わりません。 「事業場外みなし労働時間制を適用する」と告げられていたとしても、日々の業務時間を自身でも記録し、残業が多いようであれば上司に掛け合うなど、対策をしておきましょう。 関連記事 ・みなし残業(固定残業)とは?違法になるケースや違法な残業への対処法 テレワークの残業トラブルの相談先 テレワークは、残業が禁止されていることもあるため、残業トラブルが発生しやすいと言えます。ここでは、テレワークの残業トラブルが発生した場合の相談先をご紹介します。 会社の労務担当者 単に会社が法令の把握ができていないだけの場合であれば、本来あるべき状態にしてもらうように会社の労務担当者に相談をしてみましょう。 在宅勤務については、会社の規定を整備したり、出勤時間の確認方法を整備したりする必要があります。 在宅勤務を初めて導入する会社では、急に在宅勤務の体制を整えようとして、労働基準法に違反していることに気付いていないこともあるでしょう。 また、自分の直轄の上司が違反をしているだけであって、会社としては労働基準法を守る体制をとっている場合もあります。 その場合には、相談したことによって、会社の労務担当者から上司に対して指導などの働きかけが期待できます。 労働基準監督署に相談する 労働基準法に違反すると、行政指導や刑事罰の対象となります。テレワークにおける残業代トラブルが発生している場合には、労働基準監督署に相談することも選択肢の一つです。 労働基準監督署は全国に設置されており、相談や通報を受けると、労働基準監督官が会社への立ち入り検査や、報告を求める・呼出をすることがあります。 そのため、労働基準法違反の状態である旨を労働基準監督署に相談・通報し、労働基準監督署から行政指導が入れば、労働基準法違反の状態が解消される可能性があるでしょう。 関連記事 ・残業代未払いは労基署に相談できる?弁護士との役割の違いを解説 弁護士に相談する 弁護士は法律の専門家です。未払い残業代も含めて包括的にトラブルを解決したいとお考えの方は、弁護士に相談しましょう。 テレワークにおける未払い残業代の請求では、会社側が「残業を命じた覚えはない」「事業場外みなし労働時間制を採用している」などと反論してくるケースもあります。 弁護士であれば、未払い残業代を請求するために、法的な根拠をもとに労働者の代理人として会社との交渉を行うことができます。 また、交渉によって解決しない場合でも、労働審判や訴訟といった法的な手続きにスムーズに移行できます。 相談する際には、出勤時間の打刻の記録や、業務に関するメールの送受信の記録などの証拠があるといいでしょう。 弁護士への相談にあたって、費用相場や流れ、メリットなどを知りたい方は『残業代請求を弁護士に依頼する場合の費用相場は?弁護士に依頼するメリット5選!』の記事をご覧ください。 --- ### 管理職は残業代が出ない?残業代がもらえるケースや基準を解説 - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-03-29 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6850 - Categories: 残業代請求 管理職であっても、労働基準法上の管理監督者に該当しない場合には残業代が支払われます。管理監督者は「会社に対する権限」「労働時間の裁量権」「賃金などの待遇面」といった基準から判断されます。 管理職だと、残業代が出ないと聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。 確かに管理職の中でも、労働基準法上の「管理監督者」に該当する場合は、残業代が支払われません。 しかし、管理監督者に該当するかどうかは、部長や店長などの肩書きではなく、会社に対する権限や労働時間の裁量権などの実態から判断されます。 つまり、肩書きが管理職であっても、管理監督者に該当しなければ、残業代を受け取る権利があるのです。 今回は、管理職で残業代が支払われないことに関してお悩みの方に向けて、管理職が残業代を貰えるケースや、管理監督者にあたるかどうかの基準について詳しく解説します。 管理職でも残業代がもらえるケースもある 管理職は会社内での役職の一つに過ぎない そもそも管理職には一般用語としても決まった定義があるわけではなく、「部下をもち、一定の組織を率いる立場」といったような意味合いで使われています。 一般的には「課長になったら管理職」といわれることもありますが、課長より低い立場でも部下をもつことはありますし、そもそも部や課といった組織を置いていない会社もあります。 社内のいろいろな立場のうち、どこを管理職として扱うかは会社次第であり、管理職は会社内における役職の一つに過ぎません。 管理監督者には残業代を支給しなくてもよい 労働基準法では、管理監督者に該当する管理職であれば、労働時間、休憩および休日に関する規定は適用されないと定められています(労働基準法41条2号)。 しかし、すべての管理職が管理監督者に該当するわけではありません。 労働基準法上の「管理監督者」に該当するかどうかは、「責任や権限」「職務内容」「待遇面」などによって判断されることになります。 したがって、役職自体は管理職であったとしても、管理監督者に該当しない場合は、残業代が支給されることになります。 管理監督者にあたるかどうかの基準 管理職であっても、労働基準法上の管理監督者に該当しなければ、残業代は出ます。 では、どのような人が管理監督者とみなされるのでしょうか。管理監督者にあたるかどうかは、以下のような基準をもとに判断されます。 管理監督者にあたるかどうかの基準 会社に対する重要な責任と権限があるか 労働時間について裁量権があるかどうか 賃金などの待遇面で優遇されているかどうか 会社に対する重要な責任と権限があるか 管理監督者とみなされる場合には、各部署を統括する地位であったり、部署のメンバーに命令を出したりする立場にある、というだけではありません。 「採用や解雇に関わる人事権をもつ」「経営会議に参加する」などといった、部署内の管理にとどまらないような特別な権限をもっていることがポイントです。 会社内では「課長」などの役職に就いていたとしても、「業務に関する権限をもっていない」「会社経営などの重要な決定に関わっていない」といった場合には、管理監督者とはみなされない可能性が高いです。 労働時間について裁量権があるか 管理監督者は、通常の従業員とは異なり、自分の勤務時間や部下にどのような業務を割り振るかといった労働時間や労働の内容を、自分の裁量で決められます。 「課長」などの役職に就いていた場合であっても、「出退勤時間が決められている」「業務内容を自分で決められない」といった場合には、管理監督者に該当しないといえるでしょう。 賃金などの待遇面で優遇されているか 管理監督者の場合は、通常の従業員よりも賃金や役職手当といった待遇面で優遇されていることが必要です。 「店長」などの肩書きばかりで賃金などの優遇がないという場合には、管理監督者にはあたらない可能性が高いです。 管理監督者とみなされず、残業代請求が認められた例 ファーストフード店の店長が、未払い残業代等の支払いを求めて会社を提訴した事件です(『日本マクドナルド事件』東京地判 平20. 1. 28)。 店長はアルバイトの採用や従業員のシフトの決定など、ある程度の権限をもっていました。 しかし、「権限が店舗内の事項に限られている」「経営者と一体的な立場での重要な職務と権限を付与されているとはいえない」「賃金も十分ではない」といった理由から、管理監督者には該当しないと判断されました。 結果として、会社に対して未払いの残業代など約755万円の支払いを命じることになりました。 この事件から、管理職という役職にふさわしい権利や待遇が与えられていないにもかかわらず、「管理職だから」という理由で残業代が支給されない「名ばかり管理職」という言葉が広まりました。 管理職で残業代がもらえない場合は弁護士に相談 「君は課長だから残業代は発生しないと会社に言われてしまった」などという場合には、弁護士に相談することをおすすめします。 弁護士に相談することのメリットとして、以下のようなものが挙げられます。 弁護士に相談するメリット 自分が管理監督者にあたるか判断してもらえる 未払い残業代の証拠集めを手伝ってもらえる 会社との交渉を一任できる 自分が管理監督者にあたるか判断してもらえる 管理監督者どうかは職務の内容やさまざまな権限から判断されるため、自分が「管理監督者なのかどうか」を自力で判断するのは難しい場合があります。 弁護士に依頼すれば、自分が管理監督者にあたるかどうかを正確に判断してもらえます。 未払い残業代の証拠集めを手伝ってもらえる もし管理監督者には該当せず、未払い残業代を請求できると判断された場合、残業代請求には有効的な証拠が必要となります。 残業代請求に有効な証拠 タイムカード 勤怠管理システムの記録 パソコンのログイン・ログオフ時間の記録 雇用契約書 労働条件通知書 など 弁護士に相談すれば、どのような証拠を集めればよいかをアドバイスしてもらえます。 また、会社側が証拠の開示に難色を示している場合には、弁護士から開示請求を行うことも可能です。 労働者自ら開示請求を行うこともできますが、立場上、会社側が応じてくれるとは限りません。 弁護士を通して開示請求をすることで、会社側も真剣な態度で応じてくれる可能性が高まります。 関連記事 ・残業代請求で必要となる証拠を徹底解説!証拠がない場合の対処法は? 未払い残業代を計算してもらえる 未払い残業代の計算や書類の作成には、専門的な知識を必要とし、その分時間や労力がかかります。 弁護士に依頼すれば、複雑な計算を任せることができます。 関連記事 ・残業代の正しい計算方法とは?基本から応用的な計算まで徹底解説! 会社との交渉を一任できる 未払い残業代を請求して会社と交渉しようと思っても、交渉を拒否される場合があるかもしれません。 弁護士に依頼すれば、面倒な会社との交渉を一任できるうえに、裁判などの法的手続きもスムーズに対応できます。 まとめ 部長・店長などの管理職であったとしても、労働基準法上の管理監督者に該当しない場合には、残業代請求が可能です。 管理監督者に該当するかどうかは、職務の内容や、権限を有しているかどうかといったさまざまな基準から判断されることになります。 弁護士に相談すれば、労働者が置かれている状況を法的に整理した上で、残業代請求の手続きにスムーズに移行することもできます。 また、会社が交渉に応じなかった場合でも、法的手続きに移行できます。 管理職であることを理由とした残業代未払いにお困りの方は、無料相談を受け付けている弁護士事務所もありますので、弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。 --- ### 年俸制でも残業代は出る!例外や請求方法について解説 - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-06-21 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6851 - Categories: 残業代請求 年俸制でも残業代は請求できます。 ただし、みなし残業制が採用されていたり、管理監督者に該当したりという場合では、残業代が請求できない場合があります。 早急に残業代を回収したい場合には、弁護士への相談をおすすめします。 「年俸制なので残業代は出ないと言われた」「1年間の給料とは別に残業代を請求できる?」 年俸制で働いている方の中には、残業をしているにもかかわらず残業代が出ないと不満を抱えている方もいるかもしれません。 年俸制は年額で給与を決定するため、それ以上の給与は発生しないと考える会社も少なくありませんが、年俸制であっても、基本的には残業代を請求できます。 今回は、年俸制における残業代や例外として残業代が出ないケース、請求方法について解説します。 年俸制でも残業代は支払われる 年俸制はあらかじめその年の給料を決めておく制度 年俸制は、従業員の成績や能力を参考にして、あらかじめその年の年間給与額を決定しておく制度です。 給与の総額を12等分や16等分などに分割して、月額に換算したものを月に1回支給する仕組みとなっています。(労働基準法24条)。 月給制とは、基本給や手当を1か月単位で決める点で異なります。 年俸制でも残業代は発生する 年俸制はあくまで給与額の決め方が月給制とは異なるだけにすぎません。 したがって、年俸制であっても残業代をもらう権利が消えることはありません。 年俸制であっても、法定労働時間を超えて働いた場合は、残業代を請求できます。 年俸制で例外的に残業代が出ない場合 年俸制であっても残業代は請求できますが、会社で採用されている制度や勤務形態によっては、例外的に残業代を請求できないケースがあります。 残業代を請求できないケースとして、以下のようなものが挙げられます。 例外的に残業代が請求できないケース みなし残業制が採用されている 裁量労働制が採用されている 管理監督者にあたる 業務委託契約を結んでいる みなし残業が採用されている みなし残業(固定残業)とは、実際の残業時間にかからわず、あらかじめ決められた一定時間の残業代を給与に含めて支払う制度です。 みなし残業制においては、実際に残業した時間が、みなし残業時間内に収まっていた場合、別途の残業代は支払われないことになります。 ただし、実際に残業した時間が、みなし残業時間を超えるという場合は、超えた時間分の残業代を請求することが可能です。 また、「固定残業費が最低賃金を下回っている」「どの分が時間外手当、深夜手当、休日手当に該当するか就業規則からはわからない」といった場合には、みなし残業制自体が無効になります。 その結果として、未払い残業代が発生してしまっているケースも考えられます。 関連記事 ・みなし残業(固定残業)とは?違法になるケースや違法な残業への対処法 裁量労働制が採用されている 裁量労働時間制とは、みなし時間をあらかじめ決めておき、実際に働いた時間がみなし時間より多くても少なくても「みなし時間分、働いた」とする制度です。 裁量労働制においては、労働時間はあらかじめ定めた労働時間となります。 ただし、みなし労働時間について、法定労働時間を超える時間が設定されているときは、超えた分に関して残業代が支給されます。 管理監督者にあたる 管理監督者とは、以下のような条件を満たす従業員のことをいいます。 管理監督者と判断される条件 会社に対する重要な責任と権限がある 労働時間について裁量権がある 賃金などの待遇面で優遇されている 管理監督者の場合は、残業代の支払いをしなくてよいと定められています(労働基準法41条)。 ただし、「管理職ではあるが、とくに権限などはない」「給料などが優遇されていない」という場合には、管理監督者とは判断されず、残業代を請求できます。 関連記事 ・管理職は残業代が出ない?残業代がもらえるケースや基準を解説 業務委託契約を結んでいる 業務委託契約とは、業務の一部を外部の企業や個人事業主に委任する契約のことです。 業務委託契約を結んでいるという場合は、通常の雇用契約とは異なり、労働基準法が適用されないため、会社に残業代を請求することはできません。 ただし、「会社から仕事の仕方について指示をされた」「残業を依頼された」といった場合には、雇用契約が発生していたと考えられることもあります。 そういったケースでは、残業代請求が可能である場合があります。 年俸制における残業代の計算方法 年俸制の残業代は、月給制の人と同様に以下の式を用いて計算します。 年俸制の残業代計算方法 残業代=残業した時間×1時間あたりの基礎賃金×割増率 年俸制において1時間あたりの基礎賃金を計算するときは、年俸額を12で割って月額賃金を算出します。 次に、月額賃金を1か月の所定労働時間で割ることで1時間あたりの基礎賃金が求められます。 このとき、賞与やボーナスは含めませんが、年俸額に賞与も加算されている場合は支給額がすでに確定しているため賞与とはみなされません。 賞与にあたる金額も含めて「1時間あたりの基礎賃金」を算出します。 また、みなし残業制である場合には、みなし残業時間の分を差し引いて残業代を求めます。 関連記事 ・残業代の正しい計算方法とは?基本から応用的な計算まで徹底解説! 年俸制の労働者が残業代を請求する方法 残業した証拠を収集する 残業代を請求するときに重要となるのは、有効的な証拠を集めることです。 有効な証拠には、タイムカードやメールの送受信履歴などが挙げられます。 残業代の計算をする際、直近1か月分の証拠しかないという状態であれば、残業代をさかのぼって計算することが難しいです。 そのため、証拠を集めるときには、できるだけ長期間にわたってさまざまな種類の証拠を集めておくことがポイントです。 関連記事 ・残業代請求で必要となる証拠を徹底解説!証拠がない場合の対処法は? 会社に直接請求する 会社に直接請求する場合は、以下のような流れになります。 会社に直接請求する場合の流れ 有効的な証拠を準備する 会社に内容証明郵便で請求の通知書を送る 会社側と直接交渉する 自分一人で交渉しようとすると会社が交渉に応じてくれなかったり、不利な条件を突きつけられたりするおそれがあります。 できる限り交渉だけで解決させたいとお考えの場合は、交渉の段階から弁護士をつけるのが良いでしょう。 労働基準監督署に申告する 労働基準監督署に申告する際の流れは、以下のようになります。 労働基準監督署に申告する場合の流れ 適切な証拠を準備する 労働基準監督署に残業代未払いを訴える 労働基準監督署が調査 違反が認められれば、企業に支払い勧告が出される 労働基準監督署の勧告はあくまでも行政指導であるため、法的拘束力はありません。申告したからといって必ずしも企業が支払いに応じるとは限らないので注意しましょう。 労働審判をおこなう 労働審判は、労働審判官(裁判官)1名と労働審判員2名から構成される、労働審判委員会という組織を利用する制度です。 原則として3回以内の審理で結論を出すことになっているため、2〜3か月程度で問題を解決できる可能性があることが大きなメリットです。 労働審判をおこなう際の流れは以下のようになります。 労働審判をする場合の流れ 労働審判申立書や陳述書等の必要書類と、残業の証拠となりうるものをすべて裁判所に提出 40日以内に最初の期日が開かれ、会社側と双方の主張や事実関係の確認をおこなう 3回目の期日までに調停が成立しなければ、審判官と審判員が評議をおこない「審判」が下される 審判の内容に双方が合意すれば、労働審判は終了する ただし、労働審判委員会の判断に異議があった場合には、訴訟となります。 関連記事 ・労働審判の弁護士費用相場|労働審判を弁護士に依頼すべき理由を解説 訴訟をおこなう 訴訟をおこなうときの流れは、以下のようになります。 訴訟をおこなう場合の流れ 会社の所在地を管轄する地方裁判所または簡易裁判所に訴状を提出 第1回期日は会社側が訴状に対する答弁書を提出 2回目以降の期日では双方が主張と証拠となる書類を提出し、具体的な答弁をおこなう 双方がすべての主張書面の提出を終えると弁論終結となり、その後判決が言い渡される なお、労働者と相手(会社)が主張する回数には基本的に制限がないため、結論が出るまでに1年以上かかることもあります。 関連記事 ・裁判で残業代請求を行う場合のメリットは?デメリットは期間の長さ? 残業代が支払われない場合は弁護士に相談を 年俸制であっても、基本的には残業代を請求できます。 早急に残業代を回収して解決したい場合は、弁護士への相談をおすすめします。 年俸制の従業員が残業代を請求する場合、証拠集めや未払い残業代の複雑な計算など、多くの手間と時間がかかってしまうかもしれません。 弁護士に依頼すれば、専門家として証拠の収集方法や残業代の計算方法についてアドバイスをもらうことができます。 会社とやり取りをする際も弁護士が代理人として仲介してくれるので、精神的ストレスの軽減が期待できます。 また、弁護士であればたとえ交渉が難航したときでも労働審判や訴訟へスムーズに移行ができるため、その後の手続きも安心して任せることができます。 無料相談を受け付けている弁護士事務所もあるので、一度相談してみてはいかがでしょうか。 関連記事 ・残業代請求を弁護士に依頼する場合の費用相場は?弁護士に依頼するメリット5選! --- ### 残業代について解説!残業の定義、計算方法や残業代未払い時の対処法 - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-06-10 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6842 - Categories: 残業代請求 残業代の疑問を徹底解説。残業の法的な上限時間や残業代の具体的な計算方法を網羅しています。みなし残業制、フレックスタイム制など働き方別に残業代の生じる要件を解説。残業トラブルのおすすめ相談先も紹介。 「残業代に関する基本ルールは?」「残業代の計算方法は?」 残業をしたにもかかわらず、適切な残業代が支払われないのは納得がいきませんよね。 残業代とは、会社ごとに規定される所定労働時間を超えて働いた場合に支払われる賃金のことを指します。 労働者は労働の対価として、残業代を会社から支払ってもらう権利があります。 この記事では、「残業」の定義や残業代に関する基本ルール、残業代の計算方法について詳しく解説します。 サービス残業でお悩みの方へ サービス残業は違法であり、未払い残業代は請求できます。請求できる未払い残業代の目安を知りたい方は、以下のツールもご活用ください。 残業代計算ツール 残業代に関する基本的なルール、法律 残業のルールは主に労働基準法に定められています。残業の定義やルールを労働基準法と照らしながらみていきましょう。 労働時間の上限は原則1日8時間、週40時間まで まず、労働時間は原則として「1日に8時間、週40時間まで」と決められています(労働基準法第32条)。 この時間を法定労働時間と呼び、法定労働時間を超える労働については法定外労働(時間外労働とも呼ばれます)として、会社は割増賃金を支払う義務が生じます(労働基準法37条1項)。 所定労働時間と法定労働時間の違い 法定労働時間と似たような言葉に、所定労働時間があります。 所定労働時間とは、企業が独自に定めた労働時間のことです。休憩時間を除いた始業時間から就業時間のことを言います。 たとえば、所定労働時間の始業が9時・終業が17時(休憩1時間)と定められている会社に勤めているとします。 この場合の所定労働時間は7時間であり、法定労働時間の8時間よりも短く設定されています。 つまり、17時から1時間残業をして18時に終業したとしても、残業にはなりますが、会社が割増賃金を支払う義務は生じないということです。 もっとも、会社は労働者に通常の賃金1時間分を支払う必要はあります。 勤めている会社によっては割増賃金が発生する残業(法定外残業)と、割増賃金が発生しない残業(法定内残業)に分かれる場合があるという点に注意しておきましょう。 36協定が結ばれている場合には上限を超えて残業が可能 法定労働時間を守ろうとすると、繁忙期に対応ができない企業も出てくるでしょう。 そのため、36協定を結んでいれば、法定労働時間を超えて従業員を働かせても良いという例外が設けられています。 36協定というのは労働基準法36条に基づいた「時間外、休日労働に関する協定届」という労使協定のことを指します。 関連記事 ・36(サブロク)協定とは?ポイントと残業時間との関係について解説 残業時間の上限は原則⽉45時間・年360時間 36協定を結んでいたとしても、企業は労働者に対していくらでも残業を命じることができるわけではありません。 法定労働時間を超えた残業についても上限が設けられています。残業時間の上限は、原則「⽉45時間・年360時間以内」です。 ただし、臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合には、この上限を超えて残業しても良いということになっています。 これを「特別条項」と言いますが、特別条項における残業の上限は下記の通りです。 残業時間の上限(特別条項) 時間外労働が年720時間以内である 時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満である 2か月、3か月、4か月、5か月、6か月のいずれの期間においても、時間外労働と休日労働を合わせて平均80時間以内にしなければならない 月45時間を超える時間外労働は、年6か月まで(1年に6回まで) また特別条項の有無にかかわらず、時間外労働と休⽇労働の合計は、1年を通して⽉100時間未満、2〜6か⽉平均80時間以内にしなければならないとされています。 残業代の計算方法 時間外労働をすると「割増賃金」という通常の給与よりも高額な給与が残業代として支払われます。 割増賃金についても労働基準法で細かくルールが決められているので、計算方法をみていきましょう。 残業代は1分単位で計算する 勤務時間は1分単位で集計し、残業代は割増率を乗じた賃金が支払われます。 1日の残業時間を30分未満切り捨てとする独自のルールを設けている会社もありますが、これは法律で認められていません。 関連記事 ・残業は1分単位での計算が原則!残業代の計算方法も解説 割増率を計算する 割増賃金の種類と割増率 割増賃金の種類割増率時間外労働25%深夜労働25%深夜+時間外労働50%休日労働35% 残業代の割増|時間外労働 法定労働時間を超えて働いた時間を時間外労働(法定外残業)と呼びます。時間外労働をした際の割増率は25%です(労働基準法第37条)。 残業代の割増|深夜割増 深夜時間(22時~5時)に働いたときは法定外残業と同じ25%の割増率を使用します。 もし、残業が深夜時間に及んだ場合は、残業の割増率25%と深夜の割増率25%を合算した50%の割増率が適用されます。 残業代の割増|法定休日労働 法定休日とは「従業員に必ず与えなければならないと定められている休日」のことです。 労働基準法35条では、会社は労働者に対して原則として1週間に1日以上の休日を与えなければならないと定められています。この「従業員に必ず与えなければならないと定められている休日」に働いた時には、賃金は35%の割増となります。 残業代計算の一例 残業代の計算方法について具体例を挙げてみていきましょう。 月給20万円、その月の労働日数20日(1日あたりの労働時間8時間)のときの残業代を計算してみます。 ①1時間当たりの基礎賃金を計算 一時間当たりの基礎賃金額は、月給を月当たりの総労働時間で割ることで求められます。月当たりの労働時間は8時間×20日で160時間です。 1時間当たりの基礎賃金 20万円÷160時間=1250円 ②通常の法定外残業の残業代を計算 法定外残業を10時間した場合の残業代を計算してみましょう。法定外残業の割増率は先述の通り25%です。 法定外残業の残業代 1250円×10時間×1. 25=1万5625円 ③深夜残業の残業代を計算 深夜残業を10時間した場合の残業代を計算してみます。 22時から5時の間に法定外残業をした場合は、法定外の割増率25%に深夜の割増率25%が合算され、割増率50%になります。 深夜残業の残業代 1250円×10時間×1. 5=1万8750円 ④法定休日労働の残業代を計算 法定休日労働を10時間した場合の残業代を計算してみます。法定休日労働の割増率は35%です。 法定休日労働の残業代 1,250円×10時間1. 35×=1万6875円 残業代の詳しい計算方法については、『残業代の正しい計算方法とは?基本から応用的な計算まで徹底解説!』の記事をご覧ください。 勤務体制別|残業代が生じる場合、生じない場合 次に、残業代が出ないケースや勤務体制による残業代の考え方などを確認しましょう。 時間外労働や休日、深夜の出勤をしたからといっても、勤務体制によっては残業代が発生しない場合もあります。 固定残業制(みなし残業) 固定残業制(みなし残業)とは、従業員が実際に労働した時間と関係なく「固定残業時間分の残業をした」とみなし、会社が残業代を支給する制度です。 もっとも、あらかじめ定められた固定残業時間を超えて残業をした場合は、超えた分の残業代が別途支給されます。 変形労働時間制 1年単位の変形労働時間制、1か月単位の変形労働時間制、1週間単位の非定型的変形労働時間制の3つをまとめて「変形労働時間制」と呼びます。 日、週、月単位で勤務時間を調整して柔軟に働けるよう作られた制度です。 繁忙期や閑散期があるような業種では「最初の週は30時間程度の労働で十分だが月末の週は50時間以上必要」というような場合があります。 変形労働時間制はこのように繁閑が著しいような業種によく採用される働き方です。 ひと月単位での変形労働時間制では、例えば以下のように就業時間が定められます。 期間就業時間1日から24日まで始業午前10時~終業午後6時 休憩1時間25日から月末まで始業午前9時~終業午後7時 休憩1時間 ※変形労働時間制の一例 上記の例で言えば、1日から24日までは、たとえば午後7時まで働いたとしたら1時間の残業をしたあつかいになります。 一方、25日から月末までは、午後7時まで働いたとしても残業をしたあつかいにはなりません。 変形労働時間制は、勤務時間の集計方法が異なるため、1日あたり8時間を超えて働いたらからといって必ずしも残業としてカウントされるわけではないという点に注意が必要です。 フレックスタイム制 フレックスタイム制とは出退勤の時間を従業員が自由に決められる勤務制度のことです。 フレックスタイム制も、変形労働時間制と同じく残業時間の集計方法が通常と異なりますが、要件を満たしていれば残業代は支給されます。 フレックスタイム制では例えば「1か月の就業時間は160時間」といったように、あらかじめ就業時間が定められています。 1か月ごと(企業によっては3か月ごとの場合もあります)に労働時間などが集計され、たとえば終業時間160時間の月に180時間働いていた場合、超過した20時間が残業として処理されることになります。 フレックスタイム制についても、1日あたり8時間を超えて働いたらからといって必ずしも残業としてカウントされるわけではないという点に注意が必要です。 テレワーク テレワークについて定めた法律は存在しないため、テレワークでも出社して働く場合と法律の決まりは同じです。 残業には残業代の支払いが必要であり、時間外労働をした分には割増賃金が支払われます。 なお、会社によってはテレワークの残業を禁止している場合もあるので、残業をする場合には注意しなければなりません。 関連記事 ・テレワークでも残業代は出る?在宅勤務で残業代が出ない場合の違法性は? 裁量労働制 裁量労働制とは、大まかに言えば、「実際に働いた時間数に関わらず、あらかじめ決められた一定の時間数を働いたものとみなす」制度です。 たとえば1日8時間働いたとみなすような規定の場合、1日5時間勤務した場合でも1日10時間勤務した場合でも1日8時間働いたとみなされ、1日8時間分の賃金が発生することになります。 みなし労働時間が8時間を超えていたり、深夜や休日に仕事をしている場合には賃金の割増が発生します。 関連記事 ・裁量労働制だと残業代が出ない?計算や請求方法を解説 年俸制 残業代は年俸制の従業員には支払わなくてよいと考える経営者がいます。しかし、年俸制であっても時間外労働や休日、深夜労働のルールは適用されるため、会社は残業代を支払う義務を負います。 関連記事 ・年俸制でも残業代は出る!例外や請求方法について解説 管理監督者 管理監督者は労働基準法で決められている時間外や休憩、休日のルールが適用されません。 つまり、法定労働時間を超えて働いても時間外労働をしたことにはならず、残業代も出ません。休日出勤についても同様です。 ただし、管理監督者という地位を与えられていても、実際は名ばかり管理職で地位にふさわしい権限を持っていなければ、管理監督者として認められない可能性があります。 関連記事 ・管理職は残業代が出ない?残業代がもらえるケースや基準を解説 残業代の未払請求の事前準備 残業代の請求をしたい場合は何をすべきか、解決のためにどこへ相談すれば良いか確認していきましょう。 残業をしていた証拠を収集する 残業代が出ないときは会社に対し未払い残業代を請求することができます。残業代を回収する上で大切なことは会社から残業代が出ないことがわかる客観的な「証拠」です。 残業代請求の証拠 タイムカード 勤怠管理システム パソコンのログ(起動時間やシャットダウンの時間) メールの送受信履歴 日記や業務日誌などの記録 関連記事 ・残業代請求で必要となる証拠を徹底解説!証拠がない場合の対処法は? 未払い残業代の額を計算する 未払い残業代の計算をするためには、勤務形態や会社の取り扱いについて就業規則や労働契約書(雇用条件通知書)などで確認をしましょう。 残業代の計算方法は「1時間あたりの基礎賃金×割増率×残業時間数」です。 残業代未払いの相談先は? 労働基準監督署 労働基準監督署は労働トラブルが起きたとき、真っ先に浮かぶ相談先でしょう。労働基準監督署は厚生労働省が管轄している行政機関です。主に「労働」全般の相談を受け付けています。 トラブルの内容が悪質であると労働基準監督署が判断したときは、会社に対し勧告や指導を行ってくれます。しかし労働基準監督署が動くためには会社が法律違反をしていた証拠が必要となり、従業員が法律違反を立証して労働基準監督署に申告をしなくてはなりません。 また、労働基準監督署は会社に指導や勧告はできますが個人の問題(未払い残業代の請求や計算)については介入してくれないため注意しましょう。 参考: 労働基準監督署の所在地一覧 労働組合・ユニオン 労働組合・ユニオンに相談すると、会社に対して労働条件の改善を求めて団体交渉を申し入れてくれるケースがあります。 労働組合・ユニオンは職場の風通しを良くしたり、解雇や不当な扱いを防ぎ雇用の安定を図ることを目的とした組織です。 団体交渉や団体行動(代表はストライキ)などを行うことで、トラブルの解決を目指します。 しかし、近年では労働組合の力が弱まっている傾向にあり、特に中小企業では会社への影響力が弱く、労働組合・ユニオンに相談してもトラブル解決に結びつくわけではありません。 また、裁判に発展したときに労働組合では代理として法廷で戦うことはできないので留意しておいてください。 弁護士事務所 未払い残業代についてお悩みならまずは弁護士に相談するのがおすすめです。弁護士ならば、弁護士への依頼をした方が良いのかどうかという点から適切なアドバイスをすることができます。 未払い残業代を個人の力で請求しようとすると、会社側が頑なな姿勢を崩さなかったり、不利益な取り扱いをしたりして、うまく解決に至らない場合があります。 また、未払い残業代が発生するような職場は、残業時間が長かったり、人間関係のストレスが大きかったりするケースが多いです。 身体的、精神的な疲れのためにひとりでは事態解決に向けて動けないという方も多いのではないでしょうか。 弁護士に相談することでスムーズに問題解決に向けて進むことができます。 無料相談を行っている事務所も多いため、現状を整理するためにも、まずは無料相談をしてみてはいかがでしょうか。 関連記事 ・残業代請求を弁護士に依頼する場合の費用相場は?弁護士に依頼するメリット5選! --- ### 雇い止めとは?法的な定義から対処法まで徹底解説 - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-03-27 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6843 - Categories: 不当解雇 雇い止めについて徹底解説。雇い止めの定義とは?雇い止めが法的に不当になる要件について網羅しています。また雇い止めにあったときの対処法や相談先も解説。 「会社都合で契約更新をしないと告げられた」「雇い止めと解雇の違いがわからない」 解雇とよく似ている言葉に「雇い止め」があります。 どちらも会社を辞めなければならないことに違いはありませんが、法律上の意味は全く異なるものです。 この記事では、雇い止めと解雇の意味、雇い止めが無効になった裁判の事例、会社から雇い止めを伝えられたときの対処法について解説します。 雇い止めの定義とは?解雇との違い 雇い止めとはどのような意味を持つのでしょうか。また、解雇とは法的にどういう違いがあるのか確認していきます。 雇い止めとは? 雇い止めとは、「期間の定めがある労働契約(有期労働契約)を交わしている従業員の契約更新を拒否し、期間満了により契約を終了すること」を指します。 有期労働契約とは、3か月、半年、1年など、あらかじめ一定の期間を定めた上で結ばれる労働契約のことです。 期限の満了後、契約が更新されれば働き続けることができますが、契約更新が拒否されてしまうと働き続けることが困難になるため、労働者にとっては問題となるわけです。 なお、雇い止めを会社から告げられたとしても、労働契約法19条で定められている「雇い止め法理」があるため、必ずしも雇い止めが有効となるわけではありません。 「雇い止め法理」とは「判例法理」のことで、裁判所の下した決断の積み重ねにより作られた考え方のことです。 雇い止め法理は、雇い止めに制限をかけることで、期間の定めのある労働契約を交わしている従業員を守るものです。詳しくは後述します。 解雇との違いは? 解雇とは、会社都合で無期労働契約(正社員契約)を終了することや、有期労働契約の期間途中で契約を解約することを言います。 一方で雇い止めは、有期労働契約の期間満了で雇用関係が終了することです。 労働者からすると、解雇も雇い止めも退職することに変わりなく、同様に感じるかもしれません。 雇い止めが無効となる場合の要件とは? 雇い止めは、一定の要件を満たせば無効になります(労働契約法19条)。実際に雇い止めが無効になる要件は、以下の要件①~③をすべて満たす場合です。 【要件①】労働契約法19条1号もしくは2号の要件を満たしている まず前提として、労働契約法19条1号もしくは同条2号の要件を満たしている必要があります。 労働契約法19条1号の要件 労働契約法19条1号の要件は、「有期労働契約が過去に反復して更新されている」「その雇い止めが、正社員の解雇と社会通念上同視できる」ことです。 有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間の満了時に有期労働契約を更新しないことが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることと社会通念上同視できると認められること。 労働契約法19条1号 ただし、法律には具体的に何回、何年にわたり更新されていたら良いかという基準は示されていません。そのため、過去の判例や態様から判断されることになります。 有期労働契約には、無期転換ルールと呼ばれるものがあります。 5年以上更新され続けた有期労働契約については、労働者側から申し出があった場合に無期雇用(正社員としての雇用)に転換するルールです。 この点に鑑みると、「5年近く反復更新され続けていて、雇い止めにすることについて全く通知されていなかったような場合」では、要件を満たすと判断される可能性が高いと言えるでしょう。 労働契約法19条2号の要件 労働契約法19条2号の要件は、「契約が更新されると期待することについて合理的な理由があること」です。 労働者において有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること。 労働契約法19条2号 たとえば、以下のような合理的な理由、事情があるような場合を指します。 期待に合理的な理由があるもの 前回の契約更新時に「今後も引き続き更新する予定です」といったようなことを言われている その会社で雇い止めが行われた事例がないうえ、他の社員と比べて能力面などで劣っているわけでもない 期間満了後の継続雇用について制度化されていて明示されていた 上記のような事情があればあるほど、要件を満たすと判断される可能性は高くなると言えるでしょう。 【要件②】更新の申込みをしている 「労働契約の更新を申し込んでいる」もしくは「雇い止めにあった後すぐに労働契約を結ぶよう相手方に申し込んでいる」、このどちらかを満たすことも要件となります。 労働者が雇用の継続を希望しなければ、当然雇い止めは違法ではありません。 現在、雇い止めをされて雇用を継続してほしいとお悩みの方は、すぐ会社に対してこのまま継続して働きたい意思を伝えてください。 方法としては、メールや業務用チャットを用いると、証拠として残るので、後々のトラブルを防ぐことができます。 「私としては引き続き働きたいと思っていますが、会社としては雇い止めにする方針に変わりはないのでしょうか?」といった文面を送るといいでしょう。 【要件③】「客観的に合理的な理由」「社会通念上の相当性」に欠ける 3つ目の要件は、「客観的に合理的な理由」「社会通念上の相当性」を欠いていることです。 上記の要件①②を満たし、「客観的に合理的な理由」「社会通念上の相当性」を欠く場合には、雇い止めは無効になります。 この「客観的に合理的な理由」「社会通念上の相当性」は、正社員の解雇の要件と同じです。 正社員の解雇の要件について詳しく知りたい方は、『会社から突然解雇されたらどうする?違法な解雇への対処法や相談先は?』の記事をご覧ください。 正社員の解雇には、非常に高いハードルが設定されています。 上記要件①②を満たす雇い止めについても、「客観的に合理的な理由」「社会通念上の相当性」を欠いた雇い止めは無効となります。 勤務態度の不良を例に挙げると、要件①②を満たすとき、単に勤務態度が悪かっただけで雇い止めされたら、無効となる可能性が高いです。 会社としても改善に向けて指導を重ねたにもかかわらず、なおも一向に改善の兆しが見えないときに、雇い止めが有効となる可能性が出てきます。 雇い止めに関する裁判例 雇い止めが無効か適法かが争われた代表的な裁判例をご紹介します。 東芝柳町工場事件(最高裁判所 昭和49年7月22日判決) 被告:電気機器の製造販売をする会社原告:上記会社で期間工として働いていた7名判決:雇い止めは無効 電気機器の製造販売をする会社において、2か月間の有期雇用契約を結んでいた期間工の人が7人も雇い止めにされてしまった事件です。 この会社では、期間工の人も無期雇用の正規従業員とほとんど同じ内容の仕事をしており、景気に関係なく、会社は毎年新しく期間工を雇い続けていました。 雇い止めにあった7名は、それぞれ5回から23回にわたって更新されていました。 また、過去に雇い止めが行われた事例はなかったこと、期間工として採用される際に会社から長期継続雇用や本工への登用を期待させるような言動があったことを原告が主張しました。 事件は最高裁まで争われ、最終的に雇い止めは無効になりました。 日立メディコ事件(最高裁判所 昭和61年12月4日判決) 被告:医療機器の製造販売をする大手メーカー原告:上記会社の工場で臨時工として働いた1名判決:雇い止めは有効 この事件では、医療機器の製造販売をする大手メーカーが経営不振を理由として臨時工を雇い止めにしました。 原告の臨時工は、期間2か月の本件労働契約が5回更新されたあとに雇い止めにされています。 判決では、雇用関係はある程度の継続が期待されていたと認められました。 しかし、経営上のやむを得ない理由により人員を削減する必要があり、他の事業部門へ配置転換する余地もないといった点から、工場の臨時員全員の雇止めが必要であるとした使用者の判断が合理性に欠ける点はなく、雇い止めは有効となりました。 雇い止めにあったら?|無効・撤回のための対処法を紹介 雇い止めを有効に実施するために会社は一定のルールを守る必要があります。このルールを無視した雇い止めは有効とは言えず、雇い止めとして成立しません。 雇い止めを告げられてしまったとしても、その雇い止めが違法だった場合には撤回できる可能性があるのです。 雇い止めを告げられてしまったときの対処法をみていきましょう。 契約更新の意思表示をする 雇い止めを告げられて最初にすべきことは契約更新の意思表示です。 先述の通り、雇い止めの不当性を主張する際には要件として、契約更新の申し入れをしている事実が必要になります。 また仮に、雇い止めが有効だったとしても、更新申し入れをしていた事実は失業保険の面で有利に働きます。 契約更新を希望しているのに会社から拒否された場合は、契約更新回数や契約期間によって失業保険をもらえる日数が増えるのです。 雇い止めの理由や経緯を確認 なぜ雇い止めをする決断に至ったのか、上司や人事の担当者に確認をしましょう。雇い止めが不当なものでないかの判断材料になります。 また雇い止め通知書の発行を求めるのも良いでしょう。 雇い止め通知書とは、有期労働契約が満了するとき、会社が更新を拒否して従業員との契約を終了させることを従業員に通知するためのものです。 会社に雇い止め通知書を発行する義務はありませんが、後々のトラブルを避けるために書面で従業員に通知するケースもあります。 もらえない場合は、証拠を残すためにもメールや業務用チャットなどで発行を求めましょう。 証拠の収集 雇い止めが不当なものだと認められるためには、上記でご紹介した要件を満たしている必要があります。 そのために、「反復継続して雇用されている」「更新を期待する合理的な理由があった」といった事実を示す証拠を収集するのも重要です。 集めておくと良い証拠 雇用契約書(入社時から今まで更新されてきた分の全部) 就業規則 更新を期待させる雇い主からの発言を記録したもの(メールなどでも可) 業務内容を示す日報や業務チャットなど その他、「反復継続して雇用されている」「更新を期待する合理的な理由があった」といった事実を示すような証拠があれば、なるべく手元に集めておくのが重要です。 専門家に相談する 雇い止めは労務に関する知識がないと有効か無効かがわかりづらく、専門家の見解を聞くことをおすすめします。 労務トラブルの相談先としては労働条件相談ほっとラインや労働基準監督署、弁護士が一般的です。 雇い止めにあった場合の相談先 雇い止めにあったときの主な相談先について、詳しく解説します。 弁護士 雇い止めについてお悩みなら、労働問題に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。 雇い止めが有効・無効と判断される更新回数や契約期間の数値については、具体的に決められていません。個々の状況によって総合的に判断されることになります。 雇い止めについての判断は非常にむずかしく、高度な法律的知識が要求されます。弁護士なら、雇い止めについて有効か無効かの判断を的確に行えます。 また実際に会社に雇い止めの撤回を請求したり慰謝料を請求したりするときも、弁護士に依頼した方がスムーズです。 弁護士であれば、会社に対して法的な根拠に基づいて交渉を行うことができます。 また、明らかに不当性が疑われるような雇い止めについて、相手方会社が強硬な姿勢を崩さないとき、弁護士ならスムーズに労働審判や裁判などの手続きに移行することができます。 労働審判や裁判は自身でも行うことができますが、時間や労力、要求される法的な知識などの面から、弁護士に依頼するのが通常です。 いずれにせよ、まずは弁護士の無料相談を利用し、「ご自身の雇い止めは法的に不当なのか」「仮に不当であったとして今後どのような対処が考えられるのか」など、疑問を解消すべきと言えるでしょう。 関連記事 ・雇い止めは弁護士に相談!弁護士に相談するメリットと対処法を解説 労働条件相談ほっとライン 労働条件相談ほっとラインは、違法な残業や過重労働が原因の健康障害、未払い残業といった労働基準法関連のトラブルについて相談できる機関です。 相談員は専門知識を持っており、法令・裁判例に沿って、相談を受け付けたり、関係する行政機関の紹介をしてくれたりします。無料で相談することができます。 ただし、厚生労働省委託事業のため、この機関から会社に対して指導やトラブル解決に向けて積極的に働きかけをしてもらうことはできないので注意してください。 参考:労働条件相談ほっとライン 労働基準監督署 労働基準監督署は厚生労働省が管轄している機関で、労働基準法をはじめとした労働相談を無料で受け付けています。 ただし、労働基準監督署への相談では根本的な解決に結びつかず、単なる情報提供として処理されてしまう可能性が高い点に留意しておきましょう。 また、労働基準監督署では、雇い止めが無効かどうかの判断はできないため、根本的な解決を図りたい方は、弁護士に相談すべきと言えます。 参考:厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」 --- ### 残業代請求の時効は3年!将来は5年に?時効中止や請求の方法を解説 - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-04-30 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6846 - Categories: 残業代請求 残業代請求の現行の時効は3年です。2年になる場合、5年になる場合とは?時効中止の方法も解説。内容証明の送付など催告で一時停止できる!また時効の更新とは?実際に訴える際の注意点も網羅。 「残業代の時効は何年?」「時効を止める方法は?」「未払い残業代の請求方法は?」 残業代に未払いがある場合、未払い分を請求できますが、時効に注意が必要です。 残業代請求の時効は3年です。しかし、3年が近づいていても時効にかからないように内容証明郵便で時効を一時的に停止することもできます。 今回の記事では、残業代請求の時効、時効を止める方法や残業代の請求方法について詳しく解説していきます。 残業代請求の時効は2年から3年に延長 2020年4月から時効が2年から3年に 2020年4月1日に労働基準法が改正され、残業代請求の時効は2年から3年に変わりました。 労働基準法115条では、賃金請求権の消滅時効は5年とされました。 賃金の請求権はこれを行使することができる時から5年間、・・・行わない場合においては、時効によつて消滅する。 労働基準法115条 しかし、急激な変化を避けるために暫定措置として、時効は「当分の間は3年」となりました(労働基準法附則143条3項)。 そもそも、労働基準法の改正は、消滅時効に関する民法の改正に合わせて行われたものです。 民法では、債権等の消滅時効は原則10年、労働の対価に係る債権については1年とされていましたが、2020年4月1日の改正により債権等の消滅時効は5年に統一されました(民法第166条第1項)。 これに合わせて、賃金(残業代)の請求権債権等の消滅時効も原則5年とされたのです。 将来的には5年になる? 前述の通り、「残業代請求の時効は3年」というのは労働基準法附則で定められた暫定措置であるため、将来的には本則通り「5年」になる可能性もあります。 労働基準法改正時の附帯決議では、改正から5年後に「未払賃金をめぐる紛争防止など賃金請求権の消滅時効が果たす役割への影響等を検証した上」で時効を5年にすることを含め検討することとなりました。 参考:衆議院「労働基準法の一部を改正する法律案に対する附帯決議」 残業代請求の起算点はいつ? 残業代の請求期限は当面3年ですが、3年とはいつから起算するのでしょう。消滅時効の起算点は、民法で「権利を行使することができる時」と定められています(民法第166条第1項)。 ただし、民法には「初日不算入の原則」があり、起算点はその翌日となります。 つまり、残業代の請求期限の起算点は「給料日の翌日」です。 支給された給与に残業代が正しく反映されていない(未払いや不足)場合は、給料日の翌日(起算点)から3年間は請求可能、3年を過ぎると時効消滅する可能性があるのです。 債務の発生日(起算点)によって時効は2年または3年 時効で注意したいのは、2020年4月1日より時効が2年から3年に変更されたことです。 具体的には、債務の発生日(起算点)が2020年3月末日以前ならば時効は2年、2020年4月1日以降ならば時効は3年になります。 債務発生日(起算点)時効2020年3月31日以前2年2020年4月1日以降3年 たとえば、給料は毎月末締め、翌月25日支払いの場合の時効は次の通りです。 月末締め、翌月25日支払いの場合の時効 2020年2月の労働に対する給料日3月25日:2年 2020年3月の労働に対する給料日4月25日:3年 給料日が2020年3月までの残業代については、法律改正後の現在でも時効は2年です。 残業代請求の時効を止める方法 時効を過ぎるとどうなる? 最初に、残業代の請求期限を過ぎるとどうなるかを確認しておきます。 時効は、相手方が主張(「時効の援用」)した場合に有効です。 時効を過ぎた後に会社が時効を主張すれば、賃金債権(残業代を請求する権利)は消滅します。 しかし、会社が時効を主張せずに、残業代の未払いを認めて返済することは可能です。 また、請求期限を過ぎた後に会社が未払い残業代を支払った場合、後日時効を主張して支払った残業代の返済を求めることはできません。 内容証明郵便を送って時効を一時停止させる 時効を一時停止させることを「時効の完成猶予」と言います。 所定の手続きをした場合、手続きした時から6か月間は時効が完成(成立)しません。 「時効の完成猶予」する手続きの1つが、内容証明郵便の送付です。 内容証明郵便の内容は、会社に対する残業代請求(催告)です。 時効まであと1か月の時に内容証明郵便によって会社に残業代請求すると、時効は6か月後まで延長(5か月間の延長)されます。 会社が残業代を支払ってくれない場合、時効が近づいたら内容証明郵便の送付によって時効を一時停止させられます。 加えて内容証明郵便には、今後、裁判などで争う場合、残業代請求(催告)したことが明確に証明できるメリットがあります。 残業代の催告を行い時効を一時停止させる 内容証明郵便を使った会社に対する残業代請求(催告)について説明しましたが、内容証明郵便に限らず会社に対する残業代請求を行えば、時効を一時停止させられます。 対面や電話で請求する場合には、会話の録音などによって証拠を残すことができます。 また、残業代の支払いを求める裁判の提起なども、時効を一時停止させる効果があります。 会社と交渉して債権を認めさせたり裁判に勝訴したりする 「時効の完成猶予」のほかに「時効の更新」という言葉があります。 「時効の更新」とは、前述の一時停止とは異なり、時効が一旦リセットされることを指します。 たとえば、時効が3年、時効まであと1か月の時点で「時効の更新」を行うと、時効はリセットされてあと3年となります。 「時効の更新」を行う方法は次の通りです。 時効の更新を行う方法 会社側に残業代の未払いがあることを承認してもらう 残業代の支払いを求める裁判で勝訴する など 裁判での判決と同様、裁判所など公的機関を通して強制執行をした場合も、「時効の更新」が可能です。 未払い残業代の請求方法|時効になる前に何をすべき? 最後に、未払い残業代が時効になる前にすべきことを説明します。 自分でできることと、専門家に任せるメリットを考慮して、請求方法を判断しましょう。 まずは未払い残業代の証拠を収集する 未払い残業代の請求にあたっては、未払い残業代があることを明らかにする証拠の収集が重要です。 裁判で闘う場合だけでなく、会社と直接交渉する場合でも明確な証拠があると話し合いは有利に進みます。 残業代請求に必要な証拠は、次の3つが該当します。 残業代請求に必要な証拠 労働条件の証拠:就業規則や労働契約書 残業代の証拠:給与明細 残業時間の証拠:タイムカードや勤怠管理システムの記録 上記の客観的な証拠が入手できない場合は、始業・終業の時間を記した手書きメモや業務日誌などがないか、確認しましょう。証拠として認められるケースもあります。 関連記事 ・残業代請求で必要となる証拠を徹底解説!証拠がない場合の対処法は? 未払い残業代を計算する 次にするのは、未払い残業代を計算して会社に対する請求額を確定させることです。 残業代の計算方法は会社によって異なりますが、労働基準法で定められた最低限度の残業代は次の通りに計算します。 残業代の計算方法 残業代=1時間あたりの賃金✕割増賃金率✕残業時間 1時間当たりの賃金、割増賃金率は以下のように計算されます。 1時間あたりの賃金・割増賃金率の計算 1時間あたりの賃金=月給÷1か月の平均所定労働時間(月給制の場合) 割増賃金率は原則125%(夜間や休日労働に対する割増率もある) 関連記事 ・残業代の正しい計算方法とは?基本から応用的な計算まで徹底解説! 未払い残業代請求は弁護士に任せるべき? 未払い残業代の請求は、従業員自身が会社に直接行うことも可能ですが、会社が話し合いに応じてくれない場合は、労働組合、労働基準監督署、弁護士などに相談する方法もあります。 相談先に迷うところですが、弁護士へ依頼するのが問題解決の早道です。 弁護士に相談すれば、法的な知識と経験をもとに会社と有利に交渉できたり、会社に裁判のリスクを意識させ、プレッシャーを与えたりすることができます。 無料相談を実施している弁護士事務所もあるため、まずは無料相談から利用してみてはいかがでしょうか。 関連記事 ・残業代請求を弁護士に依頼する場合の費用相場は?弁護士に依頼するメリット5選! --- ### 残業代請求を弁護士に依頼する場合の費用相場は?弁護士に依頼するメリット5選! - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-05-13 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6838 - Categories: 残業代請求 未払い残業代の回収を弁護士に依頼するときの費用や流れ、メリットについて解説しています。無料電話相談予約窓口を紹介や費用相場等も網羅しています。未払い残業代に悩んでいる人はまず弁護士に相談してください。 「残業代請求を弁護士に依頼すべきか迷っている」「弁護士に依頼するといくらかかるのか不安」 残業代請求の弁護士の費用相場は、着手金の相場は30万円程度、成功報酬の相場は経済的利益の10~30%程度です。 ただし、実際にかかる費用は弁護士事務所によっても異なり、着手金が無料の事務所もあります。 この記事では、未払い残業代請求を弁護士に依頼することを考えている方に向けて、弁護士費用の相場や弁護士の選び方、弁護士に依頼するメリットについてご紹介します。 残業代請求の弁護士の費用相場は? 弁護士費用の費目とは? 弁護士費用と一概にいってもどのような料金が発生するか分かりづらいと思います。 弁護士に依頼すると、相談料、着手金、成功報酬、実費、日当などの費用が必要になります。これらの費用の内容や相場をみていきましょう。 相談料:1時間0円~1万円 残業代請求の相談費用の相場としては、1時間あたり1万円前後となっています。30分5,000円のところや相談料無料のところも多くあります。 相談料とは、弁護士に法律相談をした場合にかかる費用です。 「そもそも弁護士に依頼すべきなのかわからない」「話を聞いてみたいけどお金はかけたくない」という方は、相談料無料の弁護士事務所に相談すれば、弁護士費用を削減できます。 着手金:0円~30万円 残業代請求の着手金の相場は、0円~30万円です。 弁護士事務所によって差があるものの、着手金なしの完全成功報酬型を採用している弁護士事務所もあります。 着手金は、弁護士に依頼する時点で支払いが必要となるものです。着手金の支払いが完了してから弁護士は解決に向けて活動を始めます。 「弁護活動に着手すること」に対して支払うものなので、未払い残業代が受け取れなくても返還されることはありません。 一方、完全成功報酬型は、着手金を一切とらずに未払い残業代が回収できた場合に限り、弁護士費用が発生するというものです。 完全成功報酬型を採用している弁護士事務所を選べば、まとまった着手金を支払う必要がないことに加え、費用倒れのリスクを心配せずに弁護士への依頼ができます。 ただし、事件が解決したときの成功報酬の割合や金額が高めに設定されていたり、手数料などの別の名目で金銭が請求されたりする可能性もあります。「完全成功報酬制にすれば弁護士費用が安い」とは一概には言えませんので、注意してください。 成功報酬:経済的利益の10~30%程度 残業代請求を弁護士に依頼した際の成功報酬の相場は10~30%です。 成功報酬とは、弁護活動結果、回収できた未払い残業代の金額から弁護士に支払う費用です。報酬金や弁護士報酬と呼ばれることもあります。 着手金が0円の弁護士事務所では、成功報酬が高額となる場合が多いです。 実費 実費とはコピー代や印紙代、通信費など未払い残業代を会社に請求する上で実際にかかった経費のことです。 これら実費について依頼者に負担してもらう方針の事務所もあります。 「どの経費までを実費とするか」「実費の支払い方法はどうするか」などは事務所によって大きく異なるので、最初の相談の際に聞くのが良いでしょう。 日当 日当とは、弁護士が出張したときに必要となる費用のことを指します。会社との交渉や裁判所へ出向く際などに発生します。1回につき1〜3万円前後が相場です。 未払い残業代の解決までの期間が長くなるにつれて高額になるため、想定される費用を確認しておきましょう。 残業代請求の弁護士を選ぶポイント 残業代請求の経験や実績が豊富 弁護士を選ぶ際には、残業代請求の経験や実績が豊富な弁護士を選ぶといいでしょう。気になる弁護士がいたら、残業代請求の経験や実績をホームページなどで確認してみてください。 残業代請求は、会社との交渉はもちろん、労働審判や訴訟などの法的な手続きに発展することもあり、法的な根拠に基づいた正しい主張が求められます。 残業代請求の経験が豊富な弁護士であれば、過去の判例などから、法的な根拠に基づいた正しい主張が可能であり、会社側の対応によっては法的な手続きにスムーズに移行することもできます。 弁護士が残業代請求について充分な経験や実績をもっているか否かは、依頼する上で重要なポイントです。 説明がわかりやすい 残業代請求の経験が豊富な弁護士であることはもちろん、説明がわかりやすい弁護士を選ぶことも大切です。 残業代請求は、未払い残業代の計算が複雑になることがあります。とくに、深夜労働や休日労働もしている場合や遅延損害金を併せて請求する場合は、計算が複雑になりやすいです。 ご自身が請求できる未払い残業代はいくらになるのか、残業代を請求した後の流れはどうなるのかなどの説明がわかりやすい弁護士を選ぶことで安心して任せることができるでしょう。 残業代請求を弁護士に依頼するメリット5選! (1)金銭回収の可能性が上がる 弁護士は法律の専門家であり、高度な知識を持っています。その知識をベースに法的根拠をもって会社と交渉するため、未払い残業代が回収できる確率を高めることができます。 また、弁護士に依頼することで従業員の本気度を伝え、「裁判を起こされるかもしれない」というプレッシャーを会社に与えられることもメリットといえるでしょう。 関連記事 ・残業代請求における和解金の相場は?和解金は何で決まる? (2)トラブル化を防ぐことができる 残業代請求を行うときに懸念されるのは、会社とのトラブルでしょう。とくに会社に在籍したまま残業代請求を行うときには、会社から従業員への不利益な対応を心配される方は多いと思います。 弁護士に依頼することで、会社からの不利益な対応を抑止する効果が期待できます。 従業員が弁護士をつけていれば、会社が従業員に不利益な対応を取った際には、弁護士から厳しく追及されることになるため、会社もうかつな対応はできません。 (3)手続きや計算を代行してくれる 残業代請求を弁護士に依頼すれば、未払い残業代の計算を弁護士に代行してもらうことができます。 会社に未払いの残業代を請求するには、そもそも未払い残業代がいくらなのかを突き止めなければなりません。そして金額を明確にした上で書面を作成し、会社に振り込みを求めます。 残業代の計算や書類の作成には専門的な知識を必要とし、時間や労力もかかります。また、会社とのやり取りは精神的な負担にもなるでしょう。 弁護士に依頼すれば、未払い残業代を計算する時間や労力、精神的負担の軽減ができます。 関連記事 ・残業代の正しい計算方法とは?基本から応用的な計算まで徹底解説! (4)証拠が収集しやすい 未払い残業代の回収には、証拠を集めることが重要です。しかし、証拠が手元にない状態では、証拠を集めることから取り掛かる必要があります。 従業員は会社よりも立場が低いため、従業員が会社に対してタイムカードやパソコンの記録を見せてくれと言っても、会社がすぐさま応じてくれるとは限りません。 自身で開示請求を行うよりも、弁護士から証拠の開示請求を行ったほうが、会社側が証拠の提出に応じてくれる可能性が高まるでしょう。 (5)労働審判・裁判になっても戦うことができる 労働審判や裁判になると複雑な手続きが必要となるため、法律の知識を持たない人だけでは会社と戦えません。 法律の専門家である弁護士が側にいれば手続きを任せられるだけでなく、法律に基づいた主張で裁判を有利に進めることが可能です。 残業代請求を弁護士に依頼するときの流れ 未払い残業代の証拠を集める 未払い残業代を請求するためには、労働者が残業代の証拠を収集する必要があります。サービス残業をしていたという客観的な証拠を集めることが重要です。 自身でサービス残業をしていたと主張しても、何時間サービス残業として働き、いくら未払い残業代が発生しているのかわからなければ回収は難しくなります。 弁護士に相談する前に、サービス残業をしていたことを証明できる客観的な証拠を用意できればベストです。 たとえば、以下のようなものが証拠として挙げられます。 残業代請求で有効となる証拠 タイムカード 勤怠管理システムの記録 上司の承認がある業務日報 パソコンのログイン・ログオフ時間の記録 就業規則 雇用契約書 など 証拠の集め方が分からないという場合には、弁護士に相談すればアドバイスをもらうことができるでしょう。 関連記事 ・残業代請求で必要となる証拠を徹底解説!証拠がない場合の対処法は? 残業代請求について弁護士に相談 証拠の有無にかかわらず、残業代請求をお考えの方は、弁護士事務所のホームページから相談の予約をしてみるのがよいでしょう。相談の方法には以下のような種類があります。 相談の方法 対面相談 電話相談 オンライン相談 メール相談 弁護士事務所によって受け付けている相談方法は異なります。 弁護士との相性を確かめるためにも対面相談がおすすめですが、仕事などの都合で対面相談が難しい方もいると思います。ご自身の働き方やライフスタイルに合ったものを選びましょう。 弁護士費用等の支払い 相談の結果、弁護士に正式に依頼することになったら弁護士費用を支払うことになります。 弁護士費用の支払い体系には、大きく分けて3つのパターンがあります。 弁護士費用の支払い体系 着手金を支払い精算... ... まずは着手金を支払い、事件が終了したら相手方から支払われた示談金、解決金から成功報酬等を割り引き、残ったお金が依頼者に後日振り込まれる。 完全成果報酬... ... 会社から未払いの残業代を請求できた際に、残業代の金額に基づき弁護士への支払い額が決定する。 預託金として一括払い... ... 成功報酬等の見込み分も含めた金額をはじめに預託金として一括で支払い、事件の終了後に精算。 依頼する前に弁護士費用に関して不安な点があれば、しっかりと弁護士に確認しましょう。 弁護士と今後の方針を協議、弁護士が相手方会社と交渉 会社を辞めてから未払い残業代を回収する人もいれば、会社に在籍しながら弁護士に依頼し、未払い残業代を回収したいという人もいるでしょう。 会社に在籍している場合は会社にこのまま残るのか、それとも辞めて別の会社に行くのかについても決断しなくてはなりません。 弁護士は法的な知識の専門家であり、労働問題の実務上の流れなどにも精通しています。依頼者の方の希望などをヒアリングしつつ、今後の見通しなどについても話すことができます。 弁護士と話し合い方針が定まった後は、弁護士と会社の交渉が始まります。 弁護士は内容証明郵便等で、「自身が依頼者の弁護士として選任されたこと」「未払い残業代について回収したいという意向を持っていること」「交渉の場を設けたいこと」などを相手方会社に通知します。 その後、弁護士と会社との間で交渉の場が持たれ、解決に向けて交渉が行われることになります。 労働審判 会社が頑なな姿勢を崩さない場合など、交渉ベースの話し合いでは事態の解決が見込めないケースというのもあります。 そのような場合には、労働審判と呼ばれる手続きを取り、事態の解決を図るのも一つの選択肢となります。 労働審判とは、会社と従業員の間で起きた労働トラブルを解決するための裁判所の手続きです。 裁判とは違い非公開の場で行われ、労働審判官(裁判官)1名と労働審判員2名で組織する労働審判委員会が、労働者側と会社側、双方から意見を聞き、3回以内の期日で審理を行います。 労働審判は裁判と違って短い期間で完結し、手続きが簡易な点が大きな特徴です。 通常の裁判で労働紛争を争った場合の平均審理期間は17. 2か月と長期間になりますが、最大3回の期日で審理がされる労働審判であれば平均90. 3日で解決しています。 関連記事 ・労働審判の弁護士費用相場は?労働審判を弁護士に依頼すべき理由 裁判 労働審判でも会社と和解ができなかった場合は、最終的に裁判で会社と決着をつけることとなります。 期日が3回までの労働審判と違って裁判には期日の回数に決まりがありません。そのため、1年以上にわたって会社と争うケースも存在します。 関連記事 ・裁判で残業代請求を行う場合のメリットは?デメリットは期間の長さ? 残業代請求についてお悩みなら弁護士に相談ください 未払い残業代を個人の力で請求しようとすると、会社側が頑なな姿勢を崩さなかったり、不利益な取り扱いをしたりして、うまく解決に至らない場合があります。 また未払い残業代が発生するような職場は、残業時間が長かったり、人間関係のストレスが大きかったりするケースが多いです。 身体的、精神的な疲れのためにひとりでは事態解決に向けて動けないという方も多いのではないでしょうか。 未払い残業代についてお悩みならまずは弁護士に相談するのがおすすめです。弁護士ならば、弁護士への依頼をした方が良いのかどうかという点から適切なアドバイスをすることができます。 正式に依頼に至るかは別としても、話をすることで事態が整理されて、解決に向けて明るい展望が見える場合もあります。 まずはお気軽に弁護士に相談してみてください。 --- ### 試用期間中の解雇は弁護士に相談すべき!解雇理由と弁護士に相談するメリット - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-06-27 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6839 - Categories: 不当解雇 試用期間に関する解雇を弁護士に相談すれば、解雇が不当かを判断してもらえたり、解雇を撤回してもらえたりするなどのメリットがあります。無料相談を受け付けている弁護士事務所もありますので、まずは相談してみることが重要です。 「試用期間中に解雇されてしまったが、不当解雇かどうかわからない」「試用期間中に解雇されたが納得がいかない」 試用期間は、本採用をおこなう前に、社員が適性や能力を持ち合わせているかどうかを見極める期間です。 試用期間中の解雇は本採用後の解雇よりも認められやすく思われがちですが、通常の解雇と同様に、客観的に合理的な理由がない場合は無効とみなされます。 今回は、試用期間中に関する解雇が有効となる事案や、試用期間中の解雇を弁護士に相談するメリットについて解説します。 試用期間中に解雇となる理由と判断ポイント 試用期間中であっても、解雇は客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当な場合でない限り認められていません。 解雇となり得る理由には、「能力不足」「勤務態度」「経歴詐称」の3つが主に挙げられます。 ただし、能力不足や勤務態度が悪いことを理由にすぐに解雇が認められるわけではなく、適切な指導や教育があったかどうかが判断基準となることがあります。 試用期間中に解雇となり得る理由 能力不足|適切な指導や教育はあったか 勤務態度|遅刻・欠勤の有無や、ふるまいの内容はどうか 経歴詐称|学歴や犯罪歴の詐称の有無や、会社への影響はどうか 解雇となり得る理由と判断基準となるポイントを詳しく見ていきましょう。 (1)能力不足|適切な指導や教育はあったか 能力不足が解雇理由として有効と認められるかどうかは、「企業側が適切に指導や教育をしていたかどうか」「職歴に相応する技能があったかどうか」「会社側に大きな損失を与えたかどうか」などから判断されます。 こういった理由がない場合は、解雇が無効であると判断される場合があります。 関連記事 ・能力不足で会社から解雇されたときの対処法は?不当解雇の可能性が高い! (2)勤務態度|遅刻・欠勤の有無や、ふるまいの内容はどうか たとえば、遅刻や欠勤を何度もしていたり、上司からの指示を無視するなど協調性のない行動をしたりしていれば、正当な解雇理由として判断される可能性が高いです。 しかし、1~2回程度の遅刻であったり、少し言葉遣いが悪かったりといった程度では、解雇の理由として有効とはいえないと考えられます。 (3)経歴詐称|学歴や犯罪歴の詐称の有無や、会社への影響はどうか 経歴詐称が解雇理由として有効とみなされるケースには、「学歴、職歴、犯罪歴といった重大な経歴詐称をおこなっている」「職務で必要な資格や免許の取得経歴を詐称しており、業務に支障が出る」といったケースが考えられます。 こういった経歴詐称にあたらない場合は、解雇の理由として有効とはいえないと考えられます。 試用期間中の解雇を弁護士に相談するメリット 「試用期間中に解雇されてしまったがどうすればよいかわからない」とお悩みの方は、弁護士に相談することをおすすめします。 弁護士に相談するメリットとして以下のポイントが挙げられます。 弁護士に相談するメリット 解雇が不当かを判断してもらえる 解雇を撤回してもらえる可能性が高まる 未払い賃金や慰謝料の請求など法的な手続きを任せられる 解雇が不当かを判断してもらえる 突然解雇された場合でも、状況によっては不当解雇に該当しないというケースも考えられます。 弁護士に依頼をすることで、解雇が不当であるかどうかを判断してもらえ、不当な解雇の可能性が高い場合にはその後の対応を考えることができます。 不当解雇を主張し、解雇が無効と判断されれば、復職したり、解雇時点から解雇が無効と認められた時点までの賃金相当額を請求したりすることができます。 解雇が無効となり得るケースについて詳しく知りたい方は『解雇を無効にしたい!無効となるケースや対処法を解説』の記事をご覧ください。 解雇を撤回してもらえる可能性が高まる 不当解雇を受けた場合、企業側に不当解雇を主張したとしても、企業側が重く受け止めないというケースがあります。 弁護士に依頼すれば、解雇が不当であったことを証明して企業側と代理で交渉してもらえ、不当解雇の撤回を認めさせやすくなります。 未払い賃金や慰謝料の請求など法的な手続きを任せられる 会社が解雇の撤回や、不就労期間中の未払い賃金請求に応じないという場合には、労働審判や裁判といった法的な手続きへ移行するといったことも考えられます。 弁護士に依頼すれば、法的な手続きを一任できるというメリットがあります。 労働審判や裁判では、適切な証拠の収集や法的な根拠に基づく主張が求められます。弁護士に依頼することで、安心して対応を任せることができるでしょう。 まとめ 試用期間中の解雇が有効か無効か分からない方は弁護士に相談しましょう。 弁護士に相談することで、不当な解雇かどうかの判断をしてもらうことができます。 また、弁護士に依頼することで、会社に対して交渉や労働審判、労働訴訟を起こしてもらえたりするなどのメリットがあります。 無料相談を受け付けている弁護士事務所もありますので、まずは弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。 --- ### 給料未払いのおすすめ相談先5選と注意点! - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-03-22 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6834 - Categories: 給料未払い 給料未払いの相談先はさまざまです。簡単な相談なら「無料の相談窓口」、労働基準法などの違反が明確ならば「労働基準監督署」が考えられます。訴訟を含めた総合的な支援を期待するなら「弁護士」がおすすめです。 「給料未払いはどこに相談すべき?」「相談するときに必要な準備は?」 頑張った労働に対してその賃金が支払われないのは理不尽ですよね。 給料の未払いは違法です。従業員は会社に対して未払い給料を請求する権利がありますが、会社が支払わないときは第三者に相談するのも解決策の1つです。 給料の未払いに悩む方に向けて、今回の記事では、給料未払いの相談窓口や、相談する際の注意点、弁護士に相談する場合の流れなどについて詳しく紹介します。 給料未払いの相談先5選!悩みはすぐに解決しよう! 給料未払いの相談先①労働組合 1つ目の相談先は労働組合です。労働組合は、職場におけるさまざまな問題や労働条件(賃金、働く時間、勤務制度など)の改善について会社と交渉・協議する権利を持っています。 給料の未払いも、交渉・協議する事項の1つです。 労働組合によっては、従業員に代わって組合が未払給与の支払いを会社に請求してくれることもあります。 また、労働組合には労働問題に詳しい人がいて相談に乗ってくれることもあります。 ただし、勤務先に労働組合がなかったり、個別案件では会社と交渉・協議してくれない労働組合もあるため、解決手段にならないケースもあります。 また労働組合は「業界」「職種」「性別」「地域」にそれぞれ専門分野や特化領域があるので、自分の属性にあったユニオンを選ぶことも重要です。 ユニオンによっては、会費の支払いや組合活動への参加が求められる場合もあります。 給料未払いの相談先②無料の相談窓口 2つ目の相談先は公的な無料相談窓口です。労働問題などで悩む人のために、国ではさまざまな無料の相談窓口を設けています。主な相談窓口は次の通りです。 総合労働相談コーナー 労働基準監督署や労働局に設置されている総合労働相談コーナーは、職場のトラブルに関する相談や解決のための情報提供をワンストップで行っています。 解雇やセクハラ・パワハラなど労働問題に関するあらゆる分野について電話や面談で相談できます。 また、状況に応じて適切な相談先や解決策も案内してくれるので、どこに相談していいのかわからない場合も気軽に相談できます。 最寄りの労働相談コーナーは下記リンクで確認できます。 参考:厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」 労働条件相談ほっとライン 労働条件相談ほっとラインは、違法な時間外労働や給料の未払いなどの労働基準関係法令に関する電話相談窓口です。 相談員が、法律や裁判例をふまえた相談対応や相談先の紹介などをしてくれます。 土曜・日曜を含めて全国どこからでも無料のフリーダイヤルで電話相談できるため、まず最初に電話相談してみるのもいいでしょう。 参考:厚生労働省「労働条件相談「ほっとライン」に相談してみよう」 法テラス 法テラスは、労働問題を含む各種法的トラブルの解決に向けた情報やサービスを行うために設けられた国民向けの法的支援機関です。 法テラスでは、電話や面談で弁護士などの専門家に無料で相談できます。最寄りの相談窓口は下記リンクで確認できます。 参考:日本司法支援センター法テラス「お近くの法テラス(地方事務所一覧)」 ただし、法テラスは経済的に余裕のない人のために無料法律相談を行っているため、収入要件に該当しないと無料では利用できません。 給料未払いの相談先③社会保険労務士 3つ目の相談先は社会保険労務士です。社会保険労務士は、労働基準関係法令の専門家です。 相談だけでなく、従業員に代わって会社に支払いを促してくれるケースもあります。 ただし、社会保険労務士の主な顧客は会社であり、逆の立場にある従業員からの依頼は受けていないケースもあります。 また、訴訟などで会社と争う場合は、一般的には弁護士へ依頼することになります。 給料未払いの相談先④労働基準監督署 4つ目の相談先は労働基準監督署です。労働基準監督署は、会社が労働基準法を遵守しているかを管理・監督し、法令に違反している会社に対し指導や勧告を行います。 参考:労働基準監督署の所在地一覧 労働基準監督署は電話、メールのほか、来所して窓口で相談することが可能です。相談料は無料です。 なお対応する労働基準監督署は自宅の最寄りの労働基準監督署ではなく、勤務先の事業所(工場、支店)を管轄する労働基準監督署になるので、その点には十分に注意してください。 労働基準監督署に相談する場合は、会社が労働基準法に違反している証拠を可能な限り集めることが重要です。 証拠が不十分だと直接的な会社対応をしてもらえないケースもあります。 また、労働基準監督署の指導や勧告には強制力がないため、会社が指導や勧告を無視すれば問題は解決しません。 給料未払いの相談先⑤弁護士 5つ目の相談先は弁護士です。弁護士は法律の専門家で、中には労働問題を得意にしている弁護士もいます。 依頼者の希望に応じて、相談対応や会社との直接交渉、訴訟対応などをしてもらえます。 無料相談に対応している弁護士であれば、相談段階ではお金はかかりません。依頼した場合は交渉や請求、裁判などを依頼できるので、未払い給料の獲得が見込めるでしょう。 専門家がさまざまな場面で個別に対応してくれるので安心ですが、公的な機関というわけではないので一定額の弁護士費用はかかります。 関連記事 ・給料の未払いは弁護士に相談!依頼するメリットと費用を徹底解説 給料未払いの相談先:警察は詐欺など犯罪にあたる場合のみ 給料の未払いは「基本的には民事事件」であるため、警察が対応するのは難しいでしょう。 警察は民事不介入の原則を守ります。警察が介入できるのは、刑法など刑罰の定められた法律に違反した事件だけなのです。 万が一、給料未払いを経営者に問い合わせて、殴られたり脅迫されたりした場合には、警察に相談しましょう。 未払い給料を相談するときの注意点①時効 給料未払いの請求の時効は3年 現在の給料未払いの請求の時効は「3年」です。 労働基準法115条では賃金の請求権は5年間で時効消滅すると定められていますが、急激な変化を避けるために当面は時効を3年間とする暫定措置(労働基準法附則143条3項)があります。 ただし、上記の規定は2020年4月に改正された民法第166条(債権等の消滅時効)に合わせて改定されたもので、2020年3月末日以前の時効は「2年」です。 時効を止める方法はある? 時効を止めるためには、「時効の更新」または「時効の完成猶予」を行います。 「時効の更新」と「時効の完成猶予」 時効の更新:時効の起算日を更新すること(時効のリセット) 時効の完成猶予:所定の手続きから6か月経過するまで時効を完成させないこと(時効の延長) 裁判で給与未払いが確定したり、会社が給与未払いがあることを認めた場合、時効は更新されます。 また、従業員が会社に催告(未払い給料の請求)をした場合、時効は完成猶予され催告から6か月経過するまで時効は完成しません。 催告方法は口頭でも可能ですが、催告した証拠を明確に残すため、会社に内容証明郵便を送付することをおすすめします。 未払い給料を相談するときの注意点②事前準備 給料未払いの証拠を収集 事前準備で最も重要なことは、給料未払いの証拠を集めることです。訴訟での証拠になるだけではなく、会社と直接交渉するときにも役に立ちます。 収集しておきたい証拠は主に次の3つです。 収集しておきたい証拠 本来支払うべき賃金を証明する証拠(労働契約書、就業規則 など) 実際に支払われた賃金を証明する証拠(給与明細書、賃金台帳、給与が振り込まれた通帳 など) 実際の勤務時間を証明する証拠(タイムカード、勤務記録表、業務日報 など) 関連記事 ・給料未払いの証拠がない!対処法や請求をする際の手順を解説! 内容証明郵便を送り会社と交渉 給与が支払われない場合、会社の上司や担当部署に相談して穏便に解決できれば理想的です。支払われなければ、無料の相談窓口に相談するのもいいでしょう。 しかし、弁護士など有料の相談を検討する場合、まずは自分で会社と交渉してみるのも選択肢の1つです。 交渉の第一段階としておすすめするのが内容証明郵便を使った請求です。 口頭で相談したときは相手にしてもらえなかったのに、内容証明郵便を送付したら会社側から話し合いを提案してくることもあります。 内容証明郵便によって会社が訴訟リスクを意識するなど、一定の牽制効果が期待できます。 内容証明の主な記載内容は次の通りです。 内容証明の主な記載内容 請求者(従業員)と請求相手(会社)の名前・住所 請求日 請求内容(◯月◯日の残業代◯円を請求する、など) 支払期限 など 参考:日本郵便「内容証明」 時系列や質問の整理 相談前には給与未払いの経緯を時系列に整理しておきましょう。質問したい内容なども同様です。 相談先によりますが、相談時間に制約がある場合、事前に経緯や質問内容を整理しておくと効率的に相談できます。 状況などを正しく伝えることも出来るので、より的確なアドバイスが期待できます。 弁護士相談後の流れ・手続き 会社と交渉 弁護士に相談すると、弁護士に会社と直接交渉してもらえます。法律に詳しくない従業員に対しては高圧的であった会社が、専門家である弁護士を相手にすると態度を一変させることもあります。 一般的に、従業員個人が会社と交渉するより、弁護士を通じてするほうが交渉は有利に進みます。 支払い督促 支払い督促とは、簡易裁判所に会社に対する請求内容を記載した支払督促申立書を提出すると、裁判所が内容を確認して支払督促書面を会社に送付してくれる制度です。 会社が2週間以内に異議を唱えなければ、支払督促の内容が法的に確定します。 法的拘束力を持った方法ですが、会社が異議を申し立てれば最終的には訴訟となります。 労働審判 労働審判は、裁判官と労働審判員により3回以内の話し合いで問題解決を図る制度です。 当事者間で和解するか、裁判所による審判に当事者が異議申し立てをしなければ問題は解決します。 裁判と比較して費用と時間は少なくて済みますが、異議申し立てがあれば問題は解決されないまま労働審判は終わります。 参考:労働審判手続 民事訴訟 支払督促や労働審判は民事訴訟より簡単に問題解決を図る方法ですが、会社の異議申し立てにより民事訴訟、いわゆる裁判に移行し、その後公判、判決と進みます。 基本的には、弁護士のアドバイスに従って訴訟を行います。 原告・被告の控訴がなければ、裁判所の判決が最終的な問題解決となります。詳細に検討した結果である判決を得られますが、訴訟には時間と費用がかかります。 給料未払いは弁護士にすぐ相談しよう 会社と直接交渉しても問題解決しない場合、給料未払いの相談は弁護士がおすすめです。 弁護士であれば、相談者の希望に合わせた対応が期待できるからです。会社との直接交渉から法律的な手続きまで対応可能で、専門知識も豊富です。 また、未払い給料の請求には時効があるため、弁護士へ依頼するなら、今すぐ相談しましょう。初回相談は無料の弁護士事務所もあるので、検討してみましょう。 --- ### 残業代請求の勝率はどのくらい?残業代を回収できるケースとポイントを解説 - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-06-28 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6829 - Categories: 残業代請求 残業代請求の勝率は気になるところですが、実際にはあまり気にする必要はない事項です。残業代を請求するためには、有効的な証拠をどれだけ集めることができるかが重要です。残業代請求でお悩みの方は弁護士に相談してください。 「未払い残業代の請求をしたいがどれくらいの勝率なのかわからない」「弁護士事務所の残業代請求に関する勝率を知りたい」 弁護士に残業代請求を依頼するかどうか悩んでいる方の中には、勝率を気にする人も多いと思います。 せっかく依頼したにもかからわず、残業代を受け取ることができないなら、依頼をためらってしまいますよね。 一般的には、残業代請求は有効的な証拠が得やすいことから、労働者側が負けてしまうケースは少ないといわれています。 そこで今回は、残業代を請求する上での勝率の考え方や、残業代を回収できるケースとポイントについて解説していきます。 残業代請求の勝率は気にする必要はない 残業代請求の勝率を気にする方も多いとは思いますが、実際にはあまり気にする必要はないといえます。 残業代請求の勝率を気にしなくていい理由について、大きく以下の2つが挙げられます。 勝率を気にしなくていい理由 残業代を回収できるかどうかはケースバイケースであるため 個人によって勝ち負けの程度が異なるため 残業代を回収できるかどうかはケースバイケースであるため 未払い残業代の請求については、タイムカードや雇用契約の内容といった有効的な証拠を集めやすく、労働者側の要求が認められることが多いです。 もちろん、証拠が揃っているかどうかや雇用形態によっては、負けてしまうおそれも十分考えられます。 したがって、残業代を回収できるかは時と場合によってまちまちであるため、勝率を考える重要性は小さいと考えられます。 個人によって勝ち負けの程度が異なるため たとえば、残業代請求に必要な証拠があまり揃っていない状態で、残業代が一部でも回収できた場合、「勝った」と感じる人もいるでしょう。 逆に、残業代を満額回収できたとしても、費用や時間をかけすぎてかえって効率が悪くなったという場合には、「負けた」と感じる人がいるかもしれません。 もちろん、残業代が全く回収できなかったという場合は誰もが「負けた」と認識しますが、「勝った」と認識するケースは人それぞれであるといえます。 そのため、勝率を考える重要性は小さいと考えられます。 関連記事 ・残業代請求で負ける5つのケース!敗訴を防ぐポイントを弁護士が解説 未払い残業代を回収しやすいケース 未払い残業代を少しでも回収できれば、「勝った」と考える人は多いでしょう。未払い残業代を回収しやすいケースには、以下のようなケースが挙げられます。 未払い残業代を回収しやすいケース 有効的な証拠を集められた場合 みなし残業代の残業時間以上に残業した場合 管理職という理由で残業代が未払いである場合 有効的な証拠を集められた場合 残業代を請求する上で有効的な証拠を集められた場合には、残業代の未払いが認められる可能性は高いと考えられます。有効的な証拠には、以下のようなものがあります。 未払い残業代請求に有効的な証拠 タイムカード等の勤怠記録 就業規則 雇用契約書 業務用PCの使用時間の記録 など 証拠を集めるときには、なるべく長期間様々な種類の証拠を集めておくことがポイントです。 関連記事 ・残業代請求で必要となる証拠を徹底解説!証拠がない場合の対処法は? みなし残業代の残業時間以上に残業した場合 みなし残業(固定残業)は、あらかじめ一定時間分の残業代を給与に含めて支払う制度のことです(労働基準法38条)。 決められた時間以上残業している場合は、その分の残業代を請求することができます。 また、みなし残業代については、通常の賃金部分と割増賃金部分が書面ではっきりと区別されていることや、固定手当が割増賃金の対価として支払われていることが必要となります。 みなし残業の制度が正しく運用されていない場合は、みなし残業代自体を否定することも可能です。 関連記事 ・みなし残業とは?違法になるケースや違法な残業への対処法 管理職という理由で残業代が未払いである場合 管理監督者に該当する職務の人には、残業代を支払わなくてもよいとされています(労働基準法41条2項)。管理監督者に該当する人には、以下のような条件があります。 管理監督者に該当する人 経営や人事に関わるなど経営者と一体的立場にある 労働時間による管理を受けていない 基本給や手当などにおいて、その地位にふさわしい処遇を受けている 管理監督者の条件を満たしていないにもかかわらず、ただ「管理職だから」という理由で残業代が未払いである場合には、残業代を回収できる可能性が高いといえます。 関連記事 ・管理職は残業代が出ない?残業代がもらえるケースや基準を解説 残業代を回収するうえでのポイント 残業代請求は弁護士に依頼する 残業代請求は個人でおこなうこともできますが、法的トラブルに発展した際に対応が難しくなってしまうということが考えられます。 弁護士に依頼することで、法的トラブルに発展した場合でもスムーズに移行できます。 また、未払い残業代の計算や証拠の収集のサポートをしてもらうことができるので、面倒な手間を弁護士に一任できることもメリットです。 関連記事 ・残業代請求を弁護士に依頼する場合の費用相場は?弁護士に依頼するメリット5選! 残業代請求の時効が3年であることに注意 残業代を請求するうえで気をつけておきたいポイントは、未払いになっている残業代を請求できる時効が3年であるという点です(労働基準法115条)。 もし、残業代請求の時効をストップさせたいという場合には、内容証明郵便を使用して、請求書を送るなどといった手段が考えられます。 関連記事 ・残業代請求の時効は3年!将来は5年に?時効中止や請求の方法を解説 まとめ 残業代請求の勝率は気になるところですが、残業代請求ではどれだけ有効的な証拠を集めることができるかがポイントです。 残業代請求には時効もあったり、法的トラブルに発展したりするおそれもあることから、残業代請求をお考えの場合は弁護士に依頼することをおすすめします。 無料相談を受け付けている弁護士事務所もありますので、まずは弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。 --- ### 試用期間で解雇されたらどうする?急にクビになってしまった場合の対処法 - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-03-27 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6830 - Categories: 不当解雇 試用期間中や試用期間満了時に雇用を終了させられた場合、法律上は解雇として扱われます。そのため、理由と相当性が必要であり、身勝手な解雇は許されません。試用期間に関する解雇では失業保険を受けられない可能性が高いため、できる限り早く弁護士等に相談しましょう。 「3か月の試用期間が終われば正式に採用する」といった「試用期間」は、多くの企業で設けられている制度です。 試用期間が設けられていても、一度採用されると、その会社で勤め続けることを考えるため、そんな状況でクビになってしまうとショックが非常に大きいでしょう。 今回の記事では、試用期間後の急な解雇に苦しむ方に向けて、有効・無効の判断基準となるポイントや解雇された場合の対処法を解説します。 試用期間と解雇の法律的な関係は?|本採用拒否の意味 試用期間と聞くと「お試し期間」というイメージを持つ方が多いと思います。しかし、試用期間中や試用期間終了後に会社が労働者を自由に解雇できるわけではありません。 そもそも試用期間とは? 試用期間は法律で決められている制度ではなく、採用におけるミスマッチを防ぐために会社が独自に設けている制度です。 そのため、明確な法律上の定義はありませんが、概ね、「自社の従業員としての適格性を判断するための試験的な勤務期間」と捉えられています。 採用選考だけでは自社に合っているか判断し切れないため、実際に勤務させてみて、勤務態度・能力・技能・性格等を見極めるために設けられていることが多いです。 試用期間中の労働契約 試用期間付きの契約は法的には、「解約権留保付労働契約」と解されています。 試用期間の契約には主に2種類のパターンがあります。 労働契約自体は期間の定めのない通常の労働契約だが、その最初の数か月が試用期間とされているパターン 試用期間中は契約社員として有期契約が結ばれており、本採用後に改めて期間の定めのない労働契約が結ばれるパタ―ン また、試用期間は労働者の立場を不安定にするものであるため、試用期間の長さは労働者の適格性を判断するのに必要な合理的範囲のものでなければなりません。 そのため、試用期間として設定できる期間は、長くても1年程度が限度と考えられています。試用期間の延長・更新は原則として認められません。 ただし、労働者と会社側の双方の合意があれば、延長されることもあります。 試用期間における本採用拒否は解雇であり理由が必要 試用期間は適格性を判断するための制度であるため、試用期間が終了する(法律的には「満了」と表現します)までに、本採用するかどうかが判断されます。 不適格だと判定されれば本採用が拒否され、雇用が終了することになります。 通常は試用期間満了時に雇用が終了しますが、中には、試用期間の満了を待たずに本採用拒否が行われるケースもあります。 本採用拒否という言葉が使われていますが、会社の判断のみによって雇用契約を終了させるわけですから、法律上は解雇にほかなりません。 したがって、本採用拒否が認められるかどうかは、解雇の有効性とほぼ同様の基準で判断されます。 使用者が労働者を解雇するためには、①客観的に合理的な理由と②社会通念上の相当性が必要となります(労働契約法16条)。 解雇の理由(客観的に合理的な理由)の典型例は、勤務態度に問題がある、労働者の能力不足、勤務成績の不良といった事情がある場合です。 しかし、そのような事情があるだけで解雇が有効と認められることはあまりなく、その状態を改善するために使用者がどのような対策を取ったかが問われます。 つまり、試用期間後に雇用を終了しても仕方ないというわけではなく、一度採用している以上、雇用を終了させるには一定の理由が求められるということです。 試用期間における本採用拒否と通常の解雇の違い 通常の解雇では上記の基準が厳しく運用されており、「解雇されてもやむを得ない場合」にのみ許されるというイメージです。 一方で試用期間における本採用拒否は、試用期間を設けている以上、解雇に比べれば緩やかに判断されます。 最高裁判決でも、通常の解雇に比べて「広い範囲における解雇の自由が認められてしかるべき」と述べられています(『三菱樹脂事件』最判昭48. 12. 12)。 もっとも、使用者の身勝手な理由による本採用拒否が認められないことに変わりはありません。本採用拒否が認められなかった裁判例も一定数あるため、次で紹介していきます。 試用期間における解雇が認められなかった裁判例 試用期間における本採用拒否は法律的には解雇ですが、その有効性は通常の解雇よりも緩やかに認められるということでした。 しかし、本採用拒否(解雇)が認められなかった裁判例を見てみると、通常の解雇とあまり変わらない判断がされているものがあります。 そこで、本採用拒否に対処する参考に、それらをご紹介します。 能力不足を理由に解雇された事例 試用期間は従業員としての適格性を見極めるための期間であり、能力不足は本採用が拒否される理由の典型です。 これに関する裁判例として、一般常識及び社会人としての能力不足、業務遂行に必要な知識・経験や能力の不足などを理由に解雇された事件で、解雇が無効と判断されたものがあります(大阪地判令1. 11. 8)。 この事件では、使用者側が能力不足と判断した事情(掃除の仕方が不適切、遅刻時に遅延証明書を持参しなかったなど)は軽微なものに過ぎないとされています。 また、外部に提出する書面作成にミスがあったことも、その書面は他の従業員が確認すべき書面ともいえ、ミスの責任を解雇された従業員のみに負わせることは妥当ではないとされています。 さらに、業務について使用者からどのような指導がなされたかも不明であるとして、試用期間中の解雇を無効と判断しています。 試用期間中の協調性を欠いた行動を理由に解雇された事例 能力不足のほか、協調性の欠如も本採用拒否の理由となる場合があります。 たとえば、上長に対する報告・連絡・相談ができない、指示に従わずひとりよがりな行動を取るといったようなものです。 しかし、協調性の欠如といっても程度の問題はあり、1度報告を怠った・指示に従わなかったことで、即座に本採用拒否が認められるわけではありません。 自身が関係する顧客とのクレームを直接の上司に報告せず、その顧客に対し自身の判断で(指示を受けずに)回答したなどの理由で、試用期間満了をもって解雇された事件があります(東京地判平29. 3. 29)。 この事件では、これらの行為が協調性を欠いた独りよがりの行動と評価できず、雇用継続における重大な支障ともいえないとされています。 そして、その他の事情も考慮した結果、解雇は無効と判断されています。 試用期間中の解雇が有効か無効か判断するポイント 裁判例で見てきた通り、試用期間中であっても労働者の解雇には非常に高いハードルが設けられています。 試用期間中で解雇を通知されてしまった方のうち、自身の解雇が有効か無効か知りたい方は以下のポイントについて見てみるのが良いでしょう。 試用期間の解雇のポイント 著しく成績が不良か 労働者本人に改善の見込みがあるか 実際の業務に支障が出ていないか 会社側の評価の仕方が適正か 著しく成績が不良か 他人と比較して相対的に成績が悪いということではなく、客観的に就労させること自体がふさわしくないほどに、著しく成績が不良であるのかどうかがポイントになります。 労働者本人に改善の見込みがあるか 会社から指導や教育が行われているか、別部署への配置転換が行われたか、またそれらをしても改善の見込みがないのかがポイントとなります。 会社側が何度も指導や教育をしたにもかかわらず、理由なく繰り返される遅刻や欠勤は解雇が認められる可能性が高まります。 実際の業務に支障が出ていないか 実際の業務に支障が出ているかどうかがポイントとなります。 従業員の直接のミスで大型契約が打ち切りになったり、契約件数が0件にもかかわらず給与が高額で経営を圧迫してたりする場合などには解雇が認められる可能性があります。 会社側の評価の仕方が適正か 会社側の評価基準が客観的かつ合理的なものであるかどうかがポイントとなります。 ノルマ自体が具体的で正当なものなのか、上司の主観なくその労働者がフェアに評価されているかどうかが重要です。 評価が公正に行われている場合には、解雇が認められる可能性があります。 試用期間で解雇されたときの対処法|失業手当も含めて解説 このように、試用期間とはいえ本採用拒否(解雇)には一定のハードルがあります。 そのため、本採用拒否にあったとしても、冷静に状況の打開に向けて行動を起こすことが重要です。 最後に、試用期間で解雇されたときの対処法を解説します。 解雇されたら解雇理由証明書を請求する 試用期間で解雇された場合には、解雇が不当な解雇かどうかを確認するため、まずは解雇の理由を使用者に確認することが重要です。 その際、口頭で確認するのもいいですが、会社に対して解雇理由証明書を請求して書面形式で受け取ったほうが、正確かつ確実で、以後の行動にも有益です。 解雇理由証明書とは、解雇の理由について記された書面で、労働者が請求した時、使用者には交付することが義務づけられています(労働基準法22条2項)。 本採用拒否も法律的には解雇であるため、解雇理由証明書の請求が可能です。 関連記事 ・解雇理由証明書を請求する方法は?請求するために知っておくべきことを解説 解雇が違法かどうか検討する 会社から解雇理由証明書が送られてきたら、解雇理由が違法かどうか検討しましょう。 なお、使用者から解雇理由証明書の交付を受けたとしても、詳細な理由が記載されているとは限りません。 たとえば、「就業規則の第○条に該当したため」といったように、就業規則の該当条文が書かれているだけということもあります。 不当な解雇について金銭の支払いを求める 解雇が違法・無効となれば、職場に復帰できますが、加えて、会社に対して慰謝料などの損害賠償を請求できます。 ただし、違法な解雇でも慰謝料の請求が認められない例も多く、慰謝料額についても明確な基準はありません。請求するのであれば、専門家に依頼することが最適でしょう。 まずは専門家に、解雇の有効性や損害賠償請求の可否について相談することをおすすめします。 試用期間における解雇で失業保険はもらえる? 試用期間における本採用拒否の場面では、失業保険が受けられないケースが多いです。 試用期間の多くは3か月〜6か月程度に設定されているため、失業保険を受けるための条件をクリアしていない可能性が高いからです。 失業保険は雇用保険上の制度です。失業保険を受給するためにはまず、雇用保険に加入していなければなりません。 雇用保険は、31日以上引き続き雇用されることが見込まれ、1週間に20時間以上働くのであれば必ず加入することとなっていおり、試用期間でも加入していることがほとんどです。 しかし、それだけでは失業保険は受けられず、解雇による会社都合退職であっても、「雇用保険に入っていた期間が6か月以上必要」とされています。 退職すると雇用保険から外れるため、少なくとも6か月は在職しておかなければならないということです。 このように、試用期間における本採用拒否の場面では、6か月未満しか在職していないケースも多く、期間の関係から失業保険が受けられない可能性が高いと言えます。 試用期間の解雇でお悩みの方は弁護士に相談 試用期間の解雇でお悩みの方は、弁護士に相談してください。 相談先としてはあらゆる労働問題を扱っている労働基準監督署も考えられますが、解雇事案に対する労働基準監督署の対応は限られています。 不当解雇は多くの場合、労働基準法違反ではなく、あくまで民事の案件だからです。 弁護士であれば、労働審判といった迅速な解決が見込める手続きを含め、職場復帰や損害賠償の請求といった解決手段を提示してくれるでしょう。 本採用拒否の場合、何よりも迅速に行動することが重要です。不当解雇の相談に対応する弁護士事務所を探してみてください。 関連記事 ・試用期間中の解雇は弁護士に相談すべき!解雇理由と弁護士に相談するメリット --- ### 労働問題に強い弁護士に相談!弁護士に相談するメリットや探し方 - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-06-28 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6822 - Categories: 労働問題全般 労働問題の解決には専門家である弁護士への依頼がおすすめです。弁護士依頼のメリット、選び方を徹底解説しています。労働問題でお悩みの方は無料で相談できる弁護士にまずは相談してみてください。 残業代請求や不当解雇などの労働問題を一人で対処するのは大変ですよね。 弁護士への相談は敷居が高いと感じている方の中には、労働問題を弁護士に相談するメリットや探し方について気になる方も多いと思います。 また、弁護士は専門分野などがあるため、依頼する弁護士によって得られる成果が異なります。労働問題に強い弁護士への相談が、労働問題解決につながります。 この記事では、労働問題の弁護士への相談や依頼を検討する方に向け、弁護士に相談するメリットや労働問題に強い弁護士を選ぶ際の注意点などを詳しく解説していきます。 弁護士が解決可能な労働問題とは? 弁護士は、法的な解決を必要とする労働問題であれば解決することができます。 具体的には、下記のような労働問題があげられます。 弁護士が解決可能な労働問題 未払い残業代・未払い賃金の請求 不当解雇 退職勧奨 パワハラやセクハラなどのハラスメント 労働災害 その他にも労働条件や労働契約書についてのトラブルも、弁護士に相談可能です。 弁護士は依頼主の代理人として会社と交渉し、法的な専門知識を要されるような書類を作成することができます。さらに、労働審判や裁判に移行したときでも高度な知識を持つ法律家として対応が可能です。 労働問題を弁護士に依頼するメリットとは? 労働問題が起きたとき、一人で問題を解決しようとインターネットで情報収集する人は多いと思います。 しかし、法律に関する情報は専門用語が多く、理解するためには時間を要します。一人で対処するのであればインターネットで調べながら書類を作ったり手続きをしたり、時間と手間がかかります。 弁護士は、労働問題を解決するために労働者の味方となり、書面の作成や相手方との交渉を代理して、依頼者の方の時間や手間を削減することができます。 メリット①労働問題への適切な対処法がわかる 労働問題が起きたら、労働者は問題の原因や経緯を踏まえ「自分自身が現在どのような立場にいるのか(法的な立ち位置)」を把握しておく必要があります。 現状で自身が不利な立場なのか、有利な立場にいるのか、本人ではわからない法的な立ち位置を教えてくれるのが弁護士です。 また、賠償請求が可能かどうか、どのような証拠を集めればよいかなどのアドバイスを弁護士から受けることができます。 その他にも弁護士に依頼すると、自分でインターネットを検索するだけでは見つけられなかった対処法を、法律家の観点から提示してくれるなどのメリットがあります。 メリット②証拠の開示請求ができる 労働問題の解決には証拠集めが不可欠です。 トラブルが起きてから証拠を集めようと思っても、すでに自身が会社を辞めているときや記録が手元にない場合は、会社に対して証拠を請求することとなります。 しかし、労働者が会社に証拠を渡すように電話や手紙で依頼をしても、応じてもらえず無視されてしまうケースもあるでしょう。 その点、弁護士から会社へ証拠の開示請求をおこなうと、応じない場合に裁判となるリスクを考慮して、会社が証拠の開示に応じてくれる可能性が高まります。 メリット③煩雑な手続きから解放される 労働問題が起きた場合、証拠集めや未払い残業代の集計、書類の作成など複雑な作業が発生します。 また、労働者からの請求に対し会社が誠実に応じてくれるとは限りません。会社の対応次第では、労働審判の申し立てや裁判を検討することとなります。 労働審判とは、労働者と会社の労働問題をスピーディーに適正で実効的に解決することを目的とし、設けられた裁判所にて行われる手続きのことです。 もし労働審判や裁判になったら、法的な主張や立証をすることになるため、高度な法律の知識が必要となるだけではなく、煩雑な手続きをしなければなりません。 証拠集めや未払いの残業代の集計、労働審判や裁判の手続きなど、複雑で専門的なことを任せられるのは、弁護士に依頼する大きなメリットと言えるでしょう。 メリット④交渉がスムーズに進む 弁護士に依頼をすれば、会社に対して法律に基づいた主張をすることができます。 会社が「固定残業代を払っているから残業代は発生しない」「ハラスメントはしていない」と言うのであれば、労働者側は法的根拠に基づき反論することとなります。 しかし、法律の知識を持っていなければ会社の言い分が間違っていると根拠を示しながら権利を主張することは難しいでしょう。 弁護士に会社との交渉を任せれば、法律に基づき会社の主張に反論できるので、スムーズに交渉が進みます。 また、労働者が一人で会社に対して交渉や手続きを行うよりも、費用を払って弁護士に依頼した方が会社に労働者の本気度が伝えられます。 さらに会社に対して「裁判を起こされるかもしれない」というプレッシャーを与えることもメリットと言えるでしょう。 労働問題を取り扱う弁護士の探し方 弁護士の探し方は、以下の3種類があります。 弁護士の探し方 親族や友人から紹介してもらう 弁護士検索サイトを利用する インターネットで弁護士事務所を検索 親族や友人から紹介してもらう 親族や友人からの紹介してもらうことができれば、たくさんいる弁護士の中から依頼する弁護士を探す手間が省けるでしょう。 また、実際に依頼した際の連絡頻度や対応などを詳しく知ることができることもメリットです。 注意点としては、紹介してもらった弁護士が労働問題に強い弁護士かどうかは分からないことです。 親族や知人は、他の分野で依頼していた可能性もあるので、依頼する際には専門的に取り扱っている分野などから決めるべきといえます。 弁護士検索サイトを利用する 弁護士検索サイトは、弁護士をまとめて掲載しているサイトです。 弁護士事務所を比較検討しながら探すことができるのが特徴です。労働問題に特化しているサイトもあります。 インターネットで弁護士事務所を検索 インターネットで弁護士事務所を検索する方法もあります。 「労働問題 弁護士 相談」などとキーワードを入れて検索すると、労働問題を扱っている弁護士事務所を見つけることができるでしょう。 無料で相談したい場合は「労働問題 弁護士 無料相談」、住んでいる都道府県で探したい場合は「労働問題 弁護士 東京」などとキーワードを組み合わせて検索してみてください。 労働問題に強い弁護士を選ぶための注意点 弁護士選びの注意点①|経験や実績を確認 弁護士を選ぶといっても事務所によっての強みや実績はさまざまです。気になる弁護士がいたら、まずはホームページで労働問題の実績と経験を確認しましょう。 労働問題は法律の知識だけではなく判例や通達などに詳しくなければ対応が難しい分野です。 弁護士が労働問題について充分な解決実績をもっているか否かは、依頼する上で重要なポイントです。 また、一概に労働問題といっても、労働問題は多岐にわたります。残業代請求の解決実績が豊富な弁護士もいれば、セクハラの解決実績が豊富な弁護士もいます。 お悩みの分野の経験や実績も確認しておくと、安心して依頼することができるでしょう。 弁護士選びの注意点②|説明のわかりやすさを確認 労働問題に強い弁護士だとしても、話しているときの説明がわかりにくい人はあまりおすすめできません。 実績や経験だけではなく、その弁護士が依頼主にどのような対応をするのか確認しましょう。 専門用語ばかりで難しい説明ばかりする弁護士は要注意です。依頼主の立場に立って、わかりやすく説明できる弁護士でなければ、依頼主に対して誠実とは言えません。 説明がわかりやすく、依頼主の質問にきちんと応えてくれる弁護士に依頼をしないと、コミュニケーションが上手くとれず、進捗状況が不明で気をもんでしまうおそれがあります。 労働トラブルに巻き込まれることは労働者にとって非常に大きいストレスです。弁護士の対応がよくないと、費用を払っているのにかえって精神的な負担が増えてしまいます。 無料相談を行っている弁護士事務所はたくさんあるので、無料相談のときに弁護士が質問に対しどう応えるのか、説明がわかりやすいかを見ておきましょう。 弁護士選びの注意点③|料金体系を確認 弁護士に依頼するときに気になるのが弁護士費用だと思います。費用がいくらかかるのか、着手金をはじめ、料金について最初に確認しましょう。 法律事務所は無料相談を行っているところが多くあります。その無料相談で料金について調べたうえで依頼をすることが可能です。 弁護士費用は多くの場合が高額です。請求額がおおよそいくらになるのか、あらかじめ知っておくと長期化したときでも安心です。不透明な請求をされるんじゃないかと不安になることもありません。 料金体系が明確になっているか確認し、可能であれば無料相談のときに費用がいくらかかるかおおよその目安を把握しておきましょう。 関連記事 ・労働問題を依頼するときの弁護士費用は?トラブル別の費用と相場を解説 まとめ 労働問題が起きたら、なるべく早く行動することをおすすめします。上手に無料相談を活用し、弁護士に相談することが早期解決には有効です。 問題が起きているのに何もせず放っておくと、トラブルが大きくなってしまい問題解決までに時間と手間がかかります。 「弁護士に依頼すると費用が高額」と依頼をためらっている人は、無料相談で確認してみましょう。 弁護士に依頼することで、一人で対処するよりもスムーズに問題を解決することができます。 --- ### 退職代行サービスの金額相場はいくら?3つの相談先と対応の違いを解説 - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-05-30 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6824 - Categories: 退職代行 退職代行サービスの費用の相場は1万~10万円です。退職代行の料金面についてお悩みの方に、相場から各相談先の対応の違いを詳しく解説しています。 「退職代行を利用して会社を辞めたいが、費用がいくらかかるかわからない」「退職代行サービスの料金相場を知りたい」 退職代行サービスを利用したいと思っている方の中には、そういったお悩みを抱える方も多いのではないでしょうか。 しかし、いざ退職代行を利用しようと決意しても、費用面での不安がありますよね。 運営元によって違いはありますが、退職代行サービスの費用の相場は1万円から10万円が目安となっています。 今回は、退職代行サービスの費用相場や、運営元による対応の違いについて解説します。 退職代行事業者の種類は3つ 退職代行をおこなう事業者は、大きく以下の3種類に分けられます。 退職代行サービスの種類 一般の退職代行業者 退職代行ユニオン 弁護士 一般の代行業者の費用相場は1万円~5万円 一般の退職代行業者の費用相場は1万円~5万円です。 退職代行ユニオンや弁護士への依頼費用と比較しても、安い金額で退職代行を依頼できます。 なお、会社に対して退職する意思を伝えることはできますが、会社と法的な交渉をおこなうことは非弁行為(弁護士資格をもたない者が、報酬を目的に弁護士業務をおこなう違法行為)にあたります。 そのため、残業代の請求などといったアクションを起こすことはできないところに注意が必要です(弁護士法第72条)。 退職代行ユニオンの費用相場は2万5000円~3万円 退職代行ユニオンとは、退職代行サービスをおこなっている合同労働組合のことです。 合同労働組合とは、社内に労働組合がない企業の労働者などが加入できる団体のことで、正社員や派遣社員、パートなどといった雇用形態に関係なく加入できるという特徴があります。 退職代行ユニオンの費用相場は2万5000円~3万円です。 労働組合には団体交渉権が認められている(日本国憲法第28条)ため、会社と交渉や話し合いをすることや、退職と同時に残業代を請求することができます。 しかし、退職代行ユニオンには訴訟など法律問題に発展した場合、対処が難しくなるというデメリットがあります。 弁護士の費用相場は5万円~10万円 弁護士の費用相場は5万円~10万円です。 一般の退職代行業者や退職代行ユニオンよりも費用がかかる反面、残業代の請求などといった法的な交渉をおこなうことができるというメリットがあります。 また、訴訟など法律問題に発展した場合でもスムーズに対応できることもポイントです。 退職代行サービスを選ぶポイントは2つ 退職代行サービスの選び方のポイントとしては以下の2つが挙げられます。 退職代行サービスの選び方のポイント 交渉権があるかどうか 法的トラブルに対応できるかどうか 会社と交渉できるのは退職代行ユニオンと弁護士だけ 未払い賃金を請求したり、退職日を調整したりするために会社と交渉をしたい場合でも、民間の退職代行業者では会社と交渉することは法律上できません。 それに対し、退職代行ユニオンや弁護士であれば、依頼主に代わって会社と交渉をおこなうことができます。 法的トラブルに対応できるのは弁護士だけ 退職代行サービスを利用して企業に退職を申し出た場合でも、企業が退職を認めず訴訟問題といった法的トラブルに発展するおそれがあります。 その場合、一般の退職代行業者や退職代行ユニオンでは、うまく対処することが難しいというデメリットがあります。 しかし、弁護士であれば、法的な専門知識を背景に、法的トラブルに発展した場合でもスムーズに対処できるというメリットがあります。 関連記事 ・退職代行を弁護士に依頼するメリットは?費用・代行業者との違いまで完全解説! 退職代行サービスを料金の安さで選ぶときの注意点2つ 退職代行にかかるお金をなるべく安く済ませたいという方もいらっしゃると思いますが、退職代行サービスを料金の安さで選ぶときの注意点を2つ紹介します。 退職代行を料金の安さで選ぶときの注意点 安すぎる退職代行業者に注意する 追加料金がかからないかチェックする 安すぎる退職代行業者に注意する 一般の退職代行業者の費用相場は1万円~5万円となっていますが、なかには1万円以下で利用できる退職代行業者も存在します。 極端に料金を安く設定している退職代行業者の場合、利用しても退職することができなかったり、悪質な業者が運営していたりする場合があるので注意が必要です。 追加料金がかからないかチェックする 一見リーズナブルな価格を設定している業者であっても、サービスの内容によってオプション料金や追加料金などを設定している場合があります。 その場合、かえって費用が高くついてしまうことも考えられるので、追加料金がかからないかチェックしておくことが重要です。 まとめ 退職代行サービスの金額相場や、できることをまとめると以下の表のようになります。 運営元相場退職意思の伝達会社との交渉法的トラブルへの対応一般の代行業者1万円~5万円○××退職代行ユニオン2万5000円~3万円○○×弁護士5万円~10万円○○○ 法的トラブルに発展するおそれも考え、ほかの事業者と比較して退職代行の費用は高くなりますが、退職代行サービスを利用する場合は弁護士に依頼することをおすすめします。 無料相談を受け付けている弁護士事務所もありますので、まずは弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。 --- ### 未払い残業代請求の方法|証拠や時効など基礎知識を解説 - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-03-25 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6826 - Categories: 残業代請求 未払い残業代を会社に支払ってもらうには、証拠集めなど入念な事前準備が重要です。法律的な知識が必要になることもあるので、専門家である弁護士に相談するのも選択肢の1つです。 「残業代請求に失敗するのはどんなケース?」「残業代を請求したいけど手順が知りたい」 残業代を適切に受け取れないのは納得いかないですよね。 請求方法がわからないと不安に感じる方が多いでしょう。 残業代未払いの被害を防ぐため、今回の記事では、残業代請求の失敗例や請求に要する証拠、請求の手順に加え請求を弁護士に依頼するメリットについて解説します。 未払い残業代請求での失敗例 残業代請求失敗の理由(1)|証拠が不十分 理由の1つ目は、残業したことを明らかにする証拠が不十分である場合です。 たとえば、職場の慣習で、一旦タイムカードを押してから残業するような場合が挙げられます。 タイムカードや会社の勤怠管理システムなどは、労働時間を把握する客観的な資料といえます。 正しく入力していないと、「残業した」と口頭で伝えても会社はタイムカードなどを盾に取って「残業はなかった」と主張するケースもあります。 また、最初から勤務時間を管理する手段が設けられていない会社もあります。このような場合にも、残業したことを明らかにする証拠がないため、残業代請求を拒否される要因となります。 残業代請求失敗の理由(2)|交渉の方法がうかつ 理由の2つ目は、残業代をめぐる会社との交渉方法がうかつで話し合いが進展しないからです。 たとえば、残業時間のわかる証拠などの準備もないまま一方的に「残業代を支払ってくれ」と言っても、会社から拒否される可能性は高いでしょう。 残業代の請求に関わらず雇い主である会社と交渉する時は、客観的な証拠に基づいて穏便に話し合うのが基本です。感情的になって強い主張を行うと、かえって会社の反発を買って交渉自体が進展しないことも考えられます。 また、十分な証拠がないことを見透かされて会社がまともに取り合ってくれなかったり、法律知識がないために会社にうまく言いくるめられたりするケースもあります。 残業代請求失敗の理由(3)|時効が成立してしまった 理由の3つ目は、時効が完成していて残業代の請求ができないからです。残業代請求の時効は3年です。残業した月に対する給与の支給日翌日から3年を経過すると、残業代を請求しても会社が時効を主張すれば残業代をもらうことはできません。 残業代の時効については、民法改正により次の通り変更されました。 残業代の時効 2020年3月までの分:時効2年 2020年4月以降の分:当面は3年 関連記事 ・残業代請求の時効は3年!将来は5年に?時効中止や請求の方法を解説 残業代請求に必要となる証拠 残業代請求に必要な証拠とは、次の3つを明らかにするものです。 残業代請求に必要な証拠 残業に関する労働条件(何時以降残業になるか、残業に対する割増率など)を明らかにするもの 正確な残業時間を明らかにするもの 実際に支給された残業代を明らかにするもの 雇用契約書・労働契約書 「残業に関する労働条件」を記した書類が、雇用契約書(または労働契約書)です。 労働基準法第15条では、労働契約の締結の際、次の労働条件について書面で明示することを会社に義務付けています。 書面で明示する必要がある労働条件 所定労働時間を超える労働の有無 賃金の決定、計算・支払い方法 つまり、残業の有無や残業代の計算方法などは、雇用契約書に記載されているのです。記載がなければ、会社が労働基準法に違反していることになります。 就業規則に関する書面 また、労働基準法89条では、就業規則に「賃金の決定、計算・支払い方法」を定めるよう会社に義務付けています。雇用契約書が見当たらない場合は、就業規則をみれば「残業に関する労働条件」がわかるのです。 就業規則は見やすい場所に掲示するなど、従業員への周知も会社の義務であるため、わからなければ会社の担当者に聞きましょう。 タイムカードなど、始業・終業の時間がわかる書面 次に、「正確な残業時間」を確認するための証拠が、タイムカードなどの始業・終業の時間がわかる書面です。会社の勤怠管理システムの記録なども同様です。 タイムカードや勤怠システムなどを導入していない会社の場合、次の記録を準備しましょう。 タイムカードがない会社の場合 始業・終業の時間を記した手書きメモ、業務日誌など 業務上のメールの送信記録など パソコンのログイン・ログオフ時間の記録など タイムカードや勤怠システムなどと異なり、明確で客観的な証拠とはいえませんが、勤務時間を推定可能であるため、一定の証拠能力があるといえます。 証拠書面が何もない場合は弁護士による開示請求を行う 上記の証拠書面が準備できない時は、弁護士に依頼して会社に開示請求しましょう。 民事訴訟法の証拠保全の手続(民事訴訟法132条)を活用するという方法もありますが、弁護士からタイムカードなど勤務時間の分かる資料を請求すれば、多くの会社では開示に応じてくれます。 退職後の未払い残業代請求で証拠書面が準備できないケースも、弁護士による開示請求が有効です。 給与明細など、残業代の支給額がわかるもの 最後に、「実際に支給された残業代」を確認するための証拠が給与明細などの書類です。 給与明細には支給総額の他に、支給額の内訳として残業代がいくらかも記載されています。また、残業代の計算基礎となる残業時間も記載されているケースが多いでしょう。 タイムカードなどで正確な残業時間を確認し、雇用契約書などに記載された方法で残業代を計算し、給与明細の残業代と比較しましょう。給与明細の残業代が少なければ、残業代が未払い(または過小な支払い)であったということです。 関連記事 ・残業代請求で必要となる証拠を徹底解説!証拠がない場合の対処法は? 残業代を請求する方法 手順(1)|証拠を収集、未払い残業代を計算 前述の通り、正確な残業時間を確認して雇用契約書などで残業代の計算方法を確認しましょう。残業代の一般的な計算方法は次の通りです。 残業代の計算方法 残業代=1時間あたりの賃金✕割増賃金率✕残業時間 「1時間あたりの賃金」は賃金が月給制の場合、「月収÷1か月の平均所定労働時間」で計算します。たとえば、月給24万円、平均所定労働時間が月160時間なら、「1時間あたりの賃金」は1,500円(=24万円÷160時間)です。 割増賃金率は法定労働時間を超える残業に対する割増で、原則25%(夜間や休日労働に対する割増率もある)と規定されています。たとえば、1時間あたりの賃金が1,500円の場合、残業1時間に対する残業代は1,875円(=1,500円✕1. 25)です。 関連記事 ・残業代の正しい計算方法とは?基本から応用的な計算まで徹底解説! 手順(2)|会社と直接交渉 未払い残業代を計算したら、残業代未払いの証拠を持参して会社に残業代が未払い(または過小)であることを伝えましょう。伝える相手は直属上司や人事や総務の担当者などです。 担当者が計算ミスしていて会社がすぐに支払ってくれれば問題は解決です。会社がすぐにミスを認めない場合も、証拠を提示しながらできるだけ穏便に話を進めましょう。 上司などとの人間関係を悪くしないように、客観的事実に基づいて丁寧に説明する姿勢が重要です。 手順(3)|内容証明郵便を郵送 会社と直接交渉しても残業代を支払ってもらえなければ、証拠を残すために内容証明郵便を使って残業代を請求しましょう。 残業代の時効は3年ですが、請求すると時効の完成を一時的に阻止する効果もあります。 内容証明の記載内容は次の通りです。 内容証明郵便に記載されていること 請求者(従業員)と請求相手(会社)の名前・住所 請求日 請求内容(〇月〇日の残業代〇円を請求する、など) 支払期限 など 参考:日本郵便「内容証明」 (状況に応じて)支払いがない場合は、訴訟に入ることを記載する方法もあります。 内容証明のテンプレートは、『【テンプレートあり】残業代請求書(内容証明)の書き方・送付方法を解説!』からダウンロード可能です。内容証明の書き方も詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。 手順(4)|労働基準監督署に相談 会社が残業代の支払いに応じてくれない場合、労働基準監督署に相談するという方法もあります。 労働基準監督署は企業が労働基準法を遵守しているか管理・監督していて、残業代の未払いなど違反している会社に是正勧告などをしてくれます。 労働基準監督署の所在地一覧 ただし、労働基準監督署は企業の違反行為に対して勧告しても、個別の残業代請求の支払いを命じるわけではありません。 労働基準監督署の勧告などにより会社が残業代を支払ってくれれば問題は解決しますが、そうでない場合は訴訟などが必要になります。 関連記事 ・残業代未払いは労基署に相談できる?弁護士との役割の違いを解説 手順(5)|弁護士に相談 これまで説明した方法で解決できない場合は、専門家である弁護士などに相談しましょう。訴訟だけでなく、次の対応が期待できます。 弁護士に期待できること 弁護士が会社と交渉する 「支払督促」「少額訴訟」「労働審判」など民事訴訟より簡易な裁判制度を利用して未払い残業代の請求を行う 民事訴訟を起こす など 弁護士は依頼者の意向に応じて適切な方法をアドバイス(または代理代行)してくれるので、安心して会社と争うことができます。 関連記事 ・残業代請求を弁護士に依頼する場合の費用相場は?弁護士に依頼するメリット5選! 残業代請求を弁護士に依頼するメリット メリット(1)|証拠の開示請求が行える メリットの1つ目は、残業の状況を明らかにする証拠の開示請求が行えることです。 従業員本人の開示請求も可能ですが、何を請求すればいいのか、会社にどう伝えればいいのか、分からないこともあるでしょう。会社に遠慮して言いづらいという人もいるでしょう。 また、従業員が開示請求して拒否された場合でも、弁護士が請求すれば簡単に回答が得られたというケースもあります。 メリット(2)|法的に正しく残業代を計算できる メリットの2つ目は、弁護士に法的に正しく残業代を計算してもらえることです。 残業代計算の概要については説明しましたが、実際に残業代を正しく計算するのは難しい面もあります。 残業代を正しく計算するときのポイント 法定内残業と法定外残業の計算方法の違い 一般的な残業と深夜残業、休日出勤の割増率の違い 残業時間や残業代の端数処理の方法 など 上記を正確に理解して計算するには一定の知識が必要です。専門家である弁護士に依頼すれば安心といえるでしょう。 メリット(3)|会社にとってプレッシャーになる メリットの3つ目は、弁護士が相手だと会社にとってプレッシャーになるということです。 会社内の立場が下で専門知識のない従業員が相手だと強気に交渉していた会社側も、法律に詳しい弁護士が来ると遠慮して弱腰な対応になることもあります。 また、弁護士を雇ったということから裁判等へ移行するリスクも考慮に入れざるを得ないため、会社に一定のプレッシャーを与えられます。 弁護士費用の相場とは? 弁護士へ依頼するときに気になるのが弁護士費用です。弁護士や依頼内容によって費用は大きく異なりますが、日本弁護士連合会の会員アンケートでは下記の通りです。 1時間当たりの相談料:1万円(56%)、5,000円(36%) 労働審判や裁判の着手金:20万円(45%)、30万円(31%) 労働審判や裁判の報酬金:30万円(36%)、50万円(31%)※()内はアンケートの回答者に占める割合 着手金無料(残業代の支払請求に成功した場合のみ成功報酬を支払う料金体系)の法律事務所などもあるため、残業代請求については一度弁護士に相談してみることをおすすめします。 --- ### タイムカードがなくても残業代の請求は可能!収集すべき証拠とは? - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-06-21 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6819 - Categories: 残業代請求 タイムカードがなくても残業代の請求は可能です。労働基準法においては、タイムカードに記録されている時間ではなく、実際に働いた時間で残業代が判断されるからです。実際の残業時間が確認できる証拠を収集しましょう。 「タイムカードがなくても残業代請求できる?」「タイムカードがない場合の具体的な請求方法を知りたい」 時間を犠牲にして従事しなければならない残業。大変な残業の賃金を請求する証拠がないと不安になってしまいますよね。 タイムカードがなくても勤怠記録やPCのログインデータがあれば残業代の請求は可能です。 ただし、残業記録があっても、請求が認められないケースもあります。 この記事では、残業代請求を適切に行いたいという方に向け、タイムカードがない場合の請求や、タイムカードの代わりになる証拠、残業が認められないケースについて詳しく解説していきます。 残業代請求の証拠については、『残業代請求で必要となる証拠を徹底解説!証拠がない場合の対処法は?』の記事でさらに詳しく解説しています。 タイムカードがない場合は別の証拠が必要 タイムカードは有力な証拠になる 残業代の証拠と聞いて、タイムカードを思い浮かべる方は多いと思います。 タイムカードは、残業を行ったことを明確に確認できる有力な証拠になります。 タイムカードは、労働者の出勤および退勤を管理するものであるため、労働者の残業時間を証明することが可能です。 しかし、残業を行った証拠となるのは、タイムカードだけではありません。タイムカードがない場合でも、残業を行ったことを別の証拠で証明できれば残業代の請求は可能です。 会社にタイムカードがなくても違法ではない 会社にタイムカードがなくても違法ではありません。 労働安全衛生法の改正により、使用者は労働時間の把握義務を課せられています(労働安全衛生法第66条の8の3)。 しかし、従業員の勤怠時間を確認できるものはタイムカードだけではなく、勤怠管理システムやICカードなどでも勤怠時間は把握できます。 労働者の労働時間の状況を把握するための、厚生労働省が定める方法は以下の3つです(労働安全衛生規則第52条の7の3第1項)。 労働者の労働時間の状況を把握する方法 タイムカードによる記録 パーソナルコンピュータ等の電子計算機の使用時間の記録等の客観的な方法 その他の適切な方法 勤怠時間を把握する方法はタイムカードである必要はないので、タイムカードが企業になくとも違法ではありません。 タイムカードと労働時間が一致していない場合 タイムカードと労働時間が一致していない場合でも、残業代の請求は可能です。 残業代はタイムカードに書かれた時間だけでなく、さまざまな証拠により残業時間を判断するからです。 退勤時間になったらタイムカードを押して、その後に残業するように指示された場合、タイムカードには残業時間が記録されていないことになります。 このような場合には、残業を指示された別の証拠を残しておきましょう。残業が指示されたものであること、残業した時間が明確に分かることが証拠として重要です。 未払い残業代の請求期限は過去3年分 現在、未払い残業代の請求期限は3年となっており、それ以上さかのぼって残業代を請求することはできません。 しかし、3年分の証拠が必要になるわけではなく、直近1年分の証拠があればその値を3倍するといった形で請求できる場合があります。いずれにせよ、できるだけ長い期間の証拠を集めることが重要です。 関連記事 ・残業代請求の時効は3年!将来は5年に?時効中止や請求の方法を解説 残業代請求でタイムカードの代わりになる証拠 残業代請求において、タイムカードは残業した時間を証明する証拠です。 残業をしていたという事実だけでなく、正確な残業時間も確認できるため、裁判においても重視されています。また、勤務時間を過ぎてタイムカードを押していることが、黙示の指示を裏付ける要素となる可能性もあります。 タイムカードがない場合には、以下のような記録をタイムカードの代わりに証拠として集めておきましょう。 タイムカードの代わりとなる証拠 残業時間が把握できる客観的な記録 残業していたことを示す記録 残業を明示的あるいは黙示的に指示された記録 どのようなものがタイムカードの代わりの証拠となるのかを具体的に解説します。 残業時間が把握できる客観的な記録 残業時間が把握できる客観的な記録には、以下のようなものがあります。 残業代把握のための客観的な記録 勤怠データ オフィスや建物の退館データ 業務日誌 勤怠時間を記入したメモ 残業代の請求において、裁判官を納得させるには証拠が客観的なものであることが重要です。 出勤時間と退勤時間が記録されている勤怠データがあれば、タイムカードと同様に残業時間が正確に把握できます。 ICカードなどのオフィスや建物の退館データも残業時間を把握できる客観的な証拠です。 業務日誌も証拠になりますが、何時から何時までどんな作業をしていたのかが具体的に書かれていることが必要になります。 勤務時間を記入するものが会社に用意されていない場合には、勤怠時間をメモなどに記入しておきましょう。 証拠としては弱いですが、毎日継続して勤務時間が書かれていれば他の証拠を補完することが期待できます。 残業していたことを示す記録 残業していたことを示す記録には、以下のようなものがあります。 残業を示す記録 メール履歴 PCログイン・ログアウトデータ GPS記録 家族へのメール 正確な残業時間を把握することは難しいですが、メールの送受信の時間やパソコンのログイン・ログアウト時間、GPS記録などの電子的なデータは、残業していたことを示す客観的な証拠として採用されやすいです。 残業を明示的あるいは黙示的に指示された記録 残業代の請求要件のひとつに、使用者の残業指示があります。 残業代を請求するためには、指示されていないのに勝手に残業した、あるいは必要のない残業を行っていたわけではないことを、証拠として示すことが必要です。 以下のような場合には、残業を明示的あるいは黙示的に指示された証拠として採用される場合があります。 残業を指示された証拠となり得るもの 勤務時間以外に上司とメールのやり取りを行った 勤務時間後にレポートを上司に提出した 証拠があっても残業代が認められないケース 残業をしていた証拠がある場合でも、残業代が認められないケースもあります。 残業が認められないケース 使用者が明確に残業を禁じていた 必要ない業務を自ら遂行していた 管理監督者に該当する労働者である 固定残業代(みなし残業代)の範囲内である それぞれのケースにおいて、なぜ残業代が認められないのかを解説します。 使用者が明確に残業を禁じていた 使用者が明確に残業を禁じていた場合は、残業代が認められません。残業代の請求要件である「使用者の残業指示」を満たしていないからです。 ただし、形式的に残業を禁じられていても、事実上残業せざるを得ない業務を指示されていた場合は、残業代が認められる可能性があります。 必要ない業務を自ら遂行していた 必要ない業務を自ら遂行していた場合は、残業代が認められません。残業代の請求要件である「使用者の残業指示」を満たしていないからです。 上司からの指示がないのに、期限的に必須といえない業務を勝手に行っていた場合、残業代は認められません。 管理監督者に該当する労働者である 管理監督者に該当する労働者は、残業代が認められません。 労働基準法における管理監督者は、労働条件の決定や労務管理について経営者と一体的な立場にある人を指します。 一般的な労働者のように、労働基準法に定められた労働時間や休憩、休日の制限を受けない立場です。 労働者が管理監督者に該当するかは、役職名で決まるわけではなく、職務内容や責任、権限などによって判断されます。 ただし、企業内で管理職と呼ばれていたとしても、労働基準法上の「管理監督者」に該当しない場合には、残業代を受け取れます。 固定残業代(みなし残業代)の範囲内である 残業を行っていた証拠があっても、固定残業代(みなし残業代)の範囲内である場合には、残業代は認められません。 ただし、あらかじめ決めている残業時間を超えて残業した場合は、超えた時間分の残業代を受け取れます。 タイムカードがなくても弁護士に相談を! 残業代請求の証拠でお悩みの方は、弁護士に相談してください。残業代請求には証拠が重要ですが、手元にタイムカードや勤怠データなどの証拠がなくても、諦める必要はありません。 弁護士に依頼して証拠開示請求という手続きを取ることで、証拠となるデータを会社に出させることが可能なケースもあります。 残業代の請求は、訴訟を背景とした交渉で解決することもあります。無料相談を受け付けている弁護士事務所もあるので、一度相談してみてはいかがでしょうか。 関連記事 ・残業代請求を弁護士に依頼する場合の費用相場は?弁護士に依頼するメリット5選! --- ### 退職代行を使えば即日退職できる?法的な仕組みを解説 - Published: 2023-11-22 - Modified: 2025-02-20 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6820 - Categories: 退職代行 退職代行を使えば即日退職できる?即日退職の法的な仕組みを解説。14日分の有給休暇があれば実質的に即日退職が可能です。即日退職の場合には会社から協議・交渉を申し入れられる可能性があるので、弁護士に退職代行を依頼しましょう。 「退職代行を使えば翌日から会社に行かずに済む?」「仕事が限界なので、明日にでも退職したい」 退職を決意しても職場の人手不足や上司からの圧力などで、なかなか退職を告げることができない方は多いと思います。 退職代行を使えば即日退職は可能です。しかし、退職代行で即日退職する方法はいくつかあり、即日退職することのリスクもあります。 この記事では、退職時の自身への負担を最小限に抑えたい方に向け、退職代行を使って即日退職する方法や注意点を詳しく解説します。 退職代行を使えば即日退職できる 退職代行を使えば、実質的に即日退職できます。 正社員などの無期契約の労働者は、退職日の2週間以上前に退職の意思を会社へ伝えるだけで、会社との雇用関係を解消できます。 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。 民法627条1項 退職代行の使用も解約の申し入れです。 法的には、退職を申し入れてから2週間(14日)が経過しないと退職できないと記載されているため、退職代行を使用しても2週間は会社に行かなければならないと考えてしまうでしょう。 しかし、状況によっては会社に行かずに即日退職する方法があります。 退職代行を利用した退職ノウハウについては「ヤメナビ」の退職ガイドが参考になります。詳細は以下のページをご確認ください。 参考 ヤメナビ|退職ガイド 退職代行で即日退職する方法 退職の意思を伝えた翌日が退職日になるわけではありません。退職代行を使用後、2週間会社へ行くことなく退職する方法をいくつか解説します。 14日分有給を消化する 最低でも14日分の有給休暇が残っていれば、即日退職できます。 ここでの「即日退職」とは、退職の意思を伝えた翌日から退職日まで会社へ行くことなく退職できることを意味します。 退職の意思を伝えた日の翌日から14日後を退職日とした場合、退職の意思を伝えた日の翌日から退職日までの14日間を有給休暇とすることで、退職日まで会社へ行く必要がなくなります。 有給を消化して会社へ行く必要がないまま退職日を迎えるため、実質的に即日退職できるというわけです。 退職する前に有給をまとめて使うことをご心配される方もいると思いますが、会社が有給休暇の取得を拒否することはできません(労働基準法39条)。 通常の場合であれば、事業の正常な運営を妨げる場合に限り、会社には有給休暇を別の日に変更にさせる権利、時季変更権があります(労働基準法39条5項)。 しかし、退職を前提とした有給休暇の消化の場合、変更する日が退職日以降となるため、退職前の有給休暇の消化に対して時季変更権は利用できません。 つまり、溜まっていた有給は退職日までにすべて消化できるということです。 週休2日の会社であれば有給休暇が10日で即日退職できる また、週休2日の会社であれば、有給休暇が10日しか残っていない場合でも、即日退職できます。 土日が公休の場合、月曜日から金曜日までの5日間を有給休暇消化し、土日は公休なので有給休暇を消化する必要はありません。 翌週も同様にすれば、14日間のうち10日間が有給休暇、土日の4日間は公休となり、会社に行くことなく退職日を迎えることになります。 退職日までの14日間を欠勤する 有給休暇が全く残っていない場合は、退職日までの14日間を欠勤することで、即日退職することが可能です。 ただし、無断欠勤など正当な理由がなく欠勤した場合には、就業規則に基づいて懲戒処分を受けたり、損害賠償請求されたりする可能性があります。 パワハラやセクハラなどで会社に行くことがどうしても困難な場合には、体調不良として欠勤の申請をしましょう。 即日退職するためだけの理由で退職日までの14日間を欠勤することは、リスクの高い行為と言えます。詳細は弁護士に相談してみましょう。 会社との合意のもと即日退職する 消化できる有給休暇がなく、即日退職するためだけに欠勤するのは心苦しいと思う場合でも、会社との合意があれば、即日退職は可能です。 期間の定めのない雇用の労働者は、退職の意思を伝えた後、2週間を経過する前に一方的に退職することはできません。会社は労働者の意に反して即日解雇も不可能です。 前者は労働者による雇用契約の一方的な解約であり、後者は会社による雇用契約の一方的な解約となります。 一方、労働者と会社が合意によって雇用契約を解約することは、合意解約です。 合意解約であれば、退職日までの14日間を有給休暇や欠勤で消化する必要はありません。 退職を申し入れてから2週間を有給休暇や欠勤で消化する実質的な即日退職と異なり、言葉通りの即日退職が可能です。合意解約が成立した時点で雇用契約は解消され、即日退職できます。 会社としては、14日間に欠勤後に退職する場合と合意解約で即日退職を認める場合では、業務に対する影響に差はありません。14日間欠勤してでも即日退職する覚悟があるのであれば、会社が合意解約を認めるかもしれません。 会社と合意解約をする場合には、会社との交渉が必要になります。会社との交渉ができる弁護士に退職代行を依頼しましょう。 やむを得ない事由がある やむを得ない事由があれば、2週間経過しなくても即日退職が可能とされています。 当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。 民法628条 やむを得ない事由とは、心身の障害やパワハラ・セクハラなどと考えられていますが、明確に記載されているわけではありません。 ご自身のケースがやむを得ない事由に該当するかどうかは、弁護士に相談しましょう。 まずは退職代行業者に即日退職できるか確認 退職代行を使用して即日退職したい場合には、「即日退職」と記載されている退職代行業者かどうかを確認しましょう。 「即日退職」ではなく「即日対応」と記載されている退職代行業者もあります。 「即日対応」とは、依頼を受けた日から退職代行業務を行えることを意味したものであり、即日退職できるとは限りません。 即日退職を希望する場合には、「即日退職」と記載されている退職代行業者を選びましょう。 退職代行サービス業者の種類について知りたい方は『退職代行サービスとは?メリット・デメリットや選び方を弁護士が解説』の記事をご覧ください。 退職代行で即日退職するリスクとは? 会社から協議・交渉を申し入れられる可能性がある 退職代行業者を使用して即日退職する場合、会社から協議・交渉を申し入れられる可能性があります。 即日退職するということは、残務処理や業務引き継ぎ、後任を探す余裕もないからです。業務に多大な影響を与えることもあるでしょう。 会社としては業務への影響を最小限にするために、少しでも退職日を先延ばしにできないか協議・交渉を持ちかけるわけです。 退職代行業者によっては協議・交渉に対応できない場合がある 退職代行業者によっては協議・交渉に対応できない場合があります。 弁護士ではない退職代行業者が交渉などの法律事務を行えば非弁行為となります。弁護士と提携している退職代行業者であっても、弁護士が直接交渉を行わなければ非弁行為となることに変わりはありません。 会社が協議・交渉を持ちかけてきた場合、弁護士ではない退職代行業者だとかえって泥沼化する恐れがあります。 損害賠償請求されるおそれがある 退職代行で即日退職すると、損害賠償請求されるおそれがあります。損害賠償請求が認められる可能性は低いですが、法律上訴訟自体は誰でも提起することができ、対応を迫られるケースもあります。 弁護士ではない退職代行業者の場合、会社が損害賠償請求したり違法な対応をしたりしても、法的な対応ができません。 関連記事 ・退職代行で起こるトラブルとは?未然に防ぐ方法を弁護士が解説 退職代行で即日退職したいときの注意点 退職代行で即日退職したいときの注意点は、以下の2点です。 即日退職する際の注意点 社宅や寮に住んでいる場合、退職日までに退去できるようにする 備品は必ず返す 社宅や寮に住んでいる場合、退職日までに退去できるようにする 社宅や寮に住んでいる場合、退職日までに退去できるようにしましょう。 会社が所有する社宅や社員寮にいつまで住めるのかについては、社内規定に書かれています。在職中は住んでいられますが、退職後はすぐに退去しなければいならないことが多いようです。 社内規定を確認し、退職日までに退去できるように準備しておきましょう。 備品は必ず返す 郵送でもいいので備品は必ず返しましょう。 在職中は備品を自由に使えますが、退職すると備品を使う権利はありません。名刺などを返却せずに持ったまま退職すると、トラブルが発生したときに会社から疑われるかもしれません。 即日退職するつもりであれば、事前に返却が必要な備品を整理しておき、忘れずに返却しましょう。 弁護士による退職代行がおすすめ 会社からの引き留めは弁護士による退職代行で対処する 退職代行業者を使用して即日退職する場合、会社からの引き止めに遭うケースもあります。 即日退職を希望する場合には、非弁行為になるおそれがなく、交渉の代理等もできる弁護士による退職代行がおすすめです。 関連記事 ・退職代行を弁護士に依頼するメリットは?費用・代行業者との違いまで完全解説! 弁護士に退職代行を依頼するときの費用は? 弁護士に退職代行を依頼するときの費用は、退職代行だけの場合で5万程度です。 また、弁護士に退職代行を依頼すれば、退職代行以外に残業代請求なども同時に依頼することもできます。 退職代行以外に依頼したいことがある場合には、事前に費用面の相談をしておきましょう。退職代行に関する相談は、無料で対応してくれる弁護士事務所もあります。 退職代行でお悩みの方はまず弁護士に相談してみましょう。 関連記事 ・退職代行サービスの金額相場はいくら?3つの相談先と対応の違いを解説 --- ### サービス残業の残業代を請求する方法!請求の手順を解説 - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-07-04 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6815 - Categories: 残業代請求 サービス残業の残業代を請求する方法は、裁判や労働審判など複数あります。また、証拠となる資料の収集も重要です。そのため、まずは弁護士に相談することが効果的でしょう。 残業したのに残業代が出ない、いわゆる「サービス残業」は違法です。 しかし、実際は会社の風土に従うしかない、仕事への責任感といったことから、サービス残業が横行している職場で働いている方も多いと思います。 この記事では、サービス残業の残業代を適切に請求したい方に向けて、未払い残業代の請求方法や証拠について詳しく解説します。 サービス残業とは サービス残業が発生するのはなぜか そもそもサービス残業とは、残業をしているにもかかわらず、残業代が支払われていない状態のことを言います。 サービス残業が発生する主な原因は、以下のようなことが考えられます。 サービス残業が発生する主な原因 会社が残業を黙認している 定時にタイムカードを打刻させて残業を強いている 自宅に持ち帰らせて残業させる みなし残業制度を悪用する みなし残業とは、給与に一定の残業代を含めて支払う制度で、あらかじめ固定の残業代の時間数と金額が決められています。 固定の残業代に割り当てられた時間数を超えて残業すれば、超過分の賃金が支給されなければなりません。しかし、会社側から「給料に残業代は含まれている」と主張され、支払われないこともあります。 サービス残業は違法 サービス残業は賃金を支払わずに労働者を働かせるものであり、違法行為です。 労働基準法は、1日及び1週間で働かせることのできる最長の労働時間(「法定労働時間」と言います)を、原則として1日8時間・1週間40時間と定めています(労働基準法32条)。 この法定労働時間を超える労働は「時間外労働」と呼ばれます。 時間外労働や深夜労働(22時~5時)、法定休日の労働に対して、会社は残業時間数や時間帯に応じた割増賃金を支払う義務があります(労働基準法37条)。 労働基準法で定められている以上、会社は労働者に割増賃金を支払わなければならないため、労働者がサービス残業の残業代を請求することは正当な権利です。 関連記事 ・サービス残業は違法!具体的な事例と対処法を徹底解説! サービス残業の残業代を請求する手順 サービス残業の残業代を請求する手順 証拠の収集、残業代の計算をする 会社と直接交渉する 内容証明郵便を郵送 労働審判 訴訟 なお、必ずしも、上記の順番で進行するとは限りません。会社との交渉後、労働審判を経ずに訴訟することなども可能です。 弁護士に相談すれば、労働者が置かれている状況を踏まえて、証拠の収集方法や労働審判と訴訟のどちらが適しているかなどの相談が可能です。 労働審判や訴訟の手続きは客観的な証拠に基づく主張などが必要になるため、法律の専門家である弁護士のサポートが欠かせません。残業代請求でお悩みの方は、まずは弁護士に相談することをおすすめします。 証拠の収集、残業代の計算をする 残業代を請求するためには、タイムカードなどの客観的な証拠を収集しなければなりません。 ただし、サービス残業の場合は、タイムカードなどの勤怠記録に証拠が残っていないことも多いです。 その場合は、法定労働時間を超えて働いたことがわかる証拠を収集しましょう。 具体的には、業務用PCの使用時間の記録・ログイン時間の記録やビジネスチャットやメールの送信履歴などがあげられます。 また、退職後などで証拠が手元にない場合には、会社側に証拠の開示を求めることもあります。 証拠が収集できたら、収集した証拠をもとに残業代を計算します。残業代計算の方法は複雑ですが、目安として残業代を計算したい方は「残業代計算ツール」をご利用ください。 関連記事 ・タイムカードがなくても残業代の請求は可能!収集すべき証拠とは? 会社と直接交渉する 証拠を収集し、請求できる残業代を計算したら、会社に直接サービス残業の残業代を請求することになります。 「サービス残業は会社が悪いことをやっているのだから、請求しても払うはずがない」と思われるかもしれません。 しかし、会社が残業時間を正確に把握していないことがサービス残業の原因となっている可能性もあります。 サービス残業の実態を会社に把握してもらうことにより、残業代が支払われる場合もあります。 内容証明郵便を郵送 会社と直接交渉しても残業代を支払ってもらえなければ、証拠を残すために内容証明郵便を使って残業代を請求しましょう。 残業代の時効は3年ですが、内容証明郵便を利用して請求すると、時効の完成を一時的に阻止する効果があります。 参考:日本郵便「内容証明」 労働審判 会社との交渉がうまくいかなかった場合には、労働審判や訴訟といった法的手続きを検討しましょう。 労働審判は、労働審判官(裁判官)1名と労働審判員2名から構成される、労働審判委員会という組織を利用する制度です。 原則として3回以内の審理で結論を出すことになっているため、2〜3か月程度で結論が出ることが多くなっています。 また、当事者の話し合いによる解決を基本とするため、柔軟な解決も期待できます。もちろん、話し合いがまとまらない場合には労働審判委員会が判断を下します。 ただ、労働審判委員会の判断に異議があった場合には、訴訟となります。 関連記事 ・労働審判とは?制度の内容や手続きの流れを弁護士がわかりやすく解説 訴訟 訴訟とは、裁判所に訴えて権利を争うことです。訴訟を行うためには、証拠を集めて訴状を作成しなければなりません。 訴状とは、裁判を始める際に訴える側(原告)が裁判所に提出する書面で、請求の内容やその根拠が記載されます。 訴状は訴えられた側(被告)である会社に送られ、会社はその内容を見て反論等を検討します。 反論は答弁書という書面で裁判所に提出され、原告側は答弁書に対してさらに反論していくという流れで進みます。 このように、訴訟は、基本的に原告と被告が交互に主張を重ねていき、最終的な結論(判決)を裁判所が下す手続きです。 労働者と相手(会社)が主張する回数には基本的に制限がないため、結論が出るまでに1年以上かかることもあります。 関連記事 ・裁判で残業代請求を行う場合のメリットは?デメリットは期間の長さ? サービス残業の残業代請求は弁護士に相談 サービス残業でお悩みの方は、弁護士に相談しましょう。 法律の専門家である弁護士ならば、会社との交渉や書類の作成など、複雑な手続きを一任できます。 証拠の収集や計算、会社との交渉などは、ご自身では難しいことも多いです。また、立場的に残業代を請求しても、取り合ってもらえないこともあります。 一方で弁護士は、証拠がない場合には会社に証拠の開示請求を求めたり、法的な観点から会社に直接請求したりすることが可能です。 証拠の開示請求や残業代の支払いは、弁護士を通じて行ったほうが会社側も応じる可能性が高くなります。 残業代請求の相談は、無料で実施している弁護士事務所も多いため、お近くの事務所を探してみるといいでしょう。 関連記事 ・残業代請求を弁護士に依頼する場合の費用相場は?弁護士に依頼するメリット5選! --- ### 36(サブロク)協定とは?ポイントと残業時間との関係について解説 - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-03-12 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6797 - Categories: 労働問題全般 36協定とは、労働者に法定労働時間を超えて労働させたり、休日労働をさせたりするときに結ぶ労使協定のことをいいます。 「36協定を結んではいるが残業代が出ない」といったトラブルでお悩みの方は、弁護士への相談をおすすめします。 「36協定とよく聞くが、中身がわからない」「36協定と残業時間の関係について知りたい」 残業の文脈でよく登場する「36(サブロク)協定」ですが、実際どのような内容か、はっきりとはわからないという方も多いのではないでしょうか。 36協定とは、労働者に法定労働時間を超えて労働させたり、休日労働をさせたりするときに結ぶ労使協定のことをいいます。 今回は、36協定についてのポイントや内容、発生しやすい残業代トラブルのケースと対処法について解説します。 36協定のポイント 時間外労働と休日労働に関する取り決め 36(サブロク)協定とは、労働者に法定労働時間を超えて労働させたり、休日労働をさせたりするときに結ぶ労使協定のことをいいます。 労働基準法36条で定められていることから、通称「36協定」と呼ばれています(労働基準法36条)。 なお、労使協定とは、従業員と使用者が書面で約束をすることで「原則では認められていないことを例外的にできるようにする」効果を持たせる協定のことです。 法定外残業が認められる 労働基準法は、1日および1週間で働かせることのできる最長の労働時間(「法定労働時間」といいます)を、原則として1日8時間・1週間40時間と定めています(労働基準法32条)。 この法定労働時間だけでは、繁忙期の業務に支障をきたす会社もあるでしょう。 企業は労働者と36協定を結ぶことで、法定労働時間を超えて従業員に残業をさせることが可能になります。 締結しても残業の上限時間はある 「36協定を結べば、労働者を何時間でも残業させることができる」というわけではありません。 36協定を結んでいても、「月45時間・年360時間」を超える残業は、原則として違法となります。 もしこの時間を超えて残業や休日労働が必要であるという場合は、会社は臨時的な特別の事情があるとして「特別条項付きの労使協定」を締結する必要があります。 特別条項があれば上限はさらに延長される 「特別条項付きの労使協定」を結んだ場合、残業時間の上限は以下のようになります。 特別条項付き36協定の残業時間の上限 時間外労働が年720時間以内である 時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満である 2か月、3か月、4か月、5か月、6か月のいずれの期間においても、時間外労働と休日労働を合わせて平均80時間以内にしなければならない 月45時間を超える時間外労働は、年6か月まで(1年に6回まで) 36協定の対象外となるケースがある 以下のような労働者や業種では、36協定の適用が除外されたり、上限の規制が猶予されたりすることになります。 36協定の対象外となるケース 時間外労働が認められていない労働者... ... 18歳未満の年少者、育児・介護をおこなう労働者、妊産婦の労働者、管理監督者 上限規制の適用が猶予されている業種... ... 自動車運転、医師、災害復旧時の建設業 上限規制が適用除外されている業務... ... 新技術・新商品の研究開発業務 会社が36協定を守らないケース 場合によっては、会社が36協定を守らずに残業させるケースもあるでしょう。 ここでは、会社が36協定を守らないケースの典型例について解説します。 形式的に協定を結んだように見せかける 36協定は、企業と労働組合(全従業員の過半数で組織された団体)、あるいは労働者の代表(全従業員の投票で選ばれる)の労使間で結ぶ必要があります。 しかし、「協定届を捏造して会社が一方的に署名した」「企業が代表ではない労働者に署名させた」などという場合は、36協定が正しく締結されておらず、無効であるといえます。 サービス残業を強要する 「36協定を結んだのだから何時間でも残業させていい」と考え、サービス残業を強要してくるケースがあります。 この場合、違法に残業をさせられているばかりか、未払い残業代が発生していることになります。 時間外労働を正しく理解していない 「フレックスタイム制だから労働時間に制約はない」と考え、36協定を守らず残業を強要してくるケースがあります。 この場合も、違法に残業をさせられているばかりか、未払い残業代が発生していることになります。 36協定での残業代トラブルの対処法 証拠を集める 残業代請求に必要な証拠とは、次の3つを明らかにするものです。 残業があったと示すために、時間がきちんと把握できる客観的な証拠を用意しましょう。有効な証拠としては以下のものが挙げられます。 残業代請求に有効な証拠 タイムカード 勤怠管理システム メールの送受信履歴 パソコンのログ記録 上司の承認のある業務日誌 など 一つの証拠だけでは、残業の実態を十分に証明できない場合があります。そのため、できるだけ長期間・複数の証拠を集めておくようにしましょう。 関連記事 ・残業代請求で必要となる証拠を徹底解説!証拠がない場合の対処法は? 労働基準監督署に相談する 労働基準監督署は、労働基準法を会社が守っているのかチェックしたり、安全衛生法などに基づく検査や労災の支給業務をおこなったりする機関です。 未払い賃金や未払い残業代といった、労働基準法に違反している労働トラブルを相談することができます。 労働基準法違反等が発覚すれば、是正指導・勧告をおこなってくれます。 しかし、企業との直接の交渉や未払い残業代の請求を行えるわけではないところに注意が必要です。 弁護士に依頼する 弁護士に依頼すれば、正しい残業代の計算や、会社との交渉といった複雑な手続きを一任することができます。 弁護士に残業代請求を依頼することのメリットについては、『残業代請求を弁護士に依頼する場合の費用相場は?弁護士に依頼するメリット5選!』の記事をご覧ください。 まとめ 36協定とは、労働者に法定労働時間を超えて労働させたり、休日労働をさせたりするときに結ぶ労使協定のことをいいます。 「36協定を結べば何時間でも残業させられる」というのは誤りで、36協定を結んでいても、「月45時間・年360時間」を超える残業は、原則として違法となります。 また、36協定を結んだだけで、労働基準監督署長に届け出ていない場合や、そもそも36協定を結んでいないという場合には、法定時間を超える残業は違法となります。 「36協定を結んではいるが残業代が出ない」といったトラブルでお悩みの方は、弁護士への相談をおすすめします。 --- ### 固定残業代の計算方法を弁護士が解説!超過分の残業代は請求できる! - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-03-25 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6792 - Categories: 残業代請求 固定残業代が適法となるためには条件があり、固定残業代の計算は重要です。また、固定残業代は残業代未払いのトラブルが発生しやすいため、お困りの方は弁護士に相談することが必要です。 固定残業代の計算は、残業代が正しく支払われているかを確認するために非常に重要です。 会社に固定残業代制が導入されていたとしても、固定残業時間を超過した残業代に関しては、請求することができます。 固定残業代を計算する場合は、「時間外労働時間数×1時間あたりの賃金額×1. 25(割増率)」で算出します。 この記事では、固定残業代制度の概要と実例を交えて計算方法を詳しく解説します。 固定残業代があれば残業代の計算は不要? 「固定残業代を支払っていれば、毎月の残業代を計算する必要はない」と思っている会社もあります。 しかし、固定残業代を支払っている場合でも基本的に残業代の計算は必要です。会社は、固定残業時間を超過した分の残業代を支払う義務を負っているからです。 まずは固定残業代の基本とともに、その理由を詳しく解説していきます。 そもそも固定残業代制度とは? 固定残業代制とは、毎月払われる給与の中に、あらかじめ一定時間の残業代を含んで支給する制度です。 固定残業代制は法律に定められた制度ではありません。そのため、名称も「固定残業代」「固定残業手当」「みなし残業代」などさまざまな呼び方で呼ばれています。 ただし、これらは、毎月の残業時間にかかわらず、残業代を定額で支払う制度を意味する点で共通しています。 毎月の残業代が「固定」されている、実際の残業時間にかかわらず一定額に「みなし」ている、ことが名称の由来です。 「基本給24万円に5万円分の残業代を含む」「月30時間分の残業代として固定残業手当5万円を支払う」といったものが制度の典型例として挙げられます。 労働者が固定残業代制のある企業で働くメリット・デメリットを知りたい方は『固定残業代とは?制度のメリット・デメリットや残業代未払いの対処法』の記事をご覧ください。 固定残業代は適法? 固定残業代制を取ること自体は適法です。 固定残業代制でいうところの「残業代」は、一般的には割増賃金を指しています。 割増賃金の計算方法は法令で決められており、毎月定額で支払う制度はその計算方法に従ったものではありません。 そのため、「違法ではないか」と思われるかもしれません。 しかし、法令の計算方法によって計算した割増賃金の額以上を支払っているのであれば、定額で支払うことも適法だとされています。 もっとも、時間外労働(残業)の上限は原則として月45時間・年360時間と定めています(労働基準法36条4項)。 したがって、固定残業代として45時間を超える時間を設定している場合、違法である可能性が高いでしょう。 固定残業代を支払っていても残業代の計算は必要 このように、固定残業代制は違法ではありませんが、いくつか条件があります。 この条件は法律に明記されているわけではなく、判例で形作られてきたものですが、まとめると次のようになります。 固定残業代における条件 割増賃金(残業代)に該当する部分が他の賃金から区別されていること 何時間分の割増賃金(残業代)をカバーしているのか明示されていること カバーしきれていない部分(超過額)については差額を支払う(精算する)こと 以上からも分かるように、割増賃金を区別して明示し、割増賃金を計算した上で、固定残業代でカバーしきれていない差額があれば追加で支払わなければなりません。 つまり、固定残業代を導入していても、不足があるかどうか確認するために、実際の残業時間に応じた残業代の計算が別途必要ということです。 固定残業代の計算方法は? 超過分の精算が必要ということは、固定残業代制でも残業代の未払いは生じるということです。 固定残業代に不足があるかどうかの計算方法について説明します。 そもそも固定残業代はどのように計算されている? 固定残業代は残業代を定額で支払う制度ですが、固定残業代の額が根拠なく決められていることは基本的にありません。 残業代(時間外労働割増賃金)の計算式は、以下のようになります。 残業代の計算式 時間外労働時間数×1時間あたりの賃金額×1. 25(割増率) そのため、固定残業代としていくら支払うかについても、この計算式を使って算出されています。 たとえば、1時間あたりの賃金額が2000円・時間外労働30時間分を定額で支払う場合、「30時間×2000円×1. 25=7万5000円」と計算することができます。 残業代の基本的な計算方法に関しては、『残業代の正しい計算方法とは?基本から応用的な計算まで徹底解説!』の記事をご覧ください。 時間数が明記されていない場合に不足を計算する方法 固定残業代は何時間分の割増賃金をカバーしているか明示していなければなりませんが、この明示は固定残業代の「額」を示すことでも行うことができます。 たとえば、月給30万円の基本給に、5万円の固定残業代が含まれる場合を考えてみます。 まず、1時間あたりの賃金額を出さなければなりませんが、月給制の場合、「月給額÷1か月平均所定労働時間」で算出されます。 ここではフルタイムの労働者を想定し、1日8時間・1か月平均21日勤務の168時間を1か月平均所定労働時間とします。 また、割増賃金(残業代)に利用する1時間あたりの賃金額を計算する場合、割増賃金は除いて計算します。 以上を踏まえると、「25万円(30万円−5万円)÷168時間≒1489円」と算出でき、これが1時間あたりの賃金額となります。 そこに割増率である1. 25を掛けるとおよそ「1862円」となり、これが時間外労働(残業)時における単価となります。 この単価の場合に何時間分の割増賃金がカバーできているか計算するためには、固定残業代として支払われている額を単価で割らなければなりません。 計算式は、「5万円÷1862円=26. 8528・・・時間」となり、約27時間分の時間外労働がカバーされていることがわかります。 上記の例の場合は、27時間を超えて残業をした場合に、超過分の残業代を会社に請求できるということです。 時間外労働以外も固定残業代に含まれている場合 一般的には、固定残業代に含まれる割増賃金の対象として時間外労働が想定されています。 もっとも、時間外労働のほか、休日労働や深夜労働も割増賃金の対象であり、それらを定額で支払うことも可能ではあります。 その場合でも区別して明記する条件は必要であるため、単に「残業代」と示すだけではなく、休日労働・深夜労働に対応したものであることが明示されていなければなりません。 つまり、「時間外労働20時間分・休日労働10時間分・深夜労働3時間分」といったように、時間外労働・休日労働・深夜労働はそれぞれ区別されていることが基本だということです。 そのため、時間外労働以外の割増賃金が固定的に支払われている場合でも、区別された情報をもとに上の方法で不足を確認することが可能です。 固定残業代に関する裁判例と相談先 固定残業代制は残業代未払いのトラブルが生じやすく、過去の裁判でも多く争われています。最後に、トラブルとなる理由や対処法についてご案内します。 固定残業代に関する裁判例 固定残業代に関する裁判例を2つご紹介します。裁判例でも、会社側に厳しい判断がされています。 テックジャパン事件 月の総労働時間が140時間〜180時間までは月給額が41万円に固定されていたという事案です。 この事件では、41万円のうちでどの部分が割増賃金なのか区別ができないことを理由に、会社側の割増賃金の支払いを認めませんでした『テックジャパン事件(最判平24. 3. 8)』。 つまり、140時間を超えて180時間までの割増賃金は支払われていないことになり、労働者からの割増賃金の請求が認められました。 医療法人社団康心会事件 年俸制で割増賃金を含んだ年俸額(1,700万円)を支払うという契約内容となっていた場合でも、割増賃金の支払いがあったとは認められないとされた事案です。 この事件では、年俸額に何時間分の割増賃金が含まれているのか不明であり、割増賃金に当たる部分が区別できないことから割増賃金の支払いが認められませんでした『医療法人社団康心会事件(最判平29. 7. 7)』。 以上から、割増賃金がその他の賃金と区別できることという条件は厳格に捉えられていると言えます。 そのため、単に「基本給に割増賃金が含まれている」というだけで詳細な時間数や金額が明示されていない場合、固定残業代が適法に導入できているとはいえないでしょう。 割増賃金の明示がない雇用契約書を結んで働いている方は、残業代トラブルが発生しやすい状態です。 固定残業代を明確に計算するためにも、固定残業代がいくら含まれているのか担当者に尋ねたり、就業規則を確認したりしてみましょう。 固定残業代の計算に疑問を抱いたら弁護士に相談 固定残業代の計算に疑問を抱いたら、弁護士に相談しましょう。 企業によっては、労働時間管理がずさんで残業時間が正確ではない場合や、昇給によって残業計算の基礎賃金が上がっていることを見過ごしている場合などがあります。 固定残業代を超過する残業代が生じていないか、先に解説した方法で定期的に確認することが望ましいといえます。 もっとも、会社の制度によっては判断が難しいことがあります。 たとえば、歩合給に固定残業代が含まれている場合や、労働時間の制度が特殊(フレックスタイム制や裁量労働制など)で残業時間の計算自体が難しい場合などです。 このように、固定残業代の計算は法的な判断が求められる分野であるため、疑問を持った場合には弁護士に相談すべきです。 相談の際には、会社が採用している固定残業代の制度がわかる資料(就業規則や雇用契約書)があるとスムーズに進みます。 なお、そのような資料が見当たらない場合、違法な固定残業代となっている可能性が高いため、残業代の請求を積極的に検討すべき状況と言えるでしょう。 無料相談を受け付けている弁護士事務所もあるので、一度相談してみてはいかがでしょうか。 --- ### 残業代が出ないのは違法?職種や勤務形態ごとに残業代が支払われるか解説 - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-03-29 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6794 - Categories: 残業代請求 残業代の未払いは、よくある労働問題の1つです。残業代が出ていない人は、会社からの言葉を鵜呑みにせず、本当に残業代がもらえないのかを確認してみましょう。 「残業代がもらえない」「会社が残業代をくれないけど違法じゃないの?」 労働基準法には法定労働時間(1日8時間、1週間40時間)が定められており、法定労働時間を超えて労働すると残業代が発生します。 会社からサービス残業を強いられている方の多くは、残業代が出ないことに疑問を感じているでしょう。 残業代が出ないことは、違法である可能性が高いです。しかし、例外的に職種や勤務形態によっては残業代が出ないこともあります。 今回の記事は、職種・勤務形態ごとの残業代の取り扱いや会社に残業代請求する際のポイントについて解説します。 残業代が出ない職種は? 労働基準法で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定が適用されない職種もあります。主に基準法第41条に定める「41条該当者」と呼ばれる人たちや公立学校の教員などです。 農業・畜産・水産業などの職種 農業・畜産・水産業などの職種は、労働基準法第41条の第1号に該当し原則、残業代が出ません。季節や天候などの自然環境に大きく左右されるために労働時間を一律に定めることが難しいからです。 ただし、次のケースでは残業代が出るので覚えておきましょう。 農業・畜産・水産業などの職種で残業代が出るケース 深夜労働(午後10時から午前5時まで) した場合 労働契約で残業代の定めがある場合 第1号に該当するのは農業や畜産業、水産業だけで林業は該当しません。 秘書などの「機密事務取扱者」 秘書は、労働基準法第41条の第2号に該当します。第2号には秘書を含め次が該当します。 41条2号に該当する者 監督若しくは管理の地位にある者 機密の事務を取り扱う者 秘書などの「機密事務取扱者」は、労働時間の管理になじまない経営者などの活動と「一体不可分」な活動を求められるため、労働時間に関する規定が適用されません。 ただし、深夜労働については割増賃金がもらえます。 また、法律上の労働時間に関する規定は適用されませんが、会社の就業規則や労働契約で残業代の支払いが規定されているのが一般的です。 警備員・管理人などの「監視又は断続的に労働に従事する者」 警備員・管理人は、労働基準法第41条の第3号に該当します。 労働基準法では、「監視又は断続的に労働に従事する者」とされていますが、労働基準監督署長の許可が必要です。 特別な事態が発生しない限り、身体疲労や精神的緊張が比較的少ない業務であるとの理由で、残業代は法定されていません。 深夜労働や就業規則に残業代の定めがある場合などは、残業代が出ることもあります。 公立学校の教員 公立学校の教務教員(校長、教頭、教諭など)は、残業代が出ません。 公立学校の教員の給与は「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」によって定められており、同法第3条第2項において、「時間外勤務手当及び休日勤務手当は、支給しない」と規定されているためです。 同居の親族のみを使用する事業 「同居の親族のみを使用する事業」で働く親族は、労働者とはみなされないため原則、残業代は出ません(労働基準法116条2項)。 ここで言う労働者とは、労働基準法第9条で定める労働者、つまり、労働基準法が適用される人のことです。 「同居の親族のみを使用する事業」で働く親族には労働基準法が適用されないため、「労働基準法41条該当者」に適用される深夜労働に対する手当についても保障はありません。 また、同居の親族以外の労働者がいる場合でも、原則、同居親族は労働者とみなされません。労働者とみなされるのは、次の3要件をすべて満たしている場合だけです。 労働者とみなされる3要件 常時同居の親族以外の労働者がいる 事業主の指揮・命令で仕事をしていることが明確である 賃金を含めて就労の実態がほかの労働者と同様である 家事使用人 家事使用人とは、いわゆる家政婦のことです。 家事使用人は、労働基準法が適用される労働者ではないため残業代は法定されていませんが、全ての家政婦が家事使用人に該当するわけではありません。 顧客と個人で契約している家政婦は家事使用人ですが、家事代行会社などに勤務する家政婦は家事使用人には該当しません。 この場合の家政婦はあくまで、家事代行会社に勤める労働者として扱われます。そのため、一般の労働者と同様に労働基準法が適用されます。 家政婦の残業代が法律で保障されているかどうかは、勤務実態で判断することになります。 残業代が出ない勤務形態は? 職種による残業代の有無について解説しましたが、そのほかにも勤務形態などによって残業代が出ないケースもあります。具体的なケースを詳しくみていきましょう。 管理職だから残業代は出ない? 「管理職だから残業代は出ない」と言われますが、正確ではありません。法律上、会社が残業代を支払わなくても違法にならないのは、管理職ではなく管理監督者にあたる人物です。 管理監督者は、部長・課長などの役職ではなく、職務内容や責任があるかなどの実態から判断されます。 責任のある役職を担っていることから、管理職であることで管理監督者に該当する人がいることも確かです。 しかし、「名ばかり管理職」と呼ばれる管理監督者の実態に伴わないにもかかわらず、残業代が支払われていないケースも存在します。 管理監督者に該当しない場合は、一般労働者と同様に残業代をもらう権利があります。 関連記事 ・管理職は残業代が出ない?残業代がもらえるケースや基準を解説 固定残業代制度(みなし残業制度)だから残業代は出ない? 固定残業代制度(みなし残業制度)では、実際の残業が「みなし残業時間」の範囲内なら残業代は出ません。 事前に残業を見越して残業分の賃金をみなし残業代として支払われているからです。 しかし、「みなし残業時間」を超過して残業した場合は、超過分に対して残業代を請求できます。残業代の支払いを少なくするため「残業代は固定だから追加はない」という会社があれば、違法行為に該当する可能性があります。 また、追加の残業代請求がないように「みなし残業時間」を明確にしていないケースもあるので注意が必要です。固定残業代制度で働くなら契約時に確認しましょう。 フレックスタイム制だから残業代は出ない? フレックスタイム制では、労使協定で定めた「清算期間内の総労働時間」と実際の労働時間との比較により、残業代の有無が決まります。 「清算期間1週間、総労働時間40時間」の場合、清算期間内の実際の労働時間が40時間以内なら残業代は発生しませんが、40時間を超過するとその分の残業代は請求できます。 「1日8時間を超えると残業代」ではなく、「清算期間内に総労働時間を超えると残業代」です。フレックス制だから残業代は出ないというのは間違いです。 歩合制だから残業代は出ない? 歩合制は成果に応じて給与が支払われるので、成果がなければ給与がないこともあると思われるかもしれませんが違います。 労働基準法第27条では、歩合制の賃金について「使用者は、労働時間に応じ一定額の賃金の保障をしなければならない」と定めています。つまり、実際の労働に対して最低保障があるということです。 時間あたりの賃金は最賃法に定める最低賃金以上、法定労働時間の超過分に対しては割増賃金が原則です。 年俸制だから残業代は出ない? 年俸制でも月給制でも、労働基準法で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は同じように適用されます。つまり、残業代は出るということです。 ただし、実際には年俸制で残業代が出ない人もたくさんいます。理由の1つは、年俸制だからではなく、管理監督者が年俸制を採用しているケースが多いことです。 また、年俸制年俸と固定残業代制度を併用していて、「みなし残業時間」を超過する残業が発生しないケースも考えられます。 関連記事 ・年俸制でも残業代は出る!例外や請求方法について解説 裁量労働制だから残業代は出ない? 裁量労働制では、あらかじめ「みなし労働時間」を設定し、実際の労働時間が「みなし労働時間」を下回っても超過しても「みなし労働時間」を働いたことになります。 そのため、労働時間が予定より長くなっても残業代は出ません。 ただし、深夜労働をした場合と休日出勤をした場合には、労働基準法第37条に定める「休日及び深夜の割増賃金」の規定が適用されます。 残業代が発生しない契約だから残業代は出ない? 労働基準法では、法定労働時間を超えて労働させると残業代の支払いを使用者に義務付けています。 これまで説明した例外などを除き、この義務に違反した契約は違法である可能性が高いと言えます。違法な契約は無効なので、残業代は請求できます。 会社が法律違反であることを認識した上で、残業代の支払いを避けている可能性も考えられます。 会社からの「〇〇だから残業代は出ない」に要注意! これまで解説したように職種や勤務形態によっては、残業代がでないこともあります。 しかし、会社から残業代が出ない理由として告げられる「〇〇だから残業代出ない」は要注意です。本当は残業代が発生しているのに支払われていないケースもあります。 残業代が支払われていないケース 労働基準法を誤って理解して残業代が支払われていないケース 原則、残業代のない職種・勤務形態だが所定の要件を満たして残業代の出るケース 人件費を抑えるために会社が意図的、違法に残業代を支払わないケース 在宅勤務中は残業代が出ない、残業するときはタイムカードを打刻するなどの会社独自のルールが定められている場合でも、違法である可能性はあります。 会社独自のルールを鵜呑みするのではなく、違法性があると考えられる場合には、会社に残業代請求する際のポイントを押さえておきましょう。 会社に残業代請求する際のポイント 残業代請求には証拠が重要 残業代請求には、未払い残業代があることを明らかにする証拠の収集が重要です。 残業代の証拠には以下のものがあります。 残業代請求に必要な証拠 労働条件の証拠:就業規則や労働契約書 残業代の証拠:給与明細 残業時間の証拠:タイムカードや勤怠管理システムの記録 残業代の証拠は多ければ多いほどいいです。未払い残業を主張しても、証拠がないと応じてもらえない可能性が高いため、できる限り証拠を収集しておきましょう。 関連記事 ・残業代請求で必要となる証拠を徹底解説!証拠がない場合の対処法は? 残業代が出ないときは弁護士・労基署に相談 残業代が出ないときは、弁護士や労働基準監督署(労基署)などに相談しましょう。 弁護士 残業代が出るかどうかわからない、会社に直接請求するのは気が引けるなどの場合は、弁護士に相談することがおすすめです。 弁護士であれば、残業代が支払われない状況を把握し、客観的に違法かどうかの判断が可能です。 また、労働者だけで交渉しても会社側が真摯に応じない可能性もありますが、弁護士が交渉をするだけで会社側が支払いに応じる場合もあります。 加えて弁護士であれば、会社との交渉がうまくいかなかった場合でも労働審判や民事裁判にもワンストップで対応できます。会社に対して徹底的に未払い残業代を請求することが可能です。 関連記事 ・残業代請求を弁護士に依頼する場合の費用相場は?弁護士に依頼するメリット5選! 労働基準監督署 会社が残業代の支払いに応じてくれない場合、労働基準監督署に相談するという方法もあります。 労働基準監督署は企業が労働基準法を遵守しているか管理・監督していて、残業代の未払いなど違反している会社に是正勧告などをしてくれます。 参考:労働基準監督署の所在地一覧 ただし、労働基準監督署は企業の違反行為に対して勧告しても、個別の残業代請求の支払いを命じるわけではありません。 労働基準監督署の勧告などにより会社が残業代を支払ってくれれば問題は解決しますが、そうでない場合は訴訟などが必要になります。 関連記事 ・残業代未払いは労基署に相談できる?弁護士との役割の違いを解説 --- ### 残業60時間がきつい!残業代や違法となるケースについて解説 - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-03-29 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6795 - Categories: 残業代請求 月に60時間を超える残業を何か月も続けているという場合は、36協定を結んでいたとしても違法である場合があります。 残業代や残業時間についてお困りの方は、弁護士への相談をおすすめします。 「月の残業時間が60時間を超えており、家族との時間が取れない」「60時間以上残業しており、健康面の心配がある」 毎月のように60時間以上残業している方の中には、プライベートの時間もとれず、肉体的にも精神的にも疲弊してしまうという方も多いのではないでしょうか。 労働基準法では、法定労働時間を原則1日8時間、1週40時間と定めています(労働基準法32条)。 この法定労働時間を超えて残業がおこなわれた場合は、基本的に25%以上の割増率で計算した割増賃金が支払われることになります。 今回は、月に60時間以上残業している場合に支払われる残業代や、残業自体が違法となるケースについて解説します。 月60時間以上残業した場合のポイント 1か月に60時間以上残業したときのポイントとして、以下のようなものが挙げられます。 月60時間以上残業した場合 割増賃金の割増率は50%以上になる 代わりに休暇を与えられることもある 月60時間以上の残業は50%以上の割増率 月に60時間を超える残業をした場合には、50%以上の割増率で計算した割増賃金が支払われます。 この規則は、かつて大企業のみに適用されており、中小企業は割増率が25%となっていました。 2023年4月からは、中小企業や大企業といった企業の規模にかかわらずこの規則が適用されているので、残業代の計算に注意が必要です。 月60時間以上の残業では代替休暇も可能 月60時間以上の残業については、50%以上の割増率で計算した割増賃金を支払う必要がありますが、割増賃金を支払う代わりに、半日や1日単位で休暇を与えること(代替休暇)も認められています。 しかし、割増賃金率が50%に満たない場合は代替休暇は適用されません。 また、労働者が代替休暇を受け取るかどうかについても、個々の判断にゆだねられています。 月45時間を超える残業が続くと違法のおそれも 原則として、月45時間以上の残業が何か月も続く場合、違法とみなされるおそれがあります。 36協定の締結と届け出が必要 1日8時間、1週40時間の法定労働時間を超えて労働者が働くときには、労使協定(いわゆる36協定)を結ぶ必要があります。 36協定を結んだだけで、労働基準監督署長に届け出ていない場合や、そもそも36協定を結んでいないという場合には、法定時間を超える残業は違法となります。 36協定があっても月45時間・年360時間を超える残業は違法 36協定を結んでいても、「月45時間・年360時間」を超える残業は、原則として違法となります。 臨時的な特別の事情がある場合は、特別条項付きの36協定を結ぶことで上限を超えた残業をさせられることがありますが、その場合でも残業時間は以下の範囲内で定められていなければなりません。 特別条項付き36協定の残業時間の上限 時間外労働が年720時間以内である 時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満である 2か月、3か月、4か月、5か月、6か月のいずれの期間においても、時間外労働と休日労働を合わせて平均80時間以内にしなければならない 月45時間を超える時間外労働は、年6か月まで(1年に6回まで) したがって、月45時間を超える残業が何か月も続いている場合は、違法と判断されることもあります。 そのほかに残業が違法になるケース 36協定に関する規制以外で、違法な残業とみなされるケースもいくつか存在します。 そのほかに残業が違法となるケース 残業代が正しく計算されていない みなし残業制度が守られていない いわゆる「名ばかり管理職」になっている 残業代が正しく計算されていない 従業員が月60時間を超える残業をおこなった場合は、企業の規模にかかわらず50%以上の割増率で計算された割増賃金が支払われなければなりません。 適切な残業代が支払われていない場合は、違法な残業といえるでしょう。 関連記事 ・残業代の正しい計算方法とは?基本から応用的な計算まで徹底解説! みなし残業制度が守られていない みなし残業(固定残業)とは、実際の残業時間にかからわず、あらかじめ決められた一定時間の残業代を給与に含めて支払う制度です。 一定時間を超えて残業しているのにもかかわらず、超過分の残業代が支払われていないケースは違法といえます。 こちらの内容について詳しく知りたい方は『みなし残業(固定残業)とは?違法になるケースや違法な残業への対処法』の記事をご覧ください。 いわゆる「名ばかり管理職」になっている 労働基準法では、管理監督者に該当する管理職であれば、労働時間、休憩および休日に関する規定は適用されないと定められています(労働基準法41条2号)。 しかし、すべての管理職が管理監督者に該当するわけではありません。 労働基準法上の「管理監督者」に該当するかどうかは、「責任や権限」「職務内容」「待遇面」などによって判断されることになります。 いわゆる「名ばかり管理職」に該当しており、残業代が支払われない場合は、違法といえます。 こちらの内容について詳しく知りたい方は『管理職は残業代が出ない?残業代がもらえるケースや基準を解説』の記事をご覧ください。 長時間の残業や未払い残業代の対処法 60時間におよぶ残業や、残業代が未払いになっているということでお悩みの方は、すぐに以下のような対処法をとることをおすすめします。 長時間の残業や未払い残業代の対処法 退職・転職する 労働組合や労働基準監督署に相談する 弁護士に相談する 退職・転職する 長時間におよぶ残業が常態化している状況では、過労死のリスクが非常に高くなり、命の危険があります。 もちろん、「残業が60時間を超えたのは先月だけ」という場合でも、今後より長い時間残業を強いられるおそれもあるでしょう。 残業時間が80時間を超えると、過労死のリスクが高まります。 80時間残業した場合の過労死のリスクについて詳しく知りたい方は『残業80時間は過労死ライン!過労死ラインや違法となるケースについて解説』の記事をご覧ください。 会社側が長時間の残業を命令してくるという場合には、健康なうちに会社を退職したり、転職したりすることをおすすめします。 未払いの残業代が残っているというケースでも、退職後に残業代を請求することはできるので安心してください。 退職後のの残業代請求のポイントについて詳しく知りたい方は『残業代請求は退職後でも可能!注意点や退職後の証拠の集め方を解説』の記事をご覧ください。 労働組合や労働基準監督署に相談する 個人で対処することが難しいという場合には、労働組合や労働基準監督署に相談することで、状況の改善が見込めることもあります。 残業によって健康被害が生じているという際には、労災が認められることもあるので、労働基準監督署に相談してみることをおすすめします。 弁護士に相談する 「残業代が未払いのままで困っている」という場合には、弁護士に相談することをおすすめします。 弁護士に相談すれば、代理で会社と交渉を進められます。 健康被害を受けているという場合には、労災保険の申請について、弁護士がアドバイスをしてくれるというメリットもあります。 月60時間以上の残業時間や残業代については弁護士に相談 原則的には、残業時間の上限は、月45時間・年360時間です。 そのため、月60時間も残業をしているという場合には、残業時間の上限規制に違反していることになります。 残業時間や残業代について疑問点やお悩みがある方は、弁護士に相談することをおすすめします。 弁護士に相談すれば、「未払い残業代があるかどうか判断してもらえる」「会社に対して未払い残業代を代理でおこなってくれる」「労働審判などの法的対応をスムーズに任せられる」といったメリットがあります。 無料相談を受け付けている弁護士事務所もありますので、まずは弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。 ほかの残業時間に応じたポイントを知りたい方へ 今後繁忙期や人手不足などが重なり、残業が100時間の大台を超えてしまうと、健康被害や精神障害が発生するリスクが高まります。 残業時間別にポイントをまとめました。ぜひご覧ください。 ・残業100時間は危険な数値!過労死ラインや違法となるケースについて解説・残業200時間は命の危険!過労死ラインと対処法について解説 --- ### 残業80時間はきつい…過労死ラインや違法となるケースについて解説 - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-05-30 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6796 - Categories: 残業代請求 月に80時間を超える残業をおこなっているという場合は、過労死ラインに該当する可能性があります。 残業時間や残業の違法性についてお悩みの方は、弁護士への相談をおすすめします。 「残業時間が80時間を超えており、リフレッシュする時間がほとんどない」「毎月のように80時間程度の残業をしており、十分に睡眠がとれない」 月に80時間以上残業をしているという場合には、体調不良や過労死といったリスクが生じるおそれがあります。 労働基準法では、法定労働時間を原則1日8時間、1週40時間と定めています(労働基準法32条)。 今回は、月に80時間以上残業している場合に生じるリスクや、残業が違法となるケース、相談窓口について解説します。 月80時間の残業は過労死ライン 過労死ラインとは、健康被害や精神障害が発生するリスクが高くなる残業時間の目安です。 2021年9月に労災認定基準が改正され、長時間の労働と過労死の関係性について、以下のような基準が設けられました。 労働の期間と時間業務と発症との関連性発症前1~6か月間にわたって、1か月あたりおおむね45時間を超える時間外労働が認められない弱い発症前1~6か月間にわたって、1か月あたりおおむね45時間を超える時間外労働が認められる場合徐々に強まる発症前1か月間におおむね100時間を超える時間外労働が認められる場合強い発症前2~6か月間にわたって、1か月あたりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合強い 参考:厚生労働省|血管病変等を著しく増悪させる業務による脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準について 何か月にもわたって80時間を超える残業をおこなっている場合は、健康被害のリスクが高まるといえます。 月45時間を超える残業が続くと違法のおそれも 原則として、月45時間以上の残業が何か月も続く場合、違法とみなされるおそれがあります。 36協定の締結と届け出が必要 1日8時間、1週40時間の法定労働時間を超えて労働者が働くときには、労使協定(いわゆる36協定)を結ぶ必要があります。 36協定を結んだだけで、労働基準監督署長に届け出ていない場合や、そもそも36協定を結んでいないという場合には、法定時間を超える残業は違法となります。 36協定があっても月45時間・年360時間を超える残業は違法 36協定を結んでいても、「月45時間・年360時間」を超える残業は、原則として違法となります。 臨時的な特別の事情がある場合は、特別条項付きの36協定を結ぶことで上限を超えた残業をさせられることがありますが、その場合でも残業時間は以下の範囲内で定められていなければなりません。 特別条項付き36協定の残業時間の上限 時間外労働が年720時間以内である 時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満である 2か月、3か月、4か月、5か月、6か月のいずれの期間においても、時間外労働と休日労働を合わせて平均80時間以内にしなければならない 月45時間を超える時間外労働は、年6か月まで(1年に6回まで) したがって、月45時間を超える残業が何か月も続いている場合は、違法と判断されることもあります。 そのほかに残業が違法になるケース 36協定に関する規制以外で、違法な残業とみなされるケースもいくつか存在します。 そのほかに残業が違法となるケース 残業代が正しく計算されていない 残業80時間以外の月も残業代が出ていない みなし残業制度が守られていない いわゆる「名ばかり管理職」になっている 残業代が正しく計算されていない 従業員が月60時間を超える残業をおこなった場合は、企業の規模にかかわらず50%以上の割増率で計算された割増賃金が支払われなければなりません。 適切な残業代が支払われていない場合は、違法な残業といえるでしょう。 関連記事 ・残業代の正しい計算方法とは?基本から応用的な計算まで徹底解説! 残業80時間以外の月も残業代が出ていない 残業が80時間以外の月も、基本的に時間外労働に対する残業代は出ます。 たとえば、「先月は60時間残業だった... ... 」という場合でも、それぞれの月の残業時間に応じて残業代を受け取れます。 月60時間以上残業した場合のポイントについて詳しく知りたい方は『残業60時間がきつい!残業代や違法となるケースについて解説』の記事をご覧ください。 みなし残業制度が守られていない みなし残業(固定残業)とは、実際の残業時間にかからわず、あらかじめ決められた一定時間の残業代を給与に含めて支払う制度です。 一定時間を超えて残業しているのにもかかわらず、超過分の残業代が支払われていないケースは違法といえます。 こちらの内容について詳しく知りたい方は『みなし残業(固定残業)とは?違法になるケースや違法な残業への対処法』の記事をご覧ください。 いわゆる「名ばかり管理職」になっている 労働基準法では、管理監督者に該当する管理職であれば、労働時間、休憩および休日に関する規定は適用されないと定められています(労働基準法41条2号)。 しかし、すべての管理職が管理監督者に該当するわけではありません。 労働基準法上の「管理監督者」に該当するかどうかは、「責任や権限」「職務内容」「待遇面」などによって判断されることになります。 いわゆる「名ばかり管理職」に該当しており、残業代が支払われない場合は、違法といえます。 こちらの内容について詳しく知りたい方は『管理職は残業代が出ない?残業代がもらえるケースや基準を解説』の記事をご覧ください。 長時間の残業や未払い残業代の対処法 80時間におよぶ残業や、残業代が未払いになっているということでお悩みの方は、すぐに以下のような対処法をとることをおすすめします。 長時間の残業や未払い残業代の対処法 退職・転職する 労働組合や労働基準監督署に相談する 弁護士に相談する 退職・転職する 特に80時間以上の残業は過労死ラインに相当するため、過労死のリスクが非常に高くなり、命の危険があります。 会社側の改善が見込めそうにないという場合には、健康なうちに会社を退職したり、転職したりすることをおすすめします。 未払いの残業代が残っているというケースでも、退職後に残業代を請求することはできるので安心してください。 ただし、在職中であれば、未払い残業代の証拠を集めやすいというポイントもあります。 こちらの内容について詳しく知りたい方は『残業代請求は退職後でも可能!注意点や退職後の証拠の集め方を解説』の記事をご覧ください。 労働組合や労働基準監督署に相談する 個人で対処することが難しいという場合には、労働組合や労働基準監督署に相談することで、状況の改善が見込めることもあります。 残業によって健康被害が生じているという際には、労災が認められることもあるので、労働基準監督署に相談してみることをおすすめします。 弁護士に相談する 「残業代が未払いのままで困っている」という場合には、弁護士に相談することをおすすめします。 弁護士に相談すれば、代理で会社と交渉を進められます。 健康被害を受けているという場合には、労災保険の申請について、弁護士がアドバイスをしてくれるというメリットもあります。 80時間を超える残業時間や残業代については弁護士に相談 原則的には、残業時間の上限は、月45時間・年360時間です。 そのため、月80時間の残業は、残業時間の上限のおよそ2倍の時間残業していることになります。 残業時間や残業代について疑問点やお悩みがある方は、弁護士に相談することをおすすめします。 弁護士に相談すれば、「未払い残業代があるかどうか判断してもらえる」「会社に対して未払い残業代を代理でおこなってくれる」「労働審判などの法的対応をスムーズに任せられる」といったメリットがあります。 無料相談を受け付けている弁護士事務所もありますので、まずは弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。 残業時間に応じたポイントを知りたい方へ 「残業が80時間を超えたのは先月だけ」という場合でも、繁忙期や人手不足により、今後より長い時間残業を強いられるおそれもあるでしょう。 残業が100時間の大台を超えると、健康被害や精神障害が発生するリスクが高まります。 残業時間別にポイントをまとめました。ぜひご覧ください。 ・残業100時間は違法!過労死ラインや違法となるケースについて解説・残業200時間は命の危険!過労死ラインと対処法について解説 --- ### 退職代行を弁護士に依頼するメリットは?費用・代行業者との違いまで完全解説! - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-06-27 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6787 - Categories: 退職代行 退職代行を弁護士に依頼すると、弁護士法違反(非弁)のリスクがなく、トラブル化した時には審判や訴訟に移行できます。労働問題に精通していて、退職代行の実績が豊富な弁護士事務所へ退職代行を依頼しましょう。 「退職代行を利用して会社を辞めたい」「退職代行は弁護士に依頼するべき?」 退職代行を依頼しようとしても、料金や手続きがよく分からず、失敗するのではないかと考える気持ちはよくわかります。 退職代行を利用するからには、失敗せずに会社を辞められる退職代行サービスを利用したい方が多いのではないでしょうか。 この記事では、退職代行を検討している方に向けて、退職代行サービスの違いや退職代行を弁護士に依頼するメリットを詳しく解説します。 退職代行サービスの種類 退職代行サービスを大きく分けると、退職代行業者、ユニオン、弁護士の3種類に分けることができます。 ここでは、退職代行サービスごとのメリット・デメリットをご紹介していきます。 そもそも退職代行サービスがどのようなものか詳しく知りたい方は、『退職代行サービスとは?メリット・デメリットや選び方を弁護士が解説』の記事をご覧ください。 退職代行業者、ユニオンのメリット・デメリット 退職代行業者、ユニオンに退職代行を依頼するメリットは、比較的安価に退職を期待できる点です。 退職代行業者に依頼すれば、会社へ退職の意思を伝え、書類を渡してもらうことはできるでしょう。 一方でデメリットは、退職日をいつにするかや有給休暇をいつ消化するかといった交渉はできないことです。 業者ではなく合同労働組合やユニオンであれば会社との交渉は可能ですが、審判や裁判等には移行できません。 思うように退職できずに審判や裁判に発展し、弁護士に相談や依頼が必要になるケースもあります。 退職トラブルを避けるためには、はじめから弁護士に相談することがおすすめです。 退職代行を弁護士に依頼するメリット 退職代行を弁護士に依頼するメリットは、以下の通りです。 退職代行を弁護士に相談するメリット 弁護士法違反(非弁)のリスクがない 退職に失敗するおそれが小さい 未払いの給料や残業代などの請求もできる 有給取得の交渉も可能 トラブル化した時、労働審判や訴訟に移行できる 弁護士のメリット(1)弁護士法違反(非弁)のリスクがない 退職代行を弁護士に依頼するメリットは、弁護士法違反(非弁行為)のリスクがないことです。 弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。 弁護士法72条本文 退職代行業者は、会社と退職に関する交渉を行ってしまうと、原則として弁護士法違反(非弁行為)となります。 そのため、退職代行業者は、労働者の退職の意思を会社に伝えることしかできません。 つまり、会社側が退職を断固として拒否するなど、退職の交渉が必要となるケースでは、退職代行業者で対応できずに自分で対応しなければならない可能性があるということです。 また、依頼した退職代行業者が非弁行為をしたことが発覚すれば、退職そのものが無効となる可能性もあります。 たとえ業者の担当者が弁護士の監修や指導の元で業務を行っていたとしても、実際に会社に交渉を行う担当者が弁護士でない限り、弁護士法に違反することに変わりはありません。 一方、退職代行を弁護士に依頼すれば、弁護士が直接会社と退職の手続きや交渉を行ってくれます。弁護士法違反による退職が無効となるリスクはありません。法的な知識を根拠に、退職交渉をしてもらえるでしょう。 弁護士のメリット(2)退職に失敗するおそれが小さい 弁護士に依頼すれば、会社と法的な交渉を行うことができるため、退職に失敗するおそれが小さくなります。 退職代行業者では、会社から「退職は認めない」と言われてしまうと、それ以上の交渉ができません。 一方、退職代行を弁護士に依頼することで、会社から反論されても法的な根拠を基に交渉してもらうことができるので、退職に失敗するおそれが小さいでしょう。 弁護士のメリット(3)未払いの給料や残業代などの請求もできる 弁護士であれば、退職と併せて未払いの給料や残業代、退職金の請求も可能です。 在職中に残業代を請求することが心理的に難しかったり、規程通りに退職金が支給されなかったりした場合でも、弁護士に依頼すれば代理で請求してもらうことができます。 退職を直接伝えることが難しい環境では、給料の未払いやサービス残業などの賃金トラブルが発生していることも珍しくありません。 支払われていない賃金を請求するのは、労働者の正当な権利です。 また、現時点では賃金を正しく受け取っていたとしても、退職代行を利用したことで「退職金は支払わない」と会社が主張してくるおそれもあります。 退職金を受け取れないといったトラブルを避けたい方も、弁護士に依頼すべきといえます。 関連記事 ・退職代行を利用しても残業代は請求できる?【弁護士が解説】 ・退職代行を使っても退職金はもらえる?弁護士が解説 弁護士のメリット(4)有給取得の交渉も可能 弁護士は退職条件の交渉ができるため、具体的な退職日の調整や、退職日に伴う有給休暇の取得の交渉・調整も行うことができます。 また、業務の引継ぎについても、会社と調整を行うことが可能です。 弁護士のメリット(5)トラブル化した時、労働審判や訴訟に移行できる 万が一、退職代行を利用したことでトラブルに発展した時、労働審判や訴訟に移行できることも、退職代行を弁護士に依頼するメリットです。 退職することに対して会社側が損害賠償請求してきた場合には、退職代行業者では具体的な対応ができません。 退職代行を弁護士に依頼した場合には、万が一トラブルに発展した場合でも、労働審判や訴訟にスムーズに移行できます。 弁護士に依頼するときのデメリットは費用の高さ 退職代行を弁護士に依頼するときの弁護士費用相場は、退職代行だけの場合で5万程度です。 退職代行業者やユニオンと比較すると、高額となります。 また、未払い給料・残業代の請求やセクハラ・パワハラに対する慰謝料の請求、うつ病等に対する労災申請など、退職代行以外の業務が発生する場合には、別途成功報酬や着手金が必要になる場合もあります。 退職代行以外に依頼したいことがある場合には、事前に費用面の相談をしておきましょう。 退職代行に関する相談は、無料で対応してくれる弁護士事務所もあります。 関連記事 ・退職代行サービスの金額相場はいくら?3つの相談先と対応の違いを解説 退職代行を弁護士に依頼する際のポイント 退職代行を弁護士に依頼する際のポイントは、以下の3つです。 弁護士に依頼する際のポイント 未払い賃金等があれば証拠を収集する 労働問題に精通している弁護士を選ぶ まずは相談をしてみて検討する 未払い賃金等があれば証拠を収集する 未払い賃金や残業代がある場合には、退職の手続きと平行して、会社に請求できます。未払い残業代や退職金を会社へ請求するためには、証拠を収集しておくことが必要です。 実際に働いた労働時間が正確に把握できる、タイムカードや勤怠記録などの証拠を集めておきましょう。 退職金に関しては、就業規則や雇用契約書などもあるといいでしょう。 労働問題に精通している弁護士を選ぶ 退職代行を弁護士に依頼する際のポイントは、労働問題に精通している弁護士を選ぶことです。 弁護士には得意不得意があり、すべての弁護士が労働問題に精通しているわけではありません。退職代行業務を行っていない弁護士事務所もあります。 退職代行業務を行っているか、労働問題の実績が豊富かどうかを確認しておきましょう。 関連記事 ・労働問題に強い弁護士に相談!弁護士に相談するメリットや探し方 まずは相談をしてみて検討する 相談をしてから検討することも、退職代行を弁護士に依頼する際のポイントです。 弁護士事務所のホームページである程度の情報は得られると思いますが、話を聞いてみないと実際のところはどうなのか分かりにくいと思います。 実際に相談を行い、退職代行を任せても問題ない弁護士事務所なのか判断することが重要です。無料相談に対応している弁護士事務所もあるので、上手に活用しましょう。 相談時に確認すべき内容について知りたい方は『退職代行の相談時に確認すべき内容や選び方を解説!』の記事をご覧ください。 また、派遣社員や契約社員は利用できる退職代行サービスが限られることもあるため、事前に依頼できるかどうか確認するといいでしょう。 関連記事 ・派遣社員でも退職代行は利用できる!注意点を解説 ・契約社員でも退職代行は使える?退職代行を利用するときの注意点を解説! 退職代行を依頼するときの流れ 退職代行を弁護士に依頼するときの流れは、以下のように進むことが一般的です。 退職代行を弁護士に依頼するときの流れ 相談 情報共有 支払い 打ち合わせ 結果報告 退職代行の流れや利用前後にやるべきことに関しては『退職代行の流れは?手順を弁護士が徹底解説』の記事でも詳しく解説しています。併せてご覧いただくと理解が深まるでしょう。 (1)相談 まず、退職代行を行っている弁護士に相談します。 相談方法については大きく「メール」「電話」「LINE」の3種類があります。 退職代行にかかる費用、サービス内容などを確認しましょう。中には、即日退職に対応している場合もあります。 明日から仕事に行きたくないという方は、『退職代行を使えば即日退職できる?法的な仕組みを解説』の記事をご覧ください。 (2)情報共有 弁護士事務所側から、退職代行の流れや入金方法などの説明を受けます。 退職代行を依頼する側からは、いつまでに退職したいのか、有給休暇の消化はどうするか、未払い賃金や残業代はないか、セクハラやパワハラなどのトラブルはないかといった情報を伝えます。 (3)打ち合わせ 退職代行の依頼を決めたら、弁護士事務所が指定する方法で費用を支払います。入金が確認できたら打合せに入ります。 退職日をいつにするのか、有給休暇を消化する日程、未払い賃金や残業代を請求するか、セクハラやパワハラを受けていた場合には慰謝料請求を行うのかなど、具体的な内容の打ち合わせを行います。 (4)会社に退職の連絡をする 打合せした情報をもとに、依頼した退職代行の弁護士が会社へ退職の意思を伝えます。 依頼者が会社と直接連絡を取る必要は一切ありません。 (5)結果報告 会社への連絡が完了したら、結果の報告があります。無事退職できたら、健康保険証や貸与物を会社に返却することになります。 退職代行に関するよくある質問 Q. 退職代行で辞めた後、会社から本人宛に連絡が来ることはありますか? 弁護士に退職代行を依頼した場合は、基本的に連絡が来ることはありません。 弁護士は代理人として労働者の退職の意思を伝える際に、「依頼者に直接連絡しない」「何か連絡が必要な場合には代理人を通すこと」を会社に申し出てくれることが一般的だからです。 万が一電話が来たとしても、電話に対応する必要はありません。会社から本人宛に直接電話があった旨を退職代行に相談しましょう。 Q. 退職代行で辞めたら健康保険証、社員証などはどうすればいいですか? 会社宛に返送すれば問題ありません。正しく送られているかどうか確認するためにも、書留や配達証明を利用して送るといいでしょう。 Q. 退職代行を利用すると転職先にバレますか? 退職届を利用したことが転職先の会社にバレる可能性は低いです。 勤務していた会社が転職先の会社に「退職代行を利用して退職した」という個人情報を共有することは、個人情報保護法違反にあたります。 ただし、SNSで書き込みをしたものが見つけられたり、転職先の同僚や上司に自分から退職代行で辞めたことを話したりした場合には、バレる可能性もあります。 Q. 退職代行で辞める際、退職届を用意する必要がありますか? 退職代行を依頼するタイミングで退職届を用意する必要は、基本的にありません。 しかし、弁護士によっては退職をスムーズに進めるために退職届の作成が求められることがあります。 なお、退職代行で退職できた後には、退職届を会社に送付するケースが一般的です。 まとめ 退職代行業者は比較的安価に退職代行を依頼できるメリットがありますが、弁護士法違反(非弁行為)となるので、会社との交渉はできません。 一方、弁護士に退職代行を依頼すると、費用は業者よりも発生することが多いですが、法的な根拠を基に会社との交渉が可能です。 特に退職時のトラブルをできる限り回避したい、未払い賃金なども併せて請求したいとお考えの場合は、弁護士に退職代行を依頼することをおすすめします。 退職代行でお悩みの方は、まず弁護士に相談してみましょう。 --- ### 退職代行の相談時に確認すべき内容や選び方を解説! - Published: 2023-11-22 - Modified: 2025-01-29 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6788 - Categories: 退職代行 退職代行サービスに相談する際に確認しておくべき内容や、退職代行サービスの種類と選び方を詳しく解説。退職代行を弁護士に依頼すれば、未払いの賃金や残業代の請求、パワハラやセクハラに対する慰謝料請求など、さまざまなトラブルにも対応できます。 「事前に相談して不安を払しょくしたい」「電話相談してから退職代行サービスを依頼するか決めたい」 退職を検討する理由はさまざまですが、退職を言い出せないと辛いですよね。 直接退職の意思を伝えられればいいですが、不利益を受けることを心配している方の中には、退職代行の利用を考えている方も多いはずです。 退職代行によっては、電話やメール、SNSで無料相談ができるところもあります。 気になっている退職代行サービスがあれば、内容について確認しておきましょう。相談時に不安点を解消し、納得した状態で依頼すれば後悔のない選択ができるはずです。 この記事では、退職代行サービスに相談する際に確認しておくべき内容や、退職代行サービスの種類と選び方を詳しく解説します。 退職代行サービスが行うこと 退職代行サービスとは、退職の手続きを自分の代わりに行ってくれるサービスです。 自ら会社に出向いて会社の上司に退職の意思を伝えたり、面倒な手続きを行ったりする必要がないことから、近年は退職代行を利用して退職する人が増えています。 退職代行サービスが行う主な内容は、自分が退職したいと考えていることを会社へ伝えることです。 また、退職願・退職届などの必要な書類を会社に渡してもらえたり、有給の消化や未払い賃金の請求を行ってくれたりする場合もあります。 退職代行サービスにかかる費用と自分で退職することによる面倒な手続きやトラブルの可能性を天秤にかけ、お金をかける価値があると思うのであれば、退職代行サービスを利用することをおすすめします。 関連記事 ・退職代行サービスとは?メリット・デメリットや選び方を弁護士が解説 参考サイト 専門だから確実 男の退職代行 わたしNEXT<女性の退職代行> 退職代行に相談する際に確認しておくべき内容 退職代行の利用を検討すると、どの退職代行に依頼するか悩んでしまうと思います。退職代行の不安を少しでも解消できるように、事前に下記の内容について確認しておくと安心して依頼できるでしょう。 相談する際に確認しておくべき内容 退職までの流れ 依頼費用や返金保証など 未払い賃金請求なども対応しているか それぞれ詳しく解説します。 退職までの流れ 退職代行を利用する場合は、退職までの流れを確認しておきましょう。 一般的な退職代行の退職までの流れは以下の通りです。 退職代行の利用の流れ 相談・申し込み 料金の振り込み 退職代行サービスが会社へ連絡 退職代行サービスを依頼したら、退職日や有休の消化などについて担当者と打ち合わせをします。料金を振り込んだ後に、退職代行サービスが会社に労働者の退職の意思を連絡します。 無事退職が承認されれば、退職代行サービスから連絡が入ります。 相談する際には、依頼する退職代行の退職までの流れや会社へ連絡をしてもらった後すぐに連絡が入るのかなど、不安になる点を確認しておきましょう。 関連記事 ・退職代行の流れは?手順を弁護士が徹底解説 依頼費用や返金保証など 退職代行サービスによって、かかる費用は異なります。依頼費用や追加料金の発生の有無、退職が万が一失敗してしまった場合の返金保証が付いているかなどは確認しておくべきでしょう。 退職代行サービスを依頼するからには、当然失敗は避けたいものです。返金保証が付いていないサービスは、お金を払って損することも考えられるので、選ぶときには注意が必要です。 また、退職は成功したものの、追加料金が発生し、想像以上の費用がかかってしまうこともあります。 相場よりも極端に費用が低い退職代行サービスは、追加料金を設定している可能性もあります。相談する際には、追加料金の条件などを確認しておきましょう。 関連記事 ・退職代行サービスの金額相場はいくら?3つの相談先と対応の違いを解説 未払い賃金の請求なども対応しているか 未払い賃金の請求も同時に行うことができる退職代行サービスもあります。 相談する際には、未払い賃金の請求や有給休暇の消化も可能かどうか確認しておくといいでしょう。 ただし、退職代行以外の業務については別料金となるので、費用は事前に確認してください。 また、退職後のアフターフォローがついているかどうかも確認するといいでしょう。 退職代行のアフターフォローには、退職後の引継ぎに関するものや、離職票や源泉徴収の取得のサポートなどがあります。 退職後の生活に不安を抱えている方は、アフターフォローが充実している退職代行サービスを選ぶといいかもしれません。 退職代行サービスの種類と選び方 退職代行サービスは、大きく分けると以下の3種類に分類されます。 退職代行サービスの種類 民間の退職代行業者 退職代行ユニオン 弁護士 それぞれの特徴と選び方を解説します。 民間の退職代行業者 民間企業が運営する退職代行サービスが主にできることは、会社へ退職の意思を伝えることや書類の受け渡しです。会社と打ち合わせをしたり交渉したりすることはできません。 つまり、退職代行を利用して何らかのトラブルが発生し、損害賠償請求や懲戒解雇されたとしても、退職代行業者にはどうすることもできないということです。 仮に、依頼した悪質な退職代行業者が非弁行為を行ってしまえば、退職の手続き自体が無効になる可能性もあります。 悪質な退職代行業者は、相場と比べて費用が離れている場合があります。相場と比べて極端に安い代行業者を選ぶ際には注意しましょう。 退職代行ユニオン 退職代行ユニオンは、合同労働組合が運営する退職代行サービスです。 退職したいと考えている労働者が合同労働組合に加入することで、合同労働組合を通じて退職の意思を伝える仕組みになります。労働組合であるため、会社との交渉なども行えます。 弁護士による退職代行 弁護士に退職の代行を依頼すれば、正式な代理人として退職の手続きを任せることができます。 弁護士であれば、有給休暇をいつ消化するのか、退職日をいつにするかといった交渉も可能です。 会社が退職をどうしても認めない場合や退職日を不当に引き延ばす場合などのトラブルに発展した場合でも、労働審判や裁判に移行できます。 退職代行を依頼する人には、未払いの賃金や残業代がある人も多いでしょう。 未払い賃金や残業代の請求は自分でも行えますが、違法な対応をする会社だと、まともに相手にされなかったり解決まで時間がかかったりするケースもあります。 弁護士に退職代行すれば、未払い賃金や残業代の請求を任せることができ、解決までの時間を短縮できます。 基本的には弁護士がおすすめ 退職代行を依頼するなら、基本的に弁護士がおすすめです。 損害賠償請求すると言われたり、未払いの賃金や退職金は支払わないと言われたりするケースでも、退職代行を弁護士に依頼しておけば、退職時に発生するトラブルの大半に対応できます。 会社と何らかのトラブルが発生する可能性がある場合は、弁護士に依頼することをおすすめします。 弁護士が運営する退職代行であっても、依頼するか迷われている方に向けて、相談を受け付けている退職代行サービスは数多くあります。 法律の専門家である弁護士に相談することで、退職代行サービスのメリット・デメリットを明確にでき、納得して依頼することができるようになるでしょう。 関連記事 ・退職代行を弁護士に依頼するメリットは?費用・代行業者との違いまで完全解説! まとめ 安心して退職代行を任せたいときには、弁護士に依頼しましょう。 退職代行サービスの中には電話やメール、SNSなどで相談を受け付けているところもあります。 相談する際には、退職までの流れや費用、サービス内容などを確認すると、不安点を解消することができると思います。 無料相談を受け付けている退職代行サービスも多くあるので、一度相談してみてはいかがでしょうか。 --- ### 残業代の正しい計算方法とは?基本から応用的な計算まで徹底解説! - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-03-29 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6791 - Categories: 残業代請求 残業代の計算方法は法令で決まっており、内容も複雑です。基本的には残業代単価×残業時間数から計算されることは押さえつつ、自分の残業代額に疑問を持った場合には専門家へ相談することが重要です。 「毎月の残業代は正しく計算されてる?」「そもそも残業代の計算方法は?」 計算方法がわからないと、自分の残業代に未払いがないか不安になりますよね。特に「残業時間が長い」と感じている場合には、未払いの有無を確認すべきです。 ただし、残業代の計算方法は、労働基準法の定めに沿う必要があります。 そこで、この記事では、「残業代の法的に正しい計算方法」や「残業代と基本給との関係」、「月給制と日給制での違い」に加え「残業代についての相談先」について解説します。 サービス残業でお悩みの方へ サービス残業は違法であり、未払い残業代は請求できます。請求できる未払い残業代の目安を知りたい方は、以下のツールもご活用ください。 残業代計算ツール 残業代の計算方法の基本|計算式 そもそも残業代とは? 日常的に使われる残業代という言葉はあくまで一般用語で、法律上の定義はありません。広く「残業に対して支払われる給与」を指して使われています。 法律用語としては、「割増賃金」が残業代に対応する言葉として使われており、時間外労働・休日労働・深夜労働に対して支払われると定められています(労働基準法37条など)。 労働基準法は、1日及び1週間で働かせることのできる最長の労働時間(「法定労働時間」と言います)を、原則として1日8時間・1週間40時間と定めています(労働基準法32条)。 この法定労働時間を超える労働のことを「時間外労働」と言います。 また、同じく労働基準法は、原則として、1週間に1日の休日もしくは4週間で4日の休日を設けなければならないとしています(「法定休日」と言います)。 この法定休日に働くことを「休日労働」と呼びます。 時間外労働や休日労働に支払われる割増賃金は、「法律上の残業代」とも呼べるものであり、労働基準法等で計算方法が決められています。 そこで、この記事では、残業代の計算方法として、時間外労働割増賃金・休日労働割増賃金の計算方法を解説していきます。 関連記事 ・残業代について解説!残業の定義、計算方法や残業代未払い時の対処法 残業代の計算式 残業代の計算は、単純に言えば、以下の通りです。 残業代の計算方法 ①残業1時間あたりの賃金額(単価)×②残業をした時間数 これを時間外労働割増賃金・休日労働割増賃金それぞれに当てはめると、下記の通りになります。 時間外労働割増賃金:時間外労働1時間あたりの賃金額×時間外労働をした時間数 休日労働割増賃金:休日労働1時間あたりの賃金額×休日労働をした時間数 そして、この「1時間あたりの単価」と「残業をした時間数」という2つの要素それぞれについて、割増賃金の場合には法令でルールが定められています。 残業代の計算方法(1)|1時間あたりの単価の算出 残業代の単価計算は給与形態によって異なる 残業代の単価計算は、一般的には次のように行われます。 給与形態ごとの計算方法 月給制:(月給額÷1か月の所定労働時間)×割増率 日給制:(日給額÷1日の所定労働時間)×割増率 時給制:時給額×割増 給与形態によって計算式が異なるのは、月給制や日給制の場合は「自分の1時間あたりの通常の賃金額がいくらになるのか」が最初からわかっているわけではないからです。 そのため、計算式中のかっこにあるように、1時間あたりの通常の賃金額をまず計算する必要があります。 その通常の賃金額に、割増率と呼ばれる「通常の賃金額よりいくら多く支払うかを表した数値」を掛けることで、残業代の単価が決定されます。 労働基準法等では、割増率が下記のように決められています。 労働内容割増率時間外労働125%休日労働135% したがって、時間外労働の場合は通常の賃金額より25%多く、休日労働では35%多い賃金額が支払われることになります。 残業代単価の計算方法|通常の賃金額の計算 月給制や日給制の通常の賃金額の算出方法について、もう少し掘り下げてみましょう。計算式のかっこの中身の部分です。 計算式にある「所定労働時間」というのは、「始業時刻から終業時刻までの時間から、休憩時間を除いたもの」を指します。 たとえば、始業9時・終業18時・休憩12時〜13時の場合、1日の所定労働時間は8時間ということになります。 これは、実際に働いた時間で考えるのではなく、就業規則や雇用契約書によってあらかじめ決められている時間を基準とします。 日給制の場合は1日の所定労働時間で計算すればいいのですが、月給制の場合は「1か月いくら」と給与額が決められているため、それでは計算できません。 そこで、月給制では1日単位ではなく、1か月単位の所定労働時間で計算します。 たとえば、先の例のように1日の所定労働時間が8時間で1か月に20日勤務するという場合、「8時間×20日=160時間」が1か月の所定労働時間ということになります。 ただ、1か月に何日勤務するかは月によって変わることが通常です。たとえば、暦通りの勤務だとすると、2月や5月は勤務日数が少なくなり、反対に6月は多くなります。 このように、1か月の所定労働時間が月によって異なることから、割増賃金の計算では「1年間を平均した1か月の所定労働時間」をもとに計算します(労働基準法施行規則19条1項4号)。このような所定労働時間数を「1か月平均所定労働時間」と呼ぶこともあります。 1か月平均所定労働時間の計算式は次の通りです。 1か月平均所定労働時間の計算式 1日の所定労働時間×年間の所定労働日数(勤務日数)÷12か月 ここでの勤務日数は、就業規則や雇用契約書で定められている日数のことで、欠勤や年次有給休暇の取得等は関係しません。 残業代単価のもととなる基礎賃金は? 以上を踏まえ、それぞれの給与形態ごとに単価の計算方法を示すと、次のようになります。 給与形態ごとの単価の計算方法 月給制:(月給額÷1か月平均所定労働時間)×125%or135% 日給制:(日給額÷1日の所定労働時間)×125%or135% 時給制:時給額×125%or135% ここでの月給額・日給額・時給額からは、下記7種類に該当する給与に限り除外して計算することができます(労働基準法37条5項・労働基準法施行規則21条)。 対象となる給与 家族手当 通勤手当 別居手当 子女教育手当 住宅手当 臨時に支払われた賃金 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金 このうち、「臨時に支払われた賃金」の例には結婚手当など支給が不確実なものが挙げられ、「1か月を超える期間ごとに支払われる賃金」の典型例には賞与(ボーナス)が挙げられます。 上記の7種類に該当しない給与はすべて計算の基礎賃金として扱わなければなりません。 残業代の計算方法(2)|残業時間数のカウント 残業代計算のベースは日々の残業時間 単価の計算に誤りがなくても、何時間残業したかが正確に計算できていなければ、残業代は正しく支払われません。 ここでの残業時間は、時間外労働時間と休日労働時間ですから、その両者を正確に算出することが求められるということです。 そして、その計算は「何時間働いたか(総労働時間)」を単純にカウントするだけではおこなえず、「法定労働時間を超えて働いた部分」「法定休日に働いた部分」を特定する必要があります。 たとえば、始業9時・終業18時・休憩12時〜13時という場合、所定労働時間は8時間です。この例で19時まで働けば、時間外労働時間は1時間ということになります。 しかし、同じ例で始業に1時間遅刻していた場合、19時まで働いたとしても8時間を超えないため、時間外労働は発生していません。 このように、残業時間の計算は「日々何時から何時まで働いたか」の記録をベースにして行われることになります。 残業代の計算方法の中では1週間の扱いが特に複雑 上の例のように、1日の残業時間については特別な場合を除き、そこまで複雑ではありません。 しかし、先の通り、法定労働時間は1日だけではなく1週間についても定められています。 一例として、始業9時・終業18時・休憩12時〜13時、出勤日が月曜日〜金曜日(土曜日と日曜日が休日)と決められていたとします。 つまり、1週間の所定労働時間は「1日8時間×5日勤務=40時間」となり、法定労働時間ちょうどに設定されているということです。 この例で、月曜日から金曜日は定時通りに働いたうえ、土曜日も出勤した場合、その土曜日の出勤は1週40時間を超えます。 したがって、土曜日の労働分は「時間外労働」として計算しなければなりません。 休日に働いていることから、一般的には「休日出勤」と呼ばれていると思います。 しかし、法律上は時間外労働として扱われるため、注意が必要です。 また、このことは、「土曜日は法定休日ではない」ことも意味しています。 法定休日は週に1日(または4週で4日)の休日のことですから、多くの会社で普及している週休2日制の場合、週に2日以上ある休日のうち法定休日となるのは「1日だけ」ということになります。 先の例では土曜日に働いていますが、同じ週にある日曜日は休みのままです。日曜日という法定休日が確保できているため、休日労働は生じていません。 これは、日曜日に労働をして土曜日を休んでいる場合でも同じです。 以上のように、1週間単位の時間外労働・休日労働の計算では考慮しなければならない事情が多く、複雑となっています。 残業代の計算方法で迷ったら専門家に相談 ここまで、原則の法定労働時間・法定休日の決まりをもとに解説してきました。しかし、労働基準法には、使用者が一定の手続きを取ることで原則を変更する制度があります。 たとえば、変形労働時間制(労働基準法32条の2・32条の4)、フレックスタイム制度(労働基準法32条の3)、高度プロフェッショナル制度(労働基準法41条の2)などが挙げられます。 これらを導入すれば、1日8時間・1週40時間という原則に縛られることなく、より柔軟に労働時間を設計することが可能となります。 つまり、1日8時間・1週40時間を超えても時間外労働とカウントされない場合があるということです。 そのほか、定額の残業代が手当として支払われる場合もあるなど、残業代の計算は使用者が設けている制度にも大きな影響を受けます。 残業代の正確な計算はそこまで簡単ではないと言えるでしょう。 したがって、毎月の給与明細を確認して残業代の額に疑問を持った場合、弁護士などの専門家に相談して判断を仰ぐことも必要です。 弁護士に相談する際の費用相場やメリットを知りたい方は、『残業代請求を弁護士に依頼する場合の費用相場は?弁護士に依頼するメリット5選!』もご覧ください。 その際、残業時間を示す資料(タイムカードの記録など)や残業代の支払いに関する資料(給与明細など)のほか、労働時間や残業代の支払い方についての社内制度がわかる資料(就業規則など)も持参するとスムーズです。 資料を持ち出すことが難しい場合には、どのような勤務形態なのか、基本給の他に支払われている手当の内容などを可能な限り整理しておきましょう。 関連記事 ・残業代請求で必要となる証拠を徹底解説!証拠がない場合の対処法は? --- ### 残業100時間は危険な数値!過労死ラインや違法となるケースについて解説 - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-03-29 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6785 - Categories: 残業代請求 100時間という残業時間は法律でも禁止され、心身の健康にも被害が生じかねない時間数です。 残業時間や残業の違法性についてお悩みの方は、弁護士への相談をおすすめします。 「月の残業時間が100時間を超えており、健康面に懸念がある」「残業が100時間を超えつらい。自分の時間が取れない」 長時間労働の悩みは大きな問題として扱われていますが、月100時間の残業ともなると群を抜いた長さといえます。 労働基準法では、法定労働時間を原則1日8時間、1週40時間と定めています(労働基準法32条)。 法定労働時間が1週40時間のところ、100時間の残業をおこなっているということは、残業時間だけで法定労働時間の2倍以上の時間残業していることになります。 今回は、月に100時間ものあいだ残業している場合に生じるリスクや、残業が違法となるケース、相談窓口について解説します。 月100時間の残業時間は過労死ライン 過労死ラインとは、健康被害や精神障害が発生するリスクが高くなる残業時間の目安です。 2021年9月に労災認定基準が改正され、長時間の労働と過労死の関係性について、以下のような基準が設けられました。 労働の期間と時間業務と発症との関連性発症前1~6か月間にわたって、1か月あたりおおむね45時間を超える時間外労働が認められない弱い発症前1~6か月間にわたって、1か月あたりおおむね45時間を超える時間外労働が認められる場合徐々に強まる発症前1か月間におおむね100時間を超える時間外労働が認められる場合強い発症前2~6か月間にわたって、1か月あたりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合強い 参考:厚生労働省|血管病変等を著しく増悪させる業務による脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準について 100時間の残業は、業務と健康被害や精神被害の関連性が強く、過労死に発展するリスクが高いといえます。 月45時間を超える残業が続くと違法のおそれも 原則として、月45時間以上の残業が何か月も続く場合、違法とみなされるおそれがあります。 36協定の締結と届け出が必要 1日8時間、1週40時間の法定労働時間を超えて労働者が働くときには、労使協定(いわゆる36協定)を結ぶ必要があります。 36協定を結んだだけで、労働基準監督署長に届け出ていない場合や、そもそも36協定を結んでいないという場合には、法定時間を超える残業は違法となります。 36協定があっても月45時間・年360時間を超える残業は違法 36協定を結んでいても、「月45時間・年360時間」を超える残業は、原則として違法となります。 臨時的な特別の事情がある場合は、特別条項付きの36協定を結ぶことで上限を超えた残業をさせられることがありますが、その場合でも残業時間は以下の範囲内で定められていなければなりません。 特別条項付き36協定の残業時間の上限 時間外労働が年720時間以内である 時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満である 2か月、3か月、4か月、5か月、6か月のいずれの期間においても、時間外労働と休日労働を合わせて平均80時間以内にしなければならない 月45時間を超える時間外労働は、年6か月まで(1年に6回まで) したがって、月45時間を超える残業が何か月も続いている場合は、違法と判断されることもあります。 そのほかに残業が違法になるケース 36協定に関する規制以外で、違法な残業とみなされるケースもいくつか存在します。 そのほかに残業が違法となるケース 残業代が正しく計算されていない 残業100時間以外の月も残業代が出ていない みなし残業制度が守られていない いわゆる「名ばかり管理職」になっている 残業代が正しく計算されていない 従業員が月60時間を超える残業をおこなった場合は、企業の規模にかかわらず50%以上の割増率で計算された割増賃金が支払われなければなりません。 適切な残業代が支払われていない場合は、違法な残業といえるでしょう。 関連記事 ・残業代の正しい計算方法とは?基本から応用的な計算まで徹底解説! 残業100時間以外の月も残業代が出ていない 残業が100時間以外の月も、基本的に時間外労働に対する残業代は出ます。 たとえば、「先々月は80時間、先月は60時間残業だった... ... 」という場合でも、それぞれの月の残業時間に応じて残業代を受け取れます。 月60時間以上残業したときのポイントについて詳しく知りたい方は『残業60時間がきつい!残業代や違法となるケースについて解説』の記事をご覧ください。 また、残業時間が80時間を超えると、過労死のリスクが高まります。 80時間残業した場合の過労死のリスクについて詳しく知りたい方は『残業80時間は過労死ライン!過労死ラインや違法となるケースについて解説』の記事をご覧ください。 みなし残業制度が守られていない みなし残業(固定残業)とは、実際の残業時間にかからわず、あらかじめ決められた一定時間の残業代を給与に含めて支払う制度です。 一定時間を超えて残業しているのにもかかわらず、超過分の残業代が支払われていないケースは違法といえます。 こちらの内容について詳しく知りたい方は『みなし残業(固定残業)とは?違法になるケースや違法な残業への対処法』の記事をご覧ください。 いわゆる「名ばかり管理職」になっている 労働基準法では、管理監督者に該当する管理職であれば、労働時間、休憩および休日に関する規定は適用されないと定められています(労働基準法41条2号)。 しかし、すべての管理職が管理監督者に該当するわけではありません。 労働基準法上の「管理監督者」に該当するかどうかは、「責任や権限」「職務内容」「待遇面」などによって判断されることになります。 いわゆる「名ばかり管理職」に該当しており、残業代が支払われない場合は、違法といえます。 こちらの内容について詳しく知りたい方は『管理職は残業代が出ない?残業代がもらえるケースや基準を解説』の記事をご覧ください。 長時間の残業や未払い残業代の対処法 100時間におよぶ残業や、残業代が未払いになっているということでお悩みの方は、すぐに以下のような対処法をとることをおすすめします。 長時間の残業や未払い残業代の対処法 退職・転職する 労働組合や労働基準監督署に相談する 弁護士に相談する 退職・転職する 100時間以上残業をしているという場合は過労死ラインに相当するため、過労死のリスクが非常に高くなり、命の危険があります。 従業員に100時間残業を強いるような企業であれば、今後より長い時間残業させられるおそれもあるでしょう。 会社側の改善が見込めそうにないという場合には、健康なうちに会社を退職したり、転職したりすることをおすすめします。 未払いの残業代が残っているというケースでも、退職後に残業代を請求することはできるので安心してください。 ただし、在職中であれば、未払い残業代の証拠を集めやすいというポイントもあります。 こちらの内容について詳しく知りたい方は『残業代請求は退職後でも可能!注意点や退職後の証拠の集め方を解説』の記事をご覧ください。 労働組合や労働基準監督署に相談する 個人で対処することが難しいという場合には、労働組合や労働基準監督署に相談することで、状況の改善が見込めることもあります。 残業によって健康被害が生じているという際には、労災が認められることもあるので、労働基準監督署に相談してみることをおすすめします。 弁護士に相談する 「残業代が未払いのままで困っている」という場合には、弁護士に相談することをおすすめします。 弁護士に相談すれば、代理で会社と交渉を進められます。 健康被害を受けているという場合には、労災保険の申請について、弁護士がアドバイスをしてくれるというメリットもあります。 100時間を超える残業時間や残業代については弁護士に相談 原則的には、残業時間の上限は、月45時間・年360時間です。 そのため、月100時間の残業は、月の上限の2倍以上残業していることになり大変危険な状態といえるでしょう。 残業時間や残業代について疑問点やお悩みがある方は、弁護士に相談することをおすすめします。 弁護士に相談すれば、「未払い残業代があるかどうか判断してもらえる」「会社に対して未払い残業代を代理でおこなってくれる」「労働審判などの法的対応をスムーズに任せられる」といったメリットがあります。 無料相談を受け付けている弁護士事務所もありますのでまずは弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。 ほかの残業時間に応じたポイントを知りたい方へ 「残業が100時間を超え、200時間に達してしまいそう」という方は、命の危険がありますので退職や転職の検討をおすすめします。 残業が月200時間に達した際のポイントをまとめました。ぜひご覧ください。 残業200時間は命の危険!過労死ラインと対処法について解説 --- ### 退職代行サービスとは?メリット・デメリットや選び方を弁護士が解説 - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-06-27 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6786 - Categories: 退職代行 退職代行サービスについて徹底解説!退職代行の種類とは?メリット・デメリット、利用のリスクについてもわかります。実際に利用したときの手続きの流れも網羅。具体的な相談先も紹介! 「退職代行サービスとは?」「利用するメリット・デメリットは?」 最近よく耳にする退職代行サービス。利用を考えても、サービスの詳細がわからないと不安だと思います。 退職代行を行っている業者は複数あり、価格だけを判断基準にしてしまうと、違法の退職代行サービスを利用してしまうおそれもあります。 今回の記事では、退職代行サービスについて詳しく知りたい方に向けて、退職代行サービスの内容や手続きの流れ、退職代行業者のそれぞれの特徴について詳しく解説します。 退職代行サービスとは? 退職代行のサービス内容 退職代行サービスとは、退職の手続きを自分の代わりに行ってくれるサービスです。 自ら会社に出向いて会社の上司に退職の意思を伝えたり、面倒な手続きを行ったりする必要はありません。 退職代行サービスが行う主な内容は、自分が退職したいと考えていることを会社へ伝えることです。場合によっては退職願・退職届、退職に必要な書類を会社に送付することも行います。 昨今は、慰留ハラスメントが社会問題となっています。 慰留ハラスメント 退職の意志を示した従業員に対して、会社側が必要以上の引き留めを行うハラスメント。悪質なものでは「ここで辞めたらどこでもやっていけないぞ」「この業界で生きていけないようにしてやる」等と脅迫して退職を引き留めようとするケースもある 「退職したいと考えてはいるものの、職場に言いにくい」という理由で不当な職場環境に耐えている方や、慰留ハラスメントが怖くて退職の意思を伝えられないという方に退職代行サービスはよく利用されています。 そもそも、無期契約の労働者の退職の自由は法的に認められています。 会社へ退職の理由を説明する必要もなく、いつでも退職が可能です。退職日の2週間以上前に退職の意思を会社へ伝えるだけで、会社との雇用関係は解消されます(民法627条1項)。 退職の意思を伝える方法は、自ら会社へ出向いて伝える以外に、電話やメールなどがあります。退職代行サービスなどの第三者を通じて退職の意思を伝えることも可能です。 原則として、退職代行サービスができることは、労働者の退職の意思を伝えたり、書類を渡したりすることだけです。 退職代行サービスが労働者に代わって交渉したり、書類に記入したりすることはできません。仮に、会社から「退職は認めない」と言われた場合、法的に問題があったとしても反論することはできません。 ただし、労働組合の一種である退職代行ユニオンや弁護士に退職の代行を依頼すると、会社との交渉が可能です。有給休暇の消化や退職日の調整が可能になります。 最近は専門業者も登場 退職の代行は、元々退職に関するトラブルの一環として弁護士が対応していた業務です。 最近では、会社に対して労働者の退職の意思を伝えることは弁護士資格がなくても可能であると考え、退職代行の専門業者も登場しています。 専門業者が退職を代行することは非弁行為ではないかという懸念も持たれており、トラブルに発展するケースもあります。 非弁行為や違法と判断されるリスクについては、次の見出しで詳しく解説していきます。 退職代行業者は違法と判断されるリスクがある 先述の通り、退職代行業者による退職代行には非弁行為のリスクが伴います。 非弁行為とは、弁護士でない人が報酬を目的として法律事件に関する法律事務をおこなうことです。 弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない 弁護士法72条 一般的に退職代行業者は報酬を目的として退職代行サービスをおこなっており、退職に関する交渉をおこなう行為は「雇用契約の解除」という法的効果をもたらす可能性があります。 つまり、弁護士資格のない退職代行業者が交渉や話し合いなどを行うことは、違法行為となる可能性があるということです。 退職代行サービスの手続き・流れ 一般的な退職代行サービスの手続きの流れは以下の通りです。 退職代行サービスの手続きの流れ 退職代行サービスに相談 担当者との打ち合わせ サービス費用の支払い・振込 退職代行サービスが会社へ連絡 退職代行の流れについては『退職代行の流れは?手順を弁護士が徹底解説』の記事で詳しく解説しているので、併せてご覧いただくと理解が深まるでしょう。 (1)退職代行サービスに相談 退職代行サービスに退職の代行の相談をします。直接出向いて相談する方法の他、電話、メール、LINEでの相談を受け付けているところもあります。 無料で相談できる退職代行サービスもあります。 退職代行を利用するか決めかねている方は、まず退職代行業者に相談してみることをおすすめします。 退職代行業者に相談する際に確認すべき内容について知りたい方は『退職代行の相談時に確認すべき内容や選び方を解説!』の記事をご覧ください。 (2)担当者との打ち合わせ 退職代行サービスの利用を決定したら、担当者と打ち合わせをします。退職日をいつにするのか、有給休暇をいつ消化するのかなど詳細な内容を決めていきます。 (3)サービス費用の支払い・振込 一般的に退職代行サービスが具体的な行動をはじめるのは、サービス費用の支払いが完了した後です。 後払いができるのか、返金保証は付いているのかも確認しておきましょう。 (4)退職代行サービスが会社へ連絡 退職代行サービスが、労働者の退職の意思を会社へ連絡します。会社へ渡す書類がある場合は、事前に預けておきましょう。無事退職が承認されれば、退職代行サービスから連絡があります。 退職代行サービスのメリット・デメリットは? メリット①|退職への心理的なハードルが下がる 退職代行サービスのメリットのひとつは、退職代行サービスを利用することで会社に出向いて退職の意思を伝える必要がなくなるというものです。 つまり、退職への心理的なハードルを下げることができるわけです。 メリット②|慰留ハラスメントを阻止できる 慰留ハラスメントを阻止できることも退職代行サービスのメリットです。 会社から何故退職するのかを執拗に質問されたり、退職日を先延ばしにされたりすることがなくなります。 デメリット①|費用がかかる 退職代行サービスのデメリットは、費用がかかることです。 退職代行サービスは民間企業が運営しており、公的なサービスではありません。 会社とトラブルが発生して結果的に退職が出来なかった場合でも、退職代行サービスへ料金を支払う必要があります。 後払いが出来たり返金保証が付いた退職代行サービスがあるので、費用が気になる場合には検討してみましょう。 また、本来退職は労働者が自由に行うことができるものです。先述の通り、法律上、会社の承認がなくても、退職の申出をした日から起算して原則として14日を経過したときは、退職となります。 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。 民法627条 もしトラブルなく退職できる可能性があるのなら、まずは代行を依頼せずに退職したほうが良いと言えるでしょう。 関連記事 ・退職代行サービスの金額相場はいくら?3つの相談先と対応の違いを解説 デメリット②|トラブル化するおそれがある 退職代行を依頼することによってかえってトラブル化してしまうおそれがあることもデメリットのひとつです。 非弁行為として退職そのものが無効になるリスクや、損害賠償されてしまうリスクはゼロではありません。 また、退職代行を使った急な退職を理由に「懲戒解雇」をする不当な会社もいないわけではありません。 ただし、急な退職を理由に「懲戒解雇」をすることは、よほどの悪質性がないと、違法であり無効になります。 退職代行を利用したことによるトラブルについて詳しく知りたい方は『退職代行で起こるトラブルとは?未然に防ぐ方法を弁護士が解説』の記事をご覧ください。 退職代行業者・退職代行ユニオン・弁護士... どこに頼むべき? 退職代行サービスは、大きく分けると以下の3種類に分類されます。 退職代行サービスの種類 退職代行業者 退職代行ユニオン 弁護士 退職代行業者の特徴 退職代行業者にできることは、会社へ退職の意思を伝えることや書類の受け渡し程度です。会社と打ち合わせをしたり交渉したりすることはできません。 先述の通り、基本的には弁護士以外の人が法律事務を行うことはできません。 損害賠償請求されたり懲戒解雇されたとしても、退職代行業者にはどうすることもできないということです。 仮に、悪質な退職代行業者が非弁行為を行ってしまえば、退職の手続き自体が無効になる可能性があります。 退職代行ユニオンの特徴 退職代行ユニオンは、合同労働組合が運営する退職代行サービスです。 退職したいと考えている労働者が合同労働組合に加入することで、合同労働組合を通じて退職の意思を伝える仕組みになります。 労働組合なので、会社との交渉なども行えます。労働組合には法律上、「団体交渉権」という権利が保障されています。 勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。 日本国憲法28条 労働組合の代表者又は労働組合の委任を受けた者は、労働組合又は組合員のために使用者又はその団体と労働協約の締結その他の事項に関して交渉する権限を有する。 労働組合法6条 労働組合は、会社と交渉を行っても非弁行為にはならないということです。 弁護士の特徴 弁護士に退職の代行を依頼すれば、正式な代理人として退職の手続きを任せることができます。 有給休暇をいつ消化するのか、退職日をいつにするかといった交渉も可能です。また退職金や未払いの残業代などがあれば併せて請求することもできます。 会社が退職をどうしても認めない場合や退職日を不当に引き延ばす場合などのトラブルに発展した場合でも、労働審判や裁判に移行することができます。 関連記事 ・退職代行を使っても退職金はもらえる?弁護士が解説 ・退職代行を利用しても残業代は請求できる?【弁護士が解説】 退職代行なら弁護士に依頼するのがおすすめ 安心して退職の代行を任せたいときには弁護士に依頼するのがおすすめです。 退職の手続きをすべて任せられる上に、法律の専門家である弁護士が対応することで会社は違法な対応がしづらくなります。 会社にとって、労働者が弁護士を選任したという事実は、労働審判や訴訟に発展するかもしれない可能性という点で非常に大きなプレッシャーとなります。 つまり、トラブルに発展する可能性が低くなり、また仮にトラブル化したときでも安心して対応を任せることができるというわけです。 退職代行についてお悩みなら一度弁護士に相談してみるのがおすすめです。 関連記事 ・退職代行を弁護士に依頼するメリットは?費用・代行業者との違いまで完全解説! --- ### 会社から突然解雇されたらどうする?違法な解雇への対処法や相談先は? - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-03-27 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6778 - Categories: 不当解雇 突然の解雇は無効となりやすく、手続的にも違反が起きやすいものです。しかし、わずかながら違法とならない場合もあり、迅速な行動も求められるため、突然の解雇に遭った場合には、解雇理由を確認したうえで弁護士に相談してください。 「社長に呼び出され明日から来なくて良いと言われた」「クビ宣告されたが、違法ではないのか」 会社から突然解雇された方の中には、解雇に納得がいかない方も多いのではないでしょうか。 使用者(会社)は、労働者を自由に解雇することはできません。突然の解雇には法律上多くの問題があるため、違法となる可能性が非常に高いです。 そのため、突然解雇された場合は、解雇の違法性を主張するための行動を起こすことが大切です。 この記事では、会社が労働者を解雇できる要件について説明し、解雇が不当と感じる場合に取るべき対処法と相談窓口を解説します。 突然の解雇は基本的に違法!解雇の要件とは 解雇の要件とは 解雇とは、使用者が一方的に労働者との労働契約を解消することを指します。 解雇が自由に認められてしまうと、労働者はいつ契約を切られるかわからず、非常に不安定な状態になります。 そのため、使用者が労働者を解雇するためには、①客観的に合理的な理由と②社会通念上の相当性が必要であると規定されています(労働契約法16条)。 正当な解雇とみなされるハードルは高く、「身勝手な理由による解雇は許されない」イメージです。 改善の機会が与えられない解雇は違法となりやすい 解雇の理由(客観的に合理的な理由)の典型例は、勤務態度の問題(無断欠勤など)、労働者の能力不足や勤務成績の不良といった事情がある場合です。 しかし、そのような事情があるだけで解雇が認められることはあまりなく、その状態を改善するために使用者がどのような対策を取ったかが問われます。 つまり、使用者側の行動も踏まえて、解雇がやむを得ないか(社会通念上相当かどうか)が判断されるということです。 たとえば、営業部署で成績不良であっても、それだけを理由に突然解雇することは認められず、使用者には適性に合った職種への転換などが求められます。 実際の裁判例でも、成績不良を理由に解雇された事案につき、さらなる業務改善の機会の付与が必要であったこと等を理由に、解雇を違法・無効と判断したものがあります(日本アイ・ビー・エム事件東京地判平成28年3月28日)。 解雇は事前に予告しなければ違法となる 解雇の要件である①客観的に合理的な理由と②社会通念上の相当性がある場合でも、使用者が労働者を解雇する場合には「解雇予告」という手続きをとらなければなりません。 使用者は、労働者を解雇しようとする場合、少なくとも30日前にその予告をする必要があります(労働基準法20条1項本文)。 つまり、基本的に解雇される30日前には事前に予告されるはずであり、突然の解雇は、例外的な場合を除き、手続きにおいても違法となるということです。 突然の解雇でも違法にならないことはある? 突然の解雇は違法となる場合が多いですが、例外的に違法とならないこともあります。 例外的に違法とならないのは、以下のケースです。 突然の解雇が違法とならないケース 解雇予告手当が支払われている 事業の継続が不可能となった場合 労働者の責めに帰すべき事由に基づいて解雇する場合 特定の労働者に該当する 解雇予告手当が支払われている場合 会社から解雇予告手当が支払われる場合は、突然の解雇であっても違法にはなりません。 解雇予告に関して規定している労働基準法20条1項には、「30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない」と定められています。 つまり、30日分の平均賃金を支払えば30日前の予告は不要ということです。これにより、突然の解雇も手続きとして可能となります。 なお、解雇予告と解雇予告手当の組み合わせも許されており、平均賃金を支払えばその分解雇予告の日数を短縮できるとされています(労働基準法20条2項)。 たとえば、15日前に解雇予告をし、15日分の解雇予告手当を支払うという手続きも可能です。 事業の継続が不可能となった場合 会社が地震・火災などの天変地異で事業の継続が困難になった場合は、突然解雇しても違法にはなりません。 従業員を解雇するには、労働基準監督署長の認定を受ける必要があります。 労働者の責めに帰すべき事由に基づいて解雇する場合 分かりやすく言うと、労働者に重大な責任がある場合です。 たとえば、職場での横領・殺人などの犯罪行為、高卒の人が大卒と詐称して入社するなど経歴詐称などが挙げられます。 特定の労働者に該当する場合 特定の労働者 日雇い労働者(継続期間が1か月未満) 契約期間が2か月以内の者 4か月以内の季節労働者 試用期間中の者(14日未満) 期間を超えて働いていた場合は、解雇予告手当をもらうことができます。 突然の解雇でも社会通念上相当と認められる場合 以上のように、手続き上は例外的な場合も存在します。 しかし、その場合でも、「客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であると認められない限り解雇は無効となる」という規制は及びます。 そのため、改善の機会を与えなくとも構わないと認められるような事情がある場合を除き、やはり突然の解雇は違法と判断されることとなります。 もっとも、いわゆる「懲戒解雇」の場合には突然の解雇もやむを得ないとされることがあります。 懲戒解雇の場合 懲戒解雇は懲戒処分として行われる解雇のことで、単なる能力不足等を理由にするものではなく、職場規律や秩序への重大な違反に対して制裁として行われます。 そのため、懲戒解雇は「労働者の責めに帰すべき事由」による解雇として労働基準監督署長の認定を受けたうえで、解雇予告・解雇予告手当の支払いといった手続きをとらずに解雇されることが多くあります。 もっとも、懲戒処分にも「客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であると認められない限り無効となる」というルールがあります(労働契約法15条)。 懲戒解雇には、懲戒に関するこの規制と解雇に関する規制の両方がかかるため、普通の解雇よりも有効性が厳しく判断されます。 したがって、懲戒解雇の場合も、始末書等の軽い懲戒処分から行われ、改善されなければ段階的に重い処分となり、最終的に懲戒解雇に至ることが一般的です。 関連記事 ・懲戒解雇されたら弁護士に相談!弁護士に相談すべき理由を解説 突然解雇されたときの対処法 突然の解雇について金銭の支払いを求める 解雇が違法・無効となれば、その解雇はなかったことになり、職場に復帰することができますが、加えて、会社に対して慰謝料などの損害賠償を請求することができます。 ただし、違法な解雇でも慰謝料の請求が認められない例も多く、慰謝料額についても明確な基準はありません。請求するのであれば、専門家に依頼することが最適でしょう。 また、解雇予告がされていない場合については、解雇予告手当の支払いを求めることもできます。この場合、労働基準監督署に相談することが、費用もかからず比較的迅速な解決も望めるため有効と言えます。 もっとも、解雇が無効であるとの主張は難しくなるため、慎重な検討が必要だと言えます。できれば、まずは専門家に、解雇の有効性について相談することをおすすめします。 突然の解雇は無効となりやすく、手続きにおいても違反が起きやすいものです。 しかし、違法とならない場合もあり、迅速な行動も求められるため、突然の解雇に遭った場合には、解雇理由を確認したうえで専門家に相談しましょう。 関連記事 ・不当解雇されたら裁判で慰謝料を請求!損害賠償の相場と相談窓口 ・解雇予告手当がもらえない!法的にもらえないケースや請求方法を解説! 突然解雇されたら解雇理由証明書の交付を請求する 突然の解雇に納得がいかない場合は、解雇理由の確認のため、会社に解雇理由証明書の交付を請求してください。 解雇理由証明書は、その名の通り解雇の理由が記された書面であり、労働者が請求すれば、使用者には交付の義務があります(労働基準法22条1項)。 口頭で解雇理由を聞かされていた場合でも、解雇理由証明書を請求し、解雇理由を明らかにしましょう。 関連記事 ・解雇理由証明書を請求する方法は?請求するために知っておくべきことを解説 突然の解雇が違法かどうか検討する 受け取った解雇理由証明書から、解雇理由が違法かどうか検討しましょう。 なお、使用者から解雇理由証明書の交付を受けたとしても、詳細な理由が記載されているとは限りません。 たとえば、「就業規則の第○条に該当したため」といったように、就業規則の該当条文が書かれているだけということもあります。 解雇理由に①客観的に合理的な理由と②社会通念上の相当性がない場合は、違法である可能性が高まります。 突然の解雇について違法性を争う場合の相談窓口は? 突然解雇され、違法性を争うことをお考えの方は、弁護士や労働組合などの専門家へ相談・依頼することが効果的です。 弁護士 弁護士は突然の解雇について、その違法性を整理し法的にまとめたうえで、労働者の権利を主張するために活動します。 無料相談をしている弁護士・法律事務所もあるため、探してみるといいでしょう。 弁護士に相談するメリットは、労働審判や裁判での勝率も視野に入れた相談ができることです。 加えて、弁護士から解雇の違法性を主張することで、自分自身で対応するよりも解雇を撤回してもらえる可能性が高まります。 解雇の違法・無効を主張し、権利を実現することを主眼に置くのであれば、適した相談先と言えるでしょう。 ただ、あくまで解雇の法的な問題点を追求していくため、解雇が無効となり職場復帰をしたあとのことまで見越した活動は難しい面があります。 関連記事 ・不当解雇は弁護士に相談すべき?相談するときのポイントを解説 労働組合 職場復帰を望むのであれば、労働組合に相談するという選択肢もあります。 労働組合は労働者の処遇の向上のために使用者に対して働きかけを行う団体で、主な活動は「団体交渉」と呼ばれる使用者との交渉です。 団体交渉には憲法・労働組合法上の裏付けがあり、一定の法的な効力があります。また、解雇の違法性のほか、職場復帰したあとの条件等まで含めて交渉することができ、柔軟な解決が期待できます。 関連記事 ・不当解雇の無料相談窓口7つを比較!弁護士やハローワーク・労基署・労働組合の違いは? --- ### 有給休暇が自由に取れない!ポイントと対処法を弁護士が解説 - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-03-04 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6773 - Categories: 労働問題全般 有給休暇は法律で与えられた労働者の権利であり、有給休暇の申請を拒否することは「違法行為」です。上司から有給休暇の取得を拒否された場合は、社内窓口などに相談してしっかりと対応することをおすすめします。 「理由を言わないと有給休暇が取れない」「有給休暇を申請したのに、人手不足を理由に拒否された」 会社に有給休暇の取得を申請しても、断られてしまったという経験がある方も多いのではないでしょうか。 有給休暇(年次有給休暇)は労働者の権利であり、原則として会社の承認や許可を得ずに取得できます。 しかし、有休を拒否されたからといって、必ずしも違法とは限りません。 今回は有給休暇について知っておくべきポイントや、有給休暇取得を拒否されてしまったときの対処法について解説します。 有給について知っておくべきポイント 有給が付与される要件は2つ 企業は労働者が以下の要件を満たす場合、原則として10日の有給休暇を付与しなければなりません(労働基準法39条)。 有給が付与される要件 入社から6か月継続して勤務をしている 規定労働日の8割以上出勤している この要件については、アルバイトやパートであったとしても認められます。 有給を申請する理由や時季は自由 労働者が有給を申請するとき、理由を申告する必要はありません。 つまり、有給の取得について理由を説明しているのにもかかわらず、上司が執拗に理由を聞いてくるという場合はハラスメント行為に該当する場合があります。 また、有給休暇は基本的に、労働者が請求した日に利用することができます。 ただし、繁忙期であるなど、労働者が休んでしまうと運営がパンクしてしまうという場合には、企業は有給休暇の取得をずらすように労働者に求めることができます(時季変更権)。 もちろんこの場合でも、企業側に明確な時季を説明されなかったり、「そもそも繁忙期に有給休暇は取得できない」と言われてしまったりした場合には、違法であるといえるでしょう。 有給は年5日の取得が義務付けられている 年10日以上の年次有給休暇が付与される従業員について、企業は年5日の有給休暇を取得させなければなりません。 有給休暇を取得させる時季については企業側が指定できますが、労働者側の意見を尊重する必要があるとされています。 最低でも5日間の取得が義務付けられているだけで、「年5日までしか有給休暇が取得できない」というわけではないところに注意しておきましょう。 参考:厚生労働省「年5日の年次有給休暇の確実な取得」 有給休暇の時効は2年 有給休暇には2年の時効があり、支給から2年を過ぎた場合は消滅してしまうところに注意が必要です。 原則としては、消化しなければ有給はなくなってしまうと考えておきましょう。 なお、時効が2年であるため、付与されてから翌年までは繰り越すことができるということもポイントです。 有給休暇の買取は原則違法 有給休暇の買取について耳にする場面も多いですが、労働者が同意している場合であっても、一定の条件以外では違法です。 有給休暇の買取が違法にならないケースとしては、以下のような条件のときが挙げられます。 有給休暇の買取が違法とならないケース 時効の2年で消化できなかった場合 退職前に消化できなかった場合 労働基準法の規定を上回って付与した場合 など もちろん、労働者側が会社に買取を請求したり、企業側が一方的に買い取ったりということもできません。 有休の買取で支払った買取代金に関しては、通常の給料ではなく賞与の扱いになることも重要なポイントです。 有給休暇が取れないときの対処法 「有給を自由に取れない」「有給休暇を申請しても拒否されてしまった」などの場合には、以下のような対処法をとることをおすすめします。 有給休暇が取れないときの対処法 拒否された場合は理由を聞く 社内の相談窓口や労働組合に相談する 労働局や労働基準監督署に相談する 退職や転職を検討する 弁護士に相談する 拒否された場合は理由や代わりの日を聞く 有給休暇取得を拒否されてしまったという場合には、断られた理由や代わりにいつであれば取得できるかを聞いておくことが重要です。 「企業側に取得時季をはぐらかされてしまった」「有給休暇なんてものはないなどと言われてしまった」という場合には、違法性が高いので書面などで証拠として残しておきましょう。 社内の相談窓口や労働組合に相談する もし「人手不足だから」「有給休暇なんてないから」などの理由で有給の取得を拒否された場合には、労働環境そのものに問題があると考えられます。 労働組合に加入していたり、社内に人事部やコンプライアンス部といった相談窓口があったりした場合には、会社の対応や職場の労働環境の改善などを相談してみるのも一つの手です。 労働基準監督署に相談する 社内で解決が見込まれそうにないという場合には、労働基準監督署に相談してもいいでしょう。 外部機関に相談する際には、「有給休暇が付与されているかどうか」「有給休暇の取得の仕方」といった必要な情報をまとめておきましょう。 関連記事 ・有給トラブルの相談は労働基準監督署がおすすめ!相談の流れを弁護士が解説 退職や転職を検討する 忙しいという理由で有給休暇を取得できず、そのまま働き続けて健康面に影響が出てしまうということも考えられる場合には、退職や転職を検討してみてはいかがでしょうか。 退職前に有給休暇を取得するという場合には、企業側が時季変更権を主張することはできません。 業務の引き継ぎなども済ませておけば、スムーズに退職や転職をおこなうことができるでしょう。 弁護士に相談する 「有給取得についてハラスメント被害を受けた」「退職代行を依頼して有給を消化したい」という場合には、弁護士への相談をおすすめします。 弁護士であれば、法的なトラブルについて対応できるほか、代理で会社と交渉できます。 弁護士に依頼する際は、「就業規則や社内規定」「有給取得を妨害された証拠」「残業代の未払いなどのほかのトラブル」などについて確認しておきましょう。 関連記事 ・労働問題に強い弁護士に相談!弁護士に相談するメリットや探し方 まとめ 有給休暇は法律で与えられた労働者の権利であり、有給休暇の申請を拒否することは、原則として違法行為にあたります。 もし有給休暇の申請を拒否されてしまったという場合には、社内の相談窓口に対応を求めたり、弁護士に依頼したりといった対処法をとることをおすすめします。 弁護士であれば、ほかの労働問題にも対応できるほか、会社と代理で交渉できるというメリットがあります。 無料相談をしている弁護士・法律事務所もあるため、探してみてはいかがでしょうか。 --- ### 外資系企業でリストラされそう!対処法と弁護士に相談するメリット - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-06-27 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6774 - Categories: 不当解雇 外資系企業でのリストラでは、パッケージという金銭などの条件が提示されることがあります。パッケージ内容が適切であるかどうかの判断は、弁護士に相談することをおすすめします。 「外資系企業に勤めているが、クビといわれてしまった」「退職パッケージを提示されたが、適正な条件かどうかわからない」 この記事では、外資系企業におけるリストラのポイントや、弁護士に相談するメリットについて解説します。 外資系企業が日本でリストラをおこなうとき、「解雇」ではなく「退職勧奨」の形を取ることが多いです。 退職勧奨をされたとき、提示された条件に合意して退職していいのかどうかお悩みの方もいるでしょう。 この記事を読めば、外資系企業でリストラされたときの対処法がわかります。ぜひ最後までご覧ください。 外資系企業におけるリストラのポイント 外資系企業におけるリストラのポイントとして、知っておくべきことが3点あります。 外資系企業におけるリストラのポイント 外資系企業でも日本の労働法が適用される PIP(業務改善プログラム)が課される場合がある パッケージとは特別退職金などのことを指す 外資系企業でも日本の労働法が適用される 外資系企業であっても、日本国内で企業活動をおこなう場合は、日本の法律が適用されます。 これはリストラにおいても同じで、予告期間もなく従業員を解雇したり、退職を強要することは認められていません。 もちろん、客観的に合理的な解雇事由がなく、社会通念上相当であるという理由がなければ、解雇は無効であると判断される場合があります。 解雇が無効になるケースについて詳しく知りたい方は『解雇を無効にしたい!無効となるケースや対処法を解説』の記事をご覧ください。 PIP(業務改善プログラム)が課される場合がある 外資系企業では、「PIP(業務改善プログラム)」を課して退職勧奨をおこなう場合があります。 PIPには具体的な課題が記されており、場合によっては、その課題について労働者が成果を挙げられなかった際に「減給や解雇などの不利益な処遇を受けることを認める」といった内容にサインさせられるケースがあります。 期間が短く設定されているなど、そもそもの課題達成が難しい場合もあり、PIPは不当な退職勧奨であるという見方もあります。 退職勧奨について詳しく知りたい方は『退職勧奨(勧告)とは?違法になるケースと対処法を解説!』の記事をご覧ください。 パッケージとは特別退職金などのことを指す PIPで退職勧奨をおこなった後、外資系企業は労働者に自主退職を促すために、「パッケージ」という金銭などの条件を提示することがあります。 パッケージについて相場などはありませんが、以下のような要素がパッケージに影響を与えると考えられています。 パッケージに影響を与える要素 これまでもらっていた給与額 役職の高さや会社への貢献度 会社の経営状態や財務状況 など リストラの対象となったときの対処法 「退職パッケージを提示され、退職勧奨されてしまった」という場合には、以下のような対処法をとることをおすすめします。 リストラの対象となったときの対処法 退職合意書にはサインしない 退職する場合はパッケージの条件が適正かどうかを判断する 退職したくない場合や退職を強要されたら弁護士に相談する 退職合意書にはサインしない 会社から退職合意書を提示されたとしても、その場でサインをしないことが重要です。 一度合意書にサインしてしまうと、後になってパッケージの内容を交渉したいときなどに不利になってしまうおそれがあります。 内容を持ち帰って検討し、納得のいく条件であった場合にのみサインをするようにしましょう。 退職する場合はパッケージの条件が適正かどうかを判断する 「退職を受け入れて転職する」などという場合には、提示されたパッケージの内容面が適正かどうかをチェックしましょう。 内容面についてわからないところがあったり、金額や条件が適正ではないと感じたりした場合には、弁護士に相談することをおすすめします。 退職したくない場合や退職を強要されたら弁護士に相談する 退職パッケージを受け入れずに会社に残りたい場合は、退職合意書にサインしないという意思を明確にしておきましょう。 その際、「毎日上司が退職を勧めてくる」「退職拒否を理由に閑散とした部署に飛ばされる」といった処置をとられた場合には、違法な退職強要にあたる場合があります。 そういった場合には弁護士に相談することをおすすめします。 関連記事 ・退職強要とは?退職勧奨との違いと退職強要にあたる行為を解説! 弁護士に相談するメリット 先述の通り、退職パッケージを提示された際には、弁護士への相談を検討してみてはしてはいかがでしょうか。弁護士に相談すれば、以下のようなメリットが期待できます。 弁護士に相談するメリット 退職パッケージの増額交渉ができる 退職の強要や不当解雇について反論できる 労働トラブルについて法的請求ができる 転職活動に専念できる 退職パッケージの増額交渉ができる 弁護士に依頼すれば、パッケージの内容が適正であるかどうかを法的に判断し、場合によっては会社に増額を交渉できます。 外資系企業であれば、企業内弁護士がついていることも十分に考えられるため、法律のプロである弁護士に交渉を任せることで、会社側と対等に交渉を進められます。 退職の強要や不当解雇について反論できる もし退職パッケージを拒否したことで退職を強要されたり、突然解雇されたりなどの不利益な扱いを受けた場合は、弁護士が企業に対して違法性を主張できます。 弁護士に依頼することで、復職できたり、会社から解決金を受け取れたりする場合があります。 関連記事 ・不当解雇の解決金(和解金)相場は?実例もご紹介! 労働トラブルについて法的な請求ができる 弁護士であれば、退職パッケージに関するトラブル以外にも対応できるというメリットがあります。 たとえば、「未払いになっている給料を請求したい」「残業代を請求したい」といった労働トラブルも弁護士に依頼することができます。 転職活動に専念できる 退職自体は受け入れるという人のなかには、すぐに転職活動を進めたいという人も多いと思います。 弁護士に法的交渉を任せることで、転職活動に専念できるというメリットがあります。 弁護士に相談するかお悩みの方へ 弁護士に相談するのは、ハードルが高いとお考えの方も多いと思います。 不当解雇の弁護士相談を成功させるポイントや弁護士費用についてまとめました。 不当解雇は弁護士に相談すべき?相談するときのポイントを解説 まとめ 外資系企業であっても、解雇のルールには日本の労働法が適用されます。 また、退職パッケージを提示されても、すぐに退職合意書にはサインせず、内容を確認することが重要です。 もし勤めている外資系企業から退職勧奨を受けているという方は、弁護士への相談をおすすめします。 --- ### 解雇予告通知書とは?受け取った時に確認すべきことを解説! - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-05-24 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6764 - Categories: 不当解雇 解雇予告通知書について徹底解説!解雇の証拠になる?解雇理由証明書との違いとは?不当解雇されてしまった場合の撤回や慰謝料請求の方法についても解説しています。 解雇予告通知書とは、使用者が労働者に対して解雇を予告するための書類です。 解雇予告通知書が渡された場合は、記載内容や就業規則を確認し、今後どうすべきか弁護士に相談することが大切です。 この記事では、企業が解雇予告通知書を交付する意味や、解雇予告通知書を受け取ったらどのように行動するべきか詳しく解説しています。 解雇予告通知書を渡されたことに疑問を感じている方は、本記事の内容を参考にしてください。 解雇予告通知書とは? 会社が労働者に解雇予告通知書を交付するのは、なぜなのでしょうか。 解雇予告通知書とは 解雇予告通知書とは、使用者(会社)が労働者に対して解雇を予告するための書類です。 解雇予告通知書は、法律で交付が義務づけられておらず、交付しなかったとしても会社側が罰則を受けることはありません。 そもそも解雇の通知方法には法律上の決まりはないため、会社としては口頭で解雇を告げることも可能です。では、会社が解雇予告通知書を交付するのはなぜなのでしょうか。 会社が労働者に解雇予告通知書を交付する理由は、法律上のトラブルを避ける目的があるからです。 使用者が労働者を解雇する場合には、「30日以上前に労働者に対して解雇を予告しておかなければならない」と定められています(労働基準法20条)。 解雇の予告は口頭でも可能ですが、解雇となった労働者から「解雇の予告をされていない」と主張されてしまうと法律違反をめぐるトラブルが起きてしまいます。 会社は、このようなトラブルを回避するための証拠として解雇予告通知書を交付するのです。 解雇予告通知書の記載内容 解雇予告通知書に記載されている一般的な記載内容は以下のとおりです。 解雇予告通知書の主な記載内容 解雇予告通知書の作成日 解雇対象者の氏名 社名・代表者名 対象者を解雇する旨の文言 解雇日 解雇理由(概要) 解雇理由にあたる就業規則 など 解雇予告通知書と解雇理由証明書の違い 解雇予告通知書と混同されがちな書類として、解雇理由証明書という書類があります。 解雇理由証明書は、会社がどのような理由で労働者を解雇したのか、解雇理由を証明する書類です。 解雇予告通知書と解雇理由証明書の違いは、解雇予告通知書はあくまで「解雇を予告する書類」であるのに対し、解雇理由証明書は「解雇に至る理由を記載した書類」です。つまり、書類の役割が異なるということです。 また、解雇理由証明書は解雇予告通知書とは異なり、労働基準法により交付が義務づけられているため、使用者は労働者から請求された場合に必ず交付しなければなりません(労働基準法22条)。 解雇予告通知書解雇理由証明書記載内容解雇を予告するもの解雇に至る理由労働基準法上の交付義務なしあり 解雇予告通知書と解雇通知書の違い 解雇予告通知書と解雇通知書はどちらも労働者の解雇を通知する書類はありますが、交付される時期が違います。 解雇通知書は、労働者の解雇を通知する書類です。 解雇予告通知書が解雇を予告した証拠として交付されるのに対し、解雇通知書は即日解雇する際に交付されます。 解雇予告通知書解雇通知書交付される時期原則解雇日の30日以上前解雇日もしくは解雇日以降労働基準法上の交付義務なしなし 解雇予告通知書を受け取った時に確認すべきこと 解雇予告通知書を受け取った場合は、慌てずに以下の点を確認しましょう。 解雇予告通知書に関して確認すべきこと 解雇日 解雇の理由 就業規則 解雇日 解雇予告通知書を受け取ったら、まず解雇日を確認しましょう。解雇日を確認すべき理由は、解雇予告手当の支払いと関係があるからです。 労働者を解雇する場合、雇用主はどんなに正当な理由があっても、30日以上前に解雇予告をしなければなりません。 もし解雇日から30日を切って解雇予告をされた場合には、原則会社から解雇予告手当を受け取ることができます。解雇予告手当について詳しく知りたい方は『解雇予告手当とは?制度の内容を弁護士がわかりやすく解説』の記事をご覧ください。 ただし、解雇予告手当は労働者全員が必ず受け取れるものではなく、解雇予告手当がもらえないケースもあります。 解雇予告手当がもらえないケースについては『解雇予告手当がもらえない!法的にもらえないケースや請求方法を解説!』の記事で詳しく解説しています。 解雇の理由 解雇予告通知書に解雇理由が記載されていた場合には、解雇理由を確認しましょう。 なお、解雇予告通知書には、大まかな解雇理由が記載されていることがありますが、具体的な理由までは記載されていない場合がほどんどです。 具体的な解雇理由を詳しく知りたい場合には、解雇理由証明書を請求することが必要です。 解雇理由証明書の請求方法については、『解雇理由証明書を請求する方法は?請求するために知っておくべきことを解説』の記事をご覧ください。 就業規則 解雇理由に「就業規則〇条に基づき解雇とします」「就業規則の第〇条〇項の定めによるため」などといった記載がされている場合は、該当の就業規則を確認しましょう。 解雇予告通知書を受け取るまで、会社の就業規則を見たことがない方も多いかもしれませんが、労働者が常時10人以上いる事業所には、就業規則の作成と届出が義務づけられています(労働基準法89条)。 会社の就業規則の確認方法について知りたい方は、『就業規則を見たことがない!就業規則のない会社は違法?』の記事をご覧ください。 不当な解雇をされたときの対処法 突然、解雇予告通知書を受け取ることになり、不当な解雇と感じることがあるかもしれません。ここでは、不当な解雇をされたときの対処法について解説します。 解雇の撤回と職場復帰を請求する 不当解雇を理由に、労働者は会社に対して解雇の撤回と職場への復帰を請求することができます。会社から納得できる対応がなければ、裁判で解雇の撤回を請求する方法もあります。 損害賠償請求をする 解雇の撤回や職場復帰ではなく、不当解雇したことに対して損賠賠償を請求する方法もあります。職場復帰をせずに退職する場合は、不当解雇された日から辞職するまでの賃金を請求することが可能です。 直接会社と交渉しても認められない場合は、労働審判や訴訟を起こすことも選択肢の1つです。 弁護士に相談する 解雇予告通知書を受け取り、不当解雇が疑われる場合は、労働問題を扱う弁護士に相談しましょう。 受け取った解雇予告通知書や就業規則を持参したうえで弁護士に相談すれば、解雇の有効性を判断してもらうことができます。 また、解雇された理由や状況を踏まえた今後の対応方法についてアドバイスをもらうことができるでしょう。 また、弁護士を選任すれば、労働者自身で会社との交渉や裁判手続きを行う必要がなく、弁護士に会社とのやり取りを一任できます。 関連記事 ・不当解雇は弁護士に相談すべき?相談するときのポイントを解説 まとめ 解雇予告通知書は、会社が労働者に解雇を予告するために交付される書面です。証拠としての役割を果たし、トラブルを避けるために交付されます。 しかし、そもそも解雇されることが不当だと感じている場合には、弁護士に相談することが重要です。 弁護士に相談することで、不当解雇にあたるか否かを判断してもらうことができます。 無料相談を受け付けている弁護士事務所もありますので、まずは弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。 --- ### 労働審判は自分でできる?自分でやる方法とメリット・デメリット! - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-03-05 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6744 - Categories: 労働問題全般 労働審判とは、個人の労働者と事業主の労働問題を解決するための制度です。弁護士に依頼せず自分でおこなう場合のメリット・デメリットについて解説します。 「自分で労働審判を起こしたいが、やり方がわからない」「労働審判は弁護士なしでも起こせるのか」 会社に対して労働審判を申し立てたい方の中に、このような悩みをお持ちの方もいると思います。 労働審判とは、個人の労働者と事業主の労働問題を解決するための制度です。 期日が原則として3回と定められているため、裁判よりも迅速な解決が望めます。 今回は、労働審判を弁護士に依頼せず自分でおこなうメリット・デメリットや流れについて解説します。 労働審判を自分で申し立てるメリットは費用面 労働審判を自分で申し立てるメリットとして、解決金や着手金といった弁護士費用がかからず安く済むことが挙げられます。 以下のようなケースであれば、労働審判を自分で申し立てることを検討してみるのもよいでしょう。 自分で申し立てることを検討できるケース 弁護士に依頼をする費用がない、もしくは請求できる額が低いなど依頼をしても費用倒れになる 紛争の内容が複雑ではなく、会社の違法性・不当性が明らかで、事実関係も明確で証拠もそろっている 請求金額が、労働契約や法の規定に基づいて形式的に決められる など 上記のケースと異なり、違法性や不法性、事実関係に争いがあるなど、法的な評価が問題となりやすい紛争は、弁護士でなければ適切な主張が難しいかもしれません。 慰謝料などの損害賠償請求をしたい場合についても、自身で会社の不法行為や損害を法的に主張・立証する必要があるため、専門知識がなければ難しい請求となってきます。 労働審判を自分で申し立てるデメリット 労働審判はもちろん自分で申し立てることはできますが、以下のようなデメリットもあります。 労働審判を自分で申し立てるデメリット 自分で申立書や証拠の準備をする必要がある 期間が短く臨機応変な対応が必要 自分で申立書や証拠の準備をする必要がある 労働審判を1人で申し立てる際には、予想される争点に関する有効的な証拠を集めたり、申立書を作成して裁判所に提出したりといった作業を自分でおこなう必要があります。 弁護士なしで自分で労働審判を起こそうとすると、かなりの手間がかかることに注意してください。 期間が短く臨機応変な対応が必要 労働審判は最大3回の期日で終了するスピーディーな審理がおこなわれます。 そのため、短い期間で法的なポイントを押さえた主張をするよう準備しておく必要があります。 また、労働審判の場では、その場において口頭で回答や主張をおこなう必要があります。 したがって、「裁判官からどのような質問が飛んでくるかを予想する」「自分の主張はどういったものかを明確にしておく」などの準備に加えて、その場その場で臨機応変に対応しなくてはなりません。 労働審判を自分で申し立てるときの手続きと流れ 労働審判を1人で申し立てるときにすべきことと労働審判の流れは、以下のようになっています。 自分で労働審判を申し立てる場合の流れ 労働審判の申し立て 会社の答弁(言い分)に対する反論 和解案や審判に対する諾否の判断 1. 労働審判の申し立て 労働審判を申し立てる最初のステップは、以下の書類を地方裁判所に提出することです。労働審判では、提出された申立書と証拠に基づいて話し合いがおこなわれるため、最も重要なステップといえます。 労働審判を申し立てるときに必要な書類 労働審判申立書 証拠書類の写し 労働審判申立書は、申し立てる内容によって異なりますが、以下のような内容を記載します。 労働審判申立書に記載すること 申し立ての趣旨(具体的な請求内容) 申し立ての理由(申立てを特定し理由付けする具体的事実を含める) 予想される争点や当該争点に関連する重要な事実 予想される争点ごとの証拠 当事者間においてされた交渉、その他の申立てに至る経緯の概要 労働審判ではスピーディーな審理を実現させるため、申し立て時点で申し立てる内容と証拠書類を可能な限り提出する必要があります。 会社側の非を証明する明確な証拠を集め、労働審判委員会を納得させる申立書ができれば、審判は有利に進みます。 2. 会社の答弁(言い分)に対する反論 訴えられた会社は、第1回目の審理までに申立書を見て答弁書を作成・提出します。 労働審判が始まると、「申立書」に沿って申立をおこなうとともに、会社側の提出した「答弁書」で納得できない部分について反論をおこないます。 双方の主張を記載した「申立書」と「答弁書」を使って、事実確認をおこない解決策を模索するのです。 3. 和解案や審判に対する諾否(承諾するか拒否するか)の判断 第1回目から第3回目までの審理の中で、和解案が出されたり審判が下されたりします。 和解案や審判の内容に納得できれば、承諾して問題解決となります。納得できない場合は和解案を拒否したり、審判に異議を申立てたりして訴訟へと移行することになります。 弁護士に依頼するメリット 労働審判は弁護士なしで利用できる制度ですが、有利に進めるためにも弁護士への依頼をおすすめします。 労働審判を弁護士に依頼するメリットとして、以下のようなものが挙げられます。 弁護士に依頼するメリット 弁護士にほとんどのことを任せられる 解決できる可能性が高くなる 証拠がない場合でも開示請求が可能 弁護士にほとんどのことを任せられる 弁護士に依頼することのメリットは、代理人としてほとんどのことを代理でおこなってくれることです。 自分で申立書を書いたり、証拠を集めたり、相手と交渉したりといった煩雑な手続きを弁護士に一任できます。 解決できる可能性が高くなる また、統計的に見ても弁護士に依頼したほうが労働審判で紛争を解決しやすくなっています。 労働審判において労働者が弁護士に依頼せず、会社側のみが弁護士に依頼していたケースでは、58. 8%で調停が成立しています。 しかし、労働者・会社側双方が弁護士に依頼していたケースでは、74. 6%で調停が成立しています(日本弁護士連合会『弁護士白書 2022年版』)。 面倒な手続きを任せられるだけでなく、トラブルの解決もしやすくなるというところがポイントです。 証拠がない場合でも適切な収集が可能 労働審判では証拠が非常に重要となります。 もし手元になかったり、会社が管理していたりする場合は、労働審判において「証拠保全」や「文書提出命令」などの手続により証拠を確保しなければならないことがあるでしょう。 弁護士であれば証拠確保のための手続きを適切に行ってくれるため、自身の手間を省きつつ証拠を入手しやすくなるというメリットがあります。 労働審判を弁護士に依頼するメリットについてさらに詳しく知りたい方は、『労働審判の弁護士費用相場は?労働審判を弁護士に依頼すべき理由』の記事もご覧ください。 まとめ 労働審判は弁護士なしで自ら申し立てることはできますが、自分で煩雑な手続きをおこなう必要があったり、審理の場で適切に法的な主張や回答をしなければならなかったりと、さまざまなデメリットがあります。 労働審判を有利に進め、トラブルについて納得のいく結果を得るためにも、費用はかかってしまいますが、弁護士に相談することをおすすめします。 --- ### 労災事故の慰謝料は会社に請求できる?労災保険と慰謝料の違い - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-06-05 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6741 - Categories: 労働災害 労災の慰謝料は、労災保険では支払われないため、会社などに請求する必要があります。労災の慰謝料でお悩みの方は弁護士に相談してください。 労災事故が起きた際は、労災保険が適用されることが一般的です。 しかし、労災保険は治療費や入院費、休業補償金は支給されるものの、精神的な苦痛を受けたことに対する慰謝料までは支給されません。 そのため、慰謝料を請求したい場合は、労災保険の申請手続きとは別に、会社などに労災の慰謝料を請求することが必要になります。 今回の記事では、労災事故における慰謝料の種類や慰謝料相場、請求可能となる要件について詳しく解説します。 関連記事 ・労災の相談はどこでできる?困ったときの相談先を紹介!無料の窓口も! 労災保険の保険給付の種類|慰謝料は対象外 労災保険の保険給付の種類とは まず、労災事故が起きたとき、労災保険で受け取れる保険給付は以下の8種類です。 労災保険で受け取れる保険給付の種類 療養(補償)給付 休業(補償)給付 障害(補償)給付 遺族(補償)給付 葬祭料・葬祭給付 傷病(補償)年金 介護(補償)給付 二次健康診断等給付 ※業務災害の場合は、補償給付・補償年金という名称となる 労災保険では、労働災害の状況に応じて、さまざまな給付が用意されています。ケガをした場合には療養補償給付、労災で仕事を休む必要が生じた場合には休業補償給付といった具合で給付が行われます。 慰謝料との違いを明確にするためにも、それぞれ簡単に見ていきましょう。 (1)療養(補償)給付 「療養補償給付」は、業務災害・通勤災害による傷病により療養するときや、労災病院、労災保険指定医療機関などで療養を受けるときにもらえる給付金です。 療養補償給付は、治療のために必要となる費用と同額です。 (2)休業(補償)給付 「休業補償給付」は、労働災害による傷病の療養のために働くことができず、賃金を受けることができない場合に受けることができる給付金です。 休業補償給付の金額としては、休業1日につき給付基礎日額(平均賃金)の60%相当額について支給されます。 給付基礎日額(平均賃金)の計算方法 給付基礎日額(平均賃金)=災害発生日以前の3か月間の賃金総額÷災害発生日以前の3か月間の日数 休業補償給付はケガなどで療養を開始した4日目から支給されます。 また、休業補償給付に加え、休業特別支給金を受給することもできます。休業特別支給金は給付基礎日額の20%です。 つまり、労災で休業した場合は、休業補償給付と休業特別支給金併せて、休業していなければ得られた給与の約80%が支払われます。 (3)障害(補償)給付 「障害補償給付」は、労働災害によって障害が残ったときに受けられる給付金です。障害補償給付は、障害補償年金と障害補償一時金に分けられます。 障害補償年金は、労働災害によって障害等級第1級から第7級までに該当する障害が残ったときに受けることができる給付金となります。 一方、障害補償一時金は、労働災害によって障害等級第8級から第14級までに該当する障害が残ったときに受けることができる給付金となります。 (4)遺族(補償)給付 「遺族補償給付」は、労働災害によって労働者が死亡したときに、遺族等が受けられる給付金です。 遺族補償給付は、遺族補償年金と遺族補償一時金に分けられます。 遺族補償年金とは、労働災害によって労働者が死亡した場合に遺族が受け取ることができる給付金となります。 遺族補償一時金とは、「遺族補償年金を受け取る遺族がいないとき」もしくは「遺族補償年金を受けている人が失権し、しかも他に遺族補償年金を受け取ることができる人がいないとき、かつ、すでに支給された年金の合計額が給付基礎日額1000日分に満たないとき」に支給されるものです。 (5)葬祭料・葬祭給付 「葬祭料・葬祭給付」は、労働災害により死亡した人の葬祭(葬儀など)を行う場合に給付されます。 支給金額は、31万5000円に給付基礎日額の30日分を加えた額、または、給付基礎日額の60日分の高い方の金額です。 (6)傷病(補償)年金 「傷病補償年金」は、労働災害によって負った傷病が、療養開始後1年6か月以降も「傷病が治癒または症状固定していない場合」かつ「症状による障害の程度が傷病等級に該当する場合」に受けることができる給付金です。 (7)介護(補償)給付 「介護補償給付」は、労働災害によって重い障害を負ってしまった方に支給される給付金です。具体的な条件は下記の2点を満たすことです。 介護保障給付を受けられる要件 傷病補償年金または障害補償年金受給者 精神、神経、胸腹部臓器機能の著しい障害がある者で常に、または、随時介護を受けている者 (8)二次健康診断等給付 事業主が行った直近の定期健康診断等(一時健康診断)において、以下のいずれにも該当する場合には二次健康診断等給付を受け取ることができます。 二次健康診断等給付を受けられる要件 血圧検査、血中資質検査、血糖検査、腹囲またはBMI(肥満度)の測定のすべての検査において異常の所見があると診断された場合 脳血管疾患または心臓疾患の症状を有していないと認められた場合 二次健康診断等給付は、具体的な金銭が給付されるわけではありませんが、脳血管や心臓の状態を把握するための必要な検査や特定保健指導が受けられます。 労災保険で慰謝料は請求できない 労災保険で慰謝料は請求できません。労災保険は、あくまで治療のためにかかった費用や、労災の不利益を穴埋めするためのものです。 慰謝料を請求したい場合は、労災保険とは別に、会社などに労災により生じた慰謝料を請求することが必要になります。 労災保険の補償と慰謝料は併せて請求できる? 労災保険の補償金と慰謝料は、併せて請求することができます。 慰謝料とは、被害者の精神的苦痛に対して支払われる金銭であるため、労災保険の対象となる治療費用や休業に対する補償とは別個の請求といえるためです。 ただし、慰謝料以外の請求を行う際に、同じ内容の補償金を労災保険と会社の両方から受け取ることはできません。 たとえば、労災保険から治療費として療養補償給付金を受け取っている状態で会社に治療費を請求しても、両方を受け取ることはできないということです。 労災事故が起きた場合は、労災認定を受けた後、労災保険からの給付で治療などを行うことが一般的です。そのうえで、労災保険からの給付では不十分な部分を会社に慰謝料として請求していくことが良いでしょう。 労災の慰謝料は3種類|慰謝料の相場 入通院慰謝料(傷害慰謝料) 入通院慰謝料とは、入院や治療のための通院で生じる精神的苦痛に対して支払われる慰謝料のことです。 慰謝料の金額は、原則として入院期間と通院期間をもとに計算されます。金額は事故の状況や、ケガの治療期間などによって異なります。 後遺障害慰謝料 治療を行っても完治せず、残った障害については「後遺障害慰謝料」を請求をすることが可能です。 後遺障害慰謝料を請求するには、労災保険において後遺障害の認定を受ける必要があります。 後遺障害は、障害の程度に応じて第1級~14級の等級が認定され、等級に応じた後遺障害慰謝料が支払われることとなるでしょう。 後遺障害等級ごとの相場は以下の通りです。 後遺障害慰謝料の相場 1級:2800万円 2級:2400万円3級:2000万円 4級:1700万円5級:1440万円 6級:1220万円7級:1030万円 8級:830万円9級:670万円  10級:530万円11級:400万円 12級:280万円13級:180万円 14級:110万円 関連記事 ・労災による後遺症を後遺障害と認定されるには?条件と手順を解説 死亡慰謝料 死亡慰謝料とは、労働者が労災事故によって亡くなった際に支払われる慰謝料のことをいいます。 死亡慰謝料の相場は以下の通りです。 死亡慰謝料の相場 被災労働者が一家の支柱の場合:2800万円 被災労働者が母親、配偶者の場合:2500万円 被災労働者が独身の男女の場合:2000~2500万円 上記の通り、一家の家計を支える立場であるほど、死亡慰謝料は高くなる傾向があります。 どのような場合に労災事故の慰謝料を会社に請求できる? 労災事故が起きた際にどのような場合でも、被災した労働者は会社に慰謝料を請求することができるのかというと、実はそうではありません。 会社に労災事故による慰謝料を請求するには、以下の3つの要件のどれかに当てはまる必要があります。 会社に安全配慮義務違反がある 会社に使用者責任がある 会社に工作物責任がある 会社に安全配慮義務違反があるケース 会社には、労災事故を防ぐために安全装置の設置や指導を行い、労働者の安全への配慮をする義務があります(労働契約法5条)。 日ごろから施設の設備や備品の点検を怠っている職場環境では、安全配慮義務違反となる可能性が高いでしょう。 また、長時間の残業を強いられて、精神的また肉体的にも疲れが溜まって注意力が散漫となり起きた労災事故も安全配慮義務違反となる可能性が高いと言えます。 会社に使用者責任があるケース 他の労働者が原因で労災事故が起きた場合、会社は労働者が被った損害を原則として賠償する責任があります。これを使用者責任と言います(民法715条)。 たとえば、リフトカーで倉庫内のものを移動させていた労働者が、不注意によって他の労働者に衝突してケガをさせてしまった場合などがあげられます。 ケガをしてしまった労働者は、会社へ使用者責任を問うことが可能です。 このような他の労働者の過失によって起きた労災事故でケガや死亡した際は、会社へ使用者責任に基づく慰謝料請求ができます。 会社に工作物責任があるケース 会社内のエレベーターなどの施設や工事現場の足場の倒壊、土砂の崩落などによる労災事故でケガや死亡した場合も会社に対して慰謝料の請求が可能です。 民法717条により、会社は工作物責任を負うからです。 工作物責任とは、土地に接着して人工的に工作物を設置又は保存した際に、瑕疵があってそのせいで他者がケガなどをしてしまった場合に起こる工作物の占有者や所有者の責任をいいます。 瑕疵とは、簡単に言うと工作物が壊れてしまっているなどして、本来の安全性を欠いた状況のことです。 このような本来の安全性を欠いた工作物が原因で起きた労災事故は、工作物の占有者や所有者である会社に対して慰謝料の請求が可能となります。 労災事故の慰謝料請求を弁護士に相談するメリット では、これらの要件のうち1つでも満たしている場合は、被災者本人がご自身で慰謝料を請求することは可能なのでしょうか。 また、弁護士に相談・依頼するとしたらどのようなメリットがあるのか確認しましょう。 安全配慮義務違反を立証する 会社に慰謝料を請求するには、安全配慮義務違反の有無を立証する必要があります。 使用者責任においても、事故を起こした労働者が負うべき注意義務の内容や注意義務違反の具体的な内容を立証していくことになります。 これらを被災された労働者の方が一人で証明するのは、不可能ではありませんが非常に困難であると言えるでしょう。 ましてや、悪質な会社であれば、「労災隠し」をしてくる場合もあります。 会社が労災の発生を労働基準監督署へ報告しなかったり、虚偽の報告を行ったりする可能性もゼロではありません。 弁護士に相談・依頼すれば、労働者の代理として、立証のための活動を行ってくれます。 弁護士が法的な観点から適切な立証を行うことで、慰謝料が請求できる可能性が高まるでしょう。 また、会社との直接の交渉などは、精神的な負担も大きいです。弁護士に交渉を任せることで、ご自身は治療に専念できる点も弁護士を依頼するメリットと言えるでしょう。 関連記事 ・会社に労災隠しをされてしまった!労災隠しの対処法を解説 適正な慰謝料額を請求できる 交渉なしに会社が適切な慰謝料額を支払うことは少ないと言えるでしょう。会社はできる限り、被災した労働者に対する慰謝料は少なくしたいと考えるのが通常です。 後遺障害が残った際や死亡した際のおおよその慰謝料額は上記しましたが、実際は労災事故の悪質性やその後の会社側の対応などで大きく慰謝料額が変わることも多いです。 そのため、労災事故における慰謝料の金額はケースバイケースで個別に考える必要があります。 労働トラブルを専門にした経験豊富な弁護士は、実際に相場として使われている計算方法や過去の類似例をもとに正確な慰謝料相場額の請求を行ってくれます。 また裁判になっても適切な慰謝料額の請求を行うことが可能です。裁判を視野に入れて会社との交渉を行ってもらえる点も弁護士に相談・依頼するメリットでしょう。 最初の相談は無料のところが多い 直接のメリットではないかもしれませんが、弁護士の法律相談は初回は無料で行っているところも多いです。 初回相談では、会社に慰謝料を請求できるかどうか相談し、今後の見通しを立てるのが良いでしょう。 また、完全成功報酬型を採用している弁護士事務所もあります。 そのような弁護士事務所は、着手金を一切とらないで和解や裁判で勝訴して得られた慰謝料の一部を成功報酬として得るため、慰謝料の請求が認められなかった場合、お金はかかりません。 ただし、通常の完全成功報酬型ではない弁護士事務所に比べて、解決したときの成果報酬は高めになっている場合が多いです。依頼するときのご事情に合わせて、弁護士事務所を選んでみましょう。 関連記事 ・労災は弁護士に依頼するべき?気になる労災の手続きを紹介 まとめ この記事では、労災事故による慰謝料は会社に請求できるのか詳しく解説しました。労災保険では慰謝料は支払われないため、慰謝料は会社などに請求する必要があります。 労災の慰謝料を請求したいとお考えの方や、慰謝料を請求できるのか分からないという方は、まず弁護士事務所に相談してみてはいかがでしょうか。 --- ### 最短で退職したい!退職届を出して次の日から行かないことはできる? - Published: 2023-11-22 - Modified: 2025-02-19 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6725 - Categories: 退職・退職後の手続き 最短で退職したい方に向けて退職届を出して次の日から会社に行かずに退職する方法を解説。有給休暇を消化すると言った方法により、明日から会社に行かずに退職できます。 「明日にでも仕事を辞めたい」「会社に行かずにすぐに退職したい」 業務量や仕事のストレスなどですぐに退職したいと考えた時、退職届はいつ提出すればよいのか、会社を辞めるときの手続きが気になる方は多いと思います。 法律上、退職届を出して次の日から行かないことは可能です。それまでに働いた給料も受け取ることができます。 退職届を出した次の日から行かないで退職するためには、いくつかの方法があります。また、会社とのトラブルを避けるためにも退職までの流れを理解しておくことが重要です。 この記事では、最短で退職したいという方に向けて、退職届を出して次の日から会社に行かないための方法や退職時の流れを詳しく解説します。 最短2週間で退職できる 正社員のような雇用期間の定めがない労働契約を結んでいる場合は、退職を申し出てから最短2週間で退職できます。 退職を申し出る方法としては、口頭でも書面でも、どちらでも可能です。しかし、「言った言わない」のトラブルを避けるためにも、退職届を提出しておいた方がいいでしょう。 民法627条では「労働契約の当事者は雇用の期間を定めなかった場合には、各当事者はいつでも解約の申出を行うことができ、この場合、申込から2週間を経過することで労働契約が終了する」とあります。 労働基準法には、労働者の退職の申告日に関する規定はないため、上記の民法の規定が適用されます。 そのため、退職届を出してから実際に辞めるまでの日数は、最短2週間ということになります。 一方、雇用期間の定めがある労働契約を結んでいる場合(契約社員・派遣社員など)は、原則として契約期間が終了するまでは退職できません。 退職届を出して次の日から行かないことはできる? 退職届を出して次の日から会社に行かずにすぐに退職することは可能です。 法律上は退職を申し出てから最短2週間経たなければ退職できません。 しかし、その2週間を何らかの方法で会社に行かなければ、次の日から会社に行かずに退職できるのです。 具体的には、以下の方法が挙げられます。 退職届を出して次の日から行かない方法 14日分有給を消化する 退職日までの14日間を欠勤する 会社との合意のもと即日退職する やむを得ない事由がある 14日分有給を消化する 最低でも14日分の有給休暇が残っていれば、退職届を提出してから、2週間会社へ行くことなく退職することが可能となります。 退職の意思を伝えた日の翌日から14日後を退職日とした場合、退職の意思を伝えた日の翌日から退職日までの14日間を有給休暇とすることで、退職日まで会社へ行く必要がなくなるからです。 有給を消化して会社へ行く必要がないまま退職日を迎えるため、実質的に次の日から行かなくて済むのです。 退職する前に有休をまとめて使うことを心配する方もいると思いますが、会社が有給休暇の取得を拒否することはできません(労働基準法39条)。 通常の場合であれば、事業の正常な運営を妨げる場合に限り、会社には有給休暇を別の日に変更にさせる権利、時季変更権があります(労働基準法39条5項)。 しかし、退職を前提とした有給休暇の消化の場合、変更する日が退職日以降となるため、退職前の有給休暇の消化に対して時季変更権は利用できません。 つまり、溜まっていた有給は退職日までにすべて消化できるということです。 週休2日の会社であれば有給休暇が10日で即日退職できる また、週休2日の会社であれば、有給休暇が10日しか残っていない場合でも、退職届を出してから会社に行かずに退職できます。 土日が公休の場合、月曜日から金曜日までの5日間を有給休暇消化し、土日は公休なので有給休暇を消化する必要はありません。 翌週も同様にすれば、14日間のうち10日間が有給休暇、土日の4日間は公休となり、会社に行くことなく退職日を迎えることになります。 退職日までの14日間を欠勤する 有給休暇が全く残っていない場合は、退職日までの14日間を欠勤することで、会社に行かずに退職することが可能です。 ただし、無断欠勤など正当な理由がなく欠勤した場合には、就業規則に基づいて懲戒処分を受けたり、損害賠償請求されたりする可能性があります。 パワハラやセクハラなどで会社に行くことがどうしても困難な場合には、体調不良として欠勤の申請をしましょう。 面倒だから会社に行きたくないといった理由で退職日までの14日間を欠勤することは、リスクの高い行為と言えます。詳しくは弁護士に相談してみましょう。 会社との合意のもと即日退職する 消化できる有給休暇がなく、2週間欠勤するのは心苦しいと思う場合でも、会社との合意があれば、退職届を出した次の日に退職できます。 期間の定めのない雇用の労働者は、退職の意思を伝えた後、2週間を経過する前に一方的に退職することはできません。会社は労働者の意に反して即日解雇も不可能です。 前者は労働者による雇用契約の一方的な解約であり、後者は会社による雇用契約の一方的な解約となります。 一方、労働者と会社が合意によって雇用契約を解約することは、合意解約です。 合意解約であれば、退職日までの14日間を有給休暇や欠勤で消化する必要はありません。合意解約が成立した時点で雇用契約は解消され、即日退職できます。 会社としては、14日間に欠勤後に退職する場合と合意解約で即日退職を認める場合では、業務に対する影響に差はありません。 14日間欠勤してでも即日退職する覚悟があるのであれば、会社が合意解約を認めるかもしれません。 会社と合意解約をする場合には、会社との交渉が必要になります。会社との交渉ができる弁護士に退職代行を依頼しましょう。 やむを得ない事由がある やむを得ない事由があれば、2週間経過しなくても即日退職が可能とされています。 当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。 民法628条 やむを得ない事由とは、心身の障害やパワハラ・セクハラなどと考えられていますが、明確に記載されているわけではありません。 ご自身のケースがやむを得ない事由に該当するかどうかは、弁護士に相談しましょう。 退職までの手続きの流れ 一般的な退職までの手続きの流れは、以下の通りです。 退職するまでの流れ 会社への退職の申し入れ 退職日の決定 退職届の提出 業務の引き継ぎ 退職に関する書類の受け取り 会社への退職の申し入れ まず、会社へ退職する意思があることを伝えます。「退職願」を用意し、話し合いを始める時に提出することをおすすめします。 「退職願」は、退職する意思を会社へ伝えるために提出する書類です。会社と話し合いが終わった後、会社へ退職する事実を伝える書類が「退職届」になります。 退職日の決定 最終的な退職日をいつにするのかを話し合います。後任の選出や引き継ぎ、有給休暇の消化などを含めると、話し合いの日から退職日までは数か月以上かかることもあります。 次に就職する会社が決まっていて、退職日が決まっている場合はスケジュールに余裕がないことも考えられます。 いつまで勤務するのか、引継ぎをいつまでに終わらせるのか、いつから有給休暇の消化に入るのかなど、細かい日程を確認しておきましょう。 退職日の決め方は、以下の記事が参考になります。 参考記事 退職日の決め方はいつが得?月末とは限らない、損せず手続きが楽な決め方 退職届の提出 退職日が近づいてきたら、退職届の提出をおこないます。 一般的には就業規則に定められた期間に従って提出することが多いです。会社によって「1か月前・3か月前まで」などと就業規則に規定されているでしょう。 就業規則に退職届の書式が指定されていることもあります。 もっとも、就業規則よりも民法の規定が優先されるという考え方が一般的であるため、法律上は退職日の2週間以上前に退職届を出せば退職可能です。 会社の就業規則を無視して退職することに不安を抱えている方は、『【弁護士解説】就業規則を無視して退職できるのか』の記事をご覧ください。 業務の引き継ぎ 業務の引き継ぎが必要な場合には、引き継ぎ資料の作成や後任と営業の同行などの引き継ぎを行いましょう。 引き継ぎをせずに退職すると、場合によっては会社から損害賠償請求される可能性もあるので、注意が必要です。 退職に関する書類の受け取り 次の会社へ提出するための書類や失業給付金の手続きを行うための書類を受け取ります。退職後の手続きには、いつまでに提出するかが決められているものも多いです。 退職日に受け取る書類と、退職後に郵送で送られてくる書類があるので、どのような書類が必要なのか、いつ受け取れるのかを確認しておきましょう。 会社を辞める時に受け取る書類 会社を辞める時に会社から受け取る書類は、次の会社が決まっている場合と失業給付金を受け取る場合で異なります。 次の会社が決まっている場合に受け取る書類は以下の通りです。 雇用保険被保険者証 年金手帳 源泉徴収票 失業給付金を受け取る場合は、以下の書類を会社から受け取る必要があります。 雇用保険被保険者離職証明書(離職票) 健康保険被保険者資格喪失確認通知書 年金手帳 源泉徴収票 それぞれどのような書類なのかを解説します。 雇用保険被保険者証 雇用保険被保険者証は、雇用保険に加入していることを証明する書類です。 雇用保険は会社が変わっても引き継がれます。 会社を辞めて次の会社に就職するときには、以前の会社から雇用保険被保険者証を受け取り、次の会社へ提出する必要があります。 雇用保険被保険者離職証明書(離職票) 雇用保険被保険者離職証明書は、会社を辞めた後に失業給付金を受け取る場合に必要になります。 次の会社が決まっている場合には、雇用保険被保険者離職証明書を受け取る必要はありません。 雇用保険被保険者離職証明書は、退職日には受け取ることができず、退職後に郵送などで受け取る場合が一般的です。 関連記事 ・離職票はいつ届く?退職から失業手当を受給するまでの流れを解説! 健康保険被保険者資格喪失確認通知書 退職した会社で加入していた健康保険を継続して利用する「任意継続」を行う場合に、健康保険被保険者資格喪失確認通知書が必要になります。 次の会社が決まっている場合は、次の会社の健康保険に加入するため、健康保険被保険者資格喪失確認通知書は必要ありません。 会社を辞めた後、すぐに就職する予定がない場合は、国民健康保険に加入するか「任意継続」にするかを選択できます。 国民健康保険に加入する場合と「任意継続」で納める保険料は年収によって異なります。どちらが納める保険料が少ないかを確認したうえで、国民健康保険に加入するか「任意継続」にするかを決めましょう。 年金手帳 年金手帳は、国民年金や厚生年金の被保険者であることを証明する書類です。 会社に就職して厚生年金に加入する場合は、会社が年金手帳を保管することもあります。手元に年金手帳がない場合は、会社に預けていないかを確認しておきましょう。 源泉徴収票 源泉徴収票は、その年に会社から受け取った給与と、納めた所得税が書かれた書類です。会社が年末調整を行う場合や自分で確定申告を行う場合に必要になります。 退職日には源泉徴収票を受け取ることができず、退職後に郵送などで受け取る場合が一般的です。 会社を辞める時の注意点 会社を辞める時に、以下のようなことが気になる人がいるかもしれません。 退職理由を話す必要はあるのだろうか 有給休暇はどのくらい消化できるのか 強引に引き止められたらどうすればよいのか 上記のような場合にどうすればよいのかについて解説します。 退職理由を話す必要はない 退職の申し入れや話し合いを行う時に、会社から退職理由を聞かれることもあると思います。 退職理由を話すことは法的に義務付けられていないので、退職理由を話したくないのであれば無理に話す必要はありません。 有給休暇はすべて消化できる 有給休暇は労働者の権利(労働基準法第39条)であるため、会社を辞める場合でも有給休暇の消化は可能です。会社を辞める時点で未消化の有給休暇はすべて消化できます。 有給休暇には時季変更権(労働基準法第39条5項)がありますが、会社を辞める時のように振り返る日数がない場合には時季変更権は認められません。 次の会社への就職日までの日数が限られている場合などで、有給休暇の消化が間に合わない場合は、会社が認めた場合に限り有給休暇を買い取ってもらうこともできます。 強引な引き留めに従う必要はない 会社が退職の申し入れをする従業員を引き止めることは違法ではありません。会社と話し合いの結果、会社に残ることも会社を辞めることも、自分で決定できます。 しかし、「引き継ぎが終わるまでは退職を認めない」「いま会社を辞めても離職票を発行しない」などの強引な引き止めに従う必要はありません。 強引な引き留めが不法行為に当たる場合には、労働者側から会社に対して慰謝料を請求することも可能です。 会社を辞める時に会社とトラブルになった場合は、慰謝料の請求の対応もできる弁護士に相談してみましょう。 関連記事 ・会社を辞めたいのに辞めさせてくれない時はどうする?対処法を解説! まとめ 業務量や仕事のストレスなどで精神的にも肉体的にもつらい状況の方は、退職も検討しましょう。 しかし、人手不足や上司からの圧力などで退職を告げることが難しいと感じる方もいると思います。 その場合には退職代行を利用することも一つの選択肢です。退職代行を利用すれば、自身で上司に退職届を提出する必要もなく、明日から会社に行かずに退職できます。 退職代行で即日退職する方法やリスクなどについて知りたい方は、『退職代行を使えば即日退職できる?法的な仕組みを解説』の記事もご覧ください。 --- ### セクハラ被害の相談ができる無料窓口7選!抱え込まずに相談しよう - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-06-28 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6717 - Categories: ハラスメント・いじめ セクハラの無料相談窓口を7つご紹介。セクハラの定義と対価型と環境型の違いも解説しています。セクハラ被害でお悩みの方は、弁護士、公的機関などの無料相談窓口に相談してください。 セクシュアルハラスメント(セクハラ)被害は社会問題化しており、企業運営においてもその防止が求められています。 しかし、現状として、令和4年(2022年)のセクハラの相談件数は、6,849件と非常に多い数値となっています(参考:令和4年度雇用環境・均等部(室)における法施行状況について)。 セクハラ被害を受けている状況で働き続けることは大変な苦痛ですが、相談しづらい内容であり、被害を相談することへの不安などから1人で抱え込んでしまうこともあるでしょう。 この記事では、セクハラ被害でお悩みの方に向けて、できるだけ早く誰かに相談できるよう、無料相談窓口を紹介します。 無料でセクハラ相談ができる相談先7選 セクハラの無料相談窓口 社内の相談窓口 総合労働相談コーナー 弁護士 法テラス 労働組合 女性の人権ホットライン 労働局の雇用環境・均等部(室) セクハラ被害について誰かに相談したいと考えたとき、どこに相談すべきか迷ってしまうと思います。 下記では、相談窓口の特徴などを解説していきます。 社内の相談窓口 社内の相談窓口がある場合は、社内の窓口に相談するのも選択肢の一つになります。 社内の相談窓口であるため、費用は発生しないでしょう。 社内の相談窓口は、セクハラ・パワハラなどのハラスメントの対策に設置していることも多く、相談することで会社が対応し、問題を解決できる可能性もあります。 ただし、社内のセクハラ相談窓口に実際に相談したものの、納得のいく対応をしてくれない場合もあります。 また、設置されているだけで、窓口が適切に機能していない可能性も考えられます。 相談しても対応が不十分な場合や通報したことによる不利益を心配されている方は、外部の窓口に相談することを検討すべきでしょう。 総合労働相談コーナー 厚生労働省が管轄する「総合労働相談センター」は、さまざまな労働トラブルについての相談を受け付けています。 セクハラに関しても相談可能です。 総合労働相談コーナーは、全国の労働基準監督署や都道府県労働局の中に設置されているため、お住まいの地域にかかわらず、対面での相談が受けやすいのがメリットです。 また、無料で相談できるのはもちろん、予約も必要ありません。相談者のプライバシーの保護にも配慮してくれるので、安心して相談できるでしょう。 参考:厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」 弁護士 セクハラに関するお悩みは、法律の専門家である弁護士に相談可能です。無料で相談できる弁護士事務所もあります。 総合労働相談コーナーなどへの相談は、あくまで相談がメインであり、法的に強制力をもったトラブル解決に向かない面があります。 一方で、弁護士に相談すれば、労働者の立場から法的に強制力をもったトラブル解決法や、法的な手続きに関してアドバイスをもらうことができます。 なお、相談費用がかかる弁護士事務所もあるので注意が必要です。弁護士への相談料の相場は、1時間1万円(30分5,000円)です。 弁護士に相談するメリット・デメリットについて詳しく知りたい方は『パワハラなどのハラスメントは弁護士に相談!メリットとデメリットを解説』の記事もご覧ください。 法テラス 法テラスは国が設立した機関であり、セクハラを含めたあらゆる法的トラブルの無料相談を実施しています。 法テラスへの相談方法は、電話・メール・対面の3つです。電話は無料で利用でき、法テラスの仕組みに関する話や、弁護士の無料相談受付などの対応をしてもらえます。 また全国各地の法テラス事務所では、面談による問い合わせにも対応しています。メールは24時間365日無料で、問い合わせ可能です。 参考:法テラス 労働組合 労働組合は、労働者の地位向上や就労環境の改善のため、会社に対して働きかけをする団体です。 働きかけの主な方法は「団体交渉」と呼ばれ、労働組合が会社に対し、法的効力のある交渉を求めるものです。 団体交渉では、セクハラ被害そのものについての賠償はもちろん、会社としてどのような対応を取るのか(加害者の配置換えや指導など)、再発防止策の内容といったことも含めて話し合いができます。 団体交渉を申し込まれた会社側は、基本的に拒否することができません。また、最終的に交渉がまとまれば、その内容を法的効力のある書面にまとめることができます。 ただし、無料で相談できる労働組合もありますが、相談費用がかかる労働組合もあるので注意してください。相談後に労働組合への加入を求められるケースもあります。 女性の人権ホットライン 法務省が管轄する相談窓口に「女性の人権ホットライン」があります。 セクハラは人権侵害の1つに位置付けられているため、セクハラ被害も相談することができます。 無料相談を受け付けてくれるのは、各地の法務局職員や人権擁護委員といわれる人たちです。相談の結果に基づき、必要に応じて関係機関の紹介やアドバイスが得られます。 参考:女性の人権ホットライン 労働局の雇用環境・均等部(室) 労働局が管轄する雇用環境・均等部(室)は、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法などに基づき、男女がともに働きやすい雇用環境の整備を推進する部署です。 相談窓口も設置されており、職場内で発生したセクハラに関しても無料で相談することができます。 参考:雇用環境・均等部(室)所在地一覧(令和5年9月19日時点) セクハラの相談は弁護士がおすすめ ご紹介した無料相談窓口の中から、自分にあった窓口に相談してみましょう。 それでも、どの相談窓口がいいのか迷った方は、弁護士に相談するのがおすすめです。 弁護士に相談する一番のメリットは、労働審判や訴訟などの法的手続きを視野に入れた回答がもらえる点です。 ご自身の置かれている状況を踏まえて、今後どうすればいいのかアドバイスをもらうことができるでしょう。 「弁護士は敷居が高くて相談しにくい... 」とお考えの方は、『セクハラを弁護士に相談する|費用・準備するもの・注意点を確認!』の記事を参考にしてください。 また、セクハラの内容によっては、慰謝料の請求が可能なケースもあります。訴訟の手続きは証拠が重要になるため、証拠の集め方なども知ることができます。 さらに相談後、弁護士に依頼すれば、代理人として会社との交渉などを行ってくれるため、面倒な手続きを一任できます。 関連記事 ・セクハラで裁判を起こしたい!セクハラ訴訟の流れと訴えるときのポイント セクハラ被害は抱え込まず相談しよう|セクハラの定義 セクハラは違法であり、かつ、重大な人権侵害です。 しかし、自分がセクハラだと不快に思った事柄が、法的にセクハラに該当するのか分からない方も多いと思います。 ここではセクハラの定義や要件について改めて確認しておきましょう。 どこからがセクハラになるのか詳しく知りたい方は『どこからがセクハラになる?結局セクハラの基準は?職場のセクハラ発言一覧』の記事もあわせてご覧ください。 セクハラの定義は?|対価型と環境型 セクハラは、男女雇用機会均等法11条1項において、下記の通り定められています。 法律上のセクハラの定義 職場において行われる行為で、 労働者の意に反する性的な言動について、それを受けた人が何らかの対応をすることで、労働条件について不利益を受けたりすること または性的な言動により就業環境が害されること 1を前提として、2か3のどちらかに該当すれば、法的にはセクハラということになります。 一般的には2を「対価型」と呼び、3を「環境型」と呼んで区別しています。 対価型のセクハラは、性的な事柄、言動等に対して拒絶するなど何らかの対応をしたことを原因として、解雇、降格などの客観的な不利益を受けることを指します。 環境型のセクハラは、性的な言動などによって働く環境が不快となり、就労に支障が出ることを意味します。 セクハラの具体例 対価型セクハラ 対価型セクハラは、たとえば「上司からデートに誘われ、それを断ったら異動になった」といった場合のセクハラを指します。 この場合、上司のデートの誘いが「労働者の意に反する性的な言動」に該当します。 誘いを断ることが「性的な言動に対する労働者の対応」であり、異動が「不利益を受ける」ことです。 デートの誘いの他にも、性的な関係の要求、身体に触れる、性的な事柄を公然と言うなどの行為も、「労働者の意に反する性的な言動」に該当し得ます。 これらを拒絶したり抵抗したりすることをきっかけとして、解雇、降格、異動など、労働条件について不利益が生じたら、対価型セクハラに該当します。 環境型セクハラ 環境型セクハラとは、たとえば「身体に触られる、執拗に交際を迫られる」といった直接的な行為のセクハラを指します。 また、性的なポスターをデスクに貼っていて、それを見たことによって不快・苦痛を感じ、仕事に集中できなくなることも環境型セクハラに該当します。 目に見える不利益がなくてもセクハラにあたりうるという点で、対価型セクハラのみならず環境型のセクハラについても知っておくことが重要です。 セクハラ被害は抱え込まず相談しよう 直接的な不利益がなくても環境型セクハラには該当するため、セクハラの可能性がある言動は非常に広いです。 ここまで挙げてきたもののほか、「男だから・女だから営業成績がいい」「〇〇さんと〇〇さんは付き合っている」といった発言もセクハラになり得ます。 セクハラは女性が受けるものだと考えがちですが、男性がセクハラ被害を受けるケースもあります。 このようにセクハラとなり得る言動や状況が広がってくると、どこまでがセクハラに該当し得るのか判断が難しくなるかと思います。 セクハラの判断において重要なポイントは、セクハラの定義にあった「労働者の意に反するものかどうか」「就業環境が害されたかどうか」です。 どちらも被害者側の感じ方に関わるもので、同じ性的な言動でも全く意に介さない人もいれば、非常に不快に感じる人もいます。 そのため、セクハラと感じた場合は、被害者の方がSOSを発信するというのが非常に大事になるのです。 裁判や行政機関からの指導の段階になれば、被害者の感じ方だけではなく、「一般的にどうか」という観点も含まれます。 しかし、やはりきっかけは「被害者自身が不快・苦痛に思っている」という発信です。それがないまま加害者や会社がセクハラに自発的に気付いて改善に向けて行動するということは、あまり期待できません。 「これはセクハラじゃないのかも」「周りの人も我慢している」などの理由で自身でセクハラ被害を抱え込む必要はありません。 セクハラ被害でお悩みの方は、ご紹介した無料相談窓口に相談してください。 --- ### 上司をパワハラで訴える方法は?訴える際に必要な証拠を解説 - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-06-28 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6707 - Categories: ハラスメント・いじめ パワハラを受けている場合には、すぐに裁判を起こすのではなく、最終手段として裁判を検討しましょう。 パワハラを訴えるためには、会話の音声やメールのやり取りなどの客観的な証拠が必要です。証拠を収集し、どのような対処法を取るべきか弁護士しましょう。 会社のような大勢の人が集まる場所では、人間関係の悩みはつきものです。 しかし、暴力を受けていたり、適切な業務を与えてもらっていなかったりする場合には、パワーハラスメント(パワハラ)に該当する可能性があります。 パワハラでお悩みの方は、問題を解決するために上司を訴えたいとお考えの方もいるでしょう。 この記事では、上司をパワハラで訴える手順や方法を解説します。訴えるために必要な証拠の集め方や実際の訴訟の流れもご紹介するので、ぜひ最後までご覧ください。 パワハラとは まずは、パワハラとはどのような行為を指すのか確認しましょう。ご自身の受けている行為がパワハラに該当するか確認してみてください。 パワハラの定義 厚生労働省によると、職場におけるパワハラは、以下の①~③をすべて満たす場合と定義されています。 ①優越的な関係を背景とした言動②業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの③労働者の就業環境が害されるもの 参考:「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和2年厚生労働省告示第5号)」 「優越的な関係を背景とした言動」とあるように、一般的には上司から部下に対するパワハラが問題となります。 事業主は、パワハラ行為に適切な対応をするための必要な体制の整備といった措置を講じなければなりません(労働施策総合推進法30条の2)。 パワハラの6類型 パワハラと認定される行為は、大きく6つの類型に分けられます。 パワハラの6類型 身体的攻撃(殴る・蹴る・物を投げるなど) 精神的攻撃(侮辱・脅迫など) 人間関係からの切り離し(無視・隔離など) 過剰要求(能力に対し難易度が高すぎる業務を押し付ける) 過少要求(難易度が低すぎる仕事しか与えない) 個の侵害(プライベートに過剰に立ち入る) パワハラは、身体・精神攻撃のこととイメージしてしまいますが、適正な仕事をさせないケースも含むことを覚えておきましょう。 また、被害を受けている期間が長い方がパワハラと認められやすいですが、1回の行為でもパワハラとなる可能性があります。 上司をパワハラで訴える方法・手順 上司や会社をパワハラで訴えるとしても、最初から裁判を起こすのは費用と労力がかかるのでおすすめできません。 裁判は最終手段として、以下のような手順で進めることをおすすめします。 ①可能なら本人と直接交渉 パワハラをしている本人には、自身の行為がパワハラであるという自覚がないことが少なくありません。 そこで、自分が相手の行為を苦痛に感じていることを伝えましょう。 状況が変わらなければパワハラであることを指摘し、止めてくれなければ相応の機関に相談する意思を伝えます。 もっとも、相手の顔も見たくないほど嫌悪感がある、直接交渉をできる状態でないなどの事情があれば、最初から次の手順に入りましょう。 ②会社に相談 会社内の相談相手としては、主に「社内の相談窓口」「人事部門」などが挙げられます。 相談する時には感情的にならず、事実を簡潔に分かりやすく説明するように努めましょう。そのために、あらかじめ話す内容をメモにまとめておくことをおすすめします。 手元にある証拠を提示しながら、冷静に説明しましょう。 ③外部の機関に相談する 会社内での相談で改善に向かわなければ、外部の機関を利用しましょう。 労働基準監督署内にある「総合労働相談コーナー」への相談をおすすめします。 総合労働相談コーナーはハラスメントや解雇など、労働に関するあらゆる相談を予約不要で受け付けている窓口です。 解決方法の案内や専門機関の紹介を行っており、会社に対して助言や指導を行うこともあります。 関連記事 ・パワハラの相談ができる無料窓口5選!相談前に準備すべき事も紹介 ④弁護士に相談 以上の手段を試しても良い方向に向かわなければ、弁護士に相談しましょう。 弁護士に相談すれば、受けているパワハラの状況が実際にパワハラに該当するのか、裁判に移行した場合には慰謝料を請求できるのかなど、法的なアドバイスをもらうことができるでしょう。 また、弁護士を依頼すれば代理人として会社・加害者と直接交渉してもらえます。交渉に応じなければ労働審判や裁判へ進むことになりますが、弁護士がついていればスムーズに手続きが進むでしょう。 弁護士に相談するメリット・デメリットについて詳しく知りたい方は、『パワハラを弁護士に相談するメリット・デメリット、費用を解説!』の記事をご覧ください。 パワハラの証拠集めはどうすればよい? 上司のパワハラを訴えるためには、証拠集めが重要です。証拠をもとにパワハラの事実を証明できれば、交渉や訴訟を有利に進められるでしょう。 ここでは、パワハラの証拠を収集する方法について解説します。 会話を録音する 暴言や侮辱を受けている会話を録音できれば、有効な証拠になります。 ポケットにスマートフォン・ICレコーダーなどを入れておくことで、会話を録音することができるでしょう。 また、会社へパワハラについて相談する時の会話も録音することをおすすめします。相談を受けた会社が適切に対応しなかった場合、それを証明できれば後の交渉が有利になるでしょう。 しかし、録音がバレたらどうしようという恐怖心がある方もいると思います。 その場合には、以下で紹介する証拠を収集する、もしくは小型の録音機器を使用するといった対策を取るといいでしょう。 メールの文章を残す 社内メールは、パワハラの事実を示す有力な証拠になりやすいので、必ず残しておきましょう。証拠の収集も比較的容易です。 メールのやり取りを私物のパソコンへの転送したり、スマホまたはデジカメで画面を撮影したりする方法が考えられます。 LINE・SNSなどでも上司とやり取りしているのであれば、同様に履歴を残しましょう。 身体的なケガは写真を撮る 身体的な攻撃を受け、ケガをした場合は、ケガした箇所を写真に撮っておけば証拠として活用できます。 併せて、撮影した日時や場所のほか、その場にいた人の名前も記録しておきましょう。 加工したと疑われないように、1枚だけでなく複数のアングルから撮るのがおすすめです。 また、自分のケガであることを証明できるよう、負傷箇所と自分の顔が入った写真も取りましょう。 被害の状況をメモに残す パワハラ行為の出来事を書いたメモも、証拠として使えます。 パワハラ行為があった日時や内容などをできるだけ詳細に書き留めましょう。 紙に書く残し方の他に、スマートフォンのメモ帳に入力する方法もおすすめです。 通院記録やうつ病などの診断書を残す パワハラによってケガやうつ病などの健康被害が出れば、診断書など被害状況を示せるものも重要な証拠として使えます。 通院しているならば、日々のパワハラの内容を医師に伝えましょう。 説明したことはカルテに記録されるので、カルテの請求をすれば有力な証拠が手に入ります。 上司をパワハラで訴える時の注意点 上司からパワハラを受けていると、つらい状況の中で周りが見えなくなりがちです。 訴えて制裁を加えようという思いにとらわれるかもしれませんが、冷静に状況を見るように努めましょう。 証拠集めは客観性が大事 当然ですが、パワハラの証拠は他人に対して示すものです。 自分が理解できても、他人が見てパワハラであると理解できなければ意味がありません。 誰にでも分かるものであるかどうか、感情を抑えて、手元にある証拠を一歩引いた視点で見てみましょう。 訴えるという手段に固執しない パワハラを受けて心身共につらい状況になると、柔軟に考えることが難しくなるでしょう。 しかし、たった一つの考えに固執すると、何が自分にとって本当に良いのか分からなくなります。 訴訟を経て慰謝料を請求できることとなっても、基本的に弁護士費用は自己負担です。 弁護士費用は、弁護士によって異なりますが、着手金、成功報酬金、実費などから構成されます。着手金は、おおよそ10~30万円が相場となります。 成功報酬金は相手から回収できた額(慰謝料・損害賠償金など)のうち、おおよそ20~30%が相場となります。 場合によっては、慰謝料よりも弁護士費用の方が高くなる可能性もあります。 パワハラの加害者とかかわらずに働ければいいという場合には、上層部に配置転換を申し出るといった解決方法も選択肢にいれるといいでしょう。 訴えるメリットとデメリットを理解する パワハラで訴えると、自分を苦しめた相手に社会的・経済的な制裁を与えられるかもしれません。 また、会社全体でパワハラが減り、職場環境が良くなる可能性もあります。 その一方で、訴える行為には多くの時間と労力が必要です。訴えた後、会社に居づらくなることも考えられます。 感情に任せて動くのではなく、実行することによってどんな影響があるのか考えて自分の行動を決めましょう。 パワハラ訴訟の流れ 最後に実際に訴訟を起こすときの流れを解説します。 パワハラ訴訟の流れ 訴状を提出する 裁判を提起する 口頭弁論 争点整理 証拠を調べる 判決 1. 訴状を提出する パワハラを訴えるためには、第一に訴状の提出が必要です。訴状には、以下の事項を記載します。 原告の氏名・住所 被告の氏名(加害者)、法人名(会社)・住所 パワハラ行為の内容 パワハラ行為によって受けた損害 求める損害賠償(慰謝料)額 2. 裁判を提起する 証拠や証拠証明書と併せて訴状を提出することで裁判を起こします。 また弁護士を依頼する場合には訴訟委任状、加害者とともに会社も訴える場合には会社の商業登記簿謄本の提出も必要です。 訴状が受理されると、裁判所は被告に答弁書の提出を命じます。 答弁書は、被告が訴状の内容に対して認める部分と否認する部分、および被告自身の主張を記載した書類です。 3. 口頭弁論 裁判所は、原告と被告を呼び出して、口頭弁論を開きます。 口頭弁論とは、裁判官の面前で、当事者や弁護士が主張や証拠を述べる手続きです。 裁判官は、当事者本人の態度や表情から主張の信憑性を判断します。 4. 争点整理を行う 口頭弁論が終わると、弁論準備期日となります。 証拠の提出や証人の尋問に必要な準備を行い、それぞれの主張が整理されます。 5. 証拠を調べる 争点整理が終わると、争点の主張に対して、真偽を判断するために証拠を調べることになります。 また、必要に応じて証人尋問が行われることもあります。証人尋問はパワハラの当事者のみならず、社内の目撃者などに行うこともあります。 6. 判決  裁判官は、証拠に基づいて事実関係を認定し、法律に基づいて判断を下します。判決は、書面で示されます。 判決では、原告の請求が認められるか否か、および認められる場合の損害賠償額などが決定されます。 まとめ この記事では上司をパワハラで訴える手順や方法について解説しました。 上司からパワハラを受けている場合には、すぐに裁判を起こすのではなく、最終手段として裁判を検討しましょう。 上司のパワハラを訴えるためには、会話の音声やメールのやり取りなどの客観的な証拠が必要です。証拠を収集し、どのような対処法を取るべきか弁護士に相談してください。 --- ### 労働問題を依頼するときの弁護士費用は?トラブル別の費用と相場を解説 - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-05-14 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6705 - Categories: 労働問題全般 労働問題を依頼するときの弁護士費用は、トラブルの内容によってまちまちですが、初回相談料無料の弁護士事務所に相談するなどさまざまな方法で安く抑えられる可能性があります。 労働トラブルでお悩みの方は、まずは弁護士に相談することをおすすめします。 「労働問題を弁護士に依頼したいけど、費用の相場がわからない」「労働トラブルを弁護士に依頼したいが、できるだけ安く費用を抑えたい」 弁護士に労働問題を依頼したくても、弁護士費用の相場が分からないとお悩みの方はいませんか? 「トラブルを解決したいけれど、できるだけ費用を安く抑えたい」という気持ちもわかります。 今回は、労働問題を弁護士に依頼する際に必要な弁護士費用や、トラブル別の費用相場、できるだけ費用を抑えるポイントについて解説します。 労働問題の基本的な弁護士費用と相場 労働問題を弁護士に依頼する際には、以下のような費用がかかります。 相談料|30分5000円・無料の事務所も 相談料とは、弁護士に労働問題について相談したときに発生する費用のことを指します。 相場は30分5000円となっていますが、相談料を無料としている弁護士事務所も多く見受けられます。 着手金|20万円~30万円前後 着手金とは、弁護士に労働問題についての示談交渉や訴訟といった手続きを依頼したときに発生する費用のことを指します。 着手金は事件の結果にかかわらず発生し、原則として返還されない点に注意が必要です。 相場としては20万円~30万円前後ですが、なかには着手金を無料として、その分を成功報酬などに上乗せしている弁護士事務所もあります。 報酬金|依頼して得られた金額の10%〜20%前後 報酬金とは、弁護士に依頼した結果、事件が解決したときに発生する費用のことを指します。 多くの場合、事件解決により依頼者に生じた経済的利益の10%~20%前後の金額が報酬金となるでしょう。 報酬金の形態がこのような経済的利益を基準とする場合、企業との交渉に失敗したり、敗訴したりして依頼者の経済的利益(損害賠償金など、弁護士に依頼した結果得られた利益)が得られなかったケースでは、報酬金は発生しません。 事件解決により依頼者に経済的利益が生じない案件である場合は、事前に決められた金額が報酬金となります。 日当や実費 日当とは、弁護士が出張したときに必要となる費用のことを指します。 たとえば、他都道府県など遠方の裁判所に出廷する必要があるときなどに発生します。 実費とは、手続きを進める上で必要となる、切手代や印紙代といった費用のことを指します。 トラブル別の弁護士費用 弁護士費用の相場は、残業代請求やハラスメントの対処といった労働問題の内容によって異なります。 相談料はおおむね一律に設定されていることが多く、着手金や報酬金はおおよそ以下の表のようになります。 着手金報酬金残業代請求0円~30万円経済的利益の20~30%不当解雇・退職勧奨(勧告)0円~30万円経済的利益の15~30%労働災害5万円~30万円経済的利益の20~30%労働審判30万円経済的利益の15~20%パワハラなどのハラスメント10万円~30万円経済的利益の15~30% ※上記は一例です。 残業代請求 残業代請求を依頼する場合、着手金は無料に設定されていることが多いです。 報酬金は経済的利益の20~30%程度に設定されていることが多いですが、「一定料金+回収できた金額の20%」というように、一定の料金と経済的利益を組み合わせている事務所もあります。 不当解雇・退職勧奨(勧告) 不当解雇や退職勧奨(勧告)の場合、着手金は無料のところから30万円程度のところまでさまざまです。 報酬金は経済的利益の15~30%程度に設定されていることが多いですが、「解雇を撤回させて会社に戻ることができた」など、利益が金銭的に換算できない場合は、「月給1~3ヶ月分」などの費用が別途必要になる場合もあります。 労働災害 労働災害で会社に損害賠償請求をおこなう場合、着手金の相場は5万円~30万円程度となっています。また、労災の申請は、別計算で上乗せされることが多いです。 報酬金は、損害賠償金の20~30%に設定されていることが多いですが、労災申請が認められれば、そこに障害補償給付金の一部分や、一定料金が加算されることになります。 労働審判 労働審判を依頼する場合、着手金の相場は30万円程度となっています。 報酬金の金額は解決内容によってまちまちですが、経済的利益の15~20%程度が目安となっています。 「労働審判の結果復職できた」など、利益が金銭的に換算できない場合は、「月給1~3ヶ月分」などの費用が別途必要になる場合もあります。 パワハラなどのハラスメント パワハラなどのハラスメントの場合、着手金は10万円~30万円程度となっています。 報酬金は、経済的利益の15~30%程度に設定されていることが多いです。 労働問題の弁護士費用を安く抑えるポイント 「労働トラブルを弁護士に依頼したいが費用が高い」と思われる方は多いでしょう。 弁護士費用を安く抑えるポイントとして、以下の5点が挙げられます。 弁護士費用を安く抑えるポイント 初回相談料無料の弁護士事務所に相談 着手金無料の完全成功報酬制を採用している弁護士を選ぶ 報酬金ができるだけ低い弁護士を選ぶ 複数の弁護士事務所で見積もりを取る 法テラスを利用する 初回相談料無料の弁護士事務所に相談 最近では、初回の相談料を無料に設定している弁護士事務所も多く見受けられます。 弁護士費用を安く抑えるには、初回相談料無料の弁護士事務所に相談することが重要です。 着手金無料の完全成功報酬制を採用している弁護士を選ぶ 弁護士事務所によっては、着手金を無料に設定し、完全成功報酬制(依頼者に経済的利益が生じたときにだけ弁護士費用が発生する)を採用しているところもあります。 万が一経済的利益が得られなかった場合、一切費用を支払わなくてよいところが特徴です。 ただし、着手金が無料の代わりに報酬金が高く設定されていることが多いため注意が必要です。 報酬金ができるだけ低い弁護士を選ぶ 報酬金は経済的利益の15~30%程度に設定されていることが多いですが、この割合が小さい弁護士を選ぶことで、弁護士費用を安く抑えることができます。 複数の弁護士事務所で見積もりをとる 労働トラブルを解決する際に時間的に余裕がある場合は、複数の弁護士事務所から費用の見積もりを取っておくことも重要です。 複数の弁護士事務所の費用を比較することで、結果的に弁護士費用を安く抑えられることがあります。 法テラスを利用する 弁護士に依頼することが難しい場合には、法テラスの利用をおすすめします。 法テラスを利用すれば、一定の要件を満たすことで、弁護士と無料相談をしたり、弁護士費用を立て替えてもらえたりすることができます。 参考:法テラス まとめ 労働トラブルを依頼するときの弁護士費用は、初回相談料無料の弁護士事務所を選んだり、複数の弁護士事務所で見積もりを取ったりすることで安く抑えられる可能性があります。 ただし、安さだけを理由に弁護士を選ぶことはおすすめしません。労働問題を依頼するなら、労働トラブルに詳しく、労働分野を得意としている弁護士を選ぶべきです。 労働問題を依頼すべき弁護士の選び方を知りたい方は、『労働問題を依頼すべき弁護士とは?選び方や注意点も解説!』の記事もご覧ください。 --- ### マタハラは弁護士に相談!マタハラの種類やポイントを解説 - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-03-27 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6698 - Categories: ハラスメント・いじめ マタニティハラスメント(マタハラ)とは、労働者に対し、妊娠や出産・育児休暇などを理由に、解雇や雇い止め・降格などといった不利益な取り扱いをおこなうことをいいます。 マタハラで不利益な取り扱いを受けたり働けなくなったりした場合には、弁護士に相談することをおすすめします。 「マタハラで仕事ができない」「マタハラを弁護士に相談したい」 マタニティハラスメント(マタハラ)とは、労働者に対し、妊娠や出産・育児休暇などを理由に、解雇や雇い止め・降格などといった不利益な取り扱いをおこなうことをいいます。 マタハラで悩んでいるという方のなかには、「マタハラについて相談したい」という方も多いのではないでしょうか。 マタハラで不利益な取り扱いを受けたり働けなくなったりした場合には、弁護士に相談することをおすすめします。 今回は、マタハラと判断されるケースや、マタハラについて知っておくべきこと、相談先について解説します。 マタハラの種類 マタハラには、「制度利用などへの嫌がらせ型」と「状態への嫌がらせ型」の2種類があります。 参考:厚生労働省 都道府県労働局雇用環境・均等部(室)|職場における妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメント対策やセクシュアルハラスメント対策は事業主の義務です!! 制度利用などへの嫌がらせ型 「制度利用などへの嫌がらせ型」とは、妊娠や出産に関する社内制度について、利用させないような言動をしたり、利用したことをきっかけに嫌がらせをしたりするタイプのハラスメントです。 たとえば、「産休を申請しようとしたが、上司に休むなら辞めろと言われた」「同僚に、自分なら育休を申請しないと言われ、利用できなかった」といったケースが該当します。 状態への嫌がらせ型 「状態への嫌がらせ型」とは、妊娠したことや出産したことに対して嫌がらせをするタイプのハラスメントです。 たとえば、「妊娠するなら繁忙期を避けるべきだったと上司に言われた」「あなたが妊娠したことで私たちの仕事が増えたと同僚に言われた」といったケースが該当します。 マタハラについて知っておくべきこと 妊娠などを理由とする不利益取り扱いの禁止 使用者(会社)が労働者に対して、妊娠や出産、育休などを理由に不利益な取り扱いをおこなうことは、法律で禁じられています(男女雇用機会均等法9条、育児・介護休業法10条)。 ここでいう不利益な取り扱いとは、解雇や雇い止め、退職勧奨、降格、減給といった措置が考えられます。 育休から復帰するときは原職に復帰 育児休業から労働者が復帰するときは、原職あるいは原職相当職への復帰が原則とされています(育児・介護休業法22条)。 参考:厚生労働省|子の養育又は家族の介護を行い、又は行うこととなる労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために事業主が講ずべき措置等に関する指針 原職とは、育休を取得する前に就いていたもとの職のことを指します。 また、原職相当職については、組織の状況や雇用管理の関係などによってさまざまですが、以下のような範囲を満たすものとされています。 原職相当職の範囲 休業後の職制上の地位が休業前より下回っていない 休業前と休業後とで職務内容が異なっていない 休業前と休業後とで勤務する事業所が同じ 参考:厚生労働省 都道府県労働局雇用環境・均等部(室)|育児・介護休業法のあらまし 転勤で育児が困難になる労働者は配慮される 会社側には、転勤によって育児が困難になる労働者については、転勤にあたって配慮する義務があると法律で定められています(育児・介護休業法26条)。 「配慮義務を無視して転勤を命じられ、大きな不利益を被った」といった場合には、マタハラとみなされる可能性があります。 マタハラの相談先 マタハラを相談する際には、以下のようなポイントを押さえておきましょう。 マタハラを相談するときのポイント メールや音声など、マタハラ被害の内容についての証拠を残しておく 降格通知書や診断書など、マタハラによって受けた影響の証拠を残しておく マタハラによって不利益な扱いを受けたという証拠を残しておくことで、相談内容がわかりやすくなったり、その後の手続きをスムーズに進めやすくなったりします。 まずは社内窓口や人事部に相談 マタハラでお悩みの方は、社内に設置されている窓口や人事部に相談するといいでしょう。 企業には、安全配慮義務が法律で規定されています。 安全配慮義務とは、労働者の生命身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう配慮する義務のことをいいます(労働契約法5条)。 この配慮義務の一環として、会社は職場におけるいじめやハラスメントを防ぐために、相談窓口や通報制度を整備することが求められています。 もし社内でマタハラの被害を受けた場合は、まずは社内の相談窓口や人事部に連絡し、被害を報告することが重要です。 そして、会社がこの問題を放置している場合には、安全配慮義務違反として損害賠償を請求できる可能性があります。 安全配慮義務の内容としては、職場におけるいじめやハラスメントが生じないように職場環境を整える義務があるとされており、企業内に相談窓口や通報制度が整備されているはずです。 まずは社内の相談窓口や人事部に相談し、社内でマタハラの被害を受けたことを報告しましょう。 社内でマタハラの被害があったと認識していながら、これを放置した会社には、安全配慮義務違反として損害賠償を請求できるでしょう。 労働条件相談ほっとライン 「マタハラについてとにかく話を聞いてほしい」という方は、外部の相談窓口を利用してみるのも手です。 労働条件相談ほっとラインは、長時間労働やサービス残業、賃金未払い残業などの問題について専門家に相談することができる窓口です。 マタハラやパワハラなど、職場のいじめや嫌がらせについて相談した際は、専門の相談窓口を案内してもらえます。 全国誰でも、匿名でも電話相談可能なところが特徴です。 労働局 労働局(都道府県労働局)とは、労働基準監督署の上部組織にあたる、厚生労働省所管の機関です。 各都道府県の労働局には雇用環境均等(部)室が設置されており、マタハラやセクハラなどハラスメントについての無料相談を受け付けています。 相談に対しての情報提供や、助言や指導、あっせん(話し合いの仲介)を無料でおこなってくれるという特徴があります。 弁護士 「マタハラを受けて仕事ができなくなってしまった」「妊娠をきっかけに不利益な扱いを受けた」などといった場合は、弁護士に相談することをおすすめします。 弁護士に相談すれば、自身が受けた被害がマタハラと認定されるのか法的な視点で判断してもらえるほか、慰謝料請求といった法的な手続きを依頼できます。 また、法的トラブルに発展した場合でも、スムーズに対応することができます。 弁護士に相談するメリット・デメリットについては『パワハラなどのハラスメントは弁護士に相談!メリットとデメリットを解説』の記事をご覧ください。 まとめ マタハラで不利益な取り扱いを受けたり働けなくなったりした場合には、弁護士に相談することをおすすめします。 弁護士に相談すれば、自身が受けた被害がマタハラと認定されるのか法的な視点で判断してもらえるほか、慰謝料請求といった法的な手続きを依頼できるというメリットがあります。 また、法的トラブルに発展した場合でも、スムーズに対応することができます。 無料相談を受け付けている弁護士事務所もありますので、まずは弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。 --- ### ブラック企業を訴えたい!訴えることができるケースや相談窓口を解説 - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-06-28 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6690 - Categories: 労働問題全般 ブラック企業を訴えたいという方は、まず弁護士をはじめとした相談窓口に相談することをおすすめします。 ブラック企業を訴えられるケースには、残業代未払いやハラスメント行為などがありますが、弁護士に依頼すれば、相談内容の違法性の有無の判断をしてくれるほか、代理人として本人の代わりに会社と交渉をしてくれます。 「ブラック企業を訴えたい」「ブラック企業について相談したい」 ブラック企業で日々精神的につらい状況にあるという方のなかには、そういった気持ちを抱いている方も多いのではないでしょうか。 「自分の置かれている状況で訴えることはできるのか」「相談先はどこなのか」と疑問に思う方もいるでしょう。 ブラック企業を訴えたいという方は、まず弁護士をはじめとした相談窓口に相談することをおすすめします。 今回は、ブラック企業を訴えることができるケースや、ブラック企業の無料相談窓口、そして実際に訴えるときの流れを解説します。 ブラック企業を訴えることができるケース 会社を訴えるには、会社が違法行為をしていると証明する必要があります。 法律違反の状況であると立証できなければ、訴えを起こしても裁判で勝つことは難しいでしょう。 ここでは、ブラック企業を訴えることができるケースについて解説します。 長時間労働・残業代が未払いである 残業代が未払いであるという場合は、ブラック企業を訴えることができます。 労働基準法は、1日および1週間で働かせることのできる最長の労働時間(「法定労働時間」といいます)を、原則として1日8時間・1週間40時間と定めています(労働基準法32条)。 この法定労働時間を超える労働については、割増賃金を支払う義務が生じます(労働基準法37条1項)。 したがって、「法定労働時間を大幅に超えて残業している」「残業代が割増になっていない」という場合は法律違反となり、ブラック企業を訴えることができるケースに該当します。 未払いの残業代の支払いを請求することが可能といえるでしょう。 関連記事 ・未払い残業代請求の方法|証拠や時効など基礎知識を解説 有給休暇を与えない・自由に消化させない 企業は労働者が「入社から6か月継続して勤務をしている」「規定労働日の8割以上出勤している」ことを満たす場合、原則として10日の有給休暇を付与しなければなりません(労働基準法39条)。 また、有給休暇の申請を拒否することは、原則として違法行為にあたります。 したがって、「有給休暇をもらえない」「自由に有給休暇を消化できない」という場合は、ブラック企業を訴えることができるケースに該当します。 例えば、有休を利用して休んだところ、休んだ日の給与の支払いがない場合には、未払い給与があるとして支払いの請求をすることが可能といえるのです。 関連記事 ・有給休暇が自由に取れない!ポイントと対処法を弁護士が解説 各種ハラスメントを受けている パワハラやセクハラなど、ハラスメント行為を受けているという場合も、ブラック企業を訴えることができます。 労働契約法では、使用者が、労働者の生命身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう配慮するという「安全配慮義務」について定めています(労働契約法5条)。 「安全配慮義務」の内容として、職場におけるいじめやハラスメントが生じないように職場環境を整 える義務があるとされています。 そのため、ハラスメント行為を受けているという場合も、ブラック企業を訴えることができるケースに該当します。 職場におけるいじめやハラスメントに会社が適切に対応しなかったために、うつ病になったといった損害が発生したとして、安全配慮義務違反を理由とした損害賠償請求を行うことなどが考えられるでしょう。 関連記事 ・パワハラなどのハラスメントは弁護士に相談!メリットとデメリットを解説 ・職場でいじめにあったら?対処法と相談窓口を解説 不当に解雇や降格させられた 不当に解雇させられたり、懲戒させられたりしてしまったという場合も、ブラック企業を訴えることができます。 労働契約法では、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当だと認められなければ、解雇や懲戒処分は不当であると定められています(労働契約法15・16条)。 そのため、「不当解雇があった」「不当に懲戒させられた」という場合は、ブラック企業を訴えることができるケースに該当します。 解雇が不当であるため、現在も労働者の地位にあるとして、未払いの給与の支払いを請求するといったものが考えられるでしょう。 関連記事 ・不当解雇は弁護士に相談すべき?相談するときのポイントを解説 ・労働条件が不利益に変更(賃金の減額など)されたら?相談窓口を解説! 違法な退職勧奨を受けた 退職勧奨とは、会社が従業員に対して退職を勧めることをいいます。 「退職するよう執拗に圧力をかけてきた」「退職するよう暴言を吐かれた」などという場合は、違法となる可能性があります。 この場合、ブラック企業を訴えることができるケースに該当します。 違法な退職勧奨により精神的に追い詰められたためにうつ病などの病気となってしまったとして、損害賠償を求めるといったものが考えられるでしょう。 関連記事 ・退職勧奨(勧告)とは?違法になるケースと対処法を解説! ブラック企業の相談窓口と特徴 「ブラック企業について相談したい」という方は、以下のような相談窓口への相談をおすすめします。 ブラック企業の相談窓口 労働基準監督署 労働局 労働条件相談ほっとライン 総合労働相談コーナー 労働組合 弁護士 労働基準監督署 労働基準監督署とは、労働基準法を会社が守っているのかチェックしたり、安全衛生法などに基づく検査や労災の支給業務をおこなったりする機関です。 無料で相談できるほか、労働基準法違反等が発覚すれば、是正指導・勧告をおこなってくれるところがメリットです。 しかし、証拠がないと動いてくれない可能性があったり、労働基準法等に違反していない労働トラブルへの対応が難しいというところがデメリットです。 関連記事 ・労働基準監督署に相談できる内容とは?メリット・デメリットから徹底解説 労働局 労働局(都道府県労働局)とは、労働基準監督署の上部組織にあたる、厚生労働省所管の機関です。 相談に対しての情報提供や、労働トラブルが発生した際には助言や指導、あっせん(話し合いの仲介)を無料でおこなってくれます。 ただし、あっせんによって必ず労働トラブルが解決するとは限らない点に注意が必要です。 関連記事 労働局とは?相談できることと利用するメリット・注意点を解説』の記事をご覧ください。 労働条件相談ほっとライン 労働条件相談ほっとラインは、長時間労働やサービス残業、賃金未払いなどの問題について専門家に相談することができる窓口です。 全国誰でも、匿名でも電話相談できるところがポイントです。 厚生労働省の総合労働相談コーナー 総合労働相談コーナーは、あらゆる労働問題について相談できる、厚生労働省所管の窓口です。 予約も不要で、相談料無料で利用可能です。また、相談や助言で解決しない場合は、あっせん制度も利用できます。 さらに労働基準法違反の疑いがある場合は、担当部署に引継ぎ、行政指導もしてくれる場合もあります。 労働組合 労働組合では、さまざまな労働に関するトラブルを相談できます。 昇給や賞与の査定項目などの労働者全員に関する事項はもちろんのこと、解雇・雇い止め、賃金の未払い、ハラスメントといった労働者個人のトラブルも扱ってくれます。 労働組合のポイントとして重要なのは、会社側には団体交渉に応じる法的な義務があるということです。 関連記事 ・労働組合に相談できることと相談の流れ【弁護士が解説】 弁護士 「ブラック企業を訴えたい」という方は、弁護士への相談をおすすめします。 労働トラブルの種類に関わらず相談できるほか、損害賠償・慰謝料や未払い残業代の請求といった、法的手続きを依頼できます。 弁護士に相談すれば、相談内容の違法性の有無の判断をしてくれるほか、代理人として本人の代わりに会社と交渉をしてくれます。 また、相手が逆に損害賠償請求を起こしてきた場合など、法的トラブルに発展した際にもスムーズに対応することができるのもポイントです。 関連記事 ・【労働者側】労働問題を依頼すべき弁護士とは?選び方や注意点も解説! ブラック企業を訴える流れ いきなり訴訟を起こす前に、まずは交渉からスタートしていくことをおすすめします。 話し合いによる解決が難しい場合は、労働審判、訴訟の提起と順序を踏んでいきましょう。 証拠を集めておく 各種窓口に相談したり、会社と交渉したりする前に、まずは有効的な証拠を集めておきましょう。 有効的な証拠には、以下のようなものがあります。 有効的な証拠 タイムカードや勤怠管理システムの記録など、実際の労働時間・残業時間がわかるもの 音声やメール本文など、ハラスメント行為を受けたことがわかるもの 解雇理由証明書や降格理由が書かれた書類など、不当な扱いを受けたことがわかるもの など 証拠を集めるときには、できるだけ長期間にわたってさまざまな種類の証拠を集めておくことがポイントです。 内容証明を送付する ブラック企業を訴える前に、交渉で労働問題を解決できないかどうかを検討してみましょう。 会社に対して、請求内容や金額、開示を求める資料を記載した通知書を送ることで交渉がスタートします。 このとき、通知書を内容証明郵便で送付すれば、到着日と書面の内容を記録化し、証拠として利用することができます。 会社と交渉する 通知書が会社に届くと、会社からの回答書が返ってくることになりますが、反論を示す内容であることが多いです。 そして、会社との間で、双方の主張を調整し、協議していくことになります。 労働審判を申し立てる 話し合いでの解決が難しい場合は、裁判所を用いた手続きに移行することになります。 労働審判とは、事業主と個々の労働者との間の労働トラブルを、迅速、適正かつ実効的に解決することを目的とした裁判所の制度です。 最大3回の期日で審理がされるため、問題の早期解決が見込めます。 関連記事 ・労働審判とは?制度の内容や手続きの流れを弁護士がわかりやすく解説 訴訟を起こす 労働審判を申し立てずに、訴訟(労働裁判)を起こすことも可能です。 労働トラブルにもよりますが、通常の裁判で労働紛争を争った場合の平均審理期間は17. 2か月と長期間になります。 問題の最終的な解決が見込めるというメリットはありますが、かなりの時間を要してしまうというデメリットがあります。 参考:2022年|最高裁判所事務総局「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書」 ブラック企業は弁護士に相談 「ブラック企業を訴えたい」と考えている方は、弁護士への相談をおすすめします。 弁護士に依頼すれば、相談内容の違法性の有無の判断をしてくれるほか、代理人として本人の代わりに会社と交渉をしてくれます。 また、労働トラブルの種類に関わらず相談できるほか、損害賠償や残業代の請求といった、法的手続きを依頼できます。 相手が逆に損害賠償請求を起こしてきた場合など、法的トラブルに発展した際にもスムーズに対応することができるのもポイントです。 無料相談を受け付けている弁護士事務所もありますので、まずは弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。 なお、ブラック企業に現在勤めており、心身に支障をきたしている場合は、ブラック企業を辞めることも選択肢の一つです。 しかし、退職を受け入れてもらえなかったり、人手不足を理由に退職を拒否されたりすることを心配している方も多いでしょう。 ブラック企業の辞め方については『ブラック企業の辞め方!退職方法とスムーズに退職する方法を解説』の記事で詳しく解説しています。 --- ### 労働基準監督署に通報!その後はどうなる?会社にバレる? - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-05-30 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6680 - Categories: 労働問題全般 労働基準監督署に通報するか悩んでいる方に向けて、労働基準監督署に通報した後、どうなるのかを詳しく解説しています。相談・通報したことにより不利益を被る可能性についても解説しています。 「労基署への相談・通報したらどうなる?」「労基署へタレコミを告発したらバレる?」 労働基準監督署に通報することを考えたとき、通報した後会社はどうなるのか、自分の通報が会社にバレてしまうことはあるのかなど、気になる点は多いと思います。 労働基準監督署への通報により、会社で違法行為が行われているかもしれないと判断されれば、会社に対して事実確認が行われます。 調査の結果、違法行為が認められれば、是正するように指導が行われるため、通報によって労働環境の改善が期待できるでしょう。 この記事では、労働基準監督署に通報するか悩んでいる方に向けて、労働基準監督署に通報するとどうなるか詳しく解説します。 労働基準監督署に通報した後、会社はどうなるのか 労働基準監督署に対する通報やタレコミによって、違法性が疑われる場合には、代表者の呼び出しや立ち入り調査によって、事実関係の確認が行われます。 違法行為が確認された場合は是正勧告が行われ、是正されなければ任意捜査・強制捜査の可能性もあります。 そもそも労働基準監督署がどういった機関か詳しく知りたい方は、『労働基準監督署に相談できる内容とは?メリット・デメリットから徹底解説』の記事もご覧ください。 ここでは、労働基準監督署への通報によって、会社側はどういった対応を求められるのか解説します。 代表者の呼び出し 労働基準監督署へ通報を行うと、違法性が疑われる場合に限り、違法性を確認するために会社の代表者を呼び出して事実関係の確認を行う場合があります。 呼び出された代表者は、以下のような書類を準備するように指示され、労働基準監督署へ出頭する必要があります。 代表者が準備する書類 就業規則 時間外労働・休日労働・労使協定に関する書類 労働時間が確認できる書類 健康診断表 衛生委員会の議事録 労働基準監督署は、これらの書類を確認し、違法行為がないかを確認します。 立ち入り調査 通報を受けた労働基準監督署は、会社に直接立ち入り調査を行うこともあります。 通報があったことを伝えたうえで立ち入り調査を行う場合と、通報があったことを隠して通常の業務として立ち入り調査を行う場合があります。 また、事前に連絡を入れることもありますが、予告なく調査を行う場合もあります。 労働基準監督官は、会社の設備や帳簿、書類などの確認や、従業員への尋問などを行います。 是正勧告 調査した結果、違法性が確認できた場合は問題を是正するように指導され、是正勧告書が交付されます。 是正勧告書には指導内容や違法内容、是正期限が書かれており、期限までに違法状態を改善し是正報告書を提出する必要があります。 危険な機械や設備がある場合は、その場で使用を停止するように行政処分されることもあります。 是正報告書を提出後、改善が見られれば調査は終了です。改善が十分でない、改善されていないと判断された場合は再度調査をおこないます。 強制捜査 繰り返し是正勧告を受けたにもかかわらず、是正を行わない場合は、悪質・重大な事案として再度捜査が行われる場合があります。 労働基準監督官は、労働関係法令違反に関しては刑事訴訟法に規定する司法警察員として職務をおこなう権限があります。(労働基準法102条) 悪質・重大な事案については、労働基準法違反として取り調べを行い、捜索・差押え・逮捕などの強制捜査を行い検察庁に送検することもあります。 送検された場合は、検察官によって起訴・不起訴の判断が下されます。 不起訴になれば、刑罰を受けることなく終了しますが、起訴されたら裁判に移行し、有罪判決になれば罰金刑や懲役刑が科されます。 労働基準監督署への通報・告発は会社にバレる? 労働基準監督署への通報・告発を考えたとき、通報した後に会社にバレて、不利益を受けることを心配する方は多いでしょう。 労働基準監督署への通報・告発は原則バレない 労働基準監督官には守秘義務(労働基準法105条)があるため、自分が通報した事実が会社へ知らされることはありません。 また、会社から通報者は誰かと聞かれても、労働基準監督官が答えることはないので、通報したことによって自身の通報がバレることはないでしょう。 ただし、「労働基準監督署に通報した」「労基署にタレコミを送った」などと職場の同僚に話したり、SNSでメッセージのやり取りをしたりすれば、そこからバレてしまう可能性はゼロではありません。 自身が通報したことを他人に言うのは、避けておいた方がいいでしょう。 通報を理由とした不利益な取り扱いは禁止されている 労働基準監督官が通報した人が誰なのかを会社へ伝えることはありませんが、何らかの形で通報したことが会社に分かってしまうこともあります。 とくに中小企業や従業員数が少ない会社では、通報する可能性がある従業員が特定されやすい傾向にあります。 しかし、労働基準法104条2項には、通報したことを理由に通報した従業員を解雇したり、不利益な取り扱いをしたりしてはいけないと定められています。 不利益な取り扱いとは、以下のようなものが挙げられます。 不利益な取り扱いの例 減給 降格 不必要な配置転換 雇い止め 嫌がらせ、ハラスメント など 解雇や不利益な取り扱いを行うと、「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金」が科される可能性があります(労働基準法119条)。 労働基準監督署は匿名でも通報・告発はできる 労働基準監督署への通報・告発は匿名でも可能です。会社へバレたくない、不利益を受けることをできる限り避けたいという方は、匿名で情報提供することも検討するといいでしょう。 労働基準監督署は直接訪問するだけでなく、電話やメールでの相談も可能です。とくにメールであれば匿名性を担保した状態で通報・告発ができるでしょう。 しかし、匿名での通報・告発は事実関係を十分に伝えることが難しいケースもあり、具体的な調査が入りにくい傾向にあります。 労働基準監督署に通報しても、調査および是正措置が取られなければ意味がありません。 具体的な調査などの対応を望んでいる方は、証拠を持参して直接訪問し、通報・告発すべきと言えます。 関連記事 ・労働基準監督署は電話で相談できる!相談のポイントを解説 不利益な取り扱いを受けたら無効を主張できる 通報・告発したことを理由に会社から解雇や不利益な取り扱いをされた場合は、不利益な取り扱いの無効を主張できます。 過去の判例においては、通報を理由とした解雇や配置転換が無効になっています。 不利益取り扱いの無効の主張に対して、会社が処分を撤回しないようであれば、労働基準監督署へ再度通報するのも選択肢の一つです。 ただし、労働基準監督署ができるのは助言や指導だけで、強制力はないため、注意してください。 会社側が必ずしも処分を撤回するとは限りません。労働基準監督署に相談しても状況が変わらない可能性もあります。 状況が変わらない場合には、弁護士に相談しましょう。 通報で解決しない場合は弁護士に相談 この記事では、労働基準監督署へ通報した後の流れについて解説しました。 労働基準監督署へ通報すると、必ずしも調査が入るとは限りませんが、違法性が疑われる場合には調査が行われます。 調査の結果、是正が行われれば、労働環境が改善される可能性はあるでしょう。 ただし、労働基準監督署によって会社に是正の指導や勧告がなされても、改善が見られなかったり、一度改善しても前の状態に戻ってしまったりして、労働トラブルが根本的に解決しないという場合があります。 そういった場合には、弁護士に相談することをおすすめします。 弁護士に相談・依頼すれば、労働者に代わって会社との交渉を行ったり、労働審判・裁判になった際にスムーズに移行できたりするメリットがあります。 また、公的機関である労働基準監督署の立場は、あくまで中立であるのに対し、弁護士は代理人として労働者の味方になってくれます。 関連記事 ・労働問題を依頼すべき弁護士とは?選び方や注意点も解説! --- ### 未払い残業代を請求する場合の流れと注意点を解説! - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-02-06 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6673 - Categories: 残業代請求 未払い残業代の請求する場合の流れや注意点を解説しました。残業代請求には複雑な計算や法的トラブルに発展するおそれもあることから、残業代請求をお考えの場合は弁護士に相談してください。 「毎日のように残業をしているのに残業代が出ない」「当たり前のようにサービス残業をさせられている」 在職中で会社から不利益に扱われるのが怖かったり、周りも残業代を請求していなかったりすることから、未払い残業代の請求をためらっている方は多いと思います。 残業も労働であることに変わりはないため、会社は労働の対価として、労働者に残業代を支払う義務があります。 労働者は、残業代を支払ってもらう正当な権利をもっているのです。 この記事では、未払いの残業代を請求する場合の流れや請求方法について解説します。未払いの残業代に関してお悩みの方は、是非参考にしてみてください。 未払い残業代を請求できるケースか確認する まず、未払い残業代を請求できるケースかどうかを確認することが大切です。 現在では、雇用形態もさまざまであり、通常の雇用契約だけでなく、フレックスタイム制や固定残業代制度を採用している会社も少なくありません。 たとえば、フレックスタイム制では、労働時間を一定期間(1か月以内)で管理するため、法定労働時間を超えて働いたとしても、直ちに残業代が発生しているとは限りません。 また、固定残業代制では、実際の残業時間にかかわらず、毎月支払われる賃金の中に一定の残業代が含まれています。固定支給分を超える残業代が発生していない限りは、未払い残業代は発生しません。 このように、雇用形態によっては、残業代そのものが発生しておらず、未払い残業代を請求できないケースもあります。 そのため、まずは、雇用形態をきちんと確認したうえで、残業代が発生しているかどうか、発生している場合には残業代が未払いとなっているかを確認する必要があります。 ご自身の雇用契約書や、会社の就業規則などを確認してみましょう。 未払い残業代を請求する場合の流れ 未払い残業代を請求する場合には、未払いの根拠を会社に示す必要があります。 実際に、未払い残業代を請求する場合の流れは、以下のようになります。 未払い残業代を請求する流れ 残業代未払いの証拠を収集する 未払いとなっている残業代の額を正確に算出する 会社との交渉 それぞれ詳しく解説します。 残業代未払いの証拠を収集する 未払い残業代を請求するためには、残業代が未払いとなっていることを証明できる証拠が必要です。未払いの証拠がなければ、会社側に支払う必要性がないと判断される可能性もあります。 残業代の証拠になるものは、以下のようなものです。 残業代請求の証拠 残業した事実と時間が分かるもの(タイムカード、パソコンのログの記録など) 残業代を正確に計算するための資料(就業規則、雇用契約書) 代表的な証拠として挙げられるのは、「タイムカード」でしょう。タイムカードは、労働者の出勤および退勤を管理するものであるため、労働者の残業時間を証明することが可能です。 もっとも、現在では、パソコンやソフト、社員IDカードなどを使って労働者の出勤や退勤を管理している会社も多いです。これらも労働者の残業時間を証明する証拠となりえます。 また、雇用契約書や就業規則などに、残業代の計算方法が定められている場合があります。その場合には、雇用契約書や就業規則の写しが必要です。 残業代請求の証拠は多ければ多いほどいいです。未払い残業代を請求する場合には、どれだけの証拠を集められるかということが極めて重要になります。 関連記事 ・残業代請求で必要となる証拠を徹底解説!証拠がない場合の対処法は? 未払いとなっている残業代の額を正確に算出する 未払いとなっている残業代を正確に算出するためには、基礎賃金の額がいくらかを明らかにしなければなりません。給与明細書や源泉徴収票などによって、これらを明らかにすることができます。 基礎賃金の額を明らかにしたら、残業時間を証明できる証拠から残業時間を確定させます。 残業時間を確定したら、具体的に未払いとなっている残業代の額を計算します。 残業代の計算方法は、雇用契約書や就業規則において定められていることが一般的です。 定められた計算方法に基づいて、正確に算出しましょう。 なお、残業代計算は複雑なケースもあるため、正確な金額や残業代計算のルールを知りたい方は弁護士などの専門家に相談するといいでしょう。 請求可能な未払い残業代を大まかに知りたい方は、「残業代計算ツール」もご利用ください。 関連記事 ・残業代の正しい計算方法とは?基本から応用的な計算まで徹底解説! 会社との交渉 会社に請求する未払い残業代が確定すれば、実際に会社と交渉することになります。 未払い残業代の証拠が十分に揃っていれば、会社が支払ってくれる可能性はあります。 しかし、会社側が争う姿勢をみせ、請求した金額を支払わないケースや交渉自体に応じてくれないようなケースもあります。その場合は交渉による解決を諦めて、他の方法を検討することも必要です。 具体的には、労働審判手続を申し立てる、訴訟を起こすことがあげられます。 労働審判は訴訟よりも早期に解決する可能性が高いです。法的な効力もあるため、残業代をしっかりと受け取ることができるでしょう。 未払い残業代を請求する際の注意点 未払い残業代を請求する場合には3年の時効に注意 未払いとなっている残業代は、在職中・退職後にかからわらず請求可能ですが、時効があることに注意しなければなりません。 残業代請求の時効は3年です。時効が完成してしまうと、残業代を受け取ることができなくなります。 残業代の未払いやサービス残業が悪しき慣習として長年にわたり横行しているような場合には、とくに時効に気を付けなければなりません。 退職後は証拠の収集が難しくなる 未払い残業代の請求は、在職中でも退職後でも可能です。しかし、退職から期間が空いてしまうと、残業代の証拠の収集が難しくなるので注意が必要です。 在職中は、就業規則やタイムカードなど、残業代請求の証拠となる資料にアクセスしやすい環境にあります。 在職中の場合は、できる限り残業の証拠を収集しておくといいでしょう。 関連記事 ・残業代請求は退職後でも可能!注意点や退職後の証拠の集め方を解説 未払い残業代の請求について相談したい場合は? 未払いとなっている残業代の問題をどのようにして解決したら良いか、すぐに行動に出るのではなく、まずは相談をしたうえで考えたいという方もいらっしゃると思います。 残業代の問題の相談を受け付けている窓口をご紹介します。 労働基準監督署 まず始めに挙げられるのは、労働基準監督署でしょう。 労働基準監督署は、企業や事業者などが労働関係の法律をきちんと守っているかどうかを監督する機関です。 企業において違法行為があれば、指導や勧告を行うこともあり、実際に労働基準監督署から勧告を受けて未払い残業代を支払う企業もあります。 労働局 労働局は、厚生労働省の出先機関であり、全国の都道府県に設置されています。 会社と労働者のトラブル解決を目的とする「あっせん手続き」は、労働局が両者の間に入って話を進めてくれます。 もっとも、あくまで当事者の話合いが前提となる手続きであるため、解決に至らない場合もあります。 労働組合 労働組合は、労働者で構成されており、日頃から労働条件の改善などを掲げて活動する団体です。 そのため、未払い残業代の問題を労働組合に相談することにより、労働組合が会社と交渉を行い、未払い残業代の支払いを求めてくれる場合もあります。 もっとも、会社によっては社内に労働組合がない場合もあり、その場合には、「ユニオン(社外の労働組合)」に相談してみることもひとつの選択肢です。 弁護士 弁護士も相談先の一つです。弁護士は法律の専門家であり、労働問題に実績のある弁護士であれば、証拠の集め方や交渉の進め方をアドバイスしてくれます。 未払い残業代でお悩みの方は、弁護士に相談することをおすすめします。 弁護士に相談するメリットは、他の相談先とは異なり、労働審判や訴訟を視野に入れた回答をもらえることができる点です。現状の自身の立ち位置や、今後の対処法などを詳しく知ることができるでしょう。 また、弁護士に依頼することで、労働者の代理人として会社と交渉を行ってくれ、状況によっては、労働審判や訴訟を起こすこともできます。 まとめ 未払い残業代を請求する場合の流れや注意点を解説しました。 未払い残業代の請求には、複雑な残業代計算や法的トラブルに発展するおそれなどがあります。残業代請求をお考えの場合は弁護士に相談することをおすすめします。 相談料は弁護士事務所によって異なりますが、無料相談を受け付けている事務所もあります。弁護士への相談料がご心配な方は無料相談を活用し、問題解決の糸口にしてください。 --- ### 給料未払いの証拠がない!泣き寝入りを防ぐための対処法を解説! - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-06-05 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6638 - Categories: 給料未払い 給料の未払いの証拠がない場合にどのように未払い給料を請求すればいいのか解説。手元に証拠がなくても、弁護士に依頼して開示請求を行うなどの手段もあります。給料未払いでお困りの方は弁護士に相談してください。 「給料未払いの証拠はどのようなものがある?」「給料未払いだけど、どうすればいいのか分からない」 労働者には働いた分の給料を受け取る権利があります。少額であっても、証拠が手元になくても泣き寝入りする必要はありません。 証拠がない場合には、弁護士に依頼して開示請求を行うなどの手段を取ることができます。 この記事では、給料未払いの証拠がない場合の対処法や請求をする際の手順について詳しく解説します。 未払い給料を請求するには証拠が重要 給料未払いの請求を行うにあたって、証拠は重要です。 給料の未払いを証明できる証拠がない限り、未払い給料の金額を確定することができないからです。 会社が給料未払いを黙認しているケースは、証拠を基に請求しなければ効果がない可能性があります。 また、話し合いをしても会社が支払いに応じない場合は、裁判などの法的措置をとる必要が出てきますが、その際に証拠がなければ労働者側にとって不利な状況となるでしょう。 そのため、給料未払いの請求をする場合、できる限りの証拠を集めておく必要があります。 給料未払いの証拠となるもの 給料未払いを請求するためには、給料が未払いであることを証明するもの、支払われる賃金を証明するものである2種類の証拠が必要です。 未払いであることを証明する証拠 給与明細書 源泉徴収票 給与口座の履歴 など 支払われる賃金を証明する証拠 雇用契約書 労働条件通知書 「本来の給料の金額」、「実際の支払い金額」、「労働していた事実」などがわかるものであれば、証拠として認められます。 未払いの給料を請求する場合、最終的には法的措置を取ることも考えられるため、証拠は多ければ多いほどいいでしょう。 また、給料の未払いに加えて残業代も支払われていない場合は、残業代も請求可能です。給料の未払いが生じているケースでは、残業代も支払われていないケースがあります。 残業代を請求するための具体的な証拠としては、タイムカードや業務用PCの使用時間の記録・ログイン時間の記録などがあげられます。 関連記事 ・未払い残業代請求の方法|証拠や時効など基礎知識を解説 給料未払いの証拠がない場合の対処法 給料未払いの証拠がなくても、泣き寝入りする必要はありません。 書面や直接的な証拠がない場合、証拠能力としては低くなりますが、以下のようなものを集めておくとよいでしょう。 勤怠表 手書きの勤務時間や業務内容の記録 会社とやりとりしたメールやLINEの送信記録 また、上記の履歴や記録もない場合には、「証拠保全」や「文書提出命令」といった強制的な開示手続きをすることによって、給料が未払いとなっている証拠を会社から入手することも可能です。 証拠保全とは、裁判官が直接会社に出向いて、証拠を提示させるという強力な手続きです。 文書提出命令は、証拠文書の提出を命じることです。文書の提出を命じることで、裁判における証拠の収集を円滑するために行われます。 いずれの場合も申立書の作成や手続きが面倒なことから、証拠が手元にない場合は弁護士に相談しましょう。 未払いの給料を請求する手順 労働基準法24条において、賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を、毎月1回以上、一定期日を定めて支払わなければならないとされています。 そのため、給料の未払いは違法です。会社は当然労働者に対して賃金を支払う義務がありますが、なかには給料を支払わない会社もあります。 では、給料未払いが起こった場合は、どのように対処すればよいのでしょうか。 未払いの給料を請求する手順とポイントを解説します。 未払い給料の支払いを会社と協議する まずは、会社と未払いの給料の支払いについて話し合うことから始めましょう。 会社に給料の支払いがないことを伝え、支払いがない理由についての説明を求めます。 もし、一時的な支払いの遅れや、支払いの見込みが立つようであれば、様子を見る期間を設けてもよいでしょう。 会社と協議することであっさり解決するケースもあるため、まずは会社と話し合うことが大切です。 内容証明郵便で請求する 会社と協議しても給料が支払われない場合は、内容証明郵便で請求を行いましょう。 内容証明郵便とは、書面を送付した事実と送付した内容を郵便局に記録される郵便方法を指します。 そのため、会社がそのような書面は受け取っていないというリスクを排除でき、後々まで送付した事実の証拠として用いることが可能です。 また、内容証明郵便での請求は、会社側へ心理的圧迫を加えることになるため、回収を実現しやすくなるという効力があります。 内容証明郵便を使って未払い給料の支払いを請求する際は、以下の内容を記載します。 内容証明に記載するべき内容 未払いの期間 未払い賃金を計算した総額 支払いの期限(本書到着から◯日以内と書くのが一般的) 支払い方法(金融機関の口座番号など) 支払いに応じない場合の措置(労働基準監督署への申告を含む法的措置を講ずるなど) 内容証明郵便で指定した期日までに支払いがない場合、労働基準監督署へ申告しましょう。 申告をすると、労働基準監督署から会社へ給料支払いを勧告し、給料が支払われる場合があります。 ただし、公的機関である労働基準監督署は、給料未払いの「証拠」がないとただちに是正に動いてくれない傾向があります。 そのため、給料未払いの「証拠がない」という理由で動いてもらえない場合、法的請求を検討する必要も出てくるでしょう。 給料未払いを弁護士に相談する 労働基準監督署からの勧告にも会社が応じない場合、弁護士に相談をして適切なアドバイスを受けることが得策です。 相談だけであれば無料で行ってくれる弁護士も増えており、有料の場合でも30分5000円が相場です。 また、弁護士に一任すれば請求や交渉などを適切に行ってもらうことができ、必要であれば裁判の手続きも代理してくれます。 ご自身の力のみで解決することが難しい場合は、弁護士に相談をすることでスムーズな解決を目指すことができます。 関連記事 ・給料の未払いは弁護士に相談!依頼するメリットと費用を徹底解説 給料未払いが発生した時の注意点 給料未払いの時効は3年 給料未払いの時効は3年です。3年が経過すると時効が完成し、請求が困難になります。 給料の未払いは生活への影響も大きく、長期間放置するケースは少ないかもしれませんが、退職後に未払い給料を請求したいとお考えの方は注意してください。 会社が倒産したら未払賃金立替払制度を利用できる 未払いの給料があるまま勤めている会社が倒産してしまった場合、未払賃金立替払制度を利用できます。 未払賃金立替払制度とは、会社の倒産で賃金が支払われないまま退職した労働者に対し、支払われていない賃金の一部を国が会社に代わって労働者に支払う制度です。 未払賃金立替払制度では、未払い給料の8割を支払ってもらうことができます。 会社が倒産してお困りの方は、労働基準監督署に相談することをおすすめします。 関連記事 ・未払賃金立替制度はいつもらえる?利用条件や手続きの流れを解説 遅延損害金を併せた金額を請求できる 給料が未払いで給料の支払いが遅れた場合には、遅延損害金が発生します。未払い給料が発生していた場合には、遅延損害金も併せて請求することができます。 遅延損害金の利率は年3%です。ただし、退職後の遅延損害金の利率は、年14. 6%と高額になります(賃金の支払の確保等に関する法律6条)。 ご自身の給料の未払いがいくら請求できるのかどうかは、弁護士に相談しましょう。弁護士であれば証拠や退職後の年数などから請求できる給料未払いの金額を計算することができます。 給料未払いに対する法的措置 給料未払いに対して少額訴訟を起こす 少額訴訟とは、60万円以下の請求額の場合、簡易裁判所で行うことができる訴訟のことです。 請求額が60万円の場合、申立手数料が6,000円(別途郵便切手代や弁護士費用が必要)と安いうえに、通常訴訟よりは手続きが簡単で、弁護士を雇わず個人で申請することも可能です。 1回の審理で結論が出るため、請求額がそこまで高額でなく、早く解決したいという場合に使われることが多いです。 しかし、1回の審理という短い期日であることから、給料未払いを証明する効果的な証拠を多く提出できなければ、請求が棄却される可能性があります。 また、会社が少額訴訟に反対した場合、通常訴訟に移行して争うことになります。 給料未払いに対して労働審判を起こす 労働審判は原則として3回以内の期日で、話し合いによって解決を図る手続きです。 裁判官と労働審判員で構成される労働審判委員会が解決にあたります。 労働審判も個人での手続きも可能ですが、証拠などを準備し、的確な主張を行う必要があるため、弁護士に依頼することが望ましいでしょう。 また、会社が労働裁判に対し、異議申し立てをした場合、通常訴訟に移行して争うことになります。 請求額が100万円の場合、新たに支払う申立手数料は5,000円(別途郵便切手代や弁護士費用が必要)となっています。 関連記事 ・労働審判の弁護士費用相場|労働審判を弁護士に依頼すべき理由を解説 給料未払いに対して通常訴訟を起こす 労働裁判で解決できなかった場合、通常訴訟を起こします。 訴訟は審理の回数に制限がなく、納得がいくまで徹底的に争うことが可能です。 ただし、決着がつくまで半年から1年、場合によっては数年の長期戦になることがあります。 また、訴訟になる問題は事実関係が複雑であることが多く、弁護士に依頼する必要があるため、費用が高額になってしまいます。 請求額が100万円の場合、申立手数料は10,000円(別途郵便切手代や弁護士費用が必要)となっています。 まとめ この記事では、給料未払いの証拠がない場合に、収集すべき証拠や証拠がない場合の対策をご紹介しました。 給料の未払いは違法です。労働に対する賃金の請求は正当な権利であるため、3年の時効が完成する前に請求しましょう。 無料相談を受け付けている弁護士事務所もあるため、お悩みの方は弁護士事務所に相談してください。 --- ### 会社を辞めたいのに辞めさせてくれない時はどうする?対処法を解説! - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-03-28 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6633 - Categories: 退職・退職後の手続き 会社を辞めたくても辞めさせてくれない場合の法律問題や、労働者がとりうる手段について解説。法律上、労働者は辞める意思を伝えてから2週間が経過すれば退職できます。 「会社を辞めさせてくれないのは違法?」「仕事を辞めたいのに辞めさせてもらえない」 勇気を出して会社を辞めたいと伝えても、上司から辞められたら困ると言われ、なかなか会社を辞めることができないという悩みを持つ方が非常に増えています。 法律上、労働者は辞める意思を伝えてから2週間が経過すれば退職できます。 会社が労働者の退職を引き留めること自体は違法ではありません。しかし、強引な引き止めや退職を拒否することは違法となる可能性もあります。 この記事では、会社を辞めさせてくれない場合に確認すべき法律上のルールと、労働者が取れる対処法を解説します。 会社を辞めさせないことは違法?引き止めは? 会社を辞めさせないことは違法の可能性が高い 会社が労働者を辞めさせないことは、違法である可能性が高いです。 民法627条では「労働契約の当事者は雇用の期間を定めなかった場合には、各当事者はいつでも解約の申出を行うことができ、この場合、申込から2週間を経過することで労働契約が終了する」とあります。 つまり、雇用期間の定めのない労働者は、2週間前に退職を申し出れば、会社の承諾の有無に関係なく、退職できるということです。 退職の申し出をしているにもかかわらず、仕事を辞めさせてもらえない状態は法律違反といえるでしょう。 一方、雇用期間の定めのある労働者の場合は、原則雇用期間が終了するまでは退職できないので注意が必要です。 「会社の就業規則に1か月前に退職の申し出が必要と書かれているんだけど... 」といったお悩みを抱えている方は『【弁護士解説】就業規則を無視して退職できるのか』の記事もご覧ください。 引き止めること自体は違法ではない 会社が労働者を辞めさせないのではなく、あくまでお願いといったかたちで、会社に残るように説得することがあります。 会社が労働者を引き留めること自体は、違法ではありません。 たとえば、繁忙期を終えてから退職してもらうように要求されたり、待遇を改善して引き止めされたりする場合などが考えられるでしょう。 引き止めに応じて退職を先延ばしにするかどうかは労働者にゆだねられます。 しかし、待遇が思うように改善されなかったり、一度応じたことを理由に何度も引き止めにあったりする可能性は考慮するべきでしょう。 なぜ会社を辞めさせてもらえないということが発生するのか そもそも、どうして会社を辞めさせてもらえないということが発生するのでしょうか。 上司からは退職を伝えた際、「今辞められたら困るから」と、具体的な理由を聞かされていないかもしれません。 会社を辞めさせてもらえない主な理由として、3つのことが挙げられます。 会社を辞めさせてもらえない理由 人手不足 離職率の低下 上司の感情的な理由 人手不足 第一に挙げられるのが、人手不足です。 繁忙期といった仕事量が多い時期に人手が足りていない状態のときには、これ以上の人手不足を懸念して退職を受け入れないことがあります。 また、人材の採用が非常に難しい業界や採用人件費にまわす予算がない企業では、新たな人材の確保が難しいため、会社を簡単に辞めさせてもらえないことがあります。 離職率の低下 離職率が高いと企業イメージが悪化したり、採用コストが増加したりするため、会社としてはできるだけ離職率を低く抑えたいと考えます。 とくに離職率を下げるために、社員研修や従業員アンケートなどを積極的に行っている企業では、退職を申し出ても引き止めされることがあるでしょう。 上司の感情的な理由 直属の上司から過度な引き止めをされる場合には、上司の感情的な理由があるかもしれません。 管理職の評価の一つとして離職率が対象になっているような場合、管理職としては退職者を出すと自分の評価に関わるので、仕事を辞めさせてもらえないことがあります。 他の社員や他部署の上司は背中を押してくれているにもかかわらず、直属の上司のみが退職を拒否しているような状況には注意が必要です。 会社を辞めさせてくれない場合の対処法 会社を辞めたいのに辞めさせてくれない場合に労働者が取るべき対処法を解説します。 退職届を出して退職の意思を伝える 退職届は、会社に退職の意思を正式に伝える書類です。 上司に口頭で退職を伝えるのもいいですが、口頭で退職を伝えると言った言わないのトラブルに発展する可能性があるので、退職届を渡すべきと言えます。 万が一、上司が退職届を受理しなかった場合は、上司よりも上の人物に提出しても問題ありません。 内容証明を利用して退職の申し出を行う 上司に退職届を渡しても、受理してくれない可能性があります。 そういった場合には、退職の申し出をしたことを客観的に証明できるように、内容証明郵便を利用するといいでしょう。 内容証明は、送った郵便について、郵送日時、差出人・宛先人、記載内容について、郵便局が証明してくれるサービスです。書留式になっていて、ポスト投函ではなく相手への手渡しとなります。 内容証明郵便を使うメリットは「いつ相手に送ったのか」「どういった内容の書類を送ったのか」を後々にまではっきり証明できることです。 参考:内容証明郵便 労働基準監督署に相談する 会社が退職を認めず、不当に引き止めようとする場合は、労働基準監督署に相談することができます。 労働基準監督署は、労働者の権利を守るために、行政指導や調査を行う機関です。相談は無料で、匿名でも可能です。 仕事を辞めたいのに辞められない状況は、非常に大きなストレスがかかるでしょう。また、退職の意思を伝えたことによって、上司からの圧力が増すと、これまで以上にストレスがかかる場合もあります。 電話でも相談できるので、お悩みの方は相談してみましょう。 関連記事 ・労働基準監督署は電話で相談できる!相談のポイントを解説 退職代行サービスを利用する 職場の人手不足や上司からの圧力などで、なかなか退職を告げることができない場合には、退職代行サービスを利用するのも一つの選択肢です。 退職代行事業者はいくつかありますが、弁護士に依頼するのがおすすめです。 弁護士に退職の代行を依頼すれば、正式な代理人として退職の手続きを任せることができます。 また、民間の業者だと非弁行為(弁護士資格をもたない者が、報酬を目的に弁護士業務をおこなう違法行為)となる未払いの賃金も併せて請求できます。 関連記事 ・退職代行を弁護士に依頼するメリットは?費用・代行業者との違いまで完全解説! 【ケース別】退職時のトラブルへの対処法 退職は、労働者と会社にとって大きな節目です。しかし、その過程でさまざまなトラブルが発生する可能性があります。 ここでは、退職時に起こりやすいトラブルとその対処法を、ケース別に詳しく解説します。 損害賠償を請求すると言われた場合 退職の意思を伝えると会社側から「退職したら損害賠償を請求する」と脅されることがあります。 このような強い言葉を聞いたら不安になるのも当然ですが、これらの文句は基本的には単なる脅しなので安心してください。 退職は労働者に認められた権利であり、会社側がこの権利を侵害することはできません。 ただし、プロジェクトの責任者といった役職を与えられていたにもかかわらず、業務を放棄して退職してしまった場合には、損害賠償を請求される可能性もあります。 会社側から損害賠償請求された場合には、根拠を具体的に説明してもらい、妥当性を判断しましょう。 ご自身では妥当性の判断が難しいことがほとんどであるため、法律の専門家である弁護士に相談してください。 懲戒解雇にすると脅されているような場合 退職しようとすると、「懲戒解雇にする」と脅されるような場合があります。 形式的には、会社の風紀を乱す人に対して懲戒解雇をすることができることをもって、このような措置をしてくる会社があります。 しかし、会社が労働者に対して懲戒処分を行うことができるのは、労働者に明らかな過失があり、責任を問われても仕方ない行為をした場合だけです。 退職のような正当な行為によって懲戒解雇をすることはできません。 また、懲戒事由があるような場合でも、いきなり懲戒処分として解雇をするのは重すぎるため、正当な懲戒処分と認められない可能性が非常に高いです。 そのため、退職したことを理由に会社が懲戒解雇にする可能性は非常に低く、万が一懲戒処分されたとしても、慰謝料を請求できる可能性があります。 退職後に離職票を出さないと言われた場合 会社が辞められたら困る労働者への引き止め文句として、「退職したら離職票を出さない」と言うケースがあります。 会社から離職票がもらえない場合には、ハローワークに相談しましょう。ハローワークから会社手続きを進めてくださいという催促を行ってくれるため、非常に効果的です。 それでも会社が離職票に応じない場合には、ハローワークに対して、雇用保険の被保険者でなくなったことの確認請求(雇用保険法8条)を行いましょう。 確認請求とは、雇用保険の被保険者でなくなったことを管轄のハローワークで確認してもらうことです。 離職の事実を示す書面または口頭で確認の請求を行い、被保険者であったことが認められれば、ハローワークより離職票を発行してもらうことができます。 退職時の有給を認めないと言われた場合 退職時の有給を認めないと告げられることがありますが、退職時に有給が残っている場合には、有給をすべて消化してから退職するべきです。 退職する前に有給をまとめて使うことをご心配される方もいると思いますが、会社が有給休暇の取得を拒否することはできません(労働基準法39条)。 通常の場合であれば、事業の正常な運営を妨げる場合に限り、会社には有給休暇を別の日に変更にさせる権利、時季変更権があります(労働基準法39条5項)。 しかし、退職を前提とした有給休暇の消化の場合、変更する日が退職日以降となるため、退職前の有給休暇の消化に対して時季変更権は利用できません。 つまり、溜まっていた有給は、退職日までにすべて消化できるということです。 まとめ この記事では、会社を辞めたくても辞めさせてくれない場合の法律問題や、労働者がとりうる手段についてお伝えしてきました。 法律上、労働者は辞める意思を伝えてから2週間が経過すれば退職できます。 会社を辞めるための法律上の規定は非常にシンプルですので、どうしても辞められないような場合には弁護士に相談をすることも検討しましょう。 --- ### 労働問題はどこに相談すればいい?相談窓口ごとの違いを解説 - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-03-05 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6623 - Categories: 労働問題全般 労働問題でどこの相談窓口に相談すればいいかお悩みの方に向けて、相談窓口のちがいやポイントを解説しています。個別の事案に対して解決をお望みの方は弁護士への相談がおすすめです。 労働問題は不当解雇や賃金の未払い、配転や降格に関するお悩みなど多岐にわたります。 労働問題は誰にでも起こりうる問題であり、弁護士や行政機関など、労働問題の相談ができる窓口は多数存在します。 それゆえ、労働問題でお困りの方の中には、どの相談窓口に相談すればいいのか分からない方も多いのではないでしょうか。 この記事では、相談窓口ごとの違いや相談できる内容、使い分けのポイントを詳しく説明していきます。 主な相談窓口 労働問題を取り扱う相談窓口は多数存在します。ここでは相談窓口の中でも代表的なものについて説明していきます。 弁護士 弁護士は、法的な問題を解決する専門家です。会社に対して訴訟などをお考えの場合は、弁護士の相談が有効です。 弁護士は労働者の代理人として、会社との交渉を行います。交渉で解決しない場合は、労働審判や裁判に移行することも可能です。 なお、弁護士を雇うほど、大げさな問題ではないとお考えの方もいると思いますが、弁護士の法的紛争の解決方法は訴訟に限りません。 労働者だけでは先に進まない問題でも、弁護士が介入することで、交渉や労働審判という形で問題を解決してしまうことも多くあります。 関連記事 ・労働問題に強い弁護士に相談!弁護士に相談するメリットや探し方 労働基準監督署などの行政機関 法的問題の相談先として考えられるのが行政機関です。本記事においては労働基準監督署を念頭において説明しますが、実際には行政機関にはさまざまなものがあります。 労働基準監督署は、労働に関する法律を会社が遵守しているのかをチェックし、指導票や是正勧告書の交付によって、働く人の権利を守る公的機関です。 もっとも、後述するように、行政機関はあくまで公益保護を目的にしていることも多いです。 基本的に中立の立場であるため、労働者の味方になってくれるわけではありません。 そのため、労働問題の相談には応じてくれますが、個人的な争いに対して直接的に関わってくれるわけではないので注意が必要です。 関連記事 ・労働基準監督署に相談できる内容とは?メリット・デメリットから徹底解説 労働組合 労働組合は、簡単にいうと、「労働者の権利を守る組織」です。 労働者の抱えるさまざまな問題の改善を、労働組合が会社側に求めて交渉し、労働者の権利を守るために活動を行います。 労働組合は労働組合法という法律によって個人よりも交渉力が強固にされているうえ、人員の数の利を活かせることも多いです。 もっとも、そもそも労働組合に加入していない、もしくは加入していても相談が物理的心理的にしづらい関係にあるような場合も少なくありません。 関連記事 ・労働組合に相談できることと相談の流れ【弁護士が解説】 会社内の相談窓口 会社内に相談窓口が設置されている場合は、選択肢の1つになるでしょう。 公益通報者保護法の改正(2022年6月1日施行)により、従業員数が301人以上の企業では内部通報窓口・公益通報窓口の設置が義務化されています。 上司などには相談しにくい内容でも、社内の相談窓口であれば相談できることもあります。 ただし、会社によっては匿名での相談が不可だったり、相談後に不利益を被ったりする可能性もゼロではないことに注意が必要です。 相談窓口を選ぶときのポイント 相談窓口を選ぶときのポイントは以下のようなものがあります。 相談窓口を選ぶときのポイント 相談内容は適しているか 相談費用の有無 穏便な解決が図れるか 緊急の相談への対応 相談内容は適しているか 労働問題を相談する窓口を検討するときに、当然ながら重視するべきなのが、相談内容です。 たとえば、「不当解雇に納得がいかないので訴えたい」といった問題は、弁護士に相談することが適しています。 ほかの窓口の代表例である労働基準監督署に相談しても、「解雇の有効性」など法的な評価が必要な判断を行ってもらえません。 労働問題に対して、幅広く相談を受け付けているのは弁護士です。各労働者が抱えている個別の問題に対して、労働者の味方になり、解決に向けたアドバイスやサポートをしてくれます。 相談費用の有無 労働問題について相談する際、費用がかからない窓口を探している方も多いと思います。 労働基準監督署は国の機関であるため、全て無料で相談できます。また、労働組合や社内の相談窓口は、基本的に無料で相談できることが多いでしょう。 弁護士への相談は、事務所によって異なりますが、費用がかかる場合もあります。無料で相談を受け付けている事務所もあります。 穏便な解決が図れるか 労働問題の相談内容によっては、穏便な解決が図れるかどうかを重視する必要もあります。 とくに残業代未払いや賃金の未払いなどの問題で、退職せずに仕事を続けたい場合に重視すべき部分です。 訴訟などに発展すると、会社に居づらくなることも考えられます。 緊急の相談への対応 緊急性も考慮要素の一つです。一概にどの機関が対応が早く、どの機関が対応が遅いと断言することはできませんが、会社の相談窓口や、会社との組織的関連性の近い労働組合などであれば迅速な対応が望める可能性が高いでしょう。 相談窓口ごとのメリット・デメリット 弁護士 弁護士に相談する大きなメリットは、カバーできる法律問題の広さ、そして労働者の味方として親身になってくれる点でしょう。 弁護士に相談できる内容 残業代請求 不当解雇 退職勧奨 セクハラ・パワハラなどのハラスメント 退職金・賃金未払い 配転・降格に関するもの など 弁護士が扱えない労働問題といえば、それが法的紛争に関わるものである限り考えられません。 もっとも、デメリットとして費用面は上げられます。弁護士を雇うとなると費用はそれなりにかかるのでこの点はデメリットになります。 費用をそこまで気にしなくていい人や、会社への損害賠償でそれなりの額が見込める人については、労働問題については弁護士に相談するのが最も的確で安全でしょう。 労働基準監督署 労働基準監督署に相談するメリットとしては、費用がかからないこと、匿名性が高いことです。 残業代未払いや解雇予告手当がもらえないなど、明らかに労働基準法違反に該当していると考えられる場合の相談先として有効です。 労働基準監督署に相談できる内容 残業代未払い 労災保険に関する内容 36協定違反 解雇予告手当の不支給 など デメリットは、労働基準監督署はあくまでも公益保護を目的とした機関なので、相談内容によっては相談自体が向いていないことです。 労働基準監督署に相談できるのは、労働基準関連の法に関する問題になります。 たとえば、ハラスメントや配置転換などは、労働基準監督署における相談の対象外となるのです。 また、会社の残業代未払いを労働基準監督署に通報した場合、労働基準監督署は「労基法のルールを守れ」と当該会社に是正命令や調査をすることになります。 その結果、残業代が今後きちんと支払われる、という間接的な効果によって労働者の救済につながることはあります。 しかし、会社と個人間の争いには対応していないので、自身の残業代の証拠を開示請求したいなどの相談の場合には、弁護士などのほかの窓口に相談すべきと言えます。 労働組合 労働組合に相談するメリットとしては交渉力が個人よりも強い、そこから弁護士の紹介、斡旋等をしてくれることもあるという点が挙げられます。 労働組合には、法令違反や労働条件など、幅広く相談することができます。 労働組合に相談できる内容 不当解雇 賃金 配転命令 差別 など 労働組合のデメリットとしては、組合によって交渉力が異なったり、相談の対応について会社により大きく差があることが挙げられます。 また、そもそも会社に労働組合自体がない場合も十分考えられます。 会社内の相談窓口 会社内の相談窓口を利用するメリットは、会社内部で問題を解決できる可能性があることです。 会社内の相談窓口に相談できる内容 セクハラ・パワハラ マタハラ・モラハラ いじめ など とくにパワハラやセクハラなどの個人間での問題については、迅速かつ確たる証拠をもって対応できることも多いです。 労働者個人的にも会社内の相談窓口で解決できれば、その後職場にいやすいですし、どちらにも配慮した穏便な解決が望めます。 もっとも不当解雇など、会社側の判断が絡む労働問題は、相談事項として適していないことが大きなデメリットです。 さらに会社によっては、窓口が適切に機能していない可能性も考えられます。 相談したい労働問題に関する社内窓口が機能している場合には、相談する価値があるといえるでしょう。 まとめ 労働問題でお悩みの方に向けて、相談窓口ごとの違いや相談できる内容を詳しく解説しました。 相談窓口ごとに違いはあるため、自身が置かれている状況に応じて、適切な相談窓口を選んでみてください。 残業代請求・不当解雇などの個別の事案に対して労働問題を解決したいとお考えの場合は、弁護士への相談をおすすめします。 残業代請求・給料未払いなどは時効があります。時効が完成すると、請求もできなくなってしまいます。労働問題でお悩みの方は早めに相談しましょう。 --- ### 【弁護士解説】就業規則を無視して退職できるのか - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-03-22 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6609 - Categories: 退職・退職後の手続き 「退職の申告は3か月前まで」といった就業規則を無視して退職できるか解説。正社員のような無期雇用の場合は、2週間前までに退職を申告すれば就業規則を無視して退職できます。 「退職届っていつまでに提出すれば良い?」「会社の就業規則を無視して退職しできる?」 会社の就業規則に「退職の申告は3か月前までにすること」と規定されている場合があります。会社によっては1・2か月、半年の場合もあります。 この規定を守ると、退職の申告後、会社にいなければいけない期間が長いことによる気まずさや、不利益を受けることを不安に感じている方も多いでしょう。 この記事では、就業規則で定められている退職の申告期日を守る必要はあるのかどうかについて詳しく解説していきます。 退職時に起きやすいトラブルの対処法も紹介しているので、退職を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。 就業規則を無視して退職できるのか 会社によって退職の申告期日の決まりはさまざまですが、就業規則を無視して退職できるかどうかに関しては、雇用契約によって異なります。 雇用期間の定めがない場合:2週間前までに申し出れば退職できる 雇用期間の定めがない場合は、2週間前までに退職を申し出れば退職することができます。 就業規則で退職の申告期日が設けられていたとしても、無視して退職可能です。 民法627条では「労働契約の当事者は雇用の期間を定めなかった場合には、各当事者はいつでも解約の申出を行うことができ、この場合、申込から2週間を経過することで労働契約が終了する。」とあります。 労働基準法には、労働者の退職の申告日に関する規定はないため、上記の民法の規定が適用されます。 就業規則と民法のどちらが優先されるのかについては、会社の就業規則よりも民法が優先されると考えるのが一般的です。 実際、「退職日の3か月前には退職を告げること」と就業規則に明示していた会社が、その規定を守らなかった従業員を訴えたケースで、会社側が敗訴したという事案がありました。 つまり、法律上は2週間前までに退職を申し出れば、就業規則を無視して退職しても問題はないということです。 雇用期間の定めがある場合:就業規則を無視できない 雇用期間の定めのない正社員と異なり、契約社員のような有期雇用契約の場合は、原則として契約期間が終了しなければ退職はできません。 つまり、有期雇用契約を結んでおり、就業規則に「退職の申告は3か月前まで」と規定がある場合には、就業規則を無視して退職できないということです。 もっとも、有期雇用契約者も対象として、就業規則に「退職の申告は3か月前まで」と記載がある場合には、退職の申告を3か月前までに行えば期間終了前でも退職できます。 しかし、民法の規定よりも退職条件が緩和されていることになるため、本当に退職できるかどうかは就業規則を根拠に会社の担当者や外部の専門機関に相談しましょう。 就業規則関連で想定される退職時のトラブル 会社を退職するにあたり、できることなら円満退職で終りたいと考える人が大半です。 しかし、退職時は何かとトラブルに見舞われやすく、円満退職の実現は簡単なことではありません。 ここでは退職時に想定されるよくあるトラブルについて対処法を解説します。 退職トラブルに直面した時に事態がこじれないために、適切な対処法を知っておきましょう。 退職を認めないと言われた 法律上の退職日に関するルールも守っても、会社側から「後任が見つかるまで退職は認めない」「退職するなら労働契約違反で損害賠償を請求する」などと言われる場合もあります。 このような強い言葉を聞いたら不安になるのも当然ですが、これらの文句は単なる脅しなので安心してください。 退職は労働者に認められた権利であり、会社側がこの権利を侵害することはできません。 会社側の圧が強くどうしても辞めるのが難しい場合は、弁護士に相談し、代わりに交渉してもらうのが良いでしょう。 有給休暇を消化できない 「一方的に退職するなら有給休暇の消化を認めない」と告げられるケースもあります。 退職することを理由に、会社側が有給の消化を拒否することは違法です。 有給休暇は労働者の権利であり、労働者は有給休暇をすべて消化してから退職することができます。 有給が取れない場合の対処法については、『有給休暇が自由に取れない!ポイントと対処法を弁護士が解説』の記事をご覧ください。 給料・退職金が支払われない 退職後に退職月に働いていた分の給料が支払われていない場合があります。退職後であっても、会社が未払い給料を支払わないことは違法です。 会社には、労働者へ給料を支払う義務があります(労働契約法6条)。あらかじめ決められた給料日に支払わない会社は労働基準法違反です(労働基準法11条、24条)。 退職後に退職月に働いていた分の給料が支払われていない場合には、未払い給料を会社に請求しましょう。 また、就業規則に退職金の支払いが記載されていれば、支給要件を満たす退職者に会社は退職金を支払う義務があります。 退職金が支払われない場合には、退職金が未払いである証拠を収集し、退職金を請求しましょう。 関連記事 ・退職後に給料が振り込まれない!未払い給料の請求方法や期限を解説 ・退職金未払いの無料相談窓口は?退職金が支払われないときの対処法 就業規則が見つからない 退職を決意して、退職日や有給休暇に関する規定を確認しようと思っても、社内に就業規則が見つからない場合もあります。 就業規則が見つからない場合には、人事や総務の担当者に確認し、就業規則の所在を教えてもらいましょう。 就業規則は原則として、労働者を常時10人以上抱える事業所は、就業規則の作成と所轄労働基準監督署への届け出が義務付けられています(労働基準法89条)。 つまり、余程従業員が少ない会社に勤務していない限り、必ず就業規則は存在します。 会社にそもそも就業規則がない、周知されていないケースでは、違法である可能性もあります。 就業規則が見つからない場合の対処法について知りたい方は、『就業規則を見たことがない!就業規則のない会社は違法?』の記事もご覧ください。 まとめ この記事では、就業規則で定められている退職の申告期日を守る必要はあるのかどうかについて詳しく解説しました。 雇用期間の定めがない場合は、たとえ就業規則に「退職の申告は〇か月前まで」と退職の申告期日が設けられていたとしても、2週間前までに退職を申し出れば退職することができます。 一方で雇用期間の定めがある場合は、就業規則を無視して退職できないので注意してください。 もっとも、職場で日々嫌がらせやハラスメントを受けており、2週間後ではなく、今すぐに退職したい方もいると思います。 その場合には、弁護士による退職代行サービスを利用することも選択肢の一つです。 弁護士であれば非弁行為のおそれなく、退職を代行してくれます。また、14日分の有給休暇が余っている場合には、即日退職可能です。 退職代行を利用して即日退職する方法については、『退職代行を使えば即日退職できる?法的な仕組みを解説』の記事をご覧ください。 --- ### パワハラなどのハラスメントは弁護士に相談!メリットとデメリットを解説 - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-06-28 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6610 - Categories: ハラスメント・いじめ パワハラなどのハラスメントにお悩みの方は、弁護士に相談することをおすすめします。弁護士に相談すれば代理人として会社との交渉や、損害賠償請求などの法的な手続きを依頼することが可能です。 「パワハラが原因で心身に影響が出ている」「セクハラを注意したら降格させられてしまった」 こういった職場でのハラスメント行為にお悩みの方は多いでしょう。ハラスメント行為を受けていても、強く反論できなかったり、そのまま我慢したりしている方もいるのではないでしょうか。 パワハラなどのハラスメント行為については、弁護士に相談することをおすすめします。 今回は、ハラスメント行為を訴える上で重要なポイントと、弁護士に相談することのメリット・デメリットや、弁護士の選び方について解説します。 ハラスメント行為を訴えるときのポイント ハラスメント行為を訴え、法的に「ハラスメントによる被害を受けている」と認められるためには、以下の2点に注目しておくことが重要です。 ハラスメント行為を訴えるときのポイント 具体的な証拠を集めておく 具体的な被害があるかどうかを確認する 具体的な証拠を集めておく まず、ハラスメントによって受けた被害の証拠を集めておくことが重要です。証拠として有効的と考えられるものには、以下のようなものが挙げられます。 ハラスメントを訴える上で重要な証拠 相手の発言の録音 医師からの診断書 相手からのメールや書面の履歴 被害を受けたときの証拠写真や画像ファイル ハラスメントを受けた期間と内容が詳細に記録された日記 など 客観的な証拠を残しておくことで、今後の交渉や訴訟を有利に進めることができます。 また、社内の相談窓口がある場合は、「ハラスメント被害を受けた」ということを報告しておくと、被害を受けている本人が何かアクションを起こしたという証拠にもなります。 具体的な被害があるかどうかを確認する 「パワハラなどのハラスメントが原因で被害を受けた」と客観的に認められるためには、具体的な被害を受けたかどうかを確認しておくことが重要です。 たとえば、「セクハラを注意したら賃金が引き下げられた」「パワハラが原因で不当に解雇されてしまった」といったことなどが挙げられます。 単に「ストレスを受けている」というだけでは、ハラスメントとして認定されなかったり、認定されたとしても満足のいく慰謝料を受け取ることができなかったりする場合があります。 ハラスメントでお悩みの方へ ハラスメントごとに、相談窓口が異なる場合があります。各ハラスメントごとの相談窓口をまとめました。 ・セクハラ被害の相談ができる無料窓口7選!抱え込まずに相談しよう・パワハラの相談ができる無料窓口5選!相談前に準備すべき事も紹介・マタハラは弁護士に相談!マタハラの種類やポイントを解説 ハラスメント行為を弁護士に相談することのメリット 社内のハラスメント行為にお悩みの方は、弁護士に相談することをおすすめします。メリットとしては、以下の2点が挙げられます。 弁護士に相談するメリット ハラスメント問題を代理で交渉してもらえる 損害賠償請求など法的手続きを依頼できる ハラスメント問題を代理で交渉してもらえる ハラスメント問題について、実際に今自分が受けている被害がハラスメントにあたるのかどうかを自分で判断することは難しいといえます。その場合、個人で対処するのがハードであることも考えられます。 そういったケースでは、弁護士に相談すれば適切な対応をしてもらえます。 たとえば、ハラスメント差止要求書を作成して会社にハラスメントを止めるよう要求してもらえたり、ハラスメントについて代理で交渉してもらえたりすることが可能です。 損害賠償請求など法的手続きを依頼できる ハラスメントの被害によって精神的に苦痛を受けたり、降格や左遷など実際に不利益を被ったりした場合には、企業に対して損害賠償を請求することができます。 弁護士に依頼すれば、損害賠償請求をはじめとして、悪質なハラスメントに対する刑事告訴など法的な対応をスムーズにおこなえます。 デメリットは費用がかかること ハラスメント行為に対して弁護士に相談し、裁判を起こす場合、弁護士費用が発生します。 相手側に請求する慰謝料も状況によってまちまちですが、慰謝料よりも弁護士費用が高くなってしまうおそれがあることに注意しておく必要があります。 ハラスメント問題に強い弁護士の選び方 実際にハラスメント問題を弁護士に相談するときには、ハラスメントなど労働問題に強い弁護士を選ぶことが重要です。選ぶ上でのポイントとして、以下の4点が挙げられます。 ハラスメント問題に強い弁護士の選び方 労働問題の解決実績がある 労働問題に積極的に取り組んでいる コミュニケーションをとりやすい 説明がわかりやすい 労働問題の解決実績がある ハラスメントなど労働問題に強い弁護士を選ぶ上で重要なポイントは、これまでに労働問題を解決した実績があるかどうか、経験が豊富かどうかといったことが挙げられます。 解決実績については、法律事務所のホームページに記載されているケースや、問い合わせれば教えてくれるケースもあります。 また、ハラスメントに関するコラムや、労働問題に関する書籍を執筆しているかどうかも判断材料の一つになります。 関連記事 ・労働問題に強い弁護士に相談!弁護士に相談するメリットや探し方 労働問題に積極的に取り組んでいる 解決実績だけでなく、現在積極的に労働問題に取り組んでいるかどうかという姿勢も重要な判断材料になります。 親身になって相談に乗ってくれるかどうか、最後まで粘り強く企業と交渉してくれるかどうかなども見極めるポイントです。 コミュニケーションをとりやすい 弁護士に依頼する際には、電話やメール、LINEなど、さまざまな方法で連絡を取りやすい弁護士に依頼することが重要です。 たとえば、「土日でも連絡が取れる」「オンラインでも面談ができる」といった、円滑で迅速なコミュニケーションをとることができる弁護士を選ぶことがポイントです。 説明がわかりやすい コミュニケーションの取りやすさに加えて、説明がわかりやすいか、こちら側から質問しやすいかといったことも判断材料の一つです。 実際に弁護士に依頼した人の口コミなどを利用すれば、弁護士の対応もイメージしやすいでしょう。 まとめ 弁護士に依頼すれば、ハラスメントについて代理で交渉してもらえる上に、損害賠償請求といった法的な手続きを一任することができます。 初回は無料相談を受け付けている弁護士事務所もありますので、まずは弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。 --- ### 懲戒解雇されると給料はどうなる?解雇予告手当はもらえる? - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-04-04 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6567 - Categories: 不当解雇 懲戒解雇されると給料はどうなるのか、解雇予告手当はもらえるのか解説。懲戒解雇と給料は別の制度であるため、労働者はそれまでに働いた給料は受け取ることができます。 懲戒解雇になると、職を失うことはもちろんですが、それまでに働いた分の給料が支払われるかどうか心配になる方もいるでしょう。 たとえ懲戒解雇されたとしても、それまでに働いた分の給料は支払われます。労働基準法は、懲戒解雇と給料をまったく別の制度として考えているからです。 とはいえ、懲戒解雇となった以上、会社から損害賠償請求を受ける可能性もあるため、労働者は適切に対応することが必要です。 今回の記事では、懲戒解雇と給料の支払いを中心に、懲戒解雇と解雇予告手当の関係、会社から損害賠償請求を受けた場合の注意点についても解説します。 懲戒解雇と給料の関係 「懲戒解雇」とは、労働者が会社の規律に違反した場合や犯罪を犯した場合などに、会社がその労働者を解雇することをいいます。 懲戒解雇処分を受けると、自身に非があるとはいえ、大変ショックな出来事でしょう。 また、懲戒解雇されたということは、勤めていた企業からの収入がなくなることを意味するので、給料・解雇予告手当の支払いについて気になる部分も多いと思います。 ここでは、懲戒解雇と給料の関係を解説していきます。 懲戒解雇されても働いた分の給料はもらえる 懲戒解雇されても、それまでに働いた分の給料はもらうことができます。 懲戒解雇処分は、労働者に非があることを理由としてなされる制裁的な意味合いの強い処分です。 しかし、「給料」というものは、労働の対価として会社から支払われるものです。 会社はその全額を労働者に支払う義務を負っています(労働基準法24条1項)。これを「賃金全額払いの原則」と言います。 そのため、懲戒解雇処分を受けたとしても、それまでに働いた分に相当する給料はもらうことができます。 不当な懲戒解雇の場合は解雇後も給料が発生する 不当な懲戒解雇の場合は、解雇後も給料が発生します。 使用者(会社)が労働者を解雇するためには、①客観的に合理的な理由と②社会通念上の相当性が必要であると規定されています(労働契約法16条)。 使用者の懲戒権の行使は、対象となる労働者の行為の性質・態様その他の事情に照らして、それが客観的に合理的理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、懲戒権の濫用として無効となります(労働契約法15条)。 不当解雇された方の多くは、解雇無効を主張し、その和解や合意がなされる日までの賃金を請求することになります。 たとえば、解雇された日から一年後に、「実はその解雇は不当であり無効だった」と合意がなされたとします。 解雇が無効となると、解雇されたことになっている日から合意の日まで実際は従業員としての地位が継続していたことになり、その期間の給料は未払いということになります。 そのため、不当解雇されてから合意がなされるまでの期間の賃金を請求することができるのです。 解雇の要件について詳しく知りたい方は、『会社から突然解雇されたらどうする?違法な解雇への対処法や相談先は?』の記事をご覧ください。 懲戒解雇と損害賠償請求|給料との相殺は原則禁止 懲戒解雇処分を受けても、その時点で発生している給料については、労働の対価として受け取ることができます。 しかし、懲戒解雇となった理由次第では、会社側から損害賠償請求を受ける可能性があるため注意が必要です。 会社から損害賠償を請求されるケース 懲戒解雇処分を受ける理由としては、度重なる規律違反や犯罪などが代表例ですが、その行為が原因となって会社に損害を与えてしまうことがあります。 具体的には、業務上横領罪が典型例です。 業務上横領罪は、使い込んだお金がそのまま会社の損害となるため、会社はその損害を回復するために、お金を使い込んだ社員に対して、損害賠償を請求することがあります。 このように、懲戒解雇処分の理由となる行為によって、会社に損害が生じた場合には、会社から損害賠償請求を受ける可能性があります。 損害賠償請求をされた場合の注意点 会社から損害賠償請求をされた場合、自身の行為によって本当に会社に損害が生じているのか、請求額は妥当なのかを注意する必要があります。 会社が懲戒解雇した労働者に対して損害賠償を請求するためには、少なくとも会社に「損害」が発生していることが必要です。 「会社を裏切った」「許せない」などと感情的になって、会社に損害が発生していないにもかかわらず、労働者を苦しめる目的で損害賠償を請求するケースもあります。 また、会社に損害が発生していることは確かであるものの、その損害を高く見積もって請求してくるケースもあります。 損害賠償請求は金額が高額になることも多いです。請求に応じる前に、請求金額の妥当性について専門家に相談することをおすすめします。 損害賠償金と給料との相殺は原則として禁止されている 先に見たように、懲戒解雇にしたからといって、その時点で労働者に発生している給料については、会社は支払う義務を負っています。 そのため、労働者の給料を損害賠償金と相殺することは原則として禁止されています。損害賠償を請求されたとしても、給料は支払ってもらえるのです。 もっとも、例外的に給料との相殺が許される場合もあります。 それは、労働者が給料との相殺に同意している場合です。 判例上は、労働者の合意があり、その合意が労働者の自由意思に基づいてなされたものである合理的な理由が客観的に存在する場合には、賃金全額払いの原則に反しないとされています。 懲戒解雇と解雇予告手当の関係 解雇予告手当とは、雇用主が30日以上前に解雇予告を行わなかった場合に、労働者に対して支払われる手当金のことです。 ここでは懲戒解雇された場合でも、解雇予告手当はもらえるのか解説していきます。 懲戒解雇されても解雇予告手当がもらえる場合がある 懲戒解雇されてしまっても、場合によって解雇予告手当がもらえることがあります。 労働者を解雇する場合、雇用主はどんなに正当な理由があっても、30日以上前に解雇予告をしなければならないと定められているからです。 懲戒解雇の場合も、原則30日以上前の解雇予告が必要とされています。 そのため、30日以上前の解雇予告がなかった場合や即日解雇された場合には、解雇予告手当をもらうことができます。 労働者側に明らかな過失がある場合はもらえない 労働基準法20条の「労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合」に該当すれば、解雇予告の手当の支払いは不要であるとされています。 「労働者の責に帰すべき理由」には、以下のようなものが挙げられます。 労働者の責に帰すべき理由の例 会社の名誉にかかわる重大な犯罪行為(殺人など) 業務上の立場を利用した犯罪行為(経理担当の横領など) 重大な経歴の詐称(高卒の人が大卒と詐称して入社するなど) 重大、もしくは執拗なハラスメント など 必ずしも「懲戒解雇=労働者の責に帰すべき事由」となるわけではありません。 もし懲戒解雇を受けて解雇予告手当がもらえないという場合は、まずは上記のパターンに当てはまっていないかを確認する必要があります。 ただし、労働者に明らかな過失がある場合も、会社は労働基準監督署長に「解雇予告除外認定」を申請して認定を受ける必要があります。 解雇予告を行わなくていい例外に当たるかどうかは、労働者の勤務状況や地位などを考慮に入れて判断されます。 解雇予告手当の支払いがない場合でも、実際に会社が解雇予告除外認定を申請しているケースは意外と少ないです。 また、解雇予告除外認定が認められる条件は厳しく、申請しても認められないこともあります。 実際は、解雇予告除外認定にはある程度の調査・期間がかかるため、あえて手当を支払う会社もあるようです。 労働者側に明らかな過失があること以外にも、法的に解雇予告手当がもらえないケースがあります。詳しく知りたい方は、『解雇予告手当がもらえない!法的にもらえないケースや請求方法を解説!』の記事もご覧ください。 懲戒解雇の相談窓口は? 最後に懲戒解雇された場合の相談窓口をご紹介します。 弁護士 懲戒解雇されて給料・解雇予告手当が支払われない場合の相談窓口として弁護士が挙げられます。 弁護士に相談することで、懲戒解雇の正当性の判断から、給料・解雇予告手当が支払われない場合の対処法についてアドバイスをもらうことができるでしょう。 また、そもそも懲戒解雇が不当である場合には、不当解雇されてから合意がなされるまでの期間の賃金を請求することができます。 弁護士に正式に依頼する場合には弁護士費用がかかりますが、代理人として会社と直接の交渉や法的な手続きを行ってくれます。 関連記事 ・懲戒解雇されたら弁護士に相談!弁護士に相談すべき理由を解説 労働基準監督署 労働基準監督署は、事業所が労働基準法を守っているかどうかを監督する機関です。 懲戒解雇処分を受けたとはいえ、それまでに給料が発生している場合には、会社は労働者に対して給料を支払わなければなりません。 懲戒解雇を理由に給料を支払ってくれない場合には、労働基準法違反となります。 タイムカードや勤怠状況など給料が発生していることがわかる証拠を持参することにより、労働基準監督署から会社に指導・勧告を行ってくれることがあります。 指導・勧告により、給料や解雇予告手当を支払ってもらえる可能性はあるでしょう。 --- ### 会社に労災隠しをされてしまった!労災隠しの対処法を解説 - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-06-21 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6571 - Categories: 労働災害 「労災隠し」は犯罪行為であり、会社から「労災隠し」をされていると感じた場合には、労働基準監督署に相談してみることをおすすめします。 対処法としては、労災指定病院を受診したり、健康保険を使わずに治療を受けたりするといったことが挙げられます。 「治療費は会社が負担するからと労災を秘密にしておけと言われた」「通勤中にケガをしたが、会社に労災とは認められないと言われた」 業務中や通勤中にケガをしたと会社に報告をしたとき、会社から労災の認定に関して、知っているような発言をされることがあります。 こういった発言は「労災隠し」のおそれがあり、犯罪行為に該当します。 労災とは、会社の勤務時間中や通勤中などに発生した病気やケガになります(前者を業務災害、後者を通勤災害という)。また、労災認定は企業ではなく労働基準監督署長がおこないます。 この記事では、労災隠しとは何か、労災隠しをされた場合の対処法について解説します。 労災隠しとは 労災隠しとは、会社が労災の発生を労働基準監督署へ報告しなかったり、虚偽の報告をおこなったりすることです。会社が労災隠しをおこなうことは違法行為であり、発覚すれば50万円以下の罰金が科されます(労働安全衛生法120条5号)。 たとえば、以下のような場合が労災隠しと判断されます。 労災隠しと判断されるケース 労災が発生したことを隠蔽することを目的として「死傷病報告の届出」をおこなわない 発生した労災の内容や状況を偽って報告する 「治療費は会社が負担する」「正社員ではないから労災にはならない」「労災保険に加入していないから労災にならない」「この件は労災とは認めない」といった発言 労災が認められれば、治療費は労災保険が負担するので、会社が治療費を負担することはありません。 また、労災保険は雇用された労働者すべてに適用されますし、一人でも雇用していれば会社は労災保険に加入する義務があります。 会社が労災保険の加入手続きをおこなっていない場合でも、労災は適用されます。 先ほども触れましたが、労災の認定をおこなうのは労働基準監督署です。会社が労災かどうかを判断できるわけではありません。 会社が「労災とは認めない」と言った場合は、労災隠しである可能性が高いです。 関連記事 ・労災と認定されるには?認定基準・手続き・受け取れる給付金について解説 労災隠しをされた場合の対処法 労災の診察・治療は労災指定病院でおこなう 労災隠しの対処法として、労災の診察や治療は労災指定病院でおこなうことが挙げられます。 病院側に「労災である」と伝えることで、無料で診察を受けられるほか、その後の労災請求の申請もスムーズにおこなえるというメリットがあります。 関連記事 ・労災の申請手続きの流れ|給付申請は時効に注意! 健康保険を使って治療しない 労災による病気やケガを治療する場合は、健康保険は利用できません。労災の申請をおこなったうえで健康保険を使って治療してしまうと、保険の二重取りとなりかねないので注意しておきましょう。 労災について健康保険を使って治療した場合は、病院に労災保険への切り替えができないかを確認しましょう。 労災保険への切り替えができれば治療費は自分に返ってきます。できなかった場合は、一時的に治療費を自分で支払っておいて、後で労災保険へ請求する形になります。 会社で労災が発生し、すぐに治療が必要になる場合もあります。会社から健康保険で治療するように指示された場合や、労災なのかわからない場合は、病院の窓口で事情を説明しておきましょう。 労働基準監督署へ相談する 会社による労災隠しが疑われる場合や、労災申請に協力してもらえないという場合は、労働基準監督署へ相談しましょう。 労災が発生したときの正確な状況、病気やケガの状態、会社がどのように対応したのかについて詳しく説明することが重要です。 また、労災の申請は退職後であっても可能です(労災保険法12条の5)。 労災隠しによって労災保険による補償を受けられないまま、退職した場合も考えられます。 退職後で会社から労災申請の協力が得られない場合でも、労災の申請はできるので、労働基準監督署へ相談しましょう。 労働基準監督署以外にも、相談できる窓口があるので、他の相談窓口が知りたい方は、『労災の相談はどこでできる?困ったときの相談先を紹介!無料の窓口も!』の記事をご覧ください。 企業が労災を隠す理由 会社が労災隠しをおこなう理由としては、以下のようなものが考えられます。 企業が労災隠しをおこなう理由 労災の保険料負担増加を懸念している 会社のイメージが悪くなる 労働基準監督署に調査されたくない 労災保険に加入していない 会社が負担する労災保険料は、事業内容や事業規模に応じて保険料が増減するという「メリット制」が採用されています。 労災を報告することで保険料の増額を懸念して、労災隠しをおこなう場合が多いようです。 また、労災の発生件数が多くなれば「会社のイメージが悪くなる」「労働基準監督署から改善命令が出される」といったおそれもあります。 そのため、会社に対する影響を考えて労災隠しをおこなうことも考えられます。 労災隠しの時効は3年・労災申請の時効は2年か5年 犯罪としての労災隠しの時効は3年となっており、仮に労災隠しで会社や事業主を告発したいという場合には注意が必要です(刑事訴訟法第250条2項)。 また、労災保険の申請時効期限は、給付内容ごとに起算日から2年あるいは5年が原則となっています。 給付の種類時効起算日療養(補償)給付2年療養にかかる費用の支出が具体的に確定した日の翌日休業(補償)給付2年働くことができず賃金が受けられない日ごとの翌日傷病(補償)年金なし-障害(補償)給付5年傷病が治癒(症状固定)した日の翌日介護(補償)給付2年介護を受けた月の翌月1日遺族(補償)給付5年労災で労働者が死亡した日の翌日葬祭料・葬祭給付2年労災で労働者が死亡した日の翌日 まとめ 会社から「労災隠し」をされていると感じた場合には、労働基準監督署に相談してみることをおすすめします。 労災隠しされている場合には「診察や治療は労災指定病院で受ける」「健康保険を使わずに治療を受ける」といった対処法をとり、適切に労災保険の受給ができるようにしましょう。 また、労災による慰謝料の請求をお考えの方は、弁護士に相談しましょう。 関連記事 ・労災は弁護士に依頼するべき?気になる労災の手続きを紹介 --- ### パワハラを弁護士に相談するメリット・デメリット、費用を解説! - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-04-03 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6565 - Categories: ハラスメント・いじめ パワハラを弁護士に相談する際のメリット・デメリットを解説。相談には費用が発生することもありますが、法的な観点から対処法のアドバイスをもらえます。お悩みの方は弁護士に相談しましょう。 職場における暴力や暴言などのパワーハラスメント(パワハラ)でお悩みの方は、弁護士に相談すると、どのようなメリットがあるのか気になっている方は多いのではないでしょうか。 パワハラを弁護士に相談すると実際にパワハラに該当するのか、パワハラへの今後の対処法のアドバイスをもらうことができます。 また、自分で対処が難しい場合には代理人として会社との交渉、損害賠償の請求などを依頼することも可能です。 この記事では、パワハラを弁護士に相談するメリット・デメリットや弁護士費用、相談する間に準備しておくことについて詳しく解説します。 パワハラを弁護士に相談するメリット パワハラの相談は、弁護士だけでなく社内の相談窓口や厚生労働省の総合労働相談コーナーなどでも行えます。 しかし、弁護士に依頼することで、パワハラの差し止め要求や代理人として会社との交渉、損害賠償の請求が可能です。 パワハラを弁護士に相談するメリットは、以下が挙げられます。 パワハラを弁護士に相談するメリット 専門家のアドバイスを受けられる パワハラの差し止め要求書を作成する 損害賠償の請求ができる 労働審判や裁判の負担が軽減される 暴行などの悪質なパワハラの場合は刑事告訴も視野に 専門家のアドバイスを受けられる 労働問題を専門的に扱っている弁護士に相談すれば、パワハラの法律や事例に精通しているため、最適な解決策をアドバイスしてもらえます。 パワハラの差止め請求書を作成する 在職中にパワハラ被害を受け続けている場合、加害者や会社に対して差止め請求書を送付することで、パワハラの行為の停止を求めることができます。 弁護士にパワハラの差止め請求書を作成してもらい、会社にパワハラの中止を要求しましょう。 損害賠償の請求ができる 直接的な暴力により身体的な障害を受けたり、精神的な苦痛によりうつ病になったりした場合には、損害賠償の請求が可能です。 パワハラでは一般的にパワハラの加害者と会社の双方に損害賠償を請求します。 「会社にも損害賠償を請求できるの?」と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれませんが、会社は雇い主として使用者責任を負っています(民法715条)。 使用者責任は、被用者(会社が雇っている人)が仕事に関して不法行為による損害を生じさせた場合に、雇主である会社も責任を負うという規定です。 そのため、職場におけるパワハラで被害を受けた場合には、使用者責任により会社にも損害賠償を請求することができるのです。 また、パワハラを会社側が適切に対応しなかった場合、安全配慮義務違反・環境配慮義務違反として、会社に責任を問うことができます(債務不履行責任、民法415条)。 労働審判や裁判の負担が軽減される 会社と話し合いの場をもうけても会社がパワハラを認めない場合には、労働審判や裁判を行うのも選択肢となります。 事前に弁護士に相談しておくことで、証拠の集め方や法的なアドバイス、裁判所への申し立て手続きなどの協力が得られます。 関連記事 ・労働審判とは?制度の内容や手続きの流れを弁護士がわかりやすく解説 悪質なパワハラの場合は刑事告訴も検討できる 侮辱罪や暴行罪に該当するような悪質なパワハラの場合は、刑事告訴することも可能です。 刑事告訴する場合は被害届の提出が必要ですが、弁護士に相談することで、手続きをスムーズに行えます。 なお、刑事告訴したいとお考えの場合は、刑事分野を扱う弁護士に相談したほうがいい場合もあります。 パワハラを弁護士に相談するデメリット 弁護士に相談することは、メリットばかりではありません。 受け取る慰謝料より弁護士費用の方が高額になる可能性や会社にはいられなくなる可能性があることも理解しておきましょう。 パワハラを弁護士に相談するデメリットは以下が挙げられます。 パワハラを弁護士に相談するデメリット 相談費用が発生する 受け取る慰謝料より弁護士費用の方が高額になる可能性 会社にはいられなくなる可能性が高い 費用が発生する 相談する弁護士事務所によっては、相談費用が発生します。 社内の相談窓口や厚生労働省の総合労働相談コーナーなどは、無料で相談できるため、相談から費用が発生してしまう可能性がある点はデメリットといえるでしょう。 しかし、最近では、初回の相談料を無料に設定している弁護士事務所も多く見受けられます。相談してから対処法を考えたいという方は、無料相談を行っている弁護士事務所を探してみましょう。 パワハラの無料相談窓口について知りたい方は、『パワハラの相談ができる無料窓口5選!相談前に準備すべき事も紹介』の記事もご覧ください。 受け取る慰謝料より弁護士費用の方が高額になる可能性 パワハラで受け取れる慰謝料は、被害内容により異なります。精神的な苦痛で損賠賠償請求した場合に受け取れる慰謝料の相場は50~100万円です。 パワハラに対する訴訟を起こした場合の弁護士費用の相場は50万円を超えることも珍しくないため、場合によっては、受け取れる慰謝料より弁護士費用の方が高額になる可能性もあります。 会社にはいられなくなる可能性が高い 従業員が会社に対して弁護士を伴ったパワハラの交渉を行うことは、滅多にあることではないでしょう。 パワハラを弁護士に相談し、差し止め請求や交渉で解決せずに労働審判や訴訟にまで発展することになれば、会社と長期的に争うことになります。 正当な要求だとしても、会社に外部の弁護士が介入することをこころよく思わない従業員もいるかもしれません。 弁護士にパワハラの相談をすることで、会社に居づらくなる可能性も考慮しておきましょう。 もっとも、弁護士に相談する段階では、会社に居づらくなることは心配する必要はありません。弁護士は守秘義務を負っているので、弁護士事務所に相談した事実が外部に漏らされることはないでしょう。 パワハラの相談を弁護士にする場合の費用 パワハラを弁護士に相談する場合の費用の内訳は、相談料、着手金、報酬金、実費になります。 相談料や着手金が無料の弁護士事務所もありますが、トータルの費用を確認することが重要です。 費用内訳相談料無料もしくは有料1時間あたり1万円程度が相場着手金弁護活動の着手時に発生する弁護士費用無料、数十万円程度の定額、または経済的利益*の10~20%と設定されることが多い報酬金弁護活動の成果に応じて支払われる弁護士費用経済的利益の10~20%+〇万円、と設定されることが多い実費弁護活動で実際に支払われた費用郵便代、交通費、書類作成代など ※弁護士の活動により回収できた金額 相談料 相談料は、弁護士に相談する際にかかる費用です。相談料の相場は30分5,000~10,000円が一般的ですが、相談料無料や初回無料、30分までは無料としている弁護士事務所もあります。 相談する前には、弁護士に何を望むのかを明確にし、関係する書類を準備しておきましょう。相談がスムーズに進むので、相談料の節約になります。 着手金 着手金は、弁護士にパワハラの解決を依頼するための費用です。問題が解決できなかった場合でも支払う必要があります。 着手金は弁護士事務所によって異なり、数十万円程度の定額、または経済的利益の10~20%と設定されることが多いです。着手金を無料にしている事務所もあります。 報酬金 報酬金(成功報酬)は、裁判で勝訴した場合や損害賠償の請求ができた場合に支払う費用です。 一般的には、請求金額に対する割合で決めていることが多いです。弁護士費用の中では最も大きな割合を占める費用なので、しっかり確認しておきましょう。 実費 実費とは、弁護士が裁判所まで行く場合の交通費や、書類のコピー代、収入印紙代などです。 実費は着手金に含まれない場合が多いので、弁護士費用を計算をする場合には事前に確認しておきましょう。 パワハラの相談を弁護士にする前に準備しておくこと 弁護士にパワハラの相談をして、実際にパワハラ問題の解決を依頼するかどうかを判断するためには、パワハラの証拠が必要になります。 また、パワハラ以外に、他の労働問題が発生していないかも確認しておきましょう。 パワハラの事実を客観的に証明できる証拠を集めておく パワハラは、本人の証言だけでは立証することが難しいです。パワハラを立証するためには、客観的に証明できる証拠が求められます。 具体的には、以下のような証拠をそろえるといいでしょう。 パワハラの証拠となり得るもの 暴言の内容を記録した音声メモ 高圧的な文章が記載されたメール 病院の診断書 被害者が作成した日記 音声データやメールなどがない場合でも、パワハラを受けた日時や内容を詳細に書いたメモがあれば、有効な証拠になりやすいです。 うつ病と言った診断が出た場合には、医者からの診断書も証拠になります。 パワハラの証拠については『上司をパワハラで訴える方法は?訴える際に必要な証拠を解説』の記事もご覧ください。 パワハラ以外に問題がないかを確認しておく パワハラが発生しているような会社は、極端な長時間労働やノルマを課している、いわゆるブラック企業である可能性も高いです。 パワハラといった精神的な苦痛だけでなく、残業代・給料などの賃金未払いや不当解雇、違法な退職勧奨などの労務問題も発生していないか確認しましょう。 パワハラの訴訟では、証拠不足などでパワハラが認められなかったり、損害賠償の請求が認められない場合があります。 しかし、同時に賃金の未払いを請求をしている場合は、賃金の未払いが認められるケースがあります。 パワハラで損害賠償請求するかどうかを判断する際には、他の労務問題に対する請求も行えるかが重要です。パワハラ以外に他の労働問題が発生していないかを確認しておきましょう。 関連記事 ・ブラック企業を訴えたい!訴えることができるケースや相談窓口を解説 --- ### パワハラの相談ができる無料窓口5選!相談前に準備すべき事も紹介 - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-06-28 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6559 - Categories: ハラスメント・いじめ 「上司から暴言を受けている」「上司が全く仕事を与えてくれない」など、上司からのパワハラ行為にお悩みの方はいませんか? パワハラを受けた時、誰かに相談したいと思ってもどこに問い合わせすべきか分からないですよね。 今回はパワハラの相談先として適切な機関を5つご紹介します。どれも無料で相談を受け付けている窓口なので、ぜひ参考にしてみてください。 無料でパワハラ相談ができる相談先5選 厚生労働省総合労働相談コーナー 総合労働相談コーナーでは、労働トラブルに関する悩みをワンストップで解決することが可能です。 パワハラのほか、解雇や雇い止め、賃金引き下げ、採用などのあらゆる労働問題に対し、面談もしくは電話で話を聞いてもらえます。 総合労働相談コーナーは、全国の労働基準監督署や都道府県労働局の中に設置されているため、お住まいの地域にかかわらず、対面での相談が受けやすいのがメリットです。 また、相談には料金が発生せず、予約も必要ありません。相談者のプライバシーの保護にも配慮してくれるので、安心して相談できるでしょう。 参考:厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」 NPO法人労働組合 作ろう!入ろう!相談センター 労働組合作ろう!入ろう!相談センターは、様々な労働問題の相談を受け付けているNPO法人です。 会社で従業員として働く人であれば誰でも相談ができ、中立的立場でなく、完全に労働者側にたった労働相談をおこなうところが特徴です。 相談方法には電話・メール・来所(要予約)の3つのやり方があります。 電話や面談の場合、平日の午前9時~午後5時までの営業時間内での対応になるので注意してください。 また電話や面談では、事前に電話予約が必要になります。一方、メールに関しては、営業時間外でも随時受け付けています。 ただし、職場のパソコンから問い合わせメールを送信することがないよう注意が必要です。女性の相談員も在籍しているので、女性の方も気兼ねなく相談できるでしょう。 相談後にジャパンユニオンという労働組合への加入を促される場合があります。 入会金や月組合費が発生しますが、ユニオンに加入すれば2回目以降も継続して個別相談に応じてくれるというメリットがあります。 参考:NPO法人労働組合 作ろう!入ろう!相談センター 法テラス 法テラスは国が設立した機関であり、パワハラを含めた様々な法的トラブルの無料相談を実施しています。 法テラスへの相談方法は、電話・メール・対面の3つです。電話は無料で利用でき、法テラスの仕組みに関する話をしたり、弁護士の無料相談受付などの対応をしたりしてもらえます。 また全国各地の法テラス事務所では面談による問い合わせにも対応しています。メールは24時間365日無料で、問い合わせ可能です。 法テラスでは利用者からの相談内容に応じて、弁護士などの適切な相談機関を紹介してくれます。 経済的に余裕がない方からの相談では、弁護士費用の立て替えまでもサービスに含まれるため、「パワハラで上司や会社を訴えたいけど、弁護士報酬や裁判提起に生じる費用を捻出できない」という方は法テラスに相談するのがおすすめです。 参考:日本司法支援センター法テラス「お近くの法テラス(地方事務所一覧)」 こころの耳 こころの耳は、厚生労働省が運営しているメンタルヘルス・ポータルサイトです。酷いパワハラを受け、精神的に参っている人はこちらを利用してみると良いでしょう。 こころの耳ではさまざまな相談窓口が用意されており、メールと電話に加えSNSでの相談が可能です。 相談の結果、必要だと判断されれば、より専門的な機関を紹介してくれる場合もあります。メンタルケアの抜本的な解決も可能なので、メンタルの問題でお悩みならぜひ利用を検討したい機関です。 こころの耳のサイト上では「疲労蓄積度セルフチェック」を受けられたり、ストレス軽減ノウハウなどコンテンツも充実しています。 参考:こころの耳 法務省みんなの人権110番 みんなの人権110番は、パワハラなど様々な人権問題の相談を受け付けている相談機関です。 パワハラは人権侵害の要素をはらんでいるケースも少なくありません。パワハラを理由に人権を傷つけられたと感じているなら、みんなの人権110番の利用をおすすめします。 電話をかけると最寄りの法務局・地方法務局につながり、法務局職員もしくは人権擁護委員が相談に応じてくれます。 他にも法務局・地方法務局の窓口で対面による相談も実施しており、希望があればインターネットからの相談も可能です。 法的な観点からパワハラへの解決策を一緒に考えてくれるので、パワハラから一刻も早く逃れたいという方はぜひ利用してみましょう。 参考:法務省みんなの人権110番 パワハラは弁護士に相談できる? 弁護士にパワハラの相談をすることも可能です。 弁護士であれば、過去の判例をもとに受けた行為がパワハラに該当するかの判断や、具体的な解決策の相談ができます。 パワハラの訴訟を起こすことになった場合には、引き続き依頼できるというメリットもあります。 ただし、弁護士相談は、必ずしも無料でできるとは限りません。相談料が必要な弁護士事務所もあります。 初回無料の相談を行っている弁護士事務所もあるため、インターネットなどで探してみるのもいいでしょう。 関連記事 ・パワハラを弁護士に相談するメリット・デメリット、費用を解説! パワハラ相談前に準備しておくこと まず現在の状況やパワハラによって生じた影響を整理する パワハラの状況を具体的に説明できれば、相談相手にも状況が事細かに伝わり、両者の理解に食い違いがなくなります。そのため、できる限り状況を具体的に説明できるように準備しておきましょう。 また相談の際は状況だけでなく、パワハラ行為を受けた結果、どのような悪影響が自分に生じたかという点も説明することが大切です。「パワハラを受け精神的な苦痛を受けた」と「パワハラの結果、会社にいけなくなり病院にも通院することを余儀なくされた」では事の重大性が異なります。 解雇や降格処分など労働条件に悪影響が生じた場合、それぞれの事象を管轄する労働法令によって解決がはかられます。 たとえば解雇では、労働契約法16条によって「客観的合理性を欠き、社会通念上相当だと言えない理由」の場合、解雇は認められません。 パワハラによる解雇は上記の要件を満たさない場合も多く、不当解雇に該当する可能性も十分あります。 状況やパワハラによって生じた悪影響を具体的に説明することで、適切な支援を受けられる可能性が高まります。 証拠を集める パワハラ立証のために最も重要なのは証拠です。 パワハラの事実があったとしても証拠がなければ立証できず、泣き寝入りとなる場合も多いです。パワハラの証拠としては、以下のようなものが考えられます。 パワハラの証拠となり得るもの 暴言の内容を記録した音声メモ 高圧的な文章が記載されたメール 病院の診断書 被害者が作成した日記 また第三者の証言も証拠となるので、パワハラを受けているなら早めに同僚や友人などに相談しておくと良いでしょう。 パワハラの証拠については『上司をパワハラで訴える方法は?訴える際に必要な証拠を解説』で詳しく解説しています。 まとめ この記事ではパワハラを相談できる窓口や、パワハラを相談するときに準備しておくことについてまとめてきました。 無料で相談できる窓口をご紹介したので、費用も気にせずに相談できるでしょう。パワハラにお悩みの方は、相談してみてはいかがでしょうか。 --- ### セクハラで慰謝料を請求したい!慰謝料の相場や用意すべき証拠を解説 - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-03-28 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6543 - Categories: ハラスメント・いじめ セクハラで辛い思いをしているのであれば、慰謝料の請求を検討してみてはいかがでしょうか。この記事では、セクハラで慰謝料を請求するための基本的な知識と、準備すべき事項を紹介します。 セクハラは、いくら加害者側が「悪気はなかった」と言い張ったとしても、受けた側は精神的なショックを受けます。 辛い思いをしているのであれば、慰謝料の請求を検討してみてはいかがでしょうか。 セクハラにあって、精神的な苦痛を受けた場合、セクハラ行為者や、会社に対して慰謝料(損害賠償)請求が可能です。 この記事では、セクハラで慰謝料を請求するための基本的な知識と準備すべき証拠、慰謝料の相場を紹介します。 セクハラで慰謝料を請求するための基礎知識 慰謝料請求という言葉自体はメディアなどで耳にする機会が多く、聞き馴染みがあると思います。 しかし、実際に自分自身が慰謝料という形で損害賠償を請求すると考えると、心理的なハードルが高くなります。 セクハラで慰謝料を請求する第一歩を踏み出すために、まずは慰謝料請求についての基本的な知識を確認していきましょう。 セクハラに関する基本的な知識 セクハラは、正式にはセクシュアル・ハラスメントといい、「性的嫌がらせ」を意味します。最も広い意味では、刑法上違法とされる不同意わいせつ罪といった行為から、民事上の不法行為に該当するとまでは認められないような単なる「マナー違反」まで含んだ、多岐にわたる概念とされています。 どういった行為がセクハラになるかの明確な判断基準はありませんが、セクハラには「対価型」と「環境型」の2種類があるとされています。 対価型のセクハラは、性的な事柄、言動等に対して拒絶するなど何らかの対応をしたことを原因として、解雇、降格などの客観的な不利益を受けることを指します。 環境型のセクハラは、性的な言動などによって働く環境が不快となり、就労に支障が出ることを意味します。 セクハラで「慰謝料」を請求するとは? 慰謝料とは、相手の不法行為によって受けた、精神的な苦痛を慰謝するための損害賠償を指します。 セクハラにあって、精神的な苦痛を受けた場合、セクハラ行為者や、会社に対して慰謝料の請求が可能です。 「会社にも慰謝料を請求できるの?」と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれませんが、会社は雇い主として使用者責任を負っています(民法715条)。 使用者責任は被用者が仕事に関して不法行為による損害を生じさせた場合に、雇主である会社も責任を負うという規定です。 そのため、職場におけるセクハラにより被害を受けた場合には、使用者責任により会社にも慰謝料を請求することができるでしょう。 また、セクハラを会社側が適切に対応しなかった場合、安全配慮義務違反・環境配慮義務違反として、会社に責任を問うことができます(債務不履行責任、民法415条)。 セクハラによる慰謝料は何によって決まる? セクハラの慰謝料を決める要素としては、以下のようなものが挙げられます。 セクハラの慰謝料が決まる要素 セクハラ行為の態様 回数や期間 セクハラ加害者の職務上の地位 セクハラ加害者が謝罪や改善の意思を有しているか セクハラ被害者がどの程度の心身ダメージを受けたか たとえば、セクハラをした加害者の地位が高く、被害者にとって拒むことが難しい状態でのセクハラであれば、慰謝料も高額になる傾向があります。 また、セクハラの期間が長期にわたっている、精神的な苦痛が大きいために精神科・心療内科で治療を受けているような場合も、慰謝料は高くなる可能性が高いです。 また、セクハラによって退職している場合は、精神的な苦痛に対する慰謝料だけではなく、逸失利益(労働者がセクハラで退職せず、本来会社で働いていれば得られた利益)として、加算されることがあります。 セクハラで慰謝料を請求するための準備 セクハラで慰謝料を請求するには、証拠等の準備が必要です。証拠には、セクハラ行為を裏付ける客観的なものや当事者の地位等がわかるもの、診断書や治療費等の請求書などが挙げられます。 具体的に何を準備しておくべきか、確認していきましょう。 セクハラ行為を示す証拠となるもの セクハラで慰謝料を請求するには、何よりもセクハラ行為を裏付ける、客観的証拠が必要です。証拠としては、以下のようなものが挙げられます。 セクハラの証拠となるもの メールやLINEのやりとり 録音データ 日記やSNSへの記録 メールやLINEのやりとり 「相手の気分を害さないよう返答してしまっているので、証拠にならないのでは?」という場合でも、セクハラを受けた側の立場や心境も含めたうえで、セクハラ行為かどうかの検討が可能です。 メールやLINEのやり取りは、文面で残るため、証拠として収集しやすいです。セクハラと考えられるメッセージがあった場合には、証拠として保存しておきましょう。 録音データ 録音データは、セクハラ行為者の具体的な発言や口調が分かるため、非常に有効な証拠となりえます。 なお、秘密録音であっても、著しく反社会的な手段によるものではない限り、証拠としての効力は否定されません。 日記やSNSへの記録 セクハラの被害者が、セクハラ行為を日々記録したものであれば、セクハラ行為の証拠となりえます。 もっとも、録音データほどの客観性はないため、裁判においてはその信用性を争うことが多くあります。 セクハラの被害者・加害者両者の供述の信用性の比較をして、セクハラ行為があったかの判断がされます。 被害者による日記やSNSなどに記録した内容を支持し、セクハラ行為を認めた裁判もあります。矛盾がなく具体的かつ詳細な記録であれば信用性は高いでしょう。 セクハラ当事者の地位等がわかるもの 職場における契約形態や雇用形態が大きく違う人同士の間で、力関係を背景になされたセクハラの場合、慰謝料が高くなる可能性が高いです。 証拠として以下のようなものを用意しておくと良いでしょう。 セクハラ当事者の地位等がわかるもの 雇用契約書 就業規則 組織図 上記の書類があることで、どういった地位・立場の人間がセクハラをしたかが分かりやすくなります。 また、セクハラによって休職・退職に至った場合は、慰謝料だけではなく、不就労期間中の賃金や、逸失利益を請求できる可能性もあるので、参考資料として手元に保管しておきましょう。 診断書や治療費等の請求書 セクハラによってうつ病などの精神疾患にかかった場合、診断書や治療費等の請求書があると、慰謝料請求における根拠となる可能性があります。 慰謝料に加えて、治療費等の実費も請求できるかもしれません。 なお、現在もセクハラ行為を受けている方がいれば、セクハラ行為があった時から、できるだけ早いタイミングで受診をし、診断書を取得しておきましょう。 セクハラ行為から1年4か月後に診断書が作成されたことから、精神疾患とセクハラ行為の因果関係が否定された裁判例もあります。 証拠がない場合は弁護士に相談! セクハラの慰謝料を請求するときに収集すべき証拠をご紹介しましたが、証拠が手元に一切ないことも考えられます。 証拠がない場合には、弁護士に相談してから証拠を収集するのも一つの選択肢です。 弁護士に相談すれば、個別具体的に実際にどういった証拠が役立つのか、どんな証拠を収集すべきなのかアドバイスをもらうことができるでしょう。 また、弁護士に相談することで、そもそも自分が受けている行為がセクハラに該当するのか、過去の判例などから慰謝料がいくら受け取れる可能性があるのかなどを知ることができます。 弁護士に相談した際には、セクハラの期間や態様などを聞かれることになるので、事前にある程度情報を整理してからいくと、より適切な回答をうけられるでしょう。 関連記事 ・セクハラを弁護士に相談する|費用・準備するもの・注意点を確認! セクハラの慰謝料の相場は? セクハラの慰謝料の相場は、一般的に数十万円~百万円程度です。ただし、セクハラ行為が軽微と言えない場合の慰謝料の相場は、100万円を超えることもあります。 セクハラで慰謝料が認められた例 【10万円】大阪地方裁判所(平成10年10月30日)・出張先のホテルで女性部下をベッドに誘った。 【30万円】高松地方裁判所(令和元年5月10日)・手や腰に触れたり、スカートの裾を持ち上げた。・わいせつな画像を見せたり、卑猥な言動を行った。 【60万円】東京地方裁判所(平成29年9月22日)・口論の際、女性の胸を触った。・後日、女性に対し「胸を触ったことをばらしたのか」と問いただした。 【120万円】東京地方裁判所(平成30年1月16日)・6年以上の長期にわたり、卑猥な発言やお尻を触るなどの行為を繰り返し行っていた。・財布やスマートフォンに勝手に触った。 セクハラで慰謝料請求が認められた裁判の具体例 参考までに、セクハラで慰謝料請求が認められた裁判について、具体的にみていきましょう。 セクハラの慰謝料60万円が認められた事案(東京地裁平成26. 2. 28) 会社の役員であるBから度重なるセクハラを受けたAが、不安障害を発症したとして、Bに対し損害賠償を請求した事案です。 この裁判では、Aが作成していた備忘録が主な証拠となっています。 この備忘録の信用性につき、備忘録の記載がBの自白や客観的事実と整合すること、セクハラに関する記載が具体的で迫真性に富んだ内容であること等を理由に、信用できるとしました。 一方で、この備忘録に記載のない言動については、セクハラ行為として認定していません。 Bのしたセクハラ行為に対し、Aは明確な拒否をしていませんでしたが、会社内でAに対して優越的な地位を有するBが行ったものであったこと、そして、Aの真意に基づく承諾なしに身体に触れるといった性的羞恥心を害する言動であったことが明らかなもので、不法行為を構成するとしています。 Aの人権を侵害し、精神的苦痛を被らせるという点から、慰謝料請求が認められましたが、以下のような理由から、Aが請求した額から減額されています。 セクハラ行為があった期間は約2か月にとどまり、頻繁に行われたものとまではいい難く、身体への接触は数回であった Aについて作成された診断書には、Aが不安障害を発症した原因や具体的な所見が記載されていなかった 今回のセクハラ行為が必ずしも長期間、頻回に及ぶものではなかったこと等に照らすと、診断書の記載をもって、Bによるセクハラ行為が、Aの不安障害の発症原因であることを推認することはできないと判断され、慰謝料が減額され、最終的に60万円となりました。 なお、この裁判では、慰謝料60万円に加え、6万円の弁護士費用を合わせた66万円の支払いを命じています。 セクハラの慰謝料300万円が認められた事案(京都地裁平成19. 4. 26) 会社の代表取締役であるBからセクハラ行為を受けたAが、退職を余儀なくされたとして、Bと会社に対して損害賠償を請求した事案です。 ちなみにこの裁判では、録音した音声データが証拠として認められています。 Bは、「音声データは改ざんしたものである」と主張しましたが、裁判所は、声紋鑑定等を通し、改ざんはなくB本人の音声であると最終的に判断しています。 慰謝料の額については、以下の点を含めた一切の事情から、300万円が相当であると判断されています。 Aは、就職活動に苦労した経験から、正社員として働き続けたいという気持ちで、仕事で認められるように努力し、入社直後からセクハラ行為に耐え続けてきたが、結局Bの性交渉の要求に応じなかったことを理由として退職に追い込まれた Bは「セックス要員として雇った」、「セックスができなければ他の仕事をいくら頑張っても認めない」、「セックスができないならば退職しろ」等と言って、職務として性交渉を要求しており、Aの人格を全面的に否定するものであった Aが就職した直後から退職まで1年2か月にわたって継続的に行われていた Aが性交渉を拒否したことを理由として、Aに退職を強要した なお、セクハラの慰謝料として認められた額は300万円ですが、Aはセクハラが原因で退職に至っているため、逸失利益として273万円、そして弁護士費用57万円を合わせて、Bと会社に対し630万円の支払いを命じています。 まとめ セクハラで受けた精神的苦痛は、慰謝料を請求することが一つの解決策になります。 セクハラの慰謝料請求が認められた裁判をご紹介しましたが、労働審判や訴訟など、さまざまなやり方があるので、まずは弁護士に相談することをおすすめします。 弁護士に相談する一番のメリットは、労働審判や訴訟などの法的手続きを視野に入れた回答がもらえる点です。 ご自身の置かれている状況を踏まえて、今後どうすればいいのかアドバイスをもらうことができるでしょう。 無料の相談を受け付けている弁護士事務所や、女性弁護士が相談に乗ってくれる事務所もあるので、抱え込まずに相談してみてはいかがでしょうか。 関連記事 ・セクハラ被害の相談ができる無料窓口7選!抱え込まずに相談しよう --- ### 労使協定とは?内容や種類、違反したときの罰則を解説 - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-03-19 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6544 - Categories: 労働問題全般 労使協定とは、従業員の代表者と使用者が書面で約束をすることで、「原則では認められていないことを例外的にできるようにする」効果を持たせる協定のことです。 もし「会社が労使協定を無視している」「会社が36協定を届け出ずに残業をさせている」などのトラブルでお悩みの方は、弁護士に相談することをおすすめします。 「労使協定とは?」「労使協定と就業規則の違いがわからない」 労使協定という言葉を聞いたことはあっても、内容や定義まではわからないという方も多いのではないでしょうか。 労使協定とは、従業員と使用者(会社)が書面で約束をすることで「原則では認められていないことを例外的にできるようにする」効果を持たせる協定のことです。 使用者は労使協定の周知義務を負っているため、労働者は会社と結んだ労使協定の内容を確認できます。もし、労使協定が確認できない場合は、違法である可能性があります。 今回は、労使協定の内容や種類、違反した時に使用者が科される罰則を解説します。 労使協定とは? 労使協定とは 労使協定とは、従業員の代表者と使用者が書面で約束をすることで、「原則では認められていないことを例外的にできるようにする」効果を持たせる協定のことです。 ここでいう従業員の代表者とは、過半数以上の従業員が在籍している労働組合があればその労働組合、そのような労働組合がない場合は従業員の過半数を代表する者のことを指します。 労働条件といった内容を書面の形で残すことで、労働者の不当な搾取を防止することができます。 代表的な労使協定に、36協定があります。 36(サブロク)協定とは、労働者に法定労働時間を超えて労働させたり、休日労働をさせたりするときに結ぶ労使協定のことをいいます。 36協定について詳しく知りたいという方は、『36(サブロク)協定とは?ポイントと残業時間との関係について解説』をご覧ください。 労使協定と就業規則の違い 就業規則とは、使用者が作成する、職場に関する基本的なルールのことをいいます。 労働者に対する意見聴取が義務付けられているものの、使用者と労働者の合意による労使協定とは異なり、基本的には使用者が一方的に作成するものです。 また、就業規則では権利・義務の関係が発生するという特徴があります。 たとえば、従業員は就業規則を守らなければならないという義務が発生しています。 そのため、会社は就業規則に違反した従業員に対して懲戒処分を与える権利をもつことになります。 これに対し、労使協定では権利・義務の関係が発生しません。 たとえば、36協定を結んで時間外労働(残業)が可能になったからといって、必ずしも残業をしなければならないということにはなりません。 労使協定の種類 労使協定は労働基準監督署への届け出が必要か否かによって、2種類に分けることができます。 届け出が必要な労使協定 以下の労使協定については、労使協定を締結したという事実を、使用者が労働基準監督署に届け出なければなりません。 届け出が必要な労使協定 委託を受けて労働者の貯蓄金を管理する場合 1か月単位や1年単位で変形労働時間制を採用する場合 1週間単位で非定型的変形労働時間制を採用する場合 労働者に時間外労働・休日労働をさせる場合 事業所外労働のみなし労働時間制を採用する場合 専門業務型裁量労働制を採用する場合 届け出が必要ない労使協定 以下の労使協定については、労使協定を締結したという事実を届け出る必要はありません。 届け出が必要ない労使協定 賃金から法定控除以外の控除をおこなう場合 フレックスタイム制を採用する場合 休憩の一斉付与の例外について定める場合 年次有給休暇の時間単位での付与について定める場合 年次有給休暇の計画的付与について定める場合 年次有給休暇の賃金を標準報酬日額で支払う場合について定める場合 育児休業、看護休暇および介護休業ができない者の範囲について 労使協定は周知されてはじめて効力を発揮する 会社が負う周知義務と3つの周知方法 労使協定には、届け出の必要性の有無に必要なく、周知義務があります。 周知義務とは、労働者に協定や規則の内容を認識させる義務のことをいいます。 締結した労使協定は、適用される事業場の労働者に対して周知が義務付けられています(労働基準法106条1項)。 正社員のみならず、アルバイト・パートを含む全ての労働者が労使協定を見れるようになっていなければなりません。 周知方法に関しては、労働基準法施行規則52条で以下のように定められています。 法第百六条第一項の厚生労働省令で定める方法は、次に掲げる方法とする。 一 常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること。 二 書面を労働者に交付すること。 三 磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること。 労働基準法施行規則第52条の2 分かりやすく言うと、確認できる場所への掲示や書面での配布、社内のネットワークで共有することが求められています。 労使協定を確認する方法は? 労使協定を確認する方法として、以下の3つが挙げられます。 労使協定を確認する方法 掲示を確認する 書面交付を確認する 社内のネットワークを確認する 掲示を確認する 事業所によっては、労使協定を掲示していることがあります。もし自分で労使協定の内容がわからないという場合は、人事担当者に確認しましょう。 書面交付を確認する 36協定といった労使協定は1年に1度届出をすることが望ましいとされています。そのため、企業によっては、更新のタイミングで労働者に書面で交付する場合もあります。 もっとも、書面交付は義務ではないので、そのほかの方法で周知している企業もあります。 社内ネットワークを確認する 社内ネットワークに労使協定のファイルが保存されている場合もあります。 ファイルを保存していても特定の人物しかファイルが見られない場合には、周知義務を果たしているとは言えません。 労使協定の規則に違反した使用者はどうなる? 締結した労使協定に違反した場合 たとえば、36協定を結んでいても、時間外労働の上限を超えて労働者を働かせた場合、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられることになります(労働基準法32条)。 労使協定の届け出をしなかった場合 労使協定の届出義務を怠った場合、使用者には30万円以下の罰金が科される可能性があります(労働基準法120条1号)。 労使協定の周知義務に違反した場合 使用者が労使協定の内容を周知する義務を怠った場合、30万円以下の罰金が科されるおそれがあります(労働基準法120条1号)。 まとめ 労使協定とは、従業員の代表者と使用者が書面で約束をすることで、「原則では認められていないことを例外的にできるようにする」効果を持たせる協定のことです。 もし「会社が労使協定を無視している」「会社が36協定を届け出ずに残業をさせている」などのトラブルでお悩みの方は、弁護士に相談することをおすすめします。 --- ### セクハラで裁判を起こしたい!セクハラ訴訟の流れと訴えるときのポイント - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-03-25 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6545 - Categories: ハラスメント・いじめ セクハラでの訴訟・裁判でお悩みの方に向けて、慰謝料や会社の債務不履行に対する損害賠償を解説しています。「弁護士の選定」「証拠集め」「請求内容の決定」などの重要ポイントもまとめています。 重い腰を上げてセクハラ被害を会社に訴えても、満足な対応をしてもらえないケースがあります。 交渉で解決が図られないケースでは、最終手段として裁判を検討することになるでしょう。 しかし、セクハラの裁判は、どのような流れとなるのか、期間はどのくらいかかるのか、訴えると不利益を被ることはあるのかなど疑問点がたくさんあると思います。 そこで、今回の記事では、セクハラ訴訟の流れや訴えるときのポイント、費用について、あなたが安心して裁判を進めることができるように弁護士の立場からわかりやすく解説していきます。 セクハラ訴訟の流れ 「セクハラで上司・会社を訴える」などという話を聞きますが、セクハラ訴訟とは一般的に、セクハラされたことに対して慰謝料請求の訴えを起こすことです。 セクハラは行為の態様により、不同意わいせつ・不同意性交罪などにも該当するため、刑事裁判に発展することもありますが、この記事では民事訴訟の慰謝料請求について詳しく解説します。 セクハラ被害にあって加害者や会社を訴える場合、訴訟の手順は下記の通りです。 セクハラ訴訟の手順 訴状を提出する 裁判を提起する 口頭弁論 争点整理 証拠を調べる 判決 1. 訴状を提出する セクハラを訴えるためには、第一に訴状の提出が必要です。訴状には、以下の事項を記載します。 原告の氏名・住所 被告の氏名(加害者)、法人名(会社)・住所 セクハラ行為の内容 セクハラ行為によって受けた損害 求める損害賠償(慰謝料)額 2. 裁判を提起する 証拠や証拠証明書と併せて訴状を提出することで裁判を起こします。 また弁護士を依頼する場合には訴訟委任状、加害者とともに会社も訴える場合には会社の商業登記簿謄本の提出も必要です。 訴状が受理されると、裁判所は被告に答弁書の提出を命じます。 答弁書は、被告が訴状の内容に対して認める部分と否認する部分、および被告自身の主張を記載した書類です。 3. 口頭弁論 裁判所は、原告と被告を呼び出して、口頭弁論を開きます。 口頭弁論とは、裁判官の面前で、当事者や弁護士が主張や証拠を述べる手続きです。 裁判官は、当事者本人の態度や表情から主張の信憑性を判断します。 4. 争点整理を行う 口頭弁論が終わると、弁論準備期日となります。 証拠の提出や証人の尋問に必要な準備を行い、それぞれの主張が整理されます。 5. 証拠を調べる 争点整理が終わると、争点の主張に対して、真偽を判断するために証拠を調べることになります。 詳しくは後述しますが、セクハラの証拠としては、録音や日記などが挙げられます。 また、必要に応じて証人尋問が行われることもあります。証人尋問はセクハラの当事者のみならず、社内の目撃者などに行うこともあります。 6. 判決  裁判官は、証拠に基づいて事実関係を認定し、法律に基づいて判断を下します。判決は、書面で示されます。 判決では、原告の請求が認められるか否か、および認められる場合の損害賠償額などが決定されます。 セクハラを訴えるときのポイント ポイント①弁護士の選定 裁判は一人でも起こすことはできますが、セクハラの裁判は、弁護士に相談するのがおすすめです。 セクハラの裁判は、手続きや準備すべき書面、また実際の公判の手続きなどに高度な専門知識が要求され、準備に時間もかかります。 弁護士に相談・依頼することによって、法的な知識や経験をもとに慰謝料を請求することが可能です。 また、準備する書面や公判の手続きを弁護士に一任できるため、精神的な負担を軽減することもできるでしょう。 依頼する弁護士を探す方法は、インターネットでの検索や、知人からの紹介などがあげられます。 候補が決まれば、必ず面談して人柄や相性などを確認しましょう。また、報酬については不明点を残さないようにしっかり聞くことも重要です。 とはいっても、弁護士に相談するときにどんな内容を聞かれるのか、どこまで詳しく説明しなければならないのかなど、不安な点もあるでしょう。 弁護士に相談する際の費用や準備するものに関して詳しく知りたい方は、『セクハラを弁護士に相談する|費用・準備するもの・注意点を確認!』の記事をご覧ください。 ポイント②証拠を収集する セクハラ訴訟のポイントは、セクハラ行為があったことを証明する証拠をどれだけ集められるかです。 たとえば、下記のような証拠を集めることが大切です。 セクハラ訴訟で重要となる証拠 セクハラの録音、録画などの証拠 セクハラについて記した日記、メモ セクハラによるストレスでうつ病などになった場合は医師の診断書 セクハラの目撃者がいればその人の証言 会社や警察に相談した事実の記録 セクハラが繰り返し行われている場合は、スマホやボイスレコーダーなどでセクハラを受けている会話を録音するのも選択肢の一つです。 相手の承諾のない秘密録音になりますが、判例でも証拠能力が認められています。 もっとも、セクハラは人目につかない場所で行われるのが一般的なので、明確な証拠がないケースもあります。 その場合には、自分で書いた日記やメモの信ぴょう性が認められれば、証拠として使える可能性があります。 信ぴょう性を高めるためには、できるだけ具体的に記入することが大切です。 「5W1H」と呼ばれる、いつ・どこで・誰が・なにを・なぜ・どのようにセクハラがあったのか、そしてどのような気持ちになったかを詳細に記載しておきましょう。 客観的な証拠があることが、セクハラの裁判の勝敗を分けます。裁判を起こす際には、証拠をあらかじめ準備してから望むべきといえるでしょう。 ポイント③請求内容の決定 セクハラ訴訟のポイントの3つ目は、請求内容の決定です。弁護士と相談し、誰を訴えるのか、何に対して訴えるのかを決めます。 セクハラは、加害者だけでなく、会社が義務を怠った事や使用者責任を果たすべき事などを根拠に、会社に対しても賠償請求することができます。 セクハラで請求できる損害賠償は、不法行為に基づく損害賠償(民法709条)と、債務不履行、使用者責任に基づく損害賠償(民法415条、715条)があります。 不法行為に基づく損害賠償は、加害者が故意に、あるいは過失によって被害者に損害をもたらしたことに対する賠償です。 セクハラの事案で言えば、加害者本人からのセクハラによって損害が生じたので、加害者本人に対して賠償を請求することができます。 債務不履行、使用者責任に基づく損害賠償とは、会社が負うべき義務を果たさなかったことに対する賠償です。 会社は職員の安全や健康に配慮するという安全配慮義務を負っており、その一種として、従業員に対するセクハラやパワハラがない安心して働ける職場環境を整る「職場環境配慮義務」があるとされています。 従業員の不法行為により第三者に損害が生じたときには、会社も損害賠償をしなければならないとされています(使用者責任)。 セクハラでは、会社が義務を怠ったことや使用者責任を果たすべき事などを根拠に、会社に対しても賠償請求することができるのです。 誰を訴えるのか明確にしてから訴状を提出しましょう。 セクハラ訴訟で争いになりやすいポイント セクハラに基づく損害賠償請求では、実務上以下の点が争いとなりやすいです。 セクハラ訴訟で争いになりやすいポイント セクハラの事実の有無(対加害者) それが業務に関連して行われたか(対会社) 会社に職場環境配慮義務違反があったのか(対会社) セクハラの事実の有無(対加害者) セクハラをしてきた相手が、その性的言動の事実自体について争ってくることがあります。 また行為の解釈の点で、「確かにそのような行為は行ったが、これはセクハラには当たらない」といった反論をしてくるケースもよくあります。 それが業務に関連して行われたか(対会社) 会社に対して使用者責任に基づく損害賠償請求をするには、セクハラ行為が会社の業務の執行について行われたことが必要です。 会社側が「セクハラ行為は業務に関連したものではないので、使用者責任は生じない」等と反論してくることがあります。 会社に職場環境配慮義務違反があったのか(対会社) 会社側が「セクハラ防止措置を適切にとっていたので職場環境配慮義務違反は犯していない」と反論してくるケースがあります。 職場環境配慮義務違反があったかどうかという点では、職場がセクハラに対してどのような対策、対応をしていたかがポイントとなります。 具体的には、セクハラがあってはならない旨の方針を明確にし、労働者に周知・啓発していたか、セクハラの相談の申出があった後、事実関係を迅速かつ正確に確認したかなどが問われれます。 セクハラの裁判にかかる費用 セクハラの裁判にかかる費用は、主に裁判所への費用と弁護士費用があります。 裁判所への費用 裁判所への費用の内訳として、収入印紙代と郵便切手代があげられます。 収入印紙代は、訴状などの書類に貼付する裁判の申立手数料です。セクハラの慰謝料請求では、加害者・上司に請求する金額に応じて金額が変動します。 参考:手数料額早見表 郵便切手代は、裁判所から被告や関係者に郵便物を送付するための郵便費用です。郵便切手代は、約6,000円程度です。 弁護士費用 弁護士費用は、弁護士によって異なります。着手金、成功報酬金、実費などから構成されます。 着手金は、弁護士に依頼する際に支払う費用です。成功報酬金は、裁判で勝訴など一定の成果が得られた場合に支払う費用です。実費は、弁護士の交通費や証拠収集などの費用です。 着手金は、おおよそ10~30万円が相場となります。成功報酬金は相手から回収できた額(慰謝料・損害賠償金など)のうち、おおよそ20~30%が相場となります。 弁護士費用は、慰謝料の請求額によって大きく異なるため、どのくらいの費用がかかるか詳しく知りたい方は弁護士に相談しましょう。 セクハラの裁判例と慰謝料の相場 セクハラでの訴訟方法についてみてきましたが、慰謝料の相場はどれくらいなのでしょうか。実際の裁判例などでみていきましょう。 軽微なセクハラ行為に対する慰謝料は数万円から数十万円 過去の判例では、比較的、軽微なセクハラ行為に対する慰謝料は、数万円から数十万円です。具体的には下記の言動が該当します。 わいせつな発言を繰り返す 懇親会で女性部下の身体に触れる ラブホテルに誘う など 一般的には上司から部下に対して、男性から女性に対するものが多いですが、逆のケースもあります。 労働基準法の違反行為があった場合などは100万円を超えることも 労働基準法の違反行為があった場合や、セクハラ行為が軽微ではないと判断された場合は、慰謝料が100万円を超えることもあります。また、セクハラが理由で病気になった場合なども同様です。 セクハラ行為が長期間にわたって繰り返された うつ病などの治療が必要になった 退職を余儀なくされた(解雇・降格・減給・不利益な配置転換を含む) など 犯罪行為があった場合などの慰謝料は300万円超のケースも 不同意わいせつ・性交など刑法に抵触する犯罪行為があった場合の慰謝料の相場は、300万円を超えて高額になることもあります。 会社社長が女性従業員を無理やりホテルに連れ込み強姦した事件(千葉地方裁判所・平成10年3月26日)では、330万円の慰謝料が認められました。 示談交渉で解決する場合、金額が跳ね上がることもある セクハラの解決を目指すときには、裁判に先立ってまずは交渉を申し入れてみて、交渉が決裂した場合に限って、裁判所に訴えるというのも一つの方法となります。 仮に交渉の段階で話がまとまるような場合には、裁判での相場よりも支払われる金額が跳ね上がる場合もあります。 相手方の会社としても、紛争の長期化を避けたいであるとか、セクハラの事実を公にされたくないといった思惑を持っているケースがあります。 裁判での相場よりも大きい金額を支払い、その代わり今後訴訟などを起こさないといった約束を取り交わす形で、セクハラの紛争が解決する場合もあるのです。 その他の判例や慰謝料の相場について詳しく知りたい方は、『セクハラで慰謝料を請求したい!慰謝料の相場や用意すべき証拠を解説』の記事もご覧ください。 --- ### 労災で後遺障害を認定してもらうためには?条件と手順を解説 - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-02-29 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6534 - Categories: 労働災害 労災による後遺障害を認定してもらい障害補償給付を受給するために必要な条件と手順を解説しています。後遺障害の認定が受けられなかったことでお悩みの方は弁護士に相談してください。 通勤や勤務中の事故などで負傷し、障害が残ってしまった場合、その後の仕事や日常生活に支障をきたしてしまうこともあるかと思います。 そのような労災による障害に対して、「障害補償給付」という労災給付金を受け取れる可能性があります。 この記事では、労災による後遺障害の障害補償給付に必要な条件と手順を詳しく解説します。 障害補償給付の対象となる後遺症とは 労災による負傷や疾病の治療が終了し、医師から「後遺症が残ります」と診断されても、労災保険法に定める障害等級に該当しなければ障害補償給付金を請求することはできません。 では、一体どのような後遺症が障害等級に該当するのでしょうか。そもそも後遺症とはどういった状態を指すのか確認しましょう。 後遺症とは 後遺症とは、治療を続けたにもかかわらず完治せず、将来的に回復が見込めない身体的または精神的な症状が残っている状態のことです。 たとえば、手指の切断など身体の一部を失ってしまった場合や、視力や聴力の低下などは後遺症に該当します。 しびれや、消えないあざが残ってしまうことも後遺症となります。 障害等級に該当する後遺障害とは 後遺症が残ってしまった場合、労災の障害補償給付を受けるには、後遺症が労災保険法における障害等級に該当する後遺障害であると認定を受けることが条件となります。 障害等級は、厚生労働省の労働者災害補償保険法施行規則の障害等級表により、重度の第一級か軽度の第十四級まで細かく分類されています。 障害の症状や程度が多岐にわたるため、細かく分類された等級に当てはめることで平等に給付が行われるようにしています。 そして、後遺症がどの等級に該当するかによって給付金の金額や給付対象となる期間が大きく変わってきます。 たとえば、手指を切断してしまった場合でも、親指か、その他の指なのか、またどのくらい失ってしまったのかで該当となる等級は変わります。 第十四級:一手のおや指以外の手指の指骨の一部を失ったもの 第十二級:一手のこ指を失ったもの 第九級:一手のおや指又はおや指以外の二の手指を失ったもの 後遺症が残ってしまった場合、原因となる傷病が労災によるものであり、障害等級の条件にあてはまる後遺障害であると認定される事が障害補償給付を受給する条件になります。 後遺障害認定を受けるための条件と手順 医師から「症状固定」の診断を受ける まずは治療のためにきちんと入通院して治療を受けましょう。たとえば、むちうちなど目に見えにくい症状や、改善の程度のわかりにくい症状もあるため、後遺障害等級認定の審査では受傷時の状態や症状の経過が重視されます。 症状が安定したら、医師から「症状固定」の診断を受けます。 症状固定とは、これ以上治療を続けても症状の改善がみられない状態であるという医学的判断であり、医師にしか行えません。 症状固定後に残った症状である後遺症の審査を行うため、症状固定の診断がないと後遺障害認定の申請手続きは行えません。 症状固定の時期は傷病の状態によって変わります。担当の医師とよく相談されると良いでしょう。 必要な書類を揃える 症状固定と診断されたら、後遺障害認定の申請に必要な書類を用意しましょう。 必要な書類は以下の通りです。 後遺障害認定の申請に必要な書類 医師による診断書 後遺症の状態や程度を示す検査結果・レントゲン写真などの資料 障害補償給付支給申請書(様式第10号)※業務災害 障害給付支給申請書(様式第16-7号)※通勤災害 上記の書類と併せて、これまで行っていた業務が困難になってしまった場合などは、医師により細かい状態を明記した医師意見書を書いてもらっても良いでしょう。 障害補償給付支給申請書など会社に記入してもらう欄もありますが、協力的でない場合は空欄のままでも提出可能です。 労働基準監督署に提出し審査を受ける 書類の記入や資料がそろったら、労働基準監督署に障害補償給付の申請をします。 期待する後遺障害の認定を受けるためには、ご自身の症状が所定の障害等級に該当しなければなりません。 そのために、適切な検査や画像データ、また症状を詳しく記載した意見書を提出することも望ましいです。 適切な検査や画像データが不十分だと感じる方は、弁護士に相談することをおすすめします。 不十分な状態で申請しても、後遺障害認定を受けられなかったり、期待していた等級に該当しない可能性が高いからです。 労災の障害補償給付は、労働基準監督署の調査員が労働被災者本人、また医師と面談をして審査を行います。 調査が終了し、対象となる症状が労災の後遺障害認定基準に合致し、また労災によるものであると因果関係が認められると、後遺障害認定を受け障害補償給付を受けることが可能です。 後遺障害の認定が受けられなかったら 障害補償給付の申請をしても、なんらかの理由で認定を受けられないといったこともあります。 あるいは、認定は受けられても、納得のいく等級にはならなかったということもあるでしょう。 後遺症の認定が受けられないのは、後遺症が労災の後遺症認定基準に合致しなかった、または傷病と労災との因果関係を否定されてしまうことが主な要因として挙げられます。 ここでは希望した認定が受けられなかったときの対処法を確認していきます。 審査請求で決定の取り消しを求める 労働基準監督署長分の決定に不服がある場合には、審査請求と呼ばれる手続きで、処分の取消しを求めることが可能です。 以下のような不服がある場合に、審査請求を行えば、決定に対してもう一度審査をしてもらうことができます。 後遺障害等級に該当しない 後遺障害等級が期待していた等級に該当しなかった 傷病と労災の因果関係を否定された 審査請求は、決定があったことを知った日の翌日から3か月以内に、後遺障害の申請をした労働基準監督署長を管轄する都道府県労働局の労働者災害補償保険審査官に、「労働保険再審査請求書」を提出して行います。 審査請求でも納得の行く決定がされなければ、さらに再審査請求によってもう一度審査を請求することが可能です。 労働災害補償審査官が作成した謄本を送付された日から2か月以内に、労働保険審査会に書面を送付して申請します。 ここで労働保険審査会の決定にも不服がある場合には、6か月以内に取り消しを求めて、各地の地方裁判所の本庁に行政訴訟を提起することが可能です。 労災の後遺障害に詳しい弁護士に相談する 後遺障害の認定が受けられなかった場合は、労災の後遺障害に詳しい弁護士に相談するのも選択肢の1つです。 そもそも、後遺障害の症状を証拠によって証明することは、専門的な知識がなければ難しい場合もあります。 一度認定を受けられなかった場合でも、認定された後遺障害等級は覆る可能性もあります。 後遺障害等級の判断では、書面などの伝わり方次第では結論に影響が出てくるからです。 労災の後遺障害に詳しい弁護士は、認定を受けられなかった理由を、提出した書類や意見書などの証拠から考えます。 弁護士が等級認定が不適切であると判断した場合は、医師に対して適切な証拠を用意するように打診したり、審査請求や再審査請求への手続きを代理で行ったりします。 後遺障害の認定が受けられなかったとお悩みの方は、労災事故を数多く扱っている弁護士に相談してみましょう。 関連記事 ・労災は弁護士に依頼するべき?気になる労災の手続きを紹介 まとめ 労災による後遺障害の障害補償給付に必要な条件と手順を解説しました。 正確な後遺障害認定を受けたい場合は、後遺障害に詳しい弁護士に相談しましょう。 労災の後遺障害は、相談する弁護士によって、認定されるかどうかが変わることもあります。 無料相談を受け付けている弁護士事務所もあるので、一度相談してみてはいかがでしょうか。 --- ### 給料の未払いは弁護士に相談!依頼するメリットと費用を徹底解説 - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-05-28 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6526 - Categories: 給料未払い 未払い給料の請求を弁護士に依頼するメリットや弁護士費用を解説しています。費用面や手続きの流れなど弁護士相談の不安がある方はこの記事を読んで弁護士に相談しましょう。 「給料未払いは弁護士に依頼すべき?」「弁護士費用はどれくらいかかる?」 給料の未払いは違法です。労働に対して適切に給料が支払われないと、未払い給与を会社に請求したいと考えるでしょう。 給料の未払いでお悩みの方は、弁護士に相談することが重要です。 しかし、弁護士を依頼するメリットや依頼する手続きに関してよく分からないと、弁護士に相談すべき内容なのか不安になってしまうでしょう。 この記事では、未払い給料の請求手順や弁護士に依頼するメリット、弁護士費用相場を詳しく解説していきます。 未払い給料の請求手順 そもそも給料未払いが発生する原因を知りたい方は『給料の未払いを請求したい!給料未払いが生じる原因と6つの対処法』の記事もご覧ください。 ここでは、未払い給料の請求手順を詳しく解説していきます。 未払い給料の金額を確定させる 会社から給料が予定通り振り込まれない場合、最初にすべきことは未払い給料の金額を確定させることです。 未払い給料の金額を確定させるためには、未払いであることを証明するもの、支払われる賃金を証明するものである2種類の証拠が必要です。 給料が未払いであることを証明する証拠として、給与明細や源泉徴収票などが挙げられます。 また、支払われる賃金を証明する証拠としては、雇用契約書や労働条件通知書を用意するといいでしょう。 勤務したことを証明する証拠を集める 次に、ご自身が会社にどれくらいの時間勤務していたかを証明する証拠も併せて集める必要があります。 勤務したことを証明する証拠は下記のものなどが当てはまります。 勤務していたことを証明する証拠 タイムカード 業務日誌 月報 シフト表 運転日報 しかし、タイムカードなどは会社が改ざんしてしまう可能性がありますので、併せて以下の証拠を集めると良いでしょう。 未払い給料の請求で有効となる証拠 勤務時間と業務内容を記録したメモ 電話やメール、FAXの履歴 パソコンのログ 特に勤務時間や業務内容を記録したメモは、細かいほど信ぴょう性が増します。 出退勤時間は1分単位で記入だけでなく、何時から何時までどんな作業していたかまで細かくメモをしておくと、法的に有利な証拠になる可能性が高くなります。 関連記事 ・給料未払いの証拠がない!対処法や請求をする際の手順を解説! 内容証明郵便を送る 上記の給料が未払いである証拠を集めたら、内容証明郵便で会社に未払い給料を請求しましょう。 内容証明郵便とは、文書の内容と誰から誰に差し出されたかを郵便局が証明してくれる郵便のことです。 参考:日本郵便「内容証明」 さらに、配達証明書つきの内容証明郵便で送れば配達記録も残るので、会社側からそのような郵便は届いてないと言われるのを防ぐことができます。 また、内容証明郵便を送ることにより、催告といって時効を6か月間止めることができます。 未払い給料の消滅時効は3年です(令和2年4月1日以降に支払い期日が到来した賃金の場合)。 時効期間が過ぎてしまうと会社から「時効期間が経過しているから払わない」と言われてしまえば、回収することができなくなってしまいます。 時効が迫っている未払い給料がある場合は、早急に内容証明郵便を送って時効の完成を止めましょう。 内容証明郵便は、ご自身で書くことも可能ですが、不安であれば費用はかかりますがこの段階で弁護士に代筆を依頼することもできます。 労働基準監督署へ通報する 内容証明を送っても会社が応じない場合は、労働基準監督署(労基署)に通報しましょう。 労働基準監督署の所在地一覧 この時、上記で説明した会社が給料未払いだという証拠があれば、労基署が動いてくれる可能性が高くなります。 労基署が会社を立ち入り調査した結果、給料未払いの事実が発覚すれば給料を払うように是正指導・勧告をします。 ただし、労基署からの是正指導・勧告には強制力はないので会社が対応しない可能性もある点に注意が必要です。 関連記事 ・給料未払いのおすすめ相談先5選と注意点! 労働審判を申し立てる 労基署に通報しても労基署が動いてくれなかったり、会社に是正指導・勧告をしても、会社からの無視されるなどして解決に至らなかった場合は、労働審判を申し立てることをおすすめします。 労働審判の制度の内容について詳しく知りたい方は、『労働審判とは?制度の内容や手続きの流れを弁護士がわかりやすく解説』の記事をご覧ください。 労働審判のメリットは、原則3回以内の期日で終了するため、平均2〜3か月程度で解決できるところです。 原則3回以内の期日で話し合いがまとまらず、解決できない場合は審判が行われることになります。 また、調停での決定や審判内容は、裁判上の和解と同じ効力があり会社側が応じない場合は強制執行する事も可能です。 ただし、ここで会社側との話し合いがまとまらずに、出された審判に会社側が納得せず異議を申し立てた場合は訴訟手続きに発展します。 労働審判は会社を相手にとり、話し合いとなります。提出する書面や審判の手続きには法的な知識や経験が要求される場面もありますので、不安な方は弁護士に依頼するのがおすすめです。 裁判を起こす 労働審判でも解決しない場合、訴訟をして未払い給料の請求をすることになります。 裁判になると、労働審判とは異なり手続きも厳格で、専門的な知識が必要です。 労働審判では弁護士に依頼していなかった方も、裁判まで発展したら労働問題に強い弁護士に依頼して対応を任せることをおすすめします。 弁護士にはなるべく早く相談すべき 未払い賃金のトラブルについては、なるべく早く弁護士に相談するのがおすすめです。 弁護士は会社に対して直接賃金を支払うよう交渉することができ、会社との交渉がうまくいかない場合は、スムーズに労働審判、裁判に手続きを移行することができます。 会社としても裁判のリスクがあるという点で、労働者が弁護士に依頼したという事実は非常に大きなプレッシャーとして機能します。 なるべく早くから弁護士に相談することで、早急にトラブルを解決できる可能性が高まるわけです。 未払い給料の請求を弁護士に依頼するメリット 支払いが遅れた分の遅延損害金も併せて請求可能 ご自身で未払い給料を請求されても、会社からうまくごまかされたりするなどしてしまう可能性があります。 交渉のプロの弁護士に依頼することによって、会社からしっかりと未払い分の給料を回収できる可能性が格段に高くなります。 また、「遅延損害金」といって給料の支払いを遅延した日数分請求することができます。 遅延損害金は、在職中は年3%、退職後は年14. 6%です。 ご自身では、なかなか遅延損害金を正確に計算して請求することは難しいですが、弁護士であれば正確に計算して、遅延損害金も含めて全額請求して回収できる可能性が高まります。 証拠がない場合でも開示請求が可能 未払い給料の請求は、上記した通り証拠が必要です。 しかし、雇用契約書や労働条件通知書、給与明細などはなくしてしまって手元にない可能性もあります。 また、タイムカードなどは通常、会社が管理しています。 これらの書類は、会社が再発行しなくてはならないという法律がないので「再発行してください」と申し出ても、取り合ってもらえないことも少なくありません。 そのような場合は、「証拠保全」や「文書提出命令」といった強制的な開示手続きをすることによって、未払い給料の証拠を入手することが可能です。 証拠保全や文書提出命令は裁判所を通すことになるので、厳格な手続きが必要です。弁護士に依頼することによって、このような手続きも任せることができます。 裁判以外による解決も目指せる 弁護士といえば、裁判を思い浮かべる方も多いかと思いますが、弁護士は裁判以外にも話し合いで解決することも多くあります。 特に、ご本人では会社に未払い給料の請求をしても会社に無視されていた場合でも、弁護士が代理人としてでてきたらすんなりと解決したという事例も少なくありません。 未払い給料の請求で弁護士にかかる費用は? 最初の相談は無料のところが多い まず、弁護士の法律相談は、初回は無料で行っているところも多いです。 そこで、初回相談では未払い賃金の回収の見込みや弁護士費用との兼ね合い、今後どうするかの方向性などを最初に相談して見通しを立てるのが良いでしょう。 有料相談の場合、相談費用の相場は30分5000円程度となります。 着手金、成功報酬金などが主な弁護士費用 正式に依頼するとなれば、着手金がかかります。 着手金は事務所やどのような方法を選択するかによってばらつきが大きい費用です。おおよそ10万~20万円程度が多いと思われますが、着手金も無料としている事務所もあります。 もう1つの代表的な費用として、成功報酬があります。これは、未払いの給料を会社から回収できた場合に、その回収額に応じて支払うものです。その額は、相談料や着手金額の設定とも関係しますが、大体回収額の20%程度が相場と考えられます。 その他、解決手段を講じるための実費も発生します。会社との交渉だけで終われば1万円以内で収まることも多いですが、労働審判や訴訟となれば数万円以上かかってきます。 弁護士に依頼する場合、時間と費用の発生はデメリットの最たるものです。事前に十分確認しておきましょう。 完全成功報酬型のところもある 完全成功報酬型を採用している弁護士事務所もあります。 そのような弁護士事務所は、着手金を一切とらないで和解や裁判で勝訴して得られた未払い給料や遅延損害金から成功報酬をとるため、未払い給料を回収できなかった場合、お金はかかりません。 ただし、通常の完全成功報酬型ではない弁護士事務所に比べて、解決したときの成果報酬は高めになっている場合が多いので注意が必要です。 --- ### 労働組合に相談できることと相談の流れ【弁護士が解説】 - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-06-14 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6520 - Categories: 労働問題全般 労働組合とは、労働者の地位向上のための団体のことを指します。 労働組合は企業側と団体交渉をおこない、さまざまな労働トラブルを解決に導く手助けをしてくれます。 「労働問題を労働組合に相談したいが、そもそも労働組合が何なのかわからない」「労働組合が何をしてくれるのかわからない、相談できることは?」 このようなお悩みを抱えている方はいませんか。 労働組合とは、労働者の地位向上のための団体のことを指します。 今回は、労働組合とはどのような組織なのか、労働組合に相談できることや、相談から解決までの流れについて解説します。 労働組合について 労働組合の種類は大きく企業別組合とユニオンの2つ 労働組合の法的な根拠は、労働組合法のほか、憲法上の「労働者が団結する権利」(憲法28条)にあります。そのため、労働者が集まるところであればどこでも労働組合が成立する可能性があります。 実際の労働組合は、大きく以下の2つに分けられます。 労働組合の種類 企業別組合... ... 特定の企業に勤める労働者で組織された社内の労働組合 ユニオンや合同労組... ... 企業や産業に関わりなく広い範囲の労働者で組織された労働組合 企業別組合は、文字通り、その特定の企業に対して労働者の地位向上を訴えていく組合です。 一方、ユニオンや合同労組は、メンバーが特定の企業の労働者に限られません。 そのため、「自社に労働組合がない」「労働組合があっても会社に対して強く動いてくれない」「非正規労働者など企業別組合に加入できない」といった場合でも加入できます。 労働組合の主な活動は会社との団体交渉 企業別組合でもユニオンでも、会社に対する働きかけにはいくつか種類がありますが、メインは会社とおこなう団体交渉です。 団体交渉とは、労働組合という労働者の団体が、労働者の地位向上を目的として会社とおこなう交渉のことです。 労働組合に労働トラブルを相談した場合、労働組合は会社に対してこの団体交渉を申し入れることになります。そして、その交渉の場で、トラブルの解決を図ります。 労働組合がもつ特徴 基本的に誰でも入れる 基本的に、労働組合は労働者であれば誰でも加入できます。ただし、組合が加入条件を制限している場合もあります。 企業別組合の場合は、その企業に勤めていなければ加入できないことになっています。また、非正規労働者は加入できないこととしている企業別組合も少なくありません。 対して、ユニオンの場合は、地域や業種で加入を制限している場合もありますが、基本的にはどの企業に勤めているかに関係なく加入できます。非正規労働者の加入も許している場合が大半です。 なお、いわゆる管理職の場合、労働組合への加入が認められないことがあります。役職がついているだけで加入できないというわけではありませんが、役職者は事前に労働組合へ問い合わせておくことが必要でしょう。 会社は労働組合からの団体交渉を法律上無視できない 団体交渉は労働組合だけがおこなうことができ、労働組合はその法的な効力を利用してトラブル解決のため動くことになります。 会社は労働組合からの団体交渉を拒否することは、労働組合法に違反する違法行為となっています。 さまざまな労働トラブルの相談ができる 労働組合では、さまざまな労働に関するトラブルを相談できます。 昇給や賞与の査定項目などの労働者全員に関する事項はもちろんのこと、解雇・雇い止め、賃金の未払い、ハラスメントといった労働者個人のトラブルも扱ってくれます。 労働組合からの申し入れを会社は拒否できない 労働組合のポイントとして重要なのは、会社側には団体交渉に応じる法的な義務があるということです。 そのため、会社側が労働組合からの団体交渉の申し入れを無視することは難しく、団体交渉にはトラブル解決の実効性があるといえます。 ただし、組合員(労働者)の労働条件に関係のない事柄など、交渉事項によっては会社側に応じる義務がない場合もあります。 労働組合に相談できること 労働組合に相談できることは、以下の分野があげられます。 労働組合に相談できること 賃金 人事評価制度 労働時間 休暇 ハラスメント 解雇 未払い残業代 など 労働組合は、労働者の権利を守るために活動している組織です。 上記のような労働問題で困っている場合は、一人で抱え込まずに、ぜひ労働組合に相談してみてください。 労働組合への相談から解決までの流れ 相談 通常は、労働トラブルを労働組合に相談すると、その相談内容を会社への要求事項という形でまとめ、書面で団体交渉の申し入れがおこなわれます。 交渉 会社が団体交渉に応じると、交渉の場が設けられます。これは書面のやり取りではなく、対面でおこなわれます。トラブルに見舞われた本人も出席のうえ、交渉が開かれることが一般的です。 そのとき会社側には、単に要求事項に対する回答だけでなく、根拠を示すなど、適切な交渉をおこなわなければならないという義務(誠実交渉義務)が生じます。 誠実交渉義務があるため、会社側としても簡単に交渉を打ち切ることはできず、複数回にわたって交渉が開かれたり、会社側から具体的な主張がされることが一般的です。 交渉がまとまれば労働協約が作成される 交渉がまとまれば、その内容を記載した書面を作成します。この書面は労働協約と呼ばれます。 この協約には、会社と労働組合との署名が入るほか、トラブルの当事者である労働者本人の署名も記載されることがあります。 労働組合法では、労働協約に違反する行為は無効となることが定められており(労働組合法16条)、会社は労働協約に違反する行動に出ることができません。 そのため、労働協約を結ぶことができれば、法的にも労働トラブルが解決したといえるでしょう。 労働組合に関するよくある質問 弁護士に相談する場合との違いは? 労働トラブルの相談先として、最初に弁護士が思い浮かぶ方も多いと思います。 弁護士は、労働トラブルに限らず法律問題全般を扱う専門家であり、トラブルの主な解決方法は裁判(訴訟)ということになります。 弁護士に相談すると、労働トラブルが法律にのっとった形で整理されていくという点は変わりません。極端な例ですが、会社に対する不満や要望があったとしても、それが法律的に主張できない事柄であれば主張されないこともあります。 たとえば、上司のパワハラに悩んでいる場合、弁護士が展開する主な要求は、会社への損害賠償請求ということになります。 本人が「上司を交代させてほしい」「パワハラが起こらないように社内研修を充実させてほしい」と望んでいたとしても、それを直接実現することは弁護士には難しいといえます。 一方、団体交渉の場合、このような必ずしも法律的な要求とはいいづらい点も含めて交渉できます。また、交渉の場に本人も出席して意見を述べることができるという点もあります。 つまり、自分の思いを会社側に伝えやすいというメリットがあるということです。 費用や期間はどれぐらいかかる? 労働トラブルの解決をユニオンに依頼する場合、組合費を支払うことが一般的です。 組合費の額はユニオンによってまちまちです。毎月支払う組合費が比較的低額である代わりにトラブル解決時に支払う組合費が高額となるパターンもあれば、その反対もあります。 組合費の支払いを猶予してくれるユニオンもあるようですので、加入前に組合費の支払い時期や目安を確認しましょう。 また、交渉の進捗次第では解決までの期間が長引くこともあります。おおむね数か月程度で交渉が終了することが多いと思われますが、交渉が難航したり、決裂したりする場合は長期化してしまいます。 団体交渉はあくまで交渉であり、会社側に要求事項を受諾する義務まではありません。交渉が決裂した場合は裁判などに移行することもあります。 これらを想定したうえで、できるだけ自分の状況にあった労働トラブルの解決方法を選択することが重要です。 大まかには、弁護士への相談は法律的に白黒はっきりさせたい場合、労働組合への相談は自分の意見を述べたり柔軟な解決を図りたい場合に向いているといえるでしょう。 解決しない場合は弁護士に相談 労働組合でトラブルが解決できなかった場合は、初回相談無料の弁護士事務所もありますので相談することも検討してみてはいかがでしょうか。 労働問題は時間が経過すると証拠が散逸し、言った言わないの争いになって解決が難しくなる場合もあります。 困ったときは、なるべく早く法的手続きを使える弁護士に相談してみましょう。 --- ### 会社が労災申請を嫌がるのはなぜ?違法性と対処法を解説 - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-03-08 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6503 - Categories: 労働災害 会社が労災の認定を嫌がる理由を、労災の認定によって会社が受けるデメリットから解説しています。労災を隠蔽することはれっきとした犯罪です。もし社内で労災隠しが発生していたら、適切な方法で対処しましょう。 「会社が労災認定を嫌がっている」「会社に労災を隠蔽されないか不安」 会社に労災申請を申し出ると、会社から「治療費は会社で負担するから労災申請しないでくれ」と言われるケースがあります。 「なぜ会社が労災申請を嫌がるのだろう」と疑問をお持ちの方もいると思います。 会社としては、労災の認定を受けることでいくつかのデメリットがあるため、できる限り労災の申請を避けたいと考えているケースが多いです。 そもそも、会社が労災の事実やその内容をごまかそうとする労災隠しは違法です。 今回は、会社が労災の認定を嫌がる理由と労災隠しに応じるリスク、労災隠しへの対応について詳しく解説します。 会社が労災申請を嫌がる理由 多くの会社は、労災申請されることをなるべく避けたいと考えています。社内で労災が発生したと認定されることは、会社にとってデメリットがあるからです。 具体的には以下の4つのようなデメリットがあります。 会社が労災申請を嫌がる理由 労災保険の保険料が高くなる 会社のイメージダウンにつながる 面倒な対応・手続きが必要になる 労働基準監督署の監査対象になる 労災保険の保険料が高くなる 労災保険の保険料には、「メリット制」という制度があります。 メリット制は、連続する3保険年度中に会社で発生した労働災害の多寡によって、労災保険料が増減する仕組みです。 基本的には、労災の発生件数が多いほど保険料は上がります。 労災保険料は全額会社が負担しなくてはならないため、保険料の増額を労災認定の大きなデメリットと捉える事業者も少なくありません。 なお、増減の割合は事業の規模や内容によって変わります。労働者が20人未満の小さな事業所であれば、このメリット制は適用されません。 参考:労災保険のメリット制について 会社のイメージダウンにつながる 労災が発生すると、世間がその会社に対して悪いイメージを抱くようになります。 とくに大企業であれば、労災があったという事実がマスメディアに大きく報じられ、多くの人からブラック企業だとみなされてしまうかもしれません。 会社のイメージが下がることで、売り上げが落ちたり、他の企業との取引が停止されたりするおそれがあります。 会社のイメージダウンを防ぐために、労働者に対して労災の申請を止めるように促す企業もあります。 面倒な対応・手続きが必要になる 労災申請の手続きは、原則として被害者である労働者本人が行うことになっています。しかし、多くの会社では手続きを会社が代行しています。 また、場合によっては労働基準監督署が会社に労働者死傷病報告・労働災害再発防止書といった書類の提出を求めることもあります。 また、安全への配慮を怠っていたとして、被害者を受けた労働者が会社を相手取り、裁判を起こす可能性も否定できません。 一度労災申請されるだけでも、いくつかの煩雑な手続きが必要となるケースもあるということです。 労働基準監督署の監査対象になる 死亡者が出るような大きい労働災害が起こった場合、労災申請が行われると労働基準監督署による立ち入り調査が入ります。 また、被害が小さくても労災認定の数が多いと、臨検監督と呼ばれる事業所への立ち入り調査の対象になる可能性が高いです。 調査では、事業主と労働者へのヒアリングや労働関係帳簿の確認が行われたのち、問題点が見つかれば指導や是正勧告を受けることになります。 是正勧告を受けると期日までに是正報告書を提出することが必要になるので、会社としては手間になります。 会社が行う3パターンの労災隠しとは? ここまで会社側が労災の申請を嫌がる理由について確認しました。 これらが原因となって、会社が労災の事実やその内容をごまかそうとする「労災隠し」が発生するケースがあります。 労災隠しは労働安全衛生法に違反するものであり、労働者は適切に労災認定が行われているか注視することが必要です。 ここからは、会社が行う労災隠しの3つのパターンを見ていきましょう。 労働者死傷病報告を提出しない 労災隠しで代表的なケースとして、労災事故が発生した事実そのものを隠ぺいするため、労働者死傷病報告を提出しないというものがあります。 労働者死傷病報告は、労働者が労働災害によって死亡または休業した場合に、事業主が労働基準監督署長に提出する義務のある報告書です(労働安全衛生規則97条)。 この報告書を提出しない場合は、労災保険の申請も行われず、労働者への補償は健康保険や事業主の現金負担によってなされることになります。 しかし、これだけだと補償が十分ではないことも多く、労働者が訴えを起こすことで労災隠しが発覚する可能性も高いです。 労災事故の内容を偽って届け出る 会社側の責任を少しでも軽くするため、労災事故の発生状況や原因を偽って届け出るケースもあります。 たとえば、手すりがない高所で起きた事故を「階段からの転落」としたり、安全機器のついていない機械で負ったケガを「包丁使用による負傷」として申請したりした事例がありました。 どちらの場合も、労災保険の申請は行われるので、労働者の補償にはあまり支障がありません。 ただし、根本的な原因の解決がなされないため、事故の再発リスクは高くなります。それゆえ、悪質な労災隠しの一つです。 下請け業者に責任があるとして届け出る 建築業や運送業などの請負関係が発生する現場で起きた労災事故は、基本的に元請け業者に責任があるとされます。 しかし、元請け業者が労災認定を避けるため、下請け業者の社内で労災が発生したと偽って届け出る場合があります。 また、引き続き仕事を受けられるように、下請け業者の方があえて虚偽の申告をするケースも少なくありません。 どちらにせよ十分な再発防止策が講じられない可能性が高く、労災隠しの一つとみなされます。 労災隠しに応じてしまうことによるリスクとは? 会社から労災申請を止めるように言われ、労災隠しに応じてしまった場合には、どんなリスクがあるのでしょうか。 労災保険給付を受けられない 労災申請をしなかった場合には、当然労災と認定されることもないため、労災保険給付を受けることができなくなります。 労災保険給付には、休業補償給付、障害補償給付などがあります。これらの給付を受けることができれば、労働者は経済的な負担を軽減することが可能です。 しかし、労災隠しに応じると、労災保険給付を受ける権利を一切失ってしまいます。 そのため、治療費は会社に負担してもらったとしても、休業による収入減少や、後遺症による障害などの給付がもらえなくなってしまい、結果的に大きな損失を被る可能性があります。 労災が認定されたことによって受け取れる労災保険給付については『労災と認定されるには?認定基準・手続き・受け取れる給付金について解説』の記事をご覧ください。 労災の治療には健康保険を利用できない 労災事故の治療は、健康保険を利用できないため、治療費が全額自己負担となる可能性があります。 労災は、健康保険法で健康保険の対象外と規定されています。 健康保険は、労災とは関係のない傷病に使用できるものです。労災事故で健康保険を使用してしまった場合には、一時的に治療費を全額負担しなければならず、切り替えの手続きも必要とされています。 たとえ、「治療費は会社で負担する」と会社から言われている場合でも、注意が必要です。 治療期間が長引くと治療を終了するように促されたり、これ以上支払わないと言われたりなど、満足な治療を受けられない可能性もあります。 会社から健康保険を利用するように指示されていたとしても、必ず労災保険の給付申請をするようにしましょう。 会社に労災隠しをされたときはどう対応する? 労災隠しを促されている、実際に会社が労災隠しをしていると分かった場合、どのような対応をとるべきなのでしょうか? 最後は、労災隠しへの対処法について見ていきます。 自分で労災の申請手続きを行う 労災保険給付の申請は、会社が代行しなくても労働者自身で行うことができます。申請を行うときに会社の許可を得る必要はありません。 厚生労働省の「主要様式ダウンロードコーナー(労災保険給付関係主要様式)」から給付請求書をダウンロードできます。 会社側が記載する項目もありますが、会社が労災の申請を嫌がりそうな場合には、代替的な記載でも請求できることがあります。 労働基準監督署に相談・申告する 労働基準監督署(労基署)は、労働基準法をもとに会社を監視・指導する機関です。 会社の労災隠しについて相談・申告すれば、まずは窓口の担当者から法律上の判断や今後の動きに関するアドバイスをもらうことができるでしょう。 給付請求書の書き方についても、窓口でアドバイスをもらうことができるので、分からない点がある方は、相談してみてください。 参考:全国の労働基準監督署の所在地 弁護士に相談する 労災隠しだけでなく、会社に対して損害賠償を請求したいとお考えの方は弁護士に相談することがおすすめです。 会社が労働者に対して職場環境の安全性について適切な措置を講じるべき義務を怠っていたような場合には、安全配慮義務違反として会社に対して損害賠償金を請求することができます。 法律の専門家である弁護士であれば、過去の同様な判例・事例から適切に賠償金額を算出し請求してくれるでしょう。 関連記事 ・労災は弁護士に依頼するべき?気になる労災の手続きを紹介 --- ### セクハラを弁護士に相談する|費用・準備するもの・注意点を確認! - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-03-25 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6504 - Categories: ハラスメント・いじめ この記事では、セクハラを弁護士に相談する場合の費用についてや、弁護士に相談するにあたって準備しておくべきこと・注意点等を確認し、セクハラを「弁護士に相談する」ことへの不安を取り除いていきます。 「セクハラについて弁護士に相談したい」「弁護士に相談するには何が必要?」 セクハラの相談先に迷った場合は、法律のプロである弁護士への相談を考えてみませんか? 弁護士であれば、セクハラ加害者や会社に対し直接交渉が可能です。 しかし、弁護士への相談はしたことがない方がほとんどでしょう。「弁護士に相談する」ことに抵抗がある方も少なくないと思います。 この記事では、セクハラを弁護士に相談する場合の費用や、弁護士に相談するにあたって準備しておくべきこと、注意点などを確認し、セクハラを「弁護士に相談する」ことへの不安を取り除いていきます。 セクハラ被害に対して弁護士が会社や加害者に主張する内容 セクハラには法律上の定義がある|対価型と環境型 セクハラには法律上の定義があり、自身が不快に思った性的な言動が必ずしも法律上のセクハラに該当するとは限りません。 そのため、セクハラ被害を法的に主張するためには、法律で定められている定義に沿う必要があります。 法律上のセクハラの定義は対価型と環境型に分かれます。いずれの場合も、職場における労働者の意に反した性的な言動を指します。 対価型のセクハラは、性的な言動への抵抗や拒否などを理由として、降格、減給、契約更新拒否、不利な異動といった、客観的な不利益が生じた場合を指します。 たとえば「性的な関係を拒否したことを理由に解雇された」「会社内において日頃から自身の性的な事柄を聞かれており、抗議したら降格処分になった」などが挙げられます。 一方、環境型のセクハラは、性的な言動により働く環境が不快になり、就労に支障が出ることを意味します。 対価型は直接的な不利益ですが、環境型は「性的な言動によって苦痛を感じ、仕事どころではなくなる」というイメージです。 これらセクハラの定義は、男女雇用機会均等法11条第1項に定められています。 弁護士はまず法的なセクハラに該当するかを検討する 「自身の受けた被害が法的にセクハラの定義に当てはまるかどうか」を判断することは非常に難しいでしょう。 セクハラ被害を弁護士に相談した場合、弁護士は聞き取った事情を整理し、法的なセクハラに該当するかどうかを検討します。 この判断を弁護士が適切に行うためには、相談時に自身が体験したセクハラ被害の実態をできる限り詳細に伝えることが重要です。 あまり人に話したくない内容だとは思いますが、たとえば、同性の弁護士を選ぶ(複数の弁護士が在籍している事務所であれば同性の弁護士にしてもらう)など、できるだけ話しやすい環境を作ることが大切です。 なお、弁護士は法律上守秘義務を負っています(弁護士法23条)。 話した内容が関係者以外に漏れることはないため、その点では安心して相談ができるでしょう。 法的にもセクハラと評価できるものであれば、会社に対して実効性のあるアクションができるため、その判断を行えるという点は弁護士に相談するメリットの1つです。 メリットを活かすためにも、相談前に事実を整理しておくことが効果的です。 セクハラ被害に対して弁護士が取る解決手段 事案を整理し、法律的にもセクハラに該当すると判断すれば、弁護士は解決に向けた法的な主張を検討します。 主なものとしては、以下の2種類があります。 弁護士によるセクハラの解決手段の一例 ①不利益な取り扱いの撤回(対価型の場合)②会社・加害者への慰謝料などの損害賠償請求 たとえば、上司からのデートの誘いを断ったことで解雇されたような場合、これは対価型のセクハラにあたります。 このとき、解雇の無効を求めるのが①です。解雇が無効となれば、職場に復帰することができます。 また、①を主張するときには②も同時に主張することが一般的です。セクハラ行為で受けた精神的なダメージに対する金銭的な補償も併せて求めるのです。 セクハラの慰謝料相場を知りたい方は、『セクハラで慰謝料を請求したい!慰謝料の相場や用意すべき証拠を解説』の記事をご覧ください。 もっとも、セクハラを受けた職場に不快感があり、復職はしたくないという方もいることでしょう。 そのような場合には、セクハラに該当する不当な解雇であることを前提としつつ、職場復帰は求めず、損害賠償のみを請求することになります。 このとき、損害賠償の内訳としては慰謝料だけでなく「不当な解雇によって働けなくなった」ことを理由として、解雇されずに働いていれば得られていたであろう給料相当額の賠償も求めます。 実務上、賠償額はトラブル解決までの期間分の給料月額をベースに計算します。 この賠償は解雇の場合だけでなく、「セクハラが原因で自ら退職せざるを得なくなった」ケースでも認められています。 このように、弁護士は、セクハラ被害者が置かれた状況をもとに本人の要望を考慮した上で、解決手段を選択します。相談の際に自身の要望を伝えることが重要といえるでしょう。 セクハラの解決を依頼する場合の弁護士費用 弁護士への相談料 弁護士への相談料の相場は、1時間1万円(30分5000円)ですが、初回については無料としている法律事務所も多く存在します。 料金について不安がある場合、初回無料の法律事務所へ相談してみて、見積もりを出してもらうと良いでしょう。 着手金 着手金とは、正式に依頼する(弁護士が事件に着手する)際に発生する費用です。結果にかかわらず、返金されないため、注意してください。 弁護士にセクハラの解決について依頼する場合、着手金はおおよそ10~30万円が相場となります。 しかし、中には、完全「成功報酬」型をとり、着手金は0円にしている法律事務所も存在します。 セクハラ解決に対する成功報酬 成功報酬とは、事件が解決した時に発生する費用のことを指します。報酬金とも呼ばれます。 セクハラが解決した場合、相手から回収できた額(慰謝料・損害賠償金など)のうち、おおよそ20~30%を成功報酬として支払うことになります。 実費 実費は、弁護士がセクハラ解決のために実際にかかった費用のことで、出張が発生した場合の交通費や、書類の送料などが含まれます。 具体的な金額は、事案により変動します。 ただし、「不法行為に基づく損害賠償請求」の場合は、相手方に支払わせることができます。 セクハラの場合、不法行為が成立することが多いため、この例外に該当し、相手側に弁護士費用を支払わせることができる可能性もあります。 なお、支払わせることができる場合、実際にかかった弁護士費用ではなく、認容額(裁判で決定された額)の1割程度である点に注意してください。 ケースバイケースになるため、気になるのであれば、直接弁護士に相談してみましょう。 弁護士に相談するための準備|セクハラについて相談する 弁護士に何を相談したいか明確してから相談しよう 事情を話すことも大事ですが、最終的にどうしたいのか、相談内容を明確にしておきましょう。 「セクハラについて、会社にしかるべき措置を講じてほしい」、「セクハラ行為者に対して、法的責任を追及したい」など、誰に対し何を求めているかを伝えられることがベストです。 セクハラ行為について時系列でまとめる セクハラ行為について、発端から現在までを時系列にまとめておきましょう。 セクハラ行為がいつ、どこで、どのような状況でなされたか、また、その後のセクハラ行為者や会社の対応まで説明できるとより良いです。 セクハラの証拠や関連する資料を集める 弁護士への相談は時間が決まっているので、効率よく相談する必要があります。 また、弁護士側が事実などを正確に把握するため、証拠・資料は非常に重要です。 メールやLINEのやりとりや、日記やSNSへの記録は、証拠となる可能性があります。加えて、セクハラを受けている録音データがある場合は、非常に有効な証拠となる可能性が高いです。 何が証拠として有効か、自分で判断がつかなくても、用意できるものはすべて持参するようにしてくだい。 また、どういった地位・立場の人間がセクハラをしたかが分かりやすくするために、雇用契約書、就業規則、組織図などの書類も用意できるといいでしょう。 セクハラによってうつ病などの精神疾患にかかった場合、診断書や治療費などの請求書があると、慰謝料請求における根拠となりえます。 さらに慰謝料に加えて、治療費などの実費も請求できる可能性があります。 セクハラを弁護士に相談する際の注意点 弁護士には本人が相談すること セクハラ被害の相談をする際には、できる限り本人が弁護士に相談するようにしましょう。 本人がなかなか相談に踏み切れない場合、家族や友人が代理で相談に行くケースもあります。 しかし、家族や友人が相談する場合、本人の希望が分からないため、弁護士側は具体的なアドバイスがしにくくなります。 さらに言えば、そもそも本人でない場合、相談を受け付けない法律事務所もあります。 弁護士の質問には正確に答えること 法律相談では、事実関係を元に法律を適用して、どういった手続きをしたらどのような結果になるかを弁護士が説明します。 そのため、事実関係の把握が非常に重要となります。 相談をしている間に、弁護士から色々と質問があると思いますが、それは、弁護士が知りたい事実関係について、不足している情報を補うためであるといえます。 セクハラという内容上、どうしても伝えにくい・恥ずかしい内容のこともあると思いますが、事実をゆがめたり、嘘をついたりすることは避けたほうがいいでしょう。 弁護士は事実関係を正確に把握する必要があります。また、ささいな内容だと思っても、弁護士にとっては重要な内容である場合もあります。 質問の意図がわからなかったり疑問に感じた部分については弁護士にどんどん聞いて、自分の中の不安感を払しょくしましょう。 法的な解決以外の請求は難しい場合があることを理解すること セクハラ被害解決のために、不利益な取り扱いの無効や損害賠償などを請求できる点については先述しました。 一方で「会社・加害者からの謝罪」「加害者に対する降格や配置転換などの処分」「セクハラを生じさせないための再発防止策」などを求めたいと考えている方もいるかと思います。 しかし、これらはいずれもセクハラ被害者の「法的な権利」ということが難しく、裁判で会社に対して請求することが基本的にはできません。 たとえば、セクハラの事実を会社が認めない場合など、言い分が食い違って争いになったとき、最終的な決着をつけるには裁判を起こすということになります。 弁護士はそのことを踏まえて行動するため、裁判で請求できない内容を解決手段のメインに据えにくいということがあります。 もちろん、裁判ではなく、会社との直接交渉、調停、労働審判などで、これらの実現を話し合いで求めていくことは可能です。 実際、セクハラの事実を会社が認めているケースでは実現されやすくあります。 ただし、これらの手段でも法的な権利を超える部分の請求が実現されるかどうかは、会社が要求を受け入れるかどうかにかかっています。 あくまで会社次第ということに注意しておく必要があります。 まとめ セクハラを何とかしたいと強く思っていても、「弁護士への相談は敷居が高い」と思われる方もいると思います。 しかし、セクハラの加害者や会社と直接交渉ができることから、弁護士に相談することをおすすめします。 初回無料の法律事務所もあるので、一度相談へ行ってみてはいかがでしょうか。 なお、セクハラは社会問題となっているので、公的機関の相談窓口も存在します。弁護士を含む相談窓口の特徴についてまとめていますので、『セクハラ被害の相談ができる無料窓口7選!抱え込まずに相談しよう』の記事もご覧ください。 --- ### 労災の相談はどこでできる?困ったときの相談先を紹介!無料の窓口も! - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-05-13 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6483 - Categories: 労働災害 労災の相談はどこでできる?困ったときの(無料)相談先を紹介! 労災について会社以外に相談すべきケースと相談先について解説します。いざというときに困らないように覚えておきましょう。 会社の仕事中にケガをしたのに会社が労災を認めてくれないときは、どこに相談すればいいでしょう。 弁護士に頼めば迅速・丁寧に相談に乗ってくれますが、それなりの費用がかかることもあります。 今回の記事では、労災について会社以外に相談すべきケースと相談先について解説します。労災の相談をどこにすべきかお悩みの方は参考にしてください。 労災保険とは|概要と申請手続き 労災で受けられる保険給付 労災給付とは、仕事中や通勤途中に事故などによりケガや病気をして治療や休業をしたときに、労災保険から従業員へ支給される保険給付です。主な特徴は次のとおりです。 労災給付の特徴 対象となる災害は「業務災害」「通勤災害」の2種類 補償対象となる被害は労働者の「負傷」「疾病」「障害」「死亡」など 労災被害に対する補償は主に「保険給付」(参考:厚生労働省「業務災害・通勤災害について」) また、労災保険の保険給付は次のとおりです。 保険給付給付内容療養(補償)給付(※1)治療費が無料(労災病院など)になる。支払った治療費の還付金休業(補償)給付療養のため休業し賃金が支払われないときに、休業日数などに応じて支給される給付金障害(補償)給付所定の障害が残ったとき、程度に応じて支給される年金または一時金遺族(補償)給付労災で死亡した場合、遺族に支給される年金または一時金葬祭料(※2)労災で死亡した場合、葬儀を行う者などに支給される一時金傷病(補償)年金療養開始から1年6か月経過しても治癒(症状固定)しない場合などに支払われる年金介護(補償)給付障害年金や傷病年金の受給者のうち、所定の介護を受けている人に支給される給付金 ※主な保険給付 (※1)業務災害のときは給付名に(補償)がつき、通勤災害のときはつかない。(※2)通勤災害のときは「葬祭給付」という。参考:厚生労働省「労災給付等一覧」 申請手続きは会社が代行してくれることが多い 労災事故が起きて治療や休業したとき、労災の保険給付申請は会社、または労災にあった従業員がおこないます。労災の申請者は従業員ですが、労災にあった従業員の負担を軽減するために会社が手続きを代行してくれるのが一般的です。 申請書の記載内容は保険給付の種類によって異なりますが、申請書の多くは労災にあった従業員と勤務先の会社、治療を行った病院の3者の記入が必要です。 また、会社は労災申請とは別に「労働者死傷病報告」(労働者が労災によって死亡または休業した場合)を労働基準監督署長に提出しなければなりません。(労働安全衛生規則第97条)。 労災申請の時効は要注意 労災の申請には時効があるので要注意です。会社が全てやってくれればいいですが、退職した場合などは自己管理が必要です。 保険給付時効療養(補償)給付療養の費用を支出した日ごとに請求権が発生し、その翌日から2年休業(補償)給付賃金を受けない日ごとに請求権が発生し、その翌日から2年障害(補償)給付傷病が治癒した日の翌日から5年遺族(補償)給付被災労働者が亡くなった日の翌日から5年葬祭料被災労働者が亡くなった日の翌日から2年傷病(補償)年金監督署長の職権により移行されるため請求時効なし介護(補償)給付介護を受けた月の翌月の1日から2年 ※保険給付の時効 労災について会社以外に相談すべきケース 労災保険は本来会社が負担すべき従業員への補償を肩代わりしてくれる制度です。 そのため、申請手続は会社が代行してくれるのが一般的ですが、下記ケースでは会社任せにしないで外部の専門家に相談したほうがいいこともあります。 外部の専門家に相談したほうが良いケース 労災かどうかわからない 会社が労災を認めてくれない 労災の決定に不服がある 労災補償に加えて会社にも損害賠償を求めたい (1)労災かどうかわからない 「労災に該当するのだろうか」「労災でどんな補償を受けられるのか」などの疑問があれば、まずは会社の担当者や上司に相談するのが基本です。 しかし、職場に相談しにくい雰囲気があるときや、会社から騒いでいると思われたくない場合は、社外の人に相談するのも選択肢の1つです。 (2)会社が労災を認めてくれない 会社が労災だと認めてくれないこともあります。事実認識を誤っているケースもありますが、「労災かくし」など会社が労災が発生したことを認識していながら意図的に認めないケースもあります。 このようなケースでは、労災の認定を巡って今後、会社と争うことも想定して、早急に労働基準監督署や弁護士に相談した方がいいでしょう。 関連記事 ・労災と認定されるには?認定基準・手続き・受け取れる給付金について解説 (3)労災の決定に不服がある 労災申請をして決定した保険給付の内容に不服があるときは、労働局に設置されている労働者災害補償保険審査官に「審査請求」することができます。また、審査請求に不満があるときは、再審査請求も可能です。 障害補償給付や傷病補償年金の等級の判定に不服があるケースなどが考えられますが、内容が専門的になるため該当分野を得意とする弁護士に相談したほうがいいケースもあります。 (4)会社に損害賠償を求めたい 労災の保険給付を受けていても、それ以上の損害を被った場合には会社に損害賠償というかたちで慰謝料を請求できるケースもあります。 慰謝料を求めて会社と交渉する場合には、弁護士など専門知識のある人に相談した方がいいでしょう。 労災の慰謝料や慰謝料相場について詳しく知りたい方は、『労災事故の慰謝料は会社に請求できる?労災保険と慰謝料の違い』をご覧ください。 労災についての相談先は? 弁護士 専門的な相談や訴訟を前提とした相談ならば、弁護士に相談すべきでしょう。 労働者から会社に損害賠償を請求したいとなったときに、法律の専門家である弁護士は法的な手続きのサポートを行ってくれるでしょう。 また、弁護士に相談すれば、時間をかけて個々の状況に応じた具体的なアドバイスを受けられ、状況次第で手続きや交渉を代行してもらえます。 関連記事 ・労災は弁護士に依頼するべき?気になる労災の手続きを紹介 労働基準監督署 労働基準監督署は労災保険申請の窓口でもあるので、簡単な質問から具体的な申請手続き、勤務先の「労災隠し」の申告まで幅広く相談可能です。 特に、労災申請の手続きに関する相談先は労働基準監督署がおすすめです。全国の労働基準監督署の所在地や電話番号は下記リンクで確認できます。 参考:厚生労働省「都道府県労働局(労働基準監督署、公共職業安定所)所在地一覧」 関連記事 ・会社に労災隠しをされてしまった!労災隠しの対処法を解説 総合労働相談コーナー 総合労働相談コーナーは、全国の労働局や労働基準監督署に設置され、職場のトラブルに関する相談や解決のための情報提供をワンストップでおこなっています。 相談先がわからない場合でも、総合労働相談コーナーから適切な相談先を紹介してもらえます。無料で気軽に相談できる点がメリットです。 参考:厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」 労災保険相談ダイヤル 労災保険相談ダイヤルは労災全般に関する電話専用相談窓口で、厚生労働省の委託事業です。 電話で簡単に相談できるので、相談先に迷ったらまずは相談ダイヤルに電話して今後の対応を決めるという手もあります。 電話番号:0570-006031受付時間:平日9:00~17:00参考:厚生労働省「労災保険相談ダイヤル」 日本労働組合総連合会の相談窓口 日本労働組合総連合会(いわゆる「連合」)は全国の労働組合を取りまとめる組織の1つで、電話やメールによる相談を受け付けています。 状況によっては各地域や企業の労働組合に連絡して、労働組合が会社と交渉してくれることもあります(組合加入が条件になるケースもあり)。勤務先に労働組合があれば、直接相談する方法もあります。 参考:全国労働組合総連合「労働相談」 --- ### 自己都合退職と会社都合退職の違いは?知らないと損する両者の違い - Published: 2023-11-22 - Modified: 2025-01-22 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6486 - Categories: 退職・退職後の手続き 自己都合退職と会社都合退職の違いを解説。懲戒解雇、退職勧奨、派遣切りなどの扱いもご紹介しています。自己都合退職と会社都合退職では会社都合退職の方が失業手当などの面でメリットとなります。 会社を退職する理由はさまざまですが、自身の都合で退職するのか、会社の都合で退職するのかでは失業保険などの待遇に大きな差が生じます。 そのため、会社を退職する際に損をしないためにも、自己都合退職と会社都合退職の待遇の差はしっかりと理解しておくことが重要です。 この記事では、自己都合と会社都合退職の違いや、懲戒解雇・退職勧奨に応じた退職はどのような扱いになるのかなどを詳しく解説します。 自己都合退職と会社都合退職でよく寄せられる疑問について徹底解説しているので、お悩みの方はぜひ最後までご覧ください。 自己都合退職と会社都合退職の定義 自己都合退職とは 自己都合退職とは、転職や結婚、出産などを理由に、従業員自らの意思や都合で退職することをいいます。 また、会社で悪質な規律違反、犯罪行為をしたことにより「懲戒解雇」された場合には、解雇であっても自己都合退職と同様の扱いになります。 もっとも、「特定理由離職者」と呼ばれる正当な理由による自己都合退職であれば、失業保険給付において「会社都合退職」の場合と同様の扱いとなります。 「特定理由離職者」とは、有期契約が更新されない雇い止めを理由に離職したケースで、再就職の準備をする時間の余裕なしに会社を辞めることを余儀なくされた人を言います。 会社都合退職とは 会社都合退職とは、会社側の経営不振やリストラ、倒産などを理由に、一方的に労働契約を解除して従業員を退職させることをいいます。 また、詳しくは後述しますが、長時間の残業やパワハラなどにより退職に追い込まれた従業員は、自己都合退職ではなく「会社都合退職」となります。 自己都合退職と会社都合退職の違い①|失業保険(雇用保険) 自己都合退職と会社都合退職は、失業保険の受給の待遇面で最も大きな違いを生じます。 一般に、「会社都合退職」「自己都合退職」と分類されますが、実際の雇用保険法では離職理由ごとに細かく分類されているので詳しく確認しましょう。 会社都合退職が優遇されている 自己都合退職と会社都合退職を比較すると、失業保険の受給資格、給付制限期間の有無、給付日数などに違いがあり、会社都合退職者の方が手厚い保護が受けられるようになっています。 自己都合退職会社都合退職受給資格離職以前2年間で被保険者期間が12か月以上離職以前1年間で被保険者期間が6か月以上最短支給開始日2か月と7日以降7日以降給付日数90日~150日90日~330日 ※離職理由による失業保険の差 そもそも、失業保険を受給するためには、原則として離職以前の2年間で通算12か月以上雇用保険に加入している必要があります(雇用保険法13条)。 ただし、例外的に「会社都合退職や特定受給資格者、特定理由離職者」の場合は、必要な加入期間が離職以前の1年間で通算6か月以上の加入に条件が緩和されます。 例外的に失業保険が優遇される者 特定受給資格者:倒産、解雇等により離職したもの 特定理由離職者:希望に反する雇い止めにより離職したもの それぞれの対象者を具体的に解説します。 特定受給資格者 特定受給資格者(倒産・解雇などによる離職)とは、厳密な倒産や解雇に限らず、会社が原因で離職せざるをえなかった者を広く含みます。 特定受給資格者にあたる者の例 従業員の1/3以上が退職したことによる離職 明示された労働条件が事実と著しく違ったことによる離職 賃金の1/3を超える額が給料日までに支払われなかったことによる離職 予期しえず固定給が85%以上減額されたことによる離職 過大な時間外労働や休日労働が行われたことによる離職 パワハラ・セクハラなどによる離職 会社の業務が法令に違反したことによる離職 退職勧奨を受けたことによる離職 特定理由離職者 特定理由離職者とは、主に雇い止めを理由に離職した人のことです。 雇い止めは、「契約を更新する場合がある」とされていて、契約期間満了までに有期契約の更新の希望を申し出たにもかかわらず、更新がされなかったケースを言います。 なお、当初から更新がないことが明示されている場合や、契約満了までに更新の希望を申し出ていなかった場合には特定理由離職者に該当しないため注意が必要です。 また、下記のやむを得ない理由により離職した者も、退職に正当な理由があることから、特定理由離職者と判断されます。 やむを得ない理由の例 体力の不足、心身の障害、疾病、負傷など 妊娠、出産、育児など(ハローワークで受給期間延長措置を受けた人) 父母の死や看護等の家庭の事情 事情により通勤が不可能又は困難になったこと 人員整理による希望退職に応じての離職 自己都合退職であっても、やむを得ない理由によって離職した者は、会社都合退職者と同様の受給資格の例外が適用されます。 離職理由による給付制限 会社都合退職者及び例外に適用する場合は、離職から7日間の給付制限期間(待期期間)を経過すれば失業保険を受給することができます。 実際に現金が振り込まれるのは、受給資格決定日から約1か月後になるので、注意して下さい。 一方で、自己都合退職の場合、原則として7日間の給付制限期間経過後、さらに2か月~3か月間は失業保険の給付を受けることができません。 自己都合退職者の給付制限期間は、原則2か月です。ただし、「自己の責めに帰すべき重大な理由によって解雇」された場合や「直近5年間で2回以上自己都合退職している人」の給付制限期間は3か月になります。 自己都合退職の振込みは、最短でも2か月以上後になるということです。 所定給付日数の違い 失業保険の所定給付日数は、離職理由、年齢、雇用保険の加入期間で変わります。 会社都合退職(受給資格で述べた特定受給資格者)の場合、自己都合退職者などの一般の受給資格者より所定給付数が長くなります。 なお、雇止めを理由とする特定理由離職者についても、離職日が平成21年3月31日からまでのものは、特定資格受給者とみなされて所定給付日数の規定が適用されます。 「自己都合退職」(一般の受給資格者)の所定給付日数 雇用保険加入期間10年未満10年以上20年未満20年以上全年齢90日120日150日 「会社都合退職」(特定受給資格者)の所定給付日数 雇用保険加入期間1年未満1年以上5年未満5年以上10年未満10年以上20年未満20年以上 30歳未満90日90日120日180日ー 30歳以上35歳未満120日180日210日240日 35歳以上45歳未満150日240日270日 45歳以上60歳未満180日240日270日330日 60歳以上150日180日210日240日 このように、最低支給日数は変わりませんが、最大支給日数は離職理由によって2倍以上異なります。 また、最大支給日数が長い分、失業給付金の最大支給額も会社都合退職は約260万円に対して、自己都合退職は約118万円と2倍以上の差があります。 自己都合退職と会社都合退職の違い②保険料・退職金 国民健康保険の軽減 お住まいの市区町村にもよりますが、会社都合退職者の場合、国民健康保険料の減額を「最長2年間」認めている市区町村も多いです。 国民健康保険の減額を認めている場合、一般的に前年中の給与所得を100分の30として保険料を計算します。 仮に前年度の年収額が400万円であった場合、年収額120万円として保険料が計算されますので大幅な保険料の減額が期待できます。 一方、自己都合退職は、国民健康保険の納付は優遇されず通常通りの納付額です。 自己都合退職者の退職金 離職理由は退職金についても違いが生じるケースが多いです。自己都合退職では、退職金が満額支給されないことが多いです。 会社の退職金規程などをチェックすると、勤続年数などに応じて「自己都合退職時の減額率」の表が記載されていることがあります。 自己都合退職の際には、この表に従って退職金が減額されてしまうのです。通常、勤続年数が短ければ短いほど減額率は高めに設定されています。 一方で、会社都合退職の一つであるリストラの場合、退職金が上乗せされることもあります。 退職金はそもそも制度自体がない会社もありますが、制度がある会社であれば労働契約書や就業規則に退職金の規定が必ずありますので確認をしましょう。 関連記事 ・退職金未払いの無料相談窓口は?退職金が支払われないときの対処法 自己都合と会社都合|退職理由はどう見極める? 自己都合退職と会社都合退職の違いを見てきました。 労働者にとって退職理由の違いは大きなものです。一方で会社を退職する際にそもそも退職理由が食い違ったりトラブル化してしまうケースもあります。 どのようなときに自己都合・会社都合になるのか、離職理由でトラブルになった際にはどうすれば良いのか確認しておきましょう。 懲戒解雇は自己都合?会社都合? 会社が労働者に対して行う解雇には、「整理解雇」、「普通解雇」、「懲戒解雇」の3つがあります。 整理解雇・普通解雇が会社都合になるのに対し、懲戒解雇は自己都合退職と同じように扱われます。 懲戒解雇とは、企業秩序違反行為に対する制裁罰である懲戒処分として行われる解雇です。 たとえば、労働者が業務上横領などの犯罪をしたり、業務上必要な資格や学歴を詐称したり、理由なく長期間無断欠勤をしたりしたときに行われます。 失業保険の給付制限期間(待期期間)は3か月間であり、受給期間も会社都合の解雇より短くなります。 関連記事 ・懲戒解雇とは?要件と具体例、解雇されたときの対処法を徹底解説! 退職勧奨は自己都合?会社都合? 退職勧奨とは、会社から労働者に対して、自主退職を促す行為のことです。 会社からの働きかけによる退職ですが、一方的に通告が行われる解雇と違い、きちんと労働者の了解を得た上で、退職してもらうという方法になります。 退職勧奨を受けて退職した場合には、原則として会社都合退職となります。 しかし、会社によっては、退職勧奨で退職した場合に自己都合退職として処理を行ってしまうところもあります。 退職勧奨を受けて退職する場合には、自己都合退職として処理されるのか会社都合退職として処理されるのかよく確認した方がいいでしょう。 関連記事 ・退職勧奨(勧告)とは?違法になるケースと対処法を解説! 派遣切りは自己都合?会社都合? 派遣切りとは、派遣先の会社が派遣元の会社との契約を終わらせることを言います。 労働者はその後、派遣元の会社から再度別の会社を紹介されるのを待たされることになります。 派遣切りというのはあくまで派遣先の会社と派遣元の会社の契約の話となるので、退職とはまた別の話です。 なお、派遣切りにあったあと、結果的に派遣元の会社を退職するという流れになることもしばしばあります。 派遣社員側が更新を希望していたのに派遣先の紹介などがなく更新されなかったような場合は会社都合退職となります。いわゆる雇い止めと呼ばれるものです。 一方、更新を提案されていたものの派遣社員側が更新を断ったような場合には自己都合退職となります。 関連記事 ・派遣元や派遣先から解雇と言われた!対処法を弁護士が解説 会社都合退職なのに自己都合にされる? 従業員が会社都合退職をした場合、会社としては、国からの各種助成金が一定期間申請できないことがあるなどの不都合があります。 そのため、従業員の退職を本来は会社都合で処理すべき場合でも、自己都合で処理しようとする会社があるのです。 自己都合退職から会社都合退職に退職理由を変更したいときには、まずは会社に離職理由を訂正してもらうよう要請してください。 会社が応じなかった場合には、ハローワークに相談することで変更が叶う場合があります。 退職理由に争いがあるときは、雇用保険被保険者離職票の提出前にハローワークの職員に相談するべきです。 離職票の異議欄に記入をした上で、自己都合ではなく会社都合であったという事実の裏付けが取れたときには、ハローワークが離職理由の変更をしてくれます。 会社都合退職・自己都合退職のどちらが転職に不利? 退職理由が次の就職に響くのではないかと心配される方は多くいらっしゃいます。 会社都合退職・自己都合退職では、どちらが転職に不利と一概に言うことはできません。 ただし、会社都合退職が会社の都合による倒産やリストラではなく、自身の行為にある場合には、不利にはたらいてしまう可能性があります。 もっとも、自己都合退職であっても、短期間に何度も転職を繰り返している場合などは、すぐに辞めるイメージを持たれてしまい、不利にはたらいてしまうこともあるでしょう。 いずれにせよ、採否は離職理由が会社都合か自己都合かだけで決まるわけではありません。 有利不利も気になると思いますが、しっかりと自身の魅力を伝えた上で離職理由を理解してもらえるよう、伝えられるだけの入念な準備を練っておくことが大切です。 次の仕事探しを検討する場合は、以下の記事を参考にしてみてください。 参考 就活サイトおすすめランキング72選|就活の教科書 まとめ 労働者にとって、自己都合退職と会社都合退職では、会社都合退職の方が失業手当などの面でメリットがあります。 退職勧奨に従う形での退職は、原則として会社都合退職扱いです。 しかし、場合によっては、本来会社都合になるべきところ、使用者の判断で自己都合退職扱いとされてしまうケースがあります。 そのような場合には、早急に弁護士や公的機関に相談しましょう。 --- ### 不当解雇は弁護士に相談すべき?相談するときのポイントを解説 - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-03-27 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6479 - Categories: 不当解雇 不当解雇について弁護士に相談する方法を紹介!費用相場は?相談料、着手金、成功報酬など費目ごとに解説。弁護士相談成功のコツも伝授!弁護士相談のメリットとは? 「不当に会社を解雇されてしまった」「不当解雇を弁護士に相談するメリットは?」 不当な解雇をされてしまうと、今後の対応について不安になる点が多いと思います。 不当解雇は、個人で解決を図ることは難しく、弁護士に相談すべき事案です。 弁護士に相談することで、自分だけで会社と争うよりも、会社が危機を感じて不当解雇を撤回する可能性が高まるなどのメリットがあります。 しかし、弁護士に相談するのは大げさではないのか、弁護士に相談するほどの内容か分からないなどと、相談するかどうかお悩みの方もいるでしょう。 そこで、今回の記事では、不当解雇について弁護士に相談するメリットや相談するときのポイントを解説します。 不当解雇を弁護士に相談するメリット 不当解雇を弁護士に相談するメリットは多くありますが、その中でも厳選した3つをご紹介します。 不当解雇を弁護士に相談するメリット 不当解雇を撤回してもらいやすくなる 不当解雇を争うための手続きを任せられる 勤務時の未払い賃金や未払い残業代を請求できる可能性がある 不当解雇を撤回してもらいやすくなる 弁護士に依頼すると、自分だけで会社と交渉するよりも不当解雇を撤回してもらいやすくなることが期待できます。 一般に労働者は、会社に比べると弱い立場なので、自分だけで不当解雇だと主張しても相手にしてもらえない場合が少なくありません。 この点、弁護士であれば適切な法的主張に基づいて会社と交渉できるため、相手が危機を感じて解雇の撤回に応じる可能性を期待できます。 また、解雇無効を主張して不当解雇が撤回されれば、その和解や合意がなされる日までの賃金を受け取ることができます。 関連記事 ・不当解雇の解決金(和解金)相場は?実例もご紹介! 不当解雇を争うための手続きを任せられる 交渉をしても会社が不当解雇の撤回に応じない場合は、労働審判や裁判などの法的な手続きを検討するしなければなりません。 弁護士はこれらの手続きに一貫して対応することができます。 実際に裁判の手続きになった場合、適切な法的主張や証拠集めなどが必要になりますが、弁護士はこれらを迅速かつ適切に処理することが可能です。 また、労働者自身で会社との交渉や裁判手続きを行う必要がないため、療養期間や転職活動に時間を割けることも大きなメリットです。 そもそもご自身の解雇が不当解雇にあたるのかどうか知りたい方は、『不当解雇とは?正当な解雇との違いや不当解雇の事例を解説』の記事も参考にしてください。 勤務時の未払い賃金や未払い残業代を請求できる可能性がある 弁護士に依頼すると不当解雇について争うだけでなく、勤務時の未払い賃金などについても請求できる可能性があります。 たとえば、不当解雇される前に残業代の未払いがあった場合は、弁護士に相談すると未払いの残業代についてあわせて請求することが可能です。 また、パワハラやセクハラなど、不当解雇に至る原因として各種ハラスメントがあった場合は、慰謝料請求も検討できます。 関連記事 ・不当解雇されたら裁判で慰謝料を請求!損害賠償の相場と相談窓口 不当解雇の弁護士相談を成功させるポイント 労働問題に強い弁護士を選ぶ 専門家にはそれぞれ得意分野があるように弁護士にも得意分野があるので、労働問題に強い弁護士を選びましょう。 不当解雇について相談する場合、最初から労働問題に強い弁護士を選んで相談するのがおすすめです。 労働問題を得意とする弁護士であれば、事務所のホームページで労働問題の過去の解決実績を掲載したり、労働問題に関するコラムを掲載したりしているので、弁護士を探す際の手がかりにしましょう。 関連記事 ・労働問題を依頼すべき弁護士とは?選び方や注意点も解説! 不当解雇の実績が豊富な弁護士を選ぶ 弁護士を選ぶといっても、法律事務所によって、強みや実績はさまざまです。 不当解雇に強い弁護士は、当然不当解雇を扱った経験や解決実績が豊富にあるでしょう。 気になる弁護士がいたら、まずはホームページで不当解雇の経験と実績を確認しましょう。 不当解雇は、法律の知識だけではなく、過去の判例などに詳しくなければ対応が難しい分野です。 弁護士が不当解雇について充分な解決実績をもっているか否かは、依頼する上で重要なポイントです。 関連記事 ・不当解雇に強い弁護士の探し方|相談無料・費用の仕組み 無料法律相談を活用する 不当解雇かどうか確証がないので、相談すること自体が不安という場合は、無料法律相談を活用する方法があります。 弁護士事務所によっては、「労働問題に関する初回相談は60分無料」などの無料法律相談のサービスを実施していることがあります。 無料相談を利用すれば、不当解雇の可能性があるかどうかを無料で弁護士に判断してもらえます。 仮に不当解雇の可能性は低いと言われたとしても、無料なので費用はかかりませんし、次の仕事や生活に向けてスッキリした気分になれる可能性もあります。 相談した結果、不当解雇の可能性があると言われれば、弁護士に解決を依頼するかどうかを検討する機会を得られます。 また、どの弁護士に相談すればいいかよくわからない場合には、無料相談を利用して複数の弁護士事務所に相談すれば、自分と相性が良さそうな弁護士を見つける手がかりにすることも可能です。 不当解雇について弁護士に相談する費用の目安 不当解雇について弁護士に相談・依頼したときの弁護士費用の内訳は、主に以下のようになっています。 費用内訳相談料無料もしくは有料1時間あたり1万円程度が相場着手金弁護活動の着手時に発生する弁護士費用無料、数十万円程度の定額、または経済的利益*の10~20%と設定されることが多い報酬金弁護活動の成果に応じて支払われる弁護士費用経済的利益の10~20%+〇万円、と設定されることが多い実費弁護活動で実際に支払われた費用郵便代、交通費、書類代など ※弁護士の活動により回収できた金額 相談料 相談料とは、弁護士に法律相談をした場合にかかる費用です。 相談料は一般的にタイムチャージ制になっていて、費用の目安としては1時間あたり1万円前後となっています。 時間ごとに料金が発生するので、長時間の相談や複数回の相談の場合は、それだけ相談料も高くなりがちです。 相談料を節約したい場合は、実際に法律相談をする前に、どのような相談をしたいかを文章などにまとめておきましょう。 また、弁護士事務所によっては初回相談を1時間無料などに設定している場合があるので、相談料を節約したい場合は無料相談のサービスを活用する方法もあります。 着手金 着手金とは、弁護士が実際に仕事に着手した場合に発生する費用です。 着手金は仕事を引き受けるだけで発生するので、弁護士の仕事によってどのような結果が得られたかに関係なく、費用として支払う必要があります。 たとえば、不当解雇について会社と交渉してほしくて弁護士に依頼した場合に、仮に会社との交渉が決裂したとしても、着手金は弁護士に支払います。 着手金の目安としては、30万〜50万円です。 事務所によっては請求金額(会社に支払いを請求したい金額)の数%を着手金として設定している場合もあります。 着手金を支払うには、基本的にまとまった費用が必要になりますが、着手金を無料としている弁護士事務所もあります。 報酬金 報酬金は弁護士が仕事をした結果、依頼人が経済的な利益や納得のいく結果を得られた場合に、弁護士に報酬として支払う費用のことです。成功報酬と呼ばれることもあります。 成功報酬は仕事の結果が満足いく場合に支払う費用なので、仕事の結果が納得いかない場合は発生しないのが特徴です。 たとえば、不当解雇を撤回するように弁護士に依頼したところ、弁護士の活動によって会社が解雇を撤回した場合は成功報酬が発生します。 一方、弁護士が尽力したものの、会社が解雇を撤回せず、何らかの経済的利益も得られなかった場合は、依頼人にとって満足できる結果ではないので、成功報酬は発生しません。 実費 着手金や成功報酬以外にも、以下のような費用が発生する場合があります。 その他発生し得る費用 会社との交渉、労働審判、訴訟などの日当:1〜3万円前後 会社と交渉するための書面(内容証明など)を作成する費用:5万円前後 裁判所までの交通費や印紙代などの実費 弁護士に依頼する場合は、どのタイミングでどのような費用が発生するのかを、依頼する前に確認しておくことをおすすめします。 関連記事 ・不当解雇を相談・依頼するときの弁護士費用相場は?対処法も解説 まとめ 不当解雇について自力で争っても会社が相手にしない可能性がありますが、弁護士に依頼すると不当解雇の撤回を期待しやすくなります。 弁護士に依頼する場合、相談料や着手金などの費用が一般に発生しますが、弁護士によっては初期費用をかけずに成功報酬に含めるサービスを実施している場合もあるのがポイントです。 とくに、初回の法律相談が無料になるサービスを利用すれば、不当解雇について相談費用を気にせずに気軽に相談できます。 不当解雇についてお悩みの場合は、まずは弁護士に相談してみましょう。 弁護士以外の窓口にも相談できますが、不当解雇は弁護士への相談がおすすめです。 相談窓口の違いについて詳しく知りたい方は、『不当解雇の無料相談窓口7つを比較!弁護士やハローワーク・労基署・労働組合の違いは?』の記事をご覧ください。 --- ### 労災は弁護士に依頼するべき?気になる労災の手続きを紹介 - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-05-30 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6480 - Categories: 労働災害 労災保険給付を受け取るためにはどのような手続が必要になるのでしょうか。 労災にあった場合には弁護士に依頼するべき理由についても解説しています。 「労災と認定されたので労災保険の保険金を受け取りたい」「労災の申請手続きが分からない」 このようなお悩みを解消するためにも、労働災害にあった場合には弁護士に依頼することをおすすめします。 この記事では、労災を弁護士に依頼するべき理由や労災の手続きについて詳しく解説しているので、ぜひ最後までご覧ください。 労災と認められるのはどのようなものか 労災保険とは まず、労災保険とは、「労働者災害補償保険」の略称です。労災保険の制度については、「労働者災害補償保険法」にルールが規定されています。 労働者災害補償保険法は、「業務上の事由」や「通勤」による労働者の負傷・疾病・障害・死亡に対して必要な保険給付を行い、同時に労働者の社会復帰の促進や労働者やその家族の援助、労働者の安全・衛生確保を図り、労働者の福祉の増進に寄与することを目的にしています(労働者災害補償保険法1条)。 労災保険制度では、被災した労働者や遺族に対して必要な保険給付をおこないます。 労災保険の対象となる労働者は、会社に雇われている正社員のみに限られるわけではありません。アルバイトやパートタイム、契約社員であっても要件をみたす限り保険給付の対象となります。 労災保険と似た制度に「雇用保険」があります。 雇用保険は、労働者が失業した場合や労働者について雇用の継続が困難となる事由が生じた場合に、労働者の生活や雇用の安定を図るとともに、再就職を促進するために必要な給付を行う制度です。 これらの労働者のための労災保険と雇用保険を総称して「労働保険」ということがあります。 関連記事 ・労災事故の慰謝料は会社に請求できる?労災保険と慰謝料の違い 労災の対象となる災害とは 労災の対象となる災害は、労働者の「業務上の負傷」など(業務災害)と「通勤による負傷」など(通勤災害)に大別されます。 業務上かどうかはどのように判断されるのでしょうか。 行政解釈によると、「災害が業務に起因するものでなければならず(業務起因性)、そのためには、災害が業務の遂行中に、すなわち労働者の事業主の支配ないし管理下にある状態で発生したものであること(業務遂行性)」が必要とされています。 次に、通勤災害における「通勤」とは、以下のようなものが該当します(労働者災害補償保険法7条2項各号)。 通勤災害における「通勤」の種類 住居と就業の場所との往復 就業の場所から他の就業場所への移動 住居・就業場所との往復に先行し、または後続する住居間の移動 通勤災害では、通勤に「合理性」があるかどうかが重要になります。 関連記事 ・労災と認定されるには?認定基準・手続き・受け取れる給付金について解説 労災と後遺障害等級認定の手続きについて 後遺障害と等級認定について 労災によって後遺障害が残ってしまった場合には労災申請として障害補償の給付申請をすることができます。 「後遺障害」とは、労災の結果受傷し、治療を継続してもそれ以上改善が期待できないとして判断された状態(症状固定)をいいます。 症状固定については必ず医師により診断される必要があります。 労災保険から障害給付を受ける前提として、労働基準監督署長による後遺障害の等級認定が必要となります。 仮に後遺症が残っていたとしても、この障害等級認定を受ける手続きを踏まなければ労災保険から保険給付を受け取ることはできません。 関連記事 ・労災による後遺症を後遺障害と認定されるには?条件と手順を解説 後遺障害等級認定を得るまでの手続きは? 後遺障害等級認定を得るまでの手続きは以下のようになります。 後遺障害等級認定を得るまでの手続き 医師により診断書を作成してもらう 障害給付の申請書を提出する 労働基準監督署による審査 審査結果が通知され被災者に保険金が給付される それぞれ詳しく説明します。 1. 医師により診断書を作成してもらう まずは、病症について診断を担当した医師に症状固定の診断書を作成してもらいましょう。 診断書は重要な必要書類ですので、虚偽や過不足がないように被災労働者も注意しておく必要があります。 労働者側が訴えたい症状が診断書中に明らかになっていない場合には一度医師に相談してみましょう。 2. 障害給付の申請書を提出する 医師による診断書やレントゲン写真などの資料とともに障害補償の給付申請書を労働基準監督署に提出します。 参考:障害(補償)給付請求書記入例(厚生労働省HP) 3. 労働基準監督署による審査 労働基準監督署の審査では、提出した資料などに基づき被災者に対して面談が行われます。 この面談では書面だけでは把握できない症状の状況について報告することになります。 したがって認定に関わるような重要な内容・症状については、一度整理してその場で適切に弁護士などの第三者に伝えられるようにしておく必要があるでしょう。 審査期間については約3か月が一定の目安になります。 4. 審査結果が通知され被災者に保険金が給付される 面談の後日、後遺障害の等級認定の結果が書面で通知されます。認定された障害等級に応じた給付金が支給されます。 等級認定の結果に不服がある場合 認定された後遺障害等級が思っていたよりも軽い等級であった場合など結果に納得いかない場合には、不服申立手続を利用します。 この不服申立手続は、各都道府県の労働局に置かれ労働災害についての審査を行う「労働者災害補償保険審査官」に対して審査請求を申し立てることになります。 この審査請求の結果に対しても納得がいかない場合には、労災保険の給付処分に関して第2審行政不服審査を行う「労働保険審査会」に再審査請求をすることができます。 労災が起きた場合に弁護士に依頼すべき理由 一度出された後遺障害認定が適切か否かの判断ができる 労災事件の経験が豊富な弁護士であれば、知識と経験に基づいて後遺障害等級の認定が適切か否かの判断ができます。 後遺障害が残った場合には後遺障害部分の損害は認定された後遺障害の等級に応じて判断していくことになります。 多くの人は後遺障害等級の認定が一度出された場合には、その判断は絶対的なものだと受けとりがちです。なぜなら、医師が診断してしかるべき組織が手続きを踏んで認定しているからです。 しかし、認定された後遺障害等級は覆る可能性もあります。後遺障害等級の判断では書面などの伝わり方次第では結論に影響が出てくるからです。 後遺障害等級の判断には、医学的な知識と手続きに関する法的な知識が不可欠です。弁護士に依頼することで、適切に後遺障害等級の認定を受けられる可能性が高まるでしょう。 等級認定が不適切であると判断した場合には、不服申立手続として前述の審査請求という手続きを利用することになります。 加害者や会社側に対して強力な交渉力を有する 会社が労働者に対して職場環境に対して適切な措置を講じるべき義務を怠っていたような場合には、安全配慮義務違反として会社に対して損害賠償金を請求することができます。 法律の専門家である弁護士であれば、過去の同様な判例・事例から適切に賠償金額を算出し請求してくれます。 また、弁護士は日々交渉を業務として遂行していますので、強力な交渉力をもって会社と渡り合ってくれるでしょう。 弁護士に依頼することで、そのような交渉ごとをすべて弁護士に一任できます。依頼者は手続き上のストレスを感じることなく療養に集中し、日常生活を送ることができることも大きなメリットと言えるでしょう。 裁判になった場合には訴訟代理人として活動してくれる 後遺障害等級に争いがある場合や、会社が任意に損害賠償に応じないような場合には法的手続きとして訴訟を提起します。 裁判手続は非常に厳格な手続きですので、事実を適切に主張して、証拠により立証していかなければなりません。法律の素人が裁判手続を自力で行うことは難しいといえます。 訴訟になった場合には相手方にも代理人として弁護士が就くことが一般的ですので、弁護士に依頼することがベストでしょう。 まとめ 労災に関してお悩みの方は、弁護士への相談・依頼を検討しましょう。 法律の専門家である弁護士は、後遺障害等級認定が適切であるかの判断や会社との交渉などで、労働者が有利に働くよう交渉を行います。 また、弁護士を依頼すれば、会社との交渉などを弁護士に一任できるため、療養に専念することも可能です。ぜひ弁護士への依頼を検討してみてはいかがでしょうか。 なお、弁護士への相談は費用が発生する場合もあります。無料の相談窓口をお探しの方は『労災の相談はどこでできる?困ったときの相談先を紹介!無料の窓口も!』の記事もご覧ください。 --- ### 労働条件が不利益に変更(賃金の減額など)されたら?相談窓口を解説! - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-05-20 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6448 - Categories: 労働問題全般 会社を存続させるために労働条件が不利益変更される場合があります。この記事では、不利益変更とは何か、不利益変更の条件と相談窓口を解説します。 「会社から減給すると言われた」「就業規則が変更された」 不利益変更とは、会社が就業規則で定めている労働条件を労働者の不利益な方向に変更することです。 減給や手当の廃止など、これまでに得られていたメリットがなくなると、仕事のやる気がなくなってしまうでしょう。 この記事では、不利益変更が認められる条件、不利益変更をされた場合に確認すべきことについて解説していきます。 不利益変更された場合の相談窓口もご紹介しているので、ぜひ最後までご覧ください。 不利益変更とは?不利益変更禁止の原則とは? まず、不利益変更とはどういうものか、法律で定められている「不利益変更禁止の原則」を確認してみましょう。 そもそも不利益変更とは? 不利益変更とは、会社が就業規則で定められている労働条件を労働者の不利益な方向に変更することです。 近年、世の中の経済状況は、会社の経営に大きな影響を与えています。経営状態が悪化してしまうと会社を存続させるために、労働条件を不利益変更せざるをえない状況になることがあります。 不利益変更の具体的な例として、決められていた賃金(給与)が、会社側の一方的な都合で引き下げられることが挙げられます。 賃金だけではなく、以下のものも不利益変更として扱われます。 不利益変更の例 賃金は変更しないまま、所定労働時間数が長くなる 休憩の時間を減らす 福利厚生の変更や廃止をする 休職や復職の条件を変更する 年功序列の賃金体系から、成果主義の賃金体系へと変更する これらはあくまで例示にすぎませんので、労働条件が不利益に変更されたと感じる場合には弁護士に相談して労働条件の不利益変更にあたるか確認してみましょう。 労働条件の不利益変更は原則できない 会社の経営を取り巻く環境が悪化したからといって、会社から一方的な不利益変更は、原則としてできません。 労働契約法9条において、就業規則の変更により労働条件を不利益に変更することはできないとしているためです。 この労働者を保護するための原則を「不利益変更禁止の原則」といいます。条文では以下のように定められています。 使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない 労働契約法9条 ただし、例外的に不利益変更が認められることもあるので注意が必要です。不利益変更が認められるのはどのような場合か確認していきましょう。 不利益変更が認められるための2つの法的条件 不利益変更が例外的に認められるための条件は、「変更内容が合理的である」「労働者に変更後の就業規則を周知する」の2つです。 2つの条件を満たせば、不利益変更が認められます。それぞれの条件を詳しく見ていきましょう。 条件①変更内容が合理的である まず1つ目の条件は、就業規則の変更内容が合理的であることです。合理的であるかどうかの5つの判断基準は、以下の通りです。 5つの判断基準 労働者の受ける不利益の程度 労働条件の変更の必要性 変更後の就業規則の内容の相当性 労働組合等との交渉の状況 その他の就業規則の変更に係る事情 1. 労働者の受ける不利益の程度 就業規則の変更により、労働者の受ける不利益の大きさがどの程度か、またその不利益を減らす方法があったか、などの要素が考慮されます。 2. 変更の必要性 不利益変更がなぜ必要となったのか、その必要性の大きさが問われます。 たとえば、不利益変更することで、会社の倒産危機を回避できるのであれば、必要性が大きいと判断されやすいでしょう。 3. 変更後の就業規則の内容の相当性 変更内容が社会的にみて相当性があるか、という点が考慮されます。 変更した内容が特定の労働者や特定層のみに著しく不利益となる場合は、社会的にみて相当性があるとは言えません。 また同業界や同業種、同規模の同業他社などと比較し、変更後の内容に相当性があるかどうかなども検討されます。 4. 労働組合等との交渉の状況 労働組合や労働者の意思を代表する者などを対象とした交渉の経緯、結果などのことです。 5. その他の就業規則の変更に関わる事情 これには不利益変更を緩和するような代替措置がとられたか、十分な説明が行われたか、移行期間が設けられたか、などの要素から判断されます。 条件②労働者に変更後の就業規則を周知する 2つ目の条件は「労働者に変更後の就業規則を周知」することです。変更内容が合理的であっても、労働者に変更後の就業規則を周知しなければ不利益変更は無効となります。 会社側が労働者に気づかれないように勝手に不利益変更を行うことはできないというイメージです。 会社が就業規則を変更した場合は、労働基準法89条、90条の手続きが必要となります。 まず、常時10人以上の労働者を使用する使用者は、変更後の就業規則を所轄の労働基準監督署長に届け出なければなりません(労働基準法89条)。 さらに、就業規則の変更について過半数労働組合等の意見を聴かなければならず、所轄の労働基準監督署長に届出の際に、その意見を記した書面を添付する必要があります(労働基準法90条)。 これらの変更手続きがされず不利益変更をした場合は、労働基準法違反となり、使用者に30万円以下の罰金が科されます(労働基準法120条1号)。 労働条件を不利益に変更されたらどうする? 不利益変更に無理に同意する必要はない 会社が労働条件の不利益変更をする場合、原則として労働者から同意を得なければなりません。 そのため、会社から不利益変更されたとしても、労働者はその変更が受け入れがたいものであると感じた場合は無理に同意する必要はありません。 不利益変更後の就業規則に拘束されないように、内容証明などを利用し、変更後の就業規則に拘束されない旨を通知しましょう。 同意書にサインしても無効になる可能性もある 会社が不利益変更を行うために、断りづらい環境を作ったうえで、不利益変更の同意書にサインを求めてくる場合があります。 たとえ、同意書にサインをしてしまっても、無効になる可能性もあります。 たとえば、上司や部下の関係を利用して強制的にサインをさせたり、解雇や退職をちらつかせたりした場合など、真意に基づかない同意書は無効となる可能性が高いです。 実際に、賃金や退職金の変更など労働者への不利益が大きい変更については、ただ署名押印をしたというだけでは同意があったとはいえない、とした判例があります(『山梨県民信用組合事件』最判平28. 2. 19)。 もっとも、同意書にサインを求められた場合でも、一度「持ち帰って検討します」「専門家に相談します」などと返答し、即決してサインするのは控えておくべきでしょう。 不利益変更の判例 不利益変更について争われた判例をみてみましょう。 中野運送店事件 就業規則に記載されていた「運行に関する手当明細表」を変更し、運送ドライバーの給与を一人当たり約100万円減額した事件です(『中野運送店事件』京都地判平26. 11. 27)。 この企業は営業利益が7年にわたってマイナスとなっていたことから、人件費の削減を試みました。 しかし、労働組合との団体交渉で十分な資料の提供や説明がないとして合理性はなく、不利益変更は認められないと判断されました。 シオン学園事件 就業規則の不利益変更によって全従業員の給与の8. 1%の減額を行った事件です(『シオン学園事件』東京高判平26. 2. 26)。 この事件では、多額の営業損失を計上しているうえ、3年で20回以上の団体交渉を行い、決算報告書などの資料を示して経営状況を示していました。 また、給与減額後も同業他社の平均賃金よりも給与の水準が高いことや、従業員代表より就業規則変更時の意見聴取で特に意見を提出していないといった理由から、不利益変更が認められています。 就業規則が不利益変更されていた場合の相談窓口は? 変更されなければもらえるはずだった給与や退職金などが、もらえなくなるとやるせない気持ちになりますよね。 最後に、就業規則が不利益変更されてしまった場合の相談窓口をご紹介します。 労働基準監督署 不利益変更が違反であると判断した場合はもちろん、不利益変更が違反でないかと感じる場合は、労働基準監督署へ相談してみましょう。 労働基準監督署は、会社が労働に関する法律を遵守しているかをチェックし、必要であれば会社に行政指導を行うなど、労働者の権利を守ることを目的とした公的機関です。 法的な強制力はありませんが、相談することで改善が期待できます。まずは労働基準監督署へ相談してみましょう。 弁護士 不利益変更されてしまった場合は、弁護士にも相談可能です。 不利益変更を行う際には、会社側の経営状況が悪化していることが多いですが、会社によっては単なるコスト削減のために不利益変更を行う場合もあります。 この場合、不利益変更が合理的かどうかが争点となりますが、会社側も意見を曲げずに「不利益変更が合理的である」と主張してくる場合もあるでしょう。 弁護士に相談すれば、不利益変更の有効・無効の判断や、法的な手続きを視野に入れたアドバイスをもらうことができます。 不利益変更が無効の可能性が高ければ、労働者は不利益変更する前の条件をもとに、差額の賃金や慰謝料を会社側に請求可能です。 弁護士は労働者の代理人となって会社との交渉などを行うことができます。交渉で問題が解決できない場合には、スムーズに労働審判や訴訟などの法的手続きに移行することも可能です。 法的な手続きの移行を考えている、法的な手続きを視野に入れたアドバイスを聞きたい方は、弁護士に相談することをおすすめします。 --- ### 就業規則を見たことがない!就業規則のない会社は違法? - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-06-28 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6435 - Categories: 労働問題全般 会社の就業規則を見たことがありますか。見ようと思っても見れない場合,会社の規模によっては違法となる場合があります。この記事では、就業規則とは何か、就業規則がない場合に想定される問題ついて解説します。 「就業規則をもらっていない」「会社に就業規則がないと言われた」 就業規則には、会社内の労働時間、休憩時間、給与、休暇など、労働条件に関する重要なルールが記載されています。 会社に勤める以上、就業規則に目を通しておくべきと言えますが、自身が勤める会社の就業規則を見たことがない方は多いのではないでしょうか。 就業規則を見ようと思っても見れない場合、会社の規模によっては違法となる場合があります。 この記事では、就業規則のない会社は許されるのか、就業規則を見ることができない場合はどうすれば良いのかについて詳しく解説します。 就業規則とは何か 就業規則とは? 就業規則は、会社と従業員の間の労働条件や職場における規律などを定めたものです。 就業規則には、労働時間や給与、休暇や退職・解雇についての一般的なルールが記載されています。 就業規則を定めることによって、会社と従業員双方のルールを明確にできます。労使間のトラブル防止やスムーズな職場運営に役立ちます。 就業規則には必ず記載しないといけない内容がある 就業規則に記載される内容は、「絶対的必要記載事項」「相対的必要記載事項」「任意記載事項」の3種類に分類できます。 絶対的必要記載事項 就業規則を作成する際には、必ず記載しなければならない「絶対的必要記載事項」というものが法律で定められています。(労働基準法89条各1~3号) 代表的な必要記載事項は以下のとおりです。 就業規則の絶対的必要記載事項 始業・終業の時刻、休日・休暇制度 賃金の決定、計算・支払いの方法、賃金の締切り・支払の時期、昇格に関する事項 退職に関する事項・解雇事由 絶対的必要記載事項を欠く就業規則は無効となります。 相対的必要記載事項 相対的必要記載事項とは、会社が一定の制度を設ける場合には、必ず記載しなければならない事項です。(労働基準法第89条各3号の2~10号) たとえば、退職金制度やボーナスや災害補償に関する記載などがあげられます。 制度を設けていない場合には、記載されていなくても就業規則としては効力を有することになります。 任意記載事項 任意記載事項は、雇用主が任意に記載できる事項のことです。 法律で定められている記載事項以外のものを任意記載事項と言います。 一般的には、身だしなみやハラスメントなどの服務規律、就業規則の制定趣旨に関する規定が任意的記載事項に該当します。 就業規則のない会社は違法? 就業規則がなかったり、労働者に周知されていなかったりした場合は、労働基準法に違反していている可能性が高いです。 労働者が10人以上いれば就業規則の作成が必要 労働者が常時10人以上いる事業所には、就業規則の作成と届出が義務づけられています(労働基準法89条)。 そのため、労働者が10人以上いる事業所であるにもかかわらず、就業規則がない場合は違法となります。 「常時10人以上の労働者」とは、正社員の頭数だけを指しているわけではありません。パートや契約社員として働いている労働者も含まれます。 なお、労働者の計算は事業所単位で行います。会社全体では10人以上の労働者を雇用していても、事業所単位で10人未満であれば就業規則の作成・届出義務はありません。 一方、複数の事業場それぞれで10人以上の労働者が働いている場合には、各事業所ごとに就業規則を作成することが必要です。 就業規則の作成だけでなく労働者への周知が必要 就業規則を作成した場合には、就業規則を労働者へ周知することも義務づけられています(労働基準法106条1項)。 周知方法に関しては、労働基準法施行規則52条で以下のように定められています。 法第百六条第一項の厚生労働省令で定める方法は、次に掲げる方法とする。 一 常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること。 二 書面を労働者に交付すること。 三 磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること。 労働基準法施行規則第52条の2 分かりやすく言うと、確認できる場所への掲示や書面での配布、社内のネットワークで共有することが求められます。 周知されていなければ就業規則は拘束力をもたない 労働契約法7条では労働契約において就業規則が拘束力をもつためには、「周知」されることが効力要件としても定められています。 労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。 労働契約法第7条(労働契約の成立) 労働契約法における周知の方法は、必ずしも労基法上の周知義務の履行と同じ方法による必要はなく、「実質的に、労働者に就業規則の内容を知りうる状況が存在していればよい」と解釈されています。 したがって、労働者が就業規則を見たいと思っても見ることができない場合や使用者が拒否するような場合には就業規則の内容に労働者は拘束されないということになります。 違反した場合には刑事罰の対象 就業規則の作成と届出が義務付けられているにもかかわらず、その義務に違反した使用者には30万円以下の罰金が科せられます(労働基準法120条1号)。 周知義務を怠った場合でも、違反した使用者には30万円以下の罰金が科せられます(労働基準法120条1号)。 就業規則がない・見ることができないときはどうする? 会社に就業規則がない・あっても見ることができない場合はどう対処すればいいのでしょうか。 人事部・労務部の担当者に相談する まずは社内で対応してくれる部署の担当者に相談することをおすすめします。 人事・労務関係の部署であれば、会社の就業規則を知っているはずであり、就業規則の場所を教えてくれるでしょう。 ただし、会社側が何らかの理由で就業規則を見せることを拒否したり、会社の規模によっては相談できそうな部署がなかったりするケースもあります。 この場合は社外の相談先を探しましょう。 労働基準監督署に相談・申告する 社外の相談先としては、労働基準監督署があります。 労働基準監督署は労働基準法をもとに会社を監視・指導する機関で、会社の体制について疑問や不満があれば誰でも無料で相談可能です。 会社に就業規則がない、就業規則を見せてくれないなどの就業規則の違反について相談・申告すれば、対処法についてアドバイスをもらうことができます。 また、労働基準監督署には就業規則に関する決まりを守らない会社に対して是正勧告や強制捜査、逮捕を行う権限があります。 労働基準監督署からの是正勧告により、就業規則が周知され、閲覧できるようになる可能性はあるでしょう。 ただし、労働基準監督署は労働災害などの様々な問題に対応した機関であるため、緊急性が高いと判断されなければなかなか対応してもらえません。 また、是正勧告はあくまでも行政指導であり、法的拘束力を持つものではないということにも留意しておきましょう。 関連記事 ・労働基準監督署に相談できる内容とは?メリット・デメリットから徹底解説 まとめ 労働者が常時10人以上いる事業所には、就業規則の作成と届出が義務づけられています。そのため、就業規則が会社にない場合には違法である可能性があります。 就業規則は、解雇の有効性や労働時間を算定するうえで非常に重要なものです。就業規則が会社にあっても、従業員に周知されていないケースでは違法となります。 これを機会に会社の就業規則を確認してみてはいかがでしょうか。 --- ### 労働基準監督署に相談できる内容とは?メリット・デメリットから徹底解説 - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-06-28 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6436 - Categories: 労働問題全般 労働基準監督署は会社が労働基準法等を違反していないかチェックしている機関です。今回の記事では、労働基準監督署に相談できることやできないこと、活用するメリット・デメリットについて解説します。 会社とのトラブルが起きたときの相談先として、まず思い浮かぶのが労働基準監督署という方も多いと思います。 しかし、労働基準監督署がどういった相談を受け付けているかまではあまり詳しくは知らない方もいらっしゃるのではないでしょうか。 そこで今回の記事では、労働基準監督署に相談できることやできないこと、活用するメリット・デメリットについて解説します。 労働基準監督署はどんな相談ができる? 労働基準監督署とは 労働基準監督署の役割は、労働基準法を会社が守っているのかチェックしたり、安全衛生法などに基づく検査や労災の支給業務をすることです。 会社が労働基準法等を守っていないことが発覚すれば、是正指導や勧告することができ、また悪質な場合は経営者を逮捕することもできるといった司法警察としての側面もあります。 お近くに管轄署がありますので、労働基準監督署の一覧表から、ぜひ探してみてください。 労働基準監督署は労働基準法に違反しているトラブルを相談できる 前述の通り、労働基準監督署は会社が労働基準法等を違反していないかチェックしている機関です。 そのため、会社が労働基準法に違反している労働トラブルの場合は相談することができます。 具体的には以下のようなケースです。 労働基準監督署に相談できるケース 賃金が支払われていない 残業代が支払われていない 休憩時間をもらえない 有給休暇を取得できない 過労死ラインを超える残業をさせられている 雇用契約の内容と実際の雇用条件が異なる 即時解雇されたが解雇予告手当てが支払われなかった 労災の事実や申請を認めてくれない 上記の例は、労働基準法等に違反しているケースなので、労働基準監督署に相談することが可能です。 労働基準監督署へ相談する方法として、電話・メール・直接訪問の3つがあげられます。 関連記事 ・労働基準監督署は電話で相談できる?相談できる内容とポイントを解説 労働基準監督に相談できないこと 一方、労働基準法等に違反していない労働トラブルは、労働基準監督署に相談しても対応してもらえない場合が多いです。 例として、パワハラやセクハラ、モラハラなどのハラスメントは労働基準監督署に相談しても対応してもらえない可能性が高いです。 これらのハラスメントは民法上の不法行為(民法第709条)や、使用者の安全配慮義務違反(労働契約法第5条)に該当する可能性が高いですが、労働基準法等に抵触していないからです。 労働契約法と聞くと労働基準法に関連するのではと思われるかもしれませんが、労働契約法は民法の特別法であり労働基準法と違い罰則はありません。 そのため、労働基準監督署の指導対象とはなりません。 このような労働基準法に直接抵触していない労働トラブルは、労働基準監督署ではなく労働局が対応しています(詳しくは後述します)。 労働基準監督署に相談するメリット、デメリット 労働基準監督署に相談できることは、会社が労働基準法等の違反をしている場合であることがわかりました。 では、労働トラブルが労働基準監督署に相談できるケースだったとして、労働基準監督署に相談するメリットとデメリットはどのようなものがあるのでしょうか。 労働基準監督署に相談するメリット 労働基準監督署は国の機関であるため、全て無料で相談できることがメリットです。 また、残業代未払いなどの相談をしたときに労働基準法等の違反の可能性があると判断されれば、会社に対して調査を行います。 調査は、会社に事前通知なく強制的に立ち入ることが可能で、帳簿やその他書類を閲覧する権限や関係者に質問することもできます。 その結果、労働基準法違反等が発覚すれば、是正指導・勧告を行うことが可能です。 是正指導・勧告によって、会社が速やかに対応し労働環境改善につながるケースもあります。 労働基準監督署に相談するデメリット 労働基準監督署のデメリットは、証拠がないと動いてくれない可能性がある点です。 そのため、労働基準監督署に相談する前に、労働基準法等の違反があることを明確に示す証拠を揃えた方が良いでしょう。 例えば、残業代未払いのケースでは、タイムカードや給与明細、会社のパソコンを起動、シャットダウンした時間の記録などの証拠があると良いかと思います。 また、全国の労働基準監督署への相談数に比べて、労働基準監督官の数が圧倒的に足りていません。 全国の労働基準監督署と労働局には年間100万件以上の相談が寄せられているのに対して、労働基準監督官は全国に3042人のみです。(令和3年度時点) そのため、人命に関わるような悪質な労働基準法等の違反に該当する労働トラブルから優先的に対応され、残業代未払いなどの労働トラブルは後回しにされたり動いてもらえない可能性があります。 そして、是正指導・勧告ができるものの命令はできないので、是正指導・勧告を会社にしたものの無視されてしまえば、問題が解決されないままとなってしまうおそれがあります。 労働基準監督署以外の労働トラブルの相談先 労働基準監督署に相談できない労働トラブルはどこに相談すればいいのでしょうか。 また、労働基準監督署に相談できる労働トラブルでも労働基準監督署だけでは解決が難しい場合、別の相談先はどういったところがあるのかを確認しましょう。 労働問題を無料で相談できる窓口について知りたい方は『労働問題の無料相談窓口7選!専門家のサポートを受けたい方へ』の記事もあわせてご覧ください。 ここでは、代表的な窓口を3つご紹介します。 労働局に相談する 労働基準法には直接抵触していない労働トラブルでも労働局へ相談が可能です。 労働局は、労働基準監督署とは異なりさまざまな労働トラブルに関する相談に対応しています。 また、法律違反とは言い切れないグレーゾーンの労働トラブルにも対応していて、「あっせん」といって労働局が会社と労働者の仲介に入って話し合いをする場を設けることも可能です。 ただし、会社はあっせんに応じる義務はないので、無視されてしまう可能性も十分にあります。 関連記事 ・労働局とは?相談できることと利用するメリット・注意点を解説 労働組合に相談する 労働組合も労働基準法に抵触していない労働トラブルの相談が可能です。 社内に労働組合がなかったり、あっても実質機能していない場合はユニオンと呼ばれる社外労働組合に相談することもできます。 労働組合のメリットは、労働トラブルの内容によっては会社に対して団体交渉の申し入れをしてくれる点です。 労働局のあっせんと違い、会社は労働組合から団体交渉を申し入れられたら正当な理由のない限り、拒否することができません。 また、不誠実に応じることも不当労働行為として禁止されています(労働組合法第7条2号)。 ただし、団体交渉をするには組合に加入する必要があるので、組合費の有無はきちんと確認しておきましょう。 関連記事 ・労働組合に相談できることと相談の流れ【弁護士が解説】 弁護士に相談する 労働トラブルを弁護士に相談することのメリットは、相談内容の違法性の有無の判断や、代理人として本人の代わりに会社と交渉をしてくれる点です。 労働基準監督署や労働局・労働組合で解決できなかった場合は、初回相談無料の弁護士事務所もありますので相談することも検討してみてはいかがでしょうか。 労働問題は時間が経過すると証拠が散逸し、言った言わないの争いになって解決が難しくなる場合もあります。困ったときは、なるべく早く法的手続きを使える弁護士に相談してみましょう。 関連記事 ・労働問題を依頼すべき弁護士とは?選び方や注意点も解説! --- ### 試用期間で退職することは可能!辞めるときに知っておくべきこと - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-03-27 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6430 - Categories: 退職・退職後の手続き 試用期間中に会社の社風や業務内容が自分とは合わないと感じ、試用期間で辞めたいとお考えではないでしょうか。この記事では、試用期間で辞めるメリット、デメリットや、辞める場合の手順と伝え方等をご紹介します。 新しく勤めている会社の社風や業務内容が自分と合わず、試用期間中に辞めたいとお考えではないでしょうか。 試用期間とは、会社から労働者として採用されるとき、本採用の前に設けられる仮採用の期間のことです。 しかし、「一度採用された企業を試用期間で辞めることができるのだろうか」「試用期間で辞めるとなにか問題が起こるのでは」といった疑問を抱えているかと思います。 そこで、この記事では、試用期間と退職の関係について詳しく解説します。 試用期間で退職することは可能!即日退職は? 試用期間で退職することは可能 法律上、試用期間で退職することは可能です。 民法627条1項で、雇用期間のない労働者は、退職予定日の2週間以上前に退職の申し出を行うことで契約は解消できると定められているからです。 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。 民法627条第1項 労働基準法には、労働者の退職の申告日に関する規定はないため、上記の民法の規定が適用されます。 しかし、雇用契約書や会社の就業規則に「退職の申し出は退職希望日の1か月前までに申し出ること」といったルールが明記されている場合は、会社のルールに従ったほうがいいでしょう。 もっとも、会社の終業規則よりも民法が優先されるという考え方が一般的であるため、法律上は会社の就業規則を無視して退職しても問題ありません。 退職を検討するさまざまな要因を検討し、退職日を決めましょう。 関連記事 ・【弁護士解説】就業規則を無視して退職できるのか 試用期間に即日退職はできる? 試用期間中に即日退職をすることは、通常許されていません。 なんとなくイメージと違った、社風が合わないといった個人的な理由の場合、上司や会社と話し合い、退職届を提出して受理されることが前提となります。 しかし、パワハラや長時間労働など、労働環境が劣悪で会社に原因がある場合は即日退職が認められることがあります。 また話し合いの結果、会社側が即日退社を認めた場合は、試用期間中であっても即日退職できますが、即日退職は一般的に認められないと考えた方がいいでしょう。 試用期間で辞める場合の手順 試用期間で退職をする場合の流れは以下のとおりです。 試用期間で退職をする場合の流れ 退職の意思が固まったら上司に口頭で伝える 会社が退職を了承したら書面で退職届を提出する 業務の引き継ぎをする 人事などに各種手続きを確認する 試用期間といえども労働契約は成立しているため、正しい手順をとって退職の手続きを進める必要があります。 試用期間で辞めるメリット・デメリット 試用期間で辞めることにはメリット・デメリットがあります。メリット・デメリットを確認し、試用期間で退職するか検討しましょう。 試用期間で辞めるメリット 試用期間で辞めるメリットは、以下のようなものが挙げられます。 ストレスや心身の不調から解放される 言うまでもなく、現在会社で抱えている悩みから解放されるようになります。 ストレスを抱えて体調を崩してしまうようであれば、試用期間中であっても退職を申し出ることも選択肢の一つです。 退職が早いほうが転職しやすい 基本的に、年齢を重ねるにつれて転職をすることは難しくなります。 試用期間に辞めたいと思ったものの気が引けて数年働いた人と、すぐに辞めた人とでは、後者の方が年齢的には有利です。 たとえば、23歳と30歳では転職活動の難易度に差が出ますし、入社後の順応度も高いです。 辞めるのであれば、なるべく早く決断したほうがいいこともあるといえるでしょう。 新卒の場合は第二新卒枠を狙える 新卒で入社した企業の退職を考えている場合では、次の転職の際に「第二新卒」という扱いで転職活動をすることができます。 第二新卒は職歴が浅いため、会社のやり方に染めやすいといった理由などから企業が採用に積極的です。 新卒で入社したものの、現在の会社が合わないと考えているのであれば、第二新卒として転職を考えることも得策と言えます。 試用期間で辞めるデメリット 試用期間で辞めるデメリットは、以下のようなものが挙げられます。 転職や再就職に不利となる場合がある 試用期間中に会社を辞めたことは、基本的には履歴書へ記載する必要があります。 採用側が履歴書に書かれた在籍期間の短さを見て、「うちで働いてもまたすぐに辞められるのではないだろうか」といったマイナスの要素として捉えられることがあるでしょう。 この場合、退職理由を明確に伝えられるかどうかが重要となります。 退職後の生活費が必要になる 試用期間で辞めるということは、次の転職先が決まっていない状態であることがほとんどであるため、無職になる期間が発生します。 転職活動を行いながらいつ内定をもらえるか分からず、十分な貯蓄がない状況ともなるとストレスを抱える原因となり得ます。 試用期間で円満に辞める理由のまとめ方 試用期間で退職を考えたとき、退職を円満なものにしたいと考えるのは当然なことです。 退職理由の伝え方によっては、会社側に悪印象を与えてしまい、退職日まで気まずい雰囲気のなかで働かなければならないといったことになりかねません。 試用期間で円満に辞めるための伝え方を解説します。 試用期間に多い退職理由 試用期間に多い退職理由は、以下のようなケースが挙げられます。 試用期間に多い退職理由 社風や雰囲気が合わない 残業が多く勤務時間が長すぎる 知らされていた業務内容と異なっていた 求人票の勤務条件より休みが少ない 職場の人間関係が悪い 自身の能力が追いつかない ストレスや体調不良で出勤が困難になった 社風や雰囲気が合わないと言った部分は入社前にも確認できるかもしれませんが、業務内容が異なるといった理由は、実際に入社しないと気づけないものです。 入社前とのイメージの違いが、試用期間で退職を検討する主な理由と言えるでしょう。 試用期間で円満に辞める理由の伝え方 試用期間での退職を申し出る際には、会社の批判や悪口を言ったと捉えられないようにすることが重要です。 会社には可能な範囲で正直に理由を伝えつつ、会社を責めるような文言は盛り込まないようにしましょう。 そうすることで、会社や従業員から「試用期間の途中までしか働いていないのに会社を批判された」といった悪印象を与えずに済みます。 角が立たず、差し障りのない内容で伝えることで、円満退社に繋がります。 試用期間で辞める理由の伝え方の例 試用期間で辞める決意が固まった場合は、上司へ口頭で相談しましょう。 その際に、参考となるような伝え方の例を以下に挙げます。 社風や人間関係が合わない お忙しいなかお時間をいただきありがとうございます。 突然のご相談で申し訳ないのですが、じつは退職を考えております。 入社前に想定していた社風と実際の雰囲気が異なり、馴染めるように努力してきましたが、自身の性格では順応していけないと感じました。 試用期間という立場でこのようなご相談となり、大変申し訳なく思っております。 ストレスや体調不良で出勤が困難になった お時間いただきありがとうございます。 じつは少し前から体調が悪く、このまま仕事を続けることが難しいと考えております。 現在、病院に通っている状況です。 試用期間中にこのようなお話をすることになり、大変申し訳ございません。 知らされていた業務内容と異なっていた 本日はお時間をいただきありがとうございます。 自分自身とても悩んだのですが、退職をしたいと考えています。 入社当初は外回りの営業に携わると聞いておりましたが、実際は社内業務が多く、自分自身のやりたいこととのギャップを感じております。 退職するなら早い方がいいと思い、お伝えさせていただきました。 試用期間で辞めることを電話で伝えてもよいか 試用期間での退職を電話で伝えることは避けましょう。 電話で退職を伝えることは社会人としてのマナーに欠けるだけではなく、会社や従業員を不快にさせる可能性があるため円満退社は難しくなります。 揉め事なく退職したいという場合は、直接口頭で伝えるのが無難です。 まとめ この記事では試用期間と退職の関係を詳しく解説しました。 試用期間で退職することは可能ですが、メリット・デメリットがあるので、よく考えてから行動に移すようにしましょう。 退職を告げた時に、会社が労働者の退職を引き留めること自体は違法ではありません。しかし、退職の申し出をしているにもかかわらず、仕事を辞めさせてもらえなければ違法となる可能性があります。 お悩みの方は、労働基準監督署や弁護士に相談してみましょう。 --- ### 退職金が未払いの時は弁護士に相談!弁護士に相談すべき理由 - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-06-28 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6423 - Categories: 退職・退職後の手続き 退職金が未払いだったり少なかったりしてお悩みの方はいませんか。未払いになっている退職金には、請求できるケースが存在します。法的な対応が必要となった場合には、弁護士への相談をおすすめします。 「解雇されたため退職金が少ない」「退職金がもらえるはずだったのに受け取れなかった」 こういったお悩みを抱えてはいませんか?円満に退職したくても、本来は貰える退職金を受け取れなかったら不満が残りますよね。 退職金についてお悩みの方は弁護士に相談してください。 今回の記事では、退職金がもらえなかった場合の対処法について詳しく解説し、弁護士に相談すべき理由をご紹介します。 退職金は必ず支払われるものではない そもそも退職金は必ず支払われなければいけないのかというと、実はそのような規定はありません。 しかし、以下の2つのケースに該当する場合は、会社が退職金を支払う義務が発生するため、未払い退職金を請求できる可能性があります。 会社が退職金を支払う義務が生じるケース 就業規則などの書面で退職金について明記されている 労使慣行等で退職金が支払われている 未払い退職金を請求できる2つのケース 就業規則などの書面で退職金について明記されている 就業規則で退職金について記載がある場合は、会社から退職金をもらえる権利が生じます。 就業規則に記載があるにもかかわらず、記載内容に沿った支払いがされないのは、会社側の債務不履行となります。 労使慣行などで退職金が支払われている 就業規則には退職金についての記載がない場合であっても、労使慣行(企業内で定着している事実上のルール)などで長年に渡って継続的に退職金が支給されている場合は、会社に退職金の支払い義務が生じると考えられています。 会社が倒産しても退職金は請求できる 会社が倒産してしまった場合でも、退職金の支払いを請求することはできます。 倒産した会社の資産が不足していて、退職金を支払えないときは、「未払賃金立替払制度」という国の救済制度を利用して未払い退職金額(賃金)の原則80%を立て替えてもらえます。 ただし、年齢により一定の上限が決められています。 なお、「未払賃金立替払制度」を利用しても足りなかった退職金の残りは、倒産手続における配当などで支払われることになります。 関連記事 ・未払賃金立替制度はいつもらえる?利用条件や手続きの流れを解説 解雇された場合は退職金を請求できない? 整理解雇の場合は割増し退職金が支払われることが多い 整理解雇の場合は、希望退職者を増やすために通常の退職金に上増しされた割増し退職金が支払われることが多いです。 退職金についてさほどトラブルになることはないでしょう。 懲戒解雇の場合は対処が必要になることが多い 懲戒解雇で退職金が支払われるかどうかは、就業規則によります。 懲戒解雇の場合は、退職金を支払わないと就業規則に記載している会社も多いです。懲戒解雇による退職金の不支給は法律違反でありません。 退職金の不支給が就業規則に記載されている場合は、退職金を請求できない可能性もあります。 ただし、退職金は「賃金の後払い的性質」と長年会社に貢献してきた「功労報償的な性質」を併せ持つという考え方もあります。 そのため、退職金を支払わないのは、労働者のこれまで働いてきた功労に対する評価を全て抹消・減殺させてしまうほどの、著しく信義に反する行為があった場合に限られると判断されることもあります。 鉄道会社の従業員が痴漢行為を行い、懲戒解雇された事例で、当該労働者の永年の勤続の功を抹消してしまうほどの重大な不審行為ではないとして、本来の退職金の支給額の3割が認められた判例もあります(『小田急電鉄事件』東高判平15. 12. 11)。 上記のように、一部の退職金が認められるケースもあるので、退職金未払いでお悩みの方は専門家である弁護士などに相談してください。 会社が退職金を支払わないときの対処法 証拠を集める まずは、会社が退職金を支払う義務がある証拠として、退職金について記載されている就業規則や労働契約書などを用意しましょう。 手元にない場合は、会社は就業規則を従業員に周知させる義務があるため、会社に請求することが重要です(労働基準法第106条1項)。 労使慣行による退職金の請求をする場合は、他の労働者が退職金を受け取っていた事実がわかるものを用意してください。 また、ご自身が退職金を支給される条件があることを立証するために、給与明細などの勤続年数がわかるものを手元に用意しておきましょう。 内容証明郵便を送る 用意した就業規則や給与明細等を根拠に、未払い退職金の請求を内容証明郵便で送ります。 配達証明書付きの内容証明郵便であれば、後々会社からそのような請求書は届いていないと言われることを防げるうえに、催告の効果があります。 催告をすることによって、時効を6か月間だけ停止させることが可能です。 もっとも、未払い退職金の消滅時効は5年間であることに注意しましょう。 退職金未払いは弁護士に相談するべき 退職金が未払いの場合、弁護士に相談することをおすすめします。 弁護士に相談するべき理由は、裁判を視野に入れた解決方法を知ることができるからです。 弁護士は、個別の状況に応じて、会社との和解交渉や労働審判、訴訟といった手続きのどれが適切か判断し、解決に向けたサポートを行います。 和解交渉を任せられる 和解交渉とは、会社と話し合いを行い、双方の納得のいくかたちで合意を目指すものです。 弁護士が対応すると、労働者本人が対応するよりも会社が真剣な態度となり、退職金が支払われるケースが少なくありません。 また、労働者が直接会社と交渉せずに済むことも大きなメリットです。転職活動や資格取得のための勉強など、これからの人生に役立つ活動に時間を割くことができるでしょう。 労働審判の対応 労働審判とは、労働者と会社の間に労働審判員が入って調停による解決を目指すものです。 労働審判は3回以内の期日で話し合いがまとまらず、解決できない場合は審判が行われるところが特徴です。 労働審判は弁護士に依頼せずに、自分自身でも行うことができます。 労働審判は、法的な証拠から退職金の請求を主張することが重要です。 しかし、自分自身だけでは十分に証拠が収集できなかったり、正しい主張が難しかったりするケースもあります。結果的に退職金が未払いのまま終わってしまう可能性もあるでしょう。 弁護士であれば、法的な知識と収集した証拠に基づき、適切な主張を行うことができるため、退職金を受け取れる可能性が高まります。 なお、労働審判の調停での決定や審判内容は、裁判上の和解と同じ効力があり、会社側が応じない場合は強制執行できます。 関連記事 ・労働審判とは?制度の内容や手続きの流れを弁護士がわかりやすく解説 訴訟代理人としての活動 労働審判で会社側との話し合いがまとまらずに、出された審判にどちらか一方が納得せず異議を申し立てた場合は、審判内容は失効となり訴訟手続きに発展します。 弁護士に依頼することで、労働者の訴訟代理人として活動してもらえます。 裁判では、労働審判以上に専門的な知識が必要不可欠です。 労働審判では弁護士に依頼していなかった方も、裁判まで発展した際には、労働問題に強い弁護士に依頼して対応を任せることをおすすめします。 関連記事 ・労働問題を依頼すべき弁護士とは?選び方や注意点も解説! 弁護士以外の相談窓口 総合労働相談コーナー 退職金未払いは、「総合労働相談コーナー」に相談することも可能です。 総合労働相談コーナーは各都道府県の労働局や全国の労働基準監督署内に設置されており、予約不要かつ無料でさまざまな労働トラブルを相談できます。 また、プライバシーの保護に配慮した相談対応をおこなっているところが特徴です(厚生労働省|総合労働相談コーナー)。 労働組合 退職金未払いは、労働組合に相談することも可能です。 労働組合に相談することのメリットとして、会社に対して団体交渉をしてくれるという点が挙げられます。会社は正当な理由なく、この団体交渉を拒否することができません。 また、使用者が団体交渉に応じたとしても、不誠実に応じることは不当労働行為として禁止されています(労働組合法第7条2号)。 そのため、団体交渉は会社側と対等に話をすることができ、和解につながる可能性も高まります。 関連記事 ・労働組合に相談できることと相談の流れ【弁護士が解説】 まとめ もらえるはずだった退職金が少なかったり、受け取れなかったりして悩んでいる方は、弁護士に相談することをおすすめします。 費用の心配をされている方は、無料相談を受け付けている弁護士事務所や総合労働相談コーナーに相談してみるといいでしょう。 未払い退職金の消滅時効は5年です。期間の猶予はあると感じても、退職からの年数が経過するごとに証拠の収集や会社との対応が難しくなる場合もあります。 退職金未払いでお悩みの方は、できる限り早急に動き出すことが大切です。 --- ### 【労働者側】退職勧奨は違法?判例と対処法を弁護士が解説 - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-04-30 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6407 - Categories: 退職・退職後の手続き 執拗な退職歓奨をされている、また退職勧奨された際に暴言や強要をされた方に向けて退職歓奨の違法性と判例を解説します。お悩みの方は弁護士に相談してください。 「会社から退職したほうがいいと言われた」「一度断ったが執拗に退職歓奨されている」 今回の記事では、退職歓奨の違法性と判例、退職勧奨を受けた場合の対処法を解説します。 退職勧奨自体は違法行為とは言えませんが、執拗な退職勧奨は違法となる可能性があります。違法な退職勧奨かどうか判断するポイントは、行われた退職勧奨の回数や期間、会社側の言動などです。 退職勧奨でお悩みの方は、ぜひ最後までご覧ください。 退職勧奨は違法となる可能性もある 退職勧奨が違法となる場合は? 退職勧奨が違法となる場合は、程度にもよりますが、労働者が退職歓奨を断っているにもかかわらず執拗に退職を迫ったときです。 また、暴言や脅迫・強要などによって、従業員の自由な意思を阻害した場合も違法となる可能性が高いです。 退職歓奨に関する事項は、労働基準法をはじめとした労働法には記載されてません。しかし、判例上の見解によると、下記の点を考慮して違法な退職歓奨かどうか判断されています。 本人が対象歓奨を拒否しても退職歓奨を続けているか 面談の回数、時間 退職歓奨の期間 会社側の言動(脅迫や侮辱があったかなど) 違法な退職勧奨の例 以下のような退職勧奨は違法と判断されています。 約2か月半の間に11回出頭させ、最大2時間15分の執拗な退職勧奨を行う(最一小判 昭55. 7. 10) 具体的な仕事を与えず、侮辱的な発言をするなど繰り返しの嫌がらせを行う(東京地判平14. 7. 9) 「きみは発達障害なんですよ」など虚偽の病名を告げて退職を迫る(甲府地判令2. 2. 25) 面談回数が多すぎたり、面談の際に罵声を浴びせられたりする場合などは、違法な退職勧奨であることを視野に入れて対処法を考えることが重要です。 会社はなぜ退職勧奨を行うのか そもそも会社から退職勧奨をされることに疑問を抱いている方も多いかもしれません。 会社が退職勧奨を行う理由は、解雇のハードルが高いこと、一方的な解雇となると会社と従業員の間で労働紛争に発展するリスクがあることが挙げられます。 解雇は、労働契約法16条で客観的に合理的な理由がないと違法と定められており、会社は労働者を自由に解雇できないことになっています。 そこで、解雇の手段が取れない会社側は、退職勧奨というかたちで従業員を説得し、合意の下で退職をしてもらうという方法が良く採られるのです。 従業員の能力不足や勤務態度が悪い場合、従業員が病気で療養しているような場合などは退職勧奨が用いられる典型的な場面と言えるでしょう。 最初は自主的な退職を促していても、従業員が退職を拒否する場合には徐々にエスカレートしていき、結果的には違法な退職勧奨を行ってくる場合もあります。 退職歓奨されたら辞めなければならない? 退職歓奨をされたからといって、辞めなければいけないということはありません。 従業員は、自由な意思で退職するか会社に残るかを選べます。退職勧奨は、あくまで自主的な退職を促すものであるため、会社に勤め続けたい意思がある場合には、はっきりと拒否することが大切です。 しかし、退職歓奨を一度断っても、しつこく退職を迫ってくる会社があることも事実です。 退職を検討した場合でも、退職条件や退職を促されている理由を確認し、一度弁護士などの専門家の意見を聞くべきと言えるでしょう。 退職勧奨が違法と判断された判例 では、実際に退職歓奨(退職強要)が違法と判断された判例を具体的に見ていきましょう。 下関商業高校事件(最高裁昭55. 7. 10) 下関商業高校事件は、昭和40年度末から何年にも及んで、退職歓奨を拒否している高校教諭2名に対して学校長や教育委員会の職員が歓奨をし続けたという事件です。 昭和44年度末には、退職歓奨に応じない旨を示しているのにもかかわらず、3〜4か月の間に計10回以上職務命令として教育委員会への出頭を命じられて、複数人の職員から20分から120分にわたり退職歓奨されました。 また、教育委員会の職員から「優遇措置もないまま退職するまで歓奨を続ける」「歓奨に応じない限り所属組合の要求にも応じない」などと述べられたりしてさまざまな心理的圧力を加えられました。 この件に関し最高裁は、異例の数年にわたり歓奨を続けたり、短期間に10回以上の退職歓奨や自発的な意思形成を阻害するような心理的な圧力を加えることは違法な退職歓奨(退職強要)だと判断しました。 日本航空事件(東京高裁平24. 11. 29) 日本航空事件は、退職歓奨を拒否した従業員に対して上司が長時間の面談を行い「いつまでしがみつくつもりなのかな」「やめていただくのが筋です」「この仕事にはもう無理です。記憶障害であるとか若年性認知症みたいな」などの表現を用いて退職歓奨をした事件です。 従業員の自由意思を阻害するような表現や侮辱的な表現に加えて、長時間にわたり行われたこのような退職歓奨は違法な退職歓奨であると判断されました。 不当な退職歓奨をされた場合の対処法 退職歓奨を拒否しても、何度もしつこく退職勧奨をされた場合にはどのように対処すれば良いのでしょうか。 違法な退職歓奨の証拠を集める 何度もしつこく退職歓奨をされていたり、脅迫や侮辱ともとれる表現を用いての退職歓奨をされたら、その証拠を記録しておきましょう。 違法な退職歓奨の証拠として、ボイスレコーダーや退職勧奨において渡された書面、メールのやり取りの記録などが挙げられます。 とくに脅迫や侮辱された音声を録音できれば、客観的な証拠として裁判に発展した時にも有利に働く可能性が高いです。 併せて、退職歓奨を受けた際の状況をメモしておくと良いでしょう。 具体的には以下の点を明確に記録しておきましょう。 日時 場所(具体的な部屋や広さ) 誰がいたか(1人か複数人か) 会話の内容(脅迫や侮辱があったか) 時間(何時間かかったなど具体的に) 期間や頻度、拘束時間や会社側の人数も違法性に影響しますので、後から分かるようにしておくいいでしょう。 労働局にあっせんしてもらう 違法な退職勧奨をやめさせる為に、労働局のあっせん手続きを利用することも可能です。 あっせんとは、会社と従業員との間に労働条件に関してのトラブルが生じた場合に、労働局が仲介して話し合いによる解決を目指す手続きです。 ただし、会社はあっせんに応じる義務はないので、無視されてしまう可能性も十分にあります。 関連記事 ・労働局とは?相談できることと利用するメリット・注意点を解説 労働組合に相談する 違法な退職歓奨を受けた場合、労働組合に相談することもできますので、社内に労働組合がある場合は相談してみることも有効的です。 また、社内に労働組合がなかったり、あっても実質機能していない場合は、社外の労働組合に相談することもできます。 労働組合から団体交渉を申し入れられたら、会社は正当な理由のない限りは交渉を拒否できませんし、不誠実に応じることも不当労働行為として禁止されています(労働組合第7条2号) また、裁判と違い厳格な手続きを必要としないことから、迅速かつ柔軟な解決を目指せます。 ただし、団体交渉をするには組合に加入する必要がありますので、組合費の有無はしっかり確認しておきましょう。 関連記事 ・労働組合に相談できることと相談の流れ【弁護士が解説】 弁護士に相談する 弁護士に相談をすれば、ご自身が受けた退職勧奨の違法性を具体的に判断してもらうことができます。 相談後に依頼すれば、本人の代理人として会社との交渉や、労働審判・訴訟などの法的な手続きを任せることも可能です。 また、退職勧奨が違法になった場合、退職勧奨を受けたことによる慰謝料を請求できます。 弁護士であれば、労働審判や訴訟で法的な根拠に基づいた適切な主張ができるので、より良い結果につながる可能性が高まります。 無料相談を行っている弁護士事務所もあるので、一度弁護士に相談してみましょう。 関連記事 ・退職勧奨されたら弁護士に依頼すべき?メリットと選び方・費用 --- ### 【最新版】うつ病でも労災認定は可能!労災認定されるための条件を解説! - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-05-30 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6382 - Categories: 労働災害 うつ病は労災認定されにくいと言われていますが、過去に労災認定された事例は多いです。本記事では、うつ病が労災認定されるための基準と、実際に労災認定された事例を2例紹介します。 近年、仕事によるストレスが原因でうつ病を発症するケースが増加しています。 うつ病が労災認定されれば、労災保険によって補償を受けることが可能です。しかし、労災認定を受けるためには、いくつかの条件を満たす必要があります。 そこで、この記事では、うつ病が労災認定されるために必要な条件、実際に労災認定された事例を2例紹介します。 2023年9月に改正された労災認定の基準についても分かりやすく解説しているので、ぜひ最後までご覧ください。 うつ病で労災認定されるには うつ病で労災認定されるためには、下記の3つの条件を全て満たす必要があります。 うつ病で労災認定されるための条件 労災認定基準の対象となる精神疾患を患うこと 発症前の約6か月間に、業務による強い心理的負荷が認められること 業務以外、もしくは個体要因による発病ではないこと それぞれ詳しく解説していきます。 (1)認定基準の対象となる精神疾患を患うこと まず、労災認定を受けるためには、厚生労働省が定める「心理的負荷による精神障害の労災認定基準」に該当する精神疾患を患っていることが必要です。 労災認定基準の対象となる精神障害は、国際疾病分類第10回修正版の第Ⅴ章「精神および行動の障害」に定められています。 その中でも「気分(感情)障害」に該当するうつ病は、業務に関連して発病しやすい精神障害として、労災認定基準の対象となっています。 うつ病の認定を受けるためには、精神科や心療内科を受診し、医師に診断書を書いてもらう必要があります。 ただし、医師が病名を記載しただけでは、必ずしもその疾患が認められるわけではありません。 うつ病の認定には、診療記録や本人の意見を取り入れて事実を確認し、総合的に疾患の有無や発病時期を判断します。 参考:「ICD-10(国際疾病分類)第5章 精神および行動の障害」厚生労働省 (2)発症前の約6か月間に、業務による強い心理的負荷が認められること うつ病で労災認定されるためには、発病前の約6か月間に、業務による強い心理的負荷が認められることが重要です。 心理的負荷の強度は負荷の種類ごとに「弱」「中」「強」の3段階で評価され、心理的負荷が「強」と評価されれば、原則労災と認められます。 心理的負荷の認定は、以下のように分類できます。 特別な出来事に該当する場合 特別な出来事として、「心理的負荷が極度のもの」「極度の長時間労働」に関しては、それだけで業務による心理的負荷が「強」となります。 これらは労働に従事する中で特に強い心理的負荷がかかるものと評価されています。 心理的負荷が極度のものの例 生死にかかわる、極度の苦痛を伴う、永久に働けない後遺障害を残す業務上の病気やケガをした 業務に関連し、他人を死亡させた、生死にかかわる重大なケガを負わせた(故意を除く) 強姦や、本人の意思を抑制して行われたわいせつ行為などのセクハラを受けた その他、上記に準ずる程度の心理的負荷が極度と認められるもの 極度の長時間労働の例 発病直前の1か月におおむね160時間を超えるような時間外労働を行った 発病直前の3週間前におおむね120時間の時間外労働を行った 極度の長時間労働に関して、一般的な労働者が月160時間(1日8時間・週40時間)労働すると考えると、時間外労働で160時間を行った場合には、その倍の時間労働していることになります。 休日に労働しないと想定すれば、1日に8時間残業していることになり、度を超えた長時間労働とイメージができるでしょう。 特別な出来事がない場合 特別な出来事に該当しない場合は、「業務による心理的負荷評価表」に基づき、出来事ごとの心理的負荷が評価されます。 評価は、同種の労働者が一般的にどう受け止めるかという客観的な視点から行われます。 同種の労働者は、分かりやすく言うと、労働者本人ではなく、職種における立場や責任、年齢などが近い労働者のことです。 たとえば、達成困難なノルマが課されたことによる心理的負荷は、以下のように例示されています。いずれも客観的にストレスがかかる強度が具体例として示されています。 【弱】同種の経験等を有する労働者であれば達成可能なノルマを課された 【中】達成困難なノルマが課された(客観的にみて努力すれば達成も可能である) 【強】客観的に相当な努力をしても達成困難なノルマで、達成できない場合に重いペナルティを予告された 長時間労働が認められる場合 「極度の長時間労働」に該当しない場合でも、長時間労働が認められる場合には、強い心理的負荷が認められることがあります。 具体的には、以下のような場合です。 発病直前の2か月間連続して1月当たりおおむね120時間以上の時間外労働を行った場合 発病直前の3か月間連続して1月当たりおおむね100時間以上の時間外労働を行った場合 (3)業務以外、もしくは個体要因による発病でないこと 業務以外、もしくは個体要因による発病ではないかも、労災認定には大切なポイントです。うつ病が労災として認められるためには、業務による心理的負荷が強いと評価されなければなりません。 そのため、仕事以外にうつ病になりうる出来事があった場合には、業務以外の心理的負荷が強いと判断され、労災認定されない可能性があります。 具体的には「離婚した」「多額の財産を損失した」などの、業務には関係ないものの強いストレスがかかるものです。 また、過去にうつ病以外の精神障害を患っていたり、アルコールや薬物依存があったりした場合にはうつ病の要因が業務以外にある可能性を慎重に判断されます。 ここまで紹介した3つの条件が揃ってはじめて、労災と認定されます。 改正前と後では労災認定基準の何が変わった? 心理的負荷による精神障害の労災認定基準を改正のポイントとしては、以下が挙げられます。 精神障害の悪化に関する基準の緩和 2023年9月の改正前は、「特別な出来事」がなければ業務起因性が認められず、うつ病の労災認定が降りませんでした。 しかし、改正後は特別な出来事がない場合においても、業務による心理的負荷が強いと評価されれば、労災認定が降りる可能性があります。 改正により、労災の認定基準が緩和されたということです。 労働者にとってはうつ病が労災認定されやすくなったことで、労災保険で補償してもらえる可能性が高まります。 心理的負荷評価表にカスハラ・感染症対応の追加 心理的負荷評価表に、カスタマーハラスメント(カスハラ)や感染症対応が追加されました。 カスタマーハラスメントとは、顧客・取引先などからクレームといった著しい迷惑行為を受けることを言います。 また、パワハラの6類型が新たに具体例に明記されました。 パワハラの6類型に関して詳しく知りたい方は『上司をパワハラで訴える方法は?訴える際に必要な証拠を解説』の記事をご覧ください。 労災認定までの期間短縮への取り組み 労災決定までの期間短縮を目指すために、専門医による医学的意見の収集が必要とされる範囲が見直されました。 これまで専門医3名の合議により決定していた事案を、とくに困難なものを除いて1名の意見で決定できるように変更されました。 労働者にとっては、労災認定までの期間が短縮され、これまで以上に早く労災の補償が受けれる可能性があります。 参考:認定基準改正の概要 過去にうつ病で労災認定された事例 本記事では、過去にうつ病で労災認定された事例を2つ紹介します。 部署異動後、長時間労働になりうつ病を患ったケース 1つ目の事例は、主に長時間労働を原因とするうつ病です。通称「東芝事件」と呼ばれています。 被害者がうつ病を患ったとき、「異動で新しい業務に従事していた」「毎月70時間以上の残業が連続して続いていた」「業務上のトラブルで精神的に強い負荷がかかっている」状態でした。 3つとも業務が要因であることはもちろんですが、その上休職満了後に突然解雇されたことや、業務以外もしくは個体が要因でないことから、労災認定されました。 パワハラを受けたことでうつ病を患ったケース 2つ目の事例は、パワハラによるうつ病です。 被害者がうつ病を患った時、「異動と同時に係長へと昇格」「異動先の上司から連日から暴言を吐かれる」「たびたび書類を投げつけられる」状態でした。 先ほどと同様に3つとも業務が要因であることに加え、業務以外もしくは個体が要因でないことから、労災認定されました。 うつ病で労災認定された事例を分析 最後に、先ほどの2例を分析し、うつ病で労災認定されるために必要なものを紹介します。 恒常的な長時間労働 1つ目の事例は、「恒常的な長時間労働」が要因となりました。 長時間労働により労働時間が増えることで、精神的負荷が強くなることに加え、睡眠や休養などの精神的負荷を弱める時間が減ります。 そして精神的負荷が強い状態が続き、うつ病をはじめとした精神疾患を患ってしまいます。 恒常的な長時間労働で労災認定されるためには、タイムカードなどの出勤および退勤時間がわかるものを証拠にすることです。 しかし、中にはみなし残業やサービス残業などでタイムカードと実際の労働時間に差異があることもあるでしょう。 この場合は毎日の出勤および退勤時間を手帳やノートなどに記録することが、十分な証拠となります。 暴言、暴力、執拗な叱責 2つ目の事例は「暴言・暴力、執拗な叱責」が要因となりました。 指導するうえで叱責は時に必要な場合もあります。しかし「人格を否定するような叱責」は、指導ではありません。 また、暴力や必要以上に執拗な叱責も指導とは言えませんので、労働災害になります。 具体的には以下のような事実があれば「強い心理的負荷」と認められます。 人格や人間性を否定するような、業務上明らかにに必要のないまたは業務の目的を大きく逸脱した精神的攻撃 必要以上に長時間にわたる厳しい叱責、他の労働者の面前における大声での威圧的な叱責 しかし、あざができるなどの目に見える証拠があれば問題ないのですが、暴言など目に見えないものの場合は、録音をすることが大切です。 もし上司の目の前で録音をすることに抵抗があるなら、毎日日記をつけて「今日は辞めろと言われてつらい」などと記録しておくことで、十分な証拠になります。 その他に労災認定されやすい条件 下記のようなことも、心理的負荷評価表において、心理的負荷の強度が「強」と判断される具体例として挙げられています。 退職の意思がないことを表明しているのに執拗に退職を求められた 1カ月以上連続して出勤日が続いた 胸や腰などへの身体接触を含むセクハラを繰り返し受けたこと 同僚や上司から暴行などを執拗に受けた これらのことがあれば、証拠を持って労働基準監督署に1度相談しに行くことをおすすめします。 労働基準監督署は労災保険申請の窓口でもあるので、簡単な質問から具体的な申請手続き、勤務先の「労災隠し」の申告まで幅広く相談可能です。 全国の労働基準監督署の所在地や電話番号は下記リンクで確認できます。 参考:厚生労働省「都道府県労働局(労働基準監督署、公共職業安定所)所在地一覧」 関連記事 ・労災の相談はどこでできる?困ったときの相談先を紹介!無料の窓口も! --- ### どこからがセクハラになる?結局セクハラの基準は?職場のセクハラ発言一覧 - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-06-28 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6384 - Categories: ハラスメント・いじめ セクハラと思われる被害で嫌な思いをしている方に向けて、セクハラの定義と基準を解説。どこからがセクハラになるのか具体例とセクハラ発言一覧もご紹介しています。 「会社で嫌な思いをしているけど、セクハラにあたるかどうか分からない」「セクハラを受けたとき、どこに相談すればいい?」 加害者がセクハラを自覚していないケースでは、嫌な思いをしていても対処できずに悩んでいる方も多いと思います。 今回は職場におけるセクハラの定義と基準、一般的にセクハラだとみなされる具体的な言動、そしてセクハラを受けた際の対処法について解説します。 ご自身がセクハラの被害に遭っているかどうか、確認してみてください。 セクハラの定義と構成要件 セクハラの定義 職場のセクシャルハラスメント(セクハラ)とは、「職場」において行われる、「労働者」の意に反する「性的な言動」に対する労働者の対応により労働条件について不利益を受けたり、「性的な言動」により就業環境が害されることと定義されています(男女雇用機会均等法11条)。 セクハラの構成要件 職場におけるセクハラには「職場」「労働者」「性的な言動」が必要と定義されています。詳しくみていきましょう。 職場とは 職場とは、事業主が雇用する労働者が業務を遂行する場所を指します。 職場というと、ご自身がふだん働いている場所をイメージする方が多いと思いますが、労働者が通常就業している場所以外でも、「職場」となり得ます。 具体的には、以下のような場所も職場として扱われます。 職場の例 取引先の事務所 取引先と打ち合わせをするための飲食店 出張先・取材先 業務で使用する車中 顧客の自宅 宴会(業務の延長と捉えられるもの) 労働者とは 労働者とは正社員だけでなく、パートやアルバイト、派遣・契約社員などの非正規労働者を含む、事業主が雇用するすべての従業員を言います。 性的な言動とは 性的な言動とは、性的な内容の発言および性的な行動を指します。上司や同僚に対する言動のみならず、顧客や取引先の社員などに対するものも含みます。 また、男性から女性、女性から男性への言動に限らないのもポイントです。男性同士・女性同士の言動であっても対象となります。 参考:事業主の皆さん 職場のセクシュアルハラスメント対策はあなたの義務です! ! |厚生労働省 職場におけるセクハラの種類は? セクハラは「対価型セクハラ」と「環境型セクハラ」の大きく2種類に分けられます。 対価型セクハラ 対価型セクハラとは、性的な言動に対して労働者が抵抗や拒否を示したことにより、その労働者が解雇・降格・減給等の不利益を受けることです。 対価型セクハラの具体例には、次のようなものがあげられます。 事業主が労働者に性的関係を要求したが、拒否されたのでその労働者を解雇する 上司が出張中の車内で労働者の身体を触ったところ抵抗されたため、その労働者に不利益な配置転換をする 事業主が日頃から特定の労働者に対し性的発言を繰り返していたが、抗議されたためその労働者を降格させる また、先に「拒否すれば降格させる」といった旨を伝えたうえで労働者に性的関係を迫るのも対価型セクハラにあたります。 環境型セクハラ 一方、環境型セクハラは、性的な言動によって労働者の就業環境が損なわれることを指します。 環境型セクハラの具体例には、次のようなものがあげられます。 上司が労働者の身体を触ったことで、その労働者がストレスを感じ就業意欲が低下する 同僚が特定の労働者の性的な情報を意図的に流し、その労働者が苦痛を感じて仕事がはかどらなくなる 事業所内に性的な画像が掲示されており、労働者がストレスを感じて業務効率が下がる 環境型セクハラには、主に「視覚型」「発言型」「身体接触型」の3種類に分類できるとされています。 視覚型セクハラ 視覚的な環境型セクハラに該当する例として、次のようなものがあげられます。 事業者が社内にヌード写真の入ったポスターを貼っている 同僚が無理に卑猥な雑誌を見せてくる こうした職場の視覚的環境によって苦痛・ストレスを感じ、業務に支障をきたしているならそれはセクハラにあたる可能性が高いです。 発言型セクハラ 発言型の環境型セクハラに該当する例として以下のようなものがあげられます。 上司から頻繁に性的な冗談を言われたり、スリーサイズを聞かれたりする 数人の同僚が、度々性的な話題について大声で話している 同僚が自分の配偶者又は交際相手との性的関係について深く聞いてくる 性的な発言に関してはコミュニケーションの一環と捉えることもできるため、判断が難しいのは事実です。 しかし、こちらが不快な態度を示しているにも関わらず繰り返し卑猥な発言をしてくるのであればセクハラだと考えて良いでしょう。 また、「男なのに頼りない」「女なのに愛想がない」といった性差を押し付けるような発言も、セクハラの一つとしてみなされる可能性があります。 身体接触型セクハラ 身体接触型の環境型セクハラに該当する例としてあげられるのは次の通りです。 スキンシップと称し、上司が胸や腰、下半身を触ってくる 同僚が身体を触らせようとしてくる こうした行為はほぼ確実にセクハラだと判断されます。 セクハラの判断基準は?結局どこからセクハラになる? セクハラの判断基準は、「労働者の意に反する性的な言動かどうか」及び「労働者が不利益を受け、または労働者の就業環境が害されるかどうか」に基づきます。 しかし、セクハラの状況は多様であることから、個別の事情を考慮しなければなりません。そこで必要となるのが一定の客観性です。 一定の客観性は、女性なら女性、男性なら男性の「平均的な同性労働者の感じ方」を基準にすることが適当と考えられています。 つまり、同性の労働者の大多数がセクハラと感じるかどうかが、セクハラを判断する基準になるということです。 たとえば、女性労働者が、男性上司からデートに誘われたケースを想定してみましょう。 上司との関係性にもよりますが、セクハラだと感じる労働者もいれば、セクハラではないと感じる労働者もいるでしょう。 一方、同じ上司から「初体験の年齢や好きな体位を聞かれた」ようなケースではどうでしょうか。セクハラだと感じる人が増えるかもしれません。 また、それが一度きりではなかったケースではどうでしょうか。「取引先に向かう車の中で毎回性的な発言をされた」といったケースでは、多くの同性労働者がセクハラと感じるかもしれません。 このように、最終的には裁判所の判断となりますが、平均的な同性労働者がセクハラだと感じるかという一定の客観性に基づき、セクハラにあたるかどうかが判断されることになります。 セクハラ発言一覧表 セクハラ発言を一覧にまとめました。ご自身が以下のような発言をされていないか確認してください。 セクハラ発言一覧表 身体についての発言 性的な話題を持ち出す 性的なジョークやからかい 不適切な評価や比較 プライベートに踏み込む質問 食事やデートに執拗に誘う 身体的な接触をほのめかす発言 性的な暗示やほのめかし 性的な噂を流す 性別や年齢への発言 セクハラ発言の一覧 身体についての発言 「胸が大きいね」 「足がきれいだね」 「今日はセクシーだね」 「太りすぎているぞ」 「貧乳だな」 「安産型だな」 身体的特徴や外見に関するコメントは、相手が不快に感じる可能性があります。たとえ褒め言葉のつもりでも、相手が望んでいない場合はセクハラと見なされることがあります。 容姿に関する性的な悪口もセクハラとなりえます。 性的な話題を持ち出す 「最近いつしたの?」 「初体験は何歳?」 「好きな体位は?」 「イライラしてるけど生理きた?」 職場で性的な話題を持ち出すことは、非常に不適切です。相手に不快感を与える可能性が高く、セクハラと見なされる可能性が高いです。 性的なジョークやからかい 「この仕事、君みたいな美人には簡単だよね」 「彼女と一晩過ごすために昇進したいな」 「こんなに短いスカート履いてると、襲われちゃうよ」 冗談で発言していても、被害者側は不快に感じる発言です。 不適切な評価や比較 「あの人の方が君よりスタイルがいいね」 「君もあの人みたいに可愛ければよかったのにね」 「他の女性はもっと積極的だよ」 身体的特徴を他人と比較して評価することは、相手を傷つける可能性があります。このような発言もセクハラと見なされることがあります。 プライベートに踏み込む質問 「結婚してるの?」 「彼氏いるの?」 「子供を作る予定は?」 プライバシーに関する質問は、相手のプライバシーを尊重して行うべきです。相手が不快と感じる質問は、セクハラと見なされることが多いです。 食事やデートに執拗に誘う 「一緒に飲みに行こうよ。もっと親密になりたいな」 「(断っているのに執拗に)家で飲もうよ」 「(食事後)ホテルに行かない?」 相手が不快に感じているにもかかわらず、執拗に食事やデートに誘うことはセクハラとなりえます。 身体的な接触をほのめかす発言 「肩を揉んであげようか?」 「手をつなぎたいな」 「抱きしめてもいい?」 身体的な接触がなくても、身体的な接触をほのめかす発言は、相手を不快にさせます。 性的な暗示やほのめかし 「この仕事を続けたければ、俺の言うことを聞け」 「昇進したいなら、わかるだろう?」 「君との夜を夢に見たよ」 直接的に性的な発言をしなくても、性的な暗示やほのめかしがあるとセクハラとなりえます。 性的な噂を流す 「あの人経験人数すごいらしいよ」 「あいつ浮気したことあるらしいよ」 「あの人酔わせるとやれるらしいよ」 性的な噂を流すことは、相手の名誉やプライバシーを侵害します。たとえ事実だったとしても、言いふらすことは避けるべきです。 性別や年齢への発言 「男なのに根性がないな」 「男なのになよなよしてるな」 「女のくせに愛嬌がない」 「女性ならもっと色っぽい服を着た方がいいよ」 「もう更年期だからな」 「おじさん・おばさん」 「ちゃん付け・くん付け」 性別や年齢に基づく差別的な発言や評価は、差別やハラスメントと見なされる可能性があります。 「ちゃん付け・くん付け」も年齢や性差別的なニュアンスを含むため、注意すべきです。ビジネスシーンでは、年齢や性別にかかわらず、「さん」付けするのが推奨されています。 セクハラ発言されたらどう対処するべき? ここまでセクハラ発言の具体例を確認しました。では実際にセクハラ発言をされたら、どう対処するべきなのでしょうか。 「セクハラですよ」と真剣な顔で伝える セクハラ行為があったときに、その場で「セクハラですよ」と真剣な顔で伝える方法があります。 この対応により、相手に対してその行為が不適切であることを明確に示すことができます。 笑いながら伝えてしまうと、セクハラ発言がエスカレートするおそれがあるので、注意が必要です。 「セクハラになるので気を付けてください」と伝える その行為がセクハラに該当することを相手に認識させるために、「セクハラになるので気を付けてください」と伝える方法も有効です。 この対処法では、相手に対して警告を発し、再発防止を促すことが目的です。 相手が無意識にセクハラと取れる発言をしている場合には、相手にセクハラを自覚させるきっかけになります。 聞こえないふりをして応答しない セクハラ行為に対して直接的な対処が難しい場合や、状況を悪化させたくない場合には、聞こえないふりをして応答しないという対応も一つの選択肢です。 この方法は、一時的に場を避けるための手段として使われることが多いです。 聞こえないふりをすることで、相手にその行為が受け入れられないものであることを間接的に示すことができます。 セクハラ被害の相談窓口は? 自身がセクハラを受けていると判断できる場合は、すぐに行動を起こしましょう。 最後に、セクハラ被害の相談窓口を見ていきます。セクハラの相談窓口については『セクハラ被害の相談ができる無料窓口7選!抱え込まずに相談しよう』の記事でより詳しくご紹介しているので、併せてご覧ください。 最初は社内の窓口に相談すべき まずは社内のハラスメント窓口、あるいは人事部に相談するようにしましょう。 職場におけるセクシュアルハラスメントを防止するために、男女雇用均等法第11条1項で事業主に講ずべき措置を以下のように義務付けています。 「職場におけるセクシュアルハラスメントを防止するために以下の事業主は、労働者が職場における性的な言動によって就業環境を害されたり、そうした言動に対する労働者の対応によって不利益な労働条件を受けたりすることのないよう必要な措置を講じなければならない。」 男女雇用均等法第11条1項 しかし、会社よっては雰囲気的に相談しづらかったり、相談しても対処してもらえなかったりするケースもあります。 その場合は社外の相談先を探すことになります。 労働局にも相談できる 社外の相談先としては、労働局の相談窓口があります。 全国47都道府県の労働局の中には雇用環境・均等部が設置されており、ここでセクハラ被害の相談や今後の動きについてのアドバイスを受けることが可能です。 参考:雇用環境・均等部(室)所在地一覧(令和5年9月19日時点) そして、必要と判断されれば、会社に対しての是正勧告を行ってもらうこともできます。 是正勧告は法的拘束力のあるものではありませんが、会社が是正勧告に応じなければ会社名が公表されるため、一定の効力は有しているといえるでしょう。 関連記事 ・労働局とは?相談できることと利用するメリット・注意点を解説 慰謝料請求の相談は弁護士がおすすめ セクハラで慰謝料を請求したい方は、法律の専門家である弁護士に相談しましょう。 弁護士に相談することで、そもそも自分が受けている行為がセクハラに該当するのか、過去の判例などから慰謝料がいくら受け取れる可能性があるのかなどを知ることができます。 セクハラの慰謝料については『セクハラで慰謝料を請求したい!慰謝料の相場や用意すべき証拠を解説』の記事をご覧ください。 また、セクハラで慰謝料請求するための証拠の収集方法や法的な手続きについてもアドバイスをもらうことができます。 弁護士に相談した際には、セクハラの期間や態様などを聞かれることになるので、事前にある程度情報を整理してからいくと、より適切な回答をうけられるでしょう。 関連記事 ・セクハラを弁護士に相談する|費用・準備するもの・注意点を確認! まとめ この記事ではセクハラの定義から、どのような発言や行為がセクハラに当たるのか解説しました。 セクハラ発言を受けたと判断できる場合には、相談窓口に相談してみましょう。 「これはセクハラじゃないのかも」「周りの人も我慢している」などの理由で自身でセクハラ被害を抱え込む必要はありません。 専門家への相談がセクハラ被害解決の一歩となります。 もっとも、セクハラ被害を会社に訴えても、満足な対応をしてもらえないケースがあります。 その場合は、弁護士に相談し、裁判などの法的な手続きも検討しましょう。 無料の相談を受け付けている弁護士事務所や、女性弁護士が相談に乗ってくれる事務所もあるので、抱え込まずに相談してみてください。 関連記事 ・セクハラで裁判を起こしたい!セクハラ訴訟の流れと訴えるときのポイント --- ### うつ病で退職する前にすべきこと5選!退職までの流れも解説! - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-04-01 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6381 - Categories: 労働問題全般 本記事は業務や会社内の人間関係など労働環境が要因でうつ病を患い、かつそれが労災と認定された場合を想定したものです。休職をおすすめする理由と、休職中や退職時の注意点などをご紹介します。 「うつ病で退職を検討している」「うつ病で退職しても問題ない?」 仕事によるうつ病で退職を検討している方の中には、退職後の生活の不安や退職後の手続きなどが分からない方は多いのではないでしょうか。 この記事では、うつ病で退職を検討されている方に向けて、退職前にすべきこと5選と退職後の流れを紹介します。 退職後の手続きや受け取れるお金についても解説しているので、ぜひ最後までご覧ください。 うつ病で退職する前にすべきこと うつ病は、心身の健康を著しく損なう病気です。 退職は大きな決断ですが、うつ病の状態だと判断力が鈍っている可能性もあります。大きな決断は、うつの症状が落ち着いてから取ることが得策です。 後悔のない選択をするために、以下の点は確認しておくべきでしょう。 うつ病の退職前にすべきこと5選 医師に相談する 家族に相談する 退職後のもらえる手当を確認する 労災の申請を検討する 会社に相談する 医師に相談する まず、医師に相談し、現在の症状や治療状況を把握することが重要です。 医師に相談すれば、病状に基づいて、退職が適切かどうかを判断してもらうことができるでしょう。 もっとも、医師の診断を受けておらず、「うつ状態」とご自身で判断している場合には、一度心療内科・精神科に行き、診断を受けましょう。 会社への提出や必要な手当てを受けるために、診断書が必要な場合もあります。診断書をもらうためにも、医療機関の受診は必要です。 家族に相談する 医師からも「退職したほうがいい」といったアドバイスを受けた場合には、家族に相談しましょう。 退職は、本人だけでなく、家族にも大きな影響を与えます。 経済的な問題や家事分担など、退職後の生活について家族とよく話し合い、理解を得ることが大切です。 退職後にもらえる手当を確認する 退職すると収入が減り、生活が困窮する可能性があります。 退職後にもらえる手当には、失業手当や傷病手当金などがあります。 失業保険や傷病手当金などの制度を活用できるかどうか、事前に確認しておきましょう。 労災の申請を検討する 長時間労働や仕事の過度なストレスが原因でうつ病になった場合には、労災の申請を検討しましょう。 うつ病が労災認定されれば、労災保険によって補償を受けることが可能です。しかし、労災認定を受けるためには、以下の条件を満たす必要があります。 労災認定基準の対象となる精神疾患を患うこと 発病前の約6か月間に、業務による強い心理的負荷が認められること 業務以外、もしくは個体要因による発病ではないこと 1月あたり100時間を超える長時間労働や暴言・暴力といったパワハラ、身体接触を含むセクハラを繰り返し受けた場合などは、労災認定される可能性が高まります。 労災の申請に関してお悩みの方は、労働基準監督署に相談しましょう。 関連記事 ・労災の相談はどこでできる?困ったときの相談先を紹介!無料の窓口も! ・【最新版】うつ病でも労災認定は可能!労災認定されるための条件を解説! 会社に相談する 会社に相談することで、退職以外にも休職や配置転換などの選択肢を取れる場合があります。 時短勤務や配置転換で業務の負担を軽減できれば、働き続けることができるかもしれません。 退職しか頭にないときには、「会社に言ってもどうせ無理だ」と考えてしまいますが、一度会社に相談してみるといいでしょう。 また、会社に休職制度があれば休職をおすすめします。 休職をすることによって時間を確保できるため、後悔のない選択を取れる可能性が高まります。 退職ではなく休職をおすすめする理由 うつ病を患った際に、退職ではなく休職をおすすめする理由は、下記の3つです。 うつ病で休職をおすすめする理由 生活費に困らない 心に余裕が生まれる 将来設計を深く考えられる 生活費に困らない 1つ目の理由は、生活費に困らないことです。 企業に所属していた場合、企業の健康保険組合から傷病手当金を受給することができます。 とくに大企業に勤めていれば、会社独自の健康保険組合があることが多く、通常の傷病手当金の申請よりも手続きが楽です。 具体的には「傷病手当金のフォーマットが会社独自であること」「傷病手当金の申請書類を会社に書いてもらう必要がないこと」が挙げられます。 心に余裕が生まれる 2つ目は心に余裕が生まれることです。 退職してしまうと、会社要因とは別の不安が生じることで、うつ病を悪化させてしまう危険性があります。 具体的には、失職したことに対する不安や罪悪感、景気悪化による再就職の不安などがあります。 リーマンショックやコロナ禍のように、療養中に好景気から不景気になることもあり、療養後に再就職先が見つからないことのストレスは想像以上に大きいです。 うつ病の治療に、心に余裕を持つことはとても大切ですので、回復した時に働ける安心材料として休職するのもいいでしょう。 将来設計を深く考えられる うつ病は、良くも悪くも自分を深く見つめなおすことができます。このことを有効活用して自分の将来設計を深く考えることも大切です。 うつ病を患うほど追い詰められていた方は、仕事熱心で真面目に働いていた方がほとんどだと思います。 心に余裕がないと、どうしても視野が狭くなってしまうのが人間です。 そのため休職せずに退職し、金銭面や周囲からのプレッシャーなどから急いで再就職をすることで、うつ病を悪化させてしまう危険性もあります。 まずは、休職でしっかり療養をとり心に余裕を持たせることが大切です。 うつ病で退職するまでの流れ 休職制度は、労働基準法では定められていないため、各企業ごとに定められているものです。そのため、勤めている企業によっては、休職制度がない場合もあります。 ここでは、うつ病で休職せずに退職するまでの流れについて解説します。 うつ病で退職するまでの流れは、以下のようになります。 退職するまでの流れ 退職の申し入れ 業務の引き継ぎと有給休暇の消化 退職に関する書類の受け取り 退職の申し入れ まず、会社に退職の申し入れを行います。 会社の就業規則に定められている退職のルールに従い、退職の申し入れをすることが一般的です。 会社にもよりますが、「退職の1か月前までに退職を申し出ること」と定めている企業が多いです。 しかし、民法627条では「労働契約の当事者は雇用の期間を定めなかった場合には、各当事者はいつでも解約の申出を行うことができ、この場合、申込から2週間を経過することで労働契約が終了する。」とあります。 つまり、期間の定めのない雇用契約では、法律上、退職日の2週間前に退職を申し入れれば退職可能です。 うつ病で体調が悪化しており、退職の意思を告げてから1か月働くことが難しい場合でも、2週間経てば退職できます。 会社の就業規則を無視して退職することに不安を抱えている方は、『【弁護士解説】就業規則を無視して退職できるのか』の記事をご覧ください。 業務の引き継ぎと有給の消化 業務の引き継ぎが必要な場合には、引き継ぎ資料の作成や後任の指導などの引き継ぎを行いましょう。 うつ病の場合、体調面から引き継ぎが難しいことも考えられます。できる限りの引き継ぎは求められますが、会社と自身の体調を相談しながら引き継ぎを行いましょう。 また、有給休暇が残っている場合には、すべて消化してから退職できます。 退職する前に有給をまとめて使うこと心配する方もいると思いますが、会社が有給休暇の取得を拒否することはできません(労働基準法39条)。 通常の場合であれば、事業の正常な運営を妨げる場合に限り、会社には有給休暇を別の日に変更にさせる権利、時季変更権があります(労働基準法39条5項)。 しかし、退職を前提とした有給休暇の消化の場合、変更する日が退職日以降となるため、退職前の有給休暇の消化に対して時季変更権は利用できません。 つまり、溜まっていた有給は退職日までにすべて消化できるということです。 関連記事 ・有給トラブルの相談は労働基準監督署がおすすめ!相談の流れを弁護士が解説 退職に関する書類の受け取り 退職後に失業手当の手続きを行うために、離職票を受け取る必要があります。 離職票は通常、退職から2週間ほどで会社から自宅に郵送されます。 念のため離職票はいつ送られてくるのか、離職票の他に受け取る書面はあるのかなどを確認しておくと、退職してからも安心して過ごすことができます。 関連記事 ・離職票はいつ届く?退職から失業手当を受給するまでの流れを解説! うつ病で退職したらもらえるお金 最後にうつ病で退職したらもらえるお金と必要な手続きについて解説します。 雇用保険の基本手当(失業手当) 失業手当は、退職後一定の条件を満たすと受給できる保険給付です。うつ病で退職した場合でも条件を満たせば受け取ることができます。 失業手当とは会社を退職した後に、次の仕事が見つかるまでの間の生活費を保障する制度です。失業手当で受け取れる金額は、おおよそ退職前の5~8割と考えておけば間違いないでしょう。 ただし、失業手当を受け取ることのできる日数は自己都合・会社都合退職によって異なります。 受給条件について詳しく知りたい方は『失業保険(雇用保険)とは?受給条件・申請期間・無料相談窓口も!』の記事をご覧ください。 傷病手当金 傷病手当金とは、病気やけがで4日間以上働けなかった場合に、給料の一定額が健康保険から支給される制度です。 うつ病で休業中した場合はもちろん、傷病手当の受給期間である「発症から1年半」の間であれば、退職後でも、継続して受給することが出来ます。 傷病手当金では通常の給料の3分の2に相当する金額を、最大1年6か月間にわたって受給できます。 なお、失業手当と傷病手当金は同時に受給できないので注意してください。 まとめ この記事では、うつ病で退職を検討している方に向けて、退職前にすべきこと5選と退職後の流れを解説しました。 可能であれば休職をおすすめしますが、休職中でも療養の状況や体調の確認のために上司との面談が行われる場合もあります。 うつ病で会社とのやり取りが難しい場合には、まず療養が第一優先であるため、退職も選択肢の一つです。 失業手当や傷病手当金を受け取ったうえで生活の不安を解消し、療養につとめましょう。 --- ### 解雇理由証明書を請求する方法は?請求するために知っておくべきことを解説 - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-06-27 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6367 - Categories: 不当解雇 解雇理由証明書の発行を会社に請求すれば、解雇された理由を客観的に把握できるだけでなく、不当な解雇だと主張して争いやすくなります。そこで今回は、解雇理由証明書の概要や請求方法などを解説していきます。 解雇理由証明書は、会社がどのような理由で労働者を解雇したのか、解雇理由を証明する書類です。 解雇の理由が分からないと困惑してしまいますが、解雇理由証明書の発行を会社に請求すれば、解雇の理由を知ることができます。 また、解雇された理由を客観的に把握でき、不当な解雇だと主張して争いやすくなります。 そこで今回は、解雇理由証明書の請求方法や、請求するために知っておくべきことなどを解説していきます。 解雇理由証明書はどんな書類? 解雇の妥当性について会社と争いたい場合は、客観的な証拠となる解雇理由証明書を入手することが重要です。 しかし、そもそも解雇理由証明書が何なのかよくわからない場合も少なくないでしょう。 そこで、解雇理由証明書がどのような書類なのか、どんなことに役立つのかを解説していきます。 解雇理由証明書とは? 解雇理由証明書は、会社がどのような理由で労働者を解雇したのか、解雇理由を証明する書類です。 従業員は、解雇理由証明書から解雇された理由を知ることができます。 解雇理由証明書に厳密な書式はありませんが、一般的に記載されている項目として、以下のものがあります。 一般に記載すべき項目 解雇する従業員の氏名 解雇を予告した日付 証明書を発行した日付 事業主や使用者の氏名・名称 解雇理由 具体的な解雇理由について、厚生労働省の配布する雛形では、①天災その他やむを得ない理由、②事業縮小等当社の都合、③職務命令に対する重大な違反行為、④業務について不正な行為、⑤勤務態度又は勤務成績が不良である、⑥その他が挙げられています。 参考:解雇予告証明書雛形 就業規則があれば就業規則の解雇事由が記載される 会社に就業規則があり、就業規則違反を理由に解雇する場合は、先ほどの6つの項目にかかわらず、就業規則に記載された解雇事由のうち該当するものが記載されるでしょう。 たとえば、「勤務状況が著しく不良で改善の見込みがなく、従業員としての職責を果たし得ないと認められた場合は解雇できる」という規定が就業規則に規定されており、その事由に基づいて解雇するなどです。 解雇予告通知書との違い 解雇予告通知書とは、使用者(会社)が労働者に対して解雇を予告するための書類です。 解雇予告通知書はあくまで「解雇することを予告する書類」であるのに対し、解雇理由証明書は「解雇に至る理由を記載した書類」といった違いがあります。 解雇予告通知書を受け取ったものの、解雇にあたる理由に心当たりがない場合には、解雇予告通知書とは別に解雇理由証明書を請求する必要があります。 関連記事 ・解雇予告通知書とは?受け取った時に確認すべきことを解説! 解雇理由証明書は何の役に立つ? 解雇理由証明書があれば、自分がどんな理由で解雇されるのかを把握できるだけでなく、不当解雇として裁判などで争う場合に役立ちます。 解雇理由証明書があれば、解雇の理由を客観的に判断してもらいやすくなるため、解雇の無効を主張して争いやすくなります。 解雇が無効となり得るケースについて詳しく知りたい方は『解雇を無効にしたい!無効となるケースや対処法を解説』の記事をご覧ください。 解雇理由証明書を会社に請求する方法は? 会社に解雇されてしまうと、どのように対処するべきか悩んでしまいますが、まず解雇理由証明書を請求することが大切です。 解雇理由証明書を会社に請求するための方法を詳しく解説します。 解雇理由証明書を請求する方法 解雇理由証明書の発行を会社に請求するための方法は、特に法的な制限はありません。 会社が発行してくれるのであれば、口頭で請求するだけでも大丈夫です。 労働者が請求すれば、会社は解雇理由証明書を発行することが法律で義務付けられています(労働基準法22条2項)。 会社が解雇理由証明書を発行してくれない場合は、労働基準法の規定によって、会社は解雇理由証明書を発行しなければならないことを説明してみましょう。 それでも会社が応じなければ、解雇理由証明書の発行を請求する書面を、内容証明郵便で会社に送る方法もあります。 会社は解雇理由証明書の発行を拒否できない 労働者が解雇理由証明書を請求した場合、会社は拒否することはできません。 しかし、あやふやな理由で会社が従業員を解雇した場合、会社は解雇理由証明書を発行しないことがあります。 解雇理由証明書を発行してしまうと、どのような理由で従業員を解雇するのかを客観的に証明する必要が生じるからです。 何らかを理由に解雇理由証明書の発行を拒否されても、法的な根拠を基に請求しましょう。 不明瞭・虚偽・不当な解雇理由証明書が発行された場合 会社が解雇理由証明書を発行しても、理由などがきちんと書かれていなかったり、虚偽・不当な事実が書かれていたりする場合もあります。 たとえば就業規則において、どの規定に該当するかだけが記載されているなど、解雇に至った具体的な状況や理由が記載されていないケースです。 会社から発行された解雇理由証明書が不明瞭・虚偽がある場合は、理由などがきちんと記載された証明書を再度発行するように請求することができます。 不明瞭な解雇理由証明書では、なぜ解雇されなければならなかったかを客観的に明らかにすることが困難になります。 解雇の不当性を争うには、解雇にいたった理由などができるだけ具体的に記載された解雇理由証明書があるほうが有利です。 不明瞭・虚偽・不当な解雇理由証明書が発行された場合は、より具体的な記載のある証明書を発行するように会社に請求しましょう。 解雇理由証明書を請求するために知っておくべきこと 解雇理由証明書はいつまで請求できる? 解雇理由証明書は請求できる期間が決まっており、解雇の予告をされた日から退職の日までです(労働基準法22条2項)。 労働者としては退職の日までに解雇理由証明書を請求すればよく、会社が証明書を交付する前に退職日が到来したとしても、再度会社に証明書の発行を請求する必要はありません。 解雇理由証明書を請求できる期間を過ぎてしまったら? 退職日を過ぎてしまって解雇理由証明書を請求できない場合は、退職証明書という書類を発行することを会社に請求できます(労働基準法22条1項)。 退職証明書は、会社を退職したことを証明するための書類です。主に国民健康保険への切り替え、転職先の会社への提出、失業保険の給付手続きなどに使用します。 退職証明書には一般に以下の情報が記載されています。 退職証明書に記載されている項目 使用期間(会社に雇用されていた期間) 業務の種類 事業における地位 賃金 退職の事由(解雇の場合はその理由) 退職証明書に解雇の理由のみを記載してもらえば、解雇理由証明書の代わりとして役立ちます。 退職証明書を請求できるのは、退職から2年以内です。できる限り早めに請求しておきましょう。 解雇理由証明書は再発行してもらえる? 紛失してしまったり、再就職先に提出してしまったりなどで、解雇理由証明書が手元にない場合は、解雇理由証明書の再発行を請求できます。 解雇理由証明書の再発行を請求された場合、すでに発行したことを理由に会社が拒否することはできません。 解雇理由証明書による証明を求める回数に制限がないことが、行政通達で認められているからです(平成11年3月31日基発169号)。 まとめ 解雇理由証明書は、会社がどのような理由で労働者を解雇したのか、解雇理由が記載されています。 解雇理由証明書があれば、自分がどんな理由で解雇されるのかを把握できるだけでなく、不当解雇として裁判などで争う場合に役立ちます。 解雇理由証明書を請求し、不当な解雇であることが疑われる場合は弁護士に相談しましょう。 弁護士に相談することで、不当な解雇として争える可能性があるか、今後の対処法などを知ることができます。 無料相談を受け付けている弁護士事務所もあるので、一度相談してみてはいかがでしょうか。 関連記事 ・不当解雇は弁護士に相談すべき?相談するときのポイントを解説 --- ### 【労働者側】労働問題を依頼すべき弁護士とは?選び方や注意点も解説! - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-02-28 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6368 - Categories: 労働問題全般 ハラスメントや残業代の不払い、労災トラブルなど労働問題を有利に解決するには、弁護士によるサポートが必要です。今回は労働問題を依頼すべき弁護士の選び方、探し方などをご紹介します。 「残業代の未払い」「不当解雇」「セクハラ・パワハラ」「労災トラブル」など、一口に労働問題といっても、さまざまな種類があります。 労働問題を有利に解決するには、弁護士によるサポートが必要です。しかし、どういった弁護士に依頼すれば良いのかわからない方も多いでしょう。 そこで、今回の記事では労働問題を依頼すべき弁護士の選び方、探し方をご説明します。弁護士に依頼するメリットやデメリットも合わせて解説しますので、労働問題に巻き込まれてお困りの方はぜひ、参考にしてみてください。 労働者側の労働問題で弁護士がしてくれること 未払い残業代や賃金、退職金の請求 会社が残業代をきちんと支払ってくれないのでトラブルになる事例が多々あります。賃金支払いに遅延が生じたり、退職金を払ってもらえなかったりするケースもあるでしょう。 そういった場合には、弁護士に相談すると勤務先へ未払いの賃金や退職金を請求してもらえます。 弁護士が対応すると、労働者本人が対応するよりも会社が真剣な態度となり、支払いが行われるケースが少なくありません。 不当解雇・退職勧奨への対応 会社から突然解雇されると、納得できないと感じるでしょう。解雇されなくても、強い退職勧奨を受けて半強制的に退職させられるケースがあります。 そんなとき、弁護士に相談すると解雇や退職勧奨の違法性を判断してくれます。違法であれば解雇を撤回させたり、未払賃金を支払ってもらえたりするので、泣き寝入りをせずに済むでしょう。 セクハラ・パワハラへの対応 社内でセクハラやパワハラなどのハラスメント被害を受けた場合にも、弁護士が強い味方となります。 弁護士はまず、被害者の代理人として加害者や会社側へ賠償金を請求します。 相手方が誠実に対応しないときには、労働審判や訴訟などの法的手続きを利用して賠償金を支払わせることも可能です。 セクハラ・パワハラを受けてお悩みの方は、早めに弁護士に相談してみてください。 労災対応 労災が発生したら、労災保険の申請をすべきです。会社に責任がある場合、会社への損害賠償請求の対応も必要となるでしょう。 とはいえ労災でケガをしてしまった本人がお1人で対応すると、不安があります。 弁護士に相談すれば、労災保険の申請や会社への賠償請求などの手続きを任せられるので、安心感を得られるでしょう。 内部告発や公益通報のサポート 社内で不正が行われているなら、内部告発や公益通報を検討すべきです。ただ、1人で内部告発をしようとすると、会社から不利益処分を受ける不安を感じるでしょう。 また、判断を誤ると「名誉毀損」として逆に訴えられてしまうおそれもあります。 弁護士に相談すれば、本当に内部告発すべきケースなのか正しく判断できますし、手続きの方法についてもアドバイスを受けられます。安全に内部告発・公益通報を進めるためにも、弁護士へ相談しましょう。 労働者側が労働問題を弁護士に依頼するメリット 有利に解決できる可能性が高くなる 弁護士にトラブル解決を依頼すると、弁護士は本人の代理人として会社側と交渉を行います。弁護士は交渉のプロで法律の知識や経験も豊富なので、労働者本人が対応するより有利に解決できる可能性が一気に高まるでしょう。 会社が真剣に対応する 労働トラブルが起こったとき、労働者が自分で連絡を入れても、企業側がまともに取り合わないケースが多々あります。 そういったケースでも、弁護士が内容証明郵便を送れば、真摯に対応して残業代の支払や解雇の撤回などに応じる事例が少なくありません。 労力と時間を削減できる 労働トラブルへの対応には、非常に手間と時間を割かれます。内容証明郵便を作成・発送したり、会社と交渉したりしなければなりません。 相手から回答があれば、再反論や再提案内容を検討する必要があるでしょう。解決するまで満足に転職活動もできない可能性もあります。 弁護士に任せれば、基本的な対応はすべて弁護士がしてくれるので、自分で労力や時間を割く必要はありません。転職活動や資格取得のための勉強など、これからの人生に役立つ活動を展開できるメリットがあります。 精神的に楽になる 会社とトラブルを抱えていると、大変な精神的ストレスがかかります。夜も眠れなくなる方も少なくありません。 弁護士に依頼すれば「大船に乗った気持ち」となって心安らかになるものです。 前進していく気力も沸いてきますし、毎日を平穏な気持ちで過ごせるでしょう。 相手が不誠実なら法的な手段をとれる 労働問題が発生すると、協議をしても解決できないケースが多々あります。 話し合いで合意できなければ、労働審判や訴訟を起こして解決するしかありません。 ただ1人でこういった裁判手続きをするのは困難です。結局、決裂を恐れて不利な条件で和解せざるを得なくなる方もたくさんいらっしゃいます。 弁護士に依頼していれば、相手が不誠実な場合には躊躇なく労働審判や訴訟などの法的手続をとれます。泣き寝入りする必要はありません。判決が出ても会社側が任意に支払いをしない場合には会社財産の差押も可能となり、回収の確実性も高まるでしょう。 労働問題を弁護士に依頼するデメリット 費用が発生する 弁護士に依頼する一番のデメリットは「弁護士費用(報酬)」が発生することです。 依頼した当初に「着手金」がかかり、解決できたときに「報酬金」が発生します。 具体的な金額は案件の内容や法律事務所によっても異なりますが、10万円以上にはなるでしょう。 弁護士に依頼する前に、どのくらいの費用がかかるのか見積もりをもらってしっかり検討するようお勧めします。 関連記事 ・労働問題を依頼するときの弁護士費用は?トラブル別の費用と相場を解説 必ずしも良い弁護士とは限らない 確かに弁護士は労働者にとって強い味方となりますが、すべての弁護士が労働問題に強いわけではありません。 弁護士の中には、ほとんど労働問題を取り扱っていない人もいます。弁護士選びに失敗すると、期待していたほど良い解決につながらないリスクがあるでしょう。 労働問題を依頼するなら、労働トラブルに詳しく労働分野を得意としている弁護士を選ぶべきです。 労働問題を依頼すべき弁護士の選び方 労働問題を弁護士に依頼するなら、以下のような視点で弁護士を選んでみてください。 労働問題の解決実績が高い 1つ目は労働問題の解決実績です。これまで取り扱った労働問題の事件数が多く、高い解決実績を誇る弁護士であれば、安心して依頼できるでしょう。 解決実績については、法律事務所のホームページに掲載されていることもありますし、問い合わせれば教えてもらえるケースもあります。労働関係の本を執筆していれば、著書に書いてある可能性もあるでしょう。 まずは労働問題をどのくらい取り扱ったことがあるのか、経験面から検討してみてください。 労働問題に積極的に取り組んでいる これまでの解決実績だけではなく「現在積極的に労働問題に取り組んでいるか」という姿勢も大切です。 親身になって労働者側の立場から会社と交渉してくれるのか、最後まで粘り強く交渉してくれるのかなど、弁護士の姿勢によって大きく変わってきます。 依頼前に、弁護士がどのくらい熱心に労働トラブルに取り組んでいるのか見極めましょう。 コミュニケーションをとりやすい 弁護士に物事を依頼するときには「コミュニケーションの円滑さ」が非常に重要です。 電話、メール、オンライン面談、LINEなど、各種の方法で連絡を取りやすい弁護士を選びましょう。 ほとんど電話がつながらない、メールの返信が期待できないなどの弁護士に依頼すると、たとえ能力的には優秀であっても依頼者に多大なストレスがかかってしまいます。 説明がわかりやすい、質問しやすい 弁護士に何かの対応を依頼するときには、説明がわかりやすくてこちらからも質問しやすい人を選びましょう。 何を言っているのかわかりにくい人では、こちらもストレスが溜まります。わからないことを質問できなかったら、納得できない方向に話を進められてしまうかもしれません。 依頼前の相談時、スムーズに意思疎通できるか確認することが大切です。 労働問題を相談する弁護士の探し方 知人や親戚の紹介 まずは知人や友人、親戚などから紹介を受ける方法があります。知っている人から紹介してもらったら、安心感があるでしょう。 ただし、紹介された弁護士が必ずしも労働問題に詳しいとは限りません。また、紹介された以上、断りにくいこともデメリットとなるでしょう。 紹介を受ける前に「労働問題に積極的に取り組んでいるのか」を確認し、HPなどで情報収集してから相談するかどうか決定してください。 法テラスや弁護士会を経由する 法テラスや弁護士会で法律相談を受けたり、弁護士紹介をしてもらったりする方法もあります。 ただこれらの方法では、担当弁護士を選べません。「労働問題に強い弁護士」という指定もできないケースが多数です。気に入らない場合に断りやすいメリットはありますが、ピンポイントで「労働問題に強い弁護士」を探したい場合には適しません。 インターネットで探す 現代社会では、インターネットにあらゆる情報が溢れています。弁護士も自分でインターネットを使って探す方法が効率的かつ有効といえるでしょう。「労働問題 弁護士 地域名」などで検索し、地域の労働トラブルに強い弁護士を探してみてください。 まとめ 残業代トラブル、不当解雇や雇い止めなど、労働トラブルに巻き込まれたら早めに弁護士へ相談しましょう。 弁護士に依頼するメリットとデメリットを踏まえて、法律事務所のHPや各種メディアを参照し、あなたに合った最適な弁護士を見つけてください。 --- ### 【テンプレートあり】解雇予告手当請求書の書き方・送付方法を解説! - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-03-27 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6352 - Categories: 不当解雇 会社が従業員を解雇するとき、30日前までに解雇通知をしなければ「解雇予告手当」を支払う必要があります。今回は解雇予告手当の請求方法や、解雇予告手当請求書のテンプレートをご用意したのでご活用ください。 会社から突然解雇されたときに、労働者は解雇予告手当を受け取る権利があります。 解雇予告手当とは、雇用主が30日以上前に解雇予告を行わなかった場合に、労働者に対して支払われる手当金のことです。 会社から解雇通知されたにもかかわらず、解雇予告手当を支払ってもらえないときには「解雇予告手当の請求書」を送りましょう。 この記事では、解雇予告手当の請求書の書式・書き方や正しい請求の手順を解説します。 解雇予告手当請求書のテンプレートがダウンロード可能となっていますので、解雇予告手当の請求書を作成することをお考えの方は、ぜひご活用ください。 解雇予告手当請求書の文例・テンプレート 解雇予告手当請求書 〇〇年〇月〇日 〇〇県〇〇市〇〇区〇丁目〇番〇号〇〇株式会社代表取締役 〇〇 〇〇殿 〇〇県〇〇市〇〇区〇丁目〇番〇号鈴木 太郎 印 前略 私は貴社において〇〇年〇月〇日から○○年〇月〇日まで勤務していましたが、去る○○年〇月〇日、貴社都合により解雇されました。 貴社による解雇通知は解雇日の10日前であったところ、労働基準法20条により、貴社は私に対し20日分の解雇予告手当支払い義務を負います。解雇予告手当は法律上、解雇通知と同時に支払わなければならないことになっております。 ところが貴社は現在に至るまで、上記20日分の解雇予告手当を支給していません。 よって、私は貴社に対し、本書面をもって上記解雇予告手当の支払いを請求します。本書面到着後10日以内に以下に記載する金融機関口座へ振り込む方法にてお支払いください。 万一上記期間内にお支払いを確認できない場合、労働基準監督署へ報告するとともに労働審判、訴訟等の手段により不払いの解雇予告手当及び遅延損害金を請求せざるを得ませんので、お含み頂けますと幸いです。 【振込先の口座】 〇〇銀行〇〇支店 普通預金 口座番号〇〇〇〇〇〇〇口座名義人 〇〇〇〇〇〇〇 草々 PDFをダウンロードする 解雇予告手当請求書の書き方 上記で文例を紹介しましたが、解雇予告手当請求書の書き方について詳しく解説します。 解雇予告手当請求書の書き方 タイトル、宛名、請求者名、押印、日付を入れる 不足日数分の解雇予告手当を請求する 相当期間内に支払うよう求める 支払いがない場合の対応を明確にする 振込先口座を記入する タイトル、宛名、請求者名、押印、日付を入れる まずは「解雇予告手当請求書」というタイトルを書きましょう。 次に宛先を書きます。会社の住所、会社名、代表取締役の名称を書きましょう。 その下に、差出人の情報を書きます。住所と氏名、必要に応じて電話番号やメールアドレスも記入しましょう。 差出人名の横には「押印」が必要です。認印でかまいません。 忘れずに「文書の作成日付(発送日付)」も書き入れましょう。 不足日数分の解雇予告手当を請求する 内容としては、「不足日数分の解雇予告手当を請求する」ことが重要です。 いつ解雇予告を受けたのか、何日分解雇予告手当が必要になるのかを明らかにした上で、不足日数分の解雇予告手当を請求しましょう。 労働基準法上、解雇予告手当の支給は会社の義務であることも明示しておくと効果的です。 計算方法については、『解雇予告手当の計算方法を徹底解説!【過去3か月分の給与が基準】』の記事をご覧ください。 相当期間内に支払うよう求める 解雇予告手当は、請求書到着後速やかに(相当期間内に)払うよう求めます。相当期間にルールはありませんが、1週間から10日くらいに設定すると良いでしょう。 支払いがない場合の対応を明確にする 末尾に、相当期間内に支払いがない場合の対処も付言しておくようおすすめします。会社へのプレッシャーとなるからです。 たとえば、労働基準監督署への通報や、労働審判や労働訴訟などの法的手続きへの移行の旨を記載することが挙げられます。 振込先口座を記入する 解雇予告手当は、通常振込送金してもらいます。振込先の口座も忘れずに記入しましょう。金融機関名、支店名、預金の種別(ほとんどのケースでは普通預金)、口座番号、口座名義人の名称(カタカナ)を書いてください。 支店名が抜けたり口座番号が間違っていたりすると支払いを受けられないので、銀行通帳などをみて慎重に書き写しましょう。 なお、解雇予告手当を請求するときには、書面で通知すべきです。 労働者と会社の立場上、口頭では無視される可能性が高く、「言った言わない」のトラブルに発展する可能性もあります。 後々のリスクを避けるため、内容証明郵便を利用して、会社宛に送付しましょう。 内容証明郵便とは?送り方・利用方法 内容証明とは? 内容証明郵便は、郵便局と差出人の手元に、相手に送ったものと同じ控えが残る郵便です。書留式になっていて、ポスト投函ではなく相手への手渡しとなります。 内容証明郵便を使うメリットは「いつ相手に送ったのか」「どういった内容の書類を送ったのか」を後々にまではっきり証明できることです。 相手から「請求されていない」などと誤魔化されるリスクがなくなりますし、後に労働基準監督署へ通報するときや労働審判、訴訟を行うときの証拠にも使えます。 配達証明をつける 内容証明郵便で解雇予告手当の請求書を送るときには「配達証明」をつけるようおすすめします。 配達証明とは、相手に郵便が配達された日を通知してもらえるサービスです。配達証明書があれば、相手に確実に郵便が届いたことを証明できます。会社が「受け取っていない」と弁解することはできません。 内容証明郵便発送の際に「配達証明をつけてください」と申し出てみてください。 内容証明郵便の送り方・利用方法 内容証明郵便には、以下の2種類の利用方法があります。 電子内容証明郵便を利用する 1つ目の方法は電子内容証明郵便です。これは、郵便局が提供している「ネットから内容証明郵便を発送できる」サービスです。 わざわざ郵便局に出向く必要はありませんし、内容証明の特殊な書式に従う必要もありません。 日頃忙しくしている方、パソコンを日常的に使っている方などは、電子内容証明郵便を利用すると便利でしょう。 なお電子内容証明郵便の場合「押印」は不要です。 参考:e内容証明(電子内容証明) 郵便局から差し出す 内容証明郵便を取り扱っている郵便局へ文書を持参し、発送する方法です。 このとき、まったく同じ内容の文書を3通用意しなければなりません。 また内容証明郵便用の特殊な書式に従う必要もあります。書式を無視すると受け付けてもらえないので注意しましょう。 内容証明に用いる謄本は、下記の条件をクリアするように作成しなければなりません。 書き方条件縦書き1行20字以内、1枚26行以内横書き・1行20字以内、1枚26行以内・1行13字以内、1枚40行以内・1行26字以内、1枚20行以内(3つのうちいずれでも可) どれにするか迷われる方は、「1行20字以内、1枚26行以内」「1行26字以内、1枚20行以内」のいずれかを選ぶといいでしょう。 用紙に決まりはないため、この形式を守っていれば、手書きでもパソコンで作成してプリントアウトしたものでも構いません。 すべての郵便局で内容証明郵便を受け付けているわけではないので、事前に発送できる郵便局を調べてから持ち込んでください。 また、残業代を請求する会社への郵送方法は、一般書留とする必要があります。 そのため、通常の郵便料金に加え、一般書留分を追加で支払う必要があります。 なお、内容証明は謄本1枚だと440円の加算料金がかかります。以後は、1枚増えるごとに260円が追加されていきます。 解雇予告手当を請求する手順 以上、請求書についてお伝えしましたが、最後に解雇予告手当を請求する流れ・手順を確認しましょう。 請求書の送付はあくまで初期段階です。解決の目途が立たない場合は、弁護士に依頼するなど次のステップになるべく早く進む必要があります。 ①解雇予告手当請求書を送付する まずは上記に従って解雇予告手当の請求書を作成し、会社へ送付しましょう。 ②会社と交渉する 内容証明郵便が会社へ送達されたら、期間内に入金されるかどうか様子を見ましょう。相当期間が経過しても入金がない場合は、連絡して「支払うつもりがあるのか」確認してみてください。 会社に払う意思があるなら、期限を確認します。証拠化のためにも、口頭で終わらせるのではなく、書面での返信を求めることが大切です。 この段階で合意ができれば、合意書を作成し、支払いを受けることが一般的です。 ③労働基準監督署へ通報する 会社がどうしても支払いに応じないなら、労働基準監督署へ通報しましょう。 解雇予告手当の支払いは、労働基準法によって定められた会社の義務です。 労働基準監督署は、会社が労働基準法に違反している場合には、指導や是正調査を行い会社にプレッシャーをかけてくれることもあります。 労働基準監督署からの指摘によって、すぐに支払ってもらえる場合もあります。解雇通知や解雇予告手当請求書控えなどの資料を持って相談してみてください。 労働審判・労働訴訟を弁護士に依頼する 労働基準監督署は上記のように是正勧告などをしてくれますが、支払いを強制することはありません。そのため、会社が突っぱねてしまえば、何もできなくなる可能性があります。 そのような場合には、弁護士に相談し、労働審判や民事訴訟といった法的な手続きに移行することも検討しましょう。 民事訴訟により判決が出れば、会社に支払いを義務付けることができ、会社財産の差押えすら可能となります。 しかし、労働審判や民事訴訟では、法的な主張や立証をすることになるため、高度な法律の知識が必要となるだけではなく、煩雑な手続きをしなければなりません。 ご自身でも行うことができますが、煩雑な手続きや、会社とのやり取りは非常にストレスになるでしょう。 弁護士に依頼すれば、証拠集めや支払われていない金額の計算、法的な手続きなど、複雑で専門的なやり取りを弁護士に一任できます。 少しでも気になった場合は、まず無料相談をしている弁護士に相談してみることをおすすめします。 まとめ 解雇予告手当を請求するときには請求書の書き方や正しい請求手順を知り、効率よく請求手続きを進めましょう。 自分1人で対応するのが難しければ、弁護士などの専門家の力を借りることが大切です。迅速にご自分の権利を守っていきましょう。 また、不当な解雇をされた場合や、解雇が不当かどうか知りたい方は弁護士に相談することがおすすめです。 無料相談を実施している弁護士事務所もあるので、一度相談してみてはいかがでしょうか。 --- ### 労働審判とは?制度の内容や手続きの流れを弁護士がわかりやすく解説 - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-03-19 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6350 - Categories: 労働問題全般 労働審判は、裁判をするほどではないが、あっせんなどの簡易制度では解決が難しい労働紛争のための解決手段です。今回の記事は、労働審判の内容、かかる費用、申請方法について具体的にわかりやすく解説しています。 「労働審判とはどういう制度?」「労働審判を利用すれば労働問題を訴訟以外で解決できる?」 労働審判は、労働トラブルでお困りの方に強い味方になる制度ですが、実際に利用を検討するとどういった制度か分からない方が多いでしょう。 労働審判は、簡単に言うと、解雇・賃金問題で多く利用される紛争解決制度です。 この記事では、労働審判の制度の内容や具体的に解決できるトラブル、労働審判のメリット・デメリットを詳しく解説しています。 労働審判を利用するべきケースも最後に解説しているので、労働審判を利用すべきかお悩みの方は、ぜひ最後までご覧ください。 労働審判とは?解決できることは? 労働審判とは? 労働審判とは、会社と個々の労働者との間で生じた労働トラブルを、迅速、適正かつ実効的に解決することを目的とした裁判所の制度です。 裁判をするほどではないものの、相談・交渉といった簡便な手続きでは解決しにくい問題に対応できる制度として、2006年4月より労働審判法として施行されています。 労働審判手続きは、裁判の手続きと異なり非公開で行われ、労働審判官(裁判官)1名と労働問題の専門家である労働審判員2名で組織された労働審判委員会に審理されます。 労働審判で解決できるトラブルは? 労働審判で解決できるトラブルは、個別の労働関係の民事紛争です。 主に、解雇、雇い止め、配転、出向、未払い賃金・退職金請求権、懲戒処分、労働条件変更の拘束力などが挙げられます。 平成28年の厚生労働省のデータによると、労働審判での取り扱い事例内容の割合は以下になっています。 解雇問題:45. 4% 賃金問題:39. 6% その他の問題:14. 9% 【参考】:厚生労働省「労働審判制度等について」 データ上では、全体の80%以上が解雇問題と賃金問題となっています。 解雇問題と賃金問題は双方の主張が異なることが多く、簡易な話し合いでは解決できないケースがあります。その場合、交渉から労働審判へと解決の場を移行することが多いです。 労働審判で解決できないトラブルは? 一方、労働審判の対象とならない代表的なトラブルは、労働組合関係のトラブルです。 労働審判で解決できるのは個別の労働紛争であり、労働組合と会社との紛争といった当事者が多数いるようなトラブルの場合は利用できません。 また、加害者個人を相手にするセクハラ・パワハラなどのハラスメントにおけるトラブルも対象となりません。 労働審判のメリット 労働審判のメリットは、以下が挙げられます。 労働審判のメリット 裁判より簡易迅速に解決できる 相談や交渉で解決できなかった内容を解決できる 解決率が約80%ある 強制執行力がある 当事者の片方が欠席をしても審理は行われる 裁判より簡易迅速に解決できる 労働審判のメリットとして、問題の早期解決が見込める点が挙げられます。 通常の裁判で労働紛争を争った場合の平均審理期間は17. 2か月と長期間になりますが、原則最大3回の期日で審理がされる労働審判であれば平均90. 3日で解決しています。 労働審判は、調停による和解がベースであり約70%の事件が調停で解決しています。調停に至らず審判が下されるのは全体の15%ほどです。 参考:2022年|最高裁判所事務総局「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書」 相談や交渉で解決できなかった内容を解決できる 労働審判の特徴は、裁判より簡易迅速な解決が期待でき、かかる日数や費用が少なく済むことです。労働トラブルが発生すれば、だれでも利用できます。 2022年は全国で3,208件の労働審判件数があり、直帰10年間は毎年3,500件前後で推移しています(日本弁護士連合会『弁護士白書 2023年版』)。 解決率が約80%ある 労働審判での解決率は約80%で解決力は高いです。 また、解決内容の90%以上は、企業が労働者に解決金を支払うかたちで解決となっています。 強制執行力がある 労働審判委員会から出された裁定は、2週間以内に当事者が異議を申立てなければ、裁判上の和解と同一の効力を持ちます(労働審判法21条4項)。 そのため、差し押さえといった強制執行も可能になります。 当事者の片方が欠席をしても審理は行われる 労働審判を進めるにあたって相手方(会社側)が裁判所からの呼び出しに応じなかった場合でも、労働者側の立証・主張のみで審理を進めることが可能です。 そのため、会社が不当に応じないことで、どうにもできなくなるということは労働審判ではありません。 労働基準監督署の指導や労働局のあっせん、労働組合による団体交渉などで解決できなかった紛争でも、労働審判であれば問題を解決することが見込めます。 労働審判のデメリット 労働審判のデメリット 申立手数料や弁護士などの費用がかかる 専門性が高く、自分だけではできないことが多い 労働審判で解決できないこともある 申立手数料や弁護士などの費用がかかる 労働審判は費用がかかります。必ずかかる費用は申立手数料です。申立手数料は500円~133,000円に設定されており、訴訟額に応じて金額が上下します。 参考:手数料早見表 また、弁護士を依頼した場合には弁護士費用がかかります。 弁護士費用は弁護士事務所で差があり一概に言えませんが、労働審判の一般的な金額は20万~40万+成功報酬(請求金額の20%前後)です。 専門性が高く、自分だけではできないことが多い 労働審判は自身だけ行うこともできますが、会社とのやり取りや適切な証拠による主張が必要など、実際には専門的な知識や経験が求められます。 弁護士を立てない場合には、審判の専門性についていけずに、不利な解決になるデメリットを考慮する必要があるでしょう。 なお、実際に労働審判を起こす申立人(労働者)の90. 1%は弁護士に依頼しています(日本弁護士連合会『弁護士白書 2023年版』)。 また、統計的に見ても弁護士に依頼したほうが労働審判で紛争を解決しやすくなっています。 労働審判において労働者が弁護士に依頼せず、会社側のみが弁護士に依頼していたケースでは、58. 8%で調停が成立しています。 しかし、労働者・会社側双方が弁護士に依頼していたケースでは、76. 0%で調停が成立しています(日本弁護士連合会『弁護士白書 2023年版』)。 このことからもわかる通り、弁護士に依頼すれば手間を削減できるだけではなく、紛争解決もしやすくなるため、労働審判制度を利用する際は弁護士に依頼することをおすすめします。 関連記事 ・労働審判の弁護士費用相場は?労働審判を弁護士に依頼すべき理由 労働審判で解決できないこともある 労働審判は、労働問題を必ずしも解決できる制度ではありません。 労働審判の手続きの中で調停(和解)が成立しなかったり、労働審判委員会から出された裁定(審判)に対して当事者が異議を申し立てた場合は、裁判に移行して争うことになります。 裁判に発展すると解決までの期間が長期化する可能性が高いです。 労働審判の流れ 労働審判を実際に行うことになった場合の流れについて解説していきます。 労働審判の手続きは、①申立て、②期日における審理、③終了(調停や審判)の三段階に大きく分けられます。 解雇や給料・退職金のトラブルは、労働審判の制度を使えば、この手続きを経て、申立てから終了までおよそ2か月〜4か月くらいの期間で解決することが多いです。 ①申立て 労働審判の申立ては、本人または代理人が申立書を作成し、地方裁判所内の民事受付窓口にて提出することで完了します。 申立て書には、以下の内容の記載が必要です。 何を請求するか 請求の理由 予想される争点・その争点に関する重要な事実 争点ごとの証拠 申立てには、申立手数料や、郵便切手などが必要になります。申立手数料は、先述したように訴訟額によって異なります。訴額が10万円なら500円、100万円なら5,000円になります。 ②期日における審理 申立てを行うと、労働審判官から第1回期日が指定されます。第1回期日は、申立て受領から原則40日以内に設定されます(労働審判規則13条)。 第1回期日 第1回審理は労働関係の専門家である労働審判員2名、労働審判官(裁判官)、労働者本人、企業側、それぞれの代理人(弁護士)と、合計7名での話し合いになることが多いです。 審理では、事実関係や法律論が整理され、必要があれば証拠の取り調べが行われます。一般的には、労働者・会社側の双方から別々に話を聞いて、それぞれの主張を整理されます。 話し合いによる解決の見込みがあれば、第1回目の期日から調停案が提示されることも多いです。和解が成立すれば、1回目の期日で終了します。 第2回期日 第1回で和解が成立しなかった場合には、第2回期日が開かれます。第2回期日は1回期日の2週間~1か月ごとに設定されることが多いです。 2回目期日では、調停のための話し合いが行われます。 実際のところ、労働審判は第2回期日までで終了するケースが多いです。 ③労働審判の終了 労働審判は原則として3回以内の期日で、調停成立、もしくは労働審判委員会が労働審判を下すことにより終了します。 労働審判が下された場合には、2週間以内に異議申し立てがなければ審判が確定します。 労働審判を利用するべきケースは? 労働審判を利用するべきケースは、以下のようなケースです。 労働審判を利用するべきケース 賃金未払い問題で早期の解決を望んでいる 会社との話し合いが一向に前に進まない 会社の違法行為を客観的に証明する証拠がある 上記のいずれかに該当する場合には、労働審判を利用するメリットが大きいと言えます。 賃金未払いは生活に直結する問題であり、早期の解決が望まれるでしょう。労働審判は訴訟と比較しても早期解決が実現できる可能性が高いです。 また、会社との話し合いが前に進まないケースでも、専門家である第三者を挟むことによって話し合いがスムーズに進めばトラブルを解決できます。 さらに、会社の違法行為を客観的に証明する証拠がある場合には、労働審判を行うことで権利が認められる可能性が高いでしょう。 労働審判を検討するなら弁護士に相談! 労働審判を検討される方は、まずは弁護士へ相談することをおすすめします。 弁護士に相談すれば、法律の専門家としての知識やアドバイスはもちろんのこと、実際の労働審判の経験に基づいた意見を聞くことができます。 たとえ、労働審判を弁護士を依頼せずに自分でやるつもりであっても、自分でやる際の対応や注意点を明確にできるでしょう。 労働審判を自分でするメリット・デメリットを詳しく知りたい方は、『労働審判は自分でできる?自分でやる方法とメリット・デメリット!』の記事をご覧ください。 弁護士に依頼するメリットは、代理人として労働審判の手続きを代理で行ってくれることです。 労働審判へ代理人として出席するだけでなく、労働審判の申立書の作成も行ってくれます。 労働者の多くは初めて労働審判を利用することになるはずです。 弁護士に依頼して煩雑な手続きや相手方との問答などを代わりにやってもらったほうがより納得できる結果につながる可能性が高いでしょう。 弁護士事務所によっては、無料相談を受け付けている事務所もあります。労働審判についてお悩みの方は、弁護士に相談しましょう。 --- ### 離職票がもらえない!理由と対処法について解説 - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-04-01 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6343 - Categories: 退職・退職後の手続き 退職した会社から離職票がもらえず、失業手当の手続きが進まないなどお困りではないでしょうか。こちらの記事では、離職票が交付されるまでの流れや、離職票がもらえない理由と対処法について解説します。 退職した会社から離職票がもらえず、失業手当の手続きが進まないとお困りになってはいないでしょうか。 会社が離職票の交付を拒否することは違法です。会社から離職票を交付してもらえない場合にはハローワークで確認の請求を行い、離職票を発行してもらうことも可能です。 この記事では、離職票が必要となる理由と会社から離職票がもらえない場合の対処法について詳しく解説します。 離職票とは?交付されるまでの流れ 離職票は、会社とハローワーク間で書類のやりとりを行い発行されます。 離職票が交付されるまでの流れを知っておくことで、手続きがどこまで進んでいるのかといった状況を把握しやすくなるでしょう。 離職票とは? 離職票は、正しくは「雇用保険被保険者離職票」と呼ばれます。 離職票は、ハローワークへ失業手当(基本手当)を申請する際に必要な書類であり、離職票がなければ、失業手当の給付を受けることができません。 また、離職票が手元に届くのが遅くなるほど、失業手当の給付期間が短くなってしまうことがあります。 離職票交付の流れは? 離職票交付の流れは以下の通りです。会社とハローワークでやり取りが行われたのち、退職者に送付されるものであるため、基本的に労働者が何かを行う必要はありません。 離職票が届くまでの期間は、通常であれば退職してから10日〜2週間ほどです。 会社から離職票が必要かを確認される 会社が離職証明証・雇用保険被保険者資格喪失届を作成 離職証明証の内容を確認する 会社が離職証明証・雇用保険被保険者資格喪失届をハローワークに提出 ハローワークが離職票を会社に発行 会社から離職票が送付される ただし、退職してから2週間がたっても離職票が届かない場合は、会社に問い合わせてみてもいいでしょう。 離職票がもらえる人の条件 離職票は、「雇用保険に加入している」「会社に離職票を請求をしている」といった条件を満たしていれば、必ずもらうことができます。 雇用保険に加入していない方は、離職票の交付がありません。 離職票がもらえる人の条件について、詳しく解説します。 雇用保険に加入している人 離職票は、雇用保険に加入していた従業員が退職した際に交付される書類です。 以下の条件に当てはまる方は、雇用保険に加入する必要があるため、退職後に離職票がもらえます。 離職票がもらえる条件 契約期間が31日間以上である 1週間の労働時間が20時間以上である 条件に満たない方は、会社は雇用保険へ加入させる義務がないため、離職票の交付がありません。 退職の際に離職票を請求した人 離職票は、退職者全員に発行する場合と、希望者にのみ発行するケースがあり、会社によって対応が異なります。 労働基準法22条1項の規定では、退職時の証明証を労働者が請求した場合、会社はその交付を行わなければならないとされています。 言い換えると、退職者が離職票の申請をしなければ、会社は離職票を発行する義務がないということなので、注意してください。 トラブルの元とならないよう、退職する際には、あらかじめ会社へ離職票が必要であるという意思表示をしておくようにしましょう。 59歳以上の退職者 退職者が59歳以上の場合は、本人の希望の有無にかかわらず、離職票の交付が義務付けられています。 これは、「高齢者雇用継続給付」と呼ばれる給付金の金額を決める際に、離職票が必要となるためです。 59歳以上の退職者で離職票がもらえない場合には、必ず会社に請求しましょう。 会社が離職票を交付しないことは違法 退職者が離職票を請求して、それを会社が拒否することは違法とされています。理由なく拒否した場合は、罰則が与えられることになります。 会社は離職票の交付を拒否できない 退職を防ぐための脅し文句や嫌がらせで「離職票を渡さない」と会社から告げられることがあります。 会社が離職票の交付を拒否することは違法です。 会社が離職票の発行を希望する退職者に対して離職票を交付しないことは、雇用保険法第76条3項および労働基準法第22条に規定された義務に反する行為となります。 また、雇用保険法施行規則7条・雇用保険法7条の規定により、会社は労働者が退職した翌日から10日以内に離職証明書の届出をしなければなりません。 労働者は、会社から離職票をもらえる権利が法によって守られています。 交付を拒否した場合には罰則がある 退職者からの離職票の請求を理由なく拒否した会社は、雇用保険法第83条4号の規定により、「6か月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金」が科せられます。 離職票を請求しても会社が不当な対応をする場合、会社の違法行為が疑われることになり、罰則を受ける対象となります。 離職票がもらえないときの対処法 予定された期日を超えても離職票がもらえない場合、ハローワークへ相談をしましょう。 それでも会社が手続きに応じないようであれば、確認請求を行うことでハローワークから離職票が発行されます。 会社へ問い合わせる 離職票がもらえない場合、まずは会社へ問い合わせましょう。 よくある理由として、離職票の作成に時間がかかっていることが挙げられます。 手続きをする担当者が他の業務と兼任をしている場合、交付が遅れるといったケースもあるでしょう。 ハローワークへ相談する 会社へ問い合わせても離職票の手続きがされない場合は、管轄のハローワークへ相談しましょう。 ハローワーク側から会社へ、手続きを進めてくださいという催促を行ってくれるため、非常に効果的です。 確認請求を行う ハローワークからの催促にも応じず、会社が手続きを行わない場合は、確認請求を行うことができます。 確認請求とは、雇用保険の被保険者でなくなったことを管轄のハローワークで確認してもらうことです。 離職の事実を示す書面または口頭で確認の請求を行い、被保険者であったことが認められれば、ハローワークより離職票を発行してもらうことができます。 お困りの方はハローワークに相談した後、確認請求を行ってもいいでしょう。 --- ### 職場におけるモラハラとは?モラハラの具体例や対処法を解説! - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-06-24 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6337 - Categories: ハラスメント・いじめ モラハラは家庭内だけではなく職場でも起きている問題です。今回の記事は、職場においてのモラハラとは一体どのようなことなのか、パワハラとの違いや具体例・対処法について説明していきます。 パワハラやセクハラは具体的にどういった行為かイメージできても、モラハラについてはあまり詳しくは知らない方も多いのではないでしょうか。 モラハラとは、立場に関係なく言葉や態度で人を精神的に傷つける行為です。 「モラハラ夫」といった言葉もあり、家庭内で発生するハラスメントと思われがちですが、職場内で発生するケースも珍しくありません。 今回の記事は、職場においてのモラハラとは一体どのようなことなのか、モラハラの具体例やモラハラを受けたときの対処法について説明していきます。 モラハラとはどのような行為か まず初めに、モラハラとは一体どのような行為なのか、パワハラ・セクハラとの違いは何なのかについて確認しましょう。 モラハラの定義 モラハラとは「モラル(倫理、道徳)ハラスメント(いやがらせ)」の略で、倫理や道徳に反したいやがらせという意味合いを持ちます。 わかりやすく言うと、暴言を吐いたり無視をするなどといった「言葉」や「態度」によって精神的ないやがらせをする行為を指します。 モラハラと他のハラスメントの違い モラハラは他のハラスメントと混同しやすい行為もあります。モラハラとパワハラ・セクハラの違いを確認しましょう。 モラハラとパワハラ モラハラと似た言葉にパワハラがありますが、モラハラとパワハラの違いは、職場内での優越的な関係性を利用しているかどうかです。 パワハラとは、職場内における優越的な関係性を利用して行われるいやがらせ行為です。 ここでいう優越的な関係性は、役職の関係性だけではありません。上司よりも知識や経験が豊富な部下が、上司に対していやがらせを行う場合も、パワハラとみなされることがあります。 一方、モラハラとは、立場の優越性は関係なく行われるいやがらせ行為です。 同様の精神的ないやがらせ行為でも、立場の優越性によって行われる行為かどうかで判別することができます。 パワハラの定義や認定される行為について知りたい方は『上司をパワハラで訴える方法は?訴える際に必要な証拠を解説』も参考にしてください。 モラハラとセクハラ モラハラとセクハラの違いは、性的な嫌がらせ行為の有無です。身体接触を含む性的な嫌がらせ行為があればセクハラで、モラハラは言葉や態度で人を精神的に傷つける行為です。 セクハラの定義に関しても『セクハラ被害の相談ができる無料窓口7選!抱え込まずに相談しよう』の記事で解説しています。 職場におけるモラハラの具体例 モラハラは「言葉」や「態度」によって精神的ないやがらせをする行為であることがわかりました。 では、具体的にどのようなパターンがモラハラにはあるのか確認しましょう。 言葉で精神的苦痛を与える 「バカ」「早く辞めろ」「死ね」などの暴言 「デブ」「ハゲ」などの身体的な特徴をからかう侮辱行為 「役立たず」「不快」などの能力や人格の否定 上記はモラハラにおける典型的な例です。 また、これらのように直接的なものではなく、陰口といった間接的なものもモラハラに含まれます。 また、部下が上司に対してモラハラをするケースも存在します。 上司が部下の遅刻に対して注意するといった業務上必要な指導に対して「それってパワハラですよ」とパワハラをたてにして言い返すようなケースもモラハラになりえます。 人間関係を孤立させる 言葉で精神的苦痛を与えるといった「する」ことによるモラハラ以外に、「しない」ことによるモラハラも存在します。 具体的には以下のようなケースです。 話さない(無視をする) 社内メールなどの連絡をその人だけしない 社内の飲み会などにその人だけ誘わない これらのような「しない」ことによるモラハラは、暴言や侮辱などの「する」ことによるモラハラと違ってわかりづらいことが特徴です。 表立って何かをされているわけではないので、被害を受けている方もどうしていいかわからず、徐々に精神的に追い込まれてしまうことがあるでしょう。 プライベートへの過度な介入 恋人のことをしつこく聞いてくる 休日にしつこく誘われる 休日の過ごし方(趣味など)についてバカにされる 業務に関係のないようなプライベートな話をしつこく聞いたり否定することもモラハラにあたります。 自分自身は嫌だと感じて周りに相談をしたとしても、「向こうも悪気があるわけではないんだし」「嫌なら本人に直接言えばいい」と言われてしまうこともあります。 仕事の妨害 過剰な仕事量を押し付ける 業務上明らかに不要な仕事をさせる 雑用だけをやらせたりと本人の力量に合っていない過小な仕事しかやらせない 資料などの情報をわざと渡さずに、仕事のミスを誘発する 上記のような仕事を利用して行われるモラハラも存在します。 「仕事が終わらなかったりミスをするのは自分の能力が低いから」「雑用ばかりやらされて自分は必要のない存在なのでは」とモラハラの被害を受けている方を精神的に追い詰めます。 職場内のモラハラに対する罰則 モラハラはこのように非常に悪質で許されがたい行為ですが、直接的にモラハラについて規定された法律はありません。 そのため、何が法律違反にあたるのかといった明確な基準がなく難しい問題になります。 しかし、程度や状況によっては法的責任を問われる可能性もあります。どのような行為に及んだら、法的責任を問われる可能性があるのか確認しましょう。 個人への罰則 職場で皆が見ている前での暴言や侮辱は、名誉毀損罪(刑法230条)・侮辱罪(刑法231条)に当てはまる可能性があります。 また、モラハラによってPTSDなどの精神疾患になってしまった場合は、モラハラとの因果関係が認められたら傷害罪(刑法204条)が適用されることもあります。 名誉毀損罪や侮辱罪のような刑法上の罰則は適用されない場合でも、不法行為(民法709条)が成立する可能性があります。 その場合は、精神的苦痛に対する損害賠償金として慰謝料を加害者に請求することができます。 会社への罰則 労働契約法では、使用者が、労働者の生命身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう配慮するという「安全配慮義務」について定めています(労働契約法5条)。 「安全配慮義務」の内容として、職場におけるいじめやハラスメントが生じないように職場環境を整 える義務があるとされています。 モラハラ行為が見られるという場合は、職場が安全配慮義務に違反している状態にあるといえるのです。 そのため、会社は債務不履行責任(民法第415条)による損害賠償の支払い義務が生じる可能性があります。 また、会社は使用者責任(民法第715条)といって、業務時間中に従業員が他者へ不法行為を犯した場合は使用者として損害賠償責任を負います。 モラハラは、不法行為として認められる可能性があるので、モラハラによる不法行為が成立したら会社は被害を受けた従業員に対して慰謝料を支払う義務が生じます。 モラハラは組織的な問題になりやすい パワハラやセクハラは1対1の関係で成立しますが、モラハラは必ずしもそうではありません。 誰かから受けた嫌な言動も、周囲の人がフォローしてくれることで大きな問題にならないことも多々あります。 一方で、特定の個人から受けた行為は大きな問題ではなかったものを、周りの人が無視したり、誰も助けてくれなかったりすることで、だんだんと精神的苦痛が増してハラスメント問題に繋がる場合もあるのです。 それぞれの人は悪意がある訳ではないのに、そうした職場全体の雰囲気そのものがモラハラを招くということにも注意が必要です。 職場内のモラハラへの対処法 モラハラは個人に対しても、会社に対しても罰則が適用される可能性があることがわかりました。 では、もしモラハラを受けた場合はどのようにして対処していけばいいのでしょうか。 証拠を集める まずはモラハラを受けていると思ったら、モラハラの事実を証明できる証拠を集めましょう。 暴言や侮辱、仕事の妨害などといったモラハラには、音声の録音や該当するメールの保管が有効です。 相手から渡された書類やメモがあれば保存しておきましょう。しかし、人間関係を孤立させるようなモラハラは、音声の録音などは厳しいかもしれません。 そういった場合は、下記の事項を被害がある度にスマートフォンのメモや日記などに記録しておきましょう。 記録しておくべきこ事項 いつ だれから どこで どのようなモラハラをされたかか 周りには誰がいたか その時のあなたの気持ち 上記の点を踏まえたスマートフォンのメモや日記は、証拠になり得ます。書き換えることが難しいものであれば、より信ぴょう性が増すでしょう。 また、モラハラによる精神的なストレスで医療機関を受診している場合は、カルテや診断書が証拠になります。 社内の相談窓口に相談する ある程度の規模の会社の場合、社内にカウンセラーなどがいる相談窓口があります。 その場合は、社内の相談窓口に証拠をもって相談にいきましょう。 プライバシーに配慮されているところが多く、匿名での相談もできる場合が多いです。 ただし、会社によっては相談内容が筒抜けで加害者にモラハラの相談をしていることを発覚されてしまったなんてこともあり得るので注意が必要です。 社外の相談窓口に相談する 社内に相談窓口がない場合や社内の人に絶対に知られたくない場合は、社外の相談窓口に相談してみましょう。 社外の相談窓口は全国の労働局・労働基準監督署内に設置されている「総合労働相談センター」や法務省に設置されている「みんなの人権110番」などがあります。 「総合労働相談センター」は面談・電話どちらの相談も可能です。 参考:全国の労働基準監督署の所在地 「みんなの人権110番」は電話での相談ができます。 参考:みんなの人権110番 弁護士に相談する 上記の社内・社外相談窓口では解決できないと感じたら、弁護士への相談も有効です。 集めた証拠を基に、モラハラの違法性の有無を判断してもらったり、今後の対応を代理人として任せることもできます。 弁護士と聞くと真っ先に裁判を想像されるかもしれませんが、裁判までいくのはあくまで最終手段である場合が多いです。 きちんと手順を踏んで、まずは本人の代理人として会社と交渉してそれでも交渉が上手くまとまらずに、本人が訴えるという選択をした場合に裁判になります。 初回の相談は無料という弁護士事務所も多いので、社内外の相談窓口で解決しなかった場合は違法性の有無の判断や今後の対応について相談してみてはいかがでしょうか。 ハラスメントを弁護士に相談するメリット・デメリットを知りたい方は『パワハラなどのハラスメントは弁護士に相談!メリットとデメリットを解説』の記事をご覧ください。 --- ### 職場でいじめにあったら?対処法と相談窓口を解説 - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-03-25 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6339 - Categories: ハラスメント・いじめ 職場いじめを受けているという場合は、ひとりで抱え込まず、外部の相談窓口や弁護士に相談することをおすすめします。 職場いじめやハラスメントを放置した会社には、安全配慮義務違反として損害賠償を請求できるでしょう。 「職場でのいじめを相談したい」「会社でのいじめを訴えて慰謝料を請求したい」 会社で上司や同僚からいじめを受けていて、つらい思いをしている方はいらっしゃいませんか? 職場いじめを受けているという場合は、ひとりで抱え込まず、外部の相談窓口や弁護士に相談することをおすすめします。 今回は、職場いじめの典型例や、職場いじめを受けたときの対処法、相談窓口について解説します。 職場いじめで慰謝料を請求できる可能性はある 労働契約法では、使用者が、労働者の生命身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう配慮するという「安全配慮義務」について定めています(労働契約法5条)。 「安全配慮義務」の内容として、職場におけるいじめやハラスメントが生じないように職場環境を整える義務があるとされています。 職場いじめやハラスメントを放置した会社には、安全配慮義務違反として損害賠償を請求できるでしょう。 職場いじめの典型例 職場いじめで慰謝料請求ができる可能性はあるといえますが、どのような行為が職場いじめに該当するのでしょうか。 ここでは、職場いじめの典型例を解説します。 暴力や傷害行為を受ける 「上司や同僚から暴力を振るわれた」「書類を投げつけられた」といった場合は、職場いじめに該当します。 直接的な暴力や傷害行為でケガをしているケースでは、傷害罪が成立する可能性があります。 暴言や嫌味を言われる 人格を否定するような暴言を吐かれたり、理不尽に嫌味を言われたりした場合も、職場いじめに該当する可能性があります。 大勢の前で強く叱責される場合も、職場いじめとなる可能性が高いです。 仲間外れや無視をされる 職場内で集団行動に参加させてもらえなかったり、意図的に無視をされたりといった場合も、職場いじめとみなされる場合があります。 「職場内で必要な共有事項を自分だけ教えてもらえなかった」「社員参加のイベントに自分だけ誘ってもらえなかった」といった場合も、職場いじめとなる可能性があります。 度を越えたノルマや残業を押し付けられる 到底ひとりではこなせないような業務を押し付けられたり、自分だけ過剰な残業を要求されたりといった場合も、職場いじめの典型例といえるでしょう。 「未経験の業務を指導もなく押し付けられた」といったケースも該当します。 理由もなく担当を外される 過剰に業務を命令されるのとは反対に、まったく仕事を与えてもらえなかったり、不当な理由で配置転換を命じられたりといった場合も、職場いじめに該当します。 「企画開発部だったのに、倉庫整理や掃除だけを命じられるようになった」といった場合も職場いじめとみなされることがあります。 手柄を横取りされる 「自分が3日かけてつくった資料を上司がやったことにされた」「自分が勝ち取った契約を同僚に横取りされた」などのケースが該当します。 自分の手柄や成果を奪われてしまったという場合も、職場いじめとみなされることがあります。 プライバシーに干渉してくる 「家族関係や友人関係についてしつこく聞いてくる」「休日に会社に来るようきつく言われる」など、プライベートやプライバシーに干渉してくる場合も職場いじめとみなされることがあります。 早朝や深夜といった時間外労働を執拗に命令することも、職場いじめのひとつです。 職場いじめを受けたときの対処法 職場いじめを受けたときの対処法として、仕返しをしたり我慢を続けたりといったことはおすすめしません。 会社には職場いじめを防止する義務があるとされているため、ひとりで抱え込まず相談窓口に相談するようにしましょう。 証拠を集めておく 職場いじめを受けたときの対処法として、自分が職場いじめを受けていることの証拠を集めておくようにしましょう。 有効的な証拠には、以下のようなものがあります。 職場いじめで有効的な証拠 相手の発言の録音 医師からの診断書 相手からのメールや書面の履歴 被害を受けたときの証拠写真や画像ファイル 職場いじめを受けた期間と内容が詳細に記録された日記 など 客観的な証拠を残しておくことで、今後の交渉を有利に進めることができます。 また、社内の相談窓口がある場合は、「職場いじめやハラスメントの被害を受けた」ということを報告しておくと、被害を受けている本人が何かアクションを起こしたという証拠にもなります。 社内の相談窓口を利用する 職場いじめに悩んでいるという場合は、まず社内の相談窓口を利用してみましょう。 2020年のパワハラ防止法の施行に伴い、すべての企業内にハラスメント相談窓口を設置することが義務付けられました。 社内にそういった窓口が設置されているはずですので、相談してみることをおすすめします。 もし信頼できる上司や同僚がいる場合は、そういった人に相談してみるのも一つの手でしょう。 外部の相談窓口を利用する 社内の相談窓口が形骸化していたり、相談しても改善されなかったりした場合には、外部の相談窓口への相談をおすすめします。 具体的には「職場いじめの外部の相談窓口」の項でくわしく説明していますので、ぜひご覧ください。 退職・転職する 「職場いじめで精神的に限界だ」という場合には、無理せず退職や転職を検討することをおすすめします。 関連記事 ・退職代行の流れは?手順を弁護士が徹底解説 職場いじめの外部の相談窓口 職場いじめの外部の相談窓口は以下が挙げられます。 職場いじめの相談窓口 総合労働相談コーナー ハラスメント悩み相談室 みんなの人権110番 弁護士 総合労働相談コーナー 総合労働相談コーナーは、あらゆる労働問題について相談できる、厚生労働省所管の窓口です。 予約もいらず、無料で専門相談員が電話で対応してくれます。また、相談や助言で解決しない場合は、あっせん制度も利用できます。 さらに労働基準法違反の疑いがある場合は、担当部署に引継ぎ、行政指導もしてくれる場合もあります。 ハラスメント悩み相談室 セクハラに関する労働相談については、厚生労働省が「ハラスメント悩み相談室」を設けています。セクハラだけでなく、パワハラやマタハラも対象になっていますので、まずは連絡をしてみましょう。 電話だけでなく、メールやSNSによる相談にも対応しています。 みんなの人権110番 法務省が運営する「みんなの人権110番(全国共通人権相談ダイヤル)」も心強い味方です。 先述の通り、職場いじめやパワハラでは、証拠が非常に重要です。録音やメール文面などがあれば、それも相談時に伝えてみてください。 弁護士 「職場いじめについて相談したい」「職場いじめを訴えたい」という方は、弁護士に相談することをおすすめします。 職場いじめを弁護士に相談することのメリットについては、次の項でくわしく解説していますのでぜひご覧ください。 職場いじめは弁護士に相談 「職場いじめが原因で被害を受けた」と客観的に認められるためには、具体的にどのようないじめがあったか・どのような被害を受けたかどうかを確認しておくことが重要です。 そこで、職場いじめで加害者や会社を訴えたいという場合には、弁護士に相談することをおすすめします。 法的なアドバイスをもらえる 弁護士に相談すれば、「どんな証拠を集めればよいか」「職場いじめにどう対応していけばいいか」といった、具体的なアドバイスをもらうことができます。 もちろん、弁護士に依頼すれば、証拠収集や会社とのやりとりを任せることも可能です。 過去の事例から慰謝料請求ができるか判断してもらえる 弁護士に依頼すれば、過去の事例を調べてもらい、自分の置かれている状況で慰謝料請求は可能か、法的視点から判断してもらえます。 もし慰謝料請求が可能であると判断されたら、会社に対して法的な面から適切な要求や交渉をおこなってくれます。 慰謝料の交渉を任せられる 職場いじめの被害によって精神的に苦痛を受けたり、会社を辞めざるを得なかったりした場合には、企業に対して損害賠償・慰謝料を請求することができます。 弁護士に依頼すれば、損害賠償請求をはじめとして、悪質な職場いじめやハラスメントに対する刑事告訴など法的な対応をスムーズにおこなえます。 まとめ 職場いじめを受けているという場合は、ひとりで抱え込まず、外部の相談窓口や弁護士に相談することをおすすめします。 弁護士に依頼すれば、法的なアドバイスをもらえるほか、慰謝料請求や刑事告訴などの法的な対応を一任することができます。 無料相談を受け付けている弁護士事務所もありますので、まずは弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。 --- ### サービス残業は弁護士に相談!弁護士に相談するメリットを解説! - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-06-21 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6332 - Categories: 残業代請求 サービス残業は違法であり、サービス残業が常態化している企業でお勤めの方は、弁護士に相談することが重要です。お悩みの方は弁護士に相談して下さい。 企業に勤めている方の中には、毎日のように遅くまで残業している方もいるかもしれません。 残業代が支払われていればいいですが、残念ながら、社員に残業代を支払わずサービス残業をさせる会社もあるのが現状です。 サービス残業が常態化している企業でお勤めの方は、弁護士に相談することが重要です。 サービス残業は違法であり、日々の残業の積み重ねにより、想像以上の残業代を受け取ることができるかもしれません。 サービス残業でお悩みの方は、ぜひ最後までご覧ください。 サービス残業は仕方ない? サービス残業は、賃金が出ない残業のことです。残業代が一切つかない場合はもちろん、一部が支給されないケースも含みます。 会社員として働いている以上、ある程度は残業代が出なくても仕方ないと思っていないでしょうか。 まずは、そもそも残業とは何なのかを確認し、法的な取り扱いについて解説します。 残業は1日8時間・週40時間超の労働 法定労働時間は、休憩時間を除いて1日8時間かつ週40時間と定められています。 会社の所定労働時間が1時間の休憩を含み9時から18時までの週5日勤務の場合、それ以外の時間帯の勤務はすべて残業です。 残業と言えば定時後の労働のみを指すことが多いですが、時間外労働という意味では朝の始業時間前の仕事も該当します。 もちろん休日出勤なら時間帯に関わらず時間外勤務となり、割増賃金が支払われなければなりません。 関連記事 ・残業代について解説!残業の定義、計算方法や残業代未払い時の対処法 サービス残業は罰則のある違法行為 使用者が労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合、残業時間数や時間帯に応じた割増賃金を支払う義務があります(労働基準法37条)。 サービス残業は賃金を支払わずに労働者を働かせるものであり、違法行為です。 いかなる場合でも、賃金が支払われない残業は、あってはならないことです。 関連記事 ・サービス残業は違法!具体的な事例と対処法を徹底解説! 残業命令がなくても残業代を請求できる 残業とは会社から命令されて行うものであり、命令を受けていない自主的な残業は労働時間に該当しないとする判例もあります。 では、会社からの残業命令がなければ、サービス残業もやむを得ないかと言われると、違います。 残業を直接命じられていなかったとしても、客観的に見て所定労働時間内に終わらないような大量の業務を命じられていたような場合には、サービス残業の残業代を請求することが可能です。 社員にサービス残業させるために使われる手段 ①就業時間を記録できなくする 就業時間後のタイムカードの打刻をできなくして残業させる会社があります。 近年は徐々に少なくなっていますが、それでも要注意です。 勤務時間を証明するために、送信メールやパソコンのログオフの記録を準備しておきましょう。 ②始業時刻前や持ち帰りの労働を強いる 残業は定時後に行うものという認識が広まっているため、始業前に働いても残業したと考えない方が多いでしょう。 しかし、所定労働時間以外の時間帯に働いたのなら、れっきとした残業です。 また、自宅へ仕事を持ち帰ることを指示され、帰宅後に仕事をした場合も残業にあたります。 ノー残業デーなどの取り組みにより、帰宅してからの仕事を余儀なくされるケースもあります。 なお、期限までに余裕がありながら、上司からの指示がなく自主的に持ち帰った場合は残業と認められない可能性が高いです。 ③残業代を1分単位で計算しない 本来、残業代は1分単位で計算して支給されなければいけません。 残業代の支払いを少しでも削ろうとする企業では、15分や30分などの単位で区切り、端数を切り捨てるなどということが行われます。 影響が少ないために見過ごされがちですが、残業代の一部を支払わないサービス残業です。 関連記事 ・残業は1分単位での計算が原則!残業代の計算方法も解説 ④名ばかり管理職に登用する 「事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者」には、労働時間に関する規定は適用しないとされています(労働基準法41条第二号)。 そのため、課長や部長などの管理職に就いていれば、残業代は出ないと思っている方は多いでしょう。 その思い込みを利用して、社員を管理職に登用することもよく使われる手口です。 管理職になった後に業務量を増やされて、遅くまで残業せざるを得なくなったという事例があります。 長時間残業しているにもかかわらず、管理職なので残業代はもらえないと諦めてはいけません。 確かに企業の「管理監督者」には残業代が出ませんが、以下の条件を満たす必要があります。 労務管理を含む事業経営上の決定に関与している 勤務形態が労働時間などの規制に馴染まないものである 管理監督者にふさわしい待遇である 管理職であっても名ばかり管理職である場合は、残業代を受け取れる可能性があります。 ⑤みなし残業代制を悪用する みなし残業代制を適用しつつ、みなし残業時間以上の残業代を支払わないという手口です。 給与に一定の残業代を含めて支払うみなし残業では、あらかじめ固定の残業代の時間数と金額が決められています。 固定の残業代に割り当てられた時間数を超えて残業すれば、超過分の賃金が支給されなければなりません。 たとえば、みなし残業が20時間で月に30時間の残業を行ったと仮定します。この場合、10時間分の残業代を追加でもらえなければ、10時間分はサービス残業です。 なお、故意に超過分の残業代を出さないケースもあれば、会社が制度を理解していない場合も考えられます。 いずれにしても、労働に対して賃金を出さないのは違法です。 サービス残業を強要されている場合の対処法 現在、サービス残業をさせられていて困っている方は、解決に向けて行動を起こしましょう。 サービス残業は拒否できる サービス残業は、拒否しても問題ありません。断ることは勇気がいるかもしれませんが、違法なことをしているのは会社側です。 また、サービス残業を拒否したことを理由に解雇されることもありません。 サービス残業の証拠を収集する サービス残業に費やした時間には本来残業代が支払われるべきであり、未払い残業代の請求が可能です。 サービス残業の残業代請求を行う前に、以下の証拠を収集しましょう。 残業代請求の証拠 残業した事実と時間が分かるもの(タイムカード、パソコンのログの記録など) 残業代を正確に計算するための資料(就業規則、雇用契約書) 証拠が収集出来たら、賃金規定に基づいて残業代を計算し、会社へ請求書を送ります。 会社が対応してくれなければ、弁護士や労働基準監督署などの専門家に相談しましょう。 関連記事 ・残業代請求で必要となる証拠を徹底解説!証拠がない場合の対処法は? サービス残業を弁護士に依頼するメリット サービス残業は弁護士に相談することが重要です。サービス残業を弁護士に相談するメリットを3つ解説します。 残業代の金銭回収の可能性が上がる 弁護士は法律の専門家であり、法的な知識と経験があります。その知識をベースに法的根拠をもって会社と交渉するため、未払い残業代が回収できる確率を高めることができます。 また、弁護士に依頼することで従業員の本気度を伝え、「裁判を起こされるかもしれない」というプレッシャーを会社に与えられることもメリットと言えるでしょう。 また、実際に裁判が必要になった場合でも、法律の専門家である弁護士が側にいれば手続きを任せられるだけでなく、法律に基づいた主張で裁判を有利に進めることが可能です。 残業代請求後のトラブルを防ぐことができる 未払い残業代の回収を会社に在籍したまま行うときに心配となるのが、会社から従業員への不利益な対応です。 会社によっては未払い残業代の請求をしたことにより従業員を懲戒解雇するところもあります。 従業員が弁護士をつけていれば、そのような対応は当然弁護士から追及されるため会社もうかつな対応はできません。 弁護士に依頼することで、会社からの不利益な対応を抑止する効果が期待できます。 サービス残業の証拠が収集しやすい サービス残業代を回収するためには、証拠が重要です。 証拠が手元にそろっておらず回収を決意した段階では集めることが困難な状況もあり得ます。 従業員が会社に対してタイムカードやパソコンの記録を見せてくれと言っても、会社はすぐに応じてくれないかもしれません。 しかし、弁護士に相談し、依頼した弁護士から証拠の開示請求を行うと、会社側が証拠の提出に応じてくれる可能性が高まります。 サービス残業でお悩みの方は弁護士に相談! サービス残業でお悩みの方は、弁護士に相談しましょう。 サービス残業の残業代を個人の力で請求しようとすると、会社側が頑なな姿勢を崩さなかったり、不利益な取り扱いをしたりして、うまく解決に至らない場合があります。 またサービス残業が発生する職場は、上下関係がきびしかったり、長時間労働が常態化してたりするケースが多いです。 身体的、精神的な疲れのためにひとりでは事態解決に向けて動けないという方も多いと思います。 弁護士への相談がサービス残業問題解決の糸口になります。無料相談を受け付けている弁護士事務所もあるので、一度相談してみてはいかがでしょうか。 --- ### マタハラで上司を訴える!ケースと判例を弁護士が解説 - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-04-01 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6336 - Categories: ハラスメント・いじめ マタニティハラスメント(マタハラ)とは、労働者に対し、妊娠や出産・育児休暇などを理由に、解雇や雇い止め・降格などといった不利益な取り扱いをおこなうことをいいます。 マタハラで上司を訴えたいという方は、弁護士に相談することをおすすめします。 「上司のマタハラで悩んでいる」「上司のマタハラを訴えたい」 マタニティハラスメント(マタハラ)とは、労働者に対し、妊娠や出産・育児休暇などを理由に、解雇や雇い止め・降格などといった不利益な取り扱いをおこなうことをいいます。 マタハラで解雇や降格などの不利益な取り扱いを受けた方には、処分に納得がいかずに「マタハラを訴えたい」とお考えの方もいるでしょう。 マタハラで不利益な取り扱いを受けたり働けなくなったりした場合には、弁護士に相談することをおすすめします。 今回は、マタハラを訴えることができるケースや、マタハラの判例について解説します。 マタハラで訴えることを検討すべきケース マタハラで訴えることを検討すべきケースとして、以下のようなものが挙げられます。 訴えることを検討すべきケース 妊娠を理由に不利益な取り扱いを受けた 育休から復帰しても原職に戻れない 転勤で育児が難しくなった なお、企業は「従業員が他人に損害を発生させた場合に、会社もその従業員と同じように被害者に対して損害賠償の責任を負う」ことになっています(使用者責任)。 そのため、マタハラで訴える際には、マタハラをした上司・同僚といった加害者本人だけでなく、会社も訴えることができます。 妊娠などを理由に不利益な取り扱いを受けた 使用者(会社)が労働者に対して、妊娠や出産、育休などを理由に不利益な取り扱いをおこなうことは、法律で禁じられています(男女雇用機会均等法9条、育児・介護休業法10条)。 ここでいう不利益な取り扱いとは、解雇や雇い止め、退職勧奨、降格、減給といった措置が考えられます。 「妊娠を理由に降格された」「出産を理由に減給された」という場合には、マタハラで訴えることができるかもしれません。 育休から復帰しても原職に戻れない 育児休業から労働者が復帰するときは、原職あるいは原職相当職への復帰が原則とされています(育児・介護休業法22条)。 参考:厚生労働省|子の養育又は家族の介護を行い、又は行うこととなる労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために事業主が講ずべき措置等に関する指針 原職とは、育休を取得する前に就いていたもとの職のことを指します。 また、原職相当職については、組織の状況や雇用管理の関係などによってさまざまですが、以下のような範囲を満たすものとされています。 原職相当職の範囲 休業後の職制上の地位が休業前より下回っていない 休業前と休業後とで職務内容が異なっていない 休業前と休業後とで勤務する事業所が同じ 参考:厚生労働省 都道府県労働局雇用環境・均等部(室)|育児・介護休業法のあらまし 「育休から復帰したのに、原職に戻れない」という場合は、マタハラを理由に訴えることを検討しましょう。 転勤で育児が難しくなった 会社側には、転勤によって育児が困難になる労働者については、転勤にあたって配慮する義務があると法律で定められています(育児・介護休業法26条)。 「配慮義務を無視して転勤を命じられ、大きな不利益を被った」といった場合には、マタハラとして訴えることを検討してもいいでしょう。 損害賠償が認められたマタハラの判例 妊娠を理由とした暴言や解雇で損害賠償が認められた例 幼稚園教諭の女性が、妊娠を理由に暴言の被害や解雇を受けたことについて、勤務していた幼稚園長と、幼稚園の経営グループを提訴した事件です(『今川学園木の実幼稚園事件』大阪地判平14. 3. 13)。 幼稚園教諭の女性は、妊娠が判明した際、勤務先の幼稚園の園長に中絶するよう要求され、結果的に流産してしまったばかりか、その後も退職を強要され解雇されてしまいました。 これについて、女性は男女雇用機会均等法に反するとして、園長と幼稚園経営グループに対して損害賠償を請求しました。 結果として、妊娠を理由に中絶を勧告したり、退職の強要や解雇をしたりすることは、男女雇用機会均等法違反であるとして、解雇の無効と慰謝料250万円の支払いを園長と経営グループに命じることになりました。 妊娠を理由とした降格で損害賠償が認められた例 理学療法士の女性が、妊娠を理由に降格されたことについて、勤務していた病院を提訴した事件です(『広島中央保健生協事件』最判平26. 10. 23)。 もともと副主任の地位にあった理学療法士の女性は、妊娠がわかった後に軽易な業務への転換を希望したところ、希望通り業務を転換してもらい、新部署に異動することになりました。 新部署ではすでに別の主任がいたため、女性は副主任の職位を解かれました。 女性は出産後、産休や育休を終えて病院に復職したのですが、病院は復職後も女性を副主任に復帰させませんでした。 これについて、女性は妊娠に伴う配置換えを契機として降格させたことは違法だとして、病院側に損害賠償等を請求しました。 結果として、女性が妊娠を理由に降格されたことは、男女雇用機会均等法違反であり、無効であるとして副主任手当(月額9500円)・慰謝料100万円など、総額175万円あまりの損害賠償を病院側に命じることになりました。 育休復帰についての嫌がらせで損害賠償が認められた例 出産後そのまま育休を取得し、職場に復帰しようとした女性が、会社からの提示を拒否したところ解雇されたことについて、会社を提訴した事件です(東京地判平29. 7. 3)。 ドイツ科学誌出版社の日本法人に勤務していた女性は、育休後に職場復帰を申請しました。 しかし、会社側は「インドに転勤するか」「大幅に賃金の下がる職務への配置転換を受け容れるか」を提示しました。 女性がどちらの提示も拒否したところ、女性は解雇されてしまいました。 これについて、女性は予告もなく受け入れがたい業務を提示され、解雇までされたことで精神的苦痛を負ったとして、会社側に損害賠償を請求しました。 結果として、女性が育休復帰後に受け入れがたい業務を提示されたり、解雇されたりしてしまったことは、育児介護休業法違反であるとして、解雇の無効と慰謝料50万円を会社側に命じることになりました。 マタハラを訴えるなら弁護士へ相談 マタハラを訴えたいという方は、弁護士への相談をおすすめします。 弁護士に相談するときのポイント マタハラを相談する際には、以下のようなポイントを押さえておきましょう。 マタハラを相談するときのポイント メールや音声など、マタハラ被害の内容についての証拠を残しておく 降格通知書や診断書など、マタハラによって受けた影響の証拠を残しておく マタハラによって不利益な扱いを受けたという証拠を残しておくことで、相談内容がわかりやすくなったり、その後の手続きをスムーズに進めやすくなったりします。 関連記事 ・マタハラは弁護士に相談!マタハラの種類やポイントを解説 弁護士に相談するメリット 弁護士に相談すれば、自身が受けた被害がマタハラと認定されるのか法的な視点で判断してもらえるほか、慰謝料請求といった法的な手続きを依頼できます。 また、法的トラブルに発展した場合でも、スムーズに対応することができます。 弁護士に相談するメリット・デメリットについては『パワハラなどのハラスメントは弁護士に相談!メリットとデメリットを解説』の記事をご覧ください。 まとめ マタハラで不利益な取り扱いを受けたり働けなくなったりした場合には、弁護士に相談することをおすすめします。 弁護士に相談すれば、自身が受けた被害がマタハラと認定されるのか法的な視点で判断してもらえるほか、慰謝料請求といった法的な手続きを依頼できるというメリットがあります。 無料相談を受け付けている弁護士事務所もありますので、まずは弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。 --- ### 解雇予告手当の計算方法を徹底解説!【過去3か月分の給与が基準】 - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-03-27 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6330 - Categories: 不当解雇 会社が労働者を解雇する場合、30日以上前に予告する必要があります。この記事では、解雇予告手当の前提となる平均賃金と解雇予告手当、それぞれの計算方法を解説します。 会社が労働者を解雇する場合には、30日以上前に解雇を予告する必要があり、30日以内に解雇する際は、会社は労働者に解雇予告手当を支払う必要があります。 ただ、その金額の計算方法が分からない方の中には、解雇予告手当が支払われたものの、思っていたよりも金額が少ないと感じることがあるでしょう。 この記事では、会社から告げられた解雇予告手当の額が正しいのかを判断するため、解雇予告手当の計算方法を具体例を交えて解説していきます。 解雇されたら解雇予告手当の有無を確認 そもそも、解雇を30日前に通知する義務や、それに代わる解雇予告手当について詳しく知らない会社も多いです。 会社は労働者をいつでも自由に解雇できるわけではありません。もし解雇を告げられた場合は、解雇予告手当が支払われるか否かを確認しましょう。 解雇予告手当が支払われることが確認できたら、解雇を告げられてから退職するまでの日数を確認してください。 もっとも、解雇予告手当を支払えば、どんな解雇でも有効になるわけでもありません。不当解雇ではないか見極めるため、解雇の理由も必ず押さえておきましょう。 解雇予告手当の計算方法には平均賃金を用いる 解雇予告手当の計算方法は次のとおりです。 解雇予告手当の計算方法 解雇予告手当の額=平均賃金×解雇予告期間(30日より前)に足りなかった日数 まずは、「平均賃金」の算出方法を解説します。 労働基準法上の平均賃金の定め 「平均賃金」とは、解雇予告手当のほか、休業手当や有休の計算のベースにも使われる賃金額です。 平均賃金は、労働基準法で、以下のように定義されています。 第十一条 この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。 第十二条 この法律で平均賃金とは、これを算定すべき事由の発生した日以前三箇月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額をいう。 労働基準法11条・12条 労働基準法の12条に平均賃金の計算方法が記載されています。次項で詳しく解説します。 平均賃金の内容 労働基準法12条における「これを算定すべき事由の発生した日」とは、解雇予告手当の計算をする場合、労働者が解雇通告を受けた日です。 「三箇月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額」とは、平たく言うと過去3か月分の給料全額のことです。 「源泉所得税」や「社会保険料」を控除する前の賃金の支給額のことを指します。 なお、賃金締切日がある場合には、直近の締め日から3か月で計算をします。 ◆賃金の総額に含めるものは? 賃金の総額には、①臨時に支払われる賃金や②3か月を超える期間ごとに支払われる賃金は算入しません。たとえば、結婚手当や退職金、ボーナスなどは計算に含めないことになります。これらを含めてしまうとタイミングによって平均賃金が大きく変わってしまうためです。 なお、算入しないのはあくまで3か月を超える期間なので、ボーナスであっても3か月ごと(四半期ごと)に支払われるのであれば、賃金総額に含めます。 一方で、半年ごとに通勤手当が支払われるような場合には、実質的には毎日・毎月の通勤に対する手当であるため、1か月ごとに支払われたものとみなして算入します。便宜的に支払いを半年ごとにまとめているにすぎないからです。 賃金総額に含めるもの含めないもの手当・賃金・家族手当・通勤手当・残業手当・住宅手当・3か月を超える期間ごとの賞与・結婚手当・私傷病手当・産休、育休、介護休業中の賃金・労災で休業中に支払われた賃金 最後に「賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額」ですが、これは過去3か月間の賃金をその期間の総日数で割った金額のことです。所定労働日数ではなく、暦日数でそのまま計算します。 ここまでをまとめると、解雇通告を受けた日の直前(の締め日)から過去3か月の給料を、過去3か月間の総日数で割った金額が平均賃金になるということです。 平均賃金には上記の計算で求めた「原則の額」と後述する「最低額保障額」の2つがあり、両方計算して高かったほうが解雇予告手当の計算に使用される平均賃金となります。 具体的な計算方法を見ていきましょう。 平均賃金の計算方法(原則額) この項では、実際に平均賃金を計算してみましょう。例として、次の条件を想定します。 毎月、月末が賃金締切日である 「10月30日付の解雇」と10月20日に通告された 過去3か月の給与は以下の通り 9月(09/01~09/30)¥250,0008月(08/01~08/31)¥250,0007月(07/01~07/31)¥250,000 ※給与には「通勤手当」と「残業手当」が含まれている まずは直近3か月の賃金の合計を出します。解雇の通告を受けたのが10月20日ですので、直近の賃金締切日である9月30日以前3か月間の給与額で計算をします。 250,000円+250,000円+250,000円=750,000円(①-3か月の賃金合計) 次に、当該3か月の暦上の総日数を足します。この場合は、07月01日~09月30日となります。 30日+31日+31日=92日(②-3か月の総日数) 最後に、直近3か月の賃金の合計(①)を直近3か月の総日数(②)で割った金額が平均賃金です。 750,000円(①-3か月の賃金合計)÷92日(②-3か月の総日数)=8,152. 173... 円 上記のように端数が出た場合は、銭位未満は切り捨てます。平均賃金の計算結果は8,152円17銭(A)となりました。 平均賃金の計算方法(例外:最低保障額) 賃金の一部または全部が、時間給・日給・出来高の場合は、原則通りに平均賃金を計算すると不当に低くなってしまうおそれがあります。その例外として平均賃金の最低保障額が定められています。 平均賃金の最低保障額は、過去3か月の賃金の総額を労働日数で割った金額の60%として計算します。 直近3か月の賃金の合計を出すところまでは、原則の計算と同じです。 直近3か月の労働日数の合計が以下のような例を想定します。 9月ー22日出勤 8月ー18日出勤 7月ー20日出勤 この場合は、22日+18日+20日=60日(③-3か月の労働日数)となります。 最後に、直近3か月の賃金の合計(①)を直近3か月の労働日数の合計(③)で割った金額の60%が最低賃金となります。つまり、以下のような計算式になります。 750,000円(①-3か月の賃金合計)÷60日(③-3か月の労働日数)x0. 6=7,500円 最低保障額の計算結果は7,500円(B)となりました。 原則の平均賃金額(A)と最低保障額(B)を比べた結果、高いほうが平均賃金です。 この場合なら、原則(A)の8,152円17銭が平均賃金となります。 この金額を元に、解雇予告手当を算出してみましょう。 解雇予告手当の計算方法と支払い 平均賃金の計算ができてしまえば、解雇予告手当の計算は簡単です。 冒頭で紹介しましたが、解雇予告手当の計算式をおさらいしましょう。 解雇予告手当の額=平均賃金×解雇予告期間(30日より前)に足りなかった日数 前項の設定を元に、実際に計算してみましょう。 解雇予告手当の計算 今回の設定は「10月30日付の解雇」と10月20日に通達されたというものでした。 つまり、本来30日以上前に通知しなければいけないところ、10日前の通知だったわけです。この場合、30日-10日=20日が「解雇予告期間(30日より前)に足りなかった日数」の部分にあたります。 この記事で算出した数字を、解雇予告手当の計算式にするとこうなります。 平均賃金8,152円17銭×解雇予告期間(30日より前)に足りなかった日数20日=165,043円2銭 銭単位は現実には支払いできませんので、50銭未満は切り捨て、50銭以上は繰り上げとなります。 つまり、この場合の解雇手当は165,043円となります。 解雇予告手当はいつ支払われる? 気になるのは、解雇予告手当が支払われるタイミングだと思います。 厚生労働省は【リーフレットシリーズ労基法20条】の「解雇する際の手続き」中で、「解雇の予告を行わない場合は、解雇と同時に30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払う」としています。 つまり法律上は、即日解雇であれば当日、30日以下の解雇通知であれば予告日に解雇予告手当を支払う必要があるのです。 しかし、現状は、最後の給料日と併せて支払う企業も多いようです。当日や予告日に解雇予告手当が支払われない場合は、解雇予告手当の支払いを請求し、いつ支払ってもらえるのか確認が必要です。 解雇予告手当が支払われないときは? 突然の解雇通達をされると、パニックに陥ってしまうことも考えられます。 とはいえ、解雇予告手当の未払いは労働基準法違反ですので、すぐに所轄の都道府県労働局賃金室または労働基準監督署に相談しましょう。 また、解雇の際は解雇予告手当だけではなく、解雇理由証明書の交付も合わせて求めておくと、後々のトラブルの際に役立ちますので、合わせて請求しましょう。 なお、労働者が裁判所へ申立てをした場合は、本来支払われるべきだった額と同額の「付加金」を合わせて支払ってもらえる可能性があります(労働基準法114条)。 関連記事 ・労働基準監督署に相談できる内容とは?メリット・デメリットから徹底解説 【例外】解雇予告手当の支給対象外となる場合 非常に限定的なケースですが、解雇予告手当の支給が不要とされている場合もあります。具体的には、以下の4ケースがそれにあたります。 解雇予告手当が支払われないケース 日雇い労働者(継続期間が1か月未満) 契約期間が2か月以内の者 4か月以内の季節労働者 試用期間中の者(14日未満) 上記は解雇予告手当の対象ではない旨が労働基準法21条に記載されています。 そのほかにも、労働者に明らかな過失がある場合や事業の継続が不可能になった場合は、解雇予告手当が支払われないことがあります。 解雇予告手当が支払われないケースについて詳しく知りたい方は、『解雇予告手当がもらえない!法的にもらえないケースや請求方法を解説!』の記事もご覧ください。 まとめ 突然の解雇にあってしまった場合にも、セーフティネットを活用すれば生活が困窮することを防ぐことができます。 労働者の生活を守るためにいくつもの制度が用意されており、その1つが解雇予告手当です。解雇予告手当を正しく計算し、適切な金額を会社に請求しましょう。 なお、解雇自体に納得していない(それを望んでいない)場合は、手当の請求など退職を前提とした手続きを進めてしまうと「解雇を受け入れている」と判断されてしまいます。 解雇予告手当は、予告なしに急に解雇を告げられたことに対する手当として支払われる金銭だからです。 安易に解雇予告手当の請求手続きに進むのではなく、一度どうするべきか弁護士に相談することが大切です。 解雇に不当性がある場合は、解雇の無効を訴え、不当解雇されてから合意がなされるまでの期間の賃金を請求することもできます。 無料相談を受け付けている弁護士事務所もあるので、弁護士に相談することをおすすめします。 関連記事 ・不当解雇は弁護士に相談すべき?相談するときのポイントを解説 --- ### 離職票はいつ届く?退職から失業手当を受給するまでの流れを解説! - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-04-01 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6323 - Categories: 退職・退職後の手続き 勤めていた会社を退職して失業手当を受ける際に、申請に必要な離職票がなかなか手元に届かず、お困りになってはいないでしょうか。この記事では、離職票の取得方法と失業手当を受給するまでの流れを解説します。 「離職票はいつ届く?」「失業手当を受給する手続きは?」 勤めていた会社を退職して失業手当(基本手当)を受ける際に、申請に必要な離職票がなかなか手元に届かず、お困りになってはいないでしょうか。 また、失業手当を受給できるまでの手順がよくわからないという方も多いかと思います。 この記事では、離職票の取得方法と失業手当を受給するまでの流れを解説します。 そもそも離職票とは・いつ何が必要? 離職票とは、労働者が離職した事実やその理由・日付などを公的に証明する書類です。 離職票の発行自体は、会社に対し「離職票の発行をお願いします」と請求するだけで手に入れることができます。 離職票はいつ必要になる? 離職票は、退職者が失業保険の基本手当を申請する際に必要になります。 その他にも、失業を理由とした給付金を申請する際や国民保険への切り替えをするときなど、退職をなんらかの形で証明しなければいけないときにも使う場合があります。 離職票はいつ届く? 離職票はあらかじめ発行を予定していれば、退職してから通常10日〜2週間以内に会社から届きます。 離職票の発行には原則として労働者自身が請求することが必要なので、もしも失業保険を受給する予定であれば早めに会社に伝えるようにしましょう。 離職票はどうやって届く? 離職票が届くまでの流れは以下の通りです。 会社がハローワークに離職証明書を提出 ハローワークが離職票を会社に送付 会社が必要事項を記入し、退職者に送付 雇用保険法施行規則7条・雇用保険法7条により、会社は労働者が退職した翌日から10日以内に離職証明書を提出しなければいけないと定められています。 退職から2週間以上経っても離職票が届かず困っている方は、『離職票がもらえない!理由と対処法について解説』の記事も参考にしてください。 離職票は2種類ある 離職票は、「雇用保険被保険者離職票-1」と、「雇用保険被保険者離職票-2」の2種類があります。 それぞれ簡易的に「離職票-1」や「離職票-2」と呼ばれていることが多いです。 「-1」の用紙は、失業手当の振込先となる金融機関の指定が可能な用紙で、「-2」の用紙は退職理由と退職直前6か月間の給与が記載されているものです。 これら2枚をセットにして、ハローワークに提出します。 離職票と退職証明書の違いとは? 離職票と似たもので退職証明書があります。 離職票と退職証明書の違いは、離職票はハローワークが発行する書面であるのに対し、退職証明書は会社が作成する私的な書面という点です。 退職証明書は必ずしも必要なものではありませんが、転職先の企業から提出が求められる場合があります。 失業手当の申請方法と受給までの流れ 退職してから失業手当を受けられるようになるまで、どのような順序を追っていけば良いのでしょうか。 必要な書類や手続きがわからないという方も多いかと思います。実際の流れを見てみましょう。 失業手当の申請で離職票以外に必要なものは? 失業手当の申請に必要な書類は以下の6つです。 失業手当の申請に必要な書類 離職票 雇用保険被保険者証(就職していた会社からもらえる) 証明写真2枚(縦3cm x 横2. 5cm) 個人番号確認書類(マイナンバーカード、個人番号の記載のある住民票等) 本人確認証(運転免許証、マイナンバーカード等) 通帳 残業時間などが理由で、会社都合での退職扱いにしたい場合は、それらを示す書類もあわせて持っていきましょう。 ハローワークでの失業手当の申請手続きとは? ハローワークへ出向き、失業手当の申請を行います。 会社都合による退職の場合は、以下の手順です。 ハローワークで求職の手続きを行う(求職票への記入と離職票などを提出) 7日間の待期期間 雇用保険説明会と失業認定日に出席 その後1週間程度で初給付 以後は4週に一度の失業認定日に出席、その後1週間程度で給付の繰り返し 自己都合による退職の場合、原則として7日間の待期期間満了の翌日から2か月間の給付制限があるため、申請から2か月間と7日は失業手当を受けることができません。 失業手当はいつまでに申請すればいい? 失業手当は、受給できる期間が「離職した日の翌日から1年間」と決まっています。 そのため離職票を受け取ったら早く申請すべきです。 申請が遅れると、十九できる期間が短くなってしまう可能性があります。 失業手当を受給できる条件 失業手当は、退職者であればどなたでも受けれるというものではありません。 受給にはいくつかの条件があり、退職理由や年齢などによっても内容が異なります。 そもそも失業手当とは? 失業手当とは、再就職するまでの間、国からもらえるお金のことを指します。 対象者は以下です。 辞めた会社で雇用保険に加入していた人 ハローワークを通じて再就職を目指している人 64歳以下の人(65歳以上は高年齢求職者給付金を受け取れる可能性があります) これらの条件に当てはまる人が、失業手当を受け取ることができます。 受給には雇用保険への加入が条件 失業手当を受給するには、離職する会社で一定期間、雇用保険に入っている必要があります。 また、退職理由によって、対象となる期間が異なります。 会社都合による退職の場合 会社都合退職の場合、離職の日以前1年間に雇用保険に加入していた時期が通算して6か月以上あることが必要です。 会社都合による退職の方が、受給条件が緩くなっています。 自己都合による退職の場合 自己都合退職の場合、離職の日以前2年間に雇用保険に加入していた時期が通算して12か月以上あることが必要です。 関連記事 ・自己都合退職と会社都合退職の違いは?知らないと損する両者の違い 失業手当の給付期間は何日? 失業手当がもらえる期間は、雇用保険加入期間と離職時の年齢、そして離職理由によって異なります。 自己都合退職の場合 自己都合退職の場合は、離職時の年齢に関係なく、雇用保険に加入していた期間によって給付日数が異なります。 10年未満10年以上20年未満20年以上離職時65歳未満90日120日150日 会社都合退職の場合 会社都合退職の場合は、離職時の年齢ならびに雇用保険に加入していた期間によって給付日数が異なります。 1年未満1年以上5年未満5年以上10年未満10年以上20年未満20年以上離職時30歳未満90日90日120日180日-30歳以上35歳未満90日120日180日210日240日35歳以上45歳未満90日150日180日240日270日45歳以上60歳未満90日180日240日270日330日60歳以上65歳未満90日150日180日210日240日 失業手当でもらえる金額はいくら? 失業手当の受給額は、「基本手当日額 × 所定給付日数」で計算できます。 基本手当日額とは、失業手当で受給できる1日あたりの金額を指し、退職前6か月の賃金の総額を180で割って算出した金額のおよそ50%〜80%となっています。 基本手当日額の上限は年齢によって異なり、毎年8月1日に改定されます。 2023年8月1日現在では、以下のとおりになっています。 30歳未満 上限6,945円 30歳以上45歳未満 上限7,715円 45歳以上60歳未満 上限8,490円 60歳以上65歳未満 上限7,294円 ※下限は一律2,196円 参考:厚生労働省「雇用保険の基本手当日額が変更になります~令和5 年8 月 1 日から~」 退職理由は自己都合より会社都合のほうが有利 失業手当を受けるにあたって、転職や結婚などによる自己都合退職より、リストラなどによる会社都合退職の方が有利です。 自己都合と会社都合では、給付開始までに2か月間の差があったり、最大支給額や支給日数が倍近く違ってくるケースもあります。 また、退職時に自己都合として扱われていても、退職の状況によってはハローワークで会社都合と認められることがあります。 たとえば、会社都合退職となる可能性のあるものとして、残業が長すぎる、給料の未払い、パワハラやセクハラを受けたなどが挙げられます。 データや音声などの客観的な証拠があれば、失業手当を申請する際に持参するといいでしょう。 離職票が届かない場合の対処法 離職票が届かない主な理由は「会社側の申請ミス」「ハローワークが繁忙期」などが挙げられます。 離職票が届かない場合の対処法をみていきましょう。 ①会社に問い合わせる 退職から2週間が経過しても離職票が届かない場合、まずは会社へ問い合わせてみましょう。 もし、離職票が必要ということを会社へ言っていない場合、離職票が発行されないことがあるため、しっかりと伝える必要があります。 また、手続きをする担当者のミスなどで、送付が遅れているケースもあります。 ②ハローワークに問い合わせる 会社側での手続きが終わっている場合、ハローワーク側で手続きが止まっている可能性があります。 特に、3月9月といった時期は退職者が多く、ハローワークにとって繁忙期となります。 退職が繁忙期のタイミングと被ってしまうと、離職票の交付が遅れることもあるでしょう。 ③失業保険受給の仮手続きをする 退職日から12日経っても離職票が届かない場合、離職票がなくてもハローワークで失業保険の仮手続きができます。 ご自身の管轄のハローワークで求職登録を行い、必要な書類を確認して提出すれば仮手続きは完了です。 仮手続きをすることによって、離職票の到着を待ちながら、失業保険の給付手続きを遅延なく行えるメリットがあります。 ただし、失業認定日までには離職票を提出する必要があるため、会社やハローワークへ進捗状況を確認し、離職票を発行してもらうようにしましょう。 会社からの嫌がらせで離職票が届かない場合は? 退職者への嫌がらせで、離職票を交付しないといった悪質な会社もあります。 しかし、このような行為は「雇用保険法第76条3項」において違法となっており、会社は離職票の交付を拒否することはできません。 会社が正当な理由なく拒否した場合、「雇用保険法第83条4号」により、6か月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金の対象になります。 会社から離職票が交付されない場合は、ハローワークへ相談をすることで、ハローワーク側から会社へ催促を行ってくれます。 ハローワークからの催促にも応じず、会社が手続きを行わない場合は、確認請求を行うことができます。 確認請求とは、雇用保険の被保険者でなくなったことを管轄のハローワークで確認してもらうことです。 離職の事実を示す書面または口頭で確認の請求を行い、被保険者であったことが認められれば、ハローワークより離職票を発行してもらうことができます。 --- ### リストラに納得がいかない!リストラを弁護士に相談するメリットを解説 - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-04-23 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6325 - Categories: 不当解雇 今回は、リストラされたときの正しい対処方法や弁護士に相談するメリットをご紹介します。リストラされて納得できない方、弁護士に依頼すると何をしてもらえるのか知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。 「会社の経営環境が悪化して、リストラされた」「リストラを告げられたが納得できない」 リストラを告げられ、突然仕事がなくなると生活に困ってしまいますよね。 法律上、使用者(会社)が従業員をリストラをするには、一定の要件を満たさなければなりません。 会社から一方的に告げられるリストラは、要件を満たさなければ無効になる可能性があります。 この記事では、リストラが有効になるための要件と、リストラされたときの正しい対処法や弁護士に相談するメリットをご紹介します。 リストラされて納得できない方、弁護士に依頼すると何をしてもらえるのか知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。 リストラが有効になるための4要件 会社が経営状況の悪化などを理由に従業員をリストラしても、必ずしも有効になるとは限りません。リストラが無効になるケースもありえます。 まずはどういった場合にリストラが有効・無効になるのか、リストラの要件と共に確認しましょう。 リストラとは リストラとは、いわゆる「整理解雇」を意味します。 整理解雇とは、会社の収益性が悪化して事業の継続が困難となったとき、会社を存続させるためにやむを得ず行う解雇です。会社を建て直すための「リストラクチャリング(事業の再構築)」の一環として行われます。 通常通りに事業を運営できている状態で行われる「普通解雇」とは、要件が大きく異なります。 リストラが有効になるためには「事業を存続させるために解雇がやむを得ない」状況が必要となります。 リストラが有効になるための4要件 これまでの裁判例の積み重ねにより、リストラが有効になるためには、以下の4つの要件を満たす必要があると考えられています。 リストラが有効になるための4つの要件 人員削減の必要性 解雇回避努力 人選の合理性 解雇手続きの相当性 それぞれ詳しく解説します。 (1)人員削減の必要性 事業を継続するために、人員削減もやむを得ない状況が必要です。解雇しなくても、コスト削減を始めとする他の方法で事業を再構築できるなら、リストラは認められません。 (2)解雇回避努力 リストラが認められるには、会社が解雇を回避するために努力する必要があります。 たとえば以下のような方法が考えられるでしょう。 従業員を別の部署へ配置転換 給与や賞与をカット 不採算部門を閉じる、売却する 希望退職者を募る こうしたさまざまな努力を行っても、どうしても解雇しか手段がない場合、リストラによる解雇が認められやすくなります。 (3)人選の合理性 整理解雇をするときには、人選の合理性も要求されます。これは、整理解雇の対象者を適切な基準で選ばねばならないというルールです。 年齢や成績、これまでの勤務態度などを指標として、不公平にならない客観的な基準で対象者が選ばれていると、合理性が認められやすくなるでしょう。 一方で、会社側が気に入らない従業員を恣意的に解雇対象者とすると、合理性が認められずリストラが無効になる可能性が高まります。 (4)解雇手続きの相当性 リストラするときには、適正な手続きを踏む必要があります。具体的には労働組合や労働者側と協議して整理解雇の必要性や実施方法、時期などについて説明を行い、なるべく理解を得なければなりません。 何の協議もなく会社側が一方的にリストラを進めると、要件を満たさない可能性が高くなります。 リストラが無効になるのはどんなとき? リストラが無効になるケース 以下のような場合は、リストラが有効になる4要件を満たさないため、リストラが無効になる可能性が高いといえるでしょう。 リストラが無効になる可能性が高いケース 会社の業績がさほど悪化しておらず、本来は整理解雇が必要でないのにリストラされた 会社が希望退職者の募集やコスト削減の努力などを一切していない 会社が気に入らない人を恣意的に整理解雇の対象者として選んだ 労働組合・労働者側からの意見を聞かずに、一方的に整理解雇が行われた リストラが無効になった場合の効果 リストラが無効になると、解雇された労働者は会社に戻れます。未払い賃金も請求できることに加え、慰謝料請求できるケースもあります。 引き続いて従業員の地位が保障されるので、継続的に給与や賞与を払ってもらえて生活を維持できるでしょう。 リストラを弁護士に相談するメリット リストラが無効かどうか、正しく判断できる 不合理なリストラと思われるケースでも、必ずしも無効になるとは限りません。場合によっては有効と認められる可能性もあるでしょう。 自分ではリストラが法律上の要件を満たすかどうか判断できないとき、弁護士に相談すれば適切に判定してもらえます。証拠や情報が不足しているなら、個別に指摘を受けられるでしょう。 アドバイスの結果に応じて対処方法を決められるので、明確に道筋を立てられるメリットがあります。 有利に交渉を進めやすくなる リストラされて納得できないなら、会社側と交渉をして解決方法を決めなければなりません。 しかし、労働者と会社との間には力の差があるため、自分で交渉しても有利に進めるどころか会社が真剣に対応してくれない可能性もあります。 弁護士に交渉を依頼すると、法律や交渉の専門家として有利に話し合いを進めてもらえます。 自分で交渉するよりも高額な解決金を受けとることや、会社に戻りやすくなることが期待できます。 会社との交渉を任せられて手間やストレスを軽減できる 自分でリストラ問題について会社と交渉すると、大変な手間がかかります。電話にも対応しなければなりませんし、ときには書面を作成したり郵送したりしなければならないでしょう。 争い事に巻き込まれるので強いストレスもかかります。 弁護士に依頼すると面倒な手続きはすべて任せられますし、自分で対応しなくて良いのでストレスもかかりません。 未払い賃金・慰謝料の請求を依頼できる リストラされると、解雇後の賃金を払ってもらえなくなるのが通常です。 リストラが無効であれば解雇後も賃金を払わねばならないので、「未払い賃金」として会社側へ請求できます。 弁護士に相談すると、解雇前や解雇後の未払い賃金を正確に計算し、きちんと請求してもらえます。支払われていない給料をしっかり受け取れるメリットがあるといえるでしょう。 また、リストラが悪質な場合には、会社側へ慰謝料請求できる可能性もあります。 弁護士に相談すると、誰にどのような請求をできるのか整理してもらえるため、適切に請求の手続きを進めてもらえます。 交渉が決裂しても労働審判や裁判に対応できる リストラに納得できず会社と交渉しても、お互いの意見が合致せず決裂してしまうケースが少なくありません。 しかし、労働者1人で対応していると、労働審判や訴訟を起こすのが難しいので、仕方なく妥協してしまいがちです。 弁護士に相談していたら、労働審判や訴訟も問題なく任せられます。難しい裁判手続きだからといって諦める必要はありません。 妥協せずに労働審判や訴訟を起こし、未払い賃金や慰謝料などをきちんと支払ってもらえるでしょう。 関連記事 ・労働審判とは?制度の内容や手続きの流れを弁護士がわかりやすく解説 ・不当解雇で会社を訴える!裁判の手順と費用を解説 リストラされたときの正しい対処方法 解雇理由証明書を求める まずは会社側へ解雇理由証明書の交付を求めましょう。解雇理由証明書には解雇理由が記載されており、後にリストラの交渉や裁判をするときに重要な証拠となる非常に重要な資料です。 法律により、労働者側から解雇理由証明書の交付依頼があれば、会社はすぐに発行する義務があります。 解雇されたらまず、会社へ依頼して解雇理由証明書を送ってもらってください。 関連記事 ・解雇理由証明書を請求する方法は?請求するために知っておくべきことを解説 弁護士に相談する 次に労働問題に詳しい弁護士に相談するようおすすめします。自分ではどのように対応すべきか適切に判断しにくい場合でも、弁護士のアドバイスに従っていれば安心です。 証拠集めの方法なども弁護士に聞いて進めていきましょう。 関連記事 ・不当解雇は弁護士に相談すべき?相談するときのポイントを解説 証拠を集める 「リストラが無効」と主張したいなら、証拠となる資料が必要です。 解雇通知書、解雇理由証明書、会社の業績がわかる資料、これまでの勤務成績や実績、給与明細書など、なるべく多くの資料を集めましょう。 必要となる証拠は、状況によっても異なります。弁護士の指示を受けながら適切に収集してください。 リストラを弁護士に相談・依頼するときの費用 法律相談料 法律相談料は、当初に弁護士に相談したときにかかる費用です。相場は1時間1万円程度ですが、無料相談できる事務所もあります。 着手金 着手金とは、弁護士に交渉や訴訟などの手続きを依頼したとき、当初に発生する料金です。 金額的には10~20万円程度となる事務所が多いでしょう。 成功報酬金 成功報酬金は、事件が解決したときに発生する費用です。解決内容に応じた金額となります。 リストラを撤回してもらえた場合、相手から未払い賃金や慰謝料を獲得できた場合などに発生すると考えましょう。 金銭的な利益があった場合にはその10~20%程度、リストラが撤回された場合に30万円程度が相場となります。 弁護士事務所によって報酬体系が異なるので、依頼前にしっかり確認してみてください。 関連記事 ・不当解雇を相談・依頼するときの弁護士費用相場は?対処法も解説 まとめ 雇用は労働者の生活に直結し、極めて大きな影響を与えます。リストラに納得できなくても、泣き寝入りする必要はありません。 あなたを助けてくれるのは、法律の専門家である弁護士です。とくに労働問題を積極的に取り扱う弁護士であれば、より良い結果で解決できる可能性が高まるでしょう。 リストラに納得できない方は、労働問題に積極的に取り組んでいる弁護士を探して、相談してみましょう。 --- ### 退職勧奨されたら弁護士に依頼すべき?メリットと選び方・費用 - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-03-22 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6317 - Categories: 退職・退職後の手続き もし会社から退職勧奨を受けたら、どうしますか。そんな時は弁護士に依頼するのも選択肢の1つです。この記事では、退職勧奨を受けた時の対処法や弁護士活用のメリット、弁護士の選び方・報酬を解説します。 「他の会社の方が向いているんじゃないか」「今退職すれば十分な退職金が支払われる」などと、遠回しに退職を促されることがあります。これは、いわゆる退職勧奨と呼ばれる手口です。 もしも会社から退職勧奨を受けたら、どのような行動をとればよいでしょうか。 断固拒否するという方もいると思いますが、上司や会社経営者を相手にどう対応していいかわからない方も多いと思います。 退職勧奨された場合は、弁護士に相談したほうがいいケースもあります。弁護士に相談することで正しい権利を主張でき、会社へのけん制効果が期待できるでしょう。 この記事では、退職勧奨を受けた時の対処法や弁護士活用のメリット、弁護士の選び方・報酬を解説します。 そもそも退職勧奨とは何か? 退職勧奨とはどんな行為? 退職勧奨とは、従業員が自主的(従業員の意思で)に辞職してくれるよう、会社が従業員にはたらきかけることです。 勧奨に応じてもらうために、退職金の割増など有利な条件を提示してくるケースもあります。 退職勧奨はあくまで従業員が自主的に退職を選択するように促す行為であり、会社が一方的に退職させる解雇とは異なります。 具体的な行為としては、「ここでは君の力が発揮できない」などと遠回しに促す、面談や説得を通じ退職届にサインさせる、などが考えられます。 会社が退職勧奨すること自体は違法ではありません。 しかし、勧奨に伴う行為が行き過ぎて従業員の意思を無視して退職を強要する程度になると、不法行為(民法709条、715条)が成立する場合もあります。 不法行為が成立した場合、従業員は会社に対して損害賠償請求をすることが可能となります。そのため、会社もその点を理解していて、明らかに退職強要となる行為は避ける傾向にあります。 ですが退職勧奨と違法な退職強要の境界線は明確に判断しづらいのが現実です。 関連記事 ・退職勧奨(勧告)とは?違法になるケースと対処法を解説! 違法になる退職勧奨(退職強要)の例とは? 実際の裁判例から、退職勧奨にとどまらず、違法な退職強要にあたるとされた行為には以下のようなものがあります。 違法な退職強要にあたるとされたケース 退職勧奨にあたり、一人だけ過重な業務を与えるなど長期の嫌がらせが行われた場合 侮辱行為にあたるような、社会通念上相当とは言えない言動が用いられた場合 本人が拒否しているにも関わらず、繰り返し長時間の執拗な退職勧奨が行われた場合 すなわち、労働者が自発的に退職意思を形成するために社会通念上相当と言える限度を超えて、不当な心理的圧迫を加えたり名誉感情を不当に害するような退職勧奨は不法行為となりえます。 そのような場合、退職勧奨は違法、退職したことは無効と評価される可能性があります。 関連記事 ・退職強要とは?退職勧奨との違いと退職強要にあたる行為を解説! 退職勧奨に応じない場合の対処法 会社から退職勧奨を受けて辞めたくない場合、労働者側は退職勧奨を拒否することが可能です。 拒否して済めばいいですが、会社も簡単には引き下がらないケースも多いでしょう。 拒否しても退職勧奨が続き、かつ退職を受け入れたくない場合には以下のような対処法が考えられます。 ①前提:退職勧奨は拒否することが可能 客観的に合理的な理由のない限り、会社は従業員を一方的に解雇したり、強制的に退職させられません。 言い換えれば、従業員には退職勧奨を拒否する権利があるということです。会社を辞めたくなければ、はっきりと拒否しましょう。 ②退職勧奨について弁護士に相談する 労務問題や労働トラブルについて知識・経験・交渉力のある弁護士に相談するという方法もあります。状況によっては、会社と直接交渉してもらうこともできます。 交渉を通じ、会社から納得のいく回答を得られたり、より良い退職条件で合意することができたり、十分な示談金をもらえることなどが期待できます。 弁護士以外の相談窓口が知りたい方は、『退職勧奨の相談窓口は?解決事例&対処法も紹介』の記事もご覧ください。 ③退職勧奨が不当か労働審判で解決する 会社と交渉しても解決しない場合は、労働審判を受けるという手段もあります。 労働審判は、裁判官と労使の代表により3回以内の話し合いで問題解決を図る制度です。 裁判と比較すると、費用や手続きの面で負担が少ないことがメリットです。 一方で退職勧奨に伴う不法行為の有無を争う場合など、証人や証拠の精査が必要な場合には不向きなこともあります。 ④退職勧奨の違法性を裁判所に判断してもらう 会社による退職勧奨が行き過ぎて退職強要に該当すると判断すれば、裁判所に訴えて損害賠償(慰謝料)請求することも考えられます。 会社の退職強要が強迫や詐欺に該当すると判断されれば、すでに退職させられている場合、退職の取消しを請求することも可能です。 退職勧奨における弁護士の活用方法とメリット 会社が退職勧奨を継続した場合、社内での立場が弱く、また専門知識もない従業員が会社という組織を相手に交渉するのは難しい場合もあります。 そこで、状況によっては弁護士への依頼も検討してみましょう。 弁護士の活用方法と活用のメリットを紹介します。 退職勧奨について相談・アドバイスを受けられる 専門家である弁護士に相談することで、下記の情報やアドバイスを得ることができます。 得られるアドバイス 会社の退職勧奨が違法でないか 適切な対応方法や解決策 交渉材料・証拠(就業規則、退職勧奨の経緯がわかるメモなど)の収集方法 弁護士に相談していることを会社に伝えると、会社側の対応が変わります。退職強要に近い対応はなくなるでしょう。裁判になった場合に備えて言動が慎重になったり、場合によっては退職勧奨がなくなることもあります。 弁護士に相談していることを会社に明確に伝えるために、退職勧奨を辞めてほしい旨の通知を弁護士から内容証明郵便で送付してもらいましょう。 退職勧奨について会社と交渉してもらう 弁護士に会社と直接交渉してもらうように依頼することもできます。事前に会社との交渉経緯を説明し、「会社からの退職勧奨を辞めさせてほしい」「退職勧奨の一環でパワハラを受けたので慰謝料を請求したい」といった、自分の希望する解決方法を弁護士に伝えましょう。 弁護士は依頼者の希望する方向で会社と交渉してくれます。個人交渉では知識がなくて強く主張できなかった点も、弁護士なら法律上の権利にもとづいて交渉できるので、交渉が有利に運び問題解決も早まります。 会社との交渉は、従業員にとって精神的負担が大きいものです。上司や経営陣に対して自己主張するのは、プレッシャーも大きく、遠慮して思ったことをいえないケースもあります。 弁護士に一任することで精神的負担から解放され、また、主張すべきことをしっかりと会社に伝えることができます。 弁護士による労働審判・裁判での解決 会社との交渉で解決しない場合は、労働審判や裁判で決着をつけることになります。 弁護士なしで労働審判を行うことも可能ですが、証拠や申立書の準備などが大変です。裁判の場合は、弁護士への依頼が必須といっていいでしょう。 会社側の不法行為や従業員が受けた損害を立証するというきわめて専門的な作業が必要になるため、弁護士のアドバイスに従って裁判を進めることになります。 労働審判は数か月、裁判は半年から1年以上かかると考えていいでしょう。長期戦となるうえ裁判の結果もわからないため、不安や焦りで大きなストレスを抱えることもあります。 裁判手続きを弁護士に一任してしまい、また裁判の進捗や見通しについて専門家の意見を聞くことで、労働者本人は安心して日常を過ごすことができます。 退職勧奨を弁護士に依頼するときの費用は? 弁護士の選び方と依頼方法 弁護士にはそれぞれ得意分野がありますので、労働問題に強い弁護士を選ぶことが重要です。弁護士を探すには、下記の方法が一般的です。 弁護士の探し方 知人や労働組合などから紹介してもらう インターネットなどで個別にさがす 弁護士検索サイトでさがす 知人や労働組合などが知っている弁護士を紹介してもらえれば安心でしょう。弁護士の人柄や交渉力など、インターネットでは見えない情報を得ることができます。 ただし、必ずしも労働問題を扱っている弁護士とは限りませんので、注意が必要です。 インターネットで検索した弁護士は、ホームページをみれば得意分野が掴めます。また、弁護士検索サイトでは得意分野別に弁護士を検索できるので、効率的に労働問題に強い弁護士を探すことができます。 希望する弁護士が見つかれば、まずは電話連絡してみましょう。そのあとの流れは弁護士がリードしてくれます。 30分程度の無料相談を設けている弁護士事務所もあるので、活用を検討してみましょう。 退職勧奨での弁護士費用はいくらになる? 実際に弁護士への依頼を検討するにあたって、いくら支払う必要があるのか弁護士費用が気になる人も多いと思います。 一般に、労働問題における弁護士費用には以下のものが含まれます。 費用内訳法律相談料弁護士への法律相談にかかる費用。依頼していなくとも利用できるのが一般的。無料~30分5000円程度。着手金弁護活動を開始する当初に発生する費用。定価で数十万円、または最終的な利益の●%+●万円、と定められていることが多い報酬金弁護活動の成果に応じて支払う報酬。最終的な利益の●%+●万円、と定められていることが多い。実費弁護活動をするにあたって実際にかかった費用。郵便代や切手代、交通費など。 法律事務所によって費用体系などは異なるため、法律相談の際に見積もりをとれれば、より具体的な金額の見通しがつきます。 また、労働審判や裁判を希望している場合は、着手金や訴訟費用が追加でかかる場合もありますので、その旨も伝えるとよいでしょう。 労働問題の解決には、素早い行動が必要不可欠です。 証拠がなくなってしまったり、時効が完成したりする可能性などもありますので、トラブルに巻き込まれたらすぐに弁護士に相談してみてください。 --- ### 退職強要とは?退職勧奨との違いと退職強要にあたる行為を解説! - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-03-05 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6319 - Categories: 退職・退職後の手続き 退職強要と解雇・退職勧奨との違いや退職強要にあたる行為を解説しています。退職を強要されたときの対処法もご紹介します。 「会社に退職を強制された」「退職強要と退職勧奨の違いとは?」 退職強要とは、会社が自社の従業員に対して、本人の意思に関係なく退職を強要することです。 会社から退職強要されてしまうと、強く反発できずに、会社から言われるがままに退職に応じてしまうこともあるでしょう。 退職強要は違法となる可能性が高いです。会社は正当な理由なしに、従業員を辞めさせることはできないからです。 そこで、今回の記事では、退職強要と退職勧奨の違いや違法性の判断基準を解説するとともに、退職強要されたときの対処法もご紹介します。 退職強要とは|退職勧奨との違い 退職強要と退職勧奨は法律の用語ではありませんが、それぞれどういった行為を指すものか確認しましょう。 退職強要と退職勧奨 退職強要とは、会社が自社の従業員に対して、本人の意思に関係なく退職を強要することです。 一方で退職勧奨は、従業員が自発的(従業員の意思で)に退職してくれるよう、会社が従業員にはたらきかけることです。 退職勧奨が従業員の意思を尊重して退職をはたらきかけるのに対し、退職強要の場合は従業員の意思を無視して退職を強要するという点で両者は異なります。 従業員に退職してもらうという目的は同じでも、その方法が違うということです。 関連記事 ・退職勧奨(勧告)とは?違法になるケースと対処法を解説! 退職勧奨は違法ではない 会社が自社の従業員に対して、退職勧奨をすること自体は、直ちに違法ではありません。 退職勧奨をされることは気分がいいものとは言えないかもしれませんが、退職勧奨に応じるか否かは従業員にゆだねられます。 退職勧奨はあくまでもお願いであるため、従業員は当然拒否することが可能です。 しかし、退職勧奨が行き過ぎて強制的、執拗な態様で行われた場合には、退職強要になります。 退職強要は違法|退職強要にあたる行為は? 退職強要は違法 退職勧奨が行き過ぎて不法行為に該当すると、その行為は退職強要になります。 不法行為とは、故意・過失により相手の権利を違法に侵害し損害を与えることです(民法709条)。 退職強要は違法となる可能性が高いです。 では、違法ではない退職勧奨と、違法である退職強要の境目をどう判断すればいいのでしょうか。 下記では、退職強要に該当する可能性がある行為についてみていきます。 退職強要に該当する会社の行為 退職強要に該当する可能性があるケースは以下のものがあります。 退職強要に該当する可能性があるケース 退職させるための面談を何度も行う 退職する意思がない従業員に執拗に退職を迫る 退職しないことを理由に仕事や待遇で不利益な取り扱いをする 退職を促すために虚偽の説明をする など 従業員の退職を促すためのパワハラ行為やセクハラ行為も、退職強要にあたります。 退職強要に該当する退職面談 会社が従業員の退職を促す主な方法の1つが退職面談です。下記の面談は、退職勧奨を行き過ぎた行為として退職強要に該当する可能性があります。 退職強要に該当するおそれのある退職面談 面談回数が多すぎる、長期にわたる 面談時間が長すぎる 従業員の名誉を傷つける発言、精神的苦痛を与える発言がある 会社側の参加者が多すぎる 従業員が希望する立会人の参加が認められない 裁判などでは退職面談が行われた状況を総合的にみて、従業員の自由な意思決定が妨げられていないか、従業員に精神的な損害を与えていないかを判断し、違法かどうか判断されます。 退職強要を受けたときの対処法|損害賠償請求も可能 ここでは、退職勧奨・退職強要を受けた場合の対処法について解説します。 退職強要に対しては「拒否」または「回答保留」 退職して生活に困るなどの事情がある場合は、退職を強要されても、「拒否」または「回答保留」にしましょう。 会社は正当な理由なしで従業員を辞めさせることはできないので、労働者は退職強要に応じる必要はありません。 会社には退職を強制する権利はなく、できることは勧奨だけです。 また、退職勧奨と引き換えに退職金を割増するなど優遇措置を提示されたり、辞めざるを得ないと誤解させるような表現で説得されたりすることもあります。 退職金の割増は良い条件のようにも思えますが、素直に応じるのは注意が必要です。 なぜなら、条件を飲んで自ら退職に応じてしまうと、会社都合退職ではなく自己都合退職になる可能性が高いからです。 自己都合退職の失業手当の給付日数は、会社都合退職が「最大330日」であるのに対し、自己都合退職は「最大150日」と短くなっています。 自己都合退職になってしまう不利益を回避するためにも、回答を保留して第三者に相談してから応じるかどうか判断したほうがいいでしょう。 退職届の撤回と損害賠償請求 会社からいきなり退職を迫られ、どうしていいかわからずに退職届を書いてしまって後から後悔するケースはよくあります。 執拗な退職強要を迫られ、やむを得ず退職届を出してしまった場合でも、退職届を提出しなければならない状況であった場合は、退職届の撤回が可能です。 また、違法な退職強要行為があって損害を受けたことが証明できれば、損害賠償請求を行うことも可能です。 退職強要で損害賠償請求を請求するためには、証拠が重要になります。 たとえば、面談した際の録音データや退職を強要されたメールや文書などのデータがあれば、有効な証拠となるでしょう。 退職勧奨・退職強要をされたときの相談窓口 退職勧奨や退職強要をされた場合は、労働問題について専門的な知識をもった人や機関に相談するのがいいでしょう。 労働基準監督署や労働局であれば無料で相談ができますが、退職強要が違法かどうかの判断を知りたい方は、弁護士への相談をおすすめします。 労働問題に詳しい弁護士であれば、法的知識や過去の判例などから、行われた退職勧奨が退職強要にあたるのか判断してくれます。 退職強要にあたる場合には、今後の対処法や損害賠償請求の方法などのアドバイスももらうことができるでしょう。 無料相談を受け付けている弁護士事務所もあるので、まずは一度相談してみてはいかがでしょうか。 --- ### 懲戒解雇されたら弁護士に相談!弁護士に相談すべき理由を解説 - Published: 2023-11-22 - Modified: 2025-01-29 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6313 - Categories: 不当解雇 懲戒解雇をされるとその不利益は大きく、弁護士に相談をする必要性が高いといえます。この記事では、懲戒解雇の基本的な説明から、弁護士に相談すべき必要性などを説明します。 懲戒解雇は、従業員が規律違反をしたことを理由に、制裁としてなされる解雇のことを指します。 従業員側に主たる解雇の理由があるという点で、普通解雇や整理解雇(人員整理のために行われる解雇)とは大きな違いがあります。 不当な懲戒解雇をされると不利益は大きいため、すぐに弁護士に相談することが重要です。 この記事では、懲戒解雇とはいったいどういうものか、懲戒解雇を弁護士に相談すべき理由を詳しく解説します。 懲戒解雇とは?懲戒解雇をされるとどうなる? 懲戒解雇とは? 懲戒解雇とは、就業規則上の懲戒事由に反したことを理由に、使用者(会社)が一方的に労働者との契約を解除することを指します。 解雇には、普通解雇・整理解雇(リストラ)・懲戒解雇の3つの種類がありますが、懲戒解雇は社内秩序を著しく害した労働者へのペナルティとして行われる解雇であり、普通解雇とは性質が異なります。 一般的には即日の解雇となり、解雇予告手当や退職金が一部または全部不支給となることも多くあります。 普通解雇や、退職金が割増されることもある整理解雇と比べると、労働者にとって不利になる可能性があります。 解雇の種類について詳しく知りたい方は『不当解雇とは?正当な解雇との違いや不当解雇の事例を解説』の記事もご覧ください。 懲戒解雇をされると転職・再就職が不利になる 懲戒解雇をされたことが発覚すると、転職・再就職にあたって不利になりうることは事実です。 懲戒解雇をされるほどの規律違反行為をしてしまったことを理由に、雇用に慎重になる企業は多くあります。 実際に懲戒解雇が新たな就職先に発覚してしまう経緯としては、以下のようなものがあります。 懲戒解雇が発覚してしまう経緯 履歴書の賞罰欄から発覚する 退職証明書の提出を要求される 面接時に前企業の退職理由を質問される 履歴書の賞罰欄に記載する 履歴書には賞罰欄が記載されているタイプがあります。面接を受ける企業やエージェントから履歴書を指定され、賞罰欄が記載されていた場合には、記載しなければならない可能性もあります。 なお、賞罰欄に記載しなければならない「罰」とは刑法犯罪のことです。職場で発生しやすい罪は、業務上横領罪や窃盗罪などです。有罪判決を受けて懲戒解雇された場合には正直に記載しましょう。 なお、懲戒解雇された事実が入社後に発覚すると、経歴詐称として別個の懲戒事由となる可能性もあります。 退職証明書の提出を要求される 退職証明書は、退職する会社から必ず交付されるものではなく、労働者が交付を求めた場合に交付が義務づけられている書類です。 転職・再就職する企業によっては、退職証明書の提出を求めてくることがあります。懲戒解雇の旨が記載されていた場合は、懲戒解雇された事実が発覚してしまうでしょう。 面接時に前企業の退職理由を質問される 質問に対して懲戒解雇されたと回答すれば、当然ながら懲戒解雇が発覚します。 しかし、面接時の質問に対して「懲戒解雇されていない」と答えるのは経歴詐称になるので控えましょう。 もっとも、懲戒解雇されたとしても、再就職して人生をやり直すことは不可能ではありません。懲戒解雇後に再就職できた人も多くいます。 参考サイト 以下のサイトでは、実際に懲戒解雇から社会復帰された方の体験談などをまとめています。 ぜひ参考にしてみてください。 前科・逮捕・懲戒解雇からの社会復帰を応援するメディア|人生やり直しラボ 懲戒解雇が違法となる条件とは? 就業規則に懲戒種別・事由の記載がない 使用者が労働者を懲戒するには、あらかじめ就業規則に懲戒の「種別」と「事由」を定めておく必要があります。 種別とは実際になされる懲戒処分の種類、事由とは実際にこのような非違行為をしたら懲戒処分がなされる、という具体的な行為のことです。 具体的には、就業規則に「無断欠勤●日以上をすると懲戒処分」という記載がない場合、無断欠勤したことを理由に懲戒処分をすることはできない、ということになります。 懲戒解雇が懲戒権の濫用にあたる 使用者の懲戒権の行使は、対象となる労働者の行為の性質・態様その他の事情に照らして、それが客観的に合理的理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、懲戒権の濫用として無効となります(労働契約法15条)。 一般に、懲戒権の濫用にあたるかどうかは以下の要素を考慮して判断されます。 労働者の非違行為の性質、態様、程度 就業規則の懲戒事由への該当性 情状されるべき事情 懲戒権の行使に至るまでの過程 同様の事案における懲戒状況 「非違行為」とは、就業規則などの会社で定められているルールを違反する行為のことです。 たとえば、就業規則に記載のないような軽微な非違行為の場合は、その行為により企業秩序を乱したとまでは考えられず、懲戒解雇となる客観的に合理的な理由がないと言えます。 また非違行為を会社が認識しつつも一度も注意していなかったにもかかわらず、ある日突然懲戒解雇を告げてくるような場合は、その懲戒解雇は社会通念上相当ではないと判断されやすくなります。 懲戒解雇までの適正な手続きが踏まれていない 懲戒処分は、制裁罰としての性格を持つため、適正な手続きを踏む必要があります。 多くの企業では、懲戒委員会や労使協議会などでの検討を行う、当事者に弁明の機会を与えるなどの手続きを経た上で処分を決定するという運用を取っています。 懲戒解雇であるにもかかわらず、その理由や該当非違行為を告知されないなどの場合は、適正な手続きが踏まれておらず、懲戒処分は無効になる可能性があります。 実際に懲戒解雇になりうる懲戒解雇事由5選 ①重要な経歴詐称 会社に入社する際に、学歴や職歴、犯罪歴などを偽った場合、懲戒解雇事由に該当する可能性があります。 ただし、使用者による能力や人物評価を妨げ、継続的な労働契約関係における信頼関係を損なうような重要な経歴の詐称があった場合にのみ、懲戒解雇事由に該当すると考えられています。 なお、経歴の詐称は、高く詐称するだけでなく、低く詐称する場合も懲戒事由に該当しうることになります。 ②職場規律違反 会社物品の窃盗や、横領行為、セクハラ、暴行行為などは、職務規律違反行為として懲戒解雇事由に該当する可能性があります。 ただし、職場規律を違反している場合も、企業秩序がどの程度害されているのかを検討しなければなりません。 ③無断欠席等 無断欠席等があった場合も、懲戒解雇事由に該当しうるといえます。 しかし、少しの遅刻や1回の欠席ですぐに懲戒解雇に該当するというわけではありません。 およそ2週間を超える無断欠勤、けん責や戒告を行っても欠勤が繰り返されるなど、企業秩序への影響の有無と程度を総合的に考慮して判断をすることになります。 ④会社外での行為 まず、原則として使用者は、労働者の私生活まで管理する権限はありません。 就業時間外で何をしようとも労働者の自由であり、使用者から口出しをされることは基本的にないです。 しかし、企業の円滑な運用に支障をきたすおそれがあるなど、企業秩序に関係する事由の場合は、企業秩序維持のために懲戒解雇をすることも許されると考えられています。 勝手に人の家に入って住居侵入で罰金刑を受けた人に対する懲戒解雇に対し、懲戒解雇は無効であると判断した事例もあります。 ⑤二重就職・兼業規制 現在は、本業の他に副業をしている方も数多くいると思います。 裁判例では、副業や兼業を懲戒事由にすることの相当性はかなり厳格に判断されます。 まず、二重就職・兼業を全面的に禁止する就業規則は合理性を欠くが、これを許可制にする場合は、合理性が認められると判断されています。 その上で、二重就職により、本業に対して具体的な支障が生じる場合や競合する会社への就職により、本業に対する背信行為と認められる場合に限定をして、懲戒事由に該当すると判断されます。 懲戒解雇をされたら弁護士に相談すべき? 懲戒解雇を弁護士に相談をする必要はある? 懲戒解雇をされた場合、退職金の支給が無い可能性が高く、その上、即時解雇になってしまえば、明日からの生活の維持もままならなくなります。 このような不利益の大きさに鑑みれば、弁護士に依頼をして、迅速な手続きをとってもらう必要性があります。 また、会社が労働者を懲戒解雇するためには、懲戒解雇事由が必要になります。 ご自身の受けた解雇が、あまりにも懲戒処分として重すぎる、懲戒権の濫用にあたるとお考えの場合は、弁護士に相談してください。 弁護士は、労働者が懲戒解雇された事由と置かれた状況と踏まえ、今後どのように対処するべきかのアドバイスをすることができます。 弁護士に相談する前に準備すること 弁護士に相談する前に、解雇理由証明書の発行と就業規則を確認しておきましょう。 解雇理由証明書には、文字通り解雇に至った理由の記載がかかれた書面です。 解雇された労働者が請求すれば、会社は解雇理由を証明する書類を発行することが法律で義務付けられています。弁護士としても、解雇理由が具体的にわかれば、懲戒事由の該当性を判断できます。 また、就業規則には懲戒事由等の記載が考えられます。 就業規則に懲戒種別・事由の記載がない場合は、懲戒解雇が違法となる可能性もあります。 懲戒事由が記載された部分の就業規則のコピーなどを取っておくといいでしょう。 どのような弁護士に懲戒解雇の相談をするべき? 弁護士を選ぶ際には、労働問題を専門的に扱っている弁護士に相談しましょう。 懲戒解雇に関しては、労働者側と企業側の双方の意見が対立することも多く、労働問題を専門的に扱っている弁護士でないと納得のいく解決が図れない可能性もあります。 無料で相談を受け付けている弁護士事務所もあるため、一度相談してみてはいかがでしょうか。 関連記事 ・不当解雇は弁護士に相談すべき?相談するときのポイントを解説 --- ### 雇い止めは弁護士に相談!弁護士に相談するメリットと対処法を解説 - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-06-27 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6303 - Categories: 不当解雇 雇い止めに遭ったときの弁護士に相談するメリットと対処法を解説。雇い止めが無効になるケースについて解説しているので、雇止めされてお悩みの方は弁護士に相談してください。 雇い止めとは、有期雇用契約について更新せず、期間満了で契約を終了することを言います。 期間があらかじめ定められている契約の場合は、期間満了で契約を終了することは問題ありません。 しかし、雇い止めに関して裁判になっているケースは多くあり、雇い止めが無効になるケースも存在します。 そこで、この記事では、雇い止めを弁護士に相談するメリット、雇い止めに遭ったときの対処法を解説します。 雇い止めを弁護士に相談するメリット 雇い止め問題を弁護士に相談すると、以下のようなメリットがあります。 雇い止めを弁護士に相談するメリット 雇い止めが無効になるケースか判断してもらえる 交渉の手間とストレスを低減できる 労働審判や訴訟も依頼できる 雇い止めが無効になるケースか判断してもらえる 弁護士に相談するメリットとして、雇い止めが無効になるケースかどうか判断してもらえることがあげられます。 雇い止めは通常の解雇以上に要件が複雑で、必ずしも無効になるわけではありません。 弁護士であれば、雇い止めを受けた状況や過去の判例などから無効として争えるのか判断することができます。 また、雇い止めとして争えると判断した場合には、争うために何が必要か、どのような手順を踏めばいいのか適切なアドバイスをもらうことができるでしょう。 交渉の手間とストレスを低減できる 雇い止めが無効になるケースでも、会社がすんなり認めるとは限りません。通常は交渉が必要になります。 しかし、契約社員が会社と直接交渉を行っても、立場が低いことから会社も真剣に取り扱ってくれない可能性があります。 そのため、不利な状況に追い込まれて、そのまま泣き寝入りして退職を余儀なくされるケースも多いです。 一方、弁護士に交渉を任せれば、会社も真摯に対応してくれる可能性が高まります。 また、弁護士が法的な知識を基に交渉を行うので、有利に交渉を進めやすくなります。 さらに、精神的にも負担がかかる会社との交渉は、弁護士に一任できるので、精神的な負担の軽減ができることも大きなメリットでしょう。 労働審判や訴訟も依頼できる 無効な雇い止めをされた場合、交渉で解決すればいいですが、必ずしも交渉で解決するとは限りません。 交渉が決裂したら、労働審判や訴訟の手続きを検討していくことになります。 こうした手続きは適切な証拠の収集や主張などが求められるため、専門家によるサポートが必要不可欠です。 弁護士であれば、労働審判や訴訟に移行した場合でも問題なく対応できます。万一企業側との交渉が決裂しても、弁護士に任せていれば安心感があるでしょう。 なお、弁護士以外の相談先としては労働基準監督署や総合労働相談コーナーがあります。 弁護士以外の相談窓口について知りたい方は『雇い止めの無料相談窓口3選!拒否できるケースと対処法』の記事をご覧ください。 雇い止めが無効になるのはどんなとき? 雇い止めは自由に認められるものではありません。 有期雇用契約の労働者にとって、契約を更新してもらえないと生活にかかわる重大な問題となるからです。 一定のケースにおいては、雇い止めが無効とされて企業と労働者との労働契約が存続する可能性があります。 雇い止めが無効になるケース 雇い止めに関する条文は労働契約法19条に明記されていますが、更新回数や契約期間の数値については具体的に決められていません。 個々の状況によって総合的に無効・有効が判断されることになります。 以下のようなケースでは、雇い止めが無効になる可能性があります。 無効となり得る雇い止めのケース 雇用が長期間に及んでいるなど、契約がほぼ無期雇用者と変わらない場合 これまでに何度も契約が更新されているなど、契約更新について合理的な期待が生じている場合 雇用が継続していくことについて労働者の期待を保護する必要があるような場合には、雇い止めが無効となり得る可能性が高まります。 雇い止めが無効になる具体例 より具体的に雇い止めが無効になる例をみてみましょう。 雇い止めが無効になるケースの具体例 これまで何度も当然のように労働契約が更新されてきて、社内では正社員と同じ仕事をしているのに、不景気になったら突然雇い止めをされた これまで契約の更新時には、特段の手続きをせず当然のように契約が更新されてきたのに今回に限って更新を拒絶された 企業から「契約は更新するので会社に貢献してほしい」と説明されており、それを信じてはたらき、実際に結果を出してきたのに契約を更新してもらえなかった 上記のように「契約が今まで何度も更新されてきた」「企業側から更新を前提とした取扱いをされてきた」「正社員と変わらない仕事をしている」などの状況があると、雇い止めが「無効」と認められやすくなります。 雇い止めが無効になった場合のメリット 雇い止めが無効になった場合のメリットを解説します。 職を失わない 雇い止めが無効になると、労働契約が継続するため、労働者としては職を失わずに済みます。 これまで通り出社して業務をこなし、給料を受け取れるので生活が守られるでしょう。 未払い賃金を請求できる 雇い止めによって給料が払われなかった場合、未払い賃金も請求可能です。 雇い止めをされた場合、雇い止め無効を主張し、和解や合意がなされるまでの賃金を請求することになります。 たとえば、雇い止めされた日から半年後に、「実はその雇い止めは無効だった」と合意がなされたとします。 雇い止めが無効となると、雇い止めされたことになっている日から合意の日まで実際は従業員としての地位が継続していたことになり、その期間の給料は未払いということになります。 そのため、雇い止めされてから合意がなされるまでの期間の賃金を請求することができるのです。 慰謝料請求できる可能性もある セクハラを拒絶したら報復措置で雇い止めに遭った場合など、違法性の強いケースでは企業側へ慰謝料を請求できる可能性もあります。 慰謝料の請求にあたっては法律的な主張・立証の知識が必要となり、特に弁護士をつける必要性が高い解決方法です。 違法な雇い止めに遭ったとき、泣き寝入りする必要はありません。困ったときには弁護士に相談しましょう。 雇い止めに遭ったときの対処法 有期契約の労働者は、不景気や収益悪化などの事情が発生したときに雇い止めに遭う可能性が高いです。 雇い止めをされて困ったときには、以下のように対応しましょう。 すぐに契約を更新したいなどと申し入れる 雇い止めの不当性を主張する際には、要件として「契約更新の申し入れをしている」という事実が必要です。 内容証明郵便を利用することで、契約更新申し入れた事実を証拠として残すことができます。 その後、なぜ雇い止めをするという決断に至ったのか、上司や人事の担当者に確認してください。 雇い止めの理由を知ることができれば、雇い止めが無効になるケースかどうかの判断材料になります。 証拠を集める 雇い止めの理由を確認したら、雇い止めに関する証拠を集めましょう。 雇い止めが無効と判断されるには、「これまで反復継続して契約が更新されてきた」「会社から契約更新に期待を持たせる言動があった」「正社員と同じような仕事をしてきた」などの事情が必要です。 その事情を証明する証拠を集めなければなりません。証拠には以下のようなものが挙げられます。 雇い止めであることを証明するための証拠 雇用契約書 労働条件通知書 企業から契約更新に関する説明をされた際にもらい受けた文書やメール これまで契約が更新された際に作成された契約書などの文書 会社に契約の更新を求める 証拠を集めたら、会社に契約の更新を求めましょう。 雇い止めが法的に無効になる可能性を示しつつ、交渉を進めてください。自分で話をするのが難しい場合は、この段階で弁護士に依頼することをおすすめします。 なお、交渉で解決できない場合には、労働審判や訴訟の手続きに移行することになります。 雇い止めで困ったら弁護士に相談! 雇い止めでお困りの方は、弁護士に相談することが重要です。 労働契約を更新してもらえなかったときには、まずは雇い止めが無効になるケースかどうかを弁護士に相談し、その後の対策を練りましょう。 雇い止めで困ったときには、自分1人の力で解決できないケースが多々あります。 1人で抱え込まず、法律の専門家である弁護士の力を頼ってみてください。 --- ### 不当解雇を相談・依頼するときの弁護士費用相場は?対処法も解説 - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-04-24 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6300 - Categories: 不当解雇 不当解雇相談・依頼するときの弁護士費用相場を解説。相談料は1時間あたり1万円前後、着手金は30万~50万円が相場です。不当解雇でお悩みの方は弁護士に相談してください。 「不当解雇を弁護に依頼する費用は?」「不当解雇に納得がいかないから弁護士に相談したい」 今回の記事では、不当解雇を相談・依頼するときの弁護士費用相場や不当解雇された場合の対処法について解説します。 不当解雇の弁護士費用相場は、着手金が30万〜50万円、成功報酬が請求額の10~15%前後です。 ただし、弁護士費用は事務所や解決手段によっても異なります。 弁護士費用を抑える方法についても解説しているので、不当解雇で弁護士に相談・依頼するかお悩みの方は、ぜひ最後までご覧ください。 不当解雇における弁護士費用の相場は? 相談料:初回相談は無料の場合も多い 相談料は一般的にタイムチャージ制になっており、不当解雇の相談費用の相場としては、1時間あたり1万円前後となっています。 相談料とは、弁護士に法律相談をした場合にかかる費用です。 なお、初回相談は無料に設定している弁護士事務所も多いです。 着手金:30万〜50万円 不当解雇の弁護士費用として、着手金の相場は30万〜50万円です。 着手金とは、弁護士に事件を依頼するときにかかる費用のことです。事件の結果にかかわらず、費用が発生します。 事務所によっては、請求金額(会社に支払いを請求したい金額)の数%を着手金として設定している場合もあります。 また、完全成功報酬型を採用している弁護士事務所もあります。 完全成功報酬型は、着手金を一切とらずに和解や裁判で勝訴して得られた慰謝料などの解決金から成功報酬をとるものです。 完全成功報酬型を採用している弁護士事務所を選べば、まとまった着手金を支払う必要がないことに加え、費用倒れのリスクを心配せずに弁護士への依頼ができます。 依頼した弁護士が会社との交渉や法的な手続きを行った結果、不当解雇と判断されずに金銭を回収できなかったとしても、労働者の負担はないということです。 ただし、事件が解決したときの成功報酬の割合や金額が高めに設定されていたり、手数料などの別の名目で金銭が請求されたりする可能性もあるので注意しましょう。 成功報酬:請求額の10~15%前後 不当解雇を弁護士に依頼した際の成功報酬の相場は、請求額の10~15%前後です。 成功報酬とは、弁護活動結果、依頼人が経済的な利益や納得のいく結果を得られた場合に、弁護士に報酬として支払う費用のことです。報酬金や弁護士報酬と呼ばれることもあります。 成功報酬は、弁護活動の結果に対して支払う費用です。 たとえば、不当解雇を撤回するように弁護士に依頼したところ、弁護士の活動によって会社が解雇を撤回した場合は成功報酬が発生します。 一方、弁護士が尽力したものの、会社が解雇を撤回せず、何の利益も得られなかった場合は、依頼人にとって満足できる結果ではないので、成功報酬は発生しません。 その他費用 着手金や成功報酬以外にも、日当や実費、書面作成費などがかかることがあります。 その他費用 日当:1回につき1〜3万円前後 書面作成費:5万円前後 実費:解決手段などによって異なる 日当とは、弁護士が出張したときに必要となる費用のことを指します。会社との交渉や裁判所へ出向く際などに発生します。1回につき1〜3万円前後が相場です。 書面作成費は、会社と交渉するための書面(内容証明など)を弁護士に依頼した場合にかかる費用です。5万円前後が相場です。 実費は、手続きを進める上で必要となる、切手代や印紙代といった費用のことを指します。事務所や解決手段によっても費用が異なります。 もっとも、日当や実費は、不当解雇の解決までの期間が長くなるにつれて高額になります。 不当解雇は裁判などに発展すると、解決までに1年以上かかることもあります。そのため、不当解雇を弁護士に依頼する際には、想定される費用を事前に確認しておくといいでしょう。 不当解雇の弁護士費用を抑えるためには 不当解雇の弁護士費用を抑えるためには、以下のような方法が挙げられます。 不当解雇の弁護士費用を抑える方法 無料相談をしている弁護士事務所に相談する 成功報酬が低い弁護士事務所を選ぶ 無料相談をしている弁護士事務所に相談する 無料相談をしている弁護士事務所に相談すれば、弁護士費用を抑えることができます。 依頼する弁護士を決める際には、複数の事務所に相談し、見積もりを取ることが重要です。 有料相談を実施している事務所に複数相談すれば、その分費用がかかってしまいますが、無料相談をしている弁護士事務所であれば費用の心配なく相談できるでしょう。 成功報酬が低い弁護士事務所を選ぶ 成功報酬が低い弁護士事務所を選ぶことも選択肢の一つです。 成功報酬が低い事務所を選べば、結果的に弁護士費用を抑えることができます。 成功報酬の割合は、解決方法などによっても変動することが多いので、直接相談した際に確認すべきです。 ただし、直接相談する前の事務所選びの段階では、事務所のHPに記載されている金額を参考にするといいでしょう。 不当解雇の事例と弁護士に相談するメリット 弁護士に相談すべき不当解雇の事例 解雇の理由が客観的にみて合理的でない場合は不当解雇にあたる可能性が高いため、弁護士に相談すべきです。 具体的には以下のようなケースが考えられます。 不当解雇になる例 数回遅刻したら、勤務態度が悪いと言われて解雇された 成績が悪い、ノルマをクリアできないから解雇された 妊娠、出産を理由に解雇された 労働組合に加入したら解雇された 労働基準法違反を労働基準監督署に申告したら解雇された ただ、上記はあくまで一例であり、どのようなことが不当解雇となるかはケースバイケースで非常に難しい判断が求められます。近しい例があった方は、一度弁護士に相談することをおすすめします。 不当解雇を弁護士に依頼するメリット 不当解雇を弁護士に依頼するメリットは、不当解雇にかかわる会社との交渉や対応を弁護士に代理人として一任できる点です。 裁判だけでなく、内容証明郵便など書類の作成や労働審判などの話し合いも代理人として行ってくれます。 労働者自身は不当に解雇された会社との対応をしなくて済むため、心理的な負担も少なく転職活動や休養に専念できるでしょう。 また、弁護士を通して交渉することで、会社側にも本気度が伝わる為、実際は裁判までいかずに解決することも多いです。 関連記事 ・不当解雇は弁護士に相談すべき?相談するときのポイントを解説 不当解雇された場合の対処法 ここでは、不当解雇された場合の対処法を解説します。 会社から解雇理由証明書をもらう まず、不当解雇された場合にやるべきことは、会社から解雇理由証明書を発行してもらうことです。 解雇理由証明書を発行してもらうのは、解雇理由を明らかにするためです。 解雇理由証明書は、労働者が請求すれば、会社は発行する義務があります。 解雇理由証明書の記載は、交渉時や裁判時に解雇理由が解雇の要件を満たしているか、合理的であるかを判断する際の証拠として役立ちます。 関連記事 ・解雇理由証明書を請求する方法は?請求するために知っておくべきことを解説 就業規則をコピーする 就業規則には、必須事項として解雇事由が記載されています。 解雇理由証明書をもらったら、就業規則を確認し解雇事由について記載されている箇所をコピーしてください。 解雇理由が不当かどうか、就業規則と照らし合わせて判断できます。 解雇理由証明書の解雇理由が、就業規則の解雇事由と一致していなければ、不当解雇の可能性が高いと言えるでしょう。 また、解雇に関する上司とのやり取りの音声録音やメモ、メールなどもあれば保存しておくと、証拠として役立つ可能性があります。 関連記事 ・就業規則を見たことがない!就業規則のない会社は違法? 内容証明郵便を送る 不当解雇である証拠を集めたら、内容証明郵便で会社に解雇無効を求めましょう。 内容証明郵便とは、文書の内容と誰から誰に差し出されたかを郵便局が証明してくれる郵便のことです。 さらに、配達証明書つきの内容証明郵便で送れば配達記録も残るので、会社側からそのような郵便は届いてないと言われるのを防ぐことができます。 また、この段階で本来は貰えたはずの解雇後の賃金を請求することもできます。 内容証明郵便は、ご自身で書くことも可能ですが、不安であれば、費用はかかりますがこの段階で弁護士に代筆を依頼することもできます。 労働審判を申し立てる 内容証明郵便を送っても会社側からの反応がなかった場合は、労働審判を申し立てを検討すると良いでしょう。 労働審判は、原則3回以内の期日で終了するため、平均2〜3か月程度で解決できるところが大きなメリットです。 また、調停での決定や審判内容は、裁判上の和解と同じ効力があり会社側が応じない場合は強制執行する事も可能です。 ただし、ここで会社側との話し合いがまとまらずに、出された審判に会社側が納得せず異議を申し立てた場合は訴訟手続きに発展します。 関連記事 ・労働審判とは?制度の内容や手続きの流れを弁護士がわかりやすく解説 裁判を起こす 会社との話し合いや労働審判で解決しない場合は、訴訟をして解雇の無効を裁判で争うことになります。 互いの主張が異なっていると裁判が長期化する可能性も高く、労働者には大きな負担となります。 不当解雇で裁判まで発展するようなケースは、とくに法的な知識と経験が求められます。労働問題に強い弁護士に依頼すれば、不当解雇における適切な法的主張や証拠集めなどを任せることができるでしょう。 まとめ 不当解雇を弁護士に依頼する場合、相談料や着手金、成功報酬などの費用が一般に発生します。 しかし、無料相談や完全成功報酬制を採用している事務所に相談・依頼すれば、弁護士費用を抑えることができます。 不当解雇でお悩みの方は、弁護士に相談することが重要です。無料相談をしている弁護士事務所に相談してみてはいかがでしょうか。 --- ### 固定残業代とは?制度のメリット・デメリットや残業代未払いの対処法 - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-06-21 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6293 - Categories: 残業代請求 固定残業代の支給がされてたとしても、超過分の未払い残業代は請求することが可能です。固定残業代制のメリット・デメリットや未払い残業の対処法を解説します。 「固定残業代制とはどういう制度?」「固定残業時間を超過した残業代が支払われない」 固定残業代制とは、毎月払われる給与の中に、あらかじめ一定時間の残業代を含んで支給する制度です。 固定残業代制は労働者にとってもメリットがある制度ですが、長時間労働の温床となり残業代未払いのトラブルが発生することもあります。 この記事では、固定残業代制の制度の内容やメリット・デメリット、固定残業時間を超過した残業代が未払いになっている場合の対処法を詳しく解説します。 固定残業代制度とは まず、固定残業代制度とはどのような制度なのでしょうか。 固定残業代制度とは 固定残業代制とは、毎月払われる給与の中に、あらかじめ一定時間の残業代を含んで支給する制度です。 みなし残業代制と呼ばれることもあります。 具体的には、「月給24万円(5万円の固定残業代含む)」「月30時間分の残業代として固定残業手当5万円を支払う」といったものが典型例です。 上記の例の場合、5万円が固定残業代として定められているため、月に1時間しか残業しなくても30時間ちょうど残業しても、5万円が給料に含めて支払われることになります。 どうして固定残業代制度が採用されているのか 固定残業代制度が導入されるのは、企業にとっていくつかのメリットがあるからです。 たとえば「残業代計算が不要になる」「人件費が把握しやすくなる」ことが挙げられます。 残業代の計算は複雑です。従業員が多い企業では、毎月の残業代を計算する際に時間を割いてしまうことも考えられます。 固定残業代制にすることで、残業代を計算する業務を減らすことができるうえ、給与の上り幅を想定できることで人件費を把握しやすくなるのです。 労働者からみた固定残業代制のメリット 固定残業代制を導入する企業のメリットは解説しましたが、労働者からみたメリットもあります。 労働者からみた固定残業代制のメリットは以下が挙げられます。 残業しなくても固定残業代をもらえる 固定残業代制は、残業の有無にかかわらず、毎月一定額の残業代が支給される制度です。 残業をしなくても残業代が振り込まれるため、残業をしなければお得感があると言えます。 また、繁忙期・閑散期にかかわらず収入が安定することから生活設計が立てやすく、とくに家族がいる人にとっては安心感につながります。 業務を効率化してワークライフバランスの実現 固定残業代制がある企業に勤める労働者は、業務を効率化できれば、ワークライフバランスを実現できる可能性が高まります。 業務を効率化して残業時間を削減すれば、プライベートの時間を長く確保できるようになるからです。 固定残業代制であれば、残業時間を減らして帰宅しても収入は維持できるので、よりプライベートの時間を充実させることができるでしょう。 公平性が確保される 固定残業代制であれば、一律の残業代が支払われるため、従業員間の不公平感が生じにくいというメリットがあります。 残業代がしっかりと支払われる企業で給与が同じ場合、残業をしないで帰宅した人よりも、残業をした人の方が給与が高くなります。 この場合、定時で仕事を終わらせた方が給与が下がってしまうという事態が生じかねません。 固定残業代制であれば、毎月一定の残業代が支払われるため、公平性が確保されて労働者にとっても業務を効率化して働きやすい職場環境になるといえるでしょう。 労働者からみた固定残業代制のデメリット 労働者からみた固定残業代制のデメリットは、以下が挙げられます。 基本給が低くなる 固定残業代が含まれると、基本給が低く設定される場合があります。 賞与や退職金などの計算ベースが低くなるため、長期的に見ると損をする可能性があります。 長時間労働の温床となる 企業によっては、固定残業代を前提とした業務量設定により、長時間労働が常態化してしまう可能性があります。 長時間労働で健康を損なうリスクが高くなり、ワークライフバランスの悪化にもつながります。 超過した分の残業代が支払われない 固定残業時間を超過した分の残業代が支払われない可能性があります。 とくにブラック企業では、超過した残業代が支払われないことが多いです。 あらかじめ設定された固定残業代を払っていることを理由に残業代を支払わなかったり、勤怠管理システムを固定残業時間内に抑えるように改ざんさせたりする企業もあります。 関連記事 ・ブラック企業とは?特徴と見極めるポイントを弁護士が解説 固定残業を超過した残業代が支払われないことは違法 あらかじめ設定された固定残業時間を超過した残業代が支払われないことは違法です。 固定残業時間を超えた残業をした場合には、労働者は超過分の残業代を請求する権利があります。 たとえば、固定残業代として30時間分の残業代の支払いを受けており、現実には毎月50時間程度の残業をしていた場合を想定しましょう。 この場合、残業代は30時間しか支払われていないことになるため、労働者は超過した20時間分の残業代を会社に請求することができます。 固定残業代を計算する方法については『固定残業代の計算方法を弁護士が解説!超過分の残業代は請求できる!』の記事で詳しく解説しています。 固定残業代の支払いをしていれば、超過部分について支払いを免れるものではありません。 現実に、『関西ソニー販売事件』(大阪地裁判昭. 6310. 26)、『三好屋商店事件』(東京地判昭63. 5. 27など、残業代の支払いをしなければならないと判決が出た多数の裁判例があります。 固定残業の超過分が支払われないときの対処法 固定残業時間を超過した分の残業代が支払われないときには、どういった対処法があるのでしょうか。 会社に固定残業超過分の支払いを打診する まず、個別の金銭請求とは別に、固定残業時間を超過した分の残業代の支払いを打診する方法が考えられます。 会社が事務処理のミスに気付いていないなどの場合には、有効な対応策になるでしょう。 その場合は労働者自身で、未払い残業代を計算して、請求する必要があります。 しかし、ほとんどのケースでは違法であることを認識しながら残業代の支給をしていないため、現実的な方法とはいえません。 関連記事 ・固定残業代の計算方法を弁護士が解説!超過分の残業代は請求できる! 労働基準監督署に申告をする 固定残業時間を超過した分の残業代を支払わないことは、労働基準法違反です。 労働基準法違反については、厚生労働省の出先機関である労働基準監督署が取り扱いをしています。 会社に対して立ち入り検査をすることができるなどの権限を持っているので、違反があることを直接調べてもらうのが理想です。 しかし、現実的には労働基準監督署は大量の案件を抱えている状態ですので、労働基準法違反の事実についての証拠を呈示して申告をする必要があります。 労働基準監督署による介入は、会社に労働基準法などの労働法規を守るよう是正・勧告するために行われます。 個々の従業員の金銭請求(この場合は未払いの残業代の支給を求めて争う)はできません。 会社に直接残業代を請求する 会社に対して、労働者が直接交渉をして、残業代の支払いを求める方法もあります。 未払いの残業代請求を受けた会社側は、「学ぶ立場なんだから残業代なんて出ない」「勝手に残業をしたものには払えない」など、さまざまな反論をしてくる可能性があります。 会社からの反論にも、適切な対処ができるように対策を取っておく必要があります。 関連記事 ・未払い残業代請求の方法|証拠や時効など基礎知識を解説 弁護士に相談する 固定残業代制の残業代未払いに関してお悩みの方は、弁護士に相談することがおすすめです。 弁護士は法律の専門家であり、高度な知識を持っています。その知識や判例をもとに、固定残業代や証拠の収集に関するアドバイスをもらうことができるでしょう。 また、弁護士に依頼することで、会社との交渉を任せることができ、未払い残業代が回収できる確率を高めることができます。請求・訴訟に関する技術の部分でもサポートを受けることができます。 関連記事 ・残業代請求を弁護士に依頼する場合の費用相場は?弁護士に依頼するメリット5選! まとめ このページでは、固定残業代制度の概要とメリット・デメリット、固定残業時間を超過した分の残業代が支払われない場合の対処法を解説しました。 固定残業代は労務管理で便利な一方、残業代のトラブルが発生しやすい制度です。 「残業代未払い問題を解消したい」「固定残業時間の超過分の残業代を請求したい」とお考えの方は、弁護士に相談しましょう。 無料相談を受け付けている弁護士事務所もあるので、一度相談してみてはいかがでしょうか。 --- ### 不当解雇で会社を訴える!裁判の流れと費用を解説 - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-06-06 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6284 - Categories: 不当解雇 不当解雇をされた際には、解雇の撤回や解雇予告手当などの金銭を請求できる場合があります。不当解雇でお悩みの方は、弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。 「不当解雇してきた会社を訴えたい」「会社を訴えたいが、どうすればいいかわからない」 不当解雇で会社に対して訴訟を起こしたいと思っても、どのような手順でどれだけ費用がかかるのか、わからないことが多いと思います。 今回の記事では、不当解雇で会社を訴える場合、どのような補償を請求できるのか、裁判の流れはどうなるのか、裁判でかかる費用を解説します。 不当解雇で会社を訴えることができるケース 不当解雇とは、労働基準法などの労働法の規定や会社の就業規則などに違反して、従業員の意思に関係なく会社が一方的に労働者を解雇することです。 不当解雇の種類は、「法律で禁止されている解雇」と、「解雇権濫用にあたる解雇」に分けることができます。 法律で禁止されている解雇 労働基準法などで禁止されている解雇を会社が行った場合は、不当解雇となります。法律で禁止されている主な解雇は以下の通りです。 業務上の疾病による休業期間、産前産後の休業期間の解雇 労働基準法19条では、「業務上災害のため療養中の期間とその後の30日間」「産前産後の休業期間とその後の30日間」の解雇を禁止しています。 労働組合法で禁止されている解雇 労働組合の組合員であることなどを理由とする解雇が該当します。(労働組合法7条1項)。 男女雇用機会均等法で禁止されている解雇 女性労働者が結婚・妊娠・出産・産前産後の休業をしたことなどを理由とする解雇が当てはまります(男女雇用機会均等法9条2項、3項)。 育児・介護休業法で禁止されている解雇 労働者が育児・介護休業などを申し出たこと、または育児・介護休業などをしたことを理由とする解雇が該当します(育児・介護休業法10条、16条)。 労働基準監督署への申告を行ったことを理由とする解雇 労働基準監督署への申告をしたことを理由とする解雇は禁止されています(労働基準法104条2項)。 解雇権濫用にあたる解雇 会社が解雇権を濫用した場合は、解雇は無効となります。 労働契約法16条において「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効とする」と規定されているからです。 ただし、裁判でも「客観的に合理的な理由」や「社会通念上相当」をどう判断するかは度々問題になります。 解雇権を濫用したと考えられるケースには、以下のようなものがあります。 新入社員の「能力不足、成績不良」を理由とした解雇 新入社員が十分な教育・訓練を受けないまま業務に就き、うまく仕事ができなかった場合、「能力不足、成績不良」は客観的合理的な理由にはなりません。これを理由に解雇すれば不当解雇になります。 就業規則にない事由での懲戒解雇 就業規則にない事由で懲戒解雇することは、不当解雇にあたります。労働基準法89条で、懲戒処分を行うには懲戒事由を就業規則に記載することを定めているからです。 たとえ、業務上横領など悪質な犯罪行為であっても、就業規則に定めがなければ懲戒解雇も退職金の支払い拒否もできないのです。 財務内容に問題のない会社の整理解雇 会社の売上や利益が減少していても、財務内容に余裕がある場合や黒字を確保している場合、業績不振を理由とした整理解雇は不当解雇になる可能性が高いです。 整理解雇は、従業員に責任のない会社都合の解雇であるため、整理解雇が有効かどうかは下記事項を考慮して厳しく判断されます。 整理解雇が有効かどうか判断される基準 人員削減の必要性 解雇回避の努力 人選の合理性 解雇手続の妥当性 整理解雇が有効かどうか判断される基準について詳しく知りたい方は、『整理解雇された!有効・無効の判断基準となる4要件を弁護士が解説』の記事をご覧ください。 不当解雇で会社を訴えるときに請求できるもの 不当解雇の訴訟を起こした場合、請求できるものは以下の通りです。 不当解雇の訴訟で請求できるもの 解雇の撤回(解雇の無効) 解雇予告手当の請求 未払い賃金の請求 慰謝料の請求 解雇の撤回(解雇の無効) 裁判などで解雇が不当であることを主張して、会社に解雇の撤回を求めることを、「解雇無効の訴え」または「地位確認(※)の請求」といいます。 (※)解雇は無効なので現在も社員としての地位にあることの確認 解雇が無効と認められれば、「会社への復帰」や「解雇された日から現在までの賃金の請求」が可能となります。 ただし、実際には会社と従業員の関係が悪化していて復職を希望する人も少ないので、多くの場合、「解雇無効の訴え」は次で説明する「未払い賃金の請求」へのステップと考えることができます。 未払い賃金の請求 解雇の無効が確定したら、解雇日から現在までの賃金が発生するので、未払い賃金として請求することができます。 懲戒解雇で退職金が支払われていないケースで、訴えにより普通解雇に切り替わったときは、退職金の請求も可能です。 実際の裁判では、解雇の無効が確定的になった段階で和解により解決金や和解金などの名称で金銭が支払われ決着するケースが多いようです。 解決金の額は会社と従業員の話し合いで決まりますが、給与の数か月分から1年分くらいが相場です。不当解雇の解決金の相場について詳しく知りたい方は『不当解雇の解決金(和解金)相場は?実例もご紹介!』の記事をご覧ください。 従業員が職場復帰を強く希望し会社が退職を望む場合、解雇日から現在までの未払い賃金相当額に、退職を前提として解決金が上乗せされるケースもあります。 慰謝料の請求(損害賠償請求) 慰謝料の請求(損害賠償請求)は、解雇の無効ではなく不当解雇によって損害を受けたので慰謝料を請求するというものです。 未払い賃金請求と比較すると、慰謝料請求は難易度が高くなるにもかかわらず見返りが少ない方法だといえます。 慰謝料を請求するには、会社が不法行為を行ったことを立証しなければなりません。 不法行為とは「故意・過失により相手の権利を違法に侵害し損害を与えること(民法709条)」で、不法行為が認められるのは不当解雇の中でより違法性が高いケースに限られます。 未払い賃金は不当解雇が認められれば請求可能ですが、慰謝料の請求には、より難易度の高い不法行為の立証が必要となります。 また、慰謝料の金額は裁判事例では数十万円から100万円くらいが相場だといわれ、相場が給与の数か月から1年分くらいの未払い賃金請求と比べると見劣りします。 ただし、金額の大小はケースバイケースで、セクハラ問題が絡む場合などでは慰謝料の方が高額になることもあります。 関連記事 ・不当解雇されたら裁判で慰謝料を請求!損害賠償の相場と相談窓口 解雇予告手当の請求 使用者は労働者を解雇する際、少なくとも30日前には使用者に対して解雇する旨を通知する義務があります。 もし通知を怠った場合には、使用者は30日分以上の平均賃金を支払う義務を負います。これを解雇予告手当といいます。 不当解雇で訴えた場合には、解雇予告手当を請求することができるケースもあります。 関連記事 ・解雇予告手当とは?制度の内容を弁護士がわかりやすく解説 不当解雇を訴える手順|訴訟までの流れ 不当解雇を直接、または労働組合を通して会社に訴えたり、労働基準監督署に相談するという方法もありますが、裁判所に訴える場合の手順は下記の通りです。 不当解雇で会社を訴える手順 解雇理由証明書の取り付け 不当解雇を証明する証拠の収集(訴訟準備) 労働審判をする 裁判をする 解雇理由証明書の取り付け 解雇理由証明書は、会社が解雇した従業員に対して発行するもので解雇理由が記載されています。 退職する従業員が請求すれば、会社は退職理由(解雇の場合は解雇理由)を証明する書類を発行することが法律で義務付けられています。 会社から証明書を取り付けて解雇理由を確認し、納得が出来なければ訴訟などを検討します。 訴訟になった場合、訴訟を有利にするため会社が解雇理由を変更することもあるので、解雇されたらすぐに証明書を請求しましょう。 関連記事 ・解雇理由証明書を請求する方法は?請求するために知っておくべきことを解説 不当解雇を証明する証拠の収集(訴訟準備) 次に、訴訟などを前提として不当解雇を証明する証拠を収集します。解雇の内容によって証拠となる書類は異なりますが、下記のものが考えられます。 不当解雇を証明しうる証拠 雇用契約書、就業規則 解雇通知書、解雇理由証明書 在職時の人事評価や人事面談記録 解雇について会社との話し合い経緯がわかる書類(メールや記録など) 労働審判をする 労働審判は、裁判官と労使の専門委員が仲介を行い、3回以内の話し合いで問題解決を図る制度です。 いきなり裁判で争うという方法もありますが、裁判にかかる費用と時間を考えれば、まずは労働裁判の選択をおすすめします。 労働審判の結果に不服があるときは、審判の日から2週間以内に裁判所に対し「異議の申立て」ができます。申立てがなければ労働審判は確定し、裁判上の和解と同一の効力を持つことになります。 関連記事 ・労働審判とは?制度の内容や手続きの流れを弁護士がわかりやすく解説 裁判をする 労働審判で異議の申立てがあった場合や、直接訴訟を起こした場合は裁判になります。裁判をする場合は通常、事前に弁護士を選任してそのアドバイスに従って訴訟を進めることになります。 労働審判は和解を前提に裁判を大幅に簡素化したものといえるので、会社と従業員の主張が大きく異なる場合や、争点が複雑になる場合には、労働審判を経ずに最初から裁判所に訴えるという方法もあります。 また、請求内容によって請求可能な期間(時効)がありますので注意しましょう。 請求可能な期間 解雇無効の請求:時効なし 賃金の請求  :時効は3年 退職金の請求 :時効は5年 慰謝料の請求 :会社の不法行為を知ったときから3年 不当解雇で裁判をする場合の流れ 不当解雇の裁判の流れは、以下の通りです。 不当解雇の裁判の流れ 弁護士に依頼する 提訴する 第1回口頭弁論 争点整理 証人尋問 判決 (1)弁護士に依頼する 裁判を起こしたいときには、まずは弁護士に依頼しましょう。裁判は非常に専門的な手続きで、素人の方が1人で対応するのが困難だからです。 企業側は顧問弁護士を立ててくる可能性が高いので、こちらが本人訴訟では圧倒的に不利になってしまうおそれが高まります。 まずは労働問題に詳しい弁護士に相談をして事情を話し、裁判を依頼してください。 不当解雇に強い弁護士をお探しの方へ 不当解雇に強い弁護士の探し方はポイントがあります。以下の記事で不当解雇に強い弁護士の探し方をまとめています。ぜひご覧ください。 不当解雇に強い弁護士の探し方|相談無料・費用の仕組み (2)提訴する 弁護士に裁判を依頼すると、証拠集めや訴状の作成などの準備を進めていきます。 用意が調ったら弁護士が裁判所へ訴状を提出し、提訴の手続きへと進めます。提訴の際には弁護士がすべて対応するので、ご本人は特に何もする必要はありません。 (3)第1回口頭弁論 提訴すると、企業側へ訴状や提出書類が送られて、相手から「答弁書」が提出されます。そして1か月くらい後に第1回の口頭弁論手続きが開催されます。第1回の口頭弁論には会社側は出席しないケースが多数です。 期日では、今後の争点整理手続きの進め方などについて協議して取り決めます。 裁判期日には弁護士が出席するので、ご本人が裁判所に行く必要はありません。 (4)争点整理 裁判所で継続的に争点整理の手続きが行われます。 出席するのは基本的に労働者側と企業側の弁護士のみで、本人が出頭する必要はありません。争点整理の手続きでは、お互いが証拠や主張書面を提出し、双方の言い分や食い違いを整理していきます。 争点整理の最中に和解の勧告があれば、当事者同士で話し合って和解する可能性もあります。 (5)証人尋問 争点整理の手続きが終わったら、裁判所で証人尋問や当事者尋問が行われます。 訴えた労働者や会社側の経営者、上司などが出席するケースが多いでしょう。この日は本人も出席しなければなりません。 (6)判決|不服申し立てもできる 尋問が終わったら結審し、判決が言い渡されます。判決言い渡し日には当事者が出席する必要はありません。弁護士が判決書を取り寄せて本人に連絡します。 第一審の判決に不服があれば控訴できます。不服申し立てするか否かは弁護士と相談しながら対応を決めましょう。 不当解雇の裁判の勝率は? 不当解雇の裁判の勝率は、正式な統計がないことから一概には言えません。不当解雇の裁判で勝てるかどうかは、個々の事案によって異なります。 しかし、事実関係を主張立証することで労働者側が勝訴して解雇が無効となった事案は多く、労働者側の請求が認められやすい傾向にあります。 ちなみに、裁判とあわせて検討される労働審判での最終的な紛争の解決率は8割ほどですが、そのうちの9割以上は会社が解決金を支払う形での解決になっています。 労働審判で争われる労働問題は不当解雇に限られませんが、労働者側が有利な判決になることが多いことがわかるでしょう。 一方裁判は、労働審判で和解に至らない場合の最終手続きでもあるため、労働者側に解決金が支払われる割合は低下することが考えられます。 それでも、労働者側の主張が認められる可能性は十分にあるといえます。 もっとも、個々の事案における不当解雇の裁判の勝率については、不当解雇の裁判経験が豊富な弁護士に相談することが一番です。 裁判経験が豊富な弁護士であれば、過去に扱った事例やこれまでの判例を基に、裁判で勝てるのか、もしくは負けるのか推測できるでしょう。 不当解雇の裁判にかかる期間 不当解雇の裁判で解決までにかかる期間は比較的長く、1年以上となるケースが多々あります。 2020年度の労働関係訴訟において、審理期間が1~2年と答えた割合は41. 0%でした。2年以上の割合も17. 0%であるため、半数以上が1年以上かかっていることになります。 参考:解雇に関する紛争解決制度の現状と労働審判事件等における解決金額等に関する調査について|厚生労働省 労働基準局労働関係法課 早期に和解できれば数か月で終わるケースもありますが、基本的にある程度、腰を据えて取り組む必要があるといえるでしょう。長丁場を乗り切るためにも、信頼できる弁護士に依頼することが重要です。 不当解雇の裁判で必要になる費用 不当解雇について不服を申し立てて裁判を弁護士に依頼する際、以下のような費用が必要になります。 裁判を依頼するときに必要となる費用 裁判手数料 相談料 着手金 成功報酬 裁判手数料 不当解雇についての訴訟を起こす場合、裁判所に裁判手数料を納める必要があります。 裁判手数料の内訳は、印紙代や郵便切手代といったものがあります。 印紙代 裁判所に納める手数料のような費用です。収入印紙を買って納付します。金額は請求額に応じて決まり、請求額が上がるほど高額になります。 例を挙げると請求額が50万円なら5,000円、100万円なら1万円、300万円なら2万円です。 郵便切手代 連絡用の郵便切手代です。だいたい6,000~8,000円前後となります。 相談料 弁護士に相談する際には、相談料が必要です。相談料の相場は1時間あたり1万円となっています。 無料相談を受け付けている弁護士事務所もあるので、よく調べてみることが重要です。 着手金 着手金とは、弁護士が事件に取り掛かるうえで必要となる費用のことをいい、依頼が成功したか失敗したかにかかわらず必要となります。 相場としては10~20万円程度に設定されていることが多いですが、会社に対して金銭の請求をおこなう場合には、その請求額の10%ほどを着手金として設定している弁護士事務所もあります。 成功報酬 成功報酬とは、依頼の成果に応じて弁護士に支払う報酬のことをいいます。 こちらの相場は30~40万円に設定されていることが多いですが、着手金と同様に請求額の10~30%程度に設定している弁護士事務所もあります。 関連記事 ・不当解雇を相談・依頼するときの弁護士費用相場は?対処法も解説 不当解雇の裁判を有利に進める方法 証拠を集める まずは不当解雇の裁判を有利に進めるためには、事前の証拠集めがカギを握ります。証拠がなかったら裁判で負けてしまい、未払い賃金などを払わせることができません。 弁護士と相談しながら、ときには「証拠保全手続き」などを利用して、充分な証拠を集めましょう。 証拠保全とは、会社が隠したり処分したりするおそれのある証拠を、裁判所の力を借りて確保するための手続きです。 状況に応じた適切な選択をする 訴訟では、常に決断を要求されます。まずは不当解雇に対してどういった主張をするのか決めなければなりませんし、会社側から反論を受けたら再反論が必要です。 和解の話をするときには、合意すべきかどうかを適切に判断しなければなりません。判断を間違えると損をしてしまうでしょう。 自分1人では適切な決断をするのが難しいので、弁護士のアドバイスを受けながら対応することが重要です。 労働トラブルに詳しい弁護士に依頼する 不当解雇の裁判を有利に進めるには、依頼する弁護士選びも重要です。 労働トラブルをあまり取り扱っていない弁護士に依頼しても、良い結果を得るのは難しくなるでしょう。 できる限り普段から労働トラブルの取扱いが多く、解決実績の高い弁護士に依頼してください。 労働者側の視点に立って熱心に活動してくれる姿勢も重要です。 不当解雇されたとき、泣き寝入りする必要はありません。 労働問題に熱心に取り組んでいる弁護士の協力を得て、未払い賃金や慰謝料、解雇予告手当などをきちんと払ってもらいましょう。 まとめ 不当解雇をされた際には、訴訟を起こすこと解雇の無効や未払い賃金を請求することが可能です。 労働者の方が裁判を一人で対応するのは困難です。不当解雇で会社と裁判で争うか検討されている方は弁護士に相談してください。 不当解雇について無料相談を行っている事務所もあります。 弁護士に相談する際には『不当解雇は弁護士に相談すべき?相談するときのポイントを解説』の記事を参考にしてください。 --- ### 労働相談はメールで可能!無料で相談可能な窓口6選! - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-05-13 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6286 - Categories: 労働問題全般 「会社が給料・残業代を支払ってくれない」「仕事で電話する時間がないからメールで相談したい」 給料・残業代未払いや不当解雇、ハラスメントなどの労働問題でお困りごとを抱えている方は多いです。 実は、このような問題やお悩みは公的機関の相談窓口や、労働問題に強い弁護士などに相談することができます。 しかし、対面での相談が中心であったり、電話相談の時間が限られていたりして、相談が難しいとお悩みではないでしょうか。 この記事では、労働相談をメールで受け付けている相談窓口をご紹介します。専門家の助けを借りながら、労働問題を解決しましょう。 メールで労働相談が可能な相談窓口 労働相談はメールで行うことが可能ですが、相談窓口によって対処できる労働問題が異なるため、自分に合った相談窓口を選びましょう。 メールで労働相談が可能な相談窓口は、以下のとおりです。 メール相談が可能な相談窓口 法テラス 全労連 みんなの人権110番 こころの耳 ハラスメント悩み相談室 弁護士事務所 悩みの内容に応じてご利用が可能です。 相談機関悩みの内容メール相談窓口法テラス適切な相談先や法律・制度が知りたいメールでのお問合せ全労連労働問題全般・労働組合に加入したい労働相談メールフォームみんなの人権110番(法務省)人権問題(差別・ハラスメントなど)インターネット人権相談受付窓口こころの耳(厚生労働省)メンタルヘルス全般働く人の「こころの耳メール相談」ハラスメント悩み相談室(厚生労働省)カスタマー・就活ハラスメントメール相談窓口弁護士事務所法的紛争にかかわる労働問題全般各事務所のホームページ参照 ※弁護士事務所によって、対応できる労働問題が限られている場合があります 初歩的な相談なら「法テラス」 法テラス(日本司法支援センター)では、労働問題に関する初歩的な相談をメールにて受け付けています。 「法テラス」とは、国によって設立された公的機関であり、法的トラブルを誰でも相談することが可能です。 法テラスでは労働相談が可能なことはもちろんながら、その他さまざまな法律問題に関することを相談できます。 ただし、法テラスのメール相談窓口で相談できることは、「お困りの内容に関する法律や制度のご紹介」「お客様に適切な相談窓口のご案内」の2点です。 具体的な労働相談を行うことはできないので注意しましょう。 したがって、法テラスのメール相談窓口は「法律相談をどこにすればよいのかわからない方」「問題解決へ向けて最初の一歩を踏み出したい」といった方に向いているサービスです。 参考:メールでのお問合せ 労働団体に相談できる「全労連」 全労連が設置している「労働相談ホットライン」では、電話での相談の他、メールでの労働相談を受け付けています。 「全労連」とは、日本全国の労働組合をまとめる役割を担う団体であり、労働者の不利益を減らすための活動を行っています。 労働相談ホットラインでは、ハラスメント問題や雇用契約に関するトラブルなどを幅広く受け付けています。 「会社でハラスメントを受けている」「給与が未払いで困っている」といった問題に対する、具体的な解決案を知りたい方へおすすめの相談窓口です。 また、相談は秘密厳守で行うことが可能であるため、相談したことが会社にバレる心配もありません。 ただし、問題の具体的な解決にあたっては労働組合への加入が必要とされる場合があるので、よく検討の上ご利用ください。 参考:労働相談メールフォーム 人権問題に関する相談は「みんなの人権110番」 法務省が設置している「みんなの人権110番」では、人権問題に関するメール相談を行うことが可能です。 「みんなの人権110番」では、会社でのハラスメント問題や差別的な扱いに対する相談を受け付けています。 相談に対しては、法務局職員または人権擁護委員といった、労働問題に関するプロの方が対応してくれるため、「より具体的に問題解決へ進みたい」という方におすすめです。また、外国籍の方でも相談可能です。 相談にあたっては秘密厳守で進めてくれるため、会社にバレることを心配する必要もありません。 参考:インターネット人権相談受付窓口 メンタルに関する相談は「こころの耳」 厚生労働省の設置する「こころの耳」では、メンタルヘルスに関する相談をメールで行うことが可能です。 こころの耳では、セクハラ・パワハラなどのハラスメント問題に対する相談から、会社でのストレスに対する悩みなど、メンタルヘルス全般に関する相談を受け付けています。 さらに、相談はメールの他「LINE」で相談することも可能です。「会社のストレスが原因で長文を打つ気力が無い方」「今すぐ相談を行いたい方」などにおすすめの相談窓口です。 参考:働く人の「こころの耳メール相談」 ハラスメントの相談は「ハラスメント悩み相談室」 厚生労働省が設置している相談窓口「ハラスメント悩み相談室」では、カスタマーハラスメント・就活ハラスメント問題に特化した相談をメールで受け付けています。 メールでの相談は原則メールでの回答となっており、「電話で回答が来るのが嫌だ」という方でも安心して相談することが可能です。 参考:メール相談窓口 法的な手続きにスムーズに移行できる「弁護士事務所」 弁護士事務所は、依頼すると費用が掛かる場合がある反面、会社と代理交渉をすることが可能なため、問題の実効的な解決を目指す相談先としては非常に有効です。 また、会社との交渉で話し合いがまとまらない場合には、労働審判や訴訟などの法的な手続きにスムーズに移行することができます。 相談料金が発生する事務所もありますが、無料相談を受け付けている事務所もあります。メールでの問い合わせを受け付けているところも多いのでぜひ探してみてください。 代理交渉が可能な弁護士を選ぶ際に、自分と相性の良い弁護士を選任することは非常に重要です。 複数の相談先の意見を聞いてみるには、メール相談は使い勝手が良い手段になるでしょう。ただし、メールで弁護士から直接返信もらえない可能性もあるので注意してください。 労働基準監督署はメールで相談できる? 労働問題の相談先として、労働基準監督署が思い浮かぶ方は多いでしょう。 労働基準監督署にメール相談することはできます。しかし、メールで相談しても回答が返ってくることはなく、あくまで情報提供といった形になります。 労働基準監督署への情報提供は、「労働基準関係情報メール窓口」から行うことができます。 情報提供した結果、労働基準法違反の疑いがあると判断されれば、調査が入り、会社に是正・指導が行われることはあるでしょう。 しかし、労働基準監督署には、多くの労働者からのトラブルが日々寄せられています。 緊急性が高い労働者は電話や対面で相談するため、メールで情報提供をしても、対応の優先度は低くなってしまう可能性が高いです。 そのため、緊急性が高いものは、電話や対面で相談したほうが効果的です。 労働基準監督署への相談・通報で会社にバレることを心配している方は、『労働基準監督署に通報!その後はどうなる?会社にバレる?』の記事もご覧ください。 メールで労働相談をするメリット 対面や電話ではなく、メールで労働相談することについては、以下のメリットがあります。 メールで労働相談を行うメリット 日中に時間を割く必要が無い 個人情報がより強く保護される 必要な書類などを添付できる 冷静に相談することができ、適切なアドバイスが得られる メールであれば基本的には24時間受付であり、いつでも相談事項を送信をすることができます。 さらに顔や電話番号を知られることに抵抗がある方でも、適当な連絡先メールアドレスを作るだけで相談可能です。 そのため、勤め先からの特定を恐れている方にとっても、メール相談が向いていると言えます。 また相談が進んでくるにつれて、相談先から解雇理由証明書などの書類を求められる場合もありますが、メールを利用すればデータの添付も簡単です。 さらに相談事項を文面でまとめることにより、冷静に・過不足なく情報を記載することができ、結果的にスムーズに相談を進めていくことができます。 メールで労働相談をするデメリット メールで労働相談することのデメリットも認識しておきましょう。 メールで労働相談を行うデメリット いつ返信がくるのか、そもそも返信がくるかわからない 手軽な反面、数も多く質の悪い相談も増えるため、後回しにされるなど優先度が低い 相談内容が不十分であった場合に、内容の確認に時間がかかる メール相談は電話や対面での相談よりも、対応の優先度が下がる場合があることはデメリットとして挙げられます。 結果として相談先からの返信に時間がかかったり、具体的な対応も行われないリスクはあります。 急ぎの相談や必ず対応してほしい重大な事案などは、電話または直接訪問しての相談の方が適切かもしれません。 電話での労働相談を受け付けている窓口を知りたい方は『労働相談ができる相談窓口は?無料・24時間受付の窓口も!』の記事もご覧ください。 メール相談の際の注意点 営利団体の相談窓口には要注意! 上でご紹介しました労働相談窓口のほか、実にさまざまな団体や公的機関が労働相談の窓口を開設しています。 労働相談の窓口が増えることは、働く側からするとありがたいと感じるかもしれませんが、中には利用を控えたほうが良い相談窓口も存在するため注意が必要です。 たとえば「◯◯労働相談センター」「◯◯労働問題解決窓口」など、一見して公的機関の相談窓口に見受けられるような名前ながら、実際はコンサルティング企業などの営利団体であることがあります。 また、労働問題の解決をうたう労働団体の中には、過激な活動を行う反社会勢力とつながりのある団体もわずかながら存在します。 上記のような相談窓口を利用した場合、会社とのトラブルを解決するどころか、問題を複雑化させてしまう可能性もありますから、利用は控えたほうが賢明でしょう。 労働相談は、公的機関もしくは労働問題に詳しい弁護士事務所をおすすめします。 メール相談の注意書きやルールを守る 相談の際の注意書きやルールは守る 相談内容を具体的かつ詳細に記載する できるだけ分かりやすく書く 質問事項や要望ははっきりと記載する 証拠があれば添付する、もしく伝えておく メール相談の注意書きやルールを守るということは必須です。メールをする前によく確認しておきましょう。 ルールが守れていなかった場合、効果的な相談ができないばかりか、相談の取り扱いをしてもらえないこともあります。 また、言いたいことが沢山あると、文面も長文になりがちです。時系列を整理し、主張のまとまった文面を作成しましょう。 労働契約書や就業規則といった書面、面談の録音データなど証拠がある場合はその旨も伝えておきましょう。労働相談では証拠の有無は非常に重要です。 また、他の相談機関にも相談している場合にはそのことも伝えておいた方がスムーズです。 まとめ 労働に関するトラブルは、ご紹介した相談窓口を利用することで、メールで解決することが可能です。 ただし、公的機関から労働組合まで、さまざまな相談窓口が提供されているので、自分に合った相談先を選ぶことが重要です。 また、中には利用を控えた方が良い相談窓口もあるので注意しましょう。労働問題の相談は、公的機関もしくは労務に詳しい弁護士事務所に相談することをおすすめします。 --- ### 不当解雇とは?正当な解雇との違いや不当解雇の事例を解説 - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-03-27 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6275 - Categories: 不当解雇 不当解雇とは、労働基準法や就業規則などの規定に違反して、労働者を会社の都合だけで解雇することです。今回の記事では、法律上認められる正当な解雇と法律違反となる不当解雇、具体的事例や不当解雇への対応策について解説します。 「会社から解雇されたが、不当解雇にあたるのかわからない」「会社から突然解雇を告げられたが、不当解雇を主張したい」 不当解雇とは、労働基準法や就業規則などの規定に違反して、労働者を会社の都合だけで解雇することです。 仕事は生活の基盤であり、突然解雇されても納得できない方は多いでしょう。 今回の記事では、法律上認められる正当な解雇と法律違反となる不当解雇、具体的事例や不当解雇への対応策について詳しく解説します。 解雇には3種類ある|解雇の種類と解雇予告 解雇とは、従業員の意思にかかわらず、会社(使用者)の一方的な通知によって労働契約を終了させることです。 解雇は理由によって「普通解雇」「懲戒解雇」「整理解雇」の3種類に分類されます。 (1)普通解雇 普通解雇は、下記の従業員の個人的な状況を理由にした解雇です。 普通解雇の理由 病気やけがによる長期の欠勤 能力不足、成績不良 協調性の欠如、勤務態度不良、など ただし、労働契約法第16条には「使用者は、客観的合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、労働者を解雇できない」という定めがあります。 会社の勝手な判断で一方的に解雇されるわけではありません。 (2)懲戒解雇 懲戒解雇は、会社の規律や秩序に反した従業員に対して懲戒として行なわれる解雇です。就業規則に定めがあれば、退職金が支払われないこともあります。懲戒解雇の理由としては下記が考えられます。 懲戒解雇の理由 業務上の横領 重要な社内機密の漏洩 重要な業務命令の拒否・違反(転勤拒否など) 無断欠勤 セクハラ、パワハラ、など 懲戒処分に関しても、労働契約法第15条で「使用者が労働者を懲戒できる場合、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は権利を濫用したものとして懲戒は無効」と定めがあり、一定の制約が課せられています。 関連記事 ・懲戒解雇されたら弁護士に相談!弁護士に相談すべき理由を解説 (3)整理解雇 整理解雇(リストラ)は、会社の経営不振などを理由に解雇せざるを得ない場合に、人員削減のために行う解雇です。 従業員に責任のない会社都合の解雇であるため、下記要件を満たさないと会社は解雇できません。 整理解雇(リストラ)の要件 不況、経営不振など企業経営上やむを得ない人員削減措置であること 配置転換、希望退職者募集など解雇回避のために努力したこと 整理解雇の対象者を決める基準が客観的・合理的で運用も公正であること 労働者などに対し解雇の必要性・時期など、納得を得る説明を行うこと 関連記事 ・リストラに納得がいかない!リストラを弁護士に相談するメリットを解説 解雇予告と解雇予告手当 会社が解雇を行うときの重要なルールが「解雇予告」です。労働者が突然の解雇で生活に困らないようにするため、労働基準法第20条で下記のようなルールを定めています。 労働基準法第20条で定められている規則 解雇を行うときは、少なくとも30日前に解雇の予告をすること 予告を行わない場合は、30日分以上の平均賃金を支払うこと 予告を行わない場合に支払われる30日分の賃金を、「解雇予告手当」といいます。 解雇予告をされた日から15日間は仕事を継続し、残り期間を自宅待機したときは、残り期間分に対する解雇予告手当が支払われます。 正当な解雇理由がある場合でも、解雇予告や解雇予告手当の支払いなしで即時解雇されたら、労働基準法第20条違反となります。 関連記事 ・解雇予告手当とは?制度の内容を弁護士がわかりやすく解説 不当解雇とは①|法律で禁止されている解雇 解雇は労働者とその家族の生活に大きな影響を与えるため、企業が好き勝手にできるものではなく、労働基準法などで厳しく制約を課しています。下記で解説する法律に違反する解雇は、明白な不当解雇といえます。 労働基準法による解雇制限 労働基準法第19条では、労働者保護の観点から下記期間の解雇制限(解雇の禁止)を規定しています。 労働基準法19条の解雇制限 業務上災害のため療養中の期間とその後の30日間 産前産後の休業期間とその後の30日間 この期間中は、たとえ労働者に懲戒解雇に該当する事由が発生しても、会社は解雇できません。 ただし、労働基準監督署長に申告して認定を受ければ、下記ケースにおいては会社に解雇が認められます。 会社に解雇が認められるケース 労働者が業務上の傷病で休業して3年経過後に、会社が平均賃金の1,200日分の打切り補償を行った場合 天災などで会社の事業継続が不可能になった場合 労働基準法以外による解雇の禁止 労働基準法による解雇制限のほか、下記理由による解雇を法律で禁止しています。 労働基準法以外による解雇 労働組合の組合員であることなどを理由とする解雇 労働者の性別を理由とする解雇 女性労働者が結婚・妊娠・出産・産前産後の休業をしたことなどを理由とする解雇 労働者が育児・介護休業などを申し出たこと、又は育児・介護休業などをしたことを理由とする解雇 労働者の国籍、信条、社会的身分を理由とした解雇 不当解雇とは②|解雇権濫用にあたる場合 法律で明確に禁止されている解雇のほか、客観的に合理的な理由を欠く場合や社会通念上相当であると認められない場合の解雇は不当解雇にあたります。 「客観的に合理的な理由」や「社会通念上相当」に該当するかどうかの判断は難しいケースもあり裁判で争われることもあります。下記にて具体例を紹介します。 「能力不足、成績不良」を理由とした解雇 単に営業成績が悪い、仕事ができない、というだけでは解雇はできません。 新入社員や未経験者が十分な教育・訓練を受けないまま業務に就き、うまく仕事ができないから能力不足と判断するのは、客観的合理的な理由はなく社会通念上も相当と認められないでしょう。これを理由に解雇すれば不当解雇になります。 配置転換で不得手な部署に異動させられた場合も同様です。会社が最適な人材配置を怠った結果で、場合によっては配置転換による退職勧奨とみることもできます。 関連記事 ・能力不足で会社から解雇されたときの対処法は?不当解雇の可能性が高い! 「遅刻の常習」を理由とした解雇 遅刻や早退を繰り返し、会社がいくら指導しても効果がなく、今後も改善が見込めないと解雇した場合は、裁判でも不当解雇ではないと判断される可能性が高いでしょう。 しかし、短時間の遅刻や数回の遅刻での解雇ならば、社会通念上相当とはいえないため、不当解雇になる可能性はあります。 また、会社が指導することなく遅刻を放置していた場合も、不当解雇になる可能性があります。 就業規則にない懲戒事由での懲戒解雇 業務上の横領をした従業員を懲戒解雇した場合でも、不当解雇になるケースがあります。就業規則の懲戒規定に「横領すれば懲戒解雇」といった根拠規定がない場合です。 理由は、労働基準法第89条で「懲戒処分を行うには、就業規則にその種類・程度を記載しなければならない」と規定されているためです。 懲戒解雇に限らず就業規則にない懲戒処分はすべて違法となります。 しかし、会社が横領した従業員を普通解雇することは妥当であり、従業員に対して損害賠償を請求することもできます。 4つの要件を満たさない整理解雇 前述の通り整理解雇は、従業員に責任のない会社都合の解雇であるため、4つの要件を満たさないと解雇できません。要件未達なら不当解雇になります。 整理解雇で必要となる要件 人員削減の必要性 解雇回避の努力 人選の合理性 解雇手続の妥当性 たとえば、解雇を行う一方で新規採用をしていれば「人員削減の必要性」はなく要件未達と判断できます。 また、希望退職者募集などの解雇回避のための努力をしなかった場合も同様です。 すべての要件を満たさなければ、整理解雇には該当せず不当解雇になります。 不当解雇されたときの対応 解雇の取り消しと職場復帰を請求する 不当解雇を理由に、労働者は会社に対して解雇の取り消しと職場への復帰を請求することができます。会社から納得できる対応がなければ、裁判で解雇の取り消しを請求する方法もあります。 しかし、会社が解雇を取り消した場合でも、会社との関係が気まずくなって会社を辞めるケースが多いのではないでしょうか。 その場合は、不当解雇された日から辞職するまでの賃金を請求することも可能です。 損害賠償請求をする 解雇の取り消しや職場復帰ではなく、会社に対して不当解雇による損賠賠償を請求する方法もあります。 会社に請求して認められなければ、訴訟を起こすことも選択肢の1つです。 労働基準監督署に相談する 不当解雇を訴えても会社が対応してくれない場合や、どう対応していいかわからない場合は、労働基準監督署に相談するのも1つの方法です。 労働基準監督署で有効なアドバイスが受けられたり、明らかな違反がある場合は、会社に直接、指導・勧告してくれるケースもあります。 ただし、労働基準監督署には、「客観的に合理的な理由」や「社会通念上相当」に該当するかどうかを判断する権限はないので、判断が必要な場合は裁判によって判決を受ける必要があります。 関連記事 ・労働基準監督署に相談できる内容とは?メリット・デメリットから徹底解説 弁護士に相談する 不当解雇された場合は、弁護士への相談も検討しましょう。 一般に労働者は、会社に比べると弱い立場なので、自分だけで証拠を集め、不当解雇だと主張しても相手にしてもらえない場合が少なくありません。 弁護士は適切な法的主張に基づき、会社との交渉が可能です。自分だけで会社と交渉するよりも不当解雇を撤回してもらいやすくなるでしょう。 関連記事 ・不当解雇は弁護士に相談すべき?相談するときのポイントを解説 --- ### 給料の未払いを請求したい!給料未払いが生じる原因と6つの対処法 - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-05-27 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6234 - Categories: 給料未払い 待ちに待った給料日なのに、「給料が支払ってもらえない!」という経験をしたことがありますか?この記事では、給料の未払いが発生する原因と、未払い給料を取り戻すためにできる6つの対処法について解説します。 「給料日なのに、給料を支払ってもらえない!」「未払い給料を請求するには?」 一生懸命働いたのに、その賃金が支払われないのは理不尽ですよね。給料が出ないと、安定した生活が送れるか不安になると思います。 給料未払いは違法であり、労働者は未払い賃金を請求する権利があります。 この記事では、給料未払いでお困りの方に向けて、給料未払いが発生する原因や未払いの請求に必要な証拠を詳しく解説します。 給料未払いとは?生じる原因は? 給料未払いの法的な意味 給料未払いは、法律上では「未払賃金」と言われています。 労働基準法では「あらかじめ労働契約や就業規則で定められた賃金を、所定の支払日に支払わなかった場合は、その使用者は、労働基準法に違反する」と定められています。 この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。 労働基準法第11条 賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。(後略)②賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。ただし、臨時に支払われる賃金、賞与その他これに準ずるもので厚生労働省令で定める賃金(第八十九条において「臨時の賃金等」という。)については、この限りでない。 労働基準法第24条 未払賃金の対象となる賃金には、毎月の給料をはじめとして次のようなものが該当します。 未払い賃金の対象となる賃金 毎月の給料 退職金 賞与やボーナスなどの一時金 休業手当 割増賃金 有給休暇の賃金 給料未払いの原因その①経営不振 給料未払いが発生する原因のひとつに、企業側の経営不振が挙げられます。従業員に給料を支払いたくても、支払うお金がないという状況です。 しかし、どのような理由があったとしても、企業には労働者に給料を支払うことが義務付けられています。 ですから、たとえ経営不振や業績悪化で給料を支払うことができないとしても、労働者には給料を請求する権利があります。 給料未払いの原因その②企業側と労働者間のトラブル 「会社の備品を壊したから」「会社に迷惑をかけたから」「急に退職をしたから」などの理由で、企業側が故意に給料を支払わないこともあります。 すべての事情は当事者同士しか分かりませんが、たとえ労働者が会社に損害を与えるなど不備な点があったとしても、「労働の対価」を支払うことは雇用主に義務付けられています。 つまり損害賠償と賃金は全く別物であり、たとえ労働者と会社間にトラブルが生じていたのだとしても会社は労働者に賃金を支払わなければならないのです。 雇用主が賃金で一方的に相殺することは認められていません。 給料未払いの原因その③契約どおりに給料を支払わない 「基本給などの賃金が雇用時の約束よりも低い」といったトラブルもあります。 あらかじめ労働契約や就業規則で定められた賃金を支払わないのは、労働基準法に違反しています。 このような状況を回避するためには、雇用時には、必ず「雇用契約書」を書面で交わす必要があります。 雇用契約書には、賃金、計算、支払方法、賃金の締切、賃金の支払時期などを記載するよう義務付けられています。 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。 労働基準法15条1項 給料未払い請求の時効は3年 給料未払いの時効は3年です。そのため、請求権が消滅する前に給料未払いの請求をすべきと言えます。 給料未払いの請求権は、「権利を行使することができる」ときから進行します(民法166条)。 給料未払いの請求権を行使できるタイミングは、各月ごとに更新されます。 給料未払いが何か月続いている場合、消滅時効の起算点は各月ごとに判断されます。 また、給料未払いが発生する状態の職場は、経営不振や経営管理に不備があるなどの問題を多く抱えていることが考えられます。 給料未払いの請求は、会社を辞めたあとでも請求することができるため、問題があると思えば、まずは離職することも選択肢のひとつとなります。 給料未払い請求に必要となる証拠は3つ 給料が未払いであることを証明する書類 給料未払いの請求をするのは、労働者本人です。この場合、労働者本人が給料未払いの証拠を集める必要があります。 給料が未払いであることを証明する証拠には、給与明細書、源泉徴収票、給与口座の履歴などがあります。 これらの証拠と下記の証拠を照らし合わせることで、未払い給料の金額まで確認することができます。 支払われるはずの賃金を証明する書類 支払われるはずの賃金を証明する証拠として、雇用契約書、就業規則、退職金規程、労働条件通知書などがあります。 雇用主はこれらに記載されてる賃金を支払う義務があるため、立派な証拠となります。 勤務したことを証明できる書類 労働の対価である賃金を請求するためには、勤務したことを証明しなければいけません。 タイムカード、勤怠表、業務日誌(控え)などが働いたことを裏付ける証拠となります。 給料未払いの証拠がない場合 書面や直接的な証拠がない場合、証明力は低くなりますが、以下のようなものを集めておくとよいでしょう。 証拠として考えられるもの 会社のパソコンの利用履歴 手書きの勤務時間や業務内容の記録 会社とやりとりしたメールやLINEの送信記録 これらのような履歴や記録もないといった場合、証拠保全という手続きを利用することで、会社が持っている証拠を提出させることもできます。 証拠保全とは、裁判官が直接会社に出向いて、証拠を提示させるという強力な手続きです。 ただし、証拠保全は裁判所を介する手続きのため、申立書や手続きが面倒なことから、証拠が手元にない場合は弁護士に相談した方がスムーズです。 関連記事 ・給料未払いの証拠がない!対処法や請求をする際の手順を解説! 未払い給料を請求する6つの方法 (1)雇用主に直接相談する機会を設ける 給料未払いに限らず、トラブルが発生したときは、たいてい直属の上司に相談します。 給料未払いについて直属の上司に相談しても解決しない場合は、雇用主、つまり社長に直接相談してください。 直属の上司のみが給料未払いのトラブルに絡んでおり、会社全体として給料未払いについて把握していないケースもあります。 一度社長などと直接交渉できる機会を設けることができればベストです。 (2)内容証明郵便を会社に送る 「配達証明付き内容証明郵便」とは、差し出した日付、差出人の住所、氏名、宛先の住所、氏名、文書に書かれた内容を、日本郵便が証明するサービスのことです。 参考:日本郵便「内容証明」 「未払い給料を会社に催促した」という事実を証拠化できるというのが内容証明郵便の最大の強みです。 配達証明付きなので、会社側の「書類を受領していない」等の反論を封じることができます。 内容証明書を送ったとしても、必ず支払いに応じてくれるという保証はありませんが、内容証明郵便を送ることで「未払い給料を支払ってほしい」という労働者の意思を示すことができ、その後、訴訟を起こすときの証拠にもなります。 (3)労働基準監督署に申告する 給料未払いは、労働基準法に違反しています。 雇用主に未払い給料を請求しても応じない場合は、管轄地区の労働基準監督署に申告してください。 その際に、給料未払いの証拠を併せて提出できればベストです。 労働基準監督署の所在地一覧 労働基準監督署は、対象の企業を調査し、未払い給料を支払うよう厳重勧告します。 (4)少額訴訟で未払い給料を請求する 少額訴訟とは、60万円以下の未払い給料を請求するために利用できる訴訟です。 簡易裁判所において、原則として1回の審理で結果が出ます。通常の裁判と比較して給料未払い請求を早く解決できるのがメリットとなります。 少額訴訟は、弁護士に依頼しなくても、自分で手続きしやすいという点も特徴です。 ただし、会社側が異議を唱えた場合は、通常の訴訟に移行することになります。 (5)労働審判を起こす 労働審判は原則として3回以内の期日で、話し合いによって解決を図る手続きです。 裁判官と労働審判員で構成される労働審判委員会が解決にあたります。 参考:労働審判手続 個人での手続きも可能ですが、証拠などを準備し、的確な主張を行う必要があるため、弁護士に依頼することが望ましいでしょう。 また、会社が労働裁判に対し、異議申し立てをした場合、通常訴訟に移行して争うことになります。 請求額が100万円の場合、新たに支払う申立手数料は5,000円(別途郵便切手代や弁護士費用が必要)となっています。 (6)通常訴訟を起こす 労働審判で解決できなかった場合、通常訴訟を起こします。審理の回数に制限がなく、納得がいくまで徹底的に争うことが可能です。 ただし、決着がつくまで半年から1年、場合によっては数年の長期戦になることがあります。 また、訴訟になる問題は事実関係が複雑であることが多く、弁護士に依頼する必要があるため、費用が高額になってしまいます。 請求額が100万円の場合、申立手数料は10,000円(別途郵便切手代や弁護士費用が必要)となっています。 給料未払いの問題はまず弁護士に相談を 先述の通り、未払い給料の請求をする際には会社に内容証明を送る、労働基準監督署を利用する等の方法があります。 会社が交渉を拒絶したり、労働基準監督署からの勧告にも会社が応じない場合、弁護士に相談をして適切なアドバイスを受けたほうが良いでしょう。 相談だけであれば無料で行ってくれる弁護士も増えており、有料の場合でも30分5000円ほどで相談をすることが可能です。 また、弁護士に一任すれば請求や交渉などを適切に行ってもらうことができ、必要であれば裁判の手続きも代理してくれます。 ご自身の力のみで解決することが難しい場合は、弁護士に相談をすることでスムーズな解決を目指すことができるでしょう。 関連記事 ・給料の未払いは弁護士に相談!依頼するメリットと費用を徹底解説 --- ### 労働審判の弁護士費用相場は?労働審判を弁護士に依頼すべき理由 - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-05-13 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6226 - Categories: 労働問題全般 労働審判とは、労働者と事業主との間の労働トラブルを早期に解決するための制度です。労働審判の特徴や弁護士費用などを解説しています。労働審判でお悩みの方は弁護士相談してください。 会社側から不当解雇や賃金未払いなどの処遇を受けた場合、労働者は労働審判を利用して労働問題の解決を図ることが可能です。 労働審判は裁判よりも早期に解決を図ることができるため、早く結論を出したい方におすすめの制度です。 労働審判は労働者本人だけで進めることもできなくはありませんが、法律の専門家である弁護士を選任することが一般的です。 そこで、この記事では、労働審判の特徴や労働事件を弁護士に依頼するメリット、弁護士費用の相場などを解説していきます。 弁護士費用を支払うことができない場合に一定の条件で利用できる窓口もご紹介しているので、労働審判を利用するかどうかお悩みの方は、ぜひ最後までご覧ください。 労働審判とは何か 労働審判は労働者と事業主の労働紛争を解決するための制度 労働審判とは、事業主と個々の労働者との間の労働トラブルを、迅速、適正かつ実効的に解決することを目的とした裁判所の制度です。 労働審判官(裁判官)1名と労働問題の専門家である労働審判員2名で組織された労働審判委員会に審理されます。 主に、解雇、雇い止め、配転、出向、賃金・退職金請求権、懲戒処分、労働条件変更の拘束力など、労働者と事業主との間の権利紛争が労働審判の対象です。 労働審判の手続きの中で調停(和解)が成立しなかったり、労働審判委員会から出された裁定(審判)に対して当事者が異議を申し立てた場合は、裁判に移行して争うことになります。 労働審判の特徴を解説 労働審判には次のような特徴があります。 労働審判の特徴 労働審判は期日が最大3回|裁判よりも手続きが簡易で早期に柔軟な解決ができる 労働審判事件の8割程度が解決し、そのうちの9割以上は会社が解決金を支払う形での解決 裁判の判決と同様に強制執行力がある 当事者の片方が欠席をしても審理は行われる 早期に柔軟な解決 通常の裁判で労働紛争を争った場合の平均審理期間は17. 2か月と長期間になりますが、最大3回の期日で審理がされる労働審判であれば平均90. 3日で解決するなど、問題の早期解決が見込めます。 労働審判は、調停による和解がベースであり約70%の事件が調停で解決しています。調停に至らず審判が下されるのは全体の15%ほどです。 参考:2022年|最高裁判所事務総局「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書」 労働審判での解決率は8割 労働審判での最終的な紛争の解決率は8割と非常に高く、そのうちの9割以上は会社が解決金を支払う形での解決になっています。 強制執行力がある 労働審判委員会から出された裁定は、2週間以内に当事者が異議を申立てなければ裁判上の和解と同一の効力を持つため、差し押さえ等の強制執行も可能になります。 当事者の片方が欠席をしても審理は行われる また、労働審判を進めるにあたって相手方(会社側)が裁判所からの呼び出しに応じなかった場合でも、労働者側の立証・主張のみで審理を進めることが可能です。 そのため、会社が不当に応じないことで、どうにもできなくなるということは労働審判ではありません。 以上の特徴から分かるように、労基の指導や労働局等のあっせん、労働組合による団体交渉などで解決できなかった紛争であっても、労働審判であれば会社を法的判断の場に出して問題を解決することが見込めます。 労働審判は弁護士に依頼したほうが良い理由 労働審判を弁護士に依頼する場合、数十万円の費用がかかります。それにもかかわらず、実際に労働審判を起こす申立人(労働者)の90. 1%は弁護士に依頼しています(日本弁護士連合会『弁護士白書 2023年版』)。 このことからわかるように、労働審判を申し立てる多くの方はご自身でやるよりも、弁護士に依頼する方が良いでしょう。では、弁護士に依頼するメリットとはどのようなことが挙げられるのでしょうか。 弁護士にほとんどのことを任せられる 弁護士に依頼することのメリットは、代理人としてほとんどのことを代理で行ってくれることです。 労働審判へ代理人として出席するだけでなく、労働審判の申立書の作成や場合によっては労働審判を起こす前に話し合いで会社との労働トラブルを解決することも可能になります。 労働者の多くは初めて労働審判を利用することになるでしょうから、弁護士に依頼して煩雑な手続きや相手方との問答などを代わりにやってもらったほうが無難です。 最大で3回しか期日がない労働審判で十分な主張立証を行うためには、相当程度の知識も必要になってきます。 とくに残業代請求や不当解雇で労働審判を検討されている方は、法律の専門家である弁護士にできるかぎり依頼をすべきでしょう。 関連記事 ・残業代請求を弁護士に依頼する場合の費用相場は?弁護士に依頼するメリット5選! ・不当解雇を相談・依頼するときの弁護士費用相場は?対処法も解説 解決できる可能性が高くなる また、統計的に見ても弁護士に依頼したほうが労働審判で紛争を解決しやすくなっています。 労働審判において労働者が弁護士に依頼せず、会社側のみが弁護士に依頼していたケースでは、58. 8%で調停が成立しています。 しかし、労働者・会社側双方が弁護士に依頼していたケースでは、76. 0%で調停が成立しています(日本弁護士連合会『弁護士白書 2023年版』)。 このことからもわかる通り、弁護士に依頼すれば手間を削減できるだけではなく、紛争解決もしやすくなるため、労働審判制度を利用する際は弁護士に依頼することをおすすめします。 証拠がない場合でも開示請求が可能 労働審判では証拠が非常に重要です。しかし、雇用契約書や労働条件通知書、給与明細などはなくしてしまって手元にない可能性もあります。 また、タイムカードなどは通常、会社が管理しています。 これらの書類は、会社が再発行しなくてはならないという法律がないので「再発行してください」と申し出ても、取り合ってもらえないことも少なくありません。 そのような場合は、「証拠保全」や「文書提出命令」といった強制的な開示手続きをすることによって、未払い残業代の証拠を入手することが可能です。 証拠保全や文書提出命令は、裁判所を通すことになるので、厳格な手続きが必要です。 弁護士に依頼することによって、証拠がない場合の開示請求の手続きも任せることができます。 上記のようなメリットがあるため、9割以上の方が労働審判を申し立てる際に弁護士に依頼しています。しかし、弁護士を依頼せずに自分だけで労働審判を行う人もいます。 労働審判を自分でするメリット・デメリットを詳しく知りたい方は、『労働審判は自分でできる?自分でやる方法とメリット・デメリット!』の記事をご覧ください。 労働審判の弁護士費用相場 相談料・着手金・成功報酬などはいくらかかるのか 弁護士事務所によって差はありますが、一般的には以下のような料金体系になっていることが多いです。 項目費用相談料1万円前後/1時間(無料のケースもある)着手金20~30万円前後成功報酬経済的利益の10%〜20%前後実費実際にかかった交通費・印紙代等日当1〜3万円前後 これから各項目の意味について解説していきます。 相談料 相談料とは、弁護士との相談時に発生する費用のことです。 近年では、初回相談は無料で、2回目以降から30分~1時間当たり5,000円~1万円程度の相談料が発生する、という料金体系になっている事務所も多いです。 中には対面での相談だけではなく、電話相談・メール相談などに対応している事務所もあるため、気軽に相談することができます。 相談する前に要点をまとめておけば相談時間や相談回数を短縮することが可能なので、現時点での自分の要望や相手方の主張を事前に整理しておくことをおすすめします。 着手金 着手金とは、弁護士に事件解決を依頼した際に発生する費用のことです。 依頼する内容(不当解雇・残業代請求・労災など)によって着手金に差を設けられるケースがあるため、労働問題の着手金相場を一概に言い切ることは難しいのですが、一般的には20万円~30万円前後を着手金として支払うことになるでしょう。 中には、依頼者(労働者)が相手方(会社側)に請求する経済的利益の8%程度を着手金とする場合もあります。 事務所によっては、着手金を無料に設定し、その分を成功報酬などに上乗せしていることもあります。 成功報酬 成功報酬とは、依頼が成功した際に支払いが発生する費用をいいます。 平成16年4月1日に廃止されていますが、かつての弁護士報酬基準では以下の料金体系で成功報酬額が算出されていました。 そのため、今でもこの基準を参考にして成功報酬額を算出している事務所が多く存在します。 (旧)日本弁護士連合会報酬等基準 経済的利益成功報酬額300万円以下経済的利益の16%300万円~3000万円経済的利益の10%+18万円3000万円~3億円経済的利益の6%+138万円3億円を超える経済的利益の4%+738万円 実費 実費とは、労働審判の期間にかかった手続き上の費用のことです。 主に、コピー代、労働審判申立ての際における収入印紙代、書類送付の際の切手代などが含まれます。 事務所によっては実費を請求せず、その分を着手金や成功報酬に上乗せするケースがあります。 日当 日当とは、労働審判を行う裁判所まで弁護士に赴いてもらった際に発生する費用のことです。 日当には大きく分けて出廷日当と出張日当の2種類があります。 出廷日当とは、弁護士が裁判所で行われる労働審判期日に出席することによって、時間的に拘束される際に支払われる費用のことです。 出廷日当は最初から着手金などに含まれていることがあるため、裁判所まで来てもらっても出廷日当を負担しなくて済む場合があります。 出張日当とは、遠方の裁判所まで弁護士に出張してもらった場合、出廷日当に加えて計上される費用のことです。 距離に応じて、1万~3万円程度の出張日当が請求されます。 なお、契約内容によっては、出張日当とは別に交通費や宿泊費も請求される可能性がある点にご注意ください。 弁護士費用を相手方に支払ってもらうことは可能なのか 労働審判でかかった弁護士費用を相手方(会社側)に支払ってもらうことは原則的にはできません。 相手方の不法行為に基づく損害賠償請求の場合であれば、弁護士費用(の一部)の支払いが認められることはあります。 しかし、労働審判で争われるのは主に労働問題(労働者としての地位確認、賃金未払い、配転命令の効力等)なので、労働審判で弁護士費用まで請求するようなことは基本的にありません。 条件を満たせば法テラスの扶助を受けられる 弁護士費用は高額なので、勝てる見込みがあるにもかかわらず、弁護士に依頼することができない方もいると思います。 そのような場合、一定の条件を満たしている方であれば、法テラスの民事法律扶助を利用することが可能です。 民事法律扶助を利用すれば、法テラスが弁護士費用を立て替えてくれます。 以下の条件を満たしていれば民事法律扶助を利用できます。 民事法律扶助を利用する条件 資力が一定以下であること 勝訴の見込みがないとは言えないこと 民事法律扶助の趣旨に適すること 詳細は法テラスの公式サイトをご覧ください。 参考:民事法律扶助業務|法テラス 民事法律扶助を利用した場合、事件進行中は毎月10,000円ずつ、もしくは毎月5,000円ずつ返済していくことになります。 事件終了後は、原則3年以内に返済が終わるよう、月々分割で返済していきます。 労働問題に強い弁護士の探し方 ここでは労働問題に強い弁護士の探し方をご紹介します。 弁護士の探し方はわかっていても、弁護士の選び方がわからないとお困りの方は、『労働問題を依頼すべき弁護士とは?選び方や注意点も解説!』の記事もご覧ください。 インターネット検索で弁護士を見つける 通常は弁護士事務所のサイトの中で注力分野が紹介されています。 その注力分野の中に「労働問題」が含まれているのであれば、労働問題の事案を相談・依頼することができるでしょう。 また、解決実績などを確認すれば具体的にどの程度の数の案件を扱ってきたのか調べることもできます。 できれば労働問題の経験豊富な弁護士に相談・依頼をしたいでしょうから、弁護士事務所のサイトをいくつか比較した上で決めるようにしましょう。 弁護士会に弁護士を紹介してもらう 各都道府県に設立されている弁護士会に相談すれば、労働問題に詳しい弁護士を紹介してもらうことが可能です。 たとえば東京弁護士会の場合なら、弁護士紹介センターへの申し込み後に弁護士が選任されれば、申し込みから1週間前後で担当弁護士から連絡が来るようです。 参考:弁護士を紹介してほしい|東京弁護士会 なお、弁護士を紹介してもらうこと自体は無料ですが、選任された弁護士に法律相談をする際は30分5,000円の相談料が発生する点にご注意ください(東京弁護士会の場合、労働問題の法律相談は初回30分無料)。 弁護士とは信頼関係が必要不可欠 弁護士は労働者の代理人ですので、信頼関係や相性は何よりも重要です。複数の弁護士を抱える事務所に依頼する場合には、自分の担当が誰になるのかはある程度運の部分もあるでしょう。 弁護士に不満がある状況では、結果に納得できないことも多くなります。弁護士としても、依頼者との信頼関係が破壊されてしまえば辞任してしまうことも考えられます。 そのため、可能であれば複数の弁護士の話を聞いてみて最も信頼のできる依頼先を決めると良いでしょう。 --- ### 退職勧奨(勧告)とは?違法になるケースと対処法を解説! - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-04-24 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6217 - Categories: 退職・退職後の手続き 退職勧奨とは会社が従業員を説得し、自主的な退職を促すことです。退職勧奨は違法かどうか、解雇との違いなど退職勧奨についての疑問に答えていきます。不利益を被る前に、大切な知識を蓄えておきましょう。 「退職勧奨は違法じゃないの?」「上司から自主退職を促されている」 会社から退職勧奨(勧告)されると、退職を受け入れるべきか悩んでしまうと思います。 働き続けたい意思はあっても、退職勧奨を拒否することによって、会社に居づらくなることも考えてしまうでしょう。 もっとも、退職勧奨は、その方法によっては違法となる可能性があります。違法な退職勧奨は無効となり、慰謝料が認められるケースもあります。 そこで、この記事では、退職勧奨の意味と違法となるケース、そして違法な退職勧奨を受けた場合の対処法について解説します。 退職勧奨(勧告)とは何か 退職勧奨とは? 退職勧奨(退職勧告)とは、会社が従業員を説得し、自主的な退職を促すことです。 会社が従業員を辞めさせたい場合には、解雇をするという手段も考えられます。 しかし、解雇は法的に認められるためのハードルがかなり高く、また一方的な解雇となると会社と従業員の間で労働紛争に発展するリスクもあります。 そこで、解雇を避けるため、退職勧奨というかたちで従業員を説得し合意の下で退職をしてもらうという方法が良く採られるのです。 従業員の能力不足や勤務態度が悪い場合、従業員が病気で療養しているような場合などは退職勧奨が用いられる典型的な場面と言えるでしょう。 また、比較的大きい企業では、人員削減のために希望退職や早期退職を募る形での退職勧奨もよく見られます。 【退職勧奨で上司から言われる言葉の例】 「この会社には合わないんじゃないか」 「次を探したほうがいい」 「身体を治すためにも休養に専念したらどうか」 「これ(退職届)書いて出して」 退職勧奨は違法? 会社が退職勧奨をしてくること自体は、違法ではありません。 退職勧奨は、あくまで自主的に退職を促す行為であって、退職するか否かは労働者にゆだねられるからです。 解雇のように強制的・一方的に労働契約を解消する行為ではないため、説得といえる程度の退職勧奨であれば、違法にはなりません。 ただし、退職勧奨が単なる説得の域にとどまらず、暴行や脅迫を伴うものであった場合や、「退職強要」といえるほど長時間・執拗に繰り返されたような場合には違法行為といえるでしょう。 関連記事 ・退職強要とは?退職勧奨との違いと退職強要にあたる行為を解説! 退職勧奨と解雇はどう違う? 退職勧奨解雇内容労働者の自主的な雇用契約終了の申出を促す会社が一方的に雇用契約を打ち切る拒否権ありなし 退職勧奨は、あくまで自主的な退職を促すものであるため、労働者は退職を拒否することができます。 一方で解雇は会社が一方的に雇用契約を打ち切るものであり、解雇を告げられた場合、労働者は基本的には退職(解雇)を拒むことができません。 つまり、拒否権があるかどうかが、退職勧奨と解雇の大きな違いと言えます。 解雇は強制力を持つため、労働契約法上少なくとも「客観的に合理的な理由」があり、かつ「社会通念上相当である」場合でなければ解雇できない、という制限が設けられています。 したがって、会社がそのような条件をクリアするのが難しいと感じている場合、解雇の通知ではなく退職勧奨の手段をとってくることがあるのです。 もっとも、実際に業務に支障が出ているとは言えない程度の能力不足による解雇、さほど経営上の必要性のないコストカットのための整理解雇、就業規則にない理由による懲戒解雇、などは基本的に違法・無効となる可能性が高いです。 違法となりうる退職勧奨(勧告)とは?ケース別に紹介 違法となり得る退職勧奨はどんなものがあるのでしょうか。ケース別に解説していきます。 退職勧奨を拒否したら解雇は違法? 退職勧奨を拒否したことで解雇を告げられたたり、配置転換や降格など不利益な取り扱いをされたら、そのような処分は違法・無効となる可能性があります。 そのような人事権の行使は、客観的に合理的な理由がない可能性が高く、撤回や損害賠償請求をすることが可能です。 また、「退職勧奨を拒否すると解雇するしかない」と迫られてしまい、労働者が「退職勧奨を受け入れるしかない」と思って退職届にサインをしてしまった場合も無効となる可能性があります。 退職の合意は、労働者の真意のもと行われるべきです。 拒否を理由に当然のごとく解雇が行われることを示唆して、退職届にサインをさせることは、社会通念上不相当とみられるでしょう。 退職届の提出やサインを求められた場合には、その場でのサインには応じず、弁護士や労働組合に相談をして実際に解雇される可能性があるのか、不当解雇にならないかを確認すべきでしょう。 退職勧奨を通知され続けたら? 退職勧奨はあくまで説得ではありますが、「退職してくれない?」と執拗に通知され続けると精神的に辛くなりつい合意をしてしまいたくなるかもしれません。 このように、高頻度で、長期にわたり退職勧奨をされ続けた場合は、違法な退職勧奨であり退職も無効と判断される可能性があります。 実際に、以下のような繰り返しの退職勧奨が違法であると判断された事例があります。 退職勧奨が違法であると判断された事例 約2か月半の間に11回出頭させ、最大2時間15分の執拗な退職勧奨を行う(最一小判 昭55. 7. 10) およそ8回、相当程度執拗に、自尊心を傷つける言葉を用いて退職勧奨を行う(横浜地裁令2. 3. 24) 威圧的な退職勧奨は違法? 退職勧奨をされるにあたって、「お前では社会でやっていけない」「勧奨に応えないならどうなっても知らない」などと言われるケースが時折あります。 このように、不当に心理的圧迫を加えたり、名誉感情を害する物言いをして辞めさせたりするケースは違法となります。 また「君のためになると思って」や、「他の場所の方が輝けるよ」など、寄り添うような発言を繰り返す場合もあります。 もちろんそれが真の善意に基づくときもありますが、単なるポーズに過ぎず、しかも執拗に繰り返されたために、病状が悪化してしまうようなケースでは、同様に違法と判断されることがあります。 実際に、以下のような威圧的な退職勧奨が違法と判断された事例があります。 威圧的な退職勧奨が違法と判断された事例 具体的な仕事を与えず、侮辱的な発言をするなど繰り返しの嫌がらせを行う(東京地判平14. 7. 9) 「人件費が浮く」「嫌われていて誰も一緒に仕事をしたくない」など名誉感情を不当に害する言辞を用いる(山口地判平30. 5. 28) 「きみは発達障害なんですよ」など虚偽の病名を告げて退職を迫る(甲府地判令2. 2. 25) 違法な退職勧奨(勧告)を受けたらどうすればいい? それでは、実際に違法と考えられる退職勧奨を受けた場合はどうすればいいのでしょうか。対処法についてお伝えしていきましょう。 退職勧奨されても安易に応じない 上司などから自主的な退職を促されたり、退職勧奨と取れる発言をされたりした場合でも、安易に応じることは避けましょう。 退職勧奨は、あくまで自主的な退職を促すものであるため、会社に勤め続けたい意思がある場合には、はっきりと拒否することが大切です。 また、たとえ退職の意思があったとしても、会社からの退職勧奨にそのまま応じた結果、受け取れる失業保険の日数が短くなってしまうなどの不利益を被る可能性もあります。 執拗に退職勧奨を受けた場合でも即決は危険です。 退職条件や退職を促されている理由を確認し、一度弁護士などの専門家の意見を聞くべきと言えるでしょう。 労働基準監督署・弁護士に相談する 違法な退職勧奨を受けていると思った時の相談先としては、労働基準監督署と弁護士が考えられます。 労働基準監督署 労働基準監督署は、会社が法律違反をしていないかをチェックし、違法があると考えるときに是正命令を出してくれる公的機関です。 労働基準監督署には、無料であらゆる労働問題を相談することができます。ただし、あくまで法律違反をチェックしている機関であるため、退職勧奨の違法性を訊ねても、労基署では対応できないので注意が必要です。 労基署ができることはあくまで労働基準法等に従うように企業に対して是正勧告をすることなので、民事上の問題に関する違法性を判断することはできません。 関連記事 ・退職勧奨の相談窓口は?解決事例&対処法も紹介 弁護士 弁護士に相談することで、法的知識と経験を背景に、退職勧奨の違法性を判断してもらうことができます。 場合によっては、会社への通知をしてくれるケースもあります。 また、違法な退職勧奨だった場合には、弁護士に相談をすれば損害賠償請求ができるケースもあります。 違法な退職勧奨のせいで体調を崩した場合はもちろん、精神的な損害を受けたとして慰謝料請求が可能になる場合もあります。 弁護士に相談する大きなメリットは、交渉や証拠集めと言った面倒な手間を弁護士に一任できること、最終的に訴訟や労働審判などの法的措置も依頼できる点です。 会社が不当に突っぱねるようなケースでも、弁護士であれば強制的な解決を目指すことができます。 関連記事 ・退職勧奨されたら弁護士に依頼すべき?メリットと選び方・費用 違法な退職勧奨の証拠を集める 違法な退職勧奨の証拠を集める方法として、まず録音が考えられます。 違法な退職勧奨といえるかどうかは、働く人の真意を抑圧する状況にあったと言えるかどうかがポイントです。 そのため、圧迫的な恫喝、名誉感情を害する物言いをしてきたことの録音があれば、証拠として非常に有効です。 実際の団体交渉でも、お互いが「言った言わない」の主張を繰り返すだけになり、話が進まないケースがあります。 そのような際、録音さえあれば強く主張をすることが可能ですので、退職勧奨が続くようであれば録音を出来るような環境を整えておきましょう。 また、併せて退職勧奨を受けた際の状況をメモしておくことも必要です。何月何日に、何時間、どのような狭さの部屋で、何人から退職勧奨を受けたのかを明確に記録しておきましょう。 期間や頻度、拘束時間や会社側の人数も違法性に影響しますので、後から分かるようにしておくいいでしょう。 離職票の退職理由は自己都合から会社都合にできる? 「会社都合退職にするから... 」と言われて退職勧奨に応じた後、届いた離職票をみると「自己都合退職」になっていることが時折あります。 この2つでは大きな差がありますから、「話と違う」と思った際には、ぜひ会社都合に訂正するよう動いていきましょう。 会社都合退職は失業保険の面で有利になるって本当? 自己都合退職と会社都合退職では、失業保険で大きな差が出てきます。 失業保険の最短支給開始日と支給日数の面で、会社都合退職が圧倒的に有利です。 会社都合退職であれば、申請後最短7日後には失業保険が支給されます。 一方、自己都合退職の場合は、この7日間に加えて2か月の給付制限があります。そのため、失業保険を貰い始める時期が3か月もずれてしまいますので、大きな違いになります。 また、失業保険を貰い続けることができる期間も異なります。 会社都合の支給日数は90日~330日となっていますが、自己都合は90日~150日が支給日数となってしまいます。そのため貰える額自体も大きく変わってきます。 なぜ会社が会社都合退職を嫌がるのか、会社都合退職と自己都合退職の違いは、『自己都合退職と会社都合退職の違いは?知らないと損する両者の違い』の記事で詳しく解説しています。 退職金の金額にかかわるって本当? 多くの会社では、会社都合退職に比べ、自己都合退職は退職金額が減額されています。そのため、会社都合退職とした方が退職金の面でも有利ということになります。 とはいえ、退職金の金額は基本的に会社の就業規則等の定めによります。 そのため、まずは退職金の規定を確認しましょう。 退職理由を会社都合退職にする方法は? 退職理由を自己都合から会社都合にする方法は、労基署や弁護士からの連絡、そして労働組合からの団体交渉が考えられます。 労基署や弁護士から連絡があれば、自発的に離職票を再発行してくれる可能性もあります。 また、退職勧奨について扱っている労働組合であれば、自己都合を理由とする離職票を変更するよう団体交渉を進めてくれる場合もあります。 また前述したように、離職票の離職理由は失業保険の受給時期にも関わってきます。 早期の給付のため、急ぎ離職理由を変更したい場合は、管轄のハローワークで異議申立てを行うことができます。 実際の離職理由を示す証拠となる書面などをもとにハローワークが判断をくだし、異議申立てが正当であると認められれば、会社都合退職として取り扱われます。 まとめ この記事では退職勧奨について解説しました。 退職勧奨自体は違法ではありませんが、退職勧奨が説得の域にとどまらず、暴行や脅迫を伴うものであった場合や長時間・執拗に繰り返されたような場合には違法行為となる可能性があります。 違法行為であった場合には、退職が無効・解雇が違法となり、会社に対して損害賠償を請求できるケースもあります。 しかし、違法ではない退職勧奨と、違法となる退職強要の判断はご自身では難しいでしょう。 弁護士などの専門家に相談し、退職勧奨が違法であるかどうかの判断をしてもらい、今後の対策を考えましょう。 無料相談を受け付けている弁護士事務所もあるので、一度相談してみてはいかがでしょうか。 --- ### 退職勧奨の相談窓口は?解決事例も紹介 - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-04-25 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6219 - Categories: 退職・退職後の手続き 退職勧奨の相談窓口をご紹介しています。対処法・解決事例・などをについても解説しているので、退職勧奨でお悩みの方は参考にしてください。 退職勧奨とは、会社が労働者に対し「辞めて欲しい」と退職を勧めることです。 「辞めろ」「クビだ」と一方的に告げる解雇とは、最終的に退職を決めるのが労働者の自発的な意思による、という点が異なります。 ですが実際問題として、勧奨にあたり行き過ぎた行為がおこなわれたり、勧奨に応じなかったことを理由に配置転換や解雇など不利益な取り扱いをされることもあります。 この記事では、退職勧奨の相談窓口や、退職勧奨の相談事例、対処法などを解説していきます。 退職勧奨でお悩みの方は最後まで目を通し、労働問題で損をしないように知識を身に付けていきましょう。 退職勧奨の相談窓口3選 弁護士事務所 労働案件に注力している弁護士事務所であれば、違法な退職勧奨を受けた際の対処法などを相談できるでしょう。 全ての弁護士事務所が労働問題に注力しているわけではないため、事前に事務所の公式サイト等を調べ、取扱い分野に労働問題が含まれているかどうか確認することをおすすめします。 無料の法律相談を受け付けている事務所も珍しくないため、まずは相談をしてみるのも良いかもしれません。 なお、弁護士に交渉を依頼した場合、弁護士に労働審判や裁判を提起してもらって会社側と争うことも可能です。 関連記事 ・退職勧奨されたら弁護士に依頼すべき?メリットと選び方・費用 労働組合 違法な退職歓奨を受けた場合、労働組合に相談することもできますので、社内に労働組合がある場合は相談してみることも有効的です。 また、社内に労働組合がなかったり、あっても実質機能していない場合は、社外の労働組合に相談することもできます。 労働組合から団体交渉を申し入れられたら、会社は正当な理由のない限りは交渉を拒否できませんし、不誠実に応じることも不当労働行為として禁止されています(労働組合第7条2号) また、裁判と違い厳格な手続きを必要としないことから、迅速かつ柔軟な解決を目指せます。 ただし、団体交渉をするには組合に加入する必要がありますので、組合費の有無はしっかり確認しておきましょう。 各都道府県の労働局 各都道府県に設置されている労働局は労働問題全般の相談を受け付けています。 労働局は厚生労働省の出先機関の一つで、労働問題の相談対応、当事者に対する指導・助言、紛争解決のためのあっせんなどを行ってくれる機関です。 労働局は日本全国に存在しているためアクセスがしやすく、制度も無料で利用可能なので、労働者の方は気軽に相談することができます。 ただ、労働局の指導・助言に強制力は無く、紛争調整委員会によるあっせんも相手方が欠席してしまうと打ち切られてしまう点にご注意ください。 参考:各都道府県の労働局 相談すべき違法な退職勧奨に該当する例 退職勧奨それ自体は違法行為ではありません。 ですが、勧奨の際に用いられる言動や、勧奨を拒否した後の会社の対応によっては、会社側に違法性が認められる場合があります。 会社内で当然におこなわれていたり、ご自身では当然と思うような行為であっても、外部から客観的に見れば違法行為であるということも考えられます。 まずはご自身がなされた退職勧奨と、勧奨に伴っておこなわれた行為について振り返ってみましょう。 相談すべき違法な退職勧奨とは? 具体的には、退職勧奨に伴う以下のような行為が違法となりえます。 違法となりえる行為 無意味な仕事を押し付けるなどの嫌がらせがおこなわれた 退職を強要するような威圧的、侮辱的な言動があった 退職に誘導する目的での降格、配置転換がおこなわれた 退職拒否の意思表示をしたのに繰り返し、長時間の執拗な勧奨がおこなわれた 以上のように、もしも退職勧奨されるにあたり、嫌がらせ行為や半ば退職を強要するような言葉、不利益な取り扱いが伴っていた場合にはその退職勧奨は違法である可能性があります。 そのような退職勧奨を受けた場合は特に、第三者に相談に乗ってもらうことが重要であると言えます。 関連記事 ・退職勧奨(勧告)とは?違法になるケースと対処法を解説! 違法な退職勧奨をされたらどうなる? 仮に強要されて退職したとしても、「違法な退職勧奨であったため、まだ労働者としての地位にある」ということを労働審判や裁判などを通して確認することができれば、退職は無効となります。 労働者としての地位が確認できた場合、労働者は使用者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなかった(就労できなかった)として、退職日から判決日までの給与(バックペイ)などを請求することができます(民法536条2項)。 さらに会社の退職勧奨に違法性があり、不法行為(民法709条・715条)が成立する場合は、会社に慰謝料を請求できる場合もあります。 退職勧奨されたときの対処法とは 退職勧奨には即答せずに冷静に検討する 退職勧奨はあくまで会社側からのお願いなので、退職に合意するかどうかの決定権は労働者側にあります。 そのため、退職勧奨をされたからといって安易に合意するようなことはせず、じっくりと検討してから答えを出すことをおすすめします。 時おり、面談の場で「今ここで退職届に署名・押印をしてほしい」と言われることもありますが、署名・押印を断っても問題ありません。 「今は考えがまとまっていないので、家に帰ってからよく考えます」などと答えて退職届の提出を保留にした後、後述する労働問題の専門家にその後の対応について相談することをおすすめします。 退職勧奨の録音や書面を残しておく 退職勧奨を受けた際の録音があれば違法性があるか否かを客観的に判断しやすくなるため、面談に呼ばれた際は極力録音をするように心がけましょう。 会社側の面談担当者に許可を取らずに面談内容を録音(秘密録音)したとしても法的に問題はありません。 民事訴訟においては証拠能力に制限は無いため、反社会的な手段で録音しない限り、録音したデータは証拠として認められます。 また、場合によっては会社側から退職勧奨時に書面を渡されることがあります。 通常、こちらの書面には退職勧奨を受ける理由や、退職に合意した際の条件などが記載されています。 こういった書面も退職勧奨に違法性があるかどうか、提示されている条件が妥当かどうか、ということなどを判断するための材料になりえます。 録音・書面といった客観的な証拠があれば、第三者に相談した際に話がスムーズに進みやすくなります。 特に録音があれば会社側との交渉を有利に進めることができるケースがあるため、極力証拠として残すようにしましょう。 退職勧奨の相談事例 (1)労働局から指導・助言をしてもらった事例  倉庫で貨物取扱い業務に従事する労働者が、私病が悪化し診断書提出の上休業した後、経過良好のため復帰を申し出たところ、完治まで復帰が認められず、逆に退職勧奨を受けたことから、復職を求めた事案。  作業内容が肉体的に負担が大きく、現状では復帰が認められないとする被申出人に対し、申出人の希望を考慮の上、作業の軽減など復職の方法を検討するよう助言をした結果、復職に向けて検討することとなった。 口頭助言・指導事例(大阪労働局) (2)労働局のあっせんを利用した事例  Aさんは外資系の会社に勤めていた30代の女性。  入社後の10年間に、企業合併等で組織が再三変更され担当業務が外注されたことから、十分な知識のないサービス商品の営業を担当させられるようになった。  何回かの試験的な営業活動の後で担当を外されると、毎日のように上司から商品知識やマナーについてのペーパーテスト等を課せられて厳しい評価を下される一方で、「自分の将来をよく考えるように。」との勧奨が繰り返された。  Aさん自身も営業には向いていないと感じ、会社都合退職の扱いでの金銭補償、再就職支援等についての会社側の条件案の提示を求めたが、会社側はそれに応じないだけでなく、上司が、Aさんの学歴や吸収合併されてしまったAさんの出身会社を馬鹿にした発言をするなどしたので、自分のキャリアや人格をすっかり否定されたように感じてしまった。  Aさんが横浜駅西口総合労働相談コーナーを訪れると、女性相談員が「退職勧奨に伴って陰湿ないじめが起きることがありますが、決して許されることではありません。 あなた自身の気持ちを整理して、会社に対して声を上げたいということであれば、あっせん制度が利用できます。」と力付けた。 あっせんの結果、Aさんは合併時の早期退職者と同等の、特別な好条件による補償を受けて退職することが出来た。 総合労働相談(助言指導/あっせん事例)【指導課】(神奈川労働局) まとめ 退職勧奨でお悩みの方は、上記でご紹介した相談窓口を利用してみましょう。 動かなければ、単なる自己都合退職として泣き寝入りしなければならない場合もあります。 退職勧奨が厳しいと感じた場合には、すぐにご紹介した窓口に相談し、解決の糸口にしてください。 --- ### 会社をクビになったらするべきこと6選!必要な手続きを解説 - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-06-21 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6208 - Categories: 不当解雇 解雇の種類や、不当解雇がなされた後に解雇を無効にする流れ、退職勧奨をされた際の対処法などを解説していきます。会社をクビになったことで、お悩みの方は参考にしてください。 ある日急に会社をクビになったら、不安や怒りなどのあらゆる感情が湧き上がってくるでしょう。 会社をクビになってしまったら、解雇理由証明書を会社に請求して解雇の理由を知り、今後の対処法を練ることが重要です。 具体的な解雇理由がわかれば、解雇の有効性について争うこともできます。不当解雇に当たる可能性が高い場合は、解雇無効の申し立てを行うことになります。 この記事では、会社をクビになったらするべきこと、退職勧奨されたとき・クビにされそうなときの対処法を詳しく解説します。 解雇の種類と解雇の要件 解雇の種類 会社をクビになるといっても、解雇には大きく分けて3種類があります。種類によって退職後の扱いが変わってくるので、自身がどの解雇に該当するのか確認しましょう。 解雇の種類 普通解雇 整理解雇 懲戒解雇 普通解雇 普通解雇は、傷病により業務遂行能力が失われたときや勤怠不良、業務命令違反などの理由でなされる解雇です。 整理解雇 整理解雇は、使用者の経営上の理由によってなされる解雇です。通常、景気が後退したときや、会社の業績が悪化したときなどに検討されます。 一般的には、リストラ・早期退職者の募集という形で行われることが多いです。 関連記事 ・整理解雇された!有効・無効の判断基準となる4要件を弁護士が解説 懲戒解雇 懲戒解雇は、労働者の企業秩序違反行為への罰である懲戒処分として行われる解雇です。 具体的な行為として、採用判断に重要な影響を与える経歴を詐称していた、2週間以上の無断欠勤をした、重大犯罪を犯した、重大なハラスメント行為を繰り返していた場合などが挙げられます。 関連記事 ・懲戒解雇とは?要件と具体例、解雇されたときの対処法を徹底解説! 解雇の要件 解雇は3種類に分けることができますが、いずれの解雇もそう簡単になされるものではありません。 普通解雇の場合、使用者が労働者を解雇するためには、①客観的に合理的な理由と②社会通念上の相当性が必要であると規定されています(労働契約法16条)。 また、経営不振などの理由で企業が整理解雇をしなければならない場合にも、労働者を解雇するためには、以下の要件を満たす必要があります。 整理解雇が認められるケース 人員削減の必要性 解雇回避努力 人選の合理性 解雇手続きの相当性 懲戒解雇の場合も、①客観的に合理的な理由と②社会通念上の相当性が必要とされています。使用者が身勝手な理由で労働者を懲戒解雇した場合には懲戒権の濫用として無効となります(労働契約法15条)。 解雇が無効となるケースについて詳しく知りたい方は、『解雇を無効にしたい!無効となるケースや対処法を解説』の記事をご覧ください。 会社をクビになったらするべきこと6選! 会社をクビになった、または解雇通知を出されたら、以下の6つのことをするべきです。 会社をクビになったらするべきこと6選 解雇理由証明書を請求する (不当解雇の場合)解雇無効を主張する (解雇を受け入れる場合)解雇予告手当を請求する (解雇を受け入れる場合)退職金を請求する 未払い賃金、未払い残業代の請求をする 失業保険の手続きを行う 以下、具体的にどのような意味があるのか確認していきましょう。 1. 解雇理由証明書を請求する 会社をクビになったら、まずは会社に解雇理由証明書の交付を請求しましょう。 解雇理由証明書には、具体的な解雇理由が記載されています。解雇の有効性について争う場合には、第三者機関が解雇の有効性の判断するための資料にもなります。 解雇理由証明書に関しては、労働者が解雇予告日から退職日までの間に請求すれば、使用者は遅滞なく交付しなければなりません(労働基準法22条2項)。 ただし、労働者側から自分で請求しなければ、会社側に解雇理由証明書を交付する義務は発生しないことに注意が必要です。 なお、解雇理由証明書を解雇日までに請求しなかったとしても、解雇予告日から2年間は解雇理由を記載した退職証明書の交付を請求することができます(労働基準法115条、22条1項)。 関連記事 ・解雇理由証明書を請求する方法は?請求するために知っておくべきことを解説 2. 不当解雇なら解雇の無効を会社側に申し立てる 会社をクビになったとしても、それが不当解雇だと思う場合、就労の意思を示して解雇の無効を会社側に申し立てることが可能です。 たとえば、以下のようなケースだと不当解雇の可能性が高まります。 不当解雇の可能性があるケース 「能力不足だから」というだけの理由で解雇された 配転や希望退職の募集、報酬カットなどがなされずに整理解雇された 客観的に見て軽微な非違行為で懲戒解雇された 解雇の無効を申し立てる際は、まず、就労の意思があることを会社側に書面を送るなどして伝えます。 就労の意思を伝えても会社側が解雇を撤回しない場合、以下のような手段で解雇の無効を主張することになります。 解雇の無効を主張する方法 各都道府県の労働局に労働紛争解決のあっせんを依頼する 弁護士に依頼し裁判所に労働審判を申し立てる 訴訟を提起して解雇無効を主張する もしも解雇が無効であると認められた場合、解雇日から判決日まで就労していれば得られたはずの賃金(バックペイ)が支払われます。 また、不当解雇にあたり、ハラスメントなどの労働者の権利が侵害されるような不法行為が存在した場合、会社に対して慰謝料などの損害賠償請求が認められる可能性もあります。 3. 解雇予告手当を請求する 会社をクビになったら解雇の無効を申し立てることも選択肢ですが、解雇の無効を申し立てず、解雇を受け入れることもできます。 解雇を受け入れる場合は、解雇予告手当が適切に支払われているか確認し、支払われていない場合は解雇予告手当を請求しましょう。 解雇がなされる際は、解雇日の30日以上前に解雇予告が通知されなければなりません。 もしも30日以上前に解雇予告が出されなかった場合、解雇日までの残日数に応じた金額を解雇予告手当として支払ってもらうことができます(労働基準法20条)。 そのため、「今日でクビだから明日から会社に来なくていい」などと使用者から即日解雇を宣告された場合は、少なくとも30日分の解雇予告手当が支払われます。 解雇予告日の10日後が解雇日と設定された場合は、少なくとも20日分の解雇予告手当が支払われます。 なお、労働者の責に帰すべき事由での解雇(懲戒解雇)で、会社が労働基準監督署長の除外認定を受けているような場合は、解雇予告手当は支払われないこともあります(20条1項但し書き、3項)。 関連記事 ・解雇予告手当がもらえない!法的にもらえないケースや請求方法を解説! 4. 退職金を請求する 解雇を受け入れたものの、退職金が支払われない場合は、退職金を請求しましょう。 就業規則で退職金について記載がある場合は、会社から退職金をもらえる権利が生じます。 ただし、多くの企業では、「懲戒解雇の場合は退職金は支払わない」という旨を就業規則で定めています。そのため、懲戒解雇されたら、退職金を請求できないとお考えの方もいるでしょう。 しかし、懲戒解雇されたとしても、退職金を請求できるケースがあります。 裁判例上、退職金が全額不支給になるのは「当該労働者の永年の勤続の功を抹消してしまうほどの重大な不信行為があること」が条件となっています。 つまり、重大な犯罪行為や企業秩序を著しく乱す行為などでなければ、懲戒解雇がなされたとしても退職金は(一部)支払われる見込みがあるということです。 たとえば、鉄道会社の従業員が痴漢行為を行い、懲戒解雇された事例では、当該労働者の永年の勤続の功を抹消してしまうほどの重大な不審行為ではないとして、本来の退職金の支給額の3割が認められています(『小田急電鉄事件』東京高判平15. 12. 11)。 そのため、もしも懲戒解雇されて退職金が不支給になったとしても、事案によっては退職金の一部または全額分の支払いを求めることが可能です。 関連記事 ・退職金未払いの無料相談窓口は?退職金が支払われないときの対処法 5. 未払い賃金、未払い残業代の請求をする 会社をクビになったときに、未払い給料や未払いの残業代がある場合は、退職金などと同時に請求するのが一般的です。 実際に請求するときは、その賃金の種類(月給、手当、賞与など)や金額を示す証拠などを確認し、内容証明郵便を送るのが効果的です。 6. 失業手当(失業保険)の申請をする 会社をクビになったら、すぐに転職先が決まるケースは珍しいでしょう。 転職先が見つかっていない場合には、再就職までの期間の生活を安定させるために失業手当(失業保険)の受給手続きを行ってください。 このとき、離職理由が自己都合退職か会社都合退職かで、給付のための条件と給付開始時期・給付期間が異なります。 解雇は、一般に会社都合退職にあたります。 会社都合退職の場合、離職日以前の1年間に、雇用保険の被保険者期間が合計で6か月以上あれば、解雇後にハローワークで失業手当の申請が可能です。 申請後、7日間の待機期間を経て失業手当(雇用保険の基本手当)が支給されます。支給までには約1か月かかります。 ただし、労働者の責めに帰すべき重大な理由によって解雇された場合、7日間の待期期間+1か月~3か月間は失業手当が支給されない点にご注意ください(雇用保険法33条)。 なお、失業保険の受給手続きにあたっては離職票の提出が必須となりますので、会社に交付を依頼する必要があります。 関連記事 ・失業保険(雇用保険)とは?受給条件・申請期間・無料相談窓口も! 退職勧奨されたとき・クビにされそうなときの対処法 まだ会社をクビにされてはいないものの、退職勧奨されてしまったときやクビにされそうなとき、どのように対処すべきなのでしょうか。 一度対応を誤るとその後の紛争で不利になってしまうこともありますので、適切に対処していきましょう。 退職勧奨に安易に合意してはいけない 会社側から退職勧奨をされても、素直に応じる必要はありません。 解雇が認められる条件は非常に厳しいため、会社側はいきなり解雇を宣告するのではなく、退職勧奨という形で労働者に自己都合退職を促すことがあります。 退職勧奨に応じて退職してしまうと、後から不当解雇として争うことが困難になります。会社側から退職勧奨をされたとしても、安易に合意はしないようにしましょう。 ただ、場合によっては何十回も執拗に退職勧奨をされたり、何時間も会議室に拘束されたりすることもあります。 そのような強迫にあたるほどの強要がなされ、嫌々ながらも退職に合意した場合、退職強要であるとして民法96条に基づき退職の意思表示を取り消すことが可能です。 退職強要をされて退職に合意してしまった場合、弁護士などに相談すれば、今後の対処法などを提示してくれるでしょう。 退職強要について詳しく知りたい方は『退職強要とは?退職勧奨との違いと退職強要にあたる行為を解説!』の記事をご覧ください。 「自己都合退職しないならクビにする」は退職強要になりうる 労働者が横領などの問題を起こしてしまった結果、使用者から以下のような退職勧奨をされるケースがあります。 「自己都合退職をしないなら、告訴するか懲戒解雇にする。そうなるとあなたの将来や子供の就職に支障が生じるだろうから、自己都合退職にしたほうがいい」 このように、告訴や懲戒解雇がなされた場合の不利益を説かれ、畏怖した労働者が退職に合意したものの、告訴や懲戒解雇後の不利益を説いて退職を迫るのは強迫行為であるとして退職の意思表示の取消を認めた判例があります(『ニシムラ事件』大阪地決昭61. 10. 17)。 そのため、上記のようなことを言われて退職に合意してしまったとしても、後から解雇の無効を申し立てることが可能です。 会社をクビになる前に提示された改善案を実施する 会社をクビになる前に、通常は会社側から当該労働者に対して指導・教育がなされます。 その指導・教育を受けた結果、勤務態度を改めれば、労働者が解雇される根拠は弱まるでしょう。 しかし、指導・教育が何度もなされたにもかかわらず、労働者が改善しなかった・改善しようとしなかった場合、解雇後に解雇の無効を認めてもらうことは難しくなります。 実際、上司の指示に従わない、周りの判断を仰がずに独断で事務処理を行う、などの行為が問題視されて4回のけん責処分を受けたものの、態度に変化が見られなかったため、就業規則の「勤務成績又は能率が著しく不良で、就業に適しないと認めるとき」に当たるとして解雇が認められた判例があります(『カジマ・リノベイト事件』東京高判平14. 9. 30)。 会社側から指導・教育がなされずにいきなり解雇された場合は不当解雇の可能性が高まりますが、そうではない場合、労働者は改善努力をして解雇されるリスクを抑えるべきでしょう。 --- ### 能力不足で会社から解雇されたときの対処法は?不当解雇の可能性が高い! - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-04-04 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6203 - Categories: 不当解雇 能力不足で会社からクビにされた際の対処法や、クビが認められるケース、不当解雇問題の相談窓口などを解説していきます。解雇問題でお悩みの方はぜひご参考にしてください。 能力不足を理由に会社からクビを宣告された場合、その解雇は不当解雇である可能性が非常に高いです。 通常、単なる能力不足で解雇が認められることはほぼないため、もしも能力不足で解雇された場合、不当解雇の解決金を請求できる可能性があります。 ただ、それを知っている会社側から自主都合退職を促されるケースがあります。 応じてしまうと後から不当解雇で争うことが難しくなってしまう可能性があるため、安易に退職に合意しないことに注意が必要です。 この記事では、能力不足で会社から解雇された際の対処法や解雇が認められるケース、不当解雇の相談窓口などを解説していきます。 能力不足で会社から解雇されることはあるのか 「能力不足で会社をクビ」は原則認められない 使用者(会社)から「能力不足なのでクビにします」と通知されたとしても、素直に応じる必要はありません。 なぜならば、単に「平均よりも職務能力が劣っている」という理由だけで解雇された場合、それは「解雇権の濫用」とみなされる可能性がきわめて高いためです。 客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、解雇権の濫用であるとして解雇は無効となります(労働契約法16条)。 「能力不足による解雇」は合理的な解雇事由であるとは言えないため、能力不足だけを理由とした解雇が認められることはまずありません。 「能力不足で会社をクビ」が認められるケース しかし、①著しく成績が不良で実際に業務に支障が出てしまっており、②労働者本人に改善の見込みがみられず、③評価が公正である場合などは、能力不足を理由とした解雇が認められる可能性が高まります。 能力不足を理由に解雇が認められるケース 著しい成績不良で業務に支障をきたしている 労働者本人に改善の見込みがみられない 評価が公正 著しい成績不良で業務に支障をきたしている 著しく成績が不良で業務に支障をきたしている場合には、能力不足を理由とした解雇が認められる可能性はあります。 ここでの成績とは、他の社員との比較ではありません。 相対評価による成績が悪いことを理由に解雇が認められてしまえば、営業成績が一番低い従業員は常に解雇のおそれがあることになってしまいます。 営業成績が一番低いなどの能力不足では、解雇は認められない可能性が高いです。 解雇が認められる可能性があるのは、従業員の直接のミスで大型契約が打ち切りになったり、契約件数が0件にもかかわらず給与が高額で経営を圧迫してたりする場合などです。 労働者本人に改善の見込みがみられない 会社が教育や指導を何度も試みたにもかかわらず、労働者本人に改善の見込みがみられない場合は、解雇が認められる可能性があります。 会社側は取るべき対応を取ったと判断されれば、裁判所なども解雇を認める可能性高くなるでしょう。 評価が公正 使用者が従業員を解雇するためには、公正な評価に基づき、解雇を行わなければなりません。 社長が勝手に能力不足と判断して解雇したり、上司による主観的な判断で解雇したりすることはできないということです。 言い換えると、能力不足の評価が公正に行われている場合には、解雇が認められる可能性があります。 能力不足や仕事のミスで解雇が認められなかった判例 能力不足を理由に解雇されているのは、判例上、採用時に高い能力を期待されて中途入社したものの、能力を発揮できず、改善もしなかった者が中心です。 営業成績が悪かったり、仕事のミスを何度か起こした程度で解雇されるようなことは基本的にありません。 以下で紹介する2つの判例でも、能力不足・仕事のミスを理由とした解雇は認められていません。 セガ・エンタープライゼス事件 人事考課で下位10パーセントに位置付けられていた労働者が、就業規則の『労働能率が劣り、向上の見込みがない』という普通解雇事由を適用されて解雇された事案です(『セガ・エンタープライゼス事件』東京地決平11. 10. 15)。 裁判で争った結果、労働者側が勝訴して解雇は無効となりました。 上記判例の場合、確かに労働者の労働能力は平均より劣っているものの、その人事考課は相対評価であって絶対評価ではありませんでした。 そのため、ただちに労働能率が著しく劣り、向上の見込みがないとまでいうことはできない、と裁判では結論づけられました。 また、使用者側は労働者に対して体系的な教育、指導をして労働能力の向上を図る余地があったにも関わらず、それを実施していなかった点も解雇権濫用に該当する理由のひとつとなりました。 松筒自動車学校事件 6か月の間に53回も事務処理上のミスを起こしたことを理由に普通解雇がなされました。ただし、当該労働者が明らかに関わったミスは6回程度で、そのミスも軽微かつ内容・原因が判明しており、大量に事務処理がなされる中の一部でミスが生じるのはやむを得ないと判断された事例です(『松筒自動車学校事件』大阪地判平7. 4. 28)。 解雇に関しても、就業規則で定められている解雇事由である『技能、能率、態度が著しく不良で、将来改善の見込みがないと認めたとき』及び『その他前号に準ずることがあったとき』には該当しないため、無効になりました。 判例からも分かるように、労働能力が平均よりも劣っているなどの理由で軽微なミスを何度か重ねたとしても、それだけを理由に解雇が認められることはありません。 そのため、使用者から「何度もミスを繰り返しているからクビにします」と解雇を宣告されたとしても、申し立てれば解雇が無効となる見込みがあります。 【ケース別】能力不足で解雇されることはある? 能力不足で解雇されるといっても、新卒・中途や雇用形態によって状況は異なります。 ここではケース別に能力不足で解雇されることがあるのかどうか、解説していきます。 新卒採用で雇用されたが能力不足の場合 新卒採用では、採用時点で即戦力ということはなく、今後の成長を見込んだポテンシャル採用であることが通常です。 そのため、他の社員と比較して能力や結果に差があったとしても、能力不足であると直ちに認められることは低く、解雇は違法になる可能性が高いです。 一般的には、一時的に能力不足であっても、労働能力の向上を図るために指導や教育などが行われます。 それでも、能力の改善や成果が見られない場合には、ほかの部署に配置転換させたり、上司を変えたりすることが使用者側には求められます。 指導や教育、配置転換などが行われずに解雇された場合は、不当解雇である可能性が高いです。 試用期間中に能力不足の場合 試用期間中であっても労使間で労働契約が締結されている以上、単なる能力不足を理由にいきなり解雇されたら違法である可能性が高いです。 多くの企業では、入社後1~6か月程度を試用期間としています。 採用段階では知ることができなかった事実が試用期間中に判明し、それによって就労を続けることが困難であると客観的に判断されるような場合であれば、使用者に解雇を検討されることがあります。 通常であれば、解雇をされる前に能力不足を改善するための指導が企業側から行われます。 改善指導の結果、当該従業員の能力不足が改善され、引き続き正社員として働いても問題が無いと判断されれば試用期間中に解雇されることはないでしょう。 なお、試用期間中の解雇は本採用後よりも認められやすくなっており、適法となる可能性もあります。 たとえば面接の際に能力を過大にアピールして入社するも、実際にはその能力が備わっておらず、改善の見込みもない場合などです。 関連記事 ・試用期間中の解雇は弁護士に相談すべき!解雇理由と弁護士に相談するメリット 幹部社員・専門職で雇用されたが能力不足の場合 幹部社員や専門職、ヘッドハンティングで採用されたにもかかわらず能力不足が明らかになった場合は、通常の雇用よりも解雇される可能性が高まります。 この場合は、企業も高い能力を期待して採用しており、対価である給与も支払われていることが多いからです。 配置転換や教育・指導も想定されていないため、裁判に発展した場合でも、解雇が認められやすい傾向があります。 人事本部長として中途入社した労働者が、職務を遂行することができなかったなどの理由で人事部本部長としての適格性に欠けると判断され、就業規則で定められていた「業務の履行又は能率が極めて悪く、引き続き勤務が不適当と認められる場合」という普通解雇事由に該当するとして、解雇が認められた事例もあります(『フォード自動車事件』東京高判昭59. 3. 30)。 能力不足で解雇されそう・解雇されたとき対処法 会社からの退職勧奨には応じない 会社から能力不足を理由に退職勧奨をされ、退職の同意書への署名押印を求められても素直に応じる必要はありません。 同意書に署名押印してしまうと、「労働者が自らの意思で自己都合退職をした」とみなされ、後で不当解雇として争う場合、不利になるおそれがあります。 そのため、同意書への署名押印を求められても断るようにしてください。断る際に理由を求められた場合には、「弁護士に相談する」などと伝えればいいでしょう。 ただ、あまりにも強引な手法で迫られ、嫌々ながらも退職に合意してしまった場合、退職強要であると認められれば民法に基づき退職の意思表示を取り消すことができます(民法96条1項)。 具体的には、面談回数が多すぎる、面談時間が長すぎる、面談で罵声を浴びせられる、労働者本人が退職勧奨を拒否しても繰り返し退職を求められるといった場合、退職強要とみなされる可能性があります。 関連記事 ・退職勧奨されたら弁護士に依頼すべき?メリットと選び方・費用 解雇理由証明書を請求する 能力不足で解雇された場合、解雇理由証明書を使用者に請求しましょう。 解雇理由証明書には、具体的な解雇理由が記載されています。解雇の有効性について争う場合には、第三者機関が解雇の有効性の判断するための資料にもなります。 解雇理由証明書に関しては、労働者が解雇予告日から退職日までの間に請求すれば、使用者は遅滞なく交付しなければなりません(労働基準法22条2項)。 ただし、労働者側から自分で請求しなければ、会社側に解雇理由証明書を交付する義務は発生しないことに注意が必要です。 なお、解雇理由証明書を解雇日までに請求しなかったとしても、解雇予告日から2年間は解雇理由を記載した退職証明書の交付を請求することができます(労働基準法115条、22条1項)。 能力不足で解雇されたときの相談窓口 能力不足で解雇された場合、労働問題の相談窓口に相談すれば解決する可能性があります。 労働問題・労働基準法違反については主に以下の窓口で相談することができます。 各相談窓口の違いについて詳しく知りたい方は、『不当解雇の無料相談窓口7つを比較!弁護士やハローワーク・労基署・労働組合の違いは?』も参考にしてください。 能力不足で解雇されたときの相談窓口 労働組合 弁護士 労働基準監督署 労働局 労働組合に相談する 能力不足を理由として解雇された場合、労働組合に相談すれば、その解雇が不当解雇にあたるのかどうかを判断してくれるでしょう。 労働組合なら、相談者の勤務態度や仕事の成果、会社側からなされた指導・教育の内容や解雇理由などから、解雇を無効と主張する団体交渉ができるのかどうかを判断します。 解雇無効の主張を行う場合、それと同時に不当解雇の解決金も会社側に請求することになります。 通常、団体交渉による請求は、労働裁判よりも短期間で終わります。 関連記事 ・不当解雇の解決金(和解金)相場は?実例もご紹介! 弁護士に相談する 解雇理由証明書を持参して弁護士に相談すれば、労働組合に相談したときと同様に、今回の解雇が不当解雇にあたるのかどうか判断してくれます。 その際、不当解雇を撤回する方法や、解雇日以降に支払われていない給与を支払ってもらえる見込みがあるのかどうか、という点なども確認することができるでしょう。 弁護士に相談するメリットは以下のものが挙げられます。 弁護士に相談するメリット 訴訟や労働審判など法的措置が使える 法的措置を背景に交渉ができる 法律の専門家として解決金の相場を知っている 労働組合や働く方が請求しても強気で突っぱねてくる会社だとしても、法的措置を背景に交渉をすることで迅速に解決する可能性があります。 また、客観的な証拠と共に法的措置を利用することで、より迅速かつ強制的に解決することも期待できます。 最終的な紛争解決を期待できるところが、弁護士に相談する何よりのメリットです。 関連記事 ・不当解雇は弁護士に相談すべき?相談するときのポイントを解説 労働基準監督署に相談する 明確な労働基準法違反がある場合、労働基準監督にその旨を申告すれば、当該違反の点のみ企業に是正勧告をしてくれます。 労働基準監督署は、事業所が労働基準法を守っているかどうかを監督する機関です。 そのため、「不当解雇されたので、監督署から働きかけて解雇を無効にしてほしい」と民事上のトラブルの解決を依頼しても基本は何もしてくれません。 不当解雇を撤回するためには、前提として、そもそも解雇の要件を満たしているのかどうかという点から判断する必要があります。 労働基準監督署は解雇要件の判断権限を持っていないため、不当解雇に関する相談をしても対応してくれない可能性が高いでしょう。 会社に違反行為を是正してもらいたい場合や、そもそも違反行為なのかどうか判断がつかない場合に限り、労働基準監督署に相談してみるといいでしょう。 労働局に相談する 各都道府県に存在する労働局や労働基準監督署の中に設置されている総合労働相談コーナーでは、労働者と使用者の間で生じた労働問題全般を相談することができます。 当然ながら能力不足を理由とした解雇について相談可能ですし、それ以外でも、労働問題に関するあらゆる分野の相談をすることができます。 相談後、労働者が助言・指導の申し出を行えば、労働紛争の当事者に対して都道府県労働局長から助言・指導がなされます。 こちらの助言・指導はあくまで紛争当事者による自主的な解決を促進する制度なので、一定の措置の実施を強制するものではありません。 助言・指導がなされても労働問題が解決しなかった場合、弁護士や労働組合に労働紛争の解決を依頼するか、労働局の紛争調整委員会によるあっせんを受けることになります。 紛争調整委員会によるあっせんは無料で利用できる制度です。 あっせんでは、紛争当事者の間に紛争調整委員会(弁護士、大学教授、社会保険労務士などで構成されます)が入り、当事者の主張が確認され、話し合いを通した紛争解決が図られます。 あっせん実施後、当事者間で合意が成立すれば紛争解決したとみなされます。 ただ、あっせんを実施しても当事者が不参加の場合は打ち切りとなります。あっせんが行われなくなってしまう可能性もあるので、注意が必要です。 --- ### 労働相談ができるおすすめの窓口は?無料・24時間受付の窓口も! - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-06-13 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6206 - Categories: 労働問題全般 サービス残業や不当解雇など、労働問題を解決するための相談窓口をまとめました。24時間対応の相談窓口もあるので、困ったときは専門家に相談しましょう。 「毎日長時間残業していて夜遅い時間にしか相談できない」「労働問題を24時間相談できる窓口はある?」 この記事では、労働相談をしたいとお考えの方に向けて、労働相談ができるおすすめの相談窓口をまとめました。 不当解雇や仕事の悩み、セクハラ・パワハラなど、労働関係で問題を抱えていると毎日が辛くなってしまうものです。 無料で相談できる窓口や、24時間相談を受け付けている窓口もあるので、労働問題でお悩みを抱えている方はすぐに相談しましょう。 労働問題全般の相談ができる窓口 厚生労働省の総合労働相談コーナー 厚生労働省が所管する「総合労働相談コーナー」は、あらゆる労働問題について相談できる窓口です。 労働者や就活生、学生でも利用可能で、専門相談員が電話で対応してくれます。アルバイトや仕事の悩みなども電話で相談できます。 予約も不要で、無料で利用可能です。また、相談や助言で解決しない場合は、あっせん制度も利用できます。 さらに労働基準法違反の疑いがある場合は、担当部署に引継ぎ、行政指導もしてくれる場合もあります。 総合労働相談コーナーは全国各地に設置されています。電話番号は所在地によって異なりますので、お住まいの県から探してみましょう。 料金無料Webサイト「○○県 総合労働相談コーナー」で検索 参考:総合労働相談コーナー 自治体の相談窓口 多くの都道府県や市区町村は、労働相談窓口を開設しています。自治体によって異なりますが、電話や面談、メール相談を受け付けている窓口もあります。 なお、一般的に自治体の労働相談窓口は、労働基準法令上の監督権限を有していないため、会社への調査・指導を行うことはできません。 会社の労働基準法違反を調査・指導してもらいたい場合には、労働基準監督署などに相談しましょう。 料金無料Webサイト「〇〇市 労働相談」で検索 弁護士事務所 弁護士は、法的な問題を解決する専門家です。会社に対して訴訟などをお考えの場合は、弁護士事務所への相談が有効です。 労働事件について弁護士に相談するメリットは、これまでの経験や判例などから、労働審判・訴訟を視野に入れた回答をもらえる点です。 また、依頼すればそのまま会社との交渉や労働審判などの手続きにスムーズに進んでもらえるメリットもあります。 弁護士事務所に相談するデメリットは、費用が発生することです。弁護士相談にかかる費用は1時間5,000円~1万円が相場です。 労働問題の内容によっては、無料で相談を受け付けている弁護士事務所もあるので、探してみるといいでしょう。 料金無料または1時間5,000円~1万円程度Webサイト「労働問題 弁護士事務所」などで検索 関連記事 ・労働問題を依頼すべき弁護士とは?選び方や注意点も解説! 法テラス 「色々な弁護士事務所があって選べない!」という場合は、「法テラス」を利用しましょう。 法テラスは、国が設立した法的トラブル解決の総合案内所で、アドバイスを始め、最適な窓口の紹介もしてくれます。 頼れる弁護士を紹介してくれることもありますので、まずは相談をしてみてください。 電話番号0570-078374(法テラス・サポートダイヤル)受付時間平日 9時~21時、土曜 9時~17時料金無料 参考:法テラス NPO法人労働組合 作ろう!入ろう!相談センター 労働組合作ろう!入ろう!相談センターは、様々な労働問題の相談を受け付けているNPO法人です。 会社で従業員として働く人であれば誰でも相談ができ、中立的立場でなく、完全に労働者側にたった労働相談をおこなうところが特徴です。 相談方法には電話・メール・来所(要予約)の3つのやり方があります。 電話や面談の場合、平日の午前9時~午後5時までの営業時間内での対応になるので注意してください。 電話番号03-3604-1294受付時間電話/面談:平日9時~17時メール:24時間料金無料 参考:NPO法人労働組合 作ろう!入ろう!相談センター メンタル・労働条件の相談ができる窓口 こころの耳:メンタルの相談 こころの耳は、厚生労働省が運営しているメンタルヘルス・ポータルサイトです。精神的に参っている方は相談してみましょう。 こころの耳ではさまざまな相談窓口が用意されており、電話とメールに加えSNS(LINE)での相談が可能です。 相談の結果、必要だと判断されれば、より専門的な機関を紹介してくれる場合もあります。メンタルケアの抜本的な解決も可能です。 電話番号0120-565-455受付時間電話:月・火曜日 17:00~22:00 / 土日 10:00~16:00メール:24時間SNS(LINE):月・火曜日 17時~22時(受付は21時30分まで)/ 土日 10時~16時(受付は15時30分まで)料金無料 参考:こころの耳 労働条件相談ほっとライン:労働条件の相談 労働条件相談ほっとラインは、長時間労働やサービス残業、賃金未払い残業などの問題について専門家に相談することができる窓口です。 全国誰でも、匿名でも電話相談可能です。 電話番号0120-811-610受付時間平日17時~22時 土・日・祝日:9時~21時料金無料 参考:労働条件相談ほっとライン ハラスメント・いじめの相談ができる窓口 ハラスメント悩み相談室 セクハラに関する労働相談については、厚生労働省が「ハラスメント悩み相談室」を設けています。セクハラだけでなく、パワハラやマタハラも対象になっていますので、まずは連絡をしてみましょう。 電話だけでなく、メールやSNSによる相談にも対応しています。 電話番号0120-714-864受付時間電話:平日12時~21時、土日10時~17時メール、SNS:24時間料金無料 参考:ハラスメント悩み相談室 みんなの人権110番(全国共通人権相談ダイヤル) 法務省が運営する「みんなの人権110番(全国共通人権相談ダイヤル)」も心強い味方です。 職場いじめやパワハラでは、証拠がとても大切です。録音やメール文面などがあれば、それも相談時に伝えてみてください。 電話番号0570-003-110受付時間電話:平日8時30分から17時15分メール:24時間料金無料 参考:みんなの人権110番(全国共通人権相談ダイヤル) 相談前の注意点は? 相談前に準備しておくべきことは? 電話・メールなどで労働相談をする際には、①事案を簡潔に説明すること②どのような証拠があるか事前にまとめておくことが大切です。 また、電話で相談する場合は、こちらから一方的に話し続けるのではなく、ある程度説明をしたら、返答を待ちましょう。 有効な相談とするためには、ポイントを絞って相談することが大切です。 相談後はどんな対応をしてくれる? 労働事件の相談後にしてくれる対応は相談先によってさまざまです。総合労働相談コーナーや法テラスでは、基本的に解決に一番最適な担当部署を紹介してくれます。 労働基準監督署などの行政機関や弁護士事務所などが主な紹介先になるでしょう。 労働基準監督署では、事情を検討して違法の疑いがある場合に、公的に会社に指導勧告をしてくれる場合があります。それを受けて労働環境や状況が改善されることが期待できます。 また、弁護士事務所へ相談した場合は、その後労働審判や民事訴訟にスムーズに進む可能性があります。ただ、着手金や成功報酬などが弁護士によって異なりますので、確認をしておきましょう。 労働組合であれば、相談後に団体交渉をそのまま引き受けてくれるところもあります。団体交渉は、労働組合法上、会社側が不当に拒むことができません。 迅速で柔軟な解決を目指すことができるでしょう。 ただし、組合員登録に際し、組合費がかかることがあります。こちらも何が無料で、何が有料かをしっかり確認しておきましょう。 労働相談は本当に効果的? 労働相談をしたいと思っても、効果的なのかわからず、二の足を踏んでしまうケースもあると思います。労働問題で相談が多い事例を基に、メリットを解説します。 残業代・給料未払いについて相談するメリット 弁護士事務所や労働基準監督署などに残業代・給料未払いについて相談することで、未払いになっている金銭を請求するための方法や、収集すべき証拠などについて詳しく知ることができます。 未払い残業代を個人の力で請求しようとすると、会社側が頑なな姿勢を崩さなかったり、不利益な取り扱いをしたりして、うまく解決に至らない場合があります。 専門家に相談・依頼することで、会社側が真摯な対応をみせ、残業代・給料未払いの請求に応じてもらいやすくなることも大きなメリットです。 また、労働基準監督署に相談すると、場合によっては会社に調査・指導が入り、未払いになっている残業代や給料が支払われるようになる可能性もあります。 退職問題について相談するメリット 適切な相談窓口に退職問題の相談をすれば、最適な方法、手段を案内してくれるというメリットがあります。困った場合はなるべく早く相談することが大切です。 たとえば、退職勧奨(退職するよう会社から勧められていること)を受けているケースでは、「そんなものなのかな」と深い意味も分からず合意書にサインをしてしまう場合があり、その後退職や解雇について争えなくなってしまいます。 また、有期雇用契約で10年働いたにも関わらず雇い止めをされたケースで、相談自体が契約最終日を過ぎてしまったために、正社員と無条件で転換できる権利を使用できなかったこともありました。 すぐに適切な窓口に労働相談をしたため、サインせずに不当な退職を免れた場合や、解決金をしっかりと貰えたケースが多くあります。 パワハラ・セクハラについて相談するメリット 労働基準監督署といった厚生労働省管轄の窓口にパワハラやセクハラについて相談した場合、会社に対して指導や是正勧告をしてくれる場合があります。 その後自発的な改善がされなければ、労働組合や弁護士事務所に相談をし、団体交渉や労働審判、民事裁判の手続きを進めていくことになります。 パワハラやセクハラの証拠を渡しながら、どのような主張や反論をするか、打ち合わせを進めていきます。 労働組合や弁護士事務所に相談すれば、法的に自分の紛争がどのような結末を迎えるのか、解決金額の目安はどのようなものかを知ることができます。 何も見通しがつかないことが一番辛い状況ですから、早い段階で相談してみましょう。 メールであれば24時間相談受付している窓口も! 24時間労働問題を相談できる窓口をお探しの方は、メールで相談することがおすすめです。 職場で夜遅くまで働いていて日中の電話相談が難しい場合でも、メールで24時間相談を受け付けている相談窓口であれば、いつでも相談を送ることができます。 メールで相談する際には、上記でご紹介した窓口の中では「NPO法人労働組合 作ろう!入ろう!相談センター」「ハラスメント悩み相談室各窓口」や、24時間相談を受け付けている弁護士事務所などが候補になるでしょう。 そのほかのメール相談窓口は『労働相談はメールで可能!無料で相談可能な窓口6選!』でご紹介しています。 労働問題の中には時効があるものや、日付が経過するとともに証拠の収集が難しくなるものも存在します。 労働相談を相談せずに、ご自身だけで悩んでいてもいいことはありません。まずは適した窓口に相談してみてください。 --- ### 整理解雇された!有効・無効の判断基準となる4要件を弁護士が解説 - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-06-21 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6201 - Categories: 不当解雇 整理解雇の有効・無効の判断基準となる4要件を詳しく解説しています。いきなり整理解雇を言い渡された場合などは、整理解雇が無効となる可能性が高いです。お悩みの方は弁護士の相談してください。 「いきなり整理解雇を言い渡された」「整理解雇は違法ではないのか」 この記事では整理解雇された方に向けて、整理解雇において有効・無効の判断基準となる4つの要件を詳しく解説しています。 整理解雇とは、会社の収益性が悪化して事業の継続が困難となったとき、会社を存続させるためにやむを得ず行う解雇です。 会社は経営不振になったからといって、労働者を自由に整理解雇できるわけではありません。整理解雇が認められるためには、4つの要件が総合的に判断されます。 不当な整理解雇をされた場合に弁護士に相談するメリットについても解説しているので、ぜひ最後までご覧ください。 整理解雇の4要件 整理解雇は、業績が悪化している会社が、事業を継続させるために人員整理をする解雇です。 整理解雇の有効性は、以下の4要件を基準に判断されます。 整理解雇の4要件 人員削減の必要性 解雇回避努力 人選の合理性 解雇手続きの相当性 過去の裁判では、4つの要素を総合的に検討し、整理解雇が有効となるかを判断しています。たとえば4要件のうち3要件しか満たしていなかったとしても、3つの要素が重大であるために解雇が認められたケースもあります。 それぞれの要件を詳しく見ていきましょう。 (1)人員削減の必要性 整理解雇をするには、人員削減をしなければ経営を維持できないという事情が必要です。人員削減をしなくても、コスト削減を始めとする他の方法で事業を再構築できるなら、整理解雇は認められません。 また、倒産まではいかなくても、少なくとも債務超過や赤字累積など、具体的に経営を維持する困難さがあることが必要です。単に売り上げが少ないというだけでは、この要件を満たしません。 (2)解雇回避努力 解雇を回避するための努力を最大限していなければ、整理解雇はできません。具体的には、配転や出向、賞与のカット、希望退職の募集をかけることなどが挙げられます。 また、雇用調整助成金といった公的な手続きを使わずに安易に解雇することも、努力義務を怠っていると評価されます。 (3)人選の合理性 整理解雇をするときには、人選の合理性も要求されます。これは、整理解雇の対象者を適切な基準で選ばなければならないというルールです。 単に好き嫌いで選ぶ場合はもちろん、業務上必須でないにもかかわらず、性別や年齢だけを基準に安易に選ぶことは合理的ではないと考えられます。 一般的には、欠勤日数や遅刻回数、命令違反回数、勤続年数などを基準にすることが多いです。 (4)解雇手続きの相当性 整理解雇をするときには、適正な手続きを踏む必要があります。具体的には労働組合や労働者側と協議して整理解雇の必要性や実施方法、時期などについて説明を行い、なるべく理解を得なければなりません。 そのため、いきなり整理解雇を言い渡された場合などは、この要件を満たさないことになります。事前に整理解雇の可能性を伝えていても、協議を拒否していたようなケースも同様に違法となります。 不当な整理解雇をされた時に弁護士に相談するメリット 不当な整理解雇をされた場合は、弁護士に相談してみましょう。 突然のことで戸惑ってしまうかもしれませんが、弁護士に相談すれば不当な整理解雇に対して、具体的なアドバイスをもらうことができます。 不当解雇かどうか判断してもらえる ご自身では不当な整理解雇かどうか判断できないというような場合でも、弁護士に相談すれば不当な解雇にあたるか判断してもらうことができます。証拠や情報が不足しているなら、証拠の収集方法についてもアドバイスをもらうことができるでしょう。 アドバイスの結果に応じて対処法を決められるので、明確に道筋を立てられることも弁護士に相談するメリットです。 また、弁護士に依頼すれば、整理解雇に関する紛争を一任することも可能です。面倒な手続きはすべて任せられることに加え、自分自身で会社と対応しなくて良いのでストレスもかからずに済むでしょう。 関連記事 ・不当解雇は弁護士に相談すべき?相談するときのポイントを解説 解雇を撤回してもらえる可能性が高まる 弁護士に依頼すると、自分だけで会社と交渉するよりも不当解雇を撤回してもらいやすくなることが期待できます。 一般に労働者は、会社に比べると弱い立場なので、自分だけで不当解雇だと主張しても相手にしてもらえない場合が少なくありません。 この点、弁護士であれば適切な法的主張に基づいて会社と交渉できるため、相手が危機を感じて解雇の撤回に応じる可能性を期待できます。 未払い賃金を正確に請求できる 不当な整理解雇が解雇無効を主張する場合、一定期間の賃金を請求することができます。 もしも整理解雇が無効であったと認められた場合、和解や判決などで従業員の地位が確認されるまでの間は、有効な雇用関係が成立していることになります。 つまり、その期間に支払われるべきであった賃金も当然に請求できることになるのです。 弁護士に相談すると、解雇前や解雇後の未払い賃金を正確に計算し、きちんと請求してもらえます。支払われていない給料をしっかり受け取れるメリットがあるといえるでしょう。 【Q&A】整理解雇のよくある質問を弁護士が解説 Q. 整理解雇とリストラは違う? 整理解雇とリストラは混同して使われることの多い言葉ですが、厳密には異なります。 リストラはリストラクチャリング(事業の再構築)の略称で、希望退職の募集や解雇、M&Aによる事業統合など、会社を建て直すための一環として行われる施策全般を指します。 一方、整理解雇はリストラの中の手段の一つである解雇に限定しているものです。つまり、リストラは人員削減を含むさまざまな施策の総称であり、整理解雇はその中の手段の一つと言えるでしょう。 ただし、近年では「リストラ=整理解雇」と、ほぼ同義の意味で使用されることも多くなっています。 Q. 整理解雇は会社都合?自己都合? 整理解雇は会社都合退職となります。会社の業績悪化を理由とする整理解雇は、会社都合退職の代表例と言えるでしょう。 ただし、現実的には「解雇」ではなく「合意退職」で済ませようとしてくる会社もあります。たとえば、退職届を提出するように求めたり、退職理由を自己都合退職とするような合意書にサインを求めたりするケースです。 労働者が会社と合意して退職した場合は、整理解雇ではなく自己都合退職あつかいとなり、失業保険で不利になることもあります。 そのため合意書などに安易にサインをしないよう、しっかり確認をすることが大切です。 関連記事 ・自己都合退職と会社都合退職の違いは?知らないと損する両者の違い Q. 整理解雇でも解雇予告手当は受け取れる? 解雇予告手当は整理解雇であっても「解雇日の30日以上前の予告」がない場合には、原則受け取ることができます。 解雇予告手当とは、会社から「解雇日の30日以上前の予告」なく解雇された場合に受け取れる手当です(労働基準法20条2項)。 解雇を告げられた日数を確認して解雇予告手当が受け取れる場合には、忘れず請求しましょう。ただし、退職勧奨に応じてしまったケースなど、場合によってはもらえないケースもあるので注意が必要です。 解雇予告手当がもらえないケースについては『解雇予告手当がもらえない!法的にもらえないケースや請求方法を解説!』の記事で詳しく解説しています。 Q. 整理解雇の和解金の相場は? 整理解雇の和解金相場は個別事情によりますが、一般的には3~6か月分が相場です。 もし会社が上記の4要件を全く満たしていないような場合は、これよりも高額になっていきますし、逆に手続きをしっかりと踏んでいれば、少額になることもあります。 たとえば、整理解雇といいつつ、単なる嫌がらせだった場合には1. 2か月分程度になることもあるでしょう。 和解金の相場は、解雇の正当性によって変動することが多いです。不当解雇の和解金相場について詳しく知りたい方は『不当解雇の解決金(和解金)相場は?実例もご紹介!』の記事もご覧ください。 整理解雇で退職金はもらえる? 退職金がもらえるかどうかは、基本的には会社が定めた就業規則(または退職金規程)によります。 会社が退職金制度を設ける場合は、就業規則に記載しなければならないため、就業規則に退職金に関する記載があるか確認しましょう。 就業規則に退職金規程がある場合には会社と協議をしたり、労働組合から働きかけたりすることが大切です。 まとめ この記事では、整理解雇において有効・無効の判断基準となる4つの要件と弁護士に相談するメリットを詳しく解説しました。 雇用は労働者の生活に直結し、極めて大きな影響を与えます。整理解雇に納得できなくても、泣き寝入りする必要はありません。 あなたを助けてくれるのは、法律の専門家である弁護士です。とくに労働問題を積極的に取り扱う弁護士であれば、より良い結果で解決できる可能性が高まるでしょう。 不当な整理解雇に納得できない方は、労働問題に積極的に取り組んでいる弁護士を探して、相談してみましょう。 無料相談を行っている弁護士事務所もあるので、一度相談してみてはいかがでしょうか。 --- ### 解雇予告手当がもらえない!法的にもらえないケースや請求方法を解説! - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-06-21 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6190 - Categories: 不当解雇 解雇予告手当がもらえずにお悩みの方に向けて、解雇予告手当を法的にもらえないケースや請求方法を解説しています。 解雇予告手当がもらえない場合は労働基準監督署や弁護士に相談しましょう。 解雇をされてしまったとき、本来であればもらえるはずの解雇予告手当が支払われないことがあります。 解雇予告手当は、労働者の生活を突然の解雇から守るための制度です。しかし、解雇予告手当は、労働者全員がもらえるものではなく、労働者が法的にもらえないケースがあることはご存知でしょうか。 この記事では、解雇予告手当が法的にもらえないケースや請求方法を詳しく解説します。 解雇理由や雇用形態にも関わってくるので、自分が解雇予告手当を受け取ることができるのかご確認ください。 そもそも解雇予告手当とは?いくらもらえる? 解雇予告手当とは? 解雇予告手当とは、雇用主が30日以上前に解雇予告を行わなかった場合に、労働者に対して支払われる手当金のことです。 労働者を解雇する場合、雇用主はどんなに正当な理由があっても、30日以上前に解雇予告をしなければならないと定められています。 もし30日を切ってから解雇予告をした場合や、解雇予告を行わなかった場合には解雇予告手当を支払わなければならないのです。 関連記事 ・解雇予告手当とは?制度の内容を弁護士がわかりやすく解説 解雇予告手当はいくらもらえる? 解雇予告手当は1日の平均賃金に、解雇日までの期間で、30日に足りなかった日数分をかけた金額を受け取ることができます。 たとえば10月30日に解雇される予定の人が、10月10日に解雇予告を受けたとします。 この場合、20日分解雇予告の期間として足りていませんので、平均賃金の20日分が解雇予告手当としてもらえるのです。 また「明日から来なくていい」と告げられる即日解雇の場合は、30日分の解雇予告手当が労働者に対して支払われなければなりません。 解雇を告げられたにもかかわらず、解雇予告手当がもらえない場合は、自分がどれくらいの金額の解雇予告手当をもらえるのか計算してみると良いでしょう。 関連記事 ・解雇予告手当の計算方法を徹底解説!【過去3か月分の給与が基準】 解雇予告手当が法的にもらえないケースは? 解雇予告手当が法的にもらえないケース 労働者側に明らかな過失がある 事業の継続が不可能になった 労働者が特定状況下にある 退職勧奨に応じてしまった ケース①労働者側に明らかな過失がある 解雇予告手当は労働者がもらえる正当な手当金ですが、実はもらえない場合もあります。 労働者に明らかな過失があったと労働基準監督署長から認定を受けた場合、解雇予告手当がもらえない可能性があります。 ここでいう労働者の明らかな過失とは以下のようなケースです。一般的には、懲戒解雇となるようなケースが該当します。 労働者の過失と判断される例 会社の名誉にかかわる重大な犯罪行為(殺人など) 業務上の立場を利用した犯罪行為(経理担当の横領など) 重大な経歴の詐称(高卒の人が大卒と詐称して入社するなど) 長期間にわたる無断欠勤 重大、もしくは執拗なハラスメント ただし、労働者に明らかな過失がある場合も、会社は労働基準監督署長に「解雇予告除外認定」を申請して認定を受ける必要があります。 解雇予告を行わなくていい例外に当たるかどうかは、労働者の勤務状況や地位などを考慮に入れて判断されます。 支払いがない場合でも実際に解雇予告除外認定を申請しているケースは意外と少なく、懲戒解雇であっても法的には解雇予告手当の支払いが必要であることは結構多いです。 また、懲戒解雇だから解雇予告手当は支払わないと言われても、認定を受けているのか確認してみましょう。 実際は、解雇予告除外認定にはある程度の調査・期間がかかるため、あえて手当を支払う会社もあるようです。 ケース②事業の継続が不可能になった やむを得ず事業の継続が不可能になったために行われた解雇では、解雇予告手当はもらえません。 たとえば、地震や火災で建物が全壊してしまった場合、事業を立て直すためには莫大な資金を必要とし、事業を継続するのは不可能だと見られるでしょう。 「やむを得ない事由」とは、経営者が事業を継続させるために最大限の措置を施しても、改善が見られないような状況を指します。 ただし、この場合でも、本当にやむを得ず事業の継続が不可能になったのかどうかをチェックするために、労基署の解雇予告除外認定を受ける必要があります。 ケース③労働者が特定状況下にある 労働者の就労形態によっては、解雇予告が免除され、解雇予告手当をもらえない可能性もあります。 以下のような特定状況下では、解雇予告手当がもらえない場合があります(労働基準法21条)。 解雇予告手当がもらえない労働者 日雇い労働者(継続期間が1か月未満) 契約期間が2か月以内の者 4か月以内の季節労働者 試用期間中の者(14日未満) いずれも、期間を超えて使用された場合は、解雇予告手当をもらうことができます。 たとえば、試用期間中に解雇されても、14日を超えて使用された場合は、支払いの対象になるため、解雇予告を貰うことができるということです。 ケース④退職勧奨に応じてしまった 退職勧奨に応じて退職した場合は、解雇予告手当はもらえません。 退職勧奨に応じて退職した場合は、あくまでご自身の意思に基づいた合意退職となり、そもそも「解雇」に当たらないためです。 退職届の提出を求められる場合の多くは退職勧奨です。解雇かどうかは、明確に「解雇」という言葉が使われているか、解雇通知書や解雇理由証明書が発行されているかで判断をしましょう。 なお、退職に納得がいかない場合は、退職勧奨に応じる義務がありません。 ただし、退職勧奨であっても、解雇予告手当を引き合いに出して「解雇予告手当相当の1か月分以上の給料を支払ってもらえるのであれば検討する」などと退職勧奨に応じる条件として交渉をすることは可能でしょう。 関連記事 ・退職勧奨(勧告)とは?違法になるケースと対処法を解説! 解雇予告手当はいつ支払われる?請求期限は? 解雇予告手当はいつ支払われる? 解雇予告手当の支払日は、即日解雇の場合は解雇を申し渡されるのと同日となります。 また、解雇予告を事前に受けた場合も原則として通知日が支払日とされていますが、実際に解雇される日までに支払われればいいと解釈されています。 しかし、最後の給料日に解雇予告手当をあわせて支払う企業もあるようです。解雇予告をされた場合には、解雇予告手当がいつ支払われるのか会社に確認しておく必要があります。 もし、その支払日通りに支払いがされなかった場合は、きちんと請求をしましょう。 解雇予告手当の請求期限は退職から2年 解雇予告手当の請求期限(時効)は、退職後から2年間までとなります。 もしも即日解雇で解雇予告手当の支払いが遅れた場合には、解雇予告手当支払い日に解雇の効力が生じたことになります。 また、解雇予告手当が全く支払われなかった場合には、解雇通知の30日後に契約が終了すると考えられており、それまでの給与を請求することが可能です。 もし支払日にもらえなかったら?解雇予告手当の請求方法 解雇予告手当の請求方法は? もし、その支払日通りに支払いがされなかった場合は、きちんと請求をしましょう。 【解雇予告手当の請求手順】 解雇の証拠を確保して対応手段を考える 内容証明郵便などで会社に解雇予告手当の請求をする 労働基準監督署へ相談する 弁護士や労働組合へ相談 労働審判や裁判をする それぞれの手順を詳しく説明します。 1.解雇の証拠を確保して対応手段を考える 大前提として、解雇予告手当は解雇の場合でなければもらうことはできません。 前述のように、退職勧奨ではもらうことができないので、会社が「自己都合退職」や「合意したうえでの退職」だったとあとから言い訳してきても反論できるようにしておくことが大切です。 解雇の証拠 解雇に関する面談等の録音 解雇通知書・解雇理由証明書 解雇が明言されているメールやLINE、チャット など 解雇を通告されたらまずは解雇理由証明書を請求しましょう。労働者が解雇理由証明書を請求したときには、会社は遅滞なく発行する義務があります(労働基準法22条2項)。 また、解雇予告手当を本当に請求すべきについてはよく検討をする必要があります。 解雇予告手当は解雇を前提としているため、自ら解雇予告手当の請求をするということは解雇自体は受け入れる・認めるという主張になるからです。 もし、不当解雇として解雇自体を争うつもりなのであれば、解雇予告手当の請求はせずに、弁護士に相談することをおすすめします。 2.内容証明郵便等で会社に解雇予告手当の請求をする 解雇自体は争うつもりはないけど、解雇予告手当の支払いだけはして欲しいということであれば、実際に請求をしましょう。 請求方法に決まりはないので、まずは気軽に口頭で解雇予告手当について会社に聞いてみたり、メールなどで請求をしても良いでしょう。これだけで簡単に支払いに応じてもらえることも多いです。 きちんとした形で請求をするのであれば、内容証明郵便で会社に解雇予告手当の支払いを求める旨の請求書を送付することが一般的です。 内容証明郵便は、郵便局と差出人の手元に、相手に送ったものと同じ控えが残る郵便です。 内容証明郵便を使うことで、「いつ相手に送ったのか」という証拠を残すことができるため、相手から「請求されていない」とごまかされるリスクがなくなります。 3.労働基準監督署へ相談する 解雇予告手当の支払いがなければ、労働基準法違反になるため、労働基準監督署へ申告を行いましょう。 もしも調査の結果解雇予告手当の未払いにつき、会社に労働基準法違反が認められれば、労基署は是正勧告書を交付し指導を行います。これに従わず未払いを続けていれば、使用者は刑事罰を受けたり、送検される可能性があります。 解雇予告手当は支払いの要件も金額も明確ですので、労基から指導があれば支払ってもらえることがほとんどです。 4.弁護士へ相談 自身でできることを全てやっても、なお解雇予告手当がもらえない場合には、弁護士を頼ることも検討してください。 ただ、解雇予告手当は、そこまで高額になることはなく、弁護士を依頼すると費用倒れに終わってしまう可能性もあります。 まずは費用面も含め、無料相談などを利用して話を聞いてみてください。未払い残業代の請求や不当解雇による解決金請求も同時に可能ですので、証拠等があれば事前にそろえておくとスムーズに相談ができます。 関連記事 ・不当解雇は弁護士に相談すべき?相談するときのポイントを解説 5.労働審判や裁判をする 最終的に、法的措置を取るのであれば労働審判を申し立てをして解雇予告手当などの請求を行います。 労働審判とは、労働者個人と使用者の労働関係のトラブルを、迅速・適正に解決することを目指す手続きです。 労働裁判官1人と労働審判員2人で組織された労働審判委員会により、原則3回以内の期日で審理し、話し合いによる解決を目指します。解決案に納得がいかなければ、自動的に訴訟手続きに移ります。 労働審判は個人でも可能ですが、弁護士を付けた方が望ましいです。 もっとも、解雇予告手当は法の規定も明確ですし、解雇の証拠がそろっていれば複雑な争いになることは少ないため、請求金額も考慮すれば個人で行うことも十分選択肢でしょう。 労働審判で決着がつかず異議申立てがなされれば裁判をすることになります。 関連記事 ・労働審判とは?制度の内容や手続きの流れを弁護士がわかりやすく解説 不安な場合は相談窓口へ 解雇予告手当がもらえない法的なケースや請求方法を詳しく解説しました。 会社から解雇予告手当がもらえない場合でも泣き寝入りをせずに、解雇予告手当をもらう権利を主張することが大切です。 ただ、具体的事情によっても法的構成や主張できる内容が異なることがあります。不安な場合は、ぜひ弁護士や労働基準監督署にご相談ください。 --- ### 失業保険(雇用保険)とは?受給条件・申請期間・無料相談窓口も! - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-03-28 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6150 - Categories: 労働問題全般 会社から不当解雇された場合、失業保険の受給の面で有利な取り扱いが受けられるかもしれません。ご自身が失業保険を受け取ることができるのか、いつまで受け取ることができるのか、受給の流れや手続きなど、失業保険の条件にまつわる疑問にお応えします。 雇用保険から給付される基本手当(失業保険)は、求職中の離職者の強い味方です。 しかし、失業保険の受給にあたっては、いくつかの条件があるほか、給付までの期間やその後の受給金額は離職理由でも左右されます。 会社から不当解雇された場合、失業保険の受給の面で有利な取り扱いが受けられるかもしれません。 この記事では、ご自身が失業保険を受け取ることができるのか、いつまで受け取ることができるのか、受給の流れや手続きなど、失業保険の条件にまつわる疑問にお応えします。 失業保険に関してどこに相談すべきかお困りの方に向けて、無料相談窓口もご紹介するので、ぜひ最後までご覧ください。 失業保険とは?もらうための条件は? 失業保険とは、雇用保険法に基づき失業者が求職活動をする間の生活の安定を目的として支給される給付をいいます。 一般的に失業保険と呼ばれますが、その中心は雇用保険の失業等給付を構成する「求職者給付」のうちの「基本手当」です。 雇用保険に加入し、必要な受給資格を満たしていれば、失業した際にハローワークで手続きをすることで基本手当の給付を受けることができます。 雇用保険に加入できる条件とは 失業保険を受け取るためには、そもそも雇用保険に加入していなければなりません。 労働者はアルバイトや非正規雇用などの雇用形態にかかわらず、以下の条件を満たしていれば雇用保険に加入できます。 最低31日以上雇用される見込みがあること 1週間の所定労働時間が20時間以上であること 雇用保険加入の手続きは会社が行ってくれます。保険料は労働者と会社で折半します。 自身がきちんと雇用保険に加入しているかどうかは、給与明細で雇用保険料が支払われているか確認をするのが一番簡単な方法です。 その他、ハローワークに問い合わせをすることでも確認が可能です。 また、会社は雇用保険に加入していることを示す「雇用保険被保険者証」を保管しており、退職時に離職者へ手渡してくれます。 万が一、条件を満たしているにもかかわらず雇用保険に未加入であったことが発覚した場合には、ハローワークで雇用保険料を納入することで過去に遡って加入できます。 失業保険を受け取るための条件は? 失業保険を受け取るための条件は、以下の2つです。 一定期間雇用保険に加入していたこと 「失業」の状態にあること 一定期間雇用保険に加入していたこと 失業保険を受けるためには、雇用保険に加入していた期間が一定期間以上必要です。 この必要な加入期間は、離職の理由がいわゆる「自己都合」か「会社都合」であるかで異なります。 退職の種類加入期間の条件自己都合退職2年以内に雇用保険加入期間が通算して12か月以上会社都合退職1年以内に雇用保険加入期間が通算して6か月以上 ※失業保険の受給に必要な雇用保険加入期間 加入期間は継続している必要はなく、前職との通算でもかまいません。 なお、離職日から1か月ごとに区切った期間に、賃金支払い日が11日以上の月、または80時間以上労働した月を「1か月」と計算します。 「失業」の状態とは 雇用保険法の「失業」とは、被保険者が離職し、労働の意思及び能力を有するにもかかわらず、職業に就くことができない状態にあることをいいます。 失業保険を受けるためには、ハローワークで求職の申込みを行い、失業の認定を受けなければなりません。 以下のような場合には、離職をしても失業の認定はされません。 既に次の就職先が決まっている 早期リタイアや、専業主婦になるつもりであるなど働く気がない 妊娠、出産、病気、怪我、親族等の介護などですぐに働くことができない ただし、妊娠、出産、病気、怪我、親族等の介護などですぐに働くことができない場合には、1年の受給期限を延長することが可能です。 本来は離職から1年間を経過すると給付日数が残っていてもその時点で給付は打ち切りになりますが、これを最大4年まで延長し、働くことができる状態になってから支給を受けることができます。 自己都合と会社都合で支給の条件は変わる? 失業保険の受給に必要な被保険者期間が「自己都合退職」と「会社都合退職」で変わることはご説明しましたが、他にも離職理由によって支給までの期間や給付日数などが大きく変わってきます。 自己都合退職会社都合退職最短支給開始日2か月と7日以降※7日以降受給要件退職以前2年間で被保険者期間が12か月以上退職以前1年間で被保険者期間が6か月以上給付日数90日~150日90日~330日国民健康保険通常納付最大2年間軽減 ※過去5年間で離職が3回目以上である場合には3か月と7日以降 なお、離職理由の主張が会社と労働者で食い違っていた場合には、ハローワークが資料に基づいて判定をしてくれます。 必ずしも会社が離職票に記載した離職理由で扱われるわけではありません。 また、ここではわかりやすく「自己都合」と「会社都合」で分類をしていますが、失業保険の支給条件面で有利になる離職理由を持つ者は、細かくは「特定受給資格者」と「特定理由離職者」に分けられます。 雇用保険に必要な加入期間が緩和される「特定受給資格者」と「特定理由離職者」について詳しく知りたい方は、『自己都合退職と会社都合退職の違いは?知らないと損する両者の違い』の記事もご覧ください。 定年退職・退職勧奨などの場合は? 定年退職した方の退職理由ついては、自己都合退職と会社都合退職両方に該当しえます。ご本人が継続雇用を希望せずに定年退職した場合は、自己都合退職となります。 一方で本人が継続雇用を希望したにも関わらず再雇用されなかった場合は、会社都合退職または特定受給資格者に該当することがあります。 また、退職勧奨に応えて退職した場合は、原則として特定受給資格者(会社都合退職)として扱われます。 例外として、早期退職優遇制度に応募した場合は、会社都合退職とはなりません。 関連記事 ・退職勧奨(勧告)とは?違法になるケースと対処法を解説! 失業保険はいくらもらえる?|給付の期間はいつからいつまで? 雇用保険の加入期間が条件を満たし、失業の状態にあれば、失業保険を受け取れることが分かりました。 次に気になるのが、失業保険の申請の期間や給付日数、貰える金額です。これらは、離職理由、雇用保険の加入期間、年齢、離職以前の収入で変わってきます。 また、失業保険受給中にアルバイトをする場合、不正受給にならないよう注意しなければなりません。 失業保険はいつまでに申請手続きが必要? 失業保険をいつまでに申請しなければならないという決まり自体はありません。 もっとも、失業保険は原則として、離職した日の翌日から1年までの期間(受給期間)でしか受給できません。 そのため、できるだけ早い段階、離職から1~2か月以内に申請の手続きをすることが望ましいです。 もし、離職日の11か月後に申請をしたとすれば、所定給付日数が180日だったとしても、1か月間しか失業保険をもらえないことになります。 失業保険を満額受け取るためには、離職から1年以内に給付日数が収まるように注意しましょう。 また、離職理由による給付制限を受けている場合も受給期間が延長されることがあります。 失業保険は実際にいつからもらえる? 失業保険は自己都合・会社都合によって、いつからもらえるのかが異なります。 ただし、いずれも待期期間の満了後に支給が開始され、実際に失業保険が振り込まれるのは、失業認定を受けた約1週間後となります。 会社都合退職の場合 会社都合退職の場合、失業保険はハローワークに申請をした後、7日間の待期期間を経過したのちに支給が開始されます。 7日間の待期期間は、申請者が本当に失業しているかをハローワークが確認するための期間であり、失業状態である必要があります。待機期間中にアルバイトなどは一切できません。 もっとも、初回の失業認定はハローワークでの最初の申請からおよそ4週間後に行われるため、申請から振り込まれるまでに5週間ほどかかるでしょう。 自己都合退職の場合 自己都合退職の場合、7日間の待期期間後に失業認定を受けます。その後2か月間の「給付制限期間」を経て支給が開始されます。 また、過去5年間で離職が3回目以上である場合には「給付制限期間」が3か月に伸びるので注意してください。 つまり、自己都合退職により給付制限を受ける場合は、5週間に加えてさらに2~3か月の期間が実際の受給までかかることとなります。 なお、給付制限期間は、失業の認定を受けなくてよいため、アルバイトをすることも可能です。 所定給付日数は何か月?延長できる? 所定給付日数とは、失業保険を受け取ることのできる日数をいい、雇用保険の加入期間や、年齢、離職理由で変わってきます。 具体的には以下で見ていきますが、多くの場合は3~4か月程度の給付日数になります。 一般の受給資格者(「自己都合退職」)の所定給付日数 雇用保険加入期間10年未満10年以上20年未満20年以上全年齢90日120日150日 特定受給資格者(「会社都合退職」)の所定給付日数 雇用保険加入期間1年未満1年以上5年未満5年以上10年未満10年以上20年未満20年以上 30歳未満90日90日120日180日ー 30歳以上35歳未満120日180日210日240日 35歳以上45歳未満150日240日270日 45歳以上60歳未満180日240日270日330日 60歳以上150日180日210日240日 その他の給付日数の基準として、65歳以上の離職者は雇用保険加入期間1年未満で30日分・1年以上で50日分が一括で支払われます。 障碍者など就職の困難な方については、雇用保険加入期間1年未満で150日分、1年以上で45歳未満だと300日・45歳以上65歳未満であると360日分が支払われます。 失業保険で貰える金額|1日当たりの基本手当の計算方法 失業保険の1日当たりの支給額を「基本手当日額」といいます。 失業状態と認定された日(土日も含みます)1日ごとにこの基本手当日額を最大で所定給付日数分受け取ることができます。 そして基本手当日額は、おおよそ前職の1日あたりの給料の5割~8割程度の金額になります。 より細かく言えば、「基本手当日額」は、失業前の6か月間に毎月一定期日に支払われた賃金の合計を180で割った金額(これを「賃金日額」といいます。)の45~80%の金額になります(雇用保険法16,17条)。 失業保険の受給中にアルバイトできる? 失業保険申請後の7日間の待期期間にアルバイトをした場合には、その期間だけ待機期間が延長されます。 働いたことを申告せずに失業保険を受け取ろうとすると不正受給となり、給付金を受ける権利を失います。 さらに不正受給した額の3倍の納付を命じられることもあります。 自己都合退職の場合、その後に2か月の「給付制限期間」があります。 この期間はアルバイトすることができますが、収入の有無にかかわらず、失業認定申告書でアルバイトした日などを正確に申告しなければ不正受給となります。 また、雇用保険加入条件を満たすときは、別途就職の手続きが必要となります。 失業保険を受給している「受給期間」もアルバイトをすることができますが、雇用保険の加入条件を満たす時間以上に働いていると、就職したとみなされて失業保険は支給されなくなることに注意してください。 なお失業認定申告書でアルバイトしたことの記載・申告が必要です。申告しなかった場合は不正受給となります。 アルバイトの時間が1日4時間以上の場合は、働いた日について失業保険が支給されず、支給が先送りとなるのです。1日4時間未満の場合は、アルバイトによる収入額が差し引かれて支給がなされ、差し引き分は受給期間満了後に受け取ることができます。 ハローワークでの申請から失業認定日までの手続き・流れ・必要なもの・書類 ハローワークで失業保険を申請してから受給するまでの流れをご説明します。 会社が離職票を出してくれない場合、焦ってしまいますよね。離職票なしでも失業保険がもらえるのか、確認しておきましょう。 ハローワークでの求職活動についてや失業認定日の手続きについてもまとめています。 失業保険受給の流れ 失業保険を受給するには、失業の状態で(1)必要書類をハローワークに持参して求職手続きを行い受給資格を得る(2)雇用保険受給説明会へ行く(3)求職活動をしつつ失業認定日にハローワークに行くという一連の手続きが必要となります。 まずは離職票を会社から受け取った後、以下を持参して管轄のハローワークに行き、受給資格取得の手続きを行います。 ハローワークへの持参物 雇用保険被保険者離職票(-1, 2) 個人番号確認書類(マイナンバーカードなど) 身分証明書 写真(最近の写真、正面上半身、縦3. 0cm×横2. 5cm)2枚 本人名義の預金通帳又はキャッシュカード なお、離職票の交付手続きは会社に行ってもらう必要があります。 会社が「雇用保険被保険者資格喪失届」と「離職証明書」をハローワークに提出すれば、後日ハローワークから会社に離職票が送付されます。 その後、離職者は会社から離職票を受け取り、上記持参物とともにハローワークへ行きます。 そしてハローワークで求職手続きをして失業保険の受給資格を得た後は、7日間の待期期間を経た後、雇用保険受給者説明会に参加します。 説明会に参加後、失業保険の受給に必要な雇用保険受給資格証と失業認定申告書がハローワークから交付されます。 その後、失業保険を受け取るためには、求職活動をしつつ4週間ごとの失業認定日にハローワークへ行く必要があります。 また離職票がなくとも、失業保険受給に関する仮手続きを行うことはできます。 離職票は初回の失業認定日(初回の雇用保険受給説明会で日付が指定されます)までに提出する必要があります。 会社が離職票を出してくれていない場合は、会社ならびに所轄のハローワークに問い合わせをしましょう。 関連記事 ・離職票がもらえない!理由と対処法について解説 ハローワークでの求職活動は必要? 失業保険を受給する条件のひとつに、失業認定日と次回認定日の期間に原則として2回以上の求職活動を行っていることがあります。 これは労働者の就職の意思を確かめるためです。 なお待期満了日の翌日から初回認定日の前日までの期間においては、1回以上の求職活動で足ります。 ただし雇用保険説明会への出席が求職活動1回分になるため、会社都合の場合は初回認定日で求職活動の回数が不足する事態になることはまずありません。 なお、自己都合退職者など給付制限期間がある場合には、雇用保険説明会への出席とは別に2回目の認定日の前日までに求職活動を最低2回行う必要があります。 なお、必ずしもハローワークを通じて求職活動をする必要はありません。 ハローワークを通した求職活動だけではなく、以下に挙げるような活動を行えば、求職活動として扱われます。 求人への応募 許可・届出のある民間機関(民間職業紹介機関、労働者派遣機関)が行う、職業相談、職業紹介等を受けたこと、求職活動方法等を指導するセミナー等の受講 など 求人を閲覧しているだけでは、求職活動とは言えないので注意しましょう。 参考:求職活動の範囲|ハローワークインターネットサービス 失業の認定日に必要な手続きとは? 失業の認定は原則として週間に1回ずつ、それまでの28日間について行われます。 失業認定日は労働者がなおも失業状態にあるか確かめる日ですので、その日にハローワークに赴いて「受給資格者証」と「失業認定申告書」を提出する必要があります。 アルバイトなどを行っていた場合は、この申告書で申告します。他には、求職活動の証明となる書類が必要となることもあります。 やむを得ない理由のため、所定の失業認定日に出頭ができない場合には、原則として事前の申し出によって認定日の変更を受けることができます。 疾病や負傷、求人の面接、公共職業訓練、災害などの事情で出頭が出来なかった場合には、その事情がなくなった後の最初の失業認定日に証明書を提出することで失業の認定を受けることができます(証明認定)。 離職後の健康保険・年金・住民税の支払い手続き 離職後、失業保険を受給している間も健康保険・年金の保険料を支払う必要があります。 住民税については、離職した月によって支払い方法が異なります。 離職後に加入できる健康保険とは 離職した場合、健康保険は以下のいずれかに加入する手続きを行った後、月々の健康保険料を支払う必要があります。 離職後に加入できる健康保険 任意継続健康保険 国民健康保険 ご家族の健康保険(被扶養者) (1)任意継続健康保険 保険料は離職時の標準報酬月額に基づいて決定されます。 保険料の算定方法は各都道府県によって異なるため、気になる方は全国健康保険協会の公式サイトをご確認ください。 参考:都道府県毎の保険料額表|協会けんぽ|全国健康保険協会 なお任意継続健康保険を選択した場合は、在職中は会社と折半していた保険料を被保険者本人のみが負担することになるため、今までの2倍の保険料を支払う必要があります。 (2)国民健康保険 国民健康保険とは都道府県及び市町村が保険者となって運営する公的な医療保険制度です。 国民健康保険の保険料は前年の所得、国民健康保険の世帯人員数などに応じて決められます。 お住まいの市区町村によって保険料の算定方法は異なるため、気になる方は市区町村の国民健康保険担当窓口へお問い合わせください。 (3)ご家族の健康保険(被扶養者) 離職後、ご家族が加入している健康保険の扶養家族になれば、保険料を支払う必要はありません。 ただし失業保険は収入とみなされるため、失業保険の金額によっては扶養家族になれない場合があります。 年金は減免措置か納付猶予制度を利用できる 離職後、国民年金保険料の納付が困難な場合は、保険料の免除・納付猶予制度を利用できます。 免除された保険料は後から納めることができます。追納した場合は、保険料を全額納付したときと同じ金額の年金を将来受け取ることができます。 参考:国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度|日本年金機構 住民税は離職月で支払い方法が異なる 6月1日~12月31日に離職した場合は、離職月の住民税は給与から徴収され、離職月よりも後の住民税は普通徴収で納税します。 6月1日~離職月までの給与分に課税される住民税は翌年納税することになります。 1月1日~5月31日に離職した場合は、離職月の給与から5月分までの住民税を一括徴収されます。 ただし、離職月の給与が5月分までの住民税の金額よりも少ないときは普通徴収に変更してもらうことが可能です。 失業保険のお悩みはハローワークに相談 失業保険に関するご質問・ご相談は、ハローワークに相談しましょう。 ハローワーク(公共職業安定所)は、厚生労働省が運営する公的機関です。公的機関であるため、誰でも無料で相談・利用ができます。 失業保険の申請手続きもハローワークで行うため、分からない点があれば、手続きと同時に相談してみましょう。 ハローワークの開庁時間は、原則平日の8:30~17:15です。 失業等給付を受けるため最初の手続きは、時間がかかることもあるため、16時頃までに行くことが推奨されています。 お近くのハローワークは以下の所在地一覧から探すことができます。失業保険でお困りの方は、ハローワークに行ってみてはいかがでしょうか。 参考:所在地一覧 --- ### 不当解雇されたら慰謝料(損害賠償)請求できる?相場と判例を解説 - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-06-07 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6143 - Categories: 不当解雇 不当解雇で請求できる慰謝料の相場をまとめています。損害賠償請求の方法と相談窓口、弁護士費用についても解説していますので、相談をご検討ください。不当解雇に屈さないために、訴訟のやり方や流れを確認しておきましょう。 不当解雇されたら解雇無効を主張して未払い賃金を求めることができますが、状況によっては慰謝料も請求できる可能性があります。 ただし、すべての不当解雇で慰謝料が発生するわけではなく、慰謝料請求が認められるのは、解雇の違法性・悪質性が高いケースに限られます。 不当解雇の慰謝料の相場は、50万~100万程度です。 そこで今回は、どのような不当解雇で慰謝料請求が認められるのか、実際に慰謝料請求が認められた裁判例を詳しく解説します。 不当解雇に対する慰謝料請求を検討されている方は、ぜひ参考にしてみてください。 不当解雇されたら慰謝料を請求できる? 不当解雇されたら必ず慰謝料請求できるわけではない 不当解雇されたからとって、必ず慰謝料を請求できるわけではありません。 なぜなら、解雇された労働者の精神的な苦痛は、「解雇期間中の賃金が支払われることで償われる」と考えられているからです。 ただし、解雇期間中の賃金を支払ってもなお、精神的苦痛に対する償いができていないと考えられるケースは、慰謝料の請求が認められます。 不当解雇で慰謝料請求できるのは、解雇の違法性・悪質性が高いケースに限定されるといえるでしょう。 慰謝料が認められるためには不法行為の事実と立証が必要 そもそも慰謝料とは、加害者の不法行為によって被害者が受けた精神的苦痛に対する損害賠償金です。 慰謝料が認められるためには、相手に「不法行為」の事実があることを立証する必要があります。 不法行為とは「故意や過失にもとづく違法行為により、相手に損害を与える行為(民法709条)」を意味します。単に「解雇が法律に則していない」というだけでは、不法行為とはいえません。 不当解雇の慰謝料の相場は50万~100万円 不当解雇の慰謝料の相場は、50万円〜100万円程度です。 具体的な金額は、個々の事情を考慮して判定されます。 また、ヘッドハンティングに応じて転職したのに、その直後に不当解雇されたようなケースでは、慰謝料に加えて逸失利益の損害賠償請求が認められる場合があります。 慰謝料請求が認められる可能性があるケース 慰謝料請求が認められる可能性があるケースは、以下が挙げられます。 (1)労働者の精神的苦痛が著しい解雇 具体的には、以下のようなケースで慰謝料請求が認められる可能性があります。 解雇の理由がまったく無い 解雇に至る決定、通知の手続きに著しい不備があった セクハラを拒絶したら報復的に解雇された 残業代請求・未払い給料の請求に対する報復としての解雇 解雇行為に伴い、労働者の身心や名誉権を侵害する行為があった (2)外部機関に関与・申告したことを理由とする解雇 外部機関に申告したことを理由とする解雇は、不当解雇とみなされるかつ、慰謝料請求が認められることがあります。 労働組合員であることを理由とする解雇 労働基準監督署への申告を理由に報復的に解雇した 内部告発に対する報復としての解雇 不当解雇の慰謝料が高額になるケース 以下のような場合、不当解雇の慰謝料が高額になりやすいといえるでしょう。 違法性が高い 会社が労働基準法による解雇制限を無視して強硬に解雇した場合、セクハラを拒絶された報復として解雇したなど、違法性が高いと慰謝料は高額になりやすい傾向があります。 労働者側の被った損害が大きい 不当解雇によって労働者の被った損害が重大な場合、慰謝料額が高額になりやすい傾向がみられます。 たとえば。労働者に小さい子どもや妊娠中の妻などの扶養家族がいて解雇によって大きな影響を受けると、精神的苦痛が大きくなると考えられるでしょう。 こういった労働者側の事情によって慰謝料が増額されます。 解雇の動機が不当 会社側が解雇した動機が不当であれば、慰謝料の金額が増額されやすいといえます。 たとえば、労働基準監督署へ通報したことへの報復措置として解雇した場合、比較的高い慰謝料が認められやすいです。 不当解雇で認められる慰謝料の金額は、状況によって大きく変わります。適正な慰謝料額を知りたい場合には、不当解雇に強い弁護士に相談しましょう。 不当解雇に強い弁護士をお探しの方へ 不当解雇に強い弁護士の探し方はポイントがあります。以下の記事で不当解雇に強い弁護士の探し方をまとめています。ぜひご覧ください。 不当解雇に強い弁護士の探し方|相談無料・費用の仕組み 裁判で不当解雇による高額な慰謝料が認められた例 会社の不法行為の違法性・悪質性が高く、労働者の権利侵害が多大な場合は、高額な慰謝料が支払われる可能性があります。 では、実際にどのようなケースで慰謝料が認められたのか、高額な慰謝料が支払われるケースの特徴は何か、裁判例をご紹介します。 100万円以上の慰謝料が認められたケース 一般に、会社側の違法性・悪質性が高く、労働者の受けた損害が大きいほど、慰謝料が高額になる傾向があります。 実際に極めて悪質なセクハラ・パワハラや嫌がらせがあった場合、会社からの行為により精神疾患を患った場合などに、100万円以上の慰謝料が認められています。 100万円以上の慰謝料が認められたケース 【100万円】退職時に会社から訴えられ、双極性感情障害を発症した(横浜地裁H29. 3. 30) 【100万円】会社代表者から丸刈りにされる、長時間土下座させられるなどの著しいパワハラを受けた(福岡高裁H31. 3. 26) 【180万円】長期の性的嫌がらせや強姦未遂を受けたうえ不当に解雇され、PTSDを発症した(東京地判H12. 3. 10) 懲戒解雇でも慰謝料が認められたケース【70万】 懲戒解雇とは、従業員の服務規律違反行為に対する制裁として行われる解雇です。 具体的には業務に関連した犯罪行為、重大な経歴詐称、業務命令への繰り返しの違反などにより懲戒解雇となる可能性があります。 しかし、懲戒解雇を言い渡された場合であっても、その理由が不当であったり、また懲戒解雇に伴う不法行為があると慰謝料請求が認められます。 実際に、スーパーマーケットで商品の持ち帰りを理由に懲戒解雇された社員について、70万円の慰謝料請求を認めた事例があります。 これは、スーパーマーケット側が「従業員が窃盗行為に及んだ」という旨の掲示を多数の店舗に行ったことが不法行為と判断されたためです。 不当解雇された!慰謝料以外に請求できるお金は? 不当解雇された場合、慰謝料以外に請求できるお金には、以下のようなものがあります。 慰謝料以外に請求できるお金 未払いの賃金 未払いの残業代 未払いの退職金 解雇予告手当 それぞれどのくらいの金額がもらえるのか、もらえる条件は何なのか、一緒に確認していきましょう。 (1)未払い賃金 不当解雇による解雇無効を主張する場合、一定期間の賃金を請求することができます。 もしも不当解雇が無効であったと認められた場合、和解や判決などで従業員の地位が確認されるまでの間は、有効な雇用関係が成立していることになります。 雇用期間が成立している以上、その期間に支払われるべきであった賃金も当然に請求できることになるためです。 既に再就職し、そこで給与を受け取っている場合には、就職後の期間において最大4割分の未払い賃金(賞与を除く)が控除されます。 (2)未払いの残業代 就業中に賃金の支払われないサービス残業があったような場合には、未払い残業代も同時に請求することができます。 (3)未払いの退職金 不当解雇の裁判においては、第一次的には、退職金は請求しません。退職金の請求は解雇が有効なことが前提だからです。 もっとも、裁判が進む過程で解雇が有効となりそうな場合は、解雇が有効であることを前提に、退職金の支払いを請求することがあります。 とくに懲戒解雇の場合、就業規則にも「懲戒解雇のときには退職金を支給しない」という規定がよく置かれていますが、実際は退職金の一部支払いが認められた事例も多くあります。 これは、退職金に「長年の労働に報いる」という性格があり、仮に懲戒解雇されたとしてもそれまでの功労が全て帳消しとはなりにくい、と考えられているためです。 関連記事 ・退職金が未払いの時は弁護士に相談!弁護士に相談すべき理由 (4)解雇予告手当 会社から「明日から来なくていい」「すぐにクビ」などと指示される、いわゆる即日解雇の場合には、労働者は解雇予告手当を受け取れる可能性があります(労働基準法20条)。 解雇予告手当とは、解雇予告期間が30日未満のときに支払われる、30日に満たないぶんの平均賃金に相当する手当です。 ただし解雇予告手当を請求するということは、解雇された事実を認めるということですので、解雇無効を前提とする未払い賃金などとは同時に請求できないことには注意が必要です。 関連記事 ・即日解雇されたらどうする?違法な不当解雇への対処法は? 契約社員・アルバイトなども不当解雇の慰謝料が認められる? 契約社員・アルバイトであっても、不当解雇に対する慰謝料請求は可能です。 雇用形態ごとの扱いを確認しましょう。 契約社員の場合は? 契約社員の不当解雇でとくに問題になるのは、契約期間の途中の解雇です。 契約社員に関しては、労働契約法17条で「やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間、労働者を解雇することができない」と定められています。 契約期間途中の解雇は、原則として無効です。 また、雇い止めに関しても、契約社員の契約更新に対する合理的な期待が保護されています。労働契約法18条で無期雇用契約への転換権が、同法19条で契約更新への申込みの権利が保障されています。 これらの権利を無視する会社の横暴に対しては、解決金に慰謝料を加えて請求できる場合があります。 アルバイトの場合は? 安易に解雇できないことは正社員や契約社員の場合と同様です。アルバイトの場合も、仕事や立場の性質に応じて、解雇規制の法律が適用されることになります。 会社から安易にクビを切られた場合は、法律に基づいて、地位を主張し、解決金や慰謝料を請求することができます。 内定取り消しの場合は? 違法かつ悪質な内定取り消しに対しては、損害賠償として慰謝料を請求することができます。 内定取消しとは、内定通知により成立した雇用契約を、会社の側から一方的に解約することです。入社前の内定期間であっても、会社は一方的に雇用契約を解約できるわけではありません。 解約権の行使が認められるのは、従業員側に学歴詐称の落ち度があった等、一定の合理的な場合に限られます。 たとえば、転職を勧誘されて内定を受領した後、一方的に内定を破棄され、雇用契約を解約された事案につき、慰謝料300万円の請求が認められたケースがあります。また、新卒の場合は、慰謝料請求が認められやすいです。 試用期間の場合は? 試用期間とは、一定の期間を「見習い」期間として、その間の評価をもとに本採用を決定するという制度です。 注意が必要なのは、試用期間がある場合でも、試用期間の最初から雇用契約自体は有効に成立しているという点です。試用期間だからといって、無制限の解雇が認められるわけではありません。 試用期間中であっても、不合理な解雇・解約は違法と評価されます。その場合は、法律にもとづいて、慰謝料を請求できるケースがあります。 たとえば、政治や宗教を理由とした差別的な解雇や、業績不振を理由とした強引かつ一方的な解約の場合は、違法性が高く、慰謝料の請求が認められる可能性が高いです。 関連記事 ・試用期間中の解雇は弁護士に相談すべき!解雇理由と弁護士に相談するメリット 不当解雇で慰謝料を請求する手順 最後に会社から不当解雇されたときの対処法を解説します。 解雇理由証明書を要求する 解雇されたら、まずは会社に解雇理由証明書を請求しましょう。 解雇理由証明書とは、会社が考える解雇理由を記載した書面です。雇用者が労働者を解雇したとき、労働者からの要求があれば会社側は遅滞なく解雇理由証明書を発行しなければならないと法律で規定されています。 不当解雇した当初は会社も油断しているため、解雇理由証明書を求められると安易に「法律上認められない理由」を書いてくるケースがあります。 そういった書類があると、後に不当解雇を主張して争うときに有力な証拠となるでしょう。 不当解雇されたら、労働基準法にもとづいて解雇理由証明書を発行するよう会社へ要求してみてください。会社が解雇理由証明書の発行に応じないときには、弁護士から通知すると効果的です。 関連記事 ・解雇理由証明書を請求する方法は?請求するために知っておくべきことを解説 証拠を集める 不当解雇として未払い賃金や慰謝料を請求するには、解雇が不当である証拠が必要です。たとえば以下のようなものを集めましょう。 雇用契約書 解雇理由証明書 就業規則 解雇に関して会社とやり取りしたメール 会社から送られてきた書類 経緯を詳細に記した日記、手帳、スケジュールアプリなど 労働審判、訴訟をする 労働審判は、裁判官と労使の専門委員が仲介を行い、3回以内の話し合いで問題解決を図る制度です。 いきなり裁判で争うという方法もありますが、裁判にかかる費用と時間を考えれば、まずは労働裁判の選択をおすすめします。 労働審判の結果に不服があるときは、審判の日から2週間以内に裁判所に対し「異議の申立て」ができます。申立てがなければ労働審判は確定し、裁判上の和解と同一の効力を持つことになります。 労働審判について詳しく知りたい方は『労働審判とは?制度の内容や手続きの流れを弁護士がわかりやすく解説』の記事をご覧ください。 労働審判で異議の申立てがあった場合や、直接訴訟を起こした場合は裁判になります。 不当解雇で裁判をする場合の流れを詳しく知りたい方は、『不当解雇で会社を訴える!裁判の流れと費用を解説』の記事をご覧ください。 不当解雇の慰謝料請求は弁護士に相談 不当解雇されて未払い賃金や慰謝料を請求するとき、労働者1人で対応できることには限界があります。 労働者1人では、証拠集めが難しいケースがあり、証拠を収集できたとしても、会社との交渉で不利に扱われてしまうおそれがあります。慰謝料請求しても無視されるかもしれません。 不当解雇で慰謝料の請求を検討されている方は、弁護士に相談することをおすすめします。弁護士であれば、状況に応じたアドバイスをしてくれますし、必要に応じて会社との交渉も任せられるでしょう。 弁護士が対応すると態度が変わる会社も少なくありません。 不当解雇されたとき、泣き寝入りする必要はありません。困ったときには労働問題に詳しい弁護士の力を借りて、慰謝料や未払い賃金を適切に払ってもらいましょう。 関連記事 ・不当解雇は弁護士に相談すべき?相談するときのポイントを解説 --- ### 即日解雇されたらどうする?違法な不当解雇への対処法は? - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-06-28 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6137 - Categories: 不当解雇 即日解雇の3つの種類と即日解雇が有効となる解雇理由について解説します。違法となる条件もありますので確認しましょう。違法な即日解雇への対処法や相談窓口、慰謝料・解決金の請求の可否についてもまとめていますので、即日解雇でお困りの方はぜひご覧ください。 突然会社から解雇を告げられる、いわゆる「即日解雇」は、労働者にとって大きなショックとなるものです。 即日解雇は、違法である可能性が高いです。ただし、即日解雇は必ずしも違法ではなく、正当な理由があれば認められるケースもあります。 そこで今回の記事では、即日解雇の3つの種類と即日解雇が有効となる解雇理由について解説します。 違法な即日解雇への対処法や相談窓口、慰謝料・解決金の請求の可否についてもまとめていますので、即日解雇でお困りの方はぜひご覧ください。 即日解雇(即時解雇)されたら|解雇は有効?違法? 即日解雇の3つの種類とは? 即日解雇とは、解雇予告なく突然に解雇されることをいいます。 即日解雇の種類としては、①従業員側の能力不足や心身の故障を理由とする普通解雇②従業員側の非行や就業規則違反を理由とする懲戒解雇③会社側の業績不振を理由とする整理解雇(リストラ)の3種類が考えられます。 即日解雇がいずれに該当するかよく分からない場合は、会社に解雇理由を確認してみましょう。 ご自身に就業規則に違反する行為があり、懲戒処分の手続きに基づいて解雇された場合は、②の懲戒解雇に該当します。 会社が経営不振でありその旨の説明があった場合は③の整理解雇に、それ以外の場合は①の普通解雇に該当するケースが多いです。 即日解雇が有効となる解雇理由とは? 即日解雇が有効になる条件は3つあります。まず、解雇に①「客観的に合理的な理由」と②「社会通念上の相当性」が認められる必要があります(労働契約法16条)。 その上で、即日解雇が有効になるためには、③解雇予告手当として「30日分以上の平均賃金」が支払われる必要があります(労働基準法20条)。 とくに即日解雇の場合は、「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」の要件を満たすかが問題になってきます。 なぜ解雇が「即日」でなければならなかったのか、従業員の日常生活の安定を犠牲にしてまで「即日」解雇にこだわった会社の判断の合理性・相当性が厳しく審査されることになります。 即日解雇が違法となる条件とは? 突然の即日解雇は、違法になる可能性が極めて高いです。 まず、即日解雇の場合は、その解雇に「社会通念上の相当性」(労働契約法16条)が認められないケースが多いです。 また、解雇予告手当として「30日分以上の平均賃金」が支払われていない即日解雇も、労働基準法20条に違反し違法です。 即日解雇が違法で、かつ解雇の効力が無効な場合は、従業員は会社に対して、解雇日からトラブル解決日までの賃金を請求することができます。 解雇日以降働けないことは、会社の「責めに帰すべき事由」によるといえ、民法536条の適用によって賃金を請求する権利を失わないからです。 試用期間中に即日解雇されることはある? 本採用前の試用期間中に即日解雇されることはありえます。 試用期間中は、労働者としての適性が見極められる期間です。実際にこの期間で能力不足や勤務態度などを理由として即日解雇される例も多くあります。 また、試用期間開始から14日経過していない場合、後に述べる解雇予告手当が支払われることもありません(労働基準法21条)。 関連記事 ・試用期間中の解雇は弁護士に相談すべき!解雇理由と弁護士に相談するメリット 即日解雇されたら慰謝料などはもらえる? それでは即日解雇された場合に受け取れる可能性のある金銭には、以下のようなものがあります。 即日解雇で受け取れる可能性のある金銭 慰謝料 解雇予告手当 退職金 以下、それぞれの金銭を解説していきます。 不当な即日解雇で慰謝料を請求できる? 即日解雇の違法性が高い場合は、解雇日以降の賃金(バックペイ)を請求すると同時に、違法解雇による慰謝料を請求することができます。 即日解雇やそれに伴う行為が不法行為に該当し、それにより労働者が精神的損害を被った場合、民法709条によって損害賠償を請求することが可能です。 具体的に慰謝料が支払われる可能性のある行為としては、以下のようなものが考えられます。 慰謝料が支払われる可能性のある行為 労働者への嫌がらせとして即日解雇が行われた 業績が悪化していないにもかかわらず理由無く即日解雇された 即日解雇の事実を他従業員や取引先に言いふらされた 即日解雇を認めさせるために威圧的な言動や暴力が用いられた 関連記事 ・不当解雇されたら慰謝料(損害賠償)請求できる?相場と判例を解説 即日解雇の解雇予告手当とは? 即日解雇の解雇予告手当とは、労働基準法20条に基づいて支払われる「30日分以上の平均賃金」のことをいいます。会社が従業員を解雇する際には、30日前の解雇予告を支払わなければなりません。 この解雇予告を行わず、突然に即日解雇する場合、会社は手当として「30日分以上の平均賃金」を支払う必要があります。 もしも実際の解雇される日から1日~29日前までに解雇予告があった場合、30日に足りないぶんの解雇予告手当が支払われます。 たとえば解雇の10日前であれば平均賃金20日分の解雇予告手当、解雇の15日前であれば15日分の解雇予告手当が支払われます。 ただし、以下の場合であって、会社が労働基準監督署長でから除外認定を得ている場合は、解雇予告手当は支払われません(労働基準法20条)。 天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合 労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇される場合 とくに懲戒解雇で即日解雇された場合は、「労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇される場合」にあたるとして解雇予告手当が支払われないことが多いので、注意が必要です。 関連記事 ・解雇予告手当がもらえない!法的にもらえないケースや請求方法を解説! 即日解雇で退職金はもらえる? 即日解雇の場合には、退職金がもらえないもしくは減額される場合があります。 原則として、退職金がもらえるかどうかは会社内部の規定によって決定します。 一般的に、即日解雇(とくに懲戒解雇)の場合は、就業規則に退職金を支払わないまたは減額する、と定めている会社は多くあります。 ですが退職金には、それまで勤続して会社に勤めて貢献したことに対する報償としての性質もあります。即日解雇されたとしても、その貢献が一切無くなる、とは一概に言えません。 そのため、それまでの貢献を抹消・一部抹消してしまうような場合に、退職金の全額不支給・一部不支給が可能となります。 具体的には、職場で長年にわたって横領していたことが発覚したケースなどがあります。 言い換えると、たとえ懲戒解雇された場合でも、必ずしも退職金が全額不支給・一部不支給になるとは限らないということです。 関連記事 ・退職金が未払いの時は弁護士に相談!弁護士に相談すべき理由 不当な即日解雇をされたらどうする? 解雇理由証明書/解雇通知書を受け取る 即日解雇を言い渡されたら、まずは解雇通知書、解雇理由証明書を受け取り、解雇理由を確認してください。 即日解雇は非常に限られた場合にのみ認められるものであり、解雇理由が単に「能力不足」「無断欠勤」などの場合は違法・無効となる可能性が高いです。 その場合は、会社に対して従業員たる地位の確認を求めると同時に、民法536条に基づいて解雇日以降の賃金を請求することができます。 最悪のパターンは、即日解雇の問題がよく分からず、誰にも相談せずに解雇を受け入れてしまうことです。 不当な即日解雇について少しでも納得のいかない点があれば、弁護士への相談など、早めに行動し、即日解雇に異議があることと、引き続き就労の意思があることを会社に伝える必要があります。 相談をする際に会社側の主張を知るためにも、解雇理由証明書や解雇通知書で解雇理由を知っておくことが重要です。 関連記事 ・解雇理由証明書を請求する方法は?請求するために知っておくべきことを解説 即日解雇時に有給が残っていたら? 即日解雇されたら、その解雇が有効か・無効かによって、その後の有給の取り扱いが異なります。 即日解雇が有効な場合は、解雇と同時に労使関係が終了するため、有給を消化する余地がなくなります。 即日解雇が無効な場合は、労使関係が継続するため、その後に有給を消化することができます。 有給の消化については、あくまで会社との雇用契約が有効であることが前提になります。 法律的に有効な即日解雇が行われた場合は、解雇の通告をもって会社との雇用契約が終了になるため、有給を使うことができなくなります。有給が多めに残っている人は注意が必要です。 解雇予告手当の妥当性を確認する 即日解雇の解雇予告手当は、労働基準法12条に基づいて計算されます。 「平均賃金」とは、過去3か月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額をいいます。基本的には賃金の締切日を基準に、そこから3か月間遡る形で計算されます。 労災や産休などの期間は計算に入れないこと、賃金には退職金や3か月を超える期間ごとに支払われる賞与などは含まれないことに注意が必要です。 即日解雇の相談窓口は?実際に慰謝料はもらえる? 即日解雇をされたら、一人で抱え込まずに相談窓口に問い合わせましょう。相談できる窓口を3つご案内しますので、どの窓口に相談するかご検討ください。 解雇の撤回や慰謝料請求についても解説していますので、即日解雇を訴えた場合の流れも一緒にご確認ください。 即日解雇の相談窓口 即日解雇されたら、①労基署②労働組合③弁護士などに相談するようにしてください。 労基署は公的な機関なので、相談料等は完全に無料ですが、実際の交渉活動には関与してくれません。 労働組合や弁護士は、一定の費用が必要になる場合もありますが、交渉など解決に向けて実際に関与してもらえる場合があります。 中でも即日解雇を争う場合の会社との交渉や具体的な解決策についても合わせて知りたい場合は、弁護士への相談がおすすめです。 関連記事 ・不当解雇の無料相談窓口7つを比較!弁護士やハローワーク・労基署・労働組合の違いは? ・不当解雇は弁護士に相談すべき?相談するときのポイントを解説 即日解雇を撤回させることはできる? 即日解雇を撤回させることは、その後の交渉次第で可能です。即日解雇は、労働契約法に照らして、違法・無効となる可能性が高いです。 仮に解雇が違法・無効となった場合は、会社は解雇からトラブル解決までの賃金を支払う必要があります。この点を会社が理解した場合は、即日解雇が撤回される場合もあります。 会社に即日解雇を撤回させるためには、専門家のサポートを受けるといいでしょう。 従業員本人だけで即日解雇の撤回を求めた場合は、水掛け論になることも多く、交渉が難航してしまいます。 弁護士であれば、交渉だけでは解決が難しい場合でも、労働審判や裁判など、司法的な解決手段へスムーズに移行することができます。 時間が経つと「就労の意思がもはやないのでは?」と裁判所から不利に判断されることもありますので、すぐにご相談ください。 不当解雇を裁判で訴える方法について知りたい方は『不当解雇で会社を訴える!裁判の流れと費用を解説』の記事をご覧ください。 実際に即日解雇で慰謝料をもらった事例は? それでは実際に、即日解雇されてからそれが不当解雇であったと判明し、慰謝料を獲得した事案について解説していきます。 ここでの慰謝料とは「即日解雇されたことによる精神的苦痛の緩和」のために支払われており、慰謝料とは別に判決確定までの賃金なども受け取ることができています。 ①暴行で即日解雇され、慰謝料44万円となった例 この事案は、他従業員とぶつかったことからその者を押す・胸倉を掴むといった暴行を行った労働者が即日で懲戒解雇されたものです(東京地判平成29年5月19日)。 暴行自体はあったもののきっかけは偶然であったこと、行為の態様も悪質とは言えないことから、懲戒解雇されるほどの社会的相当性は認められない、よって懲戒解雇は無効と判断されました。 そのうえで、労働者が有期雇用契約中に突然職を失ったこと、不名誉な懲戒解雇と高齢であることも相まって再就職が難しくなったとして、相当程度の精神的苦痛を受けたと認められました。 これにより、平均賃金約2か月分に相当する慰謝料請求が認められました。 ②即日解雇の旨を掲示され、慰謝料10万円となった例 この事案は、会社の指示に反して取引先と協議を行った労働者が即日で懲戒解雇された事例です(東京地判平成28年2月26日)。 就業規則が周知されていなかったためそもそも懲戒解雇が無効であった・懲戒解雇されるほどの非違行為ではなかったにもかかわらず、会社は労働者が懲戒解雇された旨の通知を取引先に送り、労働者の社会的評価や信用を低下させました。 そのような名誉・信用毀損を招く行為が不法行為であると認定され、慰謝料10万円の請求が認容されました。 ただしそのような通知が一社のみに一通だけ送られたこと、人格を攻撃するような文言は無かったことから、慰謝料は低額に抑えられました。 ③不当な即日解雇により慰謝料300万円となった例 この事案は、大学教授がブログを用いて学校の評価を低下させたとして懲戒解雇された事案です(名古屋地判平成26年9月18日)。 ブログによる学校の社会的評価への影響は微々たるものであること、実質的に教授の所属する大学組合への攻撃として行われたものとして、懲戒解雇を無効と判断しました。 そのうえで懲戒解雇のほかにも違法・無効な降格や配転命令が下されていたこと、そのような処分に大きな精神的苦痛を負っていた教授に対し不意打ちで即日の懲戒解雇が命じられたこと、懲戒解雇の事実が教職員にメールで配信されたなどの事情がありました。 これらの事情から、教授の被った精神的苦痛に対する慰謝料として300万円が認められました。 このように、法的手続きをとることでご自分の受けた仕打ちに対し、法的な賠償を求めることができます。まずはお気軽に無料相談受付を行っている弁護士事務所に相談してみましょう。 --- ### 解雇予告手当とは?制度の内容を弁護士がわかりやすく解説 - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-03-15 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6140 - Categories: 不当解雇 解雇予告手当についての解説や雇用形態、解雇理由ごとの対応についてまとめています。解雇予告手当の計算方法を知っておけば、金額を不当に支払われる恐れもなくなりますね。会社が払ってくれないときは、ご案内している相談窓口をご検討ください。 「解雇予告手当とは?」「解雇予告手当の相談窓口は?」 会社から突然の解雇を告げられてしまった場合、解雇予告手当がもらえることをご存じでしょうか。 解雇予告手当は、突然の解雇から生活を守るための制度です。法律に基づいて正しく解雇予告手当を受け取るために、解雇予告手当の制度を確認しておきましょう。 この記事では、解雇予告手当とはどういうものなのか詳しく解説します。 会社が解雇予告手当を適切に支払ってくれないときの対処法や相談窓口もご紹介するので、ぜひ最後までご覧ください。 解雇時にもらえる解雇予告手当とは? まずは、解雇予告手当はどういった制度か解説します。労働基準法の規定をもとにまとめていますので、自身の雇用形態と照らし合わせてみてください。 解雇予告手当とは? 解雇予告手当とは、雇用主が30日以上前に解雇予告を行わなかった場合に、労働者に対して支払われる手当金のことです。 会社は、従業員を解雇する場合に、少なくとも30日前に予告する義務を負っています(労働基準法20条1項)。 会社は労働者に対する解雇予告から解雇日までの期間が30日よりも少ない場合には、不足日数分以上の平均賃金を支払わなければなりません。 この、30日以上前に解雇予告がされなかった際に支払われる手当を解雇予告手当といいます。突然の解雇から生活を守るための制度です。 解雇予告手当の対象者|アルバイトや派遣社員ももらえる 解雇予告手当は、会社に雇用される労働者が対象です。 正社員のみならず、パートやアルバイト、派遣社員などの非正規労働者も適用対象者として受け取ることができます。 ただし、例外もあります。①日々雇い入れられている者、②2か月以内の期間を定めて使用される者、③季節的業務に4か月以内の期間を定めて使用される者、④試用期間中の者、のいずれかに該当する場合には、以下の一定期間を超えて働いている場合でなければ解雇予告手当をもらうことができません(労働基準法21条)。 契約内容解雇予告手当義務の発生条件①日雇い労働者1か月を超えたとき②2か月以内の有期契約所定の期間を超えたとき③4か月以内の有期契約(季節的業務)所定の期間を超えたとき④試用期間14日を超えたとき 解雇予告手当が法的にもらえないケースについて詳しく知りたい方は、『解雇予告手当がもらえない!法的にもらえないケースや請求方法を解説!』の記事をご覧ください。 懲戒解雇でも解雇予告手当はもらえる? 懲戒解雇された場合でも、解雇予告手当がもらえる可能性があります。 労働者の責めに帰すべき事由に基づいて解雇する場合には、労働基準監督署長の認定を受ければ、解雇予告の規定は適用されません(労働基準法20条1項但書)。 この規定により、懲戒解雇された労働者側に明らかな責任がある場合には、解雇予告手当がもらえないことがあります。 ただし、実際には事業者がわざわざ労働基準監督長の認定を受けていることは少ないため、懲戒解雇であっても解雇予告手当を受け取れるケースも多いです。 懲戒解雇だから支払わないと言われた場合でも、労働基準監督署長の認定を受けているのか確認をしてみてください。 関連記事 ・懲戒解雇されると給料はどうなる?解雇予告手当はもらえる? 解雇予告手当を受け取れる日数 解雇予告手当を受け取れる日数は、以下のようになります。 解雇予告日と受け取れる解雇予告手当 即日解雇:30日分 解雇日の20日前に解雇通知:10日分 解雇日の30日前に解雇通知:解雇予告手当は不要 先述したように、もしも20日前に解雇を告げられた場合は10日分、10日前に解雇を告げられた場合は20日分の解雇予告手当が支払われます。 解雇の予告自体行われず、即日解雇される場合は、30日分の平均賃金が支払われます。 もっとも、解雇予告の日数は、平均賃金を支払った日数分だけ短縮することができるため、会社によっては、平均賃金を支払うことで即座に解雇をするということもあります。 ただし、注意が必要なのは、解雇予告手当を支払えば会社が自由に労働者を解雇できるようになるわけではないということです。 法律上認められないような不当解雇はそもそも無効な解雇です。不当解雇が疑われる場合には、弁護士に相談しましょう。 解雇予告手当の計算方法は? 解雇予告手当はいくらもらえるのでしょうか。 社会保険や通勤手当などが含まれるのか、疾病等による療養期間がある場合はどうなるのかなど、会社が適切な額を支払っているか確認するためにも、計算式を知っておきましょう。 源泉徴収が必要かどうかも解説していますので、今後の手続きを把握しておくためにぜひご覧ください。 解雇予告手当の計算方法については、『解雇予告手当の計算方法を徹底解説!【過去3か月分の給与が基準】』の記事で詳しく解説しています。 解雇予告手当の計算方法 解雇予告手当の金額は、まず自分が何日分の解雇予告手当をもらえるのか計算し、その日数に平均賃金の額をかけて計算します。 解雇予告手当の計算式 解雇予告手当の額=平均賃金×解雇予告期間が30日に満たない日数分 解雇予告手当の平均賃金はどう計算する? 解雇予告手当の計算に用いる平均賃金は、直前3か月の賃金総額÷3か月の総日数で計算します(労働基準法12条)。※1銭未満の端数は切り捨て、1円未満の端数は四捨五入 計算する期間について、毎月決まった日に賃金締切日がある場合は、直前の締切日から3か月を数えることになります。 たとえば、以下のケースを想定してみましょう。 計算の具体例 【条件】月給:20万円給料締め日:毎月15日解雇通知日:12月31日退職日:1月15日である場合 【計算】9月16日~12月15日の賃金総額=20万円×3か月分=60万円9月16日~12月15日の総日数=91日平均賃金=60万円÷91日≒6,593円(端数切捨て)解雇通知日12月31日~退職日1月15日の総日数=15日解雇予告の不足日数=30日ー15日=15日解雇予告手当=平均賃金6,593円×15日=98,895円 なお、勤務が3か月に満たない場合には、平均賃金は雇い入れ後の期間で計算をします。 平均賃金に含まれるものは? 平均賃金の計算方法は労働基準法12条に定められており、通勤手当・通勤定期代、皆勤手当、年次有給休暇の賃金、昼食料手当なども含めて計算されます。 ただし、以下の3点は賃金総額に含まれない点にご注意ください。 平均賃金に含まれない費目 結婚手当や見舞金などの臨時で支払われた賃金 3か月を超える期間ごとに支払われる賞与 法令や労働協約に定められていない現物給与 もっとも、その3か月間の間に業務上の負傷・疾病による療養期間や、産休産後の休業期間があった場合は、別途、法律上の調整が入ります。 そのままの状態で賃金を参入すると、療養期間や休業期間といった従業員には制御できない特別の事情によって、賃金の総額が異常に少なくなるためです。 平均賃金の最低保障額 給与が労働日数・時間で決められる労働者や、出来高払い・請負契約などの場合には平均賃金の最低保障額が定められています。 これは労働日数が少ない労働者の場合、原則通りの平均賃金の計算をすると極端に低額になってしまうおそれがあるためです。 このような労働者に関しては労働日あたりの賃金の60%を最低保障額としています(労働基準法12条1項但書)。 平均賃金の最低保障額の計算式 平均賃金の最低保障額=3か月間の賃金総額÷3か月間の勤務日数×0. 6 上記の最低保障額と平均賃金(「3か月間の賃金総額」÷「総日数」)を比較し、より金額の高いほうが解雇予告手当の計算に用いられます。 解雇予告期間はどこでわかる? 解雇予告期間は、解雇を告げられた日の翌日から実際に解雇されるまでの期間を指します。 解雇予告された当日は予告日数に含まれないことに注意が必要です(民法140条)。 解雇を予告された日については、解雇通知書や解雇を告げられた際の文書やメールの記載が客観的な証拠になります。 もし、口頭で解雇を告げられた場合には、証拠を残すためにも、解雇通知書といった書面を会社側に請求しましょう。 解雇予告手当に所得税の源泉徴収は必要? 解雇予告手当は、①退職所得(解雇予告手当・退職金など)が退職所得控除額以下で、②「退職所得の受給に関する申告書」を提出していれば、所得税はかかりません。 そのため、確定申告も必要ありません。ただし②が無い場合は、20. 42%の所得税が源泉徴収され、確定申告により清算する必要があります。 解雇予告手当がもらえないときの請求方法と注意点 解雇予告手当をもらえるはずなのに、会社が払ってくれないときの対処方法を解説します。 解雇予告手当の請求期限(時効)は、退職後から2年間までとなります。請求期限もあるので早めに請求しておきましょう。 解雇予告手当請求をする前に注意すべきこと まず、自身の受けた解雇が不当解雇ではないかと納得がいかない場合には、解雇予告手当を請求することは注意が必要です。 自分から解雇予告手当を請求するということは、裏返せば解雇自体は認める・受け入れる主張になるからです。 そのため、解雇予告手当を請求してしまうと、あとから解雇の無効を主張をすることが難しくなってしまいます。 もし、解雇について不当であると感じており、解雇の撤回や損害賠償請求などを検討しているのなら、解雇予告手当の請求はせずにすぐ弁護士に相談した方が安全です。 不当解雇であれば、解雇予告手当が貰えなくとも、解雇が無効なのでそもそも労働契約に基づいた給料を請求する権利があります。 仮に、解雇を争うつもりがあるのに、一方的に会社から解雇予告手当が振り込まれてしまった場合には、紛争解決までは手を付けずにそのままおいておきましょう。 あるいは、「今回の解雇は無効だと考えているため、解雇予告手当として振り込まれた金銭については、○月分の給与として受領します」と一言会社に伝えておくと良いでしょう。 解雇予告手当を支払ってもらえない場合は? 解雇予告手当を支払ってもらえない場合は、会社は労働基準法20条に違反していることになります。 そのため、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があります(労働契約法第119条)。 また、裁判で解雇予告手当を請求する場合、「付加金」を請求することができます(労働基準法114条)。付加金の額は元の手当の額と同一ですので、裁判では倍額の支払いを受けられる場合があります。 まずは、こういった事実を会社に伝え、手当の支払いを交渉してみましょう。 解雇予告手当の請求書の書式 解雇予告手当の請求方法に特に決まりはありませんが、内容証明郵便による書面での請求がベストです。 書面で請求することにより、「言った言わない」のトラブルを防ぐことができます。 解雇予告手当は、法律上の要件が明確で、違反すれば一目瞭然で分かるルールです。そのため、従業員本人が請求しただけで、会社がスムーズに応じるケースもあります。 解雇予告手当請求書のテンプレートは、『【テンプレートあり】解雇予告手当請求書の書き方・送付方法を解説!』の記事からダウンロードできます。ぜひご活用ください。 解雇予告手当の支払日・請求期限・時効はいつ? 解雇予告手当は、本来は解雇の通知と同時に支払われるものです。 解雇予告手当の時効は2年です。そのため、解雇予告手当を請求したい場合は、解雇された後、なるべく早くに会社に請求をする必要があります。 2年放置すれば、時効により消滅したと判断される可能性があります。 もし解雇からある程度の時間が経っている場合は、早めに専門家に相談しましょう。 時効の進行を中断させるためには、「裁判上の請求」「支払督促」などの一定の法的手続きを取る必要があります。 専門家に相談して、今後の解雇予告手当の回収可能性について、よく検討してみましょう。 なお、解雇予告手当の支払い日は「解雇通知を行ったとき」とされています。解雇日ではなく解雇通知日となります。 解雇予告手当を支払ってもらえないときの相談窓口 企業によっては解雇予告手当を支払うよう請求しても、それを無視したり、あるいは法的に合理性のない反論などを行って支払わないケースがあります。 相手方の会社が解雇予告手当を支払わない場合の対処法や相談の窓口について解説します。 労働基準監督署 会社が解雇予告手当を支払わないときには、まずは労働基準監督署に相談をしてください。 会社によっては、労働基準法の理解が不十分なため解雇予告手当の支払いをしていないようなケースもあります。 その場合は労働基準監督署の指導や勧告が入れることで、スムーズに解雇予告手当を満額支払ってくれることも多いです。 ただし、労働基準監督署は、勧告を出し自主的な支払いを求めることが主であるため、解雇予告手当をあえて支払っていない会社は、勧告すら無視する場合があります。 その場合は、強制的な法的手続きが使える弁護士に相談することが最適です。 弁護士 労働基準監督署に相談しても解雇予告手当が受け取れない場合には、弁護士に相談しましょう。 弁護士であれば、法的な根拠を基に会社に対して解雇予告手当を請求することができます。 また、会社との交渉が難航した場合には、労働審判や民事裁判で支払いを請求することができますし、仮に未払給与・残業代があった場合に合わせて請求をしてくれます。 そもそも弁護士に依頼したという事実は、会社にとって相当なプレッシャーとなります。 弁護士が会社に交渉を持ち掛けただけで、すぐに事態が解決するというケースも少なくありません。 まとめ この記事では、解雇予告手当の制度の内容や計算方法、請求手順について詳しく解説しました。 解雇自体に納得していない(それを望んでいない)場合は、手当の請求など退職を前提とした手続きを進めてしまうと「解雇を受け入れている」と判断されてしまいます。 解雇予告手当は、突然解雇を告げられたことに対する手当として支払われる金銭だからです。 安易に解雇予告手当の請求手続きに進むのではなく、一度どうするべきか弁護士に相談することが大切です。 解雇に不当性がある場合は、解雇の無効を訴え、不当解雇されてから合意がなされるまでの期間の賃金を請求することもできます。 不当な解雇が疑われる方は、一度弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。 --- ### 内定取り消しは違法?違法性や対処法について解説 - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-06-21 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6141 - Categories: 労働問題全般 内定を取り消された場合、内容によっては取り消しを無効にできたり、損害賠償を請求できたりする可能性があります。 突然の内定取り消しでお困りの方は、弁護士に相談することをおすすめします。 「一方的に内定を取り消されてしまった」「突然の内定取り消しは違法ではないのか」 就職活動や転職活動で入社を希望する企業から内定をもらった場合、多くの方はその時点で就職活動を終了すると思います。 内定をもらった会社への入社準備をしていた矢先に、突然内定を取り消されてしまうと、どうすればよいかわからず不安になる方も多いのではないでしょうか。 内定を取り消された場合、その理由によっては内定取り消しが無効となったり、損害賠償を請求できたりする可能性があります。 今回は、内定の取り消しが違法になる・ならないケースや、内定を取り消されてしまった際の対処法について解説します。 内定の定義と違法な内定取り消し 内定とは 法律上、内定とは「始期付解約権留保付労働契約」と呼ばれます。 始期付解約権留保付労働契約 実際に入社して就労するまで一定の期間があるという条件(始期付)で、かつ入社までにやむを得ない事由が発生したときには労働契約を取り消すという条件(解雇権留保付)における、労働契約のこと 契約の内容を見ると、会社側にやむを得ない事由が発生したときには、労働契約を取り消す(内定を取り消す)ことができるように思えるでしょう。 しかし、内定通知を受け取った時点で、会社と労働者との間には、労働契約が成立しているとみなされます。 労働契約の解除は、会社側の身勝手な理由で行うことができないため、内定取り消しが違法になるケースがあるのです。 内定取り消しが違法になるケースは? 労働契約を結んでいる以上、内定取り消しは解雇と同様の扱いとなります。会社側が労働者を解雇するためには、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性があることが必要です(労働契約法16条)。 内定取り消しも、この解雇の要件に準じて判断されます。 つまり、内定取り消しに客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性がない場合には、違法と判断される可能性が高いです。 内定における雇用契約に留保された解約権(入社までにやむを得ない事由が発生したときに労働契約を取り消すことができるという権利)が合法的に行使されたかどうかが厳しく審査されます。 内定取り消しが違法と判断された事例 企業の内定を取り消された大学生が、内定取り消しの無効と、従業員としての地位の確認を求めて会社を提訴した事件です(『大日本印刷事件』最高裁 昭54. 7. 30)。 大学生は、新卒採用をおこなっていた企業に応募し、採用内定の通知をもらっていました。 内定に際して、大学生は「一定の場合には採用内定を取り消される可能性がある」ということについて承諾する趣旨の誓約書を提出していました。 入社2か月前になり、会社は大学生に対して「当初から感じていたグルーミー(陰気)な雰囲気が、会社には不適格である」として内定を取り消しました。 裁判所は、採用内定を通知した段階で、企業と学生の間に労働契約が成立していることを認定し、内定取り消しを解雇権の濫用であると大学生の主張を認めました。 このように内定取り消しの理由によっては、内定取り消しが違法と判断される事例もあります。 内定取り消しが認められるケース 内定取り消しは、必ずしも違法になるとは限りません。 内定取り消しについて客観的かつ合理的な理由があり、社会通念上相当であると判断された場合には、内定取り消しが認められます。 具体的には以下のようなケースが挙げられます。 内定取り消しが認められるケース 内定者が大学を卒業できなかった場合 健康上の問題がわかった場合 履歴書の内容に虚偽があった場合 内定後に刑事事件を起こした場合 経営不振でリストラが必要な場合 内定者が大学を卒業できなかった場合 学生の内定者が、大学を卒業できなくなった場合には、企業側が内定を取り消すことも適法であるといえます。 単位を落としてしまったり、留年してしまったりすることは学生側の落ち度です。内定が取り消されても異議を唱えることは難しいでしょう。 健康上の問題がわかった場合 内定者の健康状態が著しく悪化してしまい、業務に重大な支障が生じるという場合には、企業が内定取り消しをする合理的な理由として認められる可能性が高いです。 しかし、業務に差支えのないような病気であったり、企業内で部署などの配置転換をおこなえば労働能力を発揮できたりするといったケースでは、内定取り消しが認められない可能性もあります。 履歴書の内容に虚偽があった場合 内定者の経歴や、提出した履歴書に重大な虚偽があったという場合には、内定取り消しが認められる可能性が高いです。 もっとも、経歴の虚偽が軽微なものであるという場合には、内定取り消しは違法となる可能性もあります。 内定後に刑事事件を起こした場合 内定者が入社前に刑事事件で逮捕・起訴された場合、企業の評判に影響してしまうことが考えられます。 こういったケースでは、企業が内定取り消しをする合理的な理由として認められる可能性が高いです。 経営不振でリストラが必要な場合 経営不振などの理由で、企業がリストラをおこなわなければならない場合についても、内定取り消しが認められるケースがあります。 この場合の内定取り消しは整理解雇に相当し、以下の要件を満たす場合であれば、整理解雇は認められています。 整理解雇の要件について詳しく知りたい方は、『整理解雇された!有効・無効の判断基準となる4要件を弁護士が解説』の記事をご覧ください。 内定取り消しへの対処法 「正当な理由がないのに内定を取り消されてしまった」ということでお悩みの方は、以下のような対処法をとることをおすすめします。 内定取り消しへの対処法 内定取り消しの撤回を求める 損害賠償請求をおこなう 内定取り消しの撤回を求める 「内定取り消しをされたが、その会社で働きたい」という場合には、会社に対して内定取り消しの撤回を求める必要があります。 会社との交渉がうまくまとまらないという場合には、労働審判や民事訴訟といった法的手続きを提起する必要があります。 損害賠償請求をおこなう 内定取り消しをされた場合には、損害賠償請求をおこなうことも検討しましょう。 内定通知を受けると、多くの人はその時点で就職活動を終了すると思います。 内定取り消しを受けると、内定者は再就職が必要になることによる精神的苦痛や、入社準備にかかった費用の損失など、さまざまな損害が発生します。 違法な内定取り消しを受けた場合は、それに伴う損害を企業に請求することが可能となります。 損害賠償請求について詳しく知りたい方は『内定取り消しに対して損害賠償請求はできるのか?弁護士が解説』の記事をご覧ください。 内定取り消しは弁護士に相談 内定先から不当に内定を取り消されてしまったという方は、弁護士への相談をおすすめします。 弁護士に相談することで、「内定取り消しが違法かどうか判断してもらえる」「今後の対応について法的なアドバイスがもらえる」などのメリットがあります。 まとめ 内定通知を受け取った時点で、会社と労働者との間には、労働契約が成立しているとみなされます。 つまり、企業が一方的に内定の取り消しをおこなった場合、その理由によっては内定取り消しが違法であり、無効となる可能性もあります。 内定取り消しでお困りの方は、無料相談を受け付けている弁護士事務所もありますので、まずは弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。 --- ### 雇い止めの無料相談窓口3選!拒否できるケースと対処法 - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-06-27 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6132 - Categories: 不当解雇 長期間に及ぶ雇用や、何度も契約が更新されている場合の雇い止めは、無効となる可能性があります。突然雇い止めを受けてお悩みの方は、弁護士に相談することをおすすめします。 「契約更新を急に拒否された」「派遣社員として長年働いていたのに契約を打ち切られた」 不合理とも思える雇い止めにお悩みの方はいませんか?長年働いていたのに急に契約を打ち切られると、今後どうすればいいのか不安になる方も多いと思います。 雇い止めにあった場合は、専門家に相談することが重要です。 この記事では、おすすめの無料相談窓口や拒否できる可能性がある雇い止めのケース、雇い止めの対処法を解説しています。 雇い止めにあったら行くべき無料相談窓口3選 雇い止めを拒否しても聞き入れてもらえなかった場合は、労働問題の相談窓口へ行くといいでしょう。おすすめの相談窓口として、以下の3つが挙げられます。 雇い止めにあったら行くべき相談窓口 総合労働相談コーナー 労働基準監督署 弁護士 総合労働相談コーナー 総合労働相談コーナーとは、雇い止めや解雇といったあらゆる分野の労働問題の相談や、解決のための情報提供をワンストップでおこなっている厚生労働省の相談窓口です。 予約不要かつ無料で利用できるほか、プライバシーの保護に配慮した相談対応をおこなっているところが特徴です(厚生労働省|総合労働相談コーナー)。 労働基準監督署 労働基準監督署は、労働基準法に反する疑いがある場合、行政指導ができる部署に取り次いでくれます。個人情報保護にも厚いので安心して利用しやすい相談先といえるでしょう。 ただ、行政指導を超えて深く関与してもらうことは難しく、雇い止め拒否の交渉まで頼むことはできません。 関連記事 ・労働基準監督署に相談できる内容とは?メリット・デメリットから徹底解説 弁護士 雇い止めを弁護士に相談するメリットは、裁判を視野に入れた専門的な回答を得られる点です。雇い止めについて、経験にもとづいた法律相談を受けることができます。 弁護士のメリットは、なんと言っても、訴訟・裁判の代理権があることです。雇い止めの不当を争い、将来的に職場復帰したい場合には、弁護士に相談して、民事裁判を起こすという対応も考えられます。 関連記事 ・雇い止めは弁護士に相談!弁護士に相談するメリットと対処法を解説 雇い止めが無効となるケースを紹介 雇い止めが無効となるケース 雇い止めとは、派遣社員のように有期労働契約を結んでいる従業員について、契約期間が満了した際に契約更新をすることなく労働契約を終了させることをいいます。 雇い止めがなされても、雇い止めが不当な解雇と同視できるとして、無効であるとみなされる場合があります。 無効とみなされるケースには以下の2つが考えられるでしょう。 無効となり得る雇い止めのケース 雇用が長期間に及んでいるなど、契約がほぼ無期雇用者と変わらない場合 これまでに何度も契約が更新されているなど、契約更新について合理的な期待が生じている場合 有期労働契約を結んでいる場合であっても、上記のケースのように雇用が継続していくことについて労働者の期待を保護する必要があるような場合には、雇い止めが無効となり、従前と同様の労働条件で契約の更新がなされたとみなされます。 これを「雇い止め法理」といいます(労働契約法第19条)。 雇い止めが無効となるかどうかの考慮要素 厚生労働省は、労働基準法14条2項に基づいて「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」を策定しています。 参考:厚生労働省|有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準について この基準は雇い止めが無効かどうかの判断においても考慮される事項となります。 有期労働契約と雇い止めに関する基準 契約締結時に更新の有無や判断基準の明示があるか 30日前までに更新しない旨の予告があるのか 雇い止めの理由を十分に明示しているのか 契約期間についての労働者の希望に応じた配慮があるのか 基準を満たさずに契約していたり、雇い止めをおこなったりした場合には、雇い止めが無効と判断されやすくなるでしょう。 それぞれの基準を詳しく解説していきます。 契約締結時に更新の有無や判断基準の明示があるか 労働者と契約をするうえで、使用者は契約の更新の有無や、判断基準を明示することが義務付けられています(労働基準法第15条)。 たとえば、そもそも契約の更新があるのか、契約更新がなされるとして更新は自動でおこなわれるのかといった基準が書かれている必要があります。 2024年4月1日からは、「更新上限の有無やその内容」「無期転換後の労働条件」といった、新たな労働条件を明示する義務が使用者側に生じます。 30日前までに更新しない旨の予告があるのか 有期労働契約の更新が3回以上おこなわれているか、1年を超えて雇用されている労働者については、有期労働契約を更新しない場合には、少なくとも契約期間が満了する日の30日前までに、その旨を予告する必要があります(労働基準法第20条)。 雇い止めの理由を十分に明示しているのか 使用者は、雇い止めの予告をした後に、労働者から雇い止め理由の証明書を請求された場合には、事情が許す限りできるだけ早く交付する必要があります。 雇い止めの理由は、契約期間の満了とは別の理由としなければなりません。 契約期間についての労働者の希望に応じた配慮があるのか 使用者は、契約を1回以上更新し、かつ1年を超えて雇用している有期労働契約者との契約を更新しようとする場合には、契約の実情や労働者の希望に応じて、契約期間をできる限り長くするよう努める必要があります。 雇い止めされた場合の対処法3選 無効となる雇い止めのケースをご紹介しましたが、会社から無理やり雇い止めをされることもあります。その場合、泣き寝入りするのではなく、きちんと対処することが重要です。 対処のポイントとして、以下の3つが挙げられます。 雇い止め対策のポイント 会社都合退職の証明書で失業保険を受け取る 損害賠償や慰謝料請求で和解金を得る 違法・不当な雇い止めを認めさせて復職する 会社都合退職の証明書で失業保険を受け取る 雇い止めで失業保険を多く受け取るには、離職票に書かれた離職理由が重要です。 会社の倒産等によって雇い止めにされた場合は「特定受給資格者」として、契約期間満了時の更新を希望したが拒否された場合は「特定理由離職者」として給付金(基本手当)の給付日数が多めに設定されています。 事実に反して自己都合退職として扱われた場合、2か月間の給付制限期間には失業手当を受け取れなくなってしまうので注意が必要です。 関連記事 ・自己都合退職と会社都合退職の違いは?知らないと損する両者の違い 損害賠償や慰謝料請求で和解金を得る 明らかに法令に違反する悪質な雇い止めが行われた場合は、慰謝料を含む解決金として、その従業員の年収程度の金額が認められることもあります。 雇い止めの損害賠償・慰謝料・解決金の金額は、月額の基本給を基準に、入社日からの在籍期間や雇い止めの悪質性などを総合的に検討して決められます。 不当な雇い止めを受け、職場復帰が気まずくて実質的に困難な場合は、早期退職手当を解決金に含めて、金銭的に解決されるケースもあります。 関連記事 ・不当解雇の解決金(和解金)相場は?実例もご紹介! 違法・不当な雇い止めを認めさせて復職する 違法な雇い止めが行われた場合は、雇い止めの無効を主張して、復職を求めることができます。 復職の方法としては、無期雇用転換を前提とした復職を求めたり、引き続きの有期雇用契約継続を前提とした復職を求めたりすることが挙げられます。 また、契約期間が1回以上更新され、通算5年を超えて会社に在職している場合は、労働者の申し込みによって、無期労働契約に転換することが可能です(厚生労働省|有期契約労働者の無期転換ポータルサイト)。 雇い止めの無効を主張したい場合は、契約期間満了の前に会社に対して更新の意思を伝えるか、契約期間満了の直後に遅滞なく会社に対して新雇用契約の申し込みを行う必要があります。 いずれの場合も、後日の水掛け論を防止する観点から、内容証明郵便で書面で通知するのが好ましいです。 まとめ 雇い止めが不当である考えられる場合には、専門家に相談することをおすすめします。 とくに弁護士に相談すれば、裁判を視野に入れた専門的な回答を得られます。 無料相談を受け付けている弁護士事務所もありますので、お悩みの方は相談してみてはいかがでしょうか。 --- ### 不当解雇の解決金(和解金)相場は?実例もご紹介! - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-02-06 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6129 - Categories: 不当解雇 不当解雇の解決金の相場を解説。不当解雇の解決金は賃金の数か月分になることが多いです。お悩みの方は弁護士に相談してください。 不当解雇をされると、精神的なショックや明日からの生活の不安が押し寄せ、暗く重たい気持ちになりますよね。 金銭解決における不当解雇の解決金は、働くひとのその後の生活に関わる重要な事項です。不当解雇の解決金相場は、事案によっても異なりますが、賃金の数か月分になることが多いです。 この記事では、不当解雇の解決金相場に関して、実例を交えながら詳しく解説します。 不当解雇の解決金(和解金)の内訳 不当解雇の解決金(和解金)の内訳は? 不当解雇の解決金(和解金)は、解雇前・解雇後のすべてのトラブルを終局的に解決するためのお金です。 会社から一方的に解雇されても、解雇が無効な場合は、従業員の地位が継続していると判断されます。 不当解雇された従業員は、解雇からトラブル解決までの賃金を民法の規定に基づいて請求することができます。 不当解雇の解決金の大きな部分を占めるのは、この不当解雇後の賃金です。 不当解雇の解決金は、解雇前や解雇通告に伴うパワハラ・セクハラ・執拗な退職勧奨の慰謝料、早期退職手当などが含まれることがあります。 もっとも、不当解雇後の賃金のみの場合もあります。 不当解雇の慰謝料の相場と金額は? 慰謝料とは、精神的苦痛に対する賠償金のことを言います。 不当解雇の金銭解決にあたっては、在職中は泣き寝入りしていたパワハラや、違法解雇で追い詰められてうつ病になった事実を主張し、慰謝料を請求していくことがあります。 実際の交渉で問題になることが多いのは、この慰謝料の相場や金額です。 慰謝料の金額は事案によって異なります。 しかし、基本的には、過去の労働審判や裁判で決められた事例や相場を参考にしつつ、労働者側と経営者側の話し合いで決めていくことになります。 実際に刑法の強制わいせつ罪に該当するセクハラがあった場合などは、性犯罪に準じて、慰謝料の金額が数百万円程度になることがあります。 逸失利益の相場と金額は? 逸失利益とは、不法行為がなければ得られたであろう利益のことを言います。 不当解雇の場合は、違法解雇・不当な解雇がなければ得られた利益のことです。 たとえば、ヘッドハンティングされて転職したものの、転職先で直ちに違法な解雇をされた場合は、元の職場に在職し続けた場合に得られた利益がこれに当たります。 不当解雇の逸失利益の金額についても、基本的には、過去の裁判で決められた事例や相場を参考にしつつ、労使双方の話し合いで決めていくことになります。 不当解雇の違法性が高いほど、この逸失利益の主張が認められやすくなります。メールなどの証拠が残っていれば、積極的に活用しましょう。 不当解雇の解決金相場 不当解雇の解決金相場は、解雇理由に正当性があるかどうかによって異なります。 解雇理由に正当性がある:賃金の1か月~2か月分 解雇理由に正当性がある場合は、解雇は有効と判断される可能性が高いでしょう。 しかし、労働者側が労働審判や裁判などの手続きを取ると、会社としてもトラブルの長期化が懸念されるため、賃金の1か月~2か月分がもらえるケースもあります。 解雇理由の正当性に争いがある:賃金の3か月~6か月分 解雇理由に正当性の争いがあるようなどっちつかずのケースでは、解雇理由に正当性がある場合と比較して解決金の相場が高くなる傾向があります。 正当性があるかどうかは証拠の有無によって判断されますが、証拠が多ければ多いほど労働者有利に進む可能性が高いです。 解雇理由の正当性に争いがある場合の解決金の相場は、賃金の3か月~6か月分です。 また、会社側が不当解雇の可能性が高いケースでは、6か月分以上の賃金がもらえるケースもあります。 正当性がなく不当解雇である場合:賃金の1年分以上 解雇理由に正当性がなく、明らかに不当解雇である場合の解決金相場は、賃金の1年分以上です。 会社側に違法性があると判断され、解決金の相場も高額になります。 不当解雇の解決金のデータと慰謝料が認められた例 不当解雇であることを主張し、労働審判や裁判などで解雇が無効と判断された場合、解決金が支払われます。 実際の解決金がいくらもらえるのか、生活がかかっている以上、とても気になる点ですよね。ここではデータと実際の事例を併せてご紹介します。 解決金の中央値は労働審判で150万円 独立行政法人労働政策研究研修機構(JILPT)の調査によると、令和2年~3年の解決金の中央値は裁判による和解が300万円、労働審判は150万円でした。 労働審判よりも裁判の方が金額が高額になっていますが、裁判でも100万円未満で和解したケースは15%以上あります。 参考:労働審判及び裁判上の和解における雇用終了事案の比較分析 不当解雇で慰謝料が認められた実例 不当解雇で100万円以上の慰謝料が認められた実例を3つご紹介します。解決金は慰謝料も含めたお金であるため、慰謝料が高額になるほど、解決金も高くなります。 100万円以上の慰謝料が認められたケース 【120万円】報復の意図で、理由なく、著しく相当性を欠く手続きで懲戒解雇された(東京地裁H28. 2. 19) 【180万円】長期の性的いやがらせや強姦未遂を受けたうえ不当に解雇され、PTSDを発症した(東京地判H12. 3. 10) 【200万円】未払い賃金の支払いを求める組合活動を行っていたところ、賃金支払いを免れる目的で解雇された(名古屋地判H26. 4. 11) 不当解雇で高額な慰謝料が認められるケースとしては、①在職中にセクハラやパワハラがあった場合や、②解雇の違法性が高い場合(労働組合に加入した事実を理由に解雇するなど)が挙げられます。 慰謝料は、違法行為に対する損害賠償のため、損害の程度と行為の違法性が大きいほど高額になります。 在職中に受けたわいせつ被害は、不当解雇された時の金銭交渉の場面で、合わせて慰謝料を請求することができます。わいせつ行為は、性犯罪です。 わいせつ被害を受けた場合は、数百万円程度の慰謝料が認められるケースも少なくありません。上司ではなく、会社に対して使用者責任を問うことも可能です。 不当解雇されたら泣き寝入りせずに行動する 会社に不当解雇されたら「理由」を知ろう まず、会社から不当に解雇された場合は、解雇理由証明書を受け取り、解雇理由を確認してください。 解雇理由証明書は、その名の通り解雇の理由が記された書面であり、労働者が請求すれば、使用者には交付の義務があります(労働基準法22条1項)。 口頭で解雇理由を聞かされていた場合でも、解雇理由証明書を請求し、解雇理由を明らかにしましょう。 解雇理由証明書を受け取ったら、解雇理由が違法かどうか検討しましょう。 なお、使用者から解雇理由証明書の交付を受けたとしても、詳細な理由が記載されているとは限りません。 「就業規則の第○条に該当したため」といったように、就業規則の該当条文が書かれているだけということもあります。 その場合は就業規則のコピーを証拠として収集し、違法かどうか検討する必要があります。 内容証明郵便を使って会社に通知する 不当解雇は違法かつ無効なものです。何よりも大切なのは、解雇されてからなるべく早くに、会社に対して、解雇に対して異議があることと、引き続き会社で就労する意思があることを通知することです。 これを怠れば、後の交渉で不利になります。 この異議と就労の意思については、内容証明郵便を使って会社に通知しましょう。 内容証明郵便であれば、郵便局に書面が保管され、後日、言った・言わないの争いを避けることができるからです。また、仮に将来的に労働審判や裁判になった場合も、証拠として使えるので安心です。 弁護士に相談する 不当解雇について少しでも納得のいかない点があれば、弁護士へ相談してください。 労働問題を扱っている弁護士であれば、解雇理由証明書の理由や解雇に至った経緯などから解雇の違法性を判断できます。 また、会社から促されて退職届を記載してしまうと、自ら退職したことになってしまうので、不当解雇を争うことが難しくなります。 早めに弁護士に相談したことで、退職届を書くことを免れたケースもあります。不当解雇された場合は、弁護士に解雇の違法性と今後の対応について相談しましょう。 関連記事 ・不当解雇は弁護士に相談すべき?相談するときのポイントを解説 まとめ 不当解雇でお悩みの方は、弁護士に相談しましょう。不当解雇は事案を細かく分析し、証拠化を進め、会社と交渉をしながら、労働審判・裁判といった法的手続きも検討していく必要があります。 能力不足が理由の場合などは、判例上も解雇の有効・無効の判断が分かれる場合があります。 まずは無料相談を受け付けている弁護士事務所に相談してみてください。 --- ### 不当解雇の無料相談窓口7つを比較!弁護士やハローワーク・労基署・労働組合の違いは? - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-06-21 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6130 - Categories: 不当解雇 不当解雇の相談は、①国や地方公共団体が運営する相談窓口、②労働組合やユニオンが運営する相談窓口、③弁護士が運営する相談窓口などを上手に使い分けて、進めることが大切です。このページでは、不当解雇の慰謝料や解決金の増額方法から、弁護士費用や成功報酬の内訳まで、詳しく解説していきます。 「今日で解雇ね」「明日からもう来なくていいから」 上司や社長などから急に解雇を告げられると頭が真っ白になってしまいますよね。 そんな方が今すぐ連絡すべき、不当解雇の無料相談窓口を7つ紹介します。 相談前にすべきこと、相談後の流れ、不当解雇の解決方法なども記載していますので、一刻も早く動き出しましょう。 無料相談・電話相談できる不当解雇の相談窓口7選とその特徴は? 不当解雇の無料相談窓口は主に7つです。解決へのおすすめ順に並べると以下のようになります。 相談窓口解決力弁護士★★★労働組合★★労働基準監督署★★労働委員会★★都道府県の労働局★ハローワーク★総合労働相談コーナー★ それぞれ「相談の範囲」や「やってもらえること」が異なりますので、詳しく見て比較していきましょう。 弁護士の無料相談窓口 不当解雇でお悩みの場合、弁護士の無料相談窓口が最も有効です。 弁護士に相談するメリットは、労働審判や裁判での勝率も視野に入れた相談ができることです。 弁護士からの交渉ですぐに応じる会社も多く、仮に交渉決裂になっても、法的手続きで強制的に判断をしてもらえる点が強みといえます。 無料電話相談をしている弁護士・法律事務所もあるため、まずはすぐに連絡してみることが大切です。 弁護士事務所を探す際には、「着手金がかかるのかどうか」を確認してみてください。 解雇をされて生活に困っているとき、いきなり数十万の着手金を払うことは難しい場合もあるでしょう。 ただ、費用を気にして相談が後伸ばしになってしまうと、時効の完成や、証拠の散逸といった理由で、泣き寝入りになってしまうかもしれません。 自分の解雇が不当かどうか、何を請求できるのか、今すぐ何をすべきかを明らかにするためにも、まず弁護士に無料相談をしてみましょう。 関連記事 ・不当解雇は弁護士に相談すべき?相談するときのポイントを解説 労働組合・ユニオンの無料相談窓口 不当解雇されたら、労働組合の無料相談窓口も効果的です。自分の会社の中にある労働組合でも、会社の外にあるユニオンでも大丈夫です。 労働組合は労働者の地位を守るスペシャリストでノウハウも集積しています。相談後に加入すれば、団体交渉を依頼できる組合もあります。 法律上、会社は団体交渉に誠実に応じる義務があります(労働組合法7条2項)。 不当解雇についてダイレクトに交渉をしてもらえるので、復職や解決金の請求によって解決する可能性がある点がメリットです。 ただ①全ての労働組合・ユニオンが団体交渉をしているわけではなく、②労働組合によっては組合費や着手金がかかる、という点には注意が必要です。 また、会社が要求を突っぱねた場合、それ以外に何もできなくなってしまう点も難しいポイントです。 こうなってしまうと、結局は弁護士を依頼して労働審判や民事訴訟を起こし、法的に強制する必要がでてきます。 労働基準監督署の相談窓口 労働基準監督署(労基署)とは、労働に関する法律を会社が遵守しているかを申告や臨検監督でチェックし、指導票や是正勧告書の交付によって、働く人の権利を守る公的機関です。 参考:全国の労働基準監督署の所在地 労基署はあくまで法律違反がないかをチェックする役割を担っています。 解雇について手続き的な違反があった場合には、会社に対してヒアリングをしたり、場合によっては是正勧告書を交付したりします。 公的機関から連絡がくれば会社へは相当なプレッシャーになります。自主的に是正してもらえる場合もあるでしょう。 ただし、労基署は「解雇の有効性」など法的な評価が必要な判断はおこないません。明確な法律違反に対してのみ動く機関です。そのため表面的な手続きに問題がない解雇については、労働組合や弁護士に相談するよう指導されるだけの場合も多いです。 また、ヒアリングに対する会社の回答を確認し、これ以上は労働組合や弁護士の領域だからと労基署がそれ以上追及しないこともあります。 その際、会社側が「労基署にも正しいとお墨付きをもらった」と勘違いし、その後の交渉で必要以上に強気になるリスクもあります。 そのため無料相談後、会社に連絡をしてもらうかどうかは慎重に考えましょう。 関連記事 ・労働基準監督署に相談できる内容とは?メリット・デメリットから徹底解説 労働委員会の無料相談窓口 労働委員会とは、労働関係のトラブル解決のために、各都道府県に設置された行政機関です。 不当解雇について相談を受け付けていることはもちろん、あっせん員が間に入って当事者間での自主的解決を支援するあっせん制度を利用することができます。 迅速な解決を目指すことができますが、あっせんへ会社の出席を強制できないなどの特徴もあります。費用もかかるため、まずは不当解雇について相談し、あっせんについても聞いてみましょう。 都道府県労働局の無料相談窓口 各都道府県に設置された労働局でも不当解雇について相談できる窓口が用意されています。 たとえば東京労働局では、午前9時から午後5時まで対応してくれ、下記番号で電話相談窓口もあります。 総合労働相談0120-601-556東京労働局相談コーナー03-3512-1608 ただ、労働局も会社と交渉などはしないため、解決への実効性は薄いです。 ハローワークの相談窓口 不当解雇された場合、失業保険や離職票についてはハローワークが最適な相談窓口です。会社と解雇について争うにせよ、退職するにせよ、①ご自分の雇用保険加入状況と②今後の手続きについて確認しておくべきでしょう。 電話相談窓口もありますので、「全国ハローワークの所在案内」ページからお近くのハローワーク情報をチェックしましょう。 総合労働相談コーナー 総合労働相談コーナーは、都道府県の労働局や全国の労働基準監督署など379か所に設置されている厚生労働省管轄の相談窓口です。 ①対面のみならず電話相談もできる、②不当解雇だけでなく全労働問題の無料相談ができる、③国・自治体運営で安心できる、とても便利な相談先です。 学生や就活生、外国人労働者などからの相談にも無料で答えてくれます。 また、もし法律違反の疑いがある場合には労働基準監督署など行政指導の権限を持つ担当部署に取り次いでくれますので、スムーズな相談ができます。 場所や連絡先は、総合労働相談コーナーの公式ページの最下部に都道府県ごとにまとめられています。 公的機関なので安心感はありますが、会社と交渉等はせず、アドバイスや最適な相談機関の紹介が主になりますので、実際の解決からは少し遠いという特徴があります。 不当解雇の相談窓口に連絡するまえにすべきこと ①解雇に同意やサインをせず「就労意思」を書面で伝えておく もし解雇を争う場合は、解雇に納得しておらず、引き続き働きたい意思があることが重要です。 解雇に同意をすると、仮に違法で無効な解雇であっても、退職の意思があるとして団体交渉や労働審判で不利になる可能性があります。 解雇と言われた瞬間、癖で「わかりました」と言ってしまうケースが非常に多いですが、会社から同意したと主張されるリスクがあるため避けましょう。 「会社の言い分については理解しました」などの言い回しですと誤解が少なくおすすめです。 また言われるがまま「退職届」にサインをさせられ、知らず知らずのうちに解雇ではなく「自分で辞めた」ことになってしまう場合もあります。 もし不当解雇を争う可能性があれば、同意もサインもせず、かつメールやLINEなど形に残る方法で「解雇に納得いっておらず、引き続き働きたいと思っている」と伝えて証拠化しておきましょう。 ②解雇通知書・解雇理由証明書を得ておく 解雇と告げられたにも関わらず、紛争になった途端に「うちは解雇していない」「自分で辞めたいと告げてきた」などと会社が主張することがあります。 そのため、解雇の証拠として解雇通知書が交付されたらしっかりと保管しておきましょう。 また、解雇理由が分からなければ違法か否かを判断することができません。必ず解雇理由証明書を請求し、解雇理由を明らかにしておきましょう。 解雇理由証明書を請求した場合、会社から必ず交付してもらえる権利があります(労働基準法22条1項・2項)。 関連記事 ・解雇理由証明書を請求する方法は?請求するために知っておくべきことを解説 ③就業規則を確認する 就業規則には、解雇できる場合が通常定められています。 解雇の根拠としてチェックする必要もありますので、可能な限り確認しておきましょう。 ④録音やメールのやりとりなどをまとめる もし解雇を団体交渉や訴訟で争う場合、証拠が非常に重要になります。 解雇を言い渡されたか否か、解雇を認めたか否か、解雇の理由は正しいか、といったことを明確にするためにも、集められるものはしっかりと証拠化しておきましょう。 特に弁護士は証拠があるか否かによって依頼を受けてくれるか否か変わる可能性があります。 上記の解雇理由証明書も含め、以下のような証拠をあるだけまとめておきましょう。 集めておくべき証拠 労働契約の内容雇用契約書、労働者派遣契約書など 労働条件雇用契約書、就業規則のコピーなど 実際の労働状況・賃金支払い状況給与明細書、勤怠時間がわかるデータなど 解雇状況・解雇理由解雇予告通知書、解雇理由証明書、離職票など 不当解雇紛争の解決方法は大きく2つ 不当解雇を通知された際に考えられる解決の着地点は、①会社に戻るか、あるいは②退職するかの2つに分けられます。相談窓口に連絡すると「どうしたいのか」を聞かれます。 仮決めでも大丈夫ですので、どの解決を目指すのか考えてみましょう。 解決方法①:解決日までの給与を支払ってもらったうえで会社に戻る 不当解雇の無効を主張したり、相手に撤回させたりして、会社に戻るという選択肢です。これまで通りの条件で働き続けられ、安定した生活が戻ってくるメリットがあります。 また不当な解雇だと判定された場合には、解決日までの給与を支払ってもらえます(バックペイ)。 ただ会社に戻っても、気まずく働きにくい場合が多い点がリスクです。 解決方法②:解決金をもらって退職して転職をする 一方、和解などにより解決金を得て退職するという選択肢もあります。一度労働紛争となってしまい、会社も従業員も、元の関係に戻れない場合に有効な手段です。 もちろん前提として解雇にも退職に同意せず、就労の意思があることは必要ですが、互いに次のステップに進む建設的な手段として広く採用されています。 転職活動を考慮し、解雇ではなく会社都合の退職として合意する場合も多いですが、事情によって最適な合意内容は変わりますので、相談窓口で詳細に聞いてみましょう。 関連記事 ・不当解雇の解決金(和解金)相場は?実例もご紹介! 不当解雇を相談した後の流れは? 不当解雇の相談の流れ それでは上記の相談窓口に、実際に不当解雇を相談するときの流れを見てみましょう。 通常、不当解雇の相談は以下の順に検討します。 不当解雇の相談の流れ 会社側が本当に解雇したのか・どのような解雇をしたのかを確認する 解雇理由を確認する 会社の主張する解雇理由を検討する 希望にそった対処法を検討する まず、本当に「解雇」されたのかを確認します。解雇されたと思っていても、実際は退職勧奨に応えて自主的に退職した形にされていることもあります。 用意した会社とのやりとり証拠などを見せながら、解雇事案なのかを聞きましょう。 次に、当該解雇が普通解雇・整理解雇・懲戒解雇などのうち、どれにあたるのか確認します。解雇の種類によって、法律上認められる場合・要件が異なります。 それを踏まえ、会社が主張する解雇理由の正当性を検討します。 ①会社主張の事実が実在するか否か、②仮に実在する場合、当該理由は法律上解雇の要件を満たすかを判断していきます。 中核的な部分になりますので、証拠がある場合は示しながら質問していきましょう。 このように相談者の現状がわかれば、解決金や復職といった希望する解決方法が可能か、そのために相談先がどんな手伝いをできるかを教えてくれることでしょう。 不当解雇の相談後の流れ|慰謝料請求~復職まで 不当解雇について相談をした後は下記の流れで解決を目指し進みます。 不当解雇の相談後の流れ 会社と交渉 労働審判 裁判 内容証明で証拠を残しながら交渉 まずは、内容証明郵便を送って、解雇に「異議」があることと、引き続き「就労の意思」があることを通知しましょう。 内容証明郵便を使って、証拠を残すことが大切です。そのまま会社と交渉し、解雇無効にして慰謝料を請求、獲得できればベストです。 弁護士やユニオンに依頼していれば、交渉を任せることもできます。 不当解雇の慰謝料や解決金の獲得のためには、適切なタイミングで「異議」と「就労の意思」を通知しておくことが大切です。 時間が過ぎた後に通知しても、法的には効力がない場合もあるのでご注意ください。復職の迷いがある場合は、まず内容証明郵便を使って通知することをおすすめします。 労働審判の申し立てから調停成立まで 次に、手続き外の交渉が決裂した場合は、労働審判を申し立てて、解決を求めることができます。 労働審判の場合は、両者の間に公的な機関が入るため、比較的スムーズな解決が期待できます。弁護士に依頼すれば、費用はかかりますが、安心して紛争の解決を任せることができます。 労働審判の特徴は、裁判に比べて審理がスピーディーな点です。 不当解雇トラブルが発生し、労働審判を申し立てた後は、裁判所で期日における審理が開かれ、最終的に、調停が成立するか・審判が下されることになります。 審判に異議が申し立てられた場合は、そのまま裁判に移行します。 関連記事 ・労働審判とは?制度の内容や手続きの流れを弁護士がわかりやすく解説 裁判に訴える場合の期間・費用・勝率 交渉決裂や、審判に不服がある場合、民事裁判で争うことになります。 民事裁判は、不当解雇の場合は、従業員としての地位の確認と不当解雇後の賃金を請求するのが一般的です。 裁判の場合は、もし勝訴すれば、判決が確定するまでの賃金を請求することができるので、手段の中では最も強力です。 もっとも、不当解雇を民事裁判で解決するに当たっては、①お金がかかる(着手金数十万円〜と高額な弁護士費用など)、②時間がかかる(解決までの期間は、早くて半年の、長くて数年)、③全面敗訴する可能性があるというデメリットがあります。 裁判の勝率は、証拠の有無によって大きく変わります。 不当解雇の弁護士費用・成功報酬と活用メリット 最後に、気になる「弁護士の費用」です。 弁護士と聞くと「費用が高そう」、「相談の段階でお金がかかりそう」とハードルが高いイメージがありますが、中には気軽に相談できる弁護士もいます。 弁護士費用や、弁護士に不当解雇の相談をする大きなメリットをご紹介していきます。 知っておけば安心、無料相談後の話 最近は、不当解雇の無料相談を受け付けている弁護士も多いです。 無料相談であれば、初期費用がかからないので安心です。無料相談の方法も、「電話で無料相談ができる」「LINEで無料相談ができる」「土日夜間も対応している」など多様な選択肢があるので、いろいろと調べてみてください。 不当解雇の無料相談では、相談時に雇用契約書のコピーや就活時に見た応募ページのコピーなどを用意すればスムーズです。 とくに、①契約日・入社日、②給料体系・実際の支払い、③雇用期間、④解雇言い渡し日、⑤解雇までの流れなど、契約内容やトラブルの詳細が重要になってきます。 とはいえ、わからないときはまずは電話をして聞いてしまいましょう。 関連記事 ・不当解雇を相談・依頼するときの弁護士費用相場は?対処法も解説 成功報酬制で初期費用ゼロも! 不当解雇の慰謝料や解決金の獲得には、成功報酬で対応している弁護士もいます。 その場合、初期費用として着手金などの弁護士費用はかかりません。 不当解雇の慰謝料や解決金を獲得できた場合に限り、その何割かを報酬として支払うことになります。初期費用を払わずに済むので、リスクが少ないです。 裁判には弁護士が必要?メリットは? 裁判には必ずしも弁護士が必要というわけではありません。弁護士を付けずに、自分で裁判を起こすことも可能です。 弁護士を付けないで自分で進める裁判を「本人訴訟」と言います。本人訴訟の場合は、手間がかかりますが、弁護士費用を払わなくて済むので、その分コストを下げることができます。 弁護士を付けた場合のメリットは、面倒な手続きをすべて任せることができ、仮処分や強制執行など多様な戦略を取ることができる点です。 素人でも本人訴訟を起こすことはできますが、仮処分や強制執行は困難です。労働紛争に慣れた弁護士であれば、専門家ならではの攻め方が期待できます。 不当解雇で裁判を起こす場合の流れを詳しく知りたい方は『不当解雇で会社を訴える!裁判の流れと費用を解説』の記事をご覧ください。 不当解雇にあったらまずは相談窓口へ! 以上、不当解雇の相談窓口についてお伝えしました。 専門家に相談すれば、まずは真っ白になった頭を整え、すべきことをクリアにできます。 また、法的な知識がないと、解雇への同意など、致命的な対応をとってしまうリスクもあります。まずは電話相談も含め、ご紹介した相談窓口に連絡してみてください。 --- ### 不当解雇に強い弁護士の探し方|相談無料・費用の仕組み - Published: 2023-11-22 - Modified: 2024-05-13 - URL: https://atomfirm.com/roudou/6131 - Categories: 不当解雇 不当解雇に強い弁護士の探し方を解説しています。不当解雇に強い弁護士は経験や実績のみならず、説明の分かりやすさも重要です。無料相談を受け付けている法律事務所もあるので、お悩みの方は相談してみましょう。 「不当解雇に強い弁護士の特徴は?」「不当解雇に強い弁護士の探し方は?」 不当解雇問題を解決するにあたって、弁護士への相談や依頼をお考えではないでしょうか。 不当解雇は、個人で解決を図ることは難しく、弁護士に相談することが重要です。 しかし、「どの弁護士に相談すればいいのか分からない」「弁護士費用が最終的に高額になるのではないだろうか」などと不安な点が多いと思います。 この記事は、不当解雇で、どの弁護士に相談・依頼するかお悩みの方に向けて、不当解雇に強い弁護士の選び方や弁護士費用について解説していきます。 不当解雇を弁護士に相談すべきケースとは? 解雇について不当性を感じれば、基本的に弁護士に相談すべきです。ここから、特徴的なケースについてご紹介します。 不当解雇かも?相談すべき解雇のパターン 解雇の仕方に法律上の問題があり、解雇が違法・無効なものとして認められるパターンとしては以下のようなものがあります。 不当解雇の例 客観的に合理的な理由のない解雇(嫌がらせ、軽いミス、単純な能力不足、数回程度の遅刻や欠勤による解雇) 解雇することが社会通念上相当でない(周りも同じことをしているのに自分だけ解雇される、解雇について説明がない) 就業規則に無い解雇理由での解雇 妊娠、産休、育休をとることを理由とする解雇 労働組合に加入したことを理由とする解雇 以上のような事由にあてはまった場合、不当解雇は違法・無効と判断される可能性があります。 その場合は、弁護士の力を借りて、解雇無効の主張・不当解雇の金銭的解決を目指すことを考えてみましょう。 弁護士がいなくても不当解雇は解決できる? 不当解雇に関する問題は、労働者一人で解決することは、非常に難しいのが現状です。 不当解雇に関する問題を解決するには、解雇が無効であること・解雇による精神的損害を受け慰謝料を請求ができることを適切に主張し、会社に受け入れてもらう必要があるためです。 しかし、解雇に至るほど関係の悪化した労働者の主張を、会社側が全面的に認めてくれることは、まずありません。 さらに少しでもご自身の立場を有利にしようと、引き継ぎやデータの受け渡しを拒否したり、会社に抗議を行ったりしたことが、かえって受け取れる金額を減らすことにも繋がってしまったケースもあります。 弁護士を依頼しなくても、まずは相談をして法律の専門家としての見解とアドバイスを聞いておくことが、解決の近道となります。 関連記事 ・不当解雇は弁護士に相談すべき?相談するときのポイントを解説 不当解雇を取り扱う弁護士の探し方 不当解雇を取り扱う弁護士の探し方は、以下の3種類があります。 弁護士の探し方 親族や友人から紹介してもらう 弁護士検索サイトを利用する インターネットで法律事務所を検索 親族や友人から紹介してもらう 親族や友人からの紹介してもらうことができれば、たくさんいる弁護士の中から依頼する弁護士を探す手間が省けるでしょう。 また、実際に依頼した際の連絡頻度や対応などを詳しく知ることができることもメリットです。 注意点としては、紹介してもらった弁護士が必ずしも不当解雇に強い弁護士かどうかは分からないことです。 たとえ労働問題を扱う弁護士でも、残業代請求や退職代行などを専門的に扱う弁護士かもしれません。 親族や知人は、他の分野・内容で依頼していた可能性もあるので、依頼する際には、不当解雇を扱っているかどうか確認しましょう。 弁護士検索サイトを利用する 弁護士検索サイトは、弁護士をまとめて掲載しているサイトです。 法律事務所を比較検討しながら探すことができるのが特徴です。労働問題に特化しているサイトもあります。 インターネットで法律事務所を検索 インターネットで法律事務所を検索する方法もあります。 「不当解雇 弁護士 相談」などとキーワードを入れて検索すると、不当解雇を扱っている法律事務所を見つけることができるでしょう。 無料で相談したい場合は「不当解雇 弁護士 無料相談」、住んでいる都道府県で探したい場合は「東京 不当解雇 弁護士」「不当解雇 相談 大阪」などとキーワードを組み合わせて検索してみてください。 不当解雇に強い弁護士の特徴は? 不当解雇を扱う弁護士の探し方が分かったら、相談する弁護士を決めましょう。不当解雇に強い弁護士の特徴は、以下のものがあげられます。 不当解雇に強い弁護士の特徴 不当解雇の経験や実績が豊富 説明がわかりやすい 不当解雇の経験や実績が豊富 弁護士を選ぶといっても、法律事務所によって、強みや実績はさまざまです。 不当解雇に強い弁護士は、当然不当解雇を扱った経験や解決実績が豊富にあるでしょう。 気になる弁護士がいたら、まずはホームページで不当解雇の経験と実績を確認しましょう。 不当解雇は、法律の知識だけではなく、過去の判例などに詳しくなければ対応が難しい分野です。 弁護士が不当解雇について充分な解決実績をもっているか否かは、依頼する上で重要なポイントです。 説明がわかりやすい 経験や実績だけではなく、弁護士の説明がわかりやすいことも重要なポイントです。 不当解雇に強い弁護士は、依頼者と会社との間に入って交渉にあたるため、双方への詳しい説明が求められます。 話しているときの説明が分かりにくければ、会社側としても不当解雇を主張されても、納得できない点が多々生じるかもしれません。 専門用語ばかりで難しい説明ばかりする弁護士は要注意です。 わかりやすく説明されなければ、依頼してもコミュニケーションが上手くとれず、本当に解決できるのか不安が増してしまうかもしれません。 依頼する前には実際に相談し、説明がわかりやすい弁護士を選ぶようにしましょう。 不当解雇を弁護士に相談するメリットとは? 実際に、不当解雇を弁護士に相談・依頼することには以下のようなメリットがあります。 数は多いですが、それだけ不当解雇を弁護士に相談・依頼することにメリットがあるということです。 不当解雇を弁護士に相談するメリット 解雇の実態を判断できる 不当解雇の無効を主張し、一定期間の賃金を請求できる 不当解雇に対する慰謝料を請求することができる 不当解雇の撤回を求めることができる 勤務時の未払い賃金や未払い残業代を請求することができる 会社との交渉を一任することができる 労働審判、民事訴訟にスムーズに移行できる それぞれ、順番に見ていきましょう。 解雇の実態を判断できる 不当解雇といっても、解雇には「普通解雇」「整理解雇」「懲戒解雇」の3種類があります。 どの解雇が行われたのかによって、解雇が違法・無効となるための要件も変わってきます。 また、「解雇された」と思っていても、実は会社の巧みな勧奨により「自主的に退職した」という形で処理されている場合もあります。 具体的にどのような解雇(退職)が行われたのかを、弁護士であれば客観的に判断することができます。 不当解雇の無効を主張し、一定期間の賃金を請求できる 不当解雇された方の多くは、解雇無効を主張し、その和解や合意がなされる日までの賃金を請求することが考えられます。 たとえば、解雇された日から一年後に、「実はその解雇は不当であり無効だった」と合意がなされたとします。 解雇が無効となると、解雇されたことになっている日から合意の日まで実際は従業員としての地位が継続していたことになり、その期間の給料は未払いということになります。 そのため、不当解雇されてから合意がなされるまでの期間の賃金を請求することができるのです。 もっともその期間の賃金全額ではなく、賃金〇か月ぶんを支払うといった内容で合意をし、早期解決を目指すこともできます。 不当解雇に対する慰謝料を請求することができる もしも不当解雇にあたって会社からの嫌がらせなど、労働者の精神的苦痛となりうる出来事があれば、慰謝料を請求することができます。 たとえば、労働者が既に再就職している場合などには、解雇無効を主張して未払い賃金を請求するよりも、慰謝料やそのほかの損害について賠償請求した方が金銭的補償が高額になる場合もあります。 慰謝料の請求にあたっては法律的な主張・立証の知識が必要となり、特に弁護士をつける必要性が高い解決方法であると言えます。 関連記事 ・不当解雇されたら裁判で慰謝料を請求!損害賠償の相場と相談窓口 不当解雇の撤回を求めることができる 不当解雇が違法、無効であるとすれば、その法律的効果の撤回として、復職を求めることも可能です。 しかしながら、実際は、一度不当解雇された会社に勤め続けたいと復職を希望することはまれで、復職をしないかわりに和解金を上乗せする、という解決法になることが多いです。 勤務時の未払い賃金や未払い残業代を請求することができる もしも不当解雇された会社が賃金や残業代を十分支払っていない事実があれば、不当解雇を争う一環でそれらを請求することも可能です。 賃金や残業代の計算は非常に複雑ですが、弁護士に計算を任せてしまえば依頼者の方に負担はありません。 証拠が手元になくても、弁護士から会社に開示請求を行うことで、証拠を開示してもらえる可能性が高まります。 関連記事 ・残業代請求を弁護士に依頼する場合の費用相場は?弁護士に依頼するメリット5選! ・給料の未払いは弁護士に相談!依頼するメリットと費用を徹底解説 会社との交渉を一任することができる 証拠の収集や会社への請求、交渉といった面倒な手続きは、弁護士に一任することができます。 実際のところ個人で会社と対等に交渉するのは難しく、会社側の出す主張をそのまま受け入れてしまう労働者の方が大半です。 しかし、弁護士を通して主張を行うことで、ご自身の希望することを遠慮なく会社に伝えることができるうえ、ご本人の時間的・精神的負担もかからずに済みます。 不当解雇された後に、会社との面倒なやり取りを避け、療養期間や転職活動に時間を割けることも大きなメリットです。 労働審判、民事訴訟にスムーズに移行できる 会社との交渉がうまくまとまらず、その後労働審判や訴訟となってしまっても、あらかじめ弁護士に依頼しておけば、法的な手続きにスムーズに移行できます。 特に訴訟については長期かつ複雑な手続きが求められ、これを個人でこなすのは大変困難です。 また、交渉を個人で行っていて、労働審判や裁判になってから慌てて弁護士に依頼すると、対応が後手に回ってしまう可能性もあります。 不当解雇の問題については、早いうちに弁護士に依頼しておくのが得策です。 関連記事 ・労働審判とは?制度の内容や手続きの流れを弁護士がわかりやすく解説 不当解雇を弁護士に依頼する費用はいくら? 不当解雇について弁護士に相談・依頼したときの弁護士費用の内訳は、主に以下のようになっています。 費用内訳相談料無料もしくは有料1時間あたり1万円程度が相場着手金弁護活動の着手時に発生する弁護士費用無料、数十万円程度の定額、または経済的利益*の10~20%と設定されることが多い報酬金弁護活動の成果に応じて支払われる弁護士費用経済的利益の10~20%+〇万円、と設定されることが多い実費弁護活動で実際に支払われた費用郵便代、交通費、書類代など ※弁護士の活動により回収できた金額 それでは実際に、相談料が本当に無料になりうるのか、より具体的な相場をみていきましょう。 弁護士が無料相談をする理由 近年は、不当解雇の無料相談を行っている弁護士も多いです。 無料の弁護士相談を行う一般的な理由は、金銭的理由から相談できず、知らない間に不利な状況に追い込まれてしまう労働者の方が多いためです。 不当解雇から時間が経ってしまうと、証拠の収集が難しくなったり、会社との交渉をあきらめてしまったりすることも考えられます。 不当解雇問題を解決するためには、迅速に対応することが大切です。積極的に無料相談を利用していきましょう。 なお、無料相談を行う弁護士でも、実際に活動を依頼するとなると、費用が発生することになります。 弁護士は医師と異なり、公的な保険制度がなく、事務所経営のために一定の報酬を得ることが不可欠だからです。ただし、無料相談を受けても、弁護活動を依頼する義務はありません。 初期費用はいくら?弁護士費用と成功報酬 弁護士に活動を依頼する際に発生する初期費用を「着手金」といいます。着手金は、活動の成功・不成功の結果にかかわらず、返金されることはありません。 不当解雇の解決金が0円でも、着手金として支払ったお金はかえってきません。着手金が無料の法律事務所もあるので、探してみるといいでしょう。 また、弁護士に活動を依頼し、活動が成功した場合に支払う報酬を「成功報酬」といいます。不当解雇の場合は、「回収した解決金の何割」のように割合で決められていることが多いです。 成功報酬については、会社から回収したお金で清算されることになるので、支払いの点について不安になることはありません。 着手金が無料の事務所は、成功報酬の割合が高くなる傾向にあります。 依頼者の側からすれば、着手金無料・完全成功報酬で依頼できるのがありがたいですが、民事裁判や労働審判を利用する場合は、初期費用として一定の着手金が発生する弁護士がほとんどです。 複数の法律事務所を比較してから相談・依頼してみるといいでしょう。 関連記事 ・不当解雇を相談・依頼するときの弁護士費用相場は?対処法も解説 不当解雇に強い弁護士に依頼して泣き寝入りをやめよう! この記事では、不当解雇に強い弁護士の探し方についてお伝えしました。 不当解雇された際、すぐに動けば無効を証明する証拠を迅速に収集できるかもしれません。 また、不当解雇に強い弁護士に相談することで、知らず知らずのうちに解雇や退職を認める言動や、泣き寝入りを防ぐことができる可能性が高まります。 不当解雇でお悩みの方は、無料相談できる法律事務所に一度相談してみてはいかがでしょうか。 関連記事 ・不当解雇は弁護士に相談すべき?相談するときのポイントを解説 ---