交通事故における保険会社との示談交渉|押さえるべき4つのポイント

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新たに改正民法が施行されました。交通事故の損害賠償請求権に関するルールに変更があります。

交通事故における保険会社との示談交渉には専門的な知識が必要になります。
示談交渉を目前に控えた方や今まさに示談交渉中の方は、示談交渉の流れ、方法、注意点について疑問をお持ちかと思われます。

本記事では交通事故における保険会社との示談交渉について徹底解説しています。
示談交渉に至るまでの流れや交渉自体の流れ、賠償金の費目や増額の可能性、相手方が任意保険に入っていないときの対処法まで網羅しています。
交通事故における保険会社との示談について疑問をお持ちの方はぜひこの記事でご自身の疑問を解決してください。

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岡野武志弁護士

示談交渉とは?流れや賠償の費目を解説

そもそも示談交渉とは?算定する賠償金の費目とは?

示談とは交通事故における紛争を当事者同士の話し合いによって解決するという手続きのことを言います。

交通事故加害者は事故被害者に対して損害の賠償をしなくてはなりません。
本来、この種の損害賠償は裁判所で裁判を行い、賠償金の金額を算定するのが原則です。
ただ損害が発生したとき、そのすべてについて裁判を起こすのは、手間や時間、裁判所のリソースの問題から言って現実的ではありません。
そこで民法では、当事者同士の話し合いによって紛争を解決した場合について法的な効力が生じるとした「和解」という手続きを定めています。

和解は、当事者が互いに譲歩をしてその間に存する争いをやめることを約することによって、その効力を生ずる。

民法 第695条

和解に至るための一連の手続きを一般用語として示談といいます。

示談では裁判に拠らず当事者同士の話し合いによって賠償金の金額を決定しますが、この話し合いを示談交渉といいます。
示談交渉で定められる賠償金の金額は、原則として当事者間の合意があるなら好きなように決定することができます。
実務上は、以下のような費目についてそれぞれ金額を算定し、その合計を支払う流れとなります。

交通事故賠償金の主な費目

  • 物損部分の賠償
    事故によって破損した車や自転車、あるいは衣服や身につけていたものなど物的な損害についての賠償です。
  • 治療関係費
    治療費や入院費、薬代など治療にかかったお金についての賠償です。
    原則として治療に必要であると認められた範囲について、その実費全額が支払われます。
  • 通院交通費
    通院の際にかかった交通費についての賠償です。
    原則、公共交通機関を利用した場合の金額が認められます。
  • 休業損害
    ケガの治療のために仕事に行けなくなったり、時短勤務を余儀なくされたりしたとき、その損失についての賠償です。
    原則として過去の賃金などから1日当たりの給料が算定され、その1日当たりの給料と実際に休んだ日数とを掛け合わせた金額が支払われます。
  • 傷害慰謝料
    ケガを負ったという精神的な苦痛に対する賠償金です。
    原則として入通院の期間に応じて金額が算定されます。
  • 後遺障害慰謝料
    後遺症のうち特別な賠償の対象となるような症状を後遺障害といいます。
    後遺障害が残ったときの精神的な苦痛に対する賠償金が後遺障害慰謝料です。
    原則として後遺障害の等級に応じて金額が算定されます。
  • 死亡慰謝料
    死亡事故における死亡した本人や遺族の精神的な苦痛に対する賠償金です。
    原則として死亡した人の家庭内の立場などに応じて金額が算定されます。
  • 逸失利益
    後遺障害の残った事故や死亡事故における、将来にわたって減額された賃金等への賠償金です。

など

これら費目を算定した後、示談によって取り決められた金額が事故被害者の方に振り込まれることになります。

事故発生~示談交渉の流れとは?

示談交渉の細かな流れについて見ていきましょう。
交通事故の紛争解決までの流れを時系列順に並べると、通常は以下のようになります。

交通事故の流れ

  1. 事故発生直後
    警察への通報や保険会社への連絡を行う。
  2. 治療開始
    入院や通院開始。治療が行われる。
  3. 完治or症状固定
    ケガが完全に治るか、これ以上治療しても症状の改善が見込めないという状況(症状固定)になる。
  4. 後遺障害の申請
    後遺症が残っていた場合、その症状が特別な賠償の対象となるようなもの(後遺障害)であるかどうか審査を受ける。
  5. 示談交渉
    相手方任意保険会社が損害を算定。示談金を提示する。
    双方合意に至ったら示談書を交わす。
  6. 振込
    相手方任意保険会社から示談金が振り込まれる。

交通事故の流れについては、こちらの関連記事『交通事故の発生から解決までの流れ』もあわせてご覧ください。

事故発生後は、警察へ連絡するほか事故の相手方の任意保険会社にも連絡を入れます。
相手方任意保険会社は、通常その日のうちに担当者から折り返しの電話を行い、入通院予定の病院がどこであるかを聞き出してくるでしょう。
担当者はその病院にすぐ連絡をいれて、治療費の請求を任意保険会社に行うよう要請します。
事故被害者の方は、治療費を支払うことなく病院での治療を受けられるわけです。

ケガが完治するか治療してもケガの改善が見込めないという状況(症状固定)に至るかすると、本格的に示談交渉が始まります。
ケガは完全に治ることもあれば、一定の症状が後遺症として残ってしまうこともあります。
後遺症が残った場合、その症状が特別な賠償の対象となるような症状(後遺障害)であった場合には、「後遺障害慰謝料」や「逸失利益」といった費目の賠償金ももらえることになります。
後遺障害について詳しく知りたい方は、『交通事故の後遺障害|認定確率アップのコツと審査の仕組みがわかる』の記事をご覧ください。

示談交渉~賠償金振込までの流れとは?

ケガが完治するか、症状固定後、後遺障害申請の結果が判明した段階で全損害の算定が可能となります。
相手方任意保険会社は先述の費目についてそれぞれ計算し、すでに支払っている治療関係費などを控除したうえで事故被害者の方に金額を提示します。

くわしくは後述しますが、このとき相手方任意保険会社が提示する示談金は、任意保険基準によって算定された金額となります。
任意保険基準とは任意保険会社が独自に算定する金額の基準で、被害者の方が本来受けとるべき金額と比較すると低額になります。

算定の基準や費目、過失割合などについて異議がある場合には、任意保険会社に再度算定し直すよう交渉します。
ただ、相手方任意保険は営利組織であり、基本的には被害者の方に支払う金額が少なければ少ないほど自社の利益になります。
示談は双方の合意によって締結されるものなので、相手方任意保険が増額交渉に応じなかった場合には一向に示談が締結されず、いつまで経っても被害者の方に賠償金が支払われないという事態に陥ります。

示談の締結後は、事故被害者の方が指定した振込先に示談金が振り込まれることになります。
示談締結後、数日以内に一括で振り込まれます。

保険会社との示談交渉の際に注意すべき点

示談で増額は見込める?損害賠償金3つの算定基準

先述のとおり、示談交渉の際、相手方任意保険会社が提示する金額の算定基準は任意保険基準です。
これは事故被害者の方が本来もらうべき金額よりも少ない金額の基準です。
示談交渉を行う際には、弁護士に相談することによって示談金の増額が見込めます。
事故被害者の方が本来もらうべき金額の基準とは何なのか、なぜ弁護士に相談することで賠償金の増額が見込めるのかについて解説していきます。

賠償金3つの算定基準

交通事故賠償金には3つの算定基準があります。
自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準です。

自賠責保険における支払い基準が自賠責基準です。
自賠責保険というのは、各車それぞれに加入が義務付けられた保険です。
交通事故被害者の方が最低限の補償を受けられるよう整備されたものとなります。

補償の金額は被害者の方が本来もらうべき金額と比較して非常に低額です。
後遺障害などを除く、傷害部分の賠償金について上限120万円とされています。
自賠責保険の慰謝料についてさらに詳しく知りたい方は、『自賠責保険から慰謝料はいくらもらえる?計算方法や支払い限度額を解説』をご覧ください。

任意保険は自賠責保険を補填する保険です。
自賠責保険の上限金額を超えた分の金額は、本来事故の加害者本人が賠償しなくてはなりません。
ただ賠償金の金額は時として高額になりがちであり、一般の方の支払い能力を大きく超える額になることもよくあります。
任意保険は事故加害者の代理として、被保険者から徴収した保険金を元手にして、被害者の方へ自賠責保険を超えた分のお金を支払います。
保険会社からすれば、支払う額が少なければ少ないほど自社の利益となるため、自賠責基準よりは高額になるにしろ、なるべく低い金額に収まるよう計算を行います。
任意保険会社の算定基準についてさらに詳しく知りたい方は『交通事故慰謝料の「任意保険基準」とは?』の記事をご覧ください。

弁護士基準(裁判基準)は、事故被害者の方が本来もらうべき金額の算定基準です。
過去に開廷され蓄積されてきた交通事故裁判の判例から導き出された算定基準となります。
いわば、「日本の法律上、事故被害者の方が本来受けとるべき金額の基準」とも言えるわけです。

これら算定基準の種類などについてくわしく知りたい方は、関連記事をご覧ください。

賠償金増額の方法

相手方任意保険会社は示談交渉の際、任意保険基準での金額を提示してきます。
被害者ご自身から弁護士基準での金額に増額するよう言っても、任意保険会社がそれを聞き入れる可能性はゼロといっていいでしょう。

示談は双方の合意によって締結されるものです。
任意保険会社が増額に応じず、被害者の方が任意保険基準での金額に同意しなかったという場合、いつまで経っても示談が締結されないということになります。
このとき、最も被害を被るのは事故被害者の方です。
いつまで経っても賠償金が支払われないという事態に陥るため、最終的に任意保険会社の提示する額に同意せざるを得なくなります。

増額の交渉を行う場合、弁護士に依頼をした方が良いでしょう。
弁護士は過去の裁判例や類似の事例など増額すべき根拠を提示することができます。
また、事故被害者の方が弁護士に依頼したという事実は、相手方任意保険会社にとってある種のプレッシャーとなります。
仮に示談が不成立となった場合、民事裁判を起こされる可能性が高くなるのです。
裁判を起こされれば、弁護士基準での支払い命令を受けることになるのは必定です。
さらに「賠償が遅れたことについての賠償金」である遅延損害金の支払いまで命じられることになります。
裁判を起こされるというリスクがある以上、任意保険会社は被害者側弁護士からの交渉について無下にすることができないのです。

弁護士基準で慰謝料を算定した時の目安額は「慰謝料計算機」ですぐにわかります。示談金のうち、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料、逸失利益について目安を自動計算してくれる便利ツールが無料で利用可能です。

なお、交通事故における裁判についてくわしく知りたい方は、『交通事故の裁判の起こし方や流れ』をご覧ください。

また過失割合や後遺障害の等級について争いがある場合にも、弁護士に相談することで賠償金の増額が見込まれます。
弁護士は職権により事故の調査ができます。
適切な後遺障害の等級認定が受けられるよう医師の治療方針について検証したり、後遺障害の申請の際、等級認定に有利となるような医学上の証拠の作成・貼付について被害者の方の負担を増やすことなく行うことができます。
弁護士の介入により、適切な過失割合、後遺障害の等級となり、賠償金が増額したという事例も数多くあります。

交通事故の被害者によっては、「弁護士に相談するほどのことではない」「私は軽傷だから」と弁護士への相談・依頼をためらっている人もいるでしょう。しかし、弁護士相談には多くのメリットがあり、少なくとも人身事故の被害者は相手方と交渉すべき項目も多く弁護士の存在は重要なのです。

被害者の疑問を取りまとめた関連記事を読み、弁護士への相談を前向きに検討してください。

当事務所でとり扱った増額事例

アトム法律事務所で実際にとり扱った増額事例をここでご紹介しましょう。

賠償金増額事例①

事故の状況被害者の乗る自転車と加害者の乗る自動車が衝突したという事故。
被害者は右肩腱板断裂の傷害を負った。
後遺症の症状右肩の可動域に障害が残った。
後遺障害等級12級6号
保険会社提示額341万207円
最終回収額1000万円
増額金額658万9793円

こちらは、相手方任意保険会社提示の額より600万円以上も増額したという事例です。
任意保険会社によっては、自賠責基準とほとんど変わらないような金額を提示してくる場合もあります。

しかし、保険会社提示額の341万円というのは、数字単体で見ると高額です。
ケガの程度の大きな事故では、相手方保険会社の提示する本来もらうべき賠償額よりも相当低額な算定基準でも、納得してしまいやすくなります。
保険会社から金額の提示を受けたら、まずは弁護士の無料相談などを利用し、金額が適正かどうか調べるべきと言えるでしょう。

賠償金増額事例②

事故の状況バイク対自動車の事故。
被害者バイクが交差点を直進中、対向の右折自動車と衝突した。
後遺症の症状左手親指の可動域が半分以下になった。
後遺障害等級無等級→14級相当
保険会社提示額36万440円
最終回収額295万円
増額金額258万9560円

この事例の事故被害者の方は、相手方保険会社から「後遺障害には認定されないので申請しなくていい」等と言われていました。
弁護士が後遺障害の申請を行ったところ後遺障害14級相当だと認められ、その後、再度示談交渉に臨んだところ258万9560円の増額となりました。

任意保険会社によっては後遺障害の申請をされないよう、口を挟んでくるケースというのもあるわけです。

事故加害者が任意保険会社に加入していないときはどうする?

自賠責保険と事故加害者本人に請求

事故の相手方が任意保険に加入していないという場合もあります。
そのようなとき、事故後の流れや賠償を受ける方法は大きく異なります。

基本的には損害の全額が確定するまでは被害者の方がお金を立て替えて支払う必要があります。
金銭的な負担が重い場合には、相手方自賠責保険に仮渡金を請求することも考えます。
仮渡金についてくわしく知りたい方は、関連記事『内払い金・仮渡金を解説|交通事故の慰謝料を示談前に受け取る方法』をご覧ください。

損害の全額が確定した後は、まず自賠責保険に賠償の請求を行います。
自賠責保険は、傷害部分で120万円の上限があります。
上限を超えた分については、事故の相手方に直接請求することになります。
自賠責保険についてくわしく知りたい方は、関連記事『交通事故慰謝料が120万を超えたらどうなる?自賠責保険の限度額や請求方法を解説』の記事をご覧ください。

いずれにせよ事故の相手方が任意保険に入っていない場合、賠償金の請求をすべて自分の手でやらねばならず、大変手間がかかります。
また提出書類の作成に専門知識が必要となる場面もありますから、まずは弁護士に相談するべきといえるでしょう。

請求の時効は何年?

交通事故の賠償請求には時効があります。
時効の完成を延長させるための手段などもありますが、基本的には時効が過ぎる前に示談を締結させなければなりません。
賠償請求の時効の年数は次の通りとなります。

損害賠償の時効

  • 自賠責保険に対する請求の時効
    傷害事故や死亡事故の場合は3年、後遺障害の残った事故については症状固定日から3年
  • 加害者に対する請求の時効
    損害および加害者を知ったときから、物損部分について3年、人身損害部分については5年
    後遺障害が残った場合、人身損害部分について症状固定日から5年
    損害および加害者がわからなかったときは事故日から20年

事故の相手方が任意保険に加入していない場合、賠償についての紛争が長引いて気づかないうちに時効が完成してしまうというおそれがあります。
早急に弁護士に相談するべきといえるでしょう。

保険会社との交渉を弁護士に依頼するメリット

メリット1.弁護士基準での賠償金を受けとれる!

弁護士に依頼すれば弁護士基準での賠償金の獲得を期待できます。

先述のとおり、相手方任意保険会社は任意保険基準での示談締結を目指します。
被害者の方が慰謝料の増額を主張しても、それが叶えられるケースはほとんどありません。
増額を主張する被害者に対して、任意保険会社は示談の締結を拒み続けます。
いつまで経っても賠償金が支払われないという事態に陥り、被害者の方の負担が増大するという結果になってしまうのです。

弁護士に依頼すれば、過去の裁判例や類似事故の過去の増額事例など、増額すべき具体的根拠を提示できるようになります。
任意保険会社からすれば裁判を起こされるかもしれないというプレッシャーも生じますから、増額交渉に応じざるを得なくなります。

弁護士基準での賠償金の支払いを受けたいならば、弁護士に相談するべきなのです。

メリット2.被害者の方の手間を軽減できる

交通事故の紛争解決には、かなり手間を要します。
提出すべき書面ひとつを取ってみても、作成に専門知識が必要となる場面はかなり多いです。
本来、ケガの治療に専念しなければならない状態なのに、相手方任意保険会社と交渉したり、必要書類を作成・提出したりするのは非常に負担となります。

交通事故の実務経験を積んできている弁護士であれば、どんな書類が必要になるか、何を記載すべきかを熟知しています。
書面の作成や事務手続きなどを代行することで、依頼者の方の負担をかなり軽減できます。
また相手方任意保険会社との交渉においても、専門的な知識を背景に適切な対処をすることができます。

弁護士に依頼すれば、自身の手間を軽減しつつ、対処の間違いをなくすことができるのです。

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岡野武志弁護士

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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