交通事故で任意保険会社と示談するときの流れと損しないための知識

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任意保険会社示談の流れ

交通事故に遭ったとき、加害者が「任意保険」に加入していれば保険会社との間で示談交渉を進める必要があります。

とはいえ多くの方によって、「示談交渉」は初めての経験でしょう。

  • どうやって話を進めていけば良いのか?
  • いつ示談を開始するのか?
  • 保険会社からの提示金額を受け入れても問題ないのか?

さまざまな不安が頭をよぎるのも当然です。

実は示談交渉の際、保険会社から法的な相場より低い金額を提示されるケースも多々あります。そのまま受け入れると損をしてしまうので、正しい知識を持って対応しましょう。

今回は交通事故で保険会社と示談する流れや注意点を解説します。これから保険会社と話し合いを行う方は、ぜひ参考にしてみてください。

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なぜ任保険会社が示談交渉を行うのか

そもそも示談交渉とは何か?

示談交渉とは、不法行為の被害者と加害者が損害賠償について話し合うことです。不法行為とは「故意や過失によって他人に損害を与える行為」を意味します。不法行為によって他人に損害を与えた場合は、加害者は被害者へ賠償金を払わねばなりません。

その賠償金の金額や払い方を決めるのが「示談交渉」です。交通事故も不法行為の1種なので、事故に巻き込まれた被害者は加害者と示談交渉をして、賠償金についての取り決めを行います。

任意保険会社が示談交渉を代行する理由

交通事故では、加害者本人ではなく保険会社が示談交渉を代行するのが一般的です。

なぜ保険会社が示談交渉するのかご存知でしょうか?

それは、加害者が任意に加入する自動車保険に「示談代行サービス」がついているからです。

自動車保険の「対物賠償責任保険」「対人賠償責任保険」には、保険会社が被害者との示談交渉を代行するサービスが付帯しています。そこで事故を起こしたら、保険会社が加害者側の代理として被害者と示談交渉をするのです。

被害者にも過失があれば、被害者が加入している任意保険の示談交渉代行サービスが利用できるため、示談交渉は「保険会社同士の話し合い」になります。この場合、被害者は加害者の保険会社と直接交渉する必要がありません。

被害者に過失がなかったら任意保険会社は示談交渉を代行してくれない

被害者に過失がない場合、被害者側の示談代行サービスは利用できません。

そうなると、被害者個人が相手の保険会社と示談交渉を進める必要があります。個人が保険会社と対峙すると大きく不利になってしまうことは容易に予想されるでしょう。賠償金を大幅に減額されてしまうリスクも高まります。

こういったケースでは必ず弁護士に依頼しましょう。

交通事故で任意保険会社と示談交渉を開始するタイミング

交通事故後、いつ示談交渉を開始するのでしょうか?

示談交渉を始めるタイミングは、事故の種類によって異なります。

物損事故の場合

物損事故とは、事故によって発生した損害が「物が壊れた」だけの交通事故です。つまり人が傷つかなければ物損事故となります。

物損事故の場合、通常は「修理費用が明らかになったとき」に示談交渉を開始します。修理工場が見積もりを出してだいたいの損害額が明らかになったら、保険会社と話し合って賠償金を決定するのが通常です。

被害者がケガをしている人身事故の場合

人身事故で被害者がケガをした場合、まずは被害者が入通院をして治療を受けます。

治療は「完治」または「症状固定」まで継続します。完治とは「症状が全回復して元の状態に戻った状態」、症状固定とは「これ以上治療を続けても症状が改善しなくなった状態」です。

そして、被害者が完治または症状固定したタイミングで示談交渉を開始するのが通常となっています。

被害者が死亡している人身事故の場合

人身事故で被害者が死亡してしまった場合、示談交渉を始めるのは「49日の法要が終わった頃」とするのが一般的です。

保険会社から連絡が来るので、遺族側に示談交渉する準備ができていたら話し合いを始めます。
遺族側がすぐに進められない場合には、時期を遅らせることも可能です。

交通事故で任意保険会社と示談交渉を行う際の流れ

次に、保険会社との示談交渉はどのような流れで進めていけば良いのか、みてみましょう。

任意保険会社とコンタクトをとる

示談交渉を開始するときには、保険会社とコンタクトをとらねばなりません。

多くの場合、保険会社側から連絡が来ます。たとえば人身事故で通院していると「そろそろ示談交渉を始めましょう」などといわれるケースも多いでしょう。

被害者側が受諾すると、話し合いを開始することになります。

ただ、保険会社が示談交渉を打診してくるとき、必ずしも示談に適した状態とは限りません。まだ完治や症状固定しておらず、示談すべきでない段階でも保険会社は「治療を終わりましょう」などと言ってくるケースがあります。そんなとき、示談に応じてしまったら必要な治療を受けられず不利益を受けてしまうでしょう。

示談交渉を始めるときには「本当に治療を終えても良いのか」慎重に検討する必要があります。

被害者に後遺症が残ったのなら後遺障害等級認定を受ける

症状固定した段階で何らかの後遺症が残っていたら後遺障害等級認定を受けなければなりません。後遺障害等級認定とは、正式に後遺症が「後遺障害」に該当することを認めてもらい、等級をつけてもらう手続きです。後遺症が残ったときには、「後遺障害等級認定」を受けてはじめて後遺障害慰謝料などの賠償金が払われます。

被害者が自分で示談交渉に対応するときには、加害者の保険会社に後遺障害認定の手続きを任せる「事前認定」を利用するケースが多くなっています。この場合、症状固定後に相手の保険会社へ後遺障害診断書を渡して手続きを進めてもらいます。

被害者が自分で後遺障害認定の手続きを行う「被害者請求」の場合、被害者が自分で資料をそろえる必要があります。

後遺障害が残った場合、認定結果が出るまでは後遺障害部分の賠償金が確定しないので、具体的な賠償金の額は決定しません。

後遺障害等級認定の申請をする方法については『交通事故で後遺障害を申請する|認定を受ける流れとは?申請手続きと必要書類』の記事をご覧ください。

任意保険会社と示談の内容を話し合う

示談交渉を開始したら、加害者側の保険会社と示談の内容について話し合いをします。被害者側にも保険会社がついている場合には、保険会社同士の話し合いとなります。

示談で決定すべき事項は以下のような項目です。

  • 各項目の賠償金の金額
    治療費、慰謝料、休業損害、交通費、逸失利益などの賠償金の金額を決めます。
  • それぞれの過失割合
    加害者と被害者それぞれの過失割合を決定します。被害者が自分で対応する場合、保険会社から数値の提示を受けるので、その割合で納得するかどうかを返答することになるでしょう。意見の相違がある場合、さらに交渉をして合意点を探っていきます。

合意して示談書を作成する

被害者と加害者の保険会社の意見が一致したら、示談が成立します。

保険会社が示談書または免責証書を送付してくるので、被害者としては内容を確認し、間違いがないかどうかをチェックしましょう。問題なければ署名押印して振込先口座を記入し、保険会社へ返送します。

示談書をチェックするポイントについては、『交通事故の示談書の書き方』の記事で詳しく解説しているので、ぜひご参考ください。

示談金が入金される

書類に不備がなければ、1~2週間程度で指定した口座へ示談によって定まった示談金が振り込まれるのが通常です。振込先の口座を間違うと、いつまでも待っても支払われないので注意しましょう。

被害者が入金を確認し、間違いがなければ示談が無事に終了となります。

任意保険会社と示談交渉を行う際の注意点

保険会社と示談交渉するときには、以下の点に注意してください。

症状固定まで通院したか

人身事故の場合、「症状固定」まで通院することが重要です。症状固定前に通院を打ち切ってしまうと、必要な治療を受けられないからです。治る症状も治らず後遺症が残ってしまう可能性もあります。

また交通事故の慰謝料や休業損害は「症状固定時までの分」が払われます。通院を途中で打ち切ると、その分賠償金を減額されて手取り額が減ってしまうでしょう。症状固定まできちんと通院しないと、治療を受けられないだけでなく賠償金も大きく減額されるので、良いことは1つもありません。

症状固定時は担当医が判断します。保険会社から「そろそろ治療を終わりましょう」などといわれても、適切な症状固定時とは限りません。医師に相談しながら、医学的に「症状固定」したタイミングまで通院を継続してください。

任意保険会社からの提示額は十分な金額といえるのか

示談交渉が進むと、保険会社から賠償金の提示を受けるタイミングがあります。
このとき、提示額が必ずしも適切ではない点に注意しましょう。保険会社が自社基準を適用すると、裁判を起こしたときに認められる相場より低く計算されてしまうからです。被害者側の過失割合が相場より高くされて大幅に過失相殺される事案も少なくありません。

相場より低額な提示でも、被害者が納得したらその金額で示談が成立してしまいます。賠償金を大きく減額され、被害者としては大きな不利益を受けてしまうでしょう。

適正な慰謝料の相場を確認するには、弁護士に相談するのが手っ取り早く確実です。保険会社から示談金額の最終提案を受けたら、早めに受け取った示談案を持参して弁護士に相談してみてください。

また、慰謝料計算機をつかう方法もおすすめです。簡単な情報入力だけで、弁護士基準の慰謝料がすぐにわかります。

なお、関連記事『交通事故の慰謝料を正しく計算する方法』では、3つの慰謝料計算基準や計算式、増額事例も紹介しています。交通事故の慰謝料がどのように決まるのか、計算の仕組みから理解が深まる内容です。

賠償金の時効に注意

交通事故後、すぐには示談を開始できないケースも少なくありません。通院が長びいたり忙しかったりといった個別事情があります。また死亡事故ではなかなか示談する気持ちになれない遺族の方もおられることでしょう。

そういったケースでは「賠償金の時効」に注意が必要です。損害賠償請求権が時効にかかると、賠償請求できなくなってしまいます。

  • 物損事故の場合
    事故発生日の翌日から3年です。
  • 被害者がケガをした人身事故の場合
    事故発生日の翌日から5年です。
  • 被害者に後遺障害が生じた人身事故の場合
    症状固定日の翌日から5年です。
  • 被害者が死亡した人身事故の場合
    死亡日の翌日から5年です。

時効期間については近年の民法改正によって期間を変更されているので、正確に理解しましょう。

まとめ

交通事故に遭ったら、相手の保険会社と示談交渉を進めなければなりません。

示談交渉するときには「開始するタイミング」や「適切な賠償金額の算定」「正しい過失割合のあてはめ」に注意が必要です。

保険会社から示談金額の提示を受けて「受け入れて良いのか」迷った場合、保険会社の対応に疑問やストレスを感じる場合には、お早めに弁護士までご相談ください。

アトム法律事務所は、交通事故に力を入れて取り組んでおり、被害者さまへ万全のサポートをさせていただきますので、お気軽にお問い合わせいただけますと幸いです。

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岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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