【弁護士解説】就業規則が無効になる場合とは?法律の要件や手続きを総まとめ! | 労働問題弁護士解決ナビ

24時間365日無料問合せ受付中

フリーダイヤル
0120-215-911

【弁護士解説】就業規則が無効になる場合とは?法律の要件や手続きを総まとめ!

更新日:

岡野武志

監修者

アトム法律事務所 代表弁護士法律監修

岡野武志

39642

会社に休暇や給料について分からないことがあったり不満があったりして質問すると「就業規則でこう定めています」と説明されることが多いと思います。しかし、その就業規則は本当に法律の要件を満たした適法なものでしょうか。

就業規則は労働基準法で定めた要件や手続きを満たしていなければ無効とされる場合があります。

この記事では就業規則に関連する法律について解説します。

就業規則を作成・変更するために必要な手続き

会社が就業規則を新しく作成したり、変更したりするときには、法律で定められた手続きを踏む必要があり、正しく手続きがとられていなければ無効となる場合があります。

就業規則の作成義務と範囲

労働基準法第89条では、従業員数が常時10人以上の会社は、就業規則を作成し、所轄の労働基準監督署に届出ることを義務付けています。

常時10人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。

労働基準法第89条(作成及び届出の義務)

ここで、次に掲げる事項とされているのは次の1~10です。

一 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項

二 賃金(臨時の賃金等を除く。以下この号において同じ。)の決定、計算及び支払  の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項

三 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)、 退職手当の定めをする場合におい ては、適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退 職手当の支払の時期に関する事項

四 臨時の賃金等(退職手当を除く。)及び最低賃金額の定めをする場合においては、これに関する事項

五 労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合においては、これに関する事項

六 安全及び衛生に関する定めをする場合においては、これに関する事項

七 職業訓練に関する定めをする場合においては、これに関する事項

八 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する定めをする場合においては、これに関する事項

九 表彰及び制裁の定めをする場合においては、その種類及び程度に関する事項

十 前各号に掲げるもののほか、当該事業場の労働者のすべてに適用される定めをする場合においては、これに関する事項

労働基準法第89条(作成及び届出の義務)

このように勤務時間や賃金、退職や安全衛生など、全ての労働者に共通して重要なルールは必ず就業規則で定めなければなりません。

就業規則といっても「○○会社従業員就業規則」のように就業規則であることが明らかなものもあれば、「○○社員賃金規程」「○○に関する内規」のように名称が様々であったり、それが複数あったりする会社もあります。

どこまでが就業規則かという範囲については、名称に関わらず上記の就業規則記載事項に関するものや、労働者の規律や労働条件に関わるものであれば労働基準法で定める就業規則に含まれる、と解されています。

就業規則を作成・変更したら労働基準監督署に届け出る義務がある

就業規則を改正する上では労働者側の意見を十分に聞いた手続きが事業主には求められています

事業主は就業規則を作成・変更したら、行政官庁(労働基準監督署)に届け出ることとなっています。(労働基準法第89条)

またその届出の際には、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合にはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合は労働者の過半数を代表する者の意見書を添付することとなっています。(労働基準法第90条)

使用者は、就業規則の作成又は変更について、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない。

労働基準法第90条(作成の手続)

労働者にとって有利になる終業規則であれば会社が勝手に変更していても不満は出ないかもしれませんが、会社が勝手に不利な変更を実施できると、労働者の立場は非常に弱くなってしまいます。

労働組合や、過半数代表に意見を聞くというプロセスを必ず経るよう法律で定めることで、そのような不利益変更が会社都合で勝手になされないようになっています

労働組合は就業規則の変更等に対して会社に「団体交渉」を申し入れる場合があります。

会社側はその申し入れに対して誠実に対応する「誠実交渉義務」があり、正当な理由なく拒むことは、労働組合法という法律で「不当労働行為」として禁止されています。

不当労働行為に該当した場合には会社が行おうとした就業規則の変更も無効とされる場合があります。

作成・変更後の就業規則を労働者に周知する義務がある

就業規則を作成したり変更したりしても、その就業規則を労働者が知ることができなければ意味がありません

使用者は、就業規則を、常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、または備え付けること、書面を交付すること、その他の厚生労働省令で定める方法によって、労働者に周知させなければならない。

労働基準法第106条(法令等の周知義務)

最近では紙で就業規則を配付するよりも社内のポータルサイト等にデータで掲載して閲覧できる状態にしている場合が多いと思われますが、従業員であれば誰でも、いつでも閲覧できる状態になっている必要があります。

例えば一部の従業員にしか見れないネットワーク上に掲載されている場合や、口頭でのみ説明されたような場合には、周知義務が果たされているとは言えず、たとえそれまでの手続きが適法に行われていたとしても、周知されていない就業規則は効力を持たずに無効とされた裁判例もあります

労働基準法と就業規則の関係

適法な手続きで定められた就業規則であれば全て有効かというとそうではありません。就業規則で定めた水準が法律を下回るような場合は、その就業規則の部分は無効とされます。

労働基準法や労働協約よりも不利な就業規則は無効

労働者に適用される労働基準の水準については次の4つの段階があります。

  1. 労働基準法など (最低限の水準)
  2. 労働協約    (1. を下回ってはいけない)
  3. 就業規則    (1. と 2.を下回ってはいけない)
  4. 個別の労働契約 (1. 2. 3.を下回ってはいけない)

1.労働基準法など (最低限の水準)

法律で定められた水準は、最低限度の水準です。例えば、1日の労働時間が8時間を超えた場合には2割5分以上の割増賃金を支払う、というのは労働基準法で定められた水準であり、これに違反することはいかなる事業主であっても違法です。

2.労働協約

2.の労働協約とは、会社と労働組合の間で交わされた約束事であり、会社によってある場合と無い場合がありますが、必ず法律の水準以上である必要があります。

労働協約は全ての労働条件について定める必要がなく、例えば休憩時間についてだけや、ボーナスについてだけの労働協約もあります。

3.就業規則

3.の就業規則は、1. と 2. の水準を下回ってはいけません。

例えば就業規則で「1日の労働時間が8時間を超えた場合には2割の割増賃金を支払う」と定めていたとしても、1.の法律では2割5分の割増賃金を支払うことが最低限度の水準として定められているため、その規程については無効となり法律の水準が適用されることになります。

反対に法律より有利な「3割」という定めがあれば、もちろん就業規則が有効となります

4.個別の労働契約

就業規則は労働者全体に対して定められるものですが、4.の個別の労働契約は個人と会社の間で結ばれるものです。

例え個人で納得して契約したものがあったとしても、就業規則よりも不利な条件だったと分かれば、やはりその部分は就業規則が優先されます。

なお、法律を下回っていることが分かった場合、その就業規則の規程は無効ですが、就業規則そのものが全て無効になる、ということではありません。

あくまで無効になる範囲は、「法律や労働協約を下回った部分のみ」とされています。

そうでなければ、1つの無効が発覚したばかりに全ての就業規則が白紙になってしまっては労働者にとっても労働条件が不安定になってしまいます。

労働条件に関する法律は労働基準法だけではない

労働条件についての法律と言えば労働基準法が有名ですが、他にも様々な法律があります。

最低賃金法

「最低賃金法」では、地域別や特定の産業に従事する労働者の最低賃金を定めており、これを下回ることは特定の条件に該当するものとしてあらかじめ労働局長の許可を受けたものでなければ違法になります。

【参考】:もう、チェックした?まるわかり!最低賃金|厚生労働省

労働契約法

「労働契約法」では労働契約における手続きや雇用更新についての基準を定めています。

【参考】:労働契約法のあらまし|厚生労働省

育児・介護休業法

「育児・介護休業法」では育児休業や介護休業を取得できる労働者の範囲や取得期間について法律上の基準を定めています。

【参考】:育児・介護休業制度ガイドブック|厚生労働省

【参考】:リーフレット「子の看護休暇・介護休暇が時間単位で取得できるようになります!」|厚生労働省

就業規則は労働基準法だけでなく、これらの労働条件に関する様々な法律で定められた要件を満たし、かつその水準を下回らない内容になっている必要があります。

雇用や労働条件に関する法律は近年様々な改正が続いていますので、会社の就業規則が古いままになっているような場合は、新しい法律に対応しておらず無効になっている部分があるかもしれません。

就業規則について労働者が注意すること

就業規則が見られる場所を確認しておくこと

就業規則は会社が作成・周知していれば、本来誰でも見られる環境にあるはずです。

多くの会社では採用時などには労働条件についての説明をすることも多いとおもいますので、最初の段階でどこで就業規則を確認できるか聞いておくのが良いでしょう。

また、就業規則が複数の規程に分かれている場合もあります。名称に関わらず、労働条件に関わる規程は全て就業規則にあたりますので、労働時間や賃金などに関する規程が見える状態になっているか自分で確認しましょう。

就業規則が作成されていない場合や、もしくは口頭のみで説明されていたり、閲覧しづらい環境になっているなど、事業主の作成・周知義務が果たされない場合は労働基準法に違反している可能性があります。

ただし、就業規則は従業員に対しては周知する義務がありますが、社外にまで公表する義務はありません。企業秘密としている会社もあるため、コピーしたり、ダウンロードしたものを勝手に社外に共有したりすると会社の規程で罰せられる可能性があるため注意しましょう。

就業規則が変更される場合は手続きをよく把握すること

会社が就業規則の変更をする場合、丁寧な会社では従業員向けの説明会を開催する場合もありますが、メールや朝礼での説明のみの会社もあると思われます。

事業主には就業規則を変更する際、労働組合や労働者の過半数を代表する者からの意見聴取をする、労働組合からの団体交渉の申し入れがあった場合には誠実に対応するなどの義務が課されています。

就業規則の変更のアナウンスがあった場合は必ずどのような変更なのか確認して、それが不利益な内容であれば労働組合などを通して意見を伝えることもできます。

また、会社が定めていることだから大丈夫と思っていると気づかないうちに不当な労働条件になっている場合があります。法律で定めた水準を下回っている場合はその部分は違法です。なにかおかしいと感じたら最寄りの労働基準監督署に相談することも可能で、悪質な案件は労働基準監督署が調査をしてくれる場合もあります

就業規則は全ての労働者の労働条件のベースとなる重要な規則です。日頃から目を通して自分の会社がどのような規則を定めているか把握するようにしましょう。

この記事をシェアする

岡野武志

監修者

アトム法律事務所
代表弁護士

岡野武志

詳しく見る

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。現在は「刑事事件」「交通事故」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

英語:TOEIC925点

関連記事

よく読まれる記事

最新の記事